(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1では、ストリップの張力変動の検知は、操作装置を構成する操作モータに流れる負荷電流の変動を検出することにより行われる。負荷電流の変動を検知して出力された電気信号を受けて張力調整ロールを移動しようとしても、ストリップに急激な張力変動が生じた際には、応答性が追い付かず、張力変動を抑制できない。また、このような張力調整ロールの位置制御方法は、そもそも張力変動のあるラインには適用できない。
【0008】
また、上記特許文献2では、ストリップの僅かな張力変動は吸収できるが、大幅な張力変動を抑制することはできない。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、過大なストリップの張力変動に対して早期に変動を収束させることが可能な、新規かつ改良された張力調整装置および張力調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、連続的に通板されるストリップを、当該ストリップの巻き付き角が180°未満となるように、パスラインに対して垂直な第1の方向から押圧するダンパーロールと、第1の方向にダンパーロールを移動させるシリンダと、ストリップの張力を低下させる方向にダンパーロールが移動するようにシリンダに圧力を付与する圧力付与部と、を備え、ダンパーロールは、ストリップの張力変動に応じて当該張力変動を抑制するように第1の方向に
移動可能に設けられており、
圧力付与部は、ストリップの張力上昇によりダンパーロールが所定の位置まで
移動すると、シリンダに圧力を付与
し、ダンパーロールをストリップの張力を低下させる方向に強制的に移動させる、張力調整装置が提供される。
【0011】
本発明によれば、ダンパーロールはストリップの張力変動を抑制するように移動可能に構成されている。ここで、急峻なストリップの張力変動が発生し、ストリップの張力上昇によりダンパーロールが所定の位置まで移動した際に、圧力付与部によりシリンダに圧力が付与され、ダンパーロールはストリップの張力を低下する向きへ移動される。このように、ダンパーロールの搖動では吸収しきれない過大なストリップの張力変動に対する応答性を高めることで、早期に張力変動を収束させることができる。
【0012】
第1の方向は鉛直方向であり、ダンパーロールは、通常操業時において、ストリップを下面から押圧するようにシリンダにより上昇されており、ストリップの張力変動に応じて当該張力変動を抑制するように昇降し、ストリップの張力が上昇によりダンパーロールが所定の位置まで
下降すると、圧力付与部によりシリンダに圧力が付与されることにより、強制的に下降されるように構成してもよい。
【0013】
張力調整装置は、ストリップの張力が所定の値以上となったか否かを検出する検出する張力変動検出部をさらに備えてもよい。
【0016】
圧力付与部は、シリンダに圧力を付与する圧力付与時間が所定時間を超えたとき、シリンダへの圧力付与を停止するようにしてもよい。所定時間は、例えばストリップの張力変動が収束する時間に応じて設定してもよい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、連続的に通板されるストリッ
プの巻き付き角が180°未満となるように、ダンパーロール
によってストリップをパスラインに対して垂直な第1の方向か
ら押圧し、ダンパーロールは
、ストリップの張力変動に応じて当該張力変動を抑制するように第1の方向に
移動可能に設けられており、ストリップの張力上昇によりダンパーロールが所定の位置まで
移動すると、第1の方向にダンパーロールを移動させるシリンダに圧力
を付与
し、
ストリップの張力を低下させる方向にダンパーロールを強制的に
移動させる、張力調整方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、過大なストリップの張力変動に対して早期に変動を収束させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
<1.張力調整装置の概略構成>
まず、
図1および
図2を参照して、本発明の実施形態に係る張力調整装置100の概略構成について説明する。なお、
図1は、本実施形態に係る張力調整装置100の一構成例を示す概略側面図である。
図2は、本実施形態に係る張力調整装置100のダンパーロール110およびシリンダ120の構成を示す概略正面図である。
【0022】
本実施形態に係る張力調整装置100は、テンションリール設備により巻き取られるストリップの搬送途中に設けられる装置であって、例えばめっき処理ラインにおいてめっきされたストリップをテンションリール設備に巻き取る前に設置される。
図1に示す張力調整装置100では、紙面右側から左側に向かって(すなわち、y軸正方向へ)ストリップ5は搬送されている。ガイドロール10に支持されたストリップ5は、張力調整装置100を通過して、例えばデフレクターロール20によって通板方向が変化されて、その先に設定されたテンションリールに巻き取られる。
【0023】
なお、以下において張力調整装置100の構成を説明するが、本実施形態では、ストリップ5の通板方向は
図1に示すように水平方向(y方向)であるとし、張力調整装置100は、水平方向に移動するストリップ5を下面側から鉛直上向きに押圧する力を調整することで、ストリップ5の張力変動を抑制するものとする。なお、張力調整装置100の設置の仕方はかかる例に限定されず、例えば、鉛直方向に通板するストリップに対してダンパーロールを水平方向から押圧させるように設置してもよい。
【0024】
本実施形態に係る張力調整装置100は、
図1に示すように、ダンパーロール110と、シリンダ120と、ガイドロール130、140とを備える。
【0025】
ダンパーロール110は、ストリップ5の通板方向に配置された2つのガイドロール130、140の間に配置され、水平方向に移動するストリップ5を下面側から鉛直上向きへ押圧する。なお、本実施形態に係る張力調整装置100において、ストリップ5のダンパーロール110への巻き付き角は180°未満となるように調整されており、ストリップ5は常に鉛直上向きに押圧されている状態となっている。ダンパーロール110としては、例えばCFRP(炭素繊維強化プラスチック)ロール等の低慣性ロールを用いるのがよい。このような低慣性かつ軽量のロールを用いることで、シリンダ120による昇降の応答性を向上させることができる。
【0026】
ダンパーロール110の両端は、
図2に示すように、回転軸112が軸受(図示せず。)によって回転可能に支持されている。両端の軸受は、それぞれシリンダ120、120のロッド124、124の端部に設けられた支持部122、122により上昇および下降可能に支持されている。ダンパーロール110の鉛直上側の外周面に接しているストリップ5から加わる力に応じて、ダンパーロール110は鉛直方向に上昇または下降する。
【0027】
シリンダ120、120は、ダンパーロール110を鉛直方向に移動させるアクチュエータである。シリンダ120、120は、
図2に示すように、ダンパーロール110の長手方向(x方向)両端にそれぞれ設けられており、ダンパーロール110の長手方向の高さ位置が同一となるように同期して駆動する。シリンダ120、120としては、例えばエアシリンダを用いることができる。この際、シリンダ120、120として、摺動抵抗の小さい低摩擦シリンダを用いることで、低圧駆動が可能となり、応答性も向上することができる。この場合、シリンダ120、120の最低作動圧は例えば0.005MPa程度とされる。シリンダ120、120は、例えば基台102に載置された状態で設置してもよい。
【0028】
各シリンダ120は、チューブ126内空間を区分するピストン125(
図3参照)を、ピストン内圧を変化させることでチューブ126の長手方向に移動させ、ピストン125に固定されたロッド124を長手方向に移動させる。本実施形態において、ロッド124は鉛直方向に移動するように設けられる。ロッド124の移動に応じて、ロッド124先端の支持部122により支持されたダンパーロール110が上昇または下降する。
【0029】
ガイドロール130、140は、ストリップ5の通板方向にダンパーロール110を挟んで配置される。ガイドロール130、140は、例えば同一の径および材質からなるロールが使用され、略同一高さ位置で、ストリップ5の上面に当接するように配置される。ガイドロール130、140は、その両端においてロールの回転軸が軸受(いずれも図示せず。)によって回転可能に支持されている。ガイドロール130、140の各軸受は、例えば
図1に示すような基台104、106にそれぞれ支持される。
【0030】
ストリップ5は、ガイドロール130とガイドロール140との間において、これらの中間位置で下面がダンパーロール110により押し上げられることにより、
図1に示すように上下に移動しながら通板するようになる。ライン下流側のガイドロール140を通過したストリップ5は、次の工程へ向かって、例えばデフレクターロール20によって通板方向が変化されたりする。
【0031】
<2.張力調整装置の作用>
ストリップ5がテンションリールに巻き付ける際、巻きズレ防止のため、テンションリールはストリップ5の通板速度より高速に回転されている。このため、ストリップ5がテンションリールに巻き付く際にストリップ5が引っ張られ、急峻な張力変動が発生する。この張力変動はライン上流側に伝播する。本実施形態に係る張力調整装置100は、通板時にはストリップ5をダンパーロール110で押し上げておき、通常操業時のストリップ5の張力変動は、ストリップ5の張力のうち鉛直下向きの力に応じてダンパーロール110が昇降することで吸収される。
【0032】
一方、例えばテンションリールにストリップ5が巻き付く際に発生してライン上流側へ伝播してきた大きな張力変動は、ダンパーロール110を強制的に下降させることによって抑制する。これにより、急峻に発生した大きな張力変動を吸収することが可能となる。
【0033】
以下、
図3および
図4に基づいて、張力変動装置100の作用を説明する。
図3は、本実施形態に係る張力変動装置100の作動機構を示す概略説明図である。
図4は、本実施形態に係る張力変動装置100の作動順序を説明するフローチャートである。
【0034】
[2−1.作動機構]
まず、
図3に基づいて、張力変動装置100の作動機構について説明する。
図3には、
図1および
図2に示した張力変動装置100のダンパーロール110とシリンダ120とを模式的に示している。ダンパーロール110は、上述したように、シリンダ120の内圧の変化に応じて昇降可能に設けられている。
【0035】
ここで、ピストン125によって区画されたシリンダ120内の各空間の圧力について、シリンダヘッド側の圧力をP
H、シリンダロッド側の圧力をP
Rとする。シリンダヘッド側の圧力P
Hは、第1リリーフ弁150によって所定の圧力P
1に調整されている。シリンダヘッド側の圧力P
Hが上昇して設定圧力P
2(>P
1)以上となると、第1リリーフ弁150によりシリンダヘッド側の空間からエアが開放され、圧力P
Hが圧力P
2を超えないように調整される。
【0036】
一方、シリンダロッド側の圧力P
Rは、第2リリーフ弁180によって調整可能に構成されている。シリンダロッド側の圧力P
Rは、エア回路の場合、通常、大気圧での設定が可能であり、ストリップ5に急峻な張力変動が発生した場合には、第2リリーフ弁180が開放され、所定の圧力P
3が付与される。圧力P
3の付与は、張力変動検出部160の検出結果に基づき、圧力付与部であるエア供給弁170が開放されることにより行われる。
【0037】
張力変動検出部160は、ダンパーロール110に加わるストリップ5からの所定の大きさ以上の張力発生の有無を検出する。本実施形態において、張力変動検出部160は、例えば、ダンパーロール110が上昇および下降する際に接触する位置に配置されたストライカにより構成することができる。ストライカは、
図3に示すように、その高さ位置によってエア供給弁170を開閉するように構成されている。
【0038】
本実施形態では、ストリップ5の張力が上昇してダンパーロール110が通常の高さ位置から下降する際に、ダンパーロール110が所定の高さ位置まで下降すると、高さ位置(a)にあるストライカを叩いて高さ位置(b)まで下降させる。ここで、ストライカが高さ位置(a)にあるときにはエア供給弁170は閉じられている。ストライカが高さ位置(a)から(b)まで下降すると、エア供給弁170が開放され、第2リリーフ弁180を介してシリンダロッド側の空間126bにエアが供給される。
【0039】
ストリップ5の張力が急峻に上昇すると、ストリップ5に急な蛇行が発生する。ストリップ5が蛇行すると、エッジマスク(ストリップ5の板エッジ部のメッキ付着量調整装置)がストリップ5の蛇行に追い付かず、板エッジ部のメッキ付着量が増加してしまう。その結果、ストリップ5の品質が不良となる。そこで、本実施形態に係る張力変動装置100では、急な蛇行によるストリップ5の品質不良を発生させない張力水準を維持できなくなるロールの所定の高さ位置にダンパーロール110が下降した際に、エア供給弁170を開放し、シリンダロッド側の空間126bにエアを供給する。
【0040】
このダンパーロール110の所定の高さ位置の設定は、例えば、通板時にストリップ5に過張力による蛇行が発生する張力水準と、シリンダ圧力とロール位置との幾何学的関係から設定可能である。
【0041】
なお、張力変動検出部160は、ストライカのように機械的機構によってエア供給弁170を開閉させるように構成してもよく、シリンダ120のピストン125の位置を検出可能な位置センサにより構成してもよい。張力変動検出部160を位置センサにより構成する場合、ピストン125の位置がヘッド側へ所定以上移動したことを検出可能に構成することで、ダンパーロール110の下降量(すなわち、高さ位置)を認識することができる。位置センサによってダンパーロール110が所定量以上下降したことが認識されると、エア供給弁170が開放され、第2リリーフ弁180を介してシリンダロッド側の空間126bにエアが供給される。
【0042】
エア供給弁170は、シリンダロッド側の空間126bに所定の圧力P
3を付与する圧力付与部である。エア供給弁170は、張力変動検出部160の検出結果に応じて開閉される。
【0043】
第2リリーフ弁180は、エア供給弁170が開口され圧力P
3のエアが流入されると、エアをシリンダロッド側の空間126bに供給する。シリンダロッド側の圧力P
Rが圧力P
3より高くなると、シリンダロッド側の空間126bから第2リリーフ弁180を介してエアが開放され、圧力P
Rが圧力P
3となるように調整される。
【0044】
[2−2.作動順序]
次に、
図4に基づいて、張力変動装置100の作動順序について説明する。
図4に示すように、通常操業時、ダンパーロール110の高さ位置は、通常高さ位置に設定されている(S100)。通常高さ位置は、ダンパーロール110がシリンダ120、120により上昇されたときの位置であり、シリンダ120、120の内圧は、シリンダヘッド側に付与される圧力P
1に設定されている。
【0045】
このとき、ラインを通板するストリップ5の張力に変動がほとんどなければ(S102のNo)、ダンパーロール110はほぼ通常高さ位置で保持される。また、ラインを通板するストリップ5の張力が上昇すると(S102のYes)、張力の鉛直下向きの力Tによってダンパーロール110は押し下げられる(S104)。ダンパーロール110の下降により、ピストン125を押す力F
2が上昇し、シリンダ120、120の内圧が上昇する。シリンダヘッド側の圧力P
Hが圧力P
2(>P
1)を超えると、第1リリーフ弁150より空間126aからエアが放出され、シリンダヘッド側の圧力P
Hの過度の上昇が防止される。
【0046】
ストリップ5の張力上昇に伴いダンパーロール110が下降していき、所定量だけ下降すると、張力変動検出部160によりダンパーロール110の下降が検出される(S106)。張力変動検出部160による検出がない場合には、ステップS102からの処理が繰り返される。
【0047】
一方、張力変動検出部160によりダンパーロール110が所定量だけ下降したことが検出されると、エア供給弁170が開放され、シリンダロッド側の空間126bに圧力P
3(>P
2)のエアが供給される(S108)。これにより、シリンダロッド側からピストン125を押す力F
2が増大され、シリンダ120のピストン125がヘッド側へ移動する。そして、ピストン125の下降によりロッド124に支持されたダンパーロール110が強制的に押し下げられ、ダンパーロール110の下降速度が上昇する。このように、ダンパーロール110が急峻に下降される。
【0048】
シリンダロッド側の空間126bに圧力P
3のエアが供給されたとき、ダンパーロール110は可能な限り早期に下降するように構成するのがよい。そこで、ダンパーロール110として軽量の低慣性ロールを用いたり、シリンダ120に応答性の高い低摩擦シリンダを用いたりしてもよい。なお、ダンパーロール110は、最大下降時においてもストリップ5から離隔しないようにする。そこで、最大下降位置にストッパを設け、ダンパーロール110が最大下降位置で確実に停止するようにしてもよい。
【0049】
ここで、シリンダロッド側の空間126bへの圧力P
3のエア供給により、シリンダヘッド側の圧力P
Hも上昇する(S110)。シリンダヘッド側の圧力P
Hは、圧力P
2(>P
1)を超えると、第1リリーフ弁150より空間126aからエアが放出され、圧力P
2に保持される(S112)。これにより、シリンダ120の内圧が一定に保持され、下降されたダンパーロール110の高さ位置が所定の高さ位置に保持される。
【0050】
その後、シリンダロッド側の空間126bに圧力P
3が付与されてからの経過時間(以下、「背圧付与時間」とする。)が所定時間以上となったか否かが判定される(S114)。ステップS114にて背圧付与時間が所定時間を経過したと判定されるまで、ステップS114の処理は繰り返される。そして、背圧付与時間が所定時間を経過すると、エア供給弁170が閉じられ、シリンダロッド側の空間126bへの圧力P
3のエア供給が停止される(S116)。シリンダロッド側の空間126bに圧力P
3のエアを供給する所定時間は、ストリップ5の張力変動が収束する時間に応じて設定され、例えば10秒程度に設定される。
【0051】
ステップS116によりエア供給弁170が閉じられると、シリンダロッド側の圧力P
Rは圧力P
3より低くなっていき、最終的にシリンダヘッド側に供給されているエアの圧力P
1となる。これにより、シリンダ120のピストン125がロッド側へ移動され、ロッド124の上昇とともにダンパーロール110は上昇する。そして、シリンダ120の内圧がP
1となり、ダンパーロール110の高さ位置は通常高さ位置となる(S118)。
【0052】
このような本実施形態に係る張力調整装置100の作用によって、ストリップ5の大きな張力変動も、シリンダ120に背圧を付与することでダンパーロール110を強制的に下降させることで抑制される。これにより、急峻に発生した例えば100〜700kg程の大きな張力変動を吸収することが可能となる。
【0053】
<3.まとめ>
以上、本実施形態に係る張力調整装置100の構成とその作用について説明した。かかる張力調整装置100によれば、通板するストリップ5を下面から押圧するダンパーロール110の高さ位置を、ストリップ5の張力変動に応じて変化させる。通常操業時にはダンパーロール110は上昇されており、ストリップ5の張力が大きくなるとダンパーロール110は下降されてストリップ5の張力変動が吸収される。また、ストリップ5の張力が急激に上昇した場合には、より早く張力変動を吸収できるように、シリンダロッド側に圧力P
3を付与し、ダンパーロール110の下降速度を増加させる。
【0054】
これにより、ストリップ5の急激な張力上昇が生じた場合にも、ストリップ5のピーク張力を低減できるとともに、早期に張力変動を吸収することができる。なお、シリンダヘッド側の圧力P
Hの設定圧力および張力変動検出部160により検出するダンパーロール110の高さ位置を適切に調整することにより、さらにストリップ5のピーク張力を低減することができる。
【実施例】
【0055】
実施例として、本実施形態に係る張力調整装置100を設置したときのストリップの張力変動を示す。比較例として、張力調整装置100未設置の場合(エアシリンダ未設置)におけるストリップの張力変動を調べた。
【0056】
なお、張力調整装置100では、板厚、板幅に関係なく、ストリップに加えられた張力が950kgfで一定となるように制御した。ストリップの張力は、テンションメータ(ロール直下に設けられたロードセル)にて検出した。また、シリンダヘッド側の圧力P
Hの上限圧力(リリーフ圧)P
2は、985kg(0.25MPa)に設定されている。そして、シリンダロッド側の空間に供給される圧力(背圧)P
3は、0.6MPaに設定されている。
【0057】
図5左側のグラフに示すように、張力調整装置100未設置の場合には、ストリップの張力は2185kgまで上昇した。一方、本実施形態に係る張力調整装置100を用いた場合には、
図5右側のグラフに示すように、比較例の場合よりストリップの張力が低下し、1452kgとなった。このように、本実施形態に係る張力調整装置100を設置することで、ストリップの急激な張力上昇が生じた場合にも効果的にピーク張力が低減され、また、早期に張力変動が吸収されることが示された。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0059】
例えば、上記実施形態では、張力調整装置を、めっき処理ラインにおいてめっきされたストリップをテンションリール設備に巻き取る前に設置するものとして説明としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、張力調整装置は、ラインを通板する鋼帯の張力変動を生じさせる設備と張力変動の影響を回避したい設備との間に適宜設置してもよい。