(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394162
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】天然物由来成分を基材とするナノ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/107 20060101AFI20180913BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20180913BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20180913BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20180913BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20180913BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20180913BHJP
A23L 33/17 20160101ALN20180913BHJP
A23L 33/19 20160101ALN20180913BHJP
【FI】
A61K9/107
A61K47/42
A61K31/353
A61K38/17
A61P3/00
!A23L5/00 K
!A23L5/00 M
!A23L33/17
!A23L33/19
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-160749(P2014-160749)
(22)【出願日】2014年8月6日
(65)【公開番号】特開2016-37461(P2016-37461A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390020189
【氏名又は名称】ユーハ味覚糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】羽座 良美
(72)【発明者】
【氏名】土井 聡
(72)【発明者】
【氏名】新家 康弘
(72)【発明者】
【氏名】松川 泰治
(72)【発明者】
【氏名】松居 雄毅
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰正
(72)【発明者】
【氏名】山田 一郎
【審査官】
馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0093933(US,A1)
【文献】
特表2010−535256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61K 31/00−33/54
A23L 5/00− 5/49
A23L 31/00−33/29JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が43.1〜200nmである、天然物由来成分を基材とするナノ粒子の製造方法であって、
ガレート型カテキンまたはガレート型カテキンを含む組成物を、水または含水溶媒または有機溶媒に溶解または分散させて、ガレート型カテキン含有溶液または分散液を作製する工程、
ホエイタンパク質、卵白タンパク質およびこれらの分解物から選ばれる少なくとも1種の動物性タンパク質を、水または含水溶媒または有機溶媒に溶解または分散させて、動物性タンパク質含有溶液または分散液を作製する工程、ならびに
前記ガレート型カテキン含有溶液又は分散液と、前記動物性タンパク質含有液または分散液とを
(a)ガレート型カテキンの固形分
(b)動物性タンパク質の固形分
の重量が、0.2≦(b)/(a)≦5.0となるように混合し、pH1.2〜7.9に調整した混合液中でナノ粒子を形成させてナノ粒子含有液を作製する工程
を有し、
前記ホエイタンパク質がラクトアルブミンおよび/またはカゼインであり、
前記卵白タンパク質がオボアルブミンであることを特徴とする、ガレート型カテキンと動物性タンパク質からなるナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記混合液が、ガレート型カテキンまたはガレート型カテキンを含む組成物由来の固形分を0.1重量%以上、且つ、ホエイタンパク質、卵白タンパク質およびこれらの分解物から選ばれる少なくとも1種の動物性タンパク質由来の固形分を0.1重量%以上含有する請求項1に記載のナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
固形分値0.2〜1.0重量%に調整したナノ粒子含有液を、ゼータ電位・ナノ粒子径測定システム(ベックマン・コールター株式会社製、「DelsaMax PRO」)を用い、分析設定を水として得られるゼータ電位の絶対値が10mV以上である請求項1または2に記載のナノ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガレート型カテキンとホエイタンパク質および卵白タンパク質これらの分解物から選ばれる少なくとも1種の動物性タンパク質からなるナノ粒子の製造方法であり、更に詳しくは、これらを混合する重量比の最適化およびpHを選択することにより簡便な混合作業で平均粒子径が200nm以下のナノ粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物質のナノ粒子化の技術が様々な分野で研究され、幅広い利用が期待されている。特に、医薬品、化粧品分野において活発に検討がなされ、多くの報告が出されている。
【0003】
これまで、特に進んで研究されてきたのは医薬品分野であり、ナノ粒子化により、医薬品成分を目的の臓器や組織に提供するためのドラッグデリバリーシステム(DDS)に注目が集まっている。例えば、ガン組織において、血管新生が盛んであることから血管に間隙ができ、その間隙のサイズを利用したDDSなどにナノ粒子の利用が考えられてきた。これにより、医薬品成分を安定に効率的に運搬するだけでなく、副作用の軽減も可能となりうる。医薬品分野のDDSには例えば、リポソーム、ポリエチレングリコールなどの基材が検討されている(非特許文献1)。この抗ガン剤としての利用に適したナノ粒子のサイズは100〜200nmとされ、このサイズでの開発が活発であった。しかし、これらを基材としたナノ粒子作成は合成品などの成分や溶媒が多く利用されてきたことから、その用途が医薬品に限定され、食品等にはほとんど利用されていない。
【0004】
また、食品分野でのナノ化技術に関する報告もある。食品分野のナノ粒子化では、食感や味の向上、フレーバーなどのリリース、溶解性や透明性、吸収性や反応性の向上などを目指して開発がなされている。
【0005】
これまでに、食品や食品添加物の分野では、例えばキトサンを用いたナノ粒子の製造方法(特許文献1、2、3)が報告されており、また、シリカ、ナノクレイ、リポソーム、白金ナノ粒子なども報告されている(非特許文献2)。特許文献1の場合、キトサンを酸で溶解後に冷却する方法によってナノ粒子が得られているが、その粒子径は800nm〜3100nmと平均粒子径が大きい。また特許文献2の場合、100nm以下の粒子が形成されているが、マイクロ流路を通過させるため、その製造には専門の装置が必要になる。特許文献3はキトサンとタンニンを混合することでナノ粒子が得られているが、その粒子径は100nm以下とはなっていない。さらに、これらはナノ粒子として食品に用いられてきたが、キャリアとしての性質が強く、そのもの自体の機能性についてはほとんど注目されていなかった。
【0006】
また、ポリフェノールのカプセル化技術に関する報告もある(非特許文献3)。しかし、この報告についてもほとんどがマイクロスケールであり、ナノ粒子とは異なる性質であると考えられる。
【0007】
以上のことから、作製されたナノ粒子自体が有効な機能性を有し、且つナノ粒子の材料が天然物由来で安全性が高く、食品にも利用可能であり、200nm以下のサイズであって、幅広いpHの範囲で作製可能なナノ粒子に関する報告はない。
【0008】
ところで、主にお茶などの天然物に含まれるガレート型カテキンには、エピガロカテキンガレート(EGCg)、エピカテキンガレート(ECg)、ガロカテキンガレート(GCg)、カテキンガレート(Cg)の4種類が存在し、抗酸化作用、抗肥満作用、抗ガン作用、抗菌作用、抗炎症作用などの優れた機能を有している。
【0009】
中でもEGCgはその含有量の多さから注目を集め、多くの報告がなされているが、一方、特にECgにはこれまでに様々な有用性が報告されている。例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌において、βラクタム系抗生物質との相乗効果で細胞壁を変化させる効果が他のガレート型カテキンよりも優れた効果を有することが報告されている(非特許文献4)。また、これまでに、本発明者らはECgがLOX−1(レクチン様酸化低密度リポ蛋白質受容体)アンタゴニストとして特に有用であることを見出し、報告している(特許文献4)。また、EGCgとECgでは、ECgのほうが脂質二重膜と相互作用しやすいという報告がある(非特許文献5)。また、ヒト試験において、ECgのほうが血中に取り込まれやすいことも報告がある(非特許文献6)。
以上のことから、ガレート型カテキンであるECgが非常に有用な化合物であることが明らかである。
【0010】
これまでに、EGCgを含むカテキンとβ―ラクトグロブリンの混合物について、ナノ粒子を作製した報告があるが(非特許文献7)、作製の際にPBSを用いるため手間がかかるうえ、得られる粒子も数nm〜30nm程度または400nmとなり、50nm〜200nm程度には制御が難しいと考えられる。
【0011】
以上のことから、機能性成分であるガレート型カテキンとタンパク質の組み合わせを利用したナノ粒子作製の例はあるものの、それぞれ限定的な条件下であることや、使用する材料の安全性が十分でないことから、簡便な方法で、天然物由来のこれらの成分からなる食品にも利用可能な平均粒子径200nm以下のナノ粒子を作製することが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第05564200号公報
【特許文献2】特開2009−090160号公報
【特許文献3】米国特許第8,642,088号明細書
【特許文献4】特開2012−111747号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Drug Delivery System 26−1,2011
【非特許文献2】厚生労働省「ナノマテリアルの安全対策に関する検討会報告書」(平成21年3月31日)5−6頁
【非特許文献3】Pharmaceutics 2011,3,793−829
【非特許文献4】Microbiology 2007,153,2093−2103
【非特許文献5】化学と生物 2011,49(4),p243−249
【非特許文献6】Xenobiotica 2001,vol.31,no.12,891−901
【非特許文献7】J.Agric.Food Chem.,2010,58,6728−6734
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明は、ガレート型カテキンおよび動物性タンパク質という機能性素材を用いた天然物由来のナノ粒子を作製する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、食品にも利用可能なナノ粒子について鋭意検討した結果、ガレート型カテキンと動物性タンパク質を適切な条件下で混合するという非常に簡便な方法で、ガレート型カテキンと動物性タンパク質とのコアセルベートを形成し、天然物由来の原料からなる平均粒子径200nm以下のナノ粒子を作製することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明の要旨は、
〔1〕平均粒子径が
43.1〜200nmである、天然物由来成分を基材とするナノ粒子の製造方法であって、
ガレート型カテキンまたはガレート型カテキンを含む組成物を、水または含水溶媒または有機溶媒に溶解または分散させて、ガレート型カテキン含有溶液または分散液を作製する工程、
ホエイタンパク質、卵白タンパク質およびこれらの分解物から選ばれる少なくとも1種の動物性タンパク質を、水または含水溶媒または有機溶媒に溶解または分散させて、動物性タンパク質含有溶液または分散液を作製する工程、ならびに
前記ガレート型カテキン含有溶液又は分散液と、前記動物性タンパク質含有液または分散液とを
(a)ガレート型カテキンの固形分
(b)動物性タンパク質の固形分
の重量が、
0.2≦(b)/(a)≦
5.0となるように混合し、pH
1.2〜7.9に調整した混合液中でナノ粒子を形成させてナノ粒子含有液を作製する工程
を有
し、
前記ホエイタンパク質がラクトアルブミンおよび/またはカゼインであり、
前記卵白タンパク質がオボアルブミンであることを特徴とする、ガレート型カテキンと動物性タンパク質からなるナノ粒子の製造方法
、
〔
2〕前記混合液が、ガレート型カテキンまたはガレート型カテキンを含む組成物由来の固形分を0.1重量%以上、且つ、ホエイタンパク質、卵白タンパク質およびこれらの分解物から選ばれる少なくとも1種の動物性タンパク質由来の固形分を0.1重量%以上含有する前記〔1
〕に記載のナノ粒子の製造方法、
〔
3〕固形分値0.2〜1.0重量%に調整したナノ粒子含有液を、ゼータ電位・ナノ粒子径測定システム(ベックマン・コールター株式会社製、「DelsaMax PRO」)を用い、分析設定を水として得られるゼータ電位の絶対値が10mV以上である前記〔1〕
または〔2〕のいずれかに記載のナノ粒子の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明で得られるナノ粒子は、ガレート型カテキンおよび動物性タンパク質という天然物由来の原料からなり、しかもガレート型カテキンおよび動物性タンパク質に由来する優れた健康機能性が期待されるものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明のナノ粒子の製造方法は、平均粒子径が10〜200nmである、天然物由来成分を基材とするナノ粒子の製造方法であって、
ガレート型カテキンまたはガレート型カテキンを含む組成物を、水または含水溶媒または有機溶媒に溶解または分散させて、ガレート型カテキン含有溶液または分散液を作製する工程、
ホエイタンパク質、卵白タンパク質およびこれらの分解物から選ばれる少なくとも1種の動物性タンパク質を、水または含水溶媒または有機溶媒に溶解または分散させて、動物性タンパク質含有溶液または分散液を作製する工程、ならびに
前記ガレート型カテキン含有溶液又は分散液と、前記動物性タンパク質含有液または分散液とを
(a)ガレート型カテキンの固形分
(b)動物性タンパク質の固形分
の重量が、0.17≦(b)/(a)≦5となるように混合し、pH1.0〜8.0に調整した混合液中でナノ粒子を形成させてナノ粒子含有液を作製する工程
を有することを特徴とする
【0020】
本発明で作製するナノ粒子の平均粒子径は、10〜200nmであり、体内への吸収性および、製造性が良好である観点から、好ましくは10〜190nmであり、より好ましくは20〜180nmであり、特に好ましくは、30〜170nmであり、さらに好ましくは、30〜100nmである。
前記ナノ粒子の平均粒子径は、後述の実施例に記載のように、ゼータ電位・ナノ粒子径測定システム(ベックマン・コールター株式会社製、「DelsaMax PRO」)にて測定することができる。
【0021】
本発明でいう天然物由来成分とは、原料である、ガレート型カテキンまたはガレート型カテキンを含む組成物、および動物性タンパク質がともに天然物由来であることを示す。なお、前記原料として試薬等を使用する際にも、その試薬が天然物由来であればよい。
【0022】
(ガレート型カテキン含有溶液または分散液作製工程)
本発明のナノ粒子の製造方法では、前記ガレート型カテキンまたはガレート型カテキンを含む組成物を、水または含水溶媒または有機溶媒に溶解または分散させて、ガレート型カテキン含有溶液または分散液を作製する。
【0023】
本発明で用いるガレート型カテキンとしては、EGCg、ECg、GCg、Cgが挙げられる。前記ガレート型カテキンは、非重合体でも重合体でもよく、それらを混合しても、単独で使用してもよい。効率的な粒子形成の観点よりEGCgおよび/またはECgを含有することが好ましい。
【0024】
また、本発明で用いるガレート型カテキンを含む組成物としては、例えば、前記ガレート型カテキンを含む茶抽出物やコーヒー抽出物等が挙げられる。また、粒子作製の効率の面から、組成物中のガレート型カテキン量が20重量%以上のものが好ましく、さらに好ましくは、30重量%以上のもの、より好ましくは60重量%以上のものがよい。
【0025】
前記溶媒として使用する有機溶媒としては水と混和するものであれば特に限定はされないが、得られたナノ粒子の使用用途に適した溶媒を選択することが好ましく、例えば、食品としてはグリセリン、プロピレングリコール、エタノール等が挙げられ、医薬品としては上記に加えてメタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。また、前記溶媒として使用する含水溶媒とは、前記有機溶媒と水との混合溶媒をいう。
【0026】
前記溶解または分散させる手段としては、公知の手段であれば特に限定はない。例えば、ガレート型カテキンまたはガレート型カテキンを含む組成物を、前記溶媒に添加・混合することで、溶解または分散させることができる。また、前記溶解または分散させる際には、ガレート型カテキンの溶解性の観点から、前記溶媒の温度を20〜90℃、好ましくは50〜70℃に調整しておくことが好ましいが、ガレート型カテキンが溶解もしくは分散すれば特に限定はない。
【0027】
前記ガレート型カテキン含有溶液または分散液中のガレート型カテキンまたはガレート型カテキンを含む組成物の固形分値は平均粒子径200nm以下のナノ粒子を効率的に作製する観点から、0.1〜24重量%であることが好ましい。より好ましくは0.1〜20重量%であることが好ましいが、所望のナノ粒子が作製できれば、特に限定されることはない。
【0028】
(動物性タンパク質含有溶液または分散液作製工程)
また、本発明のナノ粒子の製造方法では、前記動物性タンパク質を、水または含水溶媒または有機溶媒に溶解または分散させて、動物性タンパク質含有溶液または分散液を作製する。
【0029】
本発明で用いる動物性タンパク質は、ガレート型カテキンとコアセルベートを形成可能なホエイタンパク質、卵白タンパク質、およびこれらの分解物などであればよい。好ましくは、乳より精製されたアルブミンおよびカゼイン、卵白より精製されたオボアルブミンである。これらの動物性タンパク質は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。またタンパク質は乳化されていてもよい。
【0030】
前記溶媒として使用する前記含水溶媒とは、水と混和する有機溶媒をいう。また、有機溶媒としては水と混和するものであれば特に限定はされないが、得られたナノ粒子の使用用途に適した溶媒を選択することが好ましく、例えば、食品としてはグリセリン、プロピレングリコール、エタノール等が上げられ、医薬品としては上記に加えてメタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0031】
前記溶解または分散させる手段としては、公知の手段であれば特に限定はない。例えば、前記動物性タンパク質を、前記溶媒に添加・混合することで、溶解または分散させることができる。
また、前記溶解または分散させる際には、効率的に溶解または分散させる観点から、前記溶媒の温度を30〜90℃、好ましくは50〜70℃に調整しておくことが好ましい。
【0032】
前記動物性タンパク質含有溶液または分散液中の動物性タンパク質の固形分値は、平均粒子径200nm以下のナノ粒子を効率的に作製する観点から、0.1〜19重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜10重量%であるが、所望のナノ粒子が作製できれば、特に限定されることはない。
【0033】
(ナノ粒子含有液作製工程)
本発明のナノ粒子の製造方法では、前記ガレート型カテキン含有溶液又は分散液と、前記動物性タンパク質含有液または分散液とを
(a)ガレート型カテキンの固形分
(b)動物性タンパク質の固形分
の重量が、0.17≦(b)/(a)≦5となるように混合し、pH1.0〜8.0に調整した混合液中でナノ粒子を形成させてナノ粒子含有液を作製する。
【0034】
本工程における前記ガレート型カテキン含有溶液又は分散液と、前記動物性タンパク質含有液または分散液との混合方法としては、均一に混合可能であればよく、静置している前記ガレート型カテキン含有溶液又は分散液に前記動物性タンパク質含有液または分散液を添加する方法、その逆の添加方法、攪拌しながら添加する方法、ホモジナイズしながら添加する方法、予め水をそれぞれの液に混合する方法、等が使用可能であるが、特に限定はない。
【0035】
本工程において、混合する際の温度などの条件については、成分の大幅な変化などが生じず、均一に混合可能な条件であればよく、使用する成分に適した温度であればよい。例えば、低温でもナノ粒子を形成させることができるが、タンパク質の溶解性の低下や粘度が上昇する。よって好ましくは30〜90℃、より好ましくは50℃〜70℃がよい。
【0036】
本工程では、前記ガレート型カテキン含有溶液又は分散液と、前記動物性タンパク質含有液または分散液との量として、
(a)ガレート型カテキンの固形分
(b)動物性タンパク質の固形分
の重量が、0.17≦(b)/(a)≦5となるように調整する。
前記重量比が前記範囲を超える場合、200nm以下の粒子が一部形成されるものの、その平均粒子径が200nmを超える大きさになるため好ましくない。
【0037】
また、前記ガレート型カテキン含有溶液又は分散液と、前記動物性タンパク質含有液または分散液との混合液のpHは、1.0〜8.0であり、4.0〜8.0がより好ましい。さらに好ましくは、6.0〜8.0がよい。pHが1.0より低すぎるとナノ粒子が溶解してしまったり、粒子径が大きくなったりする。このように低いpHでナノ粒子の粒子径を調整した報告はほとんどない。一方、pHが8.0より高いと、ガレート型カテキンの安定性が減少し、また、一時的に粒子を形成するが、凝集、沈殿が生じやすい。
【0038】
pHの調整には、ナノ粒子の使用用途に応じて、使用可能な酸または塩基であれば特に制限はない。例えば、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、カルボン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸、トリフルオロ酢酸のような有機酸、塩酸、過塩素酸、炭酸のような無機酸、又は緩衝液、などで調整することが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、塩基についても、重曹や水酸化ナトリウム、などで調整することが挙げられるが、これらに限定されるものではない。得られたナノ粒子を医薬品、化粧品、食品等に利用する場合は、それぞれの使用用途に適した酸および/または塩基を選択することが好ましい。
【0039】
なお、前記混合液のpHを調整するには、ガレート型カテキン含有溶液または分散液と、動物性タンパク質含有溶液または分散液のpHを予め調整してもよい。このように予めpHを調整することで、ガレート型カテキン含有溶液または分散液と、動物性タンパク質含有溶液または分散液を混合するだけでも、混合液のpHを1.0〜8.0の範囲に調整することができる。
【0040】
前記のようにpHを1.0〜8.0の範囲に調整した混合液中において、ガレート型カテキンと動物性タンパク質とがコアセルベートを形成し、このコアセルベート中に平均粒子径10〜200nmのナノ粒子が生じる。
【0041】
前記混合液中においては、効率的にナノ粒子を作製する観点から、ガレート型カテキンまたはガレート型カテキンを含む組成物由来の固形分を0.1重量%以上、ホエイタンパク質、卵白タンパク質およびこれらの分解物から選ばれる少なくとも1種の動物性タンパク質由来の固形分を0.1重量%以上含有することが好ましい。また、前記ガレート型カテキンまたはガレート型カテキンを含む組成物由来の固形分および動物性タンパク質由来の固形分の合計量は、0.28重量%以上がより好ましく、1.0重量%以上がさらに好ましく、1.8重量%以上が最も好ましい。
なお、前記ガレート型カテキン含有溶液又は分散液と、前記動物性タンパク質含有液または分散液との混合時に所望の濃度となるよう調整してもよく、ナノ粒子を作製した後に濃縮してもよい。
【0042】
前記のようにして得られるナノ粒子含有液は、限外濾過、透析等を施してもよい。透析をすれば、粒子化していない成分を分離しやすい。限外濾過膜としては例えばペンシル型UF膜(旭化成社製)、透析膜としてはSnakeSkin(ピアス社製)が挙げられる。これ以外にもナノ粒子を失わずに限外ろ過および透析ができれば特に限定はない。
【0043】
本発明で得られるナノ粒子は、安定性に優れたものである。例えば、ナノ粒子の安定性を示す指標にナノ粒子表面のゼータ電位を測定する方法が知られており、このゼータ電位の絶対値が大きいほど安定性に優れるといえる。例えば、本発明で得られるナノ粒子としては、固形分値0.2〜1.0重量%に調整したナノ粒子含有液を、ゼータ電位・ナノ粒子径測定システム(ベックマン・コールター株式会社製、「DelsaMax PRO」)を用い、分析設定を水として得られるゼータ電位の絶対値が10mV以上であるものが好ましい。
なお、測定時におけるナノ粒子含有液の溶媒は、水、含水溶媒、有機溶媒のいずれでもよいが、測定誤差などが生じにくい観点から、水または含水溶媒であることが好ましい。
【0044】
本発明で得られるナノ粒子は、食品に利用可能な条件で作製した場合は、飲食品に配合してもよい。飲食品としては特に限定されず、例えば、飲料、アルコール飲料、ゼリー、菓子、機能性食品、健康食品、健康志向食品等が挙げられる。保存性、携帯性、摂取の容易さ等を考慮すると、菓子類が好ましく、菓子類の中でも、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、グミキャンディ、タブレット、チューイングガム等が好ましい。
【0045】
前記ナノ粒子を飲食品に配合する場合、ナノ粒子の飲食品における含有量は、その生理活性効果が期待できる量であればよい。通常1日あたり10〜10000mg、より好ましくは100〜3000mg摂取できるように配合量を決定することが好ましい。例えば、固形状食品の場合には5〜50重量%、飲料等の液状食品の場合には0.01〜10重量%が好ましい。
【0046】
また、本発明で得られるナノ粒子は、安全性に優れたものであると考えられるので、ヒトに対してだけでなく、非ヒト動物、例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー等の哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類等の治療剤又は飼料に配合してもよい。飼料としては、例えばヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ニワトリ等に用いる家畜用飼料、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、ウナギ、タイ、ハマチ、エビ等に用いる魚介類用飼料、イヌ、ネコ、小鳥、リス等に用いるペットフードが挙げられる。
【0047】
次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はかかる実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
(実施例1)ガレート型カテキンと動物性タンパク質によるナノ粒子作製の検討
ホエイタンパク質(ラクトアルブミン(Sigma社製)、カゼイン(Sigma社製))、卵白タンパク質(オボアルブミン(和光純薬社製))などの動物性タンパク質0.1gを、それぞれ50℃の水に溶解もしくは分散させた4種類の動物性タンパク質含有水溶液90gを作製した。
一方、緑茶抽出物(ガレート型カテキン(以下Gカテキンと記載)含量67重量%)0.18gを50℃の水に溶かしたガレート型カテキン含有水溶液10gを4つ作製した。
次いで、4種類の動物性タンパク質含有水溶液90gにガレート型カテキン含有水溶性10gを加え、混合したところ、いずれも凝集・沈殿のないコロイド状薄白色液体100g(pH6.4)となった。得られた液体の粒子の平均粒子径とゼータ電位を、ゼータ電位・ナノ粒子径測定システム(ベックマン・コールター株式会社製、「DelsaMax PRO」)にて測定した。
また、Gカテキンを含まない緑茶抽出物サンフェノンXLB−100(太陽化学社製)を用いた比較品も作製した。結果を表1に示す。
なお、ゼータ電位および平均粒子径は、分析設定を水として測定した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から、Gカテキンを含まない緑茶抽出物とラクトアルブミンを用いた場合には、ナノ粒子が形成されないのに対して、Gカテキンを含有することで平均粒子径が200nm以下のナノ粒子が形成されることがわかる。また、動物性タンパク質としてカゼイン、オボアルブミンを用いた場合でも、ラクトアルブミンと同様に、ナノ粒子を形成することがわかる。
【0051】
(実施例2)動物性タンパク質とGカテキン比率の検討
ナノ粒子作製においての動物性タンパク質とGカテキン比率検討のために、混合する動物性タンパク質とGカテキンの比率のみを変更して実施例1に準じた方法で平均粒子径を測定した。動物性タンパク質としてはラクトアルブミンを用いた。結果は表2に示す。なお、表中の「ラクトアルブミン」、「Gカテキン」の数値の単位はいずれも重量%である。
【0052】
【表2】
【0053】
表2の結果より、動物性タンパク質とGカテキンの比率が0.17以上5以下の範囲内において平均粒子径が200nm以下のナノ粒子が形成されていることが分かる。
【0054】
(実施例3)pHの検討
ナノ粒子作製においてのpH検討のために、実施例1に準じた方法にてナノ粒子を作製し、その後、クエン酸、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムで混合液のpHを調整して平均粒子径を測定した。動物性タンパク質としてはラクトアルブミンを用い、動物性タンパク質とGカテキンの比率は0.56とした。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3の結果より、混合液のpHを1〜8.0の範囲に調整することで、平均粒子径200nmのナノ粒子が作製できているのが分かる。
【0057】
(実施例4)ナノ粒子の吸収性評価
ナノ粒子の吸収性評価のためにラットを用いた吸収性評価試験を行った。
7週齢のラットに実施例1で得られたラクトアルブミンを用いたナノ粒子またはガレート型カテキン単独を投与し、1、2、3、5、7時間に尾部より採血を行って血漿を作製した。得られた血漿をGrucuronodase(Sigma社製)およびSulfatase(Sigma社製)で脱抱合を行い、LC−MSにてカテキン濃度を測定した。測定するカテキンはEGCgとECgとした。その結果、実施例1で得られたナノ粒子はガレート型カテキンに比べて体内への吸収性の向上が認められた。