(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術のようにポリオレフィン樹脂に熱可塑性エラストマー樹脂を加える方法では、成形性と柔軟性の向上や破断点伸度等の機械強度のバランスを併せ持つ要求を達成することが困難で、得られた発泡体の使用条件にも限定があった。また、真空成形や圧縮成形等では、生産性向上のために加工温度を120℃〜200℃の高温条件とするため発泡体の寸法変化の発生により発泡体の厚さが増幅し角の膨らみにより、角がシャープな形状ができず、更に表面に凹凸が発生して外観上の欠陥が生じる場合がある。熱可塑性エラストマー樹脂には、分子中にエントロピー弾性を有するゴム成分を有する非結晶部分(ソフトセグメント)が存在するために特に高温条件では寸法変化率が大きくなる。
そこで、本発明の目的は、従来技術の課題を解決し、優れた成形性と柔軟性とを高度に両立させ、更に高まる要求性能を満たす発泡体を提供することにある。
【0007】
また、真空成形や圧縮成形等では、成形型の形状により幅方向と長さ方向の設計寸法や設計展開率が同一の場合がある。上記従来技術では、幅方向と長さ方向の片方の破断点伸度が小さく不十分となり、成形体の中で極端に歪みが発生し、発泡体が破れて外観上の欠陥が生じる場合がある。
【0008】
本発明の目的は、従来技術の課題を解決し、優れた柔軟性と幅方向および長さ方向の破断点伸度差が小さいことの両者を高度に両立させ、高まる要求性能を満たす発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するための本発明は、次のとおりである。
本発明の発泡体は、ポリオレフィン樹脂を含み、120℃で60分加熱した後の厚さ方向の寸法変化率が−30%〜−1%である。
本発明の発泡体は、ポリオレフィン樹脂を含み、幅方向の破断点伸度と長さ方向の破断点伸度が0%<「幅方向の破断点伸度」−「長さ方向の破断点伸度」≦80%である。
本発明の発泡体の好ましい態様によれば、ポリオレフィン樹脂を含み、120℃で60分加熱した後の厚み方向の寸法変化率が−30%〜−1%であり、幅方向の破断点伸度と長さ方向の破断点伸度が0%<「幅方向の破断点伸度」−「長さ方向の破断点伸度」≦80%である。
【0010】
本発明の発泡体の好ましい態様によれば、前記ポリオレフィン樹脂として、オレフィンブロックコポリマー(A)を含み、該オレフィンブロックコポリマー(A)は、示差走査熱量計(DSC)による吸熱ピークが115℃〜130℃の範囲にあり、該オレフィンブロックコポリマー(A)は、非結晶部分と結晶部分が繋がった構造である。
【0011】
本発明の発泡体の好ましい態様によれば、前記ポリオレフィン樹脂として、ポリプロピレン樹脂(B)及びポリエチレン樹脂(C)を含むことである。
【0012】
本発明の発泡体の好ましい態様によれば、ゲル分率が15%〜60%である。
【0013】
本発明の発泡体の好ましい態様によれば、発泡体を含む積層体である。
【0014】
本発明の発泡体の好ましい態様によれば、発泡体から得られる成形体である。
【0015】
本発明の発泡体の好ましい態様によれば、発泡体を含む自動車内装材である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、優れた成形性と柔軟性を有し、複雑で角がシャープな形状の成形体に成形することができる。そしてこれらの更に高まる要求性能を満たす発泡体が得られる。
本発明によれば、優れた柔軟性と幅方向の破断点伸度と長さ方向の破断点伸度が0%<「幅方向の破断点伸度」−「長さ方向の破断点伸度」≦80%を有し、そしてこれらの更に高まる要求性能を満たす発泡体が得られる。
【0017】
また、本発明によれば、上記特性の発泡体を安定して製造し供給することができる。本発明によれば、このような特性を生かし、特に成形後の柔軟性が求められる自動車内装材用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、前記課題、つまり優れた成形性と柔軟性を有し複雑で角がシャープな形状の成形体に成形することができるために120℃に設定したオーブンのなかに60分加熱した後の厚さ方向の寸法変化率の範囲が−30%〜−1%が必要である。最良条件は、−8%〜−1%である。厚さ方向の寸法変化率が−30%以下であれば成形後に製品規定厚さより薄くなり、厚さ方向の寸法変化が−1%以上であれば発泡体の寸法変化の発生により発泡体の厚さが増幅し角の膨らみにより、成形後にシワ等の外観上欠点が発生する恐れがある。
【0019】
本発明は、前記課題、つまり優れた成形性と柔軟性を有し複雑で角がシャープな形状の成形体に成形することができるために、幅方向の破断点伸度と長さ方向の破断点伸度の範囲は、0%<「幅方向の破断点伸度」−「長さ方向の破断点伸度」≦80%が必要である。最良条件は、0%<「幅方向の破断点伸度」−「長さ方向の破断点伸度」≦30%である。幅方向の破断点伸度と長さ方向の破断点伸度の範囲が「幅方向の破断点伸度」−「長さ方向の破断点伸度」>80%である場合は、成形型の形状(幅方向と長さ方法が同一寸法や同一展開率)により幅方向の破断点伸度および長さ方向の破断点伸度の片方において機械強度が低下し、発泡体が破れ外観上欠点が発生する恐れがある。幅方向の破断点伸度と長さ方向の破断点伸度の範囲が「幅方向の破断点伸度」−「長さ方向の破断点伸度」≦0%である場合は、成形型の形状(幅方向と長さ方法が同一寸法や同一展開率)により幅方向の破断点伸度および長さ方向の破断点伸度の片方において機械強度が低下し、発泡体が破れ外観上欠点が発生する恐れがある。
【0020】
このときの、幅方向とは、長さ方法と直交する平面方向で、長さ方向とは樹脂押出方向とする。
【0021】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂は、樹脂を構成する全てのモノマー成分を100モル%とした際に、その樹脂中のオレフィン系炭化水素成分が50モル%以上100モル%以下のものである。例えば、プロピレンの単独重合体やエチレン−プロピレン共重合体(ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン)などのプロピレン成分が50モル%以上100モル%以下であるポリプロピレン樹脂(B)、および、エチレンの単独重合体、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとからなるエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレンと非オレフィンとの共重合体などのエチレン成分が50モル%以上100モル%以下であるポリエチレン樹脂(C)などが挙げられる。
【0022】
また、本発明では成形性(寸法変化)と柔軟性、もしくは、かつ破断点伸度と柔軟性の両立が課題にあるが、その手段としては、特に限定されない。しかし、炭素数3〜10のα−オレフィンとエチレンからなる熱可塑性エラストマー樹脂であるオレフィンブロックコポリマー(A)を用いることが好適である。
【0023】
炭素数3〜10のα−オレフィンとエチレンからなる熱可塑性エラストマー樹脂のオレフィンブロックコポリマー(A)としては、エチレンと共重合可能なプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテンおよび1−デセンなどがあげられる。上記のオレフィンブロックコポリマー(A)は、常温ではゴム弾性を示し、高温では可塑化されて各種の成形加工が可能となるものであり、一般に、分子中にエントロピー弾性を有するゴム成分を有する非結晶部分(ソフトセグメント)と、塑性変形を防止するための分子拘束成分、結晶部分(ハードセグメント)とを共有していることが多く、ハード成形可能な範囲においては部分架橋構造を有する場合もあるが、広範囲の三次元架橋構造(網目構造)は有していない。上記オレフィンブロックコポリマー(A)は、分子鎖中に非結晶部分(ソフトセグメント)と分子拘束成分、結晶部分(ハードセグメント)を繋がって持つ特殊なポリオレフィン樹脂である。
このようなオレフィンブロックコポリマー(A)としては、例えば、ソフトセグメントとしてエチレン、エチレンと少量のジエンとの共重合体或いはこれらの部分架橋物等を有し、ハードセグメントとしてプロピレン等を有するブロック共重合体等からなるものがあげられる。上記のオレフィンブロックコポリマー(A)は、単独で用いられても二種類以上が併用されてもよい。また、非オレフィンとしては、酢酸ビニル、ビニルアルコール、エチレンメチルアクリレート、エチレンエチルアクリレートおよびエチレンブチルアクリレートなどが挙げられる。これらのポリオレフィン樹脂には、グラフトのような化学的修飾が施されていてもよい。
【0024】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂は、1種類もしくは2種類以上混合して使用することができる。
【0025】
成形性と柔軟性および、破断点伸度等の機械強度のバランスが取れた発泡体を得る上記のオレフィンブロックコポリマー(A)および、上記のポリプロピレン樹脂(B)、上記のポリエチレン樹脂(C)を含むことが特に好適な態様である。
【0026】
そして、このオレフィンブロックコポリマー(A)、ポリプロピレン樹脂(B)とポリエチレン樹脂(C)との含有割合は、成形性、柔軟性及び破断点伸度等の機械強度バランスに優れるという観点から、オレフィンブロックコポリマー(A)、の重量%の比率が20%〜80%の範囲とすることが好適な態様である。オレフィンブロックコポリマー(A)の含有率の範囲は好ましくは30〜70重量%であり、更に好ましくは40〜60重量%である。ここで言うオレフィンブロックコポリマー(A)の含有率は、オレフィンブロックコポリマー(A)を含む、複数の混合されるポリオレフィン樹脂脂組成物の総量を100重量%としたときの中に含まれるオレフィンブロックコポリマー(A)の重量%を言う。
もし、オレフィンブロックコポリマー(A)の重量%が20重量%未満であれば、本発明が達成しようとする十分な成形性と柔軟性の特性が得られず、80重量%部より多い場合は成形、特に圧縮成形等に十分な耐熱性が得られず、成形時に表面上のダメージが大きく外観を損なう恐れがある。
【0027】
そして、ポリオレフィン樹脂として、オレフィンブロックコポリマー(A)、ポリプロピレン樹脂(B)とポリエチレン樹脂(C)との混合物であってポリプロピレン樹脂(B)の含有率は、10〜50重量%が好ましく、ポリプロピレン樹脂(B)を50重量%以上含有するものを用いる場合には、ポリオレフィン樹脂発泡体の十分な柔軟性を得られずポリプロピレン樹脂(B)を10重量%未満含有するものを用いる場合は、得られるポリオレフィン樹脂発泡の耐熱性を損なう恐れがある。より好ましくは15〜35%である。又、ポリエチレン樹脂(C)の含有率は、10〜30%が好ましく、ポリエチレン樹脂(C)を30%以上含有するものを用いる場合は、十分な柔軟性と耐熱性を得られず、ポリエチレン樹脂(C)を10重量%未満含有するものを用いる場合は、得られるポリオレフィン発泡体の耐寒性を損なう恐れがある。好ましくは、15〜25重量%である。
【0028】
本発明で用いられるオレフィンブロックコポリマー(A)は、MFR(190℃)が0.1〜30g/10分であることが好ましく、より好ましくは1〜10g/10分である。MFR(190℃)が0.1g/10分未満では、混練時の機械への負荷が過剰となり加工できない場合があり、また、MFR(190℃)が30g/10分を超えると、発泡体の機械強度が低く製品として不十分な場合がある。
【0029】
本発明で用いられるオレフィンブロックコポリマー(A)は、密度が830〜900kg/m
3であることが好ましく、より好ましくは850〜890kg/m
3である。密度が830kg/m
3未満では、樹脂がブロッキングしやすく生産が困難となる場合があり、また、密度が910kg/m
3を超えると発泡体の柔軟性が不十分となり本発明の目的を果たさないことがある。
【0030】
本発明で用いられるオレフィンブロックコポリマー(A)は、示差走査熱量計(DSC)による吸熱ピークが115℃〜130℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは118℃〜127℃である。示差走査熱量計(DSC)による吸熱ピークが115℃以下、もしくは130℃以上の場合、押出機内に混在するポリプロピレン樹脂(B)、ポリエチレン(C)との混練性が低下し、均一な気泡径の発泡体ができない。
【0031】
本発明で用いられるオレフィンブロックコポリマー(A)は、タイプAのデュロメーターを用いて測定した硬度が30〜70度であることが好ましく、より好ましくは40〜60度である。タイプAデュロメーターの硬度が30度未満である場合は、発泡体の機械強度が低く製品として不十分な場合がある。タイプAのデュロメーターの硬度が70度を超えると発泡体の柔軟性が不十分となり本発明の目的を果たさないことがある。
本発明で用いられるオレフィンブロックコポリマー(A)としては、市販品としてはDow Chemical Companyより“INFUSE”(登録商標)9507等があげられる。
【0032】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(B)としては、ポリプロピレン樹脂(B)100質量%中のエチレン含有率が5〜15質量%、融点が135〜155℃、MFR(230℃)が0.5〜5.0のランダムポリプロピレン、および/または、ポリプロピレン樹脂(B)100質量%中のエチレン含有率が1〜5質量%、融点が150〜170℃、MFR(230℃)が1.0〜7.0のブロックポリプロピレンが、特に好ましく用いられる。
【0033】
また、ポリエチレン樹脂(C)は、密度が890〜950kg/m
3、MFR(1
90℃)が1〜15g/20分の範囲内にあるものが好ましく用いられ、中でも密度が920〜940kg/m
3、MFR(190℃)が2〜10g/10分、融点が100〜130℃のエチレン−α−オレフィン共重合体が、特に好ましく用いられる。
【0034】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、フェノール系、リン系、アミン系およびイオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、エチルビニルベンゼン、エチレンビニルジメタクリレート、1,2−ベンゼンジカルボン酸ジアリルエステル、1,3−ベンゼンジカルボン酸ジアリルエステル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ジアリルエステルおよび1,2,4−ベンゼントリカルボン酸ジアリルエステル等の架橋助剤、マイカやタルク等の充填剤、臭素系およびリン系等の難燃剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、およびポリテトラフルオロエチレン等のポリオレフィン用添加剤を添加することができる。
【0035】
本発明の発泡体は、ポリオレフィン樹脂の混合物に気体を生ずることができる発泡剤を混合して製造するものであり、その製造方法としては、ポリオレフィン樹脂の混合物に、発泡剤として、熱分解型化学発泡剤を加えて溶融混錬し、常圧加熱にて発泡する常圧発泡法、押出機内で熱分解型化学発泡剤を加熱分解し、高圧下で押出ながら発泡する押出発泡法、プレス金型内で熱分解型化学発泡剤を加熱分解し、減圧しながら発泡するプレス発泡法、および押出機内で気体あるいは気化する溶剤を溶融混合し、高圧下で押出しながら発泡する押出発泡法等の方法があげられる。
【0036】
ここで用いられる熱分解型化学発泡剤とは、熱を加えることで分解しガスを放出する化学発泡剤であり、例えば、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシベンゼンスルフォニルヒドラジドなどの有機系発泡剤、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムおよびカルシウムアジドなどの無機系発泡剤があげられる。
【0037】
また、気体あるいは気化する溶剤としては、炭酸ガス、窒素、ヘリウム等の気体、プロパン、ノルマルブタンおよびイソブタン等の気化する溶剤があげられる。
【0038】
発泡剤は、それぞれ単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。柔軟で成形性が高く表面平滑な高倍率な発泡体を得るため、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを用いた常圧発泡法が好適に用いられる。
【0039】
本発明の発泡体は、成形性と柔軟性とが共に優れているという観点から、見かけ密度が30kg/m
3〜150kg/m
3の範囲であることが好ましく、更に好ましい態様は、50kg/m
3〜100kg/m
3の範囲である。
また、見かけ密度と相関のある25%圧縮硬さの関係において、成形性と柔軟性とが共に優れているという観点から、25%圧縮硬さ(kPa)<見かけ密度(kg/m
3)であることが好ましく、更には、柔軟性が高くなるという観点から、25%圧縮硬さ(kPa)<見かけ密度(kg/m
3)−10であることがより好ましい態様である。
本発明の発泡体を架橋させる場合、すなわち、本発明の発泡体を架橋発泡体とする場合、架橋状態を示すゲル分率は、15%〜60%の範囲であることが好ましく、更には30%〜50%の範囲であることが好ましい。このゲル分率が15%未満では、発泡時表面から発泡剤のガスが逸散し、所望の発泡倍率の製品が得られにくくなり、一方、ゲル分率が60%を超えると過度の架橋となり表面平滑な高発泡倍率の製品が得られにくくなることと、破断点伸度等の機械強度が低下し成形性が低下することがある。
【0040】
本発明の発泡体を架橋する方法は従来公知な方法でよく、その製造方法は特に限定されない。シート状物に電離性放射線を所定線量照射して樹脂を架橋させる方法では、電離性放射線として、電子線、X線、β線およびγ線等が使用される。照射線量は、一般に1〜300kGy程度であり、所望のゲル分率に応じて線量が設定される。また、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物による架橋や、シラン架橋等の方法を用いることもできる。
【0041】
次に、本発明の発泡体の製造方法を例示説明する。
【0042】
オレフィンブロックコポリマー(A)、および、ポリプロピレン樹脂(B)、ポリエチレン樹脂(C)に、更にアゾジカルボンアミド等の熱分解型発泡剤を加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー等の混合機器を用いて均一に混合する。その後、押出機や加圧式ニーダー等の溶融混練機器を用いて、熱分解型発泡剤の分解温度未満で均一に溶融混練し、T型口金によってシート形状に成形した後、電離性放射線を照射し架橋させる。
次に、得られたシート状物を熱媒となる塩浴上に浮かべる方法や、熱風等の雰囲気下中に投じる方法により、熱分解型発泡剤の分解温度以上に昇温させて、分解により発生したガスにより発泡させることによって、本発明の発泡体を得ることができる。
【0043】
本発明の発泡体は、長尺シート状に製造できることが好ましい。長尺シート状とすることにより安価に大量に供給することが可能である。また、本発明の発泡体は、その少なくとも1面にコロナ放電処理、ポリ塩化ビニル樹脂シートや熱可塑性エラストマー樹脂シート、天然の布状物、人造の布状物およびレザー等の表皮材によるコーティングおよびラミネート加工などの各種の加工を行うことができる。これらの加工においても、長尺シートで供給することにより連続的に使用することができる。
【0044】
本発明の発泡体は、厚さが0.5mm〜8mmの範囲であることが好ましく、更には1mm〜5mmの範囲であることが好ましい。厚さが0.5mm未満では成形後の残厚みが薄すぎて柔軟性がなく底付き感が出るため好ましくない。また厚さが8mmを超えると細かい意匠への成形と角のシャープさが困難になる場合がある。
【0045】
本発明の発泡体は、独立気泡構造であることが好ましい。独立気泡構造の発泡体の場合には、その構造のために真空成形でエアーを十分に引くことができる等、複雑な形状への成形が可能となる。また、気泡は微細で均一であることが発泡体や発泡体を成形した成形品の表面が平滑となることから好ましい。樹脂のゲル化物等は発泡体表面に凹凸状欠点や発泡体内部に粗大気泡状欠点が発生する要因となり、ラミネート加工においては欠点部分が密着しない、成形加工においては成形品の表面に凹凸状欠点となる等、最終製品の外観が損なわれることになる。
【0046】
本発明の発泡体は、優れた成形性と柔軟性から、発泡体のどちらか片方の面にポリ塩化ビニル樹脂シートや熱可塑性エラストマー樹脂シート、天然の布状物、人造の布状物およびレザー等の表皮材(他素材)を積層して、インスツルメントパネルやドアトリム等の自動車内装材、トレー、建材、電化製品等の断熱材、緩衝材、テープ基材、パイプカバー、およびパッキング材として利用される。特に複雑で角がシャープな形状への成形と加工後の柔軟性が求められる自動車内装材用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0047】
以下の実施例と比較例で用いた評価方法は、次のとおりである。
【0048】
(1)ポリオレフィン樹脂のMFR:
ポリオレフィン樹脂のMFRとは、JIS K7210(改正1999/10/20)「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート (MFR) およびメルトボリュームフローレイト (MVR) の試験方法」に準じて、MFR(190℃)は190℃の温度で、MFR(230℃)は230℃の温度で測定した。具体的には、上記規格の附属書B(参考)「熱可塑性プラスチック材料の規格と指定とその試験条件」に基づきオレフィンブロックコポリマー(A)およびポリエチレン樹脂(C)は、温度190℃、荷重2.16kgf、ポリプロピレン樹脂(B)は温度230℃、荷重2.16kgfの条件でメルトマスフローレート計(株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサ型式F−B01)を使用し、手動切り取り法を採用し、ダイから10分間にでてきた樹脂の重量を測定した。
【0049】
(2)ポリオレフィン樹脂の密度:
ポリオレフィン系樹脂の密度は、JIS K7112(改正1999/05/20)「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」に準じて測定した。
【0050】
(3)ポリオレフィン樹脂の融点:
本発明においてポリオレフィン樹脂の融点とは、示差走査熱量分析で得られたDSC曲線の結晶融解ピークから得られる最大のピーク温度であり、示差走査熱量計(DSC:セイコー電子工業株式会社製RDC220−ロボットDSC)を用いて測定した。測定条件は、サンプルを200℃の温度まで昇温し溶融させた後、10℃/分の速度で−50℃の温度まで冷却させ、それから10℃/分の速度で昇温して、単位質量当たりの結晶融解エネルギーと融解温度を測定した。
【0051】
(4)ポリオレフィン樹脂の硬度:
本発明においての硬度とは、JIS K6253(1997年)「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―硬さの求め方」に規定の方法に準拠ずる。具体的にはオレフィンブロックコポリマー(A)を熱プレス機など用いて6mmの板厚みになる様に試験片を作成し、平坦で堅固な面に設置し、デュロメーターAの押針が試験片と直角になるように衝撃を与えないように接触させる。接触後15秒たったのち、得られた指示値を硬度とする。
【0052】
(5)発泡体の厚さ:
発泡体の厚さは、ISO1923(改正1981/09/01)「発泡プラスチック及びゴム一線寸法の測定方法」に従って測定を行った値である。
【0053】
(6)発泡体のみかけ密度:
発泡体のみかけ密度は、JIS K6767(改正1999/10/20)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に準じて測定した値である。
【0054】
(7)発泡体のゲル分率:
発泡体を約0.5mm四方に切断し、約100mgを0.1mgの単位で秤量する。130℃の温度のテトラリン200mlに3時間浸漬した後、100メッシュのステンレス製金網で自然濾過し、金網上の不溶解分を1時間120℃下で熱風オーブンにて乾燥する。次いで、シリカゲルを入れたデシケータ内で10分間冷却し、この不溶解分の質量を精密に秤量し、次の式に従って発泡体のゲル分率を百分率で算出する。
・ゲル分率(%)={不溶解分の質量(mg)/秤量した発泡体の質量(mg)}×100。
【0055】
(8)発泡体の25%圧縮硬さ:
発泡体の25%圧縮硬さは、JIS K6767(1999年)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に基づいて測定した値である。具体的には、発泡体を50mm×50mmに切断し、厚さが20mm以上30mm以下になるように重ね、初期厚さを測定する。平面板にサンプルを置き、初期厚さの25%まで10mm/分の速度で圧縮して停止し、20秒後の荷重を測定し、下記式により25%圧縮硬さ(kPa)を計算した。
・25%圧縮硬さ(kPa)=25%圧縮し20秒後の荷重(N)/25(cm
2)/10。
【0056】
(9)発泡体の破断点伸度:
発泡体の破断点伸度は、JIS K6767(1999年)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に基づいて測定した値である。具体的には、ポリオレフィン樹脂発泡体を23℃に調整されたオーブン内に放置し、ポリオレフィン樹脂発泡体の表面温度をサーモラベルにより測定して、ポリオレフィン樹脂発泡体の表面温度が23℃になった時に一軸引張試験をする。又、ポリオレフィン樹脂発泡体を160℃に調整されたオーブン内に放置し、ポリオレフィン樹脂発泡体の表面温度をサーモラベルにより測定して、ポリオレフィン樹脂発泡体の表面温度が160℃になった時に一軸引張試験をする。
次の計算式を用いて発泡体の破断点伸度の評価をし、◎と○を合格とした。
◎:0%<「幅方向の破断点伸度」−「長さ方向の破断点伸度」≦30%である。
○:30%<「幅方向の破断点伸度」−「長さ方向の破断点伸度」≦80%である。
×:◎及び○のいずれにも該当しない。
【0057】
(10)発泡体の寸法変化率:
発泡体の寸法変化率は、JIS K6767(1999年)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に基づいて測定した値である。具体的には、ポリオレフィン樹脂発泡体を15cm角に正確に切り取り、120℃に設定したオーブンのなかに60分間放置する。60分経過後、オーブンから取り出し約30分〜60分間室温で冷却する。サンプルの寸法を測定し、以下の式に基づいて寸法変化率を百分率で算出した。
加熱寸法変化率(%)=[{オーブンに入れる前のサンプル長−オーブンから取り出した後のサンプル長}/オーブンに入れる前のサンプル長]×100
加熱寸法変化率の計算式の値から次のとおり評価し、◎と○を合格とした。
◎:加熱寸法変化率が−1%〜−8%である。
○:加熱寸法変化率が−30%以上−8%未満である。
×:◎及び○のいずれにも該当しない。
【0058】
(11)発泡体の柔軟性の評価方法:
柔軟性について、発泡体の25%圧縮硬さと発泡体のみかけ密度から、次の計算式を用いて発泡体の柔軟性を評価し、◎と○を合格とした。
◎:25%圧縮硬さ(kPa)<見かけ密度(kg/m
3)−10ある。
○:25%圧縮硬さ(kPa)≧見かけ密度(kg/m
3)−10であり、かつ25%圧縮硬さ(kPa)<2.0×見かけ密度(kg/m
3)である。
×:◎及び○のいずれにも該当しない。
【0059】
(12)加熱成型加工性:
加熱成型加工性については、真空成型時の成型絞り比H/Dで評価を行った。直径がDで深さがHの垂直円筒状の雌型カップにおいて、発泡体を加熱し、真空成型機を用いてストレート成型したときに、発泡体が破れることなく、円筒状に展開、伸長したときの、H/Dの数値が最も大きい値を比較することにより、実施した。直径Dは50mmのカップを使用し、発泡体の表面温度が170℃時の成型絞り比を測定し、その値から、次のとおりの評価とし、◎と○を合格とした。
◎:成型絞り比が0.7以上
○:成型絞り比が0.5以上0.70未満
×:成型絞り比が0.5未満。
【0060】
(13)角Rによるシャープ性:
前記(12)の加熱成型加工実施後に成型された成型絞り比が0.5以上の発泡体を製品厚さ方向に細断し、その断面形状をマイクロウォッチャーで撮影した。その写真の角部分に円の外周部分を重ね合わせ、その円の半径から次のとおりの評価とし、◎と○を合格とした。
◎:円の半径が3mm未満
○:円の半径が3mm以上8mm未満
×:円の半径が8mm以上。
【0061】
実施例と比較例で用いた樹脂は、次のとおりである。
オレフィンブロックコポリマー(A)A−1:Dow Chemical Company製“INFUSE”(登録商標)9507、密度:867kg/m
3、MFR=5.0g/10分、融点=119℃。
【0062】
オレフィンブロックコポリマー(A)A−2:三井化学製“タフマー”(登録商標)PN−2070、密度:867kg/m
3、MFR=7.0g/10分、融点=140℃ 。
【0063】
オレフィンブロックコポリマー(A)A−3:三井化学製“タフマー”(登録商標)DF−840、密度:885kg/m
3、MFR=3.6g/10分、融点=66℃。
【0064】
オレフィンブロックコポリマー(A)A−4:JSR製“DYNARON”(登録商標)6200P、密度:880kg/m
3、MFR=2.5g/10分、融点=140℃。
【0065】
オレフィンブロックコポリマー(A)A−5:JSR製“DYNARON”(登録商標)4600P、密度:910kg/m
3、MFR=5.5g/10分、融点=98℃。
【0066】
ポリプロピレン系樹脂(B)B−1:日本ポリプロ製“ノバテックPP”(登録商標) EG6D、密度:900kg/m
3MFR=1.9g/10分、融点=139℃。
【0067】
ポリプロピレン系樹脂(B)B−2:ポリプロピレン系樹脂(B)プライムポリマ製“プライムポリプロ“(登録商標)J452HAP、密度:900kg/m
3、MFR=3.5g/10分、融点=163℃。
【0068】
ポリエチレン系樹脂(C)C−1:ポリエチレン系樹脂(C)日本ポリエチレン製“ノバテック”(登録商標)LL UJ960、密度:935kg/m
3、MFR=5g/10分、融点=126℃。
【0069】
ポリエチレン系樹脂(C)C−2:ポリエチレン系樹脂(C)プライムポリマ製“エボリュー“(登録商標)SPO、密度:903kg/m
3、MFR=3.8g/10分、融点=117℃。
【0070】
発泡剤:アゾジカルボンアミド永和化成工業製“ビニホールAC#R”(登録商標)。
【0071】
架橋助剤:和光純薬工業製55%ジビニルベンゼン。
【0072】
酸化防止剤:BASF社製“IRGANOX”(登録商標)1010。
【0073】
実施例1〜18と比較例1〜4で作成した発泡体は、次のとおりである。
表1に示す比率でヘンシェルミキサーを用いて混合し、押出機を用いて170℃の温度で溶融押出し、Tダイを用いて厚さ:1.5mmのポリオレフィン系樹脂シートを作製した。このようにして得られたポリオレフィン系樹脂シートに、加速電圧800kV、60kGyの電子線を片面から照射して架橋シートを得た後、この架橋シートを220℃の温度の塩浴上に浮かべ、上方から赤外線ヒータで加熱し発泡させた。その発泡体を60℃の温度の水で冷却し、発泡体表面を水洗して乾燥させ、厚さが1.9〜2.3mm、みかけ密度が35〜160kg/m
3、ゲル分率が35〜45%の発泡体の長尺ロールを得た。この発泡体の評価結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
(実施例19)
実施例5で得られた発泡体に0.3mmのTPO(サーモポリオレフィン)表皮を熱ラミした積層体を得た。この得られた積層体に加熱成型加工を実施した結果、成型絞り比:0.6以上、角R:5mmの測定値であり十分な角シャープ性があった。