(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(1)(i)(a)筒状に形成され燃料が一端側から他端側に向けて流通する燃料極層と、前記燃料極層の外側に積層され酸化剤ガス雰囲気中に設けられる酸化剤ガス極層と、前記燃料極層と前記酸化剤ガス極層との間に形成された電解質層とを備え、(b)前記燃料極層の一方の端部側が露出するとともに前記燃料極層の他方の端部側が前記酸化剤ガス極層により覆われており、(c)前記燃料極層の前記他方の端部および前記燃料極層の前記他方の内壁面が前記電解質層と同じ材質で製膜されており、(d)前記燃料極層の前記一方の端部側の露出部に燃料極層被接続部が形成されるとともに前記酸化剤ガス極層の前記他方の端部側に酸化剤ガス極層被接続部が形成されている複数の固体酸化物形燃料電池筒状セルが直線状に並設されて電気的に並列接続されたセル集合体と、
(ii)有底筒状に形成され前記セル集合体の前記一方の端部側を覆うように収容して各前記燃料極層被接続部と電気的に接続された第一本体部と、前記第一本体部に設けられ各前記燃料極層内に形成された燃料流路の前記一方の端部側に連通する一つまたは複数の第一連通口部とを備えた第一ホルダと、
(iii)有底筒状に形成され前記セル集合体の前記他方の端部側を覆うように収容して各前記酸化剤ガス極層被接続部と電気的に接続された第二本体部と、前記第二本体部に設けられ各前記燃料流路の前記他方の端部側に連通する一つまたは複数の第二連通口部とを備えた第二ホルダと、
を備えた複数のセルバンドルの長手方向の取り付け向きが互いに同じ方向または逆方向となるように直線状に並設され、隣接する前記セルバンドルの各前記第一ホルダおよび各前記第二ホルダが導電性接着剤または絶縁性接着剤で固定されて、前記複数のセルバンドルを構成する複数の固体酸化物形燃料電池筒状セルが直列接続および並列接続のうちの少なくとも並列接続により電気的に接続されたセルバンドル群と、
(2)前記セルバンドル群の前記一端側に設けられ、前記一端側の各前記第一連通口部および各前記第二連通口部のうちの少なくとも各前記第一連通口部が電気的な絶縁性を備える第一絶縁部材を貫通しており、前記第一絶縁部材を貫通している各前記連通口部を介して前記セル集合体に前記燃料を供給する第一マニホールドと、
(3)前記セルバンドル群の前記他端側に設けられ、前記他端側の各前記第一連通口部および各前記第二連通口部のうちの少なくとも各前記第二連通口部が電気的な絶縁性を備える第二絶縁部材を貫通しており、前記第二絶縁部材を貫通している各前記連通口部を介して前記セルバンドル群から排出された燃料オフガスを回収し、前記燃料オフガスと酸化剤オフガスとを燃焼部に導出する第二マニホールドと、
を備え、
各前記セル集合体を構成する前記複数の固体酸化物形燃料電池筒状セルは、隣接する前記燃料極層同士が導電性を備える第一導電性ペーストによって固定されるとともに電気的に接続され、隣接する前記酸化剤ガス極層同士が前記第一導電性ペーストと比べて多孔質な第二導電性ペーストによって固定されるとともに電気的に接続されている固体酸化物形燃料電池スタック。
前記第一ホルダは、平板状に形成され前記セル集合体の前記一方の端部側をまとめて貫通可能な長穴状に形成された第一貫通穴を備え、前記第一本体部内において前記セル集合体の前記一方の端部側を位置決めする第一位置決め部材をさらに備え、
前記第二ホルダは、平板状に形成され前記セル集合体の前記他方の端部側をまとめて貫通可能な長穴状に形成された第二貫通穴を備え、前記第二本体部内において前記セル集合体の前記他方の端部側を位置決めする第二位置決め部材をさらに備えている請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池スタック。
前記第一ホルダは、前記セル集合体の前記一方の端部と、前記第一本体部の底壁との間に介在して、前記セル集合体の前記一方の端部側に生じる熱応力を緩和する第一緩衝部材をさらに備え、
前記第二ホルダは、前記セル集合体の前記他方の端部と、前記第二本体部の底壁との間に介在して、前記セル集合体の前記他方の端部側に生じる熱応力を緩和する第二緩衝部材をさらに備えている請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池スタック。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<固体酸化物形燃料電池システム1>
図1に示すように、固体酸化物形燃料電池システム1は、発電ユニット10および貯湯槽21を備えている。また、発電ユニット10は、固体酸化物形燃料電池モジュール11、熱交換器12、電力変換装置13、水タンク14および制御装置15を備えている。
【0012】
固体酸化物形燃料電池モジュール11は、後述するように固体酸化物形燃料電池スタック30を少なくとも含んで構成される。固体酸化物形燃料電池モジュール11には、改質用原料、改質水およびカソードガス(空気)が供給されている。具体的には、固体酸化物形燃料電池モジュール11は、一端が供給源Gsに接続されて改質用原料が供給される改質用原料供給管11aの他端が接続されている。改質用原料供給管11aには、原料ポンプ11a1が設けられている。さらに、固体酸化物形燃料電池モジュール11は、一端が水タンク14に接続されて改質水が供給される水供給管11bの他端が接続されている。水供給管11bには、改質水ポンプ11b1が設けられている。さらに、固体酸化物形燃料電池モジュール11は、一端がカソードエアブロワ11c1に接続されてカソードガス(空気)が供給されるカソードエア供給管11cの他端が接続されている。
【0013】
熱交換器12は、固体酸化物形燃料電池モジュール11から排気される燃焼排ガスが供給されるとともに貯湯槽21からの貯湯水が供給され、燃焼排ガスと貯湯水とが熱交換する熱交換器である。具体的には、貯湯槽21は、貯湯水を貯湯するものであり、貯湯水が循環する(
図1にて矢印の方向に循環する)貯湯水循環ライン22が接続されている。貯湯水循環ライン22上には、下端から上端に向かって順番に貯湯水循環ポンプ22aおよび熱交換器12が配設されている。熱交換器12は、固体酸化物形燃料電池モジュール11からの排気管11dが接続(貫設)されている。熱交換器12は、水タンク14に接続されている凝縮水供給管12aが接続されている。
【0014】
熱交換器12において、固体酸化物形燃料電池モジュール11からの燃焼排ガスは、排気管11dを通って熱交換器12内に導入され、貯湯水との間で熱交換が行われ凝縮されるとともに冷却される。凝縮後の燃焼排ガスは、排気管11dを通って外部に排出される。また、凝縮された凝縮水は、凝縮水供給管12aを通って水タンク14に供給される。なお、水タンク14は、例えば、凝縮水をイオン交換樹脂によって純水化することができる。
【0015】
上述した熱交換器12、貯湯槽21および貯湯水循環ライン22から、排熱回収システム20が構成されている。排熱回収システム20は、固体酸化物形燃料電池モジュール11の排熱を貯湯水に回収して蓄える。
【0016】
電力変換装置13は、固体酸化物形燃料電池スタック30から出力される直流電圧を入力し所定の交流電圧に変換して、交流の系統電源16aおよび外部電力負荷16c(例えば電化製品)に接続されている電源ライン16bに出力する。また、電力変換装置13は、系統電源16aからの交流電圧を電源ライン16bを介して入力し所定の直流電圧に変換して補機(各ポンプ、ブロワなど)や制御装置15に出力する。なお、制御装置15は、補機を駆動して固体酸化物形燃料電池システム1の運転を制御する。
【0017】
<固体酸化物形燃料電池モジュール11>
図2に示すように、固体酸化物形燃料電池モジュール11は、固体酸化物形燃料電池スタック30、蒸発部40、改質部50および燃焼部60を備えている。
【0018】
(固体酸化物形燃料電池スタック30)
図2に示すように、固体酸化物形燃料電池スタック30は、セルバンドル群36、第一マニホールド37および第二マニホールド38を備えている。セルバンドル群36は、複数(本実施形態では、5つ)のセルバンドル35が直線状に並設されている。また、複数(5つ)のセルバンドル35の各々は、セル集合体32、第一ホルダ33および第二ホルダ34を備えている。さらに、
図3に示すように、セル集合体32は、複数(本実施形態では、3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31が直線状に並設されている。以下、固体酸化物形燃料電池筒状セル31の構成から順に説明する。
【0019】
図4に示すように、複数(本実施形態では、3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31の各々は、燃料極層31a、電解質層31bおよび酸化剤ガス極層31cを備えており、これらは、層状に積層されて形成されている。燃料極層31aは、筒状に形成されており、燃料が一端側(矢印Z1方向側)から他端側(矢印Z2方向側)に向けて流通する。本実施形態では、燃料は、後述する天然ガスなどの炭化水素系原料を改質した改質ガスであり、アノードガスともいう。
【0020】
酸化剤ガス極層31cは、燃料極層31aの外側に積層されており、酸化剤ガス雰囲気中に設けられる。本実施形態では、酸化剤ガスは、空気であり、カソードガスともいう。また、後述するように、酸化剤ガスは、
図2の紙面奥側から紙面手前側に向かって流通する。電解質層31bは、燃料極層31aと酸化剤ガス極層31cとの間に形成されている。つまり、複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31の各々は、径方向の内側から燃料極層31a、電解質層31b、酸化剤ガス極層31cの順に形成されている。
【0021】
なお、電解質層31bと酸化剤ガス極層31cとの間には、例えば、GDC(ガドリニウムドープセリア)、YDC(イットリアドープセリア)、SDC(サマリウムドープセリア)等の希土類をドープしたセリア混合体を用いた反応防止層を設けることもできる。また、本実施形態では、複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31の各々は、円筒状に形成されているが、各固体酸化物形燃料電池筒状セル31は、筒状であれば良く、例えば、断面方形に形成することもできる。
【0022】
燃料極層31aは、例えば、NiやFeなどの触媒金属とY、Sc、Ceなどの希土類元素から選ばれる少なくとも1種をドープした安定化ジルコニアとの混合体、NiやFeなどの触媒金属とGd、Y、Smなどの希土類元素から少なくとも1種をドープしたセリアとの混合体、NiやFeなどの触媒金属とSr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも1種をドープしたランタンガレートとの混合体の少なくとも1種から形成される。
【0023】
電解質層31bは、例えば、Y、Sc、Ceなどの希土類元素から選ばれる少なくとも1種をドープした安定化ジルコニア、Gd、Y、Smなどの希土類元素から少なくとも1種をドープしたセリア、NiとSr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも1種をドープしたランタンガレートの少なくとも1種から形成される。
【0024】
酸化剤ガス極層31cは、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも1種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも1種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも1種をドープしたランタンコバルタイト、Sr、Feから選ばれた少なくとも1種をドープしたバリウムコバルタイト、銀、銀−パラジウム合金、白金などの少なくとも1種から形成される。
【0025】
図4および
図5に示すように、複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31の各々は、燃料極層31aの一方の端部31e側が露出するとともに、燃料極層31aの他方の端部31f側が酸化剤ガス極層31cにより覆われている。また、複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31の各々には、燃料極層被接続部31a1と酸化剤ガス極層被接続部31c1とが形成されている。燃料極層被接続部31a1は、燃料極層31aの一方の端部31e側の露出部に形成されている。酸化剤ガス極層被接続部31c1は、酸化剤ガス極層31cの他方の端部31h側に形成されている。
【0026】
燃料極層被接続部31a1には、電解質層31bおよび酸化剤ガス極層31cが形成されておらず、燃料極層31aのみが形成されている。また、電解質層31bの一部は、露出している。複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31の形成方法は、特に限定されないが、例えば、公知の押し出し、プレス、鋳込み等の方法で燃料極層31aを形成し、逐次、電解質層31bおよび酸化剤ガス極層31cを印刷、ディッピング、スラリーコート等の方法で製膜することによって形成することができる。
【0027】
これらの方法により、複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31の各々は、径方向の内側から燃料極層31a、電解質層31b、酸化剤ガス極層31cの順に、既述の電極材料が層状に積層される。また、製膜の段階で部位に応じてマスキングを行うことで、上述の燃料極層31aが露出する部位や電解質層31bが露出する部位が形成される。なお、局所的に製膜を行うことで、任意の部位の外径を変更した複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31を作製することも可能である。
【0028】
また、
図5に示すように、複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31の各々は、燃料極層31aの他方の端部31fおよび燃料極層31aの他方の内壁面31gが電解質層31bと同じ材質で製膜されている。これにより、燃料極層31aの他方の端部31f側において、燃料極層31aと酸化剤ガス極層31cとの間の電気的な短絡が抑制されている。電解質層31bは、燃料極層31aおよび酸化剤ガス極層31cと比べて緻密に形成されている。
【0029】
なお、
図4および
図5では、一方の端部側は、第一マニホールド37が設けられる側である一端側(矢印Z1方向側)として図示されている。また、他方の端部側は、第二マニホールド38が設けられる側である他端側(矢印Z2方向側)として図示されている。後述するように、本実施形態では、複数(15個)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31は、直列接続および並列接続の両方により電気的に接続される。そのため、固体酸化物形燃料電池筒状セル31の長手方向(矢印Z方向)の取り付け向きが、
図4および
図5で示す取り付け向きと逆方向になる場合がある。この場合は、一方の端部側は、第二マニホールド38が設けられる側である他端側(矢印Z2方向側)であり、他方の端部側は、第一マニホールド37が設けられる側である一端側(矢印Z1方向側)である。以下、一方の端部側および他方の端部側は、同様の方向とする。
【0030】
図4に示すように、複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31は、直線状に並設されて電気的に並列接続されており、セル集合体32が構成されている。セル集合体32を構成する複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31は、隣接する燃料極層31a,31a同士が導電性を備える第一導電性ペースト32aによって固定されるとともに電気的に接続されている。また、セル集合体32を構成する複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31は、隣接する酸化剤ガス極層31c,31c同士が第二導電性ペースト32bによって固定されるとともに電気的に接続されている。
【0031】
第一導電性ペースト32aは、例えば、白金、銀、銅または銀−パラジウム合金などの導電性ペーストや導電性セラミックスを用いることができる。導電性セラミックスは、例えば、ABO
3型のペロブスカイト型酸化物などを用いることができ、比較的電気伝導性が高いランタンコバルタイト系酸化物や酸化還元雰囲気で安定なランタンクロマイト系酸化物を用いると良い。
【0032】
第二導電性ペースト32bは、第一導電性ペースト32aと比べて多孔質な導電性ペーストを用いることができる。多孔質な導電性ペーストを形成する方法は、限定されない。例えば、第一導電性ペースト32aと同様の導電性ペースト材料に、バインダを配合して形成することができる。この場合、加熱によってバインダが除去されて多孔質化され、導電性粒子が焼成されて、多孔質な導電性ペーストが形成される。
【0033】
本実施形態では、セル集合体32の隣接する燃料極層31a,31a同士は、第一導電性ペースト32aによって固定され、セル集合体32の隣接する酸化剤ガス極層31c,31c同士は、第二導電性ペースト32bによって固定されている。そのため、セル集合体32の隣接する燃料極層31a,31a同士および隣接する酸化剤ガス極層31c,31c同士の両方を第一導電性ペースト32aによってそれぞれ固定する場合と比べて、セル集合体32を構成する複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31に生じる、ねじれ応力がさらに低減され、複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31の破損がさらに抑制される。
【0034】
セルバンドル35は、セル集合体32、第一ホルダ33および第二ホルダ34を備えている。具体的には、
図6に示すように、セル集合体32の一方の端部側(矢印Z1方向側)には、第一ホルダ33が設けられており、セル集合体32の他方の端部側(矢印Z2方向側)には、第二ホルダ34が設けられている。第一ホルダ33および第二ホルダ34は、例えば、フェライト系ステンレス、ランタンクロマイトなどを用いて形成することができる。
【0035】
第一ホルダ33は、第一本体部33aと第一連通口部33bとを備えている。第一本体部33aは、セル集合体32の一方の端部側(矢印Z1方向側)を覆うように収容しており、各燃料極層被接続部31a1と電気的に接続されている。具体的には、
図6に示すように、第一本体部33aは、有底筒状に形成されている。第一本体部33aは、第一本体部33aの内壁面が複数(3つ)の燃料極層被接続部31a1,31a1,31a1を覆うように配設されている。第一本体部33aの内壁面と各燃料極層被接続部31a1との間は、導電性接着剤33eで接続されている。導電性接着剤33eは、例えば、第一導電性ペースト32aと同様の導電性ペーストを用いることができる。導電性接着剤33eは、第一本体部33aの内壁面と各燃料極層被接続部31a1との間を電気的に接続するとともに、第一本体部33a内に導入された燃料が、酸化剤ガス極層31c側に漏れ出すガスリークを抑制することができる。
【0036】
第一連通口部33bは、第一本体部33aに設けられており、各燃料極層31a内に形成された燃料流路31dの一方の端部側(矢印Z1方向側)に連通している。第一連通口部33bは、筒状に形成されており、第一本体部33aの底壁33a1に設けられた貫通穴33a2から燃料極層31aと反対側に向けて立設されている。なお、第一本体部33aには、複数の第一連通口部33bを設けることもできる。
【0037】
第二ホルダ34は、第二本体部34aと第二連通口部34bとを備えている。第二本体部34aは、セル集合体32の他方の端部側(矢印Z2方向側)を覆うように収容しており、各酸化剤ガス極層被接続部31c1と電気的に接続されている。具体的には、
図6に示すように、第二本体部34aは、有底筒状に形成されている。第二本体部34aは、第二本体部34aの内壁面が複数(3つ)の酸化剤ガス極層被接続部31c1,31c1,31c1を覆うように配設されている。第二本体部34aの内壁面と各酸化剤ガス極層被接続部31c1との間は、導電性接着剤34eで接続されている。導電性接着剤34eは、例えば、第一導電性ペースト32aと同様の導電性ペーストを用いることができる。導電性接着剤34eは、第二本体部34aの内壁面と各酸化剤ガス極層被接続部31c1との間を電気的に接続する。
【0038】
第二連通口部34bは、第二本体部34aに設けられており、各燃料極層31a内に形成された燃料流路31dの他方の端部側(矢印Z2方向側)に連通している。第二連通口部34bは、筒状に形成されており、第二本体部34aの底壁34a1に設けられた貫通穴34a2から燃料極層31aと反対側に向けて立設されている。なお、第二本体部34aには、複数の第二連通口部34bを設けることもできる。
【0039】
なお、第一ホルダ33の第一本体部33aおよび第二ホルダ34の第二本体部34aは、同一寸法で形成しても良い。また、第一本体部33aの内形寸法は、セル集合体32の複数(3つ)の燃料極層被接続部31a1,31a1,31a1を直線状に並べたときの外形寸法より若干大きくするとともに、第二本体部34aの内形寸法は、セル集合体32の複数(3つ)の酸化剤ガス極層被接続部31c1,31c1,31c1を直線状に並べたときの外形寸法より若干大きくするように形成してもよい。さらに、第一連通口部33bの長手方向(矢印Z方向)の長さは、少なくとも後述する第一絶縁部材37cおよび第一シール部材37d,37dを貫通可能に設定し、第二連通口部34bの長手方向(矢印Z方向)の長さは、少なくとも後述する第二絶縁部材38cおよび第二シール部材38d,38dを貫通可能に設定する。
【0040】
また、第一ホルダ33は、第一位置決め部材33cをさらに備え、第二ホルダ34は、第二位置決め部材34cをさらに備えていると好適である。第一位置決め部材33cおよび第二位置決め部材34cは、第一ホルダ33および第二ホルダ34と同様の金属材料で形成することができる。
図7に示すように、第一位置決め部材33cは、平板状に形成されており、第一貫通穴33c1を備えている。第一貫通穴33c1は、長穴状に形成されており、セル集合体32の一方の端部側(矢印Z1方向側)をまとめて貫通可能になっている。第一位置決め部材33cは、第一本体部33a内においてセル集合体32の一方の端部側(矢印Z1方向側)を位置決めする。
【0041】
同様に、第二ホルダ34は、平板状に形成されており、第二貫通穴34c1を備えている。第二貫通穴34c1は、長穴状に形成されており、セル集合体32の他方の端部側(矢印Z2方向側)をまとめて貫通可能になっている。第二位置決め部材34cは、第二本体部34a内においてセル集合体32の他方の端部側(矢印Z2方向側)を位置決めする。第一位置決め部材33cおよび第二位置決め部材34cは、同様の形状を呈しているので、同図では、符号番号を併記して図示している。
【0042】
なお、第一位置決め部材33cの形状は、例えば、第一本体部33aの内壁面に合わせて形成することができ、その形状は限定されない。また、例えば、固体酸化物形燃料電池筒状セル31の外形形状に合わせて第一位置決め部材33cの形状を変形することもできる。以上のことは、第二位置決め部材34cについても同様である。同図では、変形例として、第一位置決め部材33cの外形形状が破線の曲線33c2で示され、第二位置決め部材34cの外形形状が破線の曲線34c2で示されている。曲線33c2は、燃料極層被接続部31a1(燃料極層31a)の外形形状に合わせて第一位置決め部材33cの外形形状が形成された場合を示している。曲線34c2は、酸化剤ガス極層被接続部31c1(酸化剤ガス極層31c)の外形形状に合わせて第二位置決め部材34cの外形形状が形成された場合を示している。
【0043】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池スタック30によれば、第一ホルダ33は、第一位置決め部材33cをさらに備え、第二ホルダ34は、第二位置決め部材34cをさらに備えている。よって、本実施形態の固体酸化物形燃料電池スタック30は、第一ホルダ33内におけるセル集合体32の一方の端部側(矢印Z1方向側)の位置決めが容易であり、第二本体部34a内におけるセル集合体32の他方の端部側(矢印Z2方向側)の位置決めが容易である。そのため、第一本体部33aの内壁面と各燃料極層被接続部31a1との間に、導電性接着剤33eを確実に充填することができ、第一本体部33aと各燃料極層被接続部31a1との間の電気抵抗を低減することができる。同様に、第二本体部34aの内壁面と各酸化剤ガス極層被接続部31c1との間に、導電性接着剤34eを確実に充填することができ、第二本体部34aと各酸化剤ガス極層被接続部31c1との間の電気抵抗を低減することができる。さらに、セル集合体32、第一ホルダ33および第二ホルダ34を組み付ける際に、セル集合体32の位置決め治具が不要なので、組み付け作業の作業性が向上する。
【0044】
また、第一ホルダ33は、第一緩衝部材33dをさらに備え、第二ホルダ34は、第二緩衝部材34dをさらに備えていると好適である。
図6に示すように、第一緩衝部材33dは、平板状に形成されており、セル集合体32の一方の端部32cと、第一本体部33aの底壁33a1との間に介在している。第一緩衝部材33dは、例えば、ニッケル系合金、ステンレス系合金、銅系合金などの多孔質金属やメッシュ状に形成されたメッシュ金属を用いることができる。多孔質金属やメッシュ金属は、一般の金属材料と比べて空孔率が高い。そのため、高温雰囲気中において、固体酸化物形燃料電池筒状セル31に熱応力が発生した際に、第一緩衝部材33dは、固体酸化物形燃料電池筒状セル31の熱応力による影響(例えば、変形など)を緩和することができる。また、第一緩衝部材33dの孔径を小さくする程、各燃料流路31dにおける圧力損失が増大する。そのため、第一緩衝部材33dの孔径は、各燃料流路31dにおける圧力損失に基づいて、各セルバンドル35に対して燃料を均等に配流することが可能に設定されていると好適である。これにより、固体酸化物形燃料電池スタック30は、燃料供給の不均一に起因する発電のばらつきを抑制することができる。
【0045】
同様に、第二緩衝部材34dは、平板状に形成されており、セル集合体32の他方の端部32dと、第二本体部34aの底壁34a1との間に介在している。第二緩衝部材34dは、第一緩衝部材33dと同様の多孔質金属やメッシュ金属を用いることができ、第一緩衝部材33dで既述の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池スタック30によれば、第一ホルダ33は、第一緩衝部材33dをさらに備え、第二ホルダ34は、第二緩衝部材34dをさらに備えている。よって、第一緩衝部材33dは、セル集合体32の一方の端部側(矢印Z1方向側)に生じる熱応力を緩和することができる。また、第二緩衝部材34dは、セル集合体32の他方の端部側(矢印Z2方向側)に生じる熱応力を緩和することができる。そのため、第一緩衝部材33dおよび第二緩衝部材34dは、固体酸化物形燃料電池筒状セル31の熱応力による破損を抑制することができる。
【0047】
図2および
図8に示すように、複数(5つ)のセルバンドル35は、長手方向(矢印Z方向)の取り付け向きが互いに逆方向となるように直線状に並設されており、セルバンドル群36が構成されている。セルバンドル群36では、隣接するセルバンドル35,35の各第一ホルダ33および各第二ホルダ34が導電性接着剤36aまたは絶縁性接着剤36bで固定されて電気的に接続されている。
【0048】
具体的には、一のセルバンドル35の第一本体部33aと、隣接する他のセルバンドル35の一方の第二本体部34aとの間には、導電性接着剤36aが介在しており、一のセルバンドル35の第一本体部33aと、隣接する他のセルバンドル35の他方の第二本体部34aとの間には、絶縁性接着剤36bが介在している。また、一のセルバンドル35の第二本体部34aと、隣接する他のセルバンドル35の一方の第一本体部33aとの間には、絶縁性接着剤36bが介在しており、一のセルバンドル35の第二本体部34aと、隣接する他のセルバンドル35の他方の第一本体部33aとの間には、導電性接着剤36aが介在している。このようにして、複数(5つ)のセルバンドル35が電気的に直列接続され、セルバンドル群36を構成する複数(15個)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31は、直列接続および並列接続の両方により電気的に接続されている。
【0049】
導電性接着剤36aは、隣接する第一本体部33aと第二本体部34aとを固定することができ、これらを電気的に接続することができれば限定されない。導電性接着剤36aは、例えば、第一導電性ペースト32aと同様の導電性材料を用いることができる。また、絶縁性接着剤36bは、隣接する第一本体部33aと第二本体部34aとを固定することができ、これらを電気的に絶縁することができれば限定されない。絶縁性接着剤36bは、例えば、アルミナなどの絶縁性シムやセラミック系の接着剤を用いることができる。
【0050】
また、各第一本体部33aは、一対の第一接触面33a3,33a3を備え、各第二本体部34aは、一対の第二接触面34a3,34a3を備えていると好適である。
図8に示すように、一対の第一接触面33a3,33a3は、第一本体部33aの外壁面に形成されており、隣接する他のセルバンドル35の第二本体部34aと面接触可能で、かつ、互いに平行に形成されている。同様に、一対の第二接触面34a3,34a3は、第二本体部34aの外壁面に形成されており、隣接する他のセルバンドル35の第一本体部33aと面接触可能で、かつ、互いに平行に形成されている。
【0051】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池スタック30によれば、各第一本体部33aは、一対の第一接触面33a3,33a3を備え、各第二本体部34aは、一対の第二接触面34a3,34a3を備えている。よって、複数(5つ)のセルバンドル35を積み重ねることが容易であり、セルバンドル群36を容易に構成することができる。また、セルバンドル群36をコンパクトにすることができ、複数(5つ)のセルバンドル35を組み付ける際の作業性も向上する。さらに、第一ホルダ33および第二ホルダ34を介して、隣接する燃料極層被接続部31a1と酸化剤ガス極層被接続部31c1とを最短距離で接続することができるので、固体酸化物形燃料電池スタック30の内部抵抗を低減することができる。
【0052】
図2に示すように、第一マニホールド37は、金属材(例えば、ステンレス鋼など)で箱状に形成されており、セルバンドル群36の一端側(矢印Z1方向側)に設けられている。第一マニホールド37は、第一隔壁37aによって、第一マニホールド37の内部と外部とが区画されている。第一隔壁37aには、燃料を第一マニホールド37の内部に導入する燃料吸入口37bが設けられており、燃料供給管37b1の一端が接続されている。燃料供給管37b1の他端は、改質部50に接続されており、後述する改質部50によって改質された燃料が、燃料供給管37b1、燃料吸入口37bの順に流通して、第一マニホールド37の内部に供給される。
【0053】
第一隔壁37aは、
図2の上方に開口する開口部370を有しており、開口部370は、第一絶縁部材37cによって塞がれている。第一絶縁部材37cは、電気的な絶縁性を備えており、第一マニホールド37の内部を密閉するとともに、第一マニホールド37とセルバンドル群36との間を電気的に絶縁する。第一絶縁部材37cは、第一マニホールド37の内部を密閉可能であり、第一マニホールド37とセルバンドル群36との間を電気的に絶縁することができれば限定されない。第一絶縁部材37cは、例えば、アルミナなどのセラミック材料を用いることができる。
【0054】
また、一端側(矢印Z1方向側)の各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34bは、第一絶縁部材37cを貫通している。第一マニホールド37は、第一絶縁部材37cを貫通している各連通口部(各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34b)を介して、セル集合体32に燃料を供給する。そのため、第一絶縁部材37cは、ガラス系の第一シール部材37d,37dによって挟まれていると好適である。
【0055】
第一シール部材37d,37dは、例えば、電気的な絶縁性を備えるガラス系のシール部材を用いることができる。第一シール部材37d,37dは、それぞれシート状に形成されていると良い。また、第一シール部材37d,37dは、結晶化ガラスを用いると好適である。結晶化ガラスは、例えば、アルミナ、シリカ等を主成分とする結晶化ガラスを用いることができる。結晶化ガラスは、最初の昇温時に軟化して、第一絶縁部材37cを貫通している各連通口部(各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34b)と、第一絶縁部材37cとの間を流動する。軟化した後にさらに昇温すると、結晶化ガラスは、結晶化して、固体酸化物形燃料電池スタック30の作動温度までに固体状態になり、固体状態が維持される。結晶化ガラスは、非結晶化ガラスと比べて、高温雰囲気中において軟化し難い。そのため、第一シール部材37d,37dは、結晶化ガラスを用いることにより、電気的な絶縁およびガスシールが図られることに加えて、高温雰囲気中においても固体酸化物形燃料電池スタック30の構造を維持することが容易である。
【0056】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池スタック30によれば、第一シール部材37d,37dは、第一絶縁部材37cを貫通している各連通口部(各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34b)と、第一絶縁部材37cとの間に介在している。よって、第一シール部材37d,37dは、第一絶縁部材37cを貫通している各連通口部(各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34b)と第一絶縁部材37cとの間を通って燃料がセルバンドル群36側へ流出することを抑制することができる。そのため、本実施形態の固体酸化物形燃料電池スタック30は、セルバンドル群36と第一マニホールド37との間の燃料のガスリークを抑制することができる。
【0057】
第二マニホールド38は、金属材(例えば、ステンレス鋼など)で箱状に形成されており、セルバンドル群36の他端側(矢印Z2方向側)に設けられている。第二マニホールド38は、第二隔壁38aによって、第二マニホールド38の内部と外部とが区画されている。第二隔壁38aには、燃料オフガスおよび酸化剤オフガスを燃焼部60に導出する複数(例えば、3つ)のオフガス吐出口38b,38b,38bが設けられている。各オフガス吐出口38bから吐出された燃料オフガスと酸化剤オフガスとは、燃焼部60において燃焼される。
【0058】
第二隔壁38aは、
図2の下方に開口する開口部380を有しており、開口部380は、第二絶縁部材38cによって塞がれている。第二絶縁部材38cは、電気的な絶縁性を備えており、第二マニホールド38の内部を密閉するとともに、第二マニホールド38とセルバンドル群36との間を電気的に絶縁する。第二絶縁部材38cは、第二マニホールド38の内部を密閉可能であり、第二マニホールド38とセルバンドル群36との間を電気的に絶縁することができれば限定されない。第二絶縁部材38cは、例えば、第一絶縁部材37cと同様の絶縁部材を用いることができる。
【0059】
また、他端側(矢印Z2方向側)の各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34bは、第二絶縁部材38cを貫通している。第二マニホールド38は、第二絶縁部材38cを貫通している各連通口部(各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34b)を介して、セルバンドル群36から排出された燃料オフガスを回収し、燃料オフガスと酸化剤オフガスとを燃焼部60に導出する。そのため、第二絶縁部材38cは、ガラス系の第二シール部材38d,38dによって挟まれていると好適である。
【0060】
第二シール部材38d,38dは、第一シール部材37d,37dと同様のガラス系のシール部材を用いることができる。また、第一シール部材37d,37dと同様にして、第二シール部材38d,38dは、第二絶縁部材38cを貫通している各連通口部(各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34b)と、第二絶縁部材38cとの間に介在することができる。なお、第二シール部材38d,38dは、それぞれシート状に形成されていると良い。また、第二シール部材38d,38dは、結晶化ガラスを用いると好適である。結晶化ガラスを用いることによる作用効果は、第一シール部材37d,37dで既述の作用効果と同様である。
【0061】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池スタック30によれば、第二シール部材38d,38dは、第二絶縁部材38cを貫通している各連通口部(各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34b)と、第二絶縁部材38cとの間に介在している。よって、第二シール部材38d,38dは、第二絶縁部材38cを貫通している各連通口部(各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34b)と第二絶縁部材38cとの間を通って燃料オフガスがセルバンドル群36側へ逆流することを抑制することができる。そのため、本実施形態の固体酸化物形燃料電池スタック30は、セルバンドル群36と第二マニホールド38との間の燃料オフガスのガスリークを抑制することができる。
【0062】
本実施形態では、
図2および
図8に示すように、複数(5つ)のセルバンドル35のうちの隣接するセルバンドル35,35は、長手方向(矢印Z方向)の取り付け向きが互いに逆方向となるように配設されている。そのため、複数(5つ)のセルバンドル35を構成する複数(15個)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31が直列接続および並列接続の両方により電気的に接続されている。
【0063】
具体的には、セルバンドル群36は、一端側(矢印Z1方向側)に各燃料極層被接続部31a1が配設され、他端側(矢印Z2方向側)に各酸化剤ガス極層被接続部31c1が配設されるセルバンドル35と、一端側(矢印Z1方向側)に各酸化剤ガス極層被接続部31c1が配設され、他端側(矢印Z2方向側)に各燃料極層被接続部31a1が配設されるセルバンドル35とが交互に繰り返すように、複数(5つ)のセルバンドル35が並設されている。
【0064】
いずれのセルバンドル35においても、セル集合体32の隣接する燃料極層31a,31a同士が第一導電性ペースト32aによって固定されるとともに電気的に接続され、セル集合体32の隣接する酸化剤ガス極層31c,31c同士が第二導電性ペースト32bによって固定されるとともに電気的に接続されている。なお、セルバンドル群36の両端部は、バスバー接続部材36cを介して、バスバー36dにそれぞれ接続されている。
【0065】
隣接するセルバンドル35,35は、長手方向(矢印Z方向)の取り付け向きが互いに同じ方向となるように配設することもできる。この場合、隣接するセルバンドル35,35を構成する複数(6つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31は、電気的に並列接続される。具体的には、隣接するセルバンドル35,35は、一端側(矢印Z1方向側)に各燃料極層被接続部31a1が配設され、他端側(矢印Z2方向側)に各酸化剤ガス極層被接続部31c1が配設される。
【0066】
また、この場合、一対の第一接触面33a3,33a3は、隣接する他のセルバンドル35の第一本体部33aと面接触可能で、かつ、互いに平行に形成されている。同様に、一対の第二接触面34a3,34a3は、隣接する他のセルバンドル35の第二本体部34aと面接触可能で、かつ、互いに平行に形成されている。さらに、一のセルバンドル35の第一本体部33aと、隣接する他のセルバンドル35の第一本体部33aとの間には、導電性接着剤36aが介在し、一のセルバンドル35の第二本体部34aと、隣接する他のセルバンドル35の第二本体部34aとの間には、導電性接着剤36aが介在している。なお、第一絶縁部材37cを貫通している連通口部は、各第一連通口部33bのみであり、第二絶縁部材38cを貫通している連通口部は、各第二連通口部34bのみである。
【0067】
このように、複数(5つ)のセルバンドル35のうちの全部または一部のセルバンドル35の長手方向(矢印Z方向)の取り付け向きが互いに同じ方向または逆方向となるように直線状に並設されて、セルバンドル群36が構成される。これにより、複数(5つ)のセルバンドル35を構成する複数(15個)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31は、直列接続および並列接続のうちの少なくとも並列接続により電気的に接続される。また、一端側(矢印Z1方向側)の各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34bのうちの少なくとも各第一連通口部33bが電気的な絶縁性を備える第一絶縁部材37cを貫通している。同様に、他端側(矢印Z2方向側)の各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34bのうちの少なくとも各第二連通口部34bが電気的な絶縁性を備える第二絶縁部材38cを貫通している。
【0068】
セルバンドル群36、第一マニホールド37および第二マニホールド38を組み付ける方法は限定されないが、例えば、以下の第1工程〜第6工程を有する方法を用いることができる。第1工程は、複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31を直線状に並設して、隣接する燃料極層31a,31aおよびその間に第一導電性ペースト32aを塗布し、隣接する酸化剤ガス極層31c,31cおよびその間に第二導電性ペースト32bを塗布して乾燥する工程である。これにより、複数(3つ)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31,31,31が固定されるとともに電気的に並列接続されてセル集合体32が得られる。
【0069】
第2工程は、第一ホルダ33の第一本体部33a内に、第一緩衝部材33dおよび第一位置決め部材33cをこの順に装着し、第二ホルダ34の第二本体部34a内に、第二緩衝部材34dおよび第二位置決め部材34cをこの順に装着する工程である。第3工程は、第1工程で得られたセル集合体32の一方の端部側を、第2工程で得られた第一ホルダ33に収容し、第一ホルダ33の第一本体部33a内に導電性接着剤33eを充填して乾燥する工程である。第4工程は、第1工程で得られたセル集合体32の他方の端部側を、第2工程で得られた第二ホルダ34に収容し、第二ホルダ34の第二本体部34a内に導電性接着剤34eを充填して乾燥する工程である。なお、第3工程および第4工程の順序は問わない。また、第1工程〜第4工程を繰り返すことにより、複数(5つ)のセルバンドル35が得られる。
【0070】
第5工程は、隣接するセルバンドル35,35間に、導電性接着剤36aおよび絶縁性接着剤36bを塗布して固定する工程である。具体的には、複数(5つ)のセルバンドル35の長手方向(矢印Z方向)の取り付け向きが互いに逆方向となるように直線状に並設する。そして、一のセルバンドル35の第一本体部33aと、隣接する他のセルバンドル35の一方の第二本体部34aとの間に、導電性接着剤36aを塗布し、一のセルバンドル35の第一本体部33aと、隣接する他のセルバンドル35の他方の第二本体部34aとの間に、絶縁性接着剤36bを塗布する。また、一のセルバンドル35の第二本体部34aと、隣接する他のセルバンドル35の一方の第一本体部33aとの間に、絶縁性接着剤36bを塗布し、一のセルバンドル35の第二本体部34aと、隣接する他のセルバンドル35の他方の第一本体部33aとの間に、導電性接着剤36aを塗布する。これを繰り返すことにより、複数(5つ)のセルバンドル35は固定されて、複数(5つ)のセルバンドル35を構成する複数(15個)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31が直列接続および並列接続の両方により電気的に接続されたセルバンドル群36が得られる。
【0071】
第6工程は、セルバンドル群36、第一マニホールド37および第二マニホールド38を固定する工程である。具体的には、セルバンドル群36の一端側(矢印Z1方向側)の各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34bを、第一シール部材37d,37dによって挟まれた第一絶縁部材37cの各貫通穴に挿入する。同様に、セルバンドル群36の他端側(矢印Z2方向側)の各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34bを、第二シール部材38d,38dによって挟まれた第二絶縁部材38cの各貫通穴に挿入する。そして、セルバンドル群36の一端側(矢印Z1方向側)から第一マニホールド37を装着し、セルバンドル群36の他端側(矢印Z2方向側)から第二マニホールド38を装着して、電気炉等で焼成する。これにより、セルバンドル群36、第一マニホールド37および第二マニホールド38が固定される。
【0072】
セルバンドル群36および第二マニホールド38、並びに、後述する蒸発部40および改質部50は、発電室39内に設けられている。発電室39は、金属材(例えば、ステンレス鋼など)で箱状に形成されており、酸化剤ガス(空気)が供給される。発電室39は、隔壁39aによって、発電室39の内部と外部とが区画されている。隔壁39aは、
図2の下方に開口する開口部390を有しており、開口部390は、第一マニホールド37の第一隔壁37aによって塞がれている。これにより、発電室39の内部は密閉されている。
【0073】
開口部390近傍の隔壁39aには、酸化剤ガスを発電室39の内部に導入する酸化剤ガス導入管39bが貫通して設けられており、カソードエア供給管11cの一端が接続されている。酸化剤ガスは、カソードエア供給管11c、酸化剤ガス導入管39bの順に流通して、発電室39の内部に供給される。酸化剤ガス導入管39bには、複数(5つ)のセル集合体32に向かって酸化剤ガスを流出させる複数(例えば、6つ)の流出孔39cが設けられている。
【0074】
各流出孔39cから流出した酸化剤ガスは、発電室39の内部において、
図2の紙面奥側から紙面手前側に向かって流通する。このようにして、複数(5つ)のセル集合体32の各酸化剤ガス極層31cに対して、酸化剤ガスが供給される。なお、発電に使用されなかった酸化剤ガス(酸化剤オフガス)は、第二マニホールド38の酸化剤ガス吸入管38eを介して回収される。同図では、酸化剤オフガスの流通方向は、矢印Dc1方向を用いて模式的に示されている。
【0075】
発電室39では、供給された酸化剤ガスと、第一マニホールド37から導出された燃料とによって発電する。燃料は、一端側(矢印Z1方向側)の各第一連通口部33bおよび各第二連通口部34bを介して、発電室39内のセルバンドル群36に供給される。また、燃料オフガスおよび酸化剤オフガスは、第二マニホールド38によって回収され、燃焼部60に導出される。燃焼部60では、燃料オフガスおよび酸化剤オフガスが燃焼される。また、発電室39の天井部には、1つまたは複数(例えば、2つ)の排気口39d,39dが設けられており、燃焼排ガスが複数(2つ)の排気口39d,39dを通って排気される。
図2では、各排気口39dにおける燃焼排ガスの流通方向は、矢印De1方向を用いて模式的に示されている。
【0076】
(蒸発部40)
蒸発部40は、固体酸化物形燃料電池スタック30の燃焼ガスにより加熱され、供給された改質水を蒸発させて水蒸気を生成するとともに供給された改質用原料を予熱する。蒸発部40は、生成された水蒸気と予熱された改質用原料を混合して改質部50に供給する。改質用原料としては天然ガス、LPガスなどの改質用気体原料、灯油、ガソリン、メタノールなどの改質用液体原料があり、本実施形態では、改質用原料は、天然ガスを用いている。
【0077】
蒸発部40には、一端(下端)が水タンク14に接続された水供給管11bの他端が接続されている。また、蒸発部40には、一端が供給源Gsに接続された改質用原料供給管11aが接続されている。供給源Gsは、例えば、都市ガスのガス供給管、LPガスのガスボンベである。
【0078】
(改質部50)
改質部50は、上述した燃焼ガスにより加熱されて水蒸気改質反応に必要な熱が供給されることで、蒸発部40から供給された水蒸気と改質用原料の混合ガスとから燃料である改質ガスを生成する。改質部50内には、触媒(例えば、RuまたはNi系の触媒)が充填されており、混合ガスが触媒によって反応し改質されて水素と一酸化炭素などを含んだガスが生成されている(いわゆる水蒸気改質反応)。
【0079】
これら生成されたガス(いわゆる改質ガス)は、既述のアノードガスであり、固体酸化物形燃料電池スタック30の第一マニホールド37を介して各固体酸化物形燃料電池筒状セル31の各燃料極層31aに導出される。改質ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の天然ガス(メタンガス)、改質に使用されなかった改質水(水蒸気)を含んでいる。このように、改質部50は、改質用原料と改質水とから改質ガス(燃料)を生成して固体酸化物形燃料電池スタック30に供給する。なお、水蒸気改質反応は吸熱反応である。
【0080】
(燃焼部60)
燃焼部60は、第二マニホールド38と、蒸発部40および改質部50との間に設けられている。燃焼部60は、セルバンドル群36からのアノードオフガス(燃料オフガス)とカソードオフガス(酸化剤オフガス)とが燃焼されて蒸発部40および改質部50を加熱する。
【0081】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池スタック30によれば、セル集合体32を一単位としてセルバンドル35が構成され、セルバンドル35が直線状に並設されてセルバンドル群36が構成されている。よって、本実施形態の固体酸化物形燃料電池スタック30は、複数(15個)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31の各々を接続部材で接続する場合と比べて、複数(15個)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31の電気的な接続を簡素化することができる。また、セル集合体32の隣接する燃料極層31a,31a同士は、第一導電性ペースト32aによって固定され、セル集合体32の隣接する酸化剤ガス極層31c,31c同士は、第二導電性ペースト32bによって固定されている。さらに、第一ホルダ33および第二ホルダ34で挟まれたセル集合体32は、第一ホルダ33および第二ホルダ34を介して固定されている。よって、本実施形態の固体酸化物形燃料電池スタック30は、複数(15個)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31に生じる、ねじれ応力を低減することができ、複数(15個)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31の破損を抑制することができる。また、セルバンドル群36の他端側(矢印Z2方向側)には、第二マニホールド38が設けられている。よって、本実施形態の固体酸化物形燃料電池スタック30は、燃料オフガスと酸化剤オフガスとが燃焼する燃焼部60をセルバンドル群36から離間させることができる。そのため、発電時に燃料極層31aが再酸化することが抑制され、複数(15個)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31の破損が抑制される。その結果、本実施形態の固体酸化物形燃料電池スタック30は、複数(15個)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31の電気的な接続の簡素化、および、複数(15個)の固体酸化物形燃料電池筒状セル31の破損の抑制の両立を図ることができる。
【0082】
本実施形態の固体酸化物形燃料電池モジュール11は、上記固体酸化物形燃料電池スタック30、蒸発部40および改質部50を備えている固体酸化物形燃料電池モジュール11において、上述した固体酸化物形燃料電池スタック30に係る作用効果を得ることができる。また、本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム1は、上記固体酸化物形燃料電池モジュール11、熱交換器12、電力変換装置13、水タンク14および制御装置15を備えている発電ユニット10と、貯湯槽21とを備えている固体酸化物形燃料電池システム1において、上述した固体酸化物形燃料電池スタック30に係る作用効果を得ることができる。
【0083】
<その他>
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、セル集合体32を構成する固体酸化物形燃料電池筒状セル31の本数、セルバンドル群36を構成するセルバンドル35の数は、適宜、変更することができる。また、固体酸化物形燃料電池スタック30は、複数のセルバンドル群36を備えることもできる。