(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る蓄熱ユニット20を適用された空調システム100について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。また、以下の実施形態において、上、下、左、右、正面(前)又は背面(後)といった方向は、
図2から
図6に示す方向を意味する。
【0020】
(1)空調システム100
図1は、空調システム100の概略構成図である。空調システム100は、選択された運転モードに応じて冷房運転又は暖房運転等を行う。また、空調システム100は、運転中や、電気料金の安い夜間等において、冷熱又は温熱の蓄熱を行い、蓄えた熱を利用して省エネ運転を行う。
【0021】
空調システム100は、室外ユニット(熱源側ユニット)10と、蓄熱ユニット20と、複数の室内ユニット(利用側ユニット)30と、を有している。また、空調システム100は、冷媒が循環する一次側回路110と、熱搬送媒体として採用された水(各図においてWで示す)が循環する二次側回路120と、を有している。一次側回路110は、室外ユニット10と蓄熱ユニット20とが、液冷媒配管LP及びガス冷媒配管GPで接続されることで構成されている。二次側回路120は、蓄熱ユニット20と複数の各室内ユニット30とが、第1連絡配管CP1及び第2連絡配管CP2で接続されることで構成されている。
【0022】
(1−1)室外ユニット10
室外ユニット10は、室外に設置される。室外ユニット10は、冷媒配管RPと、圧縮機11と、四路切換弁12と、室外熱交換器13と、室外ファン14と、膨張弁15と、を有している。
【0023】
冷媒配管RPは、例えば銅製の配管であり、内部を冷媒が通過する。冷媒配管RPは、第1冷媒配管RP1、第2冷媒配管RP2、第3冷媒配管RP3、第4冷媒配管RP4、第5冷媒配管RP5及び第6冷媒配管RP6を含む。
【0024】
第1冷媒配管RP1は、一端がガス冷媒配管GPに接続され、他端が四路切換弁12に接続されている。第2冷媒配管RP2は、一端が圧縮機11の吸入口に接続され、他端が四路切換弁12に接続されている。第3冷媒配管RP3は、一端が圧縮機11の吐出口に接続され、他端が四路切換弁12に接続されている。第4冷媒配管RP4は、一端が四路切換弁12に接続され、他端が室外熱交換器13のガス側に接続されている。第5冷媒配管RP5は、一端が室外熱交換器13の液側に接続され、他端が膨張弁15に接続されている。第6冷媒配管RP6は、一端が膨張弁15に接続され、他端が液冷媒配管LPに接続されている。
【0025】
圧縮機11は、低圧のガス冷媒を吸入し、圧縮して吐出する機器である。圧縮機11は、モータを内蔵した密閉式の構造を有している。また、圧縮機11は、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮機である。圧縮機11は、駆動制御部(図示省略)によって、容量可変に駆動を制御される。
【0026】
四路切換弁12は、一次側回路110における冷媒の流れる方向を切り換えるための切換弁である。四路切換弁12は、冷房運転時には、第1冷媒配管RP1と第2冷媒配管RP2とが連通するとともに、第3冷媒配管RP3と第4冷媒配管RP4とが連通するように、流路を切り換える(
図1の四路切換弁12における実線を参照)。四路切換弁12は、暖房運転時には、第1冷媒配管RP1と第3冷媒配管RP3とが連通するとともに、第2冷媒配管RP2と第4冷媒配管RP4とが連通するように、流路を切り換える(
図1の四路切換弁12における破線を参照)。
【0027】
室外熱交換器13は、例えばクロス・フィン・チューブ方式又はマイクロチャネル方式の熱交換器である。室外熱交換器13は、冷房運転時には冷媒の凝縮器(又は放熱用の熱交換器)として機能し、暖房運転時には冷媒の蒸発器として機能する。
【0028】
室外ファン14は、例えば遠心ファンである。室外ファン14は、室外ファンモータ(図示省略)の出力軸に接続されており、室外ファンモータに連動して駆動する。室外ファン14は、駆動すると、室外ユニット10の外部から内部に流入し室外熱交換器13を通過してから室外ユニット10外へ流出する空気流を生成する。
【0029】
膨張弁15は、高圧の冷媒を減圧する。膨張弁15は、例えば運転状況に応じて開度が調整される電動弁である。
【0030】
(1−2)蓄熱ユニット20
蓄熱ユニット20は、室外に設置される。蓄熱ユニット20は、冷媒が流れる第1配管MP1、第2配管MP2、複数の分岐管(第1分岐管P1〜第8分岐管P8)及び複数の伝熱管TPと、水が流れる複数の水配管WP(第1水配管WP1〜第5水配管WP5)と、を有している。また、蓄熱ユニット20は、蓄熱槽21と、蓄熱部材22と、ポンプ23と、流路切換弁24と、複数の温度センサ(図示省略)と、を有している。
【0031】
第1配管MP1は、液冷媒配管LPと接続されている。第1配管MP1からは、第1分岐管P1、第2分岐管P2、第3分岐管P3及び第4分岐管P4が延びている。
【0032】
第2配管MP2は、ガス冷媒配管GPと接続されている。第2配管MP2からは、第5分岐管P5、第6分岐管P6、第7分岐管P7及び第8分岐管P8が延びている。第5分岐管P5は第1分岐管P1と、第6分岐管P6は第2分岐管P2と、第7分岐管P7は第3分岐管P3と、第8分岐管P8は第4分岐管P4と、複数の伝熱管TP(
図2から
図4を参照)を介して、それぞれ接続されて連通している。
【0033】
第1水配管WP1は、一端が蓄熱槽21に接続され、他端が流路切換弁24に接続されている。第2水配管WP2は、一端が流路切換弁24に接続され、他端がポンプ23の吸入口に接続されている。第3水配管WP3は、一端がポンプ23の吐出口に接続され、他端が流路切換弁24に接続されている。第4水配管WP4は、一端が流路切換弁24に接続され、他端が第1連絡配管CP1に接続されている。第5水配管WP5は、一端が第2連絡配管CP2に接続され、他端が蓄熱槽21に接続されている。
【0034】
蓄熱槽21は、一次側回路110を流れる冷媒と、二次側回路120を流れる水と、が熱交換する熱交換器として機能する。また、蓄熱槽21は、一次側回路110を流れる冷媒から熱を取り出して蓄熱する蓄熱器としても機能する。蓄熱槽21は、ケーシング210(
図2から
図4を参照)の内部に、熱搬送媒体としての水(W)を所定量収容している。また、蓄熱槽21は、その内部において、第1分岐管P1、第2分岐管P2、第3分岐管P3、第4分岐管P4、第5分岐管P5、第6分岐管P6、第7分岐管P7及び第8分岐管P8の一部を収容するとともに、複数の蓄熱部材22を収容している。なお、蓄熱槽21の詳細については、後述の「(3)蓄熱槽21の詳細」において説明する。
【0035】
蓄熱部材22は、一次側回路110を流れる冷媒から熱を取り出して蓄熱する部材である。蓄熱部材22には、冷熱を蓄える第1蓄熱部材22aと、温熱を蓄える第2蓄熱部材22bと、がある。蓄熱ユニット20は、蓄熱槽21内において、複数(ここでは2つ)の第1蓄熱部材22aと、複数(ここでは2つ)の第2蓄熱部材22bと、を有している。第1蓄熱部材22aが蓄えた冷熱は、省エネ冷房モード(後述)による運転時に利用される。第2蓄熱部材22bが蓄えた温熱は、省エネ暖房モード(後述)による運転時に利用される。
【0036】
蓄熱部材22は、主として、電子相転移物質によって構成されている。ここで、電子相転移物質は、電子のもつ自由度に関する相転移である電子相転移を行う物質である。電子相転移とは、電子のもつ内部自由度である、電荷・スピン・軌道の自由度のうち、軌道の自由度又はそれら3つの自由度のうち少なくとも2以上を含む複自由度の相転移である。なお、電子相転移物質は、電子相転移の際、物質自体の原子配置がほとんど変化しないために、体積変化が起きない又は無視できるほど小さい。
【0037】
本実施形態において、第1蓄熱部材22aは、主として、V
0.977W
0.023O
2によって構成されている。V
0.977W
0.023O
2は、特許公開公報2010−163510号(以下、「公報1」と記載)にも開示されるように、スピン及び軌道に関する電子相転移を行い、その相転移温度が11℃であり、転移エンタルピが151J/ccである電子相転移物質である。第1蓄熱部材22aは、一次側回路110を流れる冷媒及び二次側回路120を流れる水と熱交換を行い、V
0.977W
0.023O
2の電子相転移に伴う潜熱を利用して冷熱を蓄熱する。なお、V
0.977W
0.023O
2の冷熱の保持能力は、公報1にも記載されているように、水と同等である。また、冷房運転に利用する冷熱を蓄える場合には、蓄熱物質としては、相転移温度が10℃以上15℃以下のものが適しており、V
0.977W
0.023O
2はこれに該当する。
【0038】
また、第2蓄熱部材22bは、主として、LiVS
2によって構成されている。LiVS
2は、公報1にも開示されるように、スピン及び軌道に関する電子相転移を行い、その相転移温度が40℃であり、転移エンタルピが58.3J/ccである電子相転移物質である。第2蓄熱部材22bは、一次側回路110を流れる冷媒及び二次側回路120を流れる水と熱交換を行い、LiVS
2の電子相転移に伴う潜熱を利用して温熱を蓄熱する。なお、第2蓄熱部材22bは、水が顕熱を利用して温熱を蓄熱する場合よりも、温熱の蓄熱量が優れている。また、暖房運転に利用する温熱を蓄える場合には、蓄熱物質としては、相転移温度が40℃以上45℃以下のものが蓄熱物質として適しており、LiVS
2はこれに該当する。
【0039】
ここで、水等を蓄熱媒体として使用する場合には、温熱の蓄熱に関しては顕熱を利用して行うため、蓄熱量が小さい。一方で、上述のように構成される第2蓄熱部材22bは、電子相転移物質の電子相転移に伴う潜熱を利用して温熱を蓄熱するため、温熱の蓄熱量に優れている。
【0040】
ポンプ23は、二次側回路120において水を循環させる。ポンプ23は、内蔵のモータ(図示省略)に駆動電圧を供給されることで駆動する。ポンプ23は、駆動時には、吸入口を介して第2水配管WP2から水を吸引し、吐出口を介して第3水配管WP3へ吐出する。
【0041】
流路切換弁24は、二次側回路120における水の流れる方向を切り換えるための切換弁であり、本実施形態では四路切換弁である。流路切換弁24は、冷房運転時には、第1水配管WP1と第2水配管WP2とが連通するとともに、第3水配管WP3と第4水配管WP4とが連通するように、流路を切り換える(
図1の流路切換弁24における実線を参照)。流路切換弁24は、暖房運転時には、第1水配管WP1と第3水配管WP3とが連通するとともに、第2水配管WP2と第4水配管WP4とが連通するように、流路を切り換える(
図1の流路切換弁24における破線を参照)。
【0042】
蓄熱槽21内に配置される複数の温度センサには、水温センサと、蓄熱温度センサと、がある。水温センサは、蓄熱槽21内において、第1水配管WP1の接続口及び第5水配管WP5の接続口の近傍にそれぞれ配置されて、水の温度を検出している。蓄熱温度センサは、各蓄熱部材22に接触するように配置されており、各蓄熱部材22の温度を検出している。各温度センサが検出した温度は、アナログ値のまま又はA/D変換されて、空調システム100のコントローラ(図示省略)に送られる。
【0043】
(1−3)室内ユニット30
室内ユニット30は、例えば、いわゆる天井埋込み型、天井吊下げ型又は壁掛け型の室内機である。室内ユニット30は、主として、室内熱交換器31、室内ファン32及び室内電動弁33等を有している。
【0044】
室内熱交換器31は、例えばクロス・フィン・チューブ方式又はマイクロチャネル方式の熱交換器である。室内熱交換器31は、冷房運転時には熱搬送媒体である水の加熱器として機能し、暖房運転時には水の放熱器として機能する。室内熱交換器31の一端は、接続配管を介して第2連絡配管CP2に接続されている。室内熱交換器31の他端は、接続配管を介して室内電動弁33に接続されている。
【0045】
室内ファン32は、室内ユニット30内に流入して室内熱交換器31を通過した後に室内ユニット30外に流出する空気流を生成する送風機である。室内ファン32は、例えば遠心ファンや多翼ファン等である。室内ファン32は、室内ファンモータ(図示省略)の出力軸に接続されており、室内ファンモータに連動して駆動する。
【0046】
室内電動弁33は、室内ユニット30の運転状況に応じて開度調整される電動弁である。室内電動弁33の一端は、接続配管を介して室内熱交換器31に接続されている。室内電動弁33の他端は、接続配管を介して第1連絡配管CP1に接続されている。
【0047】
(2)各運転モードにおける冷媒及び水の流れ
空調システム100は、運転モードとして、通常冷房モード、省エネ冷房モード、通常暖房モード、及び省エネ暖房モードを有している。
【0048】
通常冷房モードは、冷房運転の開始指示が入力された場合において、第1蓄熱部材22aに冷熱が十分に蓄えられていない時に選択される。省エネ冷房モードは、冷房運転の開始指示が入力された場合において、第1蓄熱部材22aに冷熱が十分に蓄えられている時に選択される。通常暖房モードは、暖房運転の開始指示が入力された場合において、第2蓄熱部材22bに温熱が十分に蓄えられていない時に選択される。省エネ暖房モードは、暖房運転の開始指示が入力された場合において、第2蓄熱部材22bに温熱が十分に蓄えられている時に選択される。
【0049】
以下、空調システム100の運転時における冷媒及び水の流れについて運転モード別に説明する。
【0050】
(2−1)通常冷房モード
空調システム100は、冷房運転の開始指示が入力された場合において、第1蓄熱部材22aの温度を検出する蓄熱温度センサの検出値が所定の値以上である時に、通常冷房モードに遷移する。
【0051】
通常冷房モード時には、一次側回路110において、四路切換弁12が冷房サイクル状態(
図1の実線で示される状態)に切り換えられる。圧縮機11が駆動すると、第2冷媒配管RP2を介して低圧のガス冷媒が圧縮機11に吸入され、圧縮された後に吐出される。圧縮機11から吐出された高圧のガス冷媒は、第3冷媒配管RP3、四路切換弁12、及び第4冷媒配管RP4を流れて、室外熱交換器13に流入する。
【0052】
室外熱交換器13に流入した高圧のガス冷媒は、室外ファン14が生成する空気流と熱交換を行うことで凝縮し高圧の液冷媒となって、室外熱交換器13から流出する。室外熱交換器13から流出した液冷媒は、第5冷媒配管RP5を流れる。第5冷媒配管RP5を通過した冷媒は、膨張弁15に流入して減圧される。減圧された冷媒は、第6冷媒配管RP6及び液冷媒配管LPを経て第1配管MP1に流入する。
【0053】
第1配管MP1に流入した冷媒は、その後、第1分岐管P1、第2分岐管P2、第3分岐管P3又は第4分岐管P4を通過してから、伝熱管TPを流れる際に蓄熱部材22及び蓄熱槽21内の水と熱交換して蒸発する。この際、蓄熱部材22は、冷媒から冷熱を取り出して蓄熱する。
【0054】
蒸発した冷媒は、第5分岐管P5、第6分岐管P6、第7分岐管P7又は第8分岐管P8を流れて、第2配管MP2に流入する。第2配管MP2を流れた冷媒は、ガス冷媒配管GPを経て第1冷媒配管RP1を流れ、四路切換弁12及び第2冷媒配管RP2を経て圧縮機11に吸入される。
【0055】
一方、二次側回路120において、流路切換弁24が冷房サイクル状態(
図1の実線で示される状態)に切り換えられる。ポンプ23が駆動すると、蓄熱槽21内の水は、第1水配管WP1、流路切換弁24、第2水配管WP2を経て、ポンプ23に吸引される。ポンプ23に吸引された水は、第3水配管WP3に吐出され、流路切換弁24、第4水配管WP4を経て、第1連絡配管CP1に流入する。
【0056】
第1連絡配管CP1に流入した水は、その後、室内電動弁33を経て、室内熱交換器31に流入する。室内熱交換器31に流入した水は、室内ファン32が生成した空気流と熱交換することで加熱される。室内熱交換器31から流出した水は、第2連絡配管CP2及び第5水配管WP5を通過して、蓄熱槽21に流入する。蓄熱槽21に流入した水は、主として、伝熱管TPを流れる冷媒と熱交換することで冷却されて冷水となる。
【0057】
(2−2)省エネ冷房モード
空調システム100は、冷房運転の開始指示が入力された場合において、第1蓄熱部材22aの温度を検出する蓄熱温度センサの検出値が所定の値未満である時に、省エネ冷房モードに遷移する。
【0058】
省エネ冷房モード時には、省電力を目的として、一次側回路110において、圧縮機11が、駆動されない又は低容量で駆動される。
【0059】
一方で、省エネ冷房モード時における二次側回路120における水の流れは、通常冷房モード時と同様である。但し、蓄熱槽21に流入した水が、主として蓄熱部材22と熱交換して冷却される点が、通常冷房運転モード時とは異なる。
【0060】
省エネ冷房モード時には、圧縮機11が停止又は低容量で駆動されるため、省電力が実現される。
【0061】
(2−3)通常暖房モード
空調システム100は、暖房運転の開始指示が入力された場合において、第2蓄熱部材22bの温度を検出する蓄熱温度センサの検出値が所定の値未満である時に、通常暖房モードに遷移する。
【0062】
通常暖房モード時には、四路切換弁12が暖房サイクル状態(
図1の破線で示される状態)に切り換えられる。圧縮機11が駆動すると、第2冷媒配管RP2を介して低圧のガス冷媒が圧縮機11に吸入され、圧縮された後に吐出される。圧縮機11から吐出された高圧のガス冷媒は、第3冷媒配管RP3、四路切換弁12、第1冷媒配管RP1、及びガス冷媒配管GPを流れて、第2配管MP2に流入する。
【0063】
第2配管MP2に流入した冷媒は、その後、第5分岐管P5、第6分岐管P6、第7分岐管P7又は第8分岐管P8を通過してから、伝熱管TPを流れる際に蓄熱部材22及び蓄熱槽21内の水と熱交換して凝縮する。この際、蓄熱部材22は、冷媒から温熱を取り出して蓄熱する。
【0064】
凝縮した冷媒は、第1分岐管P1、第2分岐管P2、第3分岐管P3又は第4分岐管P4を流れて、第1配管MP1に流入する。第1配管MP1を流れた冷媒は、液冷媒配管LPを経て第6冷媒配管RP6を流れる。第6冷媒配管RP6を通過した冷媒は、膨張弁15に流入して減圧される。減圧された冷媒は、第5冷媒配管RP5を流れて、室外熱交換器13に流入する。
【0065】
室外熱交換器13に流入した液冷媒は、室外ファン14が生成する空気流と熱交換を行うことで蒸発しガス冷媒となって、室外熱交換器13から流出する。室外熱交換器13から流出したガス冷媒は、第4冷媒配管RP4、四路切換弁12及び第2冷媒配管RP2を経て圧縮機11に吸入される。
【0066】
一方、二次側回路120において、流路切換弁24が暖房サイクル状態(
図1の破線で示される状態)に切り換えられる。ポンプ23が駆動すると、蓄熱槽21内の水は、第5水配管WP5を経て、第2連絡配管CP2を通過し、室内熱交換器31に流入する。室内熱交換器31に流入した水は、室内ファン32が生成した空気流と熱交換することで冷却される。室内熱交換器31から流出した水は、室内電動弁33、第1連絡配管CP1、第4水配管WP4及び流路切換弁24を経て、ポンプ23に吸引される。ポンプ23に吸引された水は、第3水配管WP3に吐出され、流路切換弁24及び第1水配管WP1を流れて、蓄熱槽21に流入する。蓄熱槽21に流入した水は、主として伝熱管TPを流れる冷媒と熱交換することで加熱されて温水となる。
【0067】
(2−4)省エネ暖房モード
空調システム100は、暖房運転の開始指示が入力された場合において、第2蓄熱部材22bの温度を検出する蓄熱温度センサの検出値が所定の値以上である時に、省エネ暖房モードに遷移する。
【0068】
省エネ暖房モード時には、省電力を目的として、一次側回路110において、圧縮機11が、駆動されない又は低容量で駆動される。
【0069】
一方で、省エネ暖房モード時における二次側回路120における水の流れは、通常暖房モード時と同様である。但し、蓄熱槽21に流入した水が、主として蓄熱部材22と熱交換して加熱される点が、通常暖房運転モード時とは異なる。
【0070】
省エネ暖房モード時には、圧縮機11が停止又は低容量で駆動されるため、省電力が実現される。
【0071】
(3)蓄熱槽21の詳細
図2は、蓄熱槽21の斜視図である。
図3は、
図2のIII-III線断面図である。
図4は、
図2のIV-IV線断面図である。
【0072】
蓄熱槽21は、直方体状のケーシング210を有している。ケーシング210は、天面を構成する天井部211と、天面部分以外を構成する本体部212と、を含む。本体部212の背面には、8本の分岐管(第1分岐管P1〜第8分岐管P8)を通すための貫通口が形成されている。また、本体部212の左側面の下部には第1水配管WP1を接続するための接続口が形成されており、本体部212の右側面の上部には第5水配管WP5を接続するための接続口が形成されている。
【0073】
ケーシング210内には、所定量の水(W)が収容されている。また、ケーシング210内には、天井部211近傍において、8本の分岐管(第1分岐管P1〜第8分岐管P8)が、貫通口から前方向に延びるように配置されている。
【0074】
ケーシング210内において、第1分岐管P1と第5分岐管P5、第2分岐管P2と第6分岐管P6、第3分岐管P3と第7分岐管P7、第4分岐管P4と第8分岐管P8が、それぞれ、4本の伝熱管TPで接続されている。
【0075】
各伝熱管TPは、鉛直方向に延びる第1鉛直部41と、鉛直方向に延びる第2鉛直部42と、第1鉛直部41の下端部分及び第2鉛直部42の下端部分を接続する折返部43と、を有している。折返部43は、正面視においてU字状に湾曲しており、本体部212の底面付近に位置する。
【0076】
ケーシング210の内部には、ブロック状(直方体状)に成形された4つの蓄熱部材22が、所定の間隔を置いて左右方向に並ぶように配置されている。具体的に、ケーシング210内の左側に2つの第1蓄熱部材22aが配置され、右側に2つの第2蓄熱部材22bが配置されている。各蓄熱部材22は、ケーシング210内において、長手寸法が各分岐管の長手方向(前後方向)に沿って延び、厚み寸法が左右方向に沿って延びている。蓄熱部材22には、固定具221が取り付けられており、固定具221を介してケーシング210に固定されている。
【0077】
各蓄熱部材22は、分岐管よりも下方において、2本の分岐管を接続する4本の伝熱管TPに囲われるように配置されている。具体的に、第1蓄熱部材22aは、第3分岐管P3と第7分岐管P7を接続する4本の伝熱管TP、又は第4分岐管P4と第8分岐管P8を接続する4本の伝熱管TPに囲われている。また、第2蓄熱部材22bは、第1分岐管P1と第5分岐管P5を接続する4本の伝熱管TP、又は第2分岐管P2と第6分岐管P6を接続する4本の伝熱管TPに囲われている。
【0078】
各蓄熱部材22は、
図3に示すように、正面視において、伝熱管TPの折返部43の上方に位置し、第1鉛直部41及び第2鉛直部42に挟まれている。また、各蓄熱部材22は、
図4に示すように、側面視において、4本の伝熱管TPと交差するように配置されている。
【0079】
蓄熱部材22は、分岐管及び伝熱管TPを流れる冷媒との熱交換が促進されるように、分岐管及び伝熱管TPに近接している。なお、蓄熱部材22は、ブロック状に成形されているため、蓄熱槽21において分岐管や伝熱管TPに近接配置しやすくなっている。
【0080】
蓄熱槽21では、ケーシング210内において、各分岐管(P1〜P8)、各伝熱管TP及び各蓄熱部材22のそれぞれの最上部分が、水面よりも下方に位置している。すなわち、各分岐管(P1〜P8)、各伝熱管TP及び各蓄熱部材22は、水との熱交換が促進されるように水中に位置している。
【0081】
ここで、蓄熱槽21の組立て及び蓄熱ユニット20の据付けの際には、例えば、以下の手順で行われる。なお、以下の手順は一例であり、適宜変更が可能である。
【0082】
まず、伝熱管TPで接続された、第1分岐管P1と第2分岐管P2、第3分岐管P3と第4分岐管P4、第5分岐管P5と第6分岐管P6、及び第7分岐管P7と第8分岐管P8、を本体部212内に配置し、各分岐管を、貫通孔を介してケーシング210の本体部212の背面部分から延出させる。次に、蓄熱槽21を蓄熱ユニット20の本体ケーシング(図示省略)内に配置し、各分岐管を第1配管MP1及び第2配管MP2と接続する。
また、第1水配管WP1及び第5水配管WP5を、接続口を介して本体部212に接続する。その後、蓄熱部材22を、本体部212内に配置して、固定具221等を介して本体部212に固定する。そして、本体部212内に所定量の水を収容した後、天井部211を取り付ける。
【0083】
このような手順で蓄熱槽21の組立て及び蓄熱ユニット20の据付けを行うことで、蓄熱部材22の質量が大きい場合でも、組立て及び据付けが容易である。また、蓄熱部材22を有していない既存の蓄熱ユニットに、新たに蓄熱部材22を据え付けることも容易である。
【0084】
(4)特徴
(4−1)
上記実施形態では、蓄熱部材22は、電子のもつ自由度に関する相転移である電子相転移を行う物質である電子相転移物質を含んでいる。これにより、蓄熱ユニット20では、電子相転移物質の電子相転移に伴う潜熱を利用した蓄熱が行われる。このため、蓄熱槽21の設計において、蓄熱部材22の相転移時における体積変化を考慮する必要がなくなっており、バッファータンク等の容器を設置する必要もなくなっている。また、蓄熱ユニット20では、電子相転移に伴う潜熱を利用して冷熱及び温熱双方の蓄熱がなされている。このため、蓄熱量に優れている。
【0085】
(4−2)
上記実施形態では、蓄熱槽21には、蓄熱部材22と熱交換を行う熱搬送媒体である水が収容されており、水が流れる第1水配管WP1及び第5水配管WP5が接続されている。これにより、既存の蓄熱装置にも適用可能となっている。その結果、既存の蓄熱装置において冷熱及び/又は温熱の蓄熱量を向上することが可能である。
【0086】
(4−3)
上記実施形態では、蓄熱部材22は、ブロック状に成形されている。これにより、蓄熱槽21において、蓄熱部材22を、冷媒が流れる分岐管や伝熱管TPに近接配置しやすくなっている。
【0087】
(4−4)
上記実施形態では、第1蓄熱部材22aに含まれる電子相転移物質は、相転移温度が10℃以上15℃以下である。これにより、蓄えた冷熱を利用して冷房運転を行う空気調和機に適用しやすいようになっている。
【0088】
(4−5)
上記実施形態では、第2蓄熱部材22bに含まれる電子相転移物質は、相転移温度が40℃以上45℃以下である。これにより、蓄えた温熱を利用して暖房運転を行う空気調和機に適用しやすいようになっている。
【0089】
(5)変形例
(5−1)変形例A
上記実施形態では、空調システム100は、1台の室外ユニット10と、1台の蓄熱ユニット20と、複数台の室内ユニット30と、を有していた。しかし、室外ユニット10、蓄熱ユニット20、又は室内ユニット30の台数は、特定の数には限定されない。例えば、室外ユニット10及び/又は蓄熱ユニット20は、2台以上あってもよい。また、室内ユニット30は、1台のみであってもよい。
【0090】
(5−2)変形例B
上記実施形態では、蓄熱ユニット20は、2つの回路(一次側回路110及び二次側回路120)を有する空調システム100に適用された。しかし、本発明は、3つ以上の回路を有する装置に適用されてもよい。また、本発明は、1つの回路のみを有する装置に適用されてもよい。
【0091】
(5−3)変形例C
上記実施形態では、空調システム100の二次側回路120を流れる熱搬送媒体として水が採用されていた。しかし、二次側回路120を流れる熱搬送媒体は、水に限定されず、他の冷媒や流体であってもよい。
【0092】
(5−4)変形例D
上記実施形態では、蓄熱ユニット20において、分岐管(P1〜P8)は、8本配設されていた。しかし、分岐管の数は、特にこれに限定されず、8本より多くても少なくてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、蓄熱ユニット20において、2本の分岐管が、4本の伝熱管TPで接続されていた。しかし、これに限定されず、2本の分岐管を接続する伝熱管TPは、4本より多くても少なくてもよい。
【0094】
(5−5)変形例E
上記実施形態では、蓄熱ユニット20は、4つの蓄熱部材22を有していた。しかし、これに限定されず、蓄熱ユニット20は、蓄熱槽21内に、5つ以上の蓄熱部材22を有していてもよく、4つ未満の蓄熱部材22を有していてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、蓄熱ユニット20が有する4つの蓄熱部材22のうち、2つは第1蓄熱部材22aで、他の2つは第2蓄熱部材22bであった。しかし、第1蓄熱部材22a及び第2蓄熱部材22bの数は、特定の数に限定されず、3つ以上あってもよいし、1つでもよい。また、第1蓄熱部材22a及び第2蓄熱部材22bの数を、必ずしも同数とする必要はない。例えば、温熱よりも冷熱のほうを多く蓄えることが必要な場合等には、第1蓄熱部材22aを第2蓄熱部材22bよりも多く配置してもよい。一方で、冷熱よりも温熱のほうを多く蓄えることが必要な場合等には、第2蓄熱部材22bを第1蓄熱部材22aよりも多く配置してもよい。
【0096】
また、蓄熱ユニット20は、第1蓄熱部材22a及び第2蓄熱部材22bの双方を必ずしも有する必要はなく、第1蓄熱部材22a及び第2蓄熱部材22bの一方のみを有するようにしてもよい。
【0097】
(5−6)変形例F
上記実施形態では、第1蓄熱部材22aは、主として、V
0.977W
0.023O
2で構成されていた。しかし、これに限定されず、第1蓄熱部材22aは、他の電子相転移物質で構成されてもよい。例えば、第1蓄熱部材22aは、TbBaFe
2O
5で構成されてもよい。TbBaFe
2O
5は、公報1に開示されるように、電荷及び軌道に関する電子相転移を行い、その相転移温度が12.1℃であり、転移エンタルピが34.7J/ccである電子相転移物質である。このようなTbBaFe
2O
5で第1蓄熱部材22aを構成した場合でも、冷熱を蓄え、蓄えた冷熱を利用して冷房を行うことが可能である。
【0098】
(5−7)変形例G
上記実施形態では、第2蓄熱部材22bは、主として、LiVS
2で構成されていた。しかし、これに限定されず、第2蓄熱部材22bは、他の電子相転移物質で構成されてもよい。例えば、第2蓄熱部材22bは、DyBaCo
2O
5.54で構成されてもよい。DyBaCo
2O
5.54は、公報1に開示されるように、電荷及び軌道に関する電子相転移を行い、その相転移温度が44.9℃であり、転移エンタルピが52.4J/ccである電子相転移物質である。このようなDyBaCo
2O
5.54で第2蓄熱部材22bを構成した場合でも、温熱を蓄え、蓄えた温熱を利用して暖房を行うことが可能である。
【0099】
(5−8)変形例H
上記実施形態では、蓄熱ユニット20は、空調システム100に適用された。しかし、蓄熱ユニット20は、他のシステムや装置にも適用可能である。特に、相転移温度が1℃以上100℃未満である電子相転移物資で蓄熱部材22を構成することにより、保温器、冷水器、給湯器等の他の冷凍装置に適用することが可能である。
【0100】
例えば、蓄熱ユニット20は、相転移温度が0℃以上10℃未満又は16℃以上30℃未満の電子相転移物資で第1蓄熱部材22aを構成されることで、蓄えた冷熱を利用して対象物や対象空間の保温や冷却等を行う保温器や冷水器等に適用可能である。係る場合、LiMn
2O
4(相転移温度21℃、転移エンタルピ37.2J/cc)や、DyBaFe
2O
5(相転移温度20.5℃、転移エンタルピ34.7J/cc)や、HoBaFe
2O
5(相転移温度22.87℃、転移エンタルピ35.6J/cc)や、YBaCo
2O
5.49(相転移温度24.1℃、転移エンタルピ41.6J/cc)等の電子相転移物質で、第1蓄熱部材22aを構成すればよい。
【0101】
また、蓄熱ユニット20は、相転移温度が30℃以上40℃未満又は46℃以上の電子相転移物資で第2蓄熱部材22bを構成されることで、蓄えた温熱を利用して対象物や対象空間の保温や加熱等を行う保温器や給湯器等に適用可能である。係る場合、YBaFe
2O
5(相転移温度36.5℃、転移エンタルピ37.2J/cc)や、HoBaCo
2O
5.48(相転移温度30.8℃、転移エンタルピ66J/cc)や、PrBaCo
2O
5.5(相転移温度70.6℃、転移エンタルピ69.9J/cc)等の電子相転移物質で、第2蓄熱部材22bを構成すればよい。
【0102】
(5−9)変形例I
上記実施形態では、蓄熱部材22は、上述のように、蓄熱槽21内において
図2から
図4に示すような態様で配置されていた。しかし、蓄熱部材22は、
図5及び
図6に示すような態様で設置されてもよい。
【0103】
図5及び
図6では、ケーシング210内において、4つの蓄熱部材22が、所定の間隔を置いて前後方向に並ぶように配置されている。具体的に、ケーシング210内の前側に2つの第1蓄熱部材22aが配置され、後側に2つの第2蓄熱部材22bが配置されている。各蓄熱部材22は、ケーシング210内において、長手寸法が各分岐管の長手方向(前後方向)と交差する方向(左右方向)に沿って延び、厚み寸法が前後方向に沿って延びている。各蓄熱部材22は、分岐管よりも下方において、伝熱管TPに隣接している。
【0104】
なお、
図2から
図6において、蓄熱部材22の配置態様は、分岐管や伝熱管TPの配置態様に応じて適宜変更が可能である。例えば、蓄熱部材22は、第1蓄熱部材22aと第2蓄熱部材22bの配置位置を互いに入れ換えて配置されてもよい。また、蓄熱部材22は、第1蓄熱部材22aと第2蓄熱部材22bとが交互に並ぶように配置されてもよい。また、一部の蓄熱部材22は長手寸法が前後方向に延びるように配置される一方で、他の蓄熱部材22は長手寸法が左右方向又は上下方向に延びるように配置されてもよい。また、一部の蓄熱部材22は、厚み寸法が左右方向に延びる一方で、他の蓄熱部材22は、厚み寸法が前後方向又は上下方向に延びるように配置されてもよい。また、一部の蓄熱部材22が配置される高さと、他の蓄熱部材22が配置される高さと、が異なってもよい。
【0105】
(5−10)変形例J
上記実施形態では、蓄熱部材22は、ブロック状に成形されていた。しかし、これに限定されず、蓄熱部材22は、どのような形状に成形されてもよい。例えば、蓄熱部材22は、板状に成形して軽量化を図ってもよい。また、蓄熱部材22は、蓄熱槽21内において、分岐管や伝熱管TP等にさらに近接配置しやすいように、他の適当な形状に成形されてもよい。
【0106】
(5−11)変形例K
上記実施形態では、蓄熱部材22は、固定具221を介して、蓄熱槽21の本体部212内に固定されていた。しかし、これに限定されず、蓄熱部材22は、他の適当な方法で本体部212に固定されてもよい。
【0107】
(5−12)変形例L
上記実施形態では、蓄熱槽21は、水面がケーシング210外の大気に開放されていない、いわゆる密閉式のものが採用された。しかし、これに限定されず、蓄熱槽21は、水面がケーシング210外の大気に開放されている、いわゆる開放式のものを採用されてもよい。係る場合においても、電子相転移に伴う潜熱を利用して冷熱及び温熱双方の蓄熱が可能となるため、蓄熱量に優れる。