特許第6394179号(P6394179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394179
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】塗布具
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   A45D34/04 510A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-170522(P2014-170522)
(22)【出願日】2014年8月25日
(65)【公開番号】特開2016-43113(P2016-43113A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宮 公江
(72)【発明者】
【氏名】高城 栄政
(72)【発明者】
【氏名】成田 行人
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−508086(JP,A)
【文献】 特開2003−189928(JP,A)
【文献】 特開平11−222274(JP,A)
【文献】 特開2006−326320(JP,A)
【文献】 特開2004−057693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の把持部と塗布体とを有する塗布具であって、
塗布体が、把持部の一端から突出した芯部材と、芯部材を覆う弾性樹脂で形成された表面部材とを備え、
表面部材の縁辺と当接する把持部の横断面の中心を基点とした場合に、基点と表面部材の先端部とを結ぶ線(以下、表面部材の突出軸という)の方向が把持部の長手方向に対して傾き、基点と芯部材の先端部とを結ぶ線(以下、芯部材の突出軸という)の方向と表面部材の突出軸の方向とが異なり、
把持部の長手方向と平行で、表面部材の突出軸を含む面による塗布具の切断面において、芯部材の突出軸と把持部の長手方向とのなす角度が、表面部材の突出軸と把持部の長手方向とのなす角度よりも開いている塗布具。
【請求項2】
棒状の把持部と塗布体とを有する塗布具であって、
塗布体が、把持部の一端から突出した芯部材と、芯部材を覆う弾性樹脂で形成された表面部材とを備え、
表面部材の縁辺と当接する把持部の横断面の中心を基点とした場合に、基点と表面部材の先端部とを結ぶ線(以下、表面部材の突出軸という)の方向が把持部の長手方向に対して傾き、基点と芯部材の先端部とを結ぶ線(以下、芯部材の突出軸という)の方向と表面部材の突出軸の方向とが異なり、
把持部の長手方向と平行で、表面部材の突出軸を含む面による塗布具の切断面において、芯部材の突出軸と把持部の長手方向とのなす角度が、表面部材の突出軸と把持部の長手方向とのなす角度よりも小さい塗布具。
【請求項3】
表面部材の突出軸と直交する面で表面部材を切断した場合に、外形が扁平形状となる切断面を有する請求項1又は2記載の塗布具。
【請求項4】
把持部の長手方向と平行で、表面部材の突出軸を含む面による塗布具の切断面において、表面部材の突出軸と把持部の長手方向とのなす角度が5〜60°である請求項1〜3のいずれかに記載の塗布具。
【請求項5】
把持部の長手方向と平行で、表面部材の突出軸を含む面による塗布具の切断面において、芯部材の突出軸と、表面部材の突出軸とがなす角度θが、45°以下である請求項1〜のいずれかに記載の塗布具。
【請求項6】
表面部材が非多孔質材料で形成されている請求項1〜のいずれかに記載の塗布具。
【請求項7】
表面部材が中空である請求項1〜のいずれかに記載の塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌に化粧料等を塗布するための塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーム状又はゲル状の化粧料を顔等に塗布するための塗布具として、把持体の一端に楕円の平板からなる基板を把持体の長手方向に延設し、その基板の片面にシリコーンの中空体で形成された塗布体を設け、基板の他面にシリコーンの中実体で形成された塗布体を設けたものが知られている(特許文献1)。この塗布具によれば、シリコーンの中実体で形成された塗布体では化粧料を顔等に強く擦り込むことができ、シリコーンの中空体で形成された塗布体では化粧料を顔面にうっすらと塗布することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−57693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この塗布具を用いて化粧料を塗布する場合、被塗布面に対して基板の平板面が平行になる向きで把持体を持つことが必要となるが、基板の長軸方向と把持体の長手方向が同じ方向であるため、化粧料を塗布する顔の部位によっては、被塗布面に対して基板の平板面が平行になるように把持体を持つことは持ちづらく、使いにくいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、化粧料を擦り込むことも、薄く延ばすことも、どの部位の被塗布面に対しても容易に行うことのできる、使い勝手の良い塗布具の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、把持部とその一端から突出した塗布体とを備えた塗布具において、塗布体を弾性樹脂で形成した表面部材とその内側の芯部材の二重構造とした場合に、表面部材の突出方向を把持部の長手方向に対して傾け、さらに芯部材の突出方向と表面部材の突出方向とを異ならせると、化粧料を擦り込むことも、薄く延ばすことも容易になることを見出し、本発明を想到した。
【0007】
即ち、本発明は、棒状の把持部と塗布体とを有する塗布具であって、
塗布体が、把持部の一端から突出した芯部材と、芯部材を覆う弾性樹脂で形成された表面部材とを備え、
表面部材の縁辺と当接する把持部の横断面の中心を基点とした場合に、基点と表面部材の先端部とを結ぶ線(以下、表面部材の突出軸という)の方向が把持部の長手方向に対して傾き、基点と芯部材の先端部とを結ぶ線(以下、芯部材の突出軸という)の方向と表面部材の突出軸の方向とが異なる塗布具を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗布具によれば、塗布体の表面部材の突出軸の方向が把持部材の長手方向に対して傾いているので、使用者は、塗布体の先端部を利用して小鼻等の狭い領域に化粧料を塗布することも、塗布体の周面部を利用して頬などの広い領域に化粧料を塗布することも容易となる。さらに、被塗布面に化粧料を強く押し込し込む短いストロークで塗布することも、化粧料を軽く伸ばす長いストロークで塗布することも、容易となる。
【0009】
また、芯部材の突出軸の方向と表面部材の突出軸の方向が同一方向ではないため、芯部材の硬さを利用して化粧料をすくい取ったり、化粧料を毛穴などに押し込んだりすることが容易となり、表面部材の弾性を利用して化粧料を被塗布面で薄く延ばすことが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、実施例の塗布具1Aの斜視図である。
図1B図1Bは、実施例の塗布具1Aの上面図である。
図1C図1Cは、実施例の塗布具1Aの断面図である。
図1D図1Dは、実施例の塗布具1Aの断面図である。
図2図2は、実施例の塗布具1Aの構成部品の斜視図である。
図3A図3Aは、実施例の塗布具1Aの使用方法の説明図である。
図3B図3Bは、実施例の塗布具1Aの使用方法の説明図である。
図3C図3Cは、実施例の塗布具1Aの使用方法の説明図である。
図4A図4Aは、実施例の塗布具1Aの使用方法の説明図である。
図4B図4Bは、実施例の塗布具1Aの使用方法の説明図である。
図5図5は、実施例の塗布具1Bの断面図である。
図6図6は、実施例の塗布具1Cの断面図である。
図7図7は、実施例の塗布部1Cの使用方法の説明図である。
図8A図8Aは、実施例の塗布具1Dの斜視図である。
図8B図8Bは、実施例の塗布具1Dの断面図である。
図9図9は、実施例の塗布具1Eの構成部品の斜視図である。
図10図10は、実施例の塗布具1Fの構成部品の斜視図である。
図11A図11Aは、実施例の塗布具1Gの構成部品の斜視図である。
図11B図11Bは、実施例の塗布具1Gの構成部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0012】
図1Aは、本発明の一実施例の塗布具1Aの斜視図、図1Bはその上面図、図1C図1BのA−A断面図、図1D図1B及び図1CのB−B断面図である。
【0013】
<全体構成>
この塗布具1Aは、棒状の把持部2と塗布体3を有する。塗布体3は、把持部2の一端から突出した芯部材4とこの芯部材4を覆う中空の表面部材5で形成されている。したがって、芯部材4と表面部材5との間には空隙が形成されている。
【0014】
この塗布具1Aは、図1Bに示すように、上面視で左右対称に形成され、その中心線上に表面部材5の先端部と芯部材4の先端部が位置している。一方、側面視では、芯部材4と表面部材5は、それぞれ把持部2の長手方向D2に対して斜めに突出しており、後述するように、これらの突出方向が異なっている。なお、本発明において把持部2の長手方向とは、把持部2の塗布体側端部の上面視及び側面視における中心と、塗布体と反対側端部の上面視及び側面視における中心を結ぶ方向をいう。また、本発明において把持部の横断面とは把持部の長手方向に垂直な把持部の断面をいい、横断面の中心とは横断面の図心を言う。
【0015】
塗布具1Aの大きさに関し、上面視における塗布体3の幅L1は、好ましくは10mm以上40mm以下、塗布体3の長さL2は、好ましくは10mm以上50mm以下、把持部2の長さL3は、好ましくは30mm以上150mm以下である。このように、塗布体3の大きさを、大凡親指の第1関節から先の先端部と同等又それ以上とすることにより、小鼻のまわりのように狭い空間だけでなく、頬のように広い面積にも化粧料等を塗布することが容易になる。
【0016】
<把持部>
把持部2は、その両端部に対して中央部が細径に成形されている。また、塗布体3側の端部の径は、それと反対側の端部の径よりも大きくなっている。
【0017】
<芯部材>
芯部材4は、把持部2の平坦な端面から斜めに突出する錐台形状に成形されている。図1Cに示すように、錐台形状の底面(即ち、芯部材4の基面4a)の中心4aoは、把持部2の塗布体側端面の中心2boと重なっている。
【0018】
芯部材4の基面4aの好ましい形状としては、長軸Laと短軸Lbとの比を1<La/Lb≦10とすることが好ましく、1.5≦La/Lb≦5であることが更に好ましい。また、その形状は、楕円形、矩形等をあげることができる。
【0019】
また、芯部材4の突出軸D4と直交する面で芯部材4を、その基面4aより先端部4t側で切断した場合の切断面は、芯部材4の基面4aよりもさらに扁平な形状となっており、芯部材4は全体として扁平なへら型になっている。なお、本発明において、芯部材4の外形はヘラ型に限らず、例えば、円柱状にしてもよい。
【0020】
図2に示すように、把持部2と芯部材4は一体成型品となっており、これらは表面部材5よりも硬質の材料で形成される。具体的には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミドABS樹脂等の硬質樹脂、ゴム、金属、セラミック、木材等をあげることができる。
【0021】
なお、把持部2と芯部材4とは、一体成型で形成されていなくてもよく、別材から形成されていてもよい。例えば、把持部2と芯部材4とを別途成形して接着剤で連結したり、インサート成形により把持部2の内部に芯部材4が挿入されたりしてもよい。
【0022】
<表面部材>
表面部材5は、外形が扁平な釣鐘型をしており、後述する突出軸D5と直交する面で表面部材5を切断した場合に、外形が扁平形状となる切断面を有する。表面部材5の外形を扁平とすることにより、表面部材5で化粧料を被塗布面に塗布するにあたり、表面部材の広幅の面を使用すると、化粧料を広い塗布面に均一に塗布することが容易となり、表面部材5の幅狭の面を使用すると、狭い被塗布面に塗布することが容易となり、被塗布面の広狭に応じて被塗布面に当てる表面部材5の向きを使い分けることができる。
特に本実施例のように表面部材5の外形を釣鐘型とする場合、突出軸D5の中央部を通る切断面の外形について、長軸と短軸との比を芯部材4の長軸と短軸との比よりも小さくすることが好ましい。
【0023】
表面部材5は弾性樹脂で形成され、好ましくは、JIS K6253にしたがって測定されるタイプAデュロメータ硬度が0〜80の軟質樹脂とし、更に好ましくは同硬度が0〜50の軟質樹脂である。なお、前記デュロメータ硬度は、JIS K6253の規定に従い、表面部材5を形成する材料で作られた厚み6mmのシート状試験片を用いて測定する。
【0024】
また、表面部材5を形成する弾性樹脂は、当該表面部材5で塗布する化粧料等が浸透しない非多孔質のものが好ましい。
【0025】
このような弾性樹脂としては、例えば、シリコーンゴム、エラストマー樹脂等をあげることができ、成形性の点からエラストマー樹脂であることが好ましい。エラストマー樹脂としては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0026】
図示したように表面部材5を中空に形成する場合、その厚みは、例えば0.05〜3mmとすることができる。表面部材5の厚みは、部分的に変えてもよい。例えば、表面部材5の先端部5t及びその近傍の厚みを厚くし、表面部材5の縁辺5a近傍の厚みを薄くすることにより、薄い部分で塗布部全体がたわみやすくなるので、肌へのフィット感が増す。
【0027】
化粧料等の塗り伸ばし性を向上させるため、表面部材5の表面にシボ様の細かい凹凸を形成してもよい。このような表面凹凸を表面部材5に形成する方法としては、例えば、金型を用いて表面部材5を製造する場合に、その金型の表面に、番手が♯24程度のシボを形成しておくのが好ましい。
【0028】
<表面部材と芯部材の突出方向>
芯部材4と表面部材5の突出方向に関し、図1Dに示すように、表面部材5の縁辺5aと当接する把持部2の横断面(即ち、把持部2の長手方向D2と直交し、表面部材5の縁辺5aと当接する平面で把持部2を切断した場合の切断面)2aの中心を基点2aoとした場合に、基点2aoと表面部材5の先端部5tとを結ぶ線(即ち、表面部材5の突出軸D5)の方向が、把持部2の長手方向D2に対して傾いている。また、基点2aoと芯部材4の先端部4tとを結ぶ線(即ち、芯部材4の突出軸D4)の方向と表面部材の突出軸D5の方向とが異なっている。
【0029】
ここで、表面部材5の縁辺5aとは、表面部材5の外形の把持部側端部の縁をいう。
芯部材4および表面部材5の突出方向は、芯部材4および表面部材5の把持部2側からそれぞれの先端部4t、5tに向う方向である。
【0030】
表面部材5の先端部5tとは、基点2aoから最も距離の離れた表面部材5上の点をいい、芯部材4の先端部4tとは、基点2aoから最も距離の離れた芯部材4上の点である。
【0031】
一方、図1Dは、把持部2の長手方向D2と平行で、表面部材5の突出軸D5を含む面で塗布具1Aを切断した場合の断面図となっている。
【0032】
肌への塗布面の接触のしやすさの点から、この断面図において、表面部材5の突出軸D5の方向と把持部2の長手方向D2とがなす角度θ1を、5°以上60°以下とすることが好ましく、特に20°以上45°以下とすることが好ましい。
【0033】
また、この断面図において、芯部材4の突出軸D4の方向と表面部材5の突出軸D5の方向とがなす角度θ2は、化粧料などの塗布剤を肌等の被塗布面上で伸ばしながら、被塗布面の表面凹凸に埋めこむ点から、45°以下とすることが好ましく、特に30°以下とすることが好ましい。また被塗布面上で塗布剤をこそぎ落とすことなく、塗布剤に適切な厚みを確保しながら塗布剤を被塗布面上に塗り広げる点から、角度θ2は、3°以上とすることが好ましく、特に5°以上とすることが好ましい。
【0034】
本実施例の塗布具1Aでは、図1Dに示すように、芯部材4の突出軸D4の方向と把持部2の長手方向D2とのなす角θ3が、表面部材5の突出軸D5の方向と把持部2の長手方向D2とのなす角θ1よりも開いた角度になっている。そのため、芯部材4と表面部材5との間隙の大きさは、芯部材4上の点と基点2aoとを結ぶ線と把持部材2の長手方向D2とのなす角度が前記角度θ3よりも開く領域では、閉じる領域に対して小さくなっている。
【0035】
なお、芯部材4の先端部4tと表面部材5との距離は、好ましくは0mm以上10mm以下、より好ましくは8mm以下であり、先端部4t以外の部位における芯部材4と表面部材5との間隙は1mm以上10mm以下が好ましい。
【0036】
図1Dにおいて、表面部材5の表面上の点と基点2aoとを結ぶ線と把持部材2の長手方向D2とのなす角度がθ1より大きい部分を塗布体3の上面側とし、小さい部分を塗布体3の背面側とした場合に、この塗布具1Aによれば、上述のように芯部材4の突出軸D4の方向と、表面部材5の突出軸D5の方向とを異ならせ、それにより、芯部材4と表面部材5との間隙の大きさが塗布体3の上面側と背面側で異なり、また、表面部材5を弾性樹脂で形成し、芯部材4をそれよりも硬質の材料で形成することにより、図3Aに示すように、肌Sに化粧料Aを塗布する場合に、まず、表面部材5の柔軟性を利用して化粧料Aの塊を徐々に潰すようにして肌Sに延ばし、次に図3Bに示すように、芯部材4の硬さも利用して化粧料を毛穴、ニキビ跡等のくぼみSpに埋め込む。これにより、図3Cに示すようにくぼみSpに化粧料Aを埋め込むと共に、その周囲にも均一に薄く化粧料Aの塗膜を形成することができ、くぼみSpを目立たなくすることができる。
【0037】
また、この塗布具1Aによれば、表面部材5の突出軸D5の方向が把持部2の長手方向D2に対して傾いているので、塗布体3の先端部で化粧料Aを叩き込むようにして塗布することが容易となる。その際、図4Aに示すように、まず、柔軟な表面部材5で化粧料Aを肌Sに叩き込むことにより化粧料AをくぼみSpの周りに広げ、次いで図4Bに示すように、芯部材4の硬さを利用して、くぼみSpに化粧料Aを叩き込むように化粧料Aを延ばす。これにより、表面部材5の先端を使うので、小鼻のまわり程度の狭い程度の狭い領域にあるくぼみSpにも化粧料Aを埋め込むと共に、その周囲の肌Sに化粧料Aを薄く塗布することができる。
【0038】
<変形態様>
本発明の塗布具は、種々の態様をとることができる。
例えば、図5に示した塗布具1Bは、上述の塗布具1Aにおいて、芯部材4の基面4aの中心4aoと把持部2の塗布体側端面の中心2boとがずれ、把持部2の塗布体側端面の中心2boから表面部材5の先端部5tに向かう方向D5’と、芯部材4の基面4aの中心4aoから芯部材4の先端部4tに向かう方向D4’が平行になっている。
この塗布部1Bも、表面部材5の突出軸D5の方向と芯部材4の突出軸D4の方向とが異なっており、上述の塗布具1Aと同様に使用することができる。
【0039】
図6に示した塗布具1Cは、上述の塗布具1Aにおいて、芯部材4の突出軸D4の方向と把持部材2の長手方向D2とのなす角θ3を、表面部材5の突出軸の方向D5と把持部2の長手方向D2とのなす角度θ1よりも小さくしたものである。この態様においても、芯部材4の突出軸D4の方向と表面部材5の突出軸D5の方向が異なっているので、上述の塗布具1Aと同様に使用することができる。特に、この塗布具1Cによれば、図7に示すように、肌に対して塗布体3の先端部を当てるように使用すると、肌に当たる部分で表面部材5と芯部材4との間隙が広く、表面部材5の変形量が大きくなるので、柔らかい感触を得ることができる。また、図4A図4Cに示したように化粧料を叩き込むようにして肌に押し広げることが容易となる。
【0040】
図8A及び図8Bに示した塗布具1Dは、上述の塗布具1Aにおいて、芯部材4の突出軸D4の方向と把持部材2の長手方向D2とのなす角θ3を、表面部材5の突出軸D5の方向と把持部2の長手方向D2とのなす角度θ1よりも小さくすると共に、芯部材4及び表面部材5を湾曲させたものである。
【0041】
図9に示した塗布具1Eは、上述の塗布具1Aにおいて、芯部材4の先端領域に、芯部材4の突出軸D4の突出方向に凸部6を延設したものである。これにより、この塗布具1Eの表面部材5の先端側から化粧料を肌に叩き込むように塗布する場合に、マッサージ効果を得ることができ、また、凸部6の無い面では、上述の塗布具1Aと同様に化粧料の塗り延ばしをすることができる。
【0042】
図10に示した塗布具1Fは、上述の塗布具1Aにおいて、芯部材4の錐台形状の扁平な側面の先端部近傍に凸部7を設けたものである。これにより、この塗布具1Fの釣鐘型の表面部材5の扁平な側面側から化粧料を肌に塗布する場合に、指圧効果を得ることができる。
【0043】
図11A及び図11Bに示した塗布具1Gは、上述の塗布具1Aにおいて、表面部材5の把持部2側を部分的に延設し、表面部材5の縁辺5aで囲まれた面が把持部2の長手方向D2と略垂直に交わるようにしたものである。なお、この表面部材5の縁辺5aで囲まれた面は、表面部材5の縁辺5aと当接する把持部材2の横断面2aと重なっている。また、表面部材5を、芯部材4の基面4aに重なる平面P1で切断した場合に、その切断面から表面部材5の先端部5t側は上述の塗布具1Aと同様に釣鐘型に形成されている。この塗布具1Gによれば、表面部材5の把持部側を延設することにより、表面部材5が抜け落ちることを防ぐことができる。
【0044】
本発明においては、上述の各態様において、表面部材5を中空とせず、中実としても良い。そのような塗布具は、例えば、表面部材5を肉厚にして表面部材5と芯部材4との空隙をなくしなり、表面部材5と芯部材4との間に表面部材5より柔軟な材料を充填したりして形成することができる。
【0045】
本発明において、表面部材5の外形は扁平な釣り鐘型に限られない。例えば、表面部材5は、その突出軸D5と直交する把持部2側の断面形状が扁平で、先端部5t側の断面形状が円であってもよく、外形全体が円柱状でもよい。
【0046】
また、把持部2と芯部材4を別部材として形成し、組み合わせてもよい。
芯部材4の基面4aや、芯部材をその突出軸D4と直交する面で切断した面は、扁平でなくても良い。
把持部2は直棒状でもよく、弧状に湾曲していてもよい。
【0047】
本発明の塗布具で塗布するのに適した化粧料としては、ファンデーション、化粧下地、美容液等を上げることができる。また、本発明の塗布具は、軟膏等の薬剤の塗布にも有用である。
【符号の説明】
【0048】
1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G 塗布具
2 把持部
2a (表面部材の縁辺と当接する)把持部の横断面
2ao 基点(把持部の横断面の中心)
2bo 把持部の塗布体側端面の中心
3 塗布体
4 芯部材
4a 芯部材の基面
4ao 芯部材の基面の中心
4t 芯部材の先端部
5 表面部材
5a 表面部材の縁辺
5t 表面部材の先端部
6 凸部
7 凸部
A 化粧料
D2 把持部の長手方向
D4 芯部材の突出軸
D5 表面部材の突出軸
L1 塗布体の幅
L2 塗布体の長さ
L3 把持部の長さ
La 長軸
Lb 短軸
P1 平面
θ1 表面部材の突出軸の方向と把持部の長手方向とがなす角度
θ2 芯部材の突出軸の方向と表面部材の突出軸の方向とがなす角度
θ3 芯部材の突出軸の方向と把持部の長手方向とがなす角度
S 肌
Sp 毛穴等のくぼみ
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B