(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394207
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】旋回機構付きスクライブヘッド
(51)【国際特許分類】
B28D 5/00 20060101AFI20180913BHJP
C03B 33/027 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
B28D5/00 Z
C03B33/027
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-181903(P2014-181903)
(22)【出願日】2014年9月8日
(65)【公開番号】特開2015-93487(P2015-93487A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2017年8月29日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0135258
(32)【優先日】2013年11月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】崔 東光
【審査官】
柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−051784(JP,A)
【文献】
特開2007−182068(JP,A)
【文献】
特開2010−158737(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0283020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 5/00
C03B 33/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にスクライブラインを形成するためのカッターホイールを回転可能に保持するホルダを備えた旋回機構付きスクライブヘッドであって、
駆動手段によって回転するボールネジと、
該ボールネジの回転によって昇降するスクライダと、
該スライダに装着され、前記ボールネジの終端部と結合時に前記ボールネジとともに回転する回転子と、を有し、
前記ボールネジの終端部に磁石部が設けられるとともに、
前記ボールネジの終端部に対向する前記回転子の端部に、前記磁石部と互いに引き合う極性の他の磁石部が設けられ、
前記ホルダの上端部に結合された非磁性体からなる外筒部材と、
前記回転子の外周に装着され、前記回転子の一方向の回転力のみを前記外筒部材に伝達するワンウェイクラッチと、を有し、
前記外筒部材の外周上に円周方向に90度間隔で付着金属部が形成され、
前記スライダ上には、前記付着金属部と対向する位置に磁石部が少なくとも1つ形成され、
前記付着金属部は、前記スライダ上に形成される磁石部とは異なる極性の磁性体であることを特徴とする旋回機構付きスクライブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回機構を有するスクライブヘッドに関し、より詳細には、基板にスクライブラインを形成するカッターホイールをスクライブ方向に対して所定の角度で回転させるとき、スクライブヘッドを正確に位置整列及び固定させる旋回機構を有するスクライブヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガラス基板などの脆性材料を所望のサイズに分断するためには、まずカッターホイールの刃を所定の荷重でガラス基板の表面に圧接させた状態で、ガラス基板を移動させながらその表面にスクライブラインを形成する。次に、そのスクライブラインに所定の力を加えてガラス基板を分断する。
【0003】
ガラス基板を分断するときに、カッターホイールを回転させるために、スクライブヘッドに旋回機構を付与するケースがある。従来の旋回機構付きスクライブヘッドについて
図1を参照して説明する。
【0004】
図1を参照すると、従来の旋回機構付きスクライブヘッドは、サーボモータ60が上部側に装着されており、該サーボモータ60によってボールネジ62が回転される。ボールネジ62は、カップリング61と螺合されており、カップリング61はスライダ30と結合されている。サーボモータ60によりボールネジ62が回転されると、カップリング61が昇降し、カップリング61に結合されたスライダ30も固定板65の一面に沿って昇降する。
【0005】
スライダ30の下部側には、ボールネジ62の終端部と結合及び分離されるように回転子42がボールネジ62と同一軸線上に装着される。回転子42は、ボールネジ62と結合した時に、ボールネジ62とともに回転する。
【0006】
回転子42の外周には、ワンウェイクラッチ40が装着されており、回転子42の一方向の回転力のみを非磁性体からなる外筒部材43に伝達する。
【0007】
具体的には、ワンウェイクラッチ40は、ボールネジ62がスライダ30を上昇させる方向に回転する時のみ、ボールネジ62と結合された回転子42の回転力を外筒部材43に伝達し、ボールネジ62がスライダ30を下降させる方向に回転する時は、ボールネジ62と結合された回転子42の回転力を外筒部材43に伝達しないよう構成されている。
【0008】
したがって、ボールネジ62が回転子42と結合した状態でスライダ30を上昇させる方向に回転すると、外筒部材43も回転子42と同一方向に回転するが、ボールネジ62が回転子42と結合した状態でスライダ30を下降させる方向に回転しても、外筒部材43は回転しない。
【0009】
外筒部材43の下端部には、カッターホイール51を回転可能に保持するホルダ50の上端部が結合されており、外筒部材43の回転に伴ってホルダ50も回転されながら角度が変わるようになっている。すなわち、ホルダ50は外筒部材42と同一方向に回転されるが、外筒部材43がワンウェイクラッチ40によって逆方向には回転されないので、ホルダ50も一方向のみに回転されてその角度が変更される。
【0010】
また、外筒部材43の外周部には、位置決め溝25が形成され、位置決め溝25に対向する位置にはボールプランジャ24が設置されており、ホルダ50の角度が維持されるように構成されている。位置決め溝25は、外筒部材43の外周部に一定の間隔(例えば90度間隔)で多数個形成することができる。
【0011】
以上のように構成された従来のスクライブヘッドにおいては、ボールネジ62の回転力を回転子42に伝達するために、ボールネジ62と回転子42との結合部を角ばった形状にしているが、このような構造は、互いに結合される部位が精密に加工されなければならないので、加工コストの増加を伴うという問題点がある。また、ボールネジ62と回転子42の軸線が少しでもずれた場合は、互いの結合が容易でなくなるという問題点もある。
【0012】
また、ボールプランジャ24は、外筒部材43の外周面に形成された位置決め溝25に嵌まるように常に外筒部材43の外周面に押し付けを加えているので、ボールプランジャ24の加圧力によって外筒部材43が円滑に回転されないという問題点も発生している。
【0013】
外筒部材43が円滑に回転できなければ、外筒部材43の下端部に結合されるホルダ50の角度も正確に回転されない状態で基板がスクライブされるので、不良品が多量に発生するようになる。
【0014】
また、ボールプランジャ24は、外筒部材43の外周面を、外筒部材43の回転軸中心に向かって常に加圧しているので、外筒部材43の外周部に、繰り返される接触摩擦によりライン溝が発生するという問題点も発生している。さらに、ボールプランジャ24を付勢するスプリングの張力が緩むと、ボールプランジャ24が位置決め溝25にしっかり嵌まらないという問題点も発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】韓国公開特許公報第2012−0020856号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上述の問題点に鑑みて創出されたものであって、その目的は、基板にスクライブラインを形成するカッターホイールをスクライブ方向に対して所定の角度で回転させるとき、正確な回転角が得られる旋回機構付きスクライブヘッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態による旋回機構付きスクライブヘッドは、基板にスクライブラインを形成するためのカッターホイールを回転可能に保持するホルダを備えた旋回機構付きスクライブヘッドであって、駆動手段によって回転するボールネジと、該ボールネジの回転によって昇降するスライダと、 該スライダに装着され、ボールネジの終端部と結合時にボールネジとともに回転する回転子と、を有し、ボールネジの終端部に磁石部が設けられるとともに、ボールネジの終端部に対向する回転子の端部に、磁石部と互いに引き合う極性の他の磁石部が設けられることを特徴とする。
【0018】
また、
ホルダの上端部に結合された非磁性体からなる外筒部材と、回転子の外周に装着され、回転子の一方向の回転力のみを前記外筒部材に伝達するワンウェイクラッチと、を有し、外筒部材の外周上に円周方向に90度間隔で付着金属部が形成され、スライダ上には、付着金属部と対向する位置に磁石部が少なくとも1つ形成されている。
【0019】
付着金属部は、スライダ上に形成される磁石部とは異なる極性の磁性体とす
る。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る旋回機構付きスクライブヘッドは、基板にスクライブラインを形成するカッターホイールをスクライブ方向に合わせて特定角度で正確に回転させることにより、基板面にスクラッチなどが発生することを防止することができ、基板の不良品を顕著に減らすことができる。
【0022】
また、本発明に係る旋回機構付きスクライブヘッドは、ボールネジ及び回転子の結合部位に平面の磁石部を設けているので、互いの結合が容易であるだけでなく、ボールネジの軸線と回転子の軸線が異なっていても、互いの結合を失敗したり、ボールネジの回転力が回転子に誤って伝達される等の問題点を未然に防止することができる。
【0023】
また、本発明に係る旋回機構付きスクライブヘッドは、カッターホイールが装着されたホルダを特定角度で回転させるとき、磁石部を利用して特定角度で正確に停止させるので、円滑かつ正確なスクライブ作業が可能になる。
【0024】
また、外筒部材の外周面に付着金属部を直接当接させずに外筒部材を特定角度で停止させるので、外筒部材の外周面の摩耗を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、従来の旋回機構を有するスクライブヘッドの一部を切開した状態を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の旋回機構を有するスクライブヘッドの一部を切開した状態を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の旋回機構を有するスクライブヘッドのボールネジ及び回転子が結合された状態を示す一部を切開した状態を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の旋回機構を有するスクライブヘッドのボールネジ及び回転子の回転時に磁石部及び付着金属部によって回転子が角度調節されることを示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の旋回機構を有するスクライブヘッドのボールネジ、回転子の磁石部、及び付着金属部の別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の一実施形態に係る旋回機構付きスクライブヘッドの構成を図面を参照して詳細に説明する。参考として、本実施形態に関する説明のうち、
図1に示された従来のスクライブヘッドと同一または類似する構成要素については同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0027】
本実施形態に係る旋回機構付きスクライブヘッドは、
図2及び
図3に示すように、サーボモータ60が上部側に装着されており、当該サーボモータ60によってボールネジ62が回転される。
【0028】
ボールネジ62は、カップリング61と螺合されており、カップリング61はスライダ30と結合されている。サーボモータ60によりボールネジ62が回転されると、カップリング61が昇降し、カップリング61に結合されたスライダ30も固定板65の一面に沿って昇降する。
【0029】
スライダ30の下部には、ボールネジ62の終端部と結合及び分離されるように回転子42が同一軸線上に装着されている。そして、本実施形態では、回転子42とボールネジ62を、互いに連動するように結合させるために、互いの端部に磁性を有する磁石部を装着させている。
【0030】
具体的には、回転子42の上端に磁石部63bが装着されており、これに対向するボールネジ62の下端部に磁石部63aが装着されている。回転子42に装着された磁石部63bとボールネジ62に装着された磁石部63aは、互いに異なる極性を有する磁性体であるため、両磁石部の間隔が一定以下になると、互いに引き合うようになる。
【0031】
したがって、回転子42とボールネジ62が接近して、磁石部63aと磁石部63bが互いにくっ付くようになると、ボールネジ62の回転によって回転子42がともに回るようになる。
【0032】
回転子42の外周には、ワンウェイクラッチ40が装着されており、回転子42の一方向の回転力のみを非磁性体からなる外筒部材43に伝達する。具体的には、ワンウェイクラッチ40は、ボールネジ62がスライダ30を上昇させる方向に回転する時のみ、ボールネジ62と結合された回転子42の回転力を外筒部材43に伝達し、ボールネジ62がスライダ30を下降させる方向に回転する時は、回転子42の磁石部63bがボールネジ62の磁石部63aに互いに付いていても、ボールネジ62と結合された回転子42の回転力を外筒部材43に伝達しないよう構成されている。
【0033】
したがって、ボールネジ62が回転子42と結合した状態でスライダ30を上昇させる方向に回転すると、外筒部材43も回転子42と同一方向に回転するが、ボールネジ62が回転子42と結合した状態でスライダ30を下降させる方向に回転しても、外筒部材43は回転しない。
【0034】
外筒部材43の下端部には、カッターホイール51を回転可能に保持するホルダ50の上端部が結合されており、外筒部材43の回転に伴ってホルダ50も回転されながら角度が変わるようになっている。すなわち、ホルダ50は外筒部材42と同一方向に回転されるが、外筒部材43がワンウェイクラッチ40によって逆方向には回転されないので、ホルダ50も一方向のみに回転されてその角度が変更される。
【0035】
また、本発明において、ホルダ50の回転された状態がそのまま維持されるよう、外筒部材43の外周部には、付着金属部25が形成され、付着金属部25上に対向する位置のスライダ30上には磁石部24が設置されている。回転子42の外周部は金属性を帯びていないことが好ましい。付着金属部25は、外筒部材43の外周上に一定間隔(例えば、円周方向に90度間隔)で設けられる。また、外筒部材43の外周部には、刃先位置確認溝27が形成されており、刃先位置確認溝27に隣接して、その位置を検出する刃先方向検出センサ部26が設置されている。
【0036】
外筒部材43の下端部には、一側に切開された回転結合溝45が形成されている。回転結合溝45に対向する位置のホルダ50の上端部には、キャスターピン52が突設されて、回転結合溝45に嵌まり込むようになっている。回転結合溝45及びキャスターピン52は遊嵌するように形成されており、ホルダ50が円周方向に微小角度自在に回転できるように結合されている。
【0037】
以下、本実施形態に係る旋回機構付きスクライブヘッドの作動状態を詳細に説明する。本実施形態に係るスクライブヘッドを基板(図示せず)上に降下させるために、
図2及び
図3に示すように、スクライブヘッドの上部側に装着されているサーボモータ60を作動させてボールネジ62を回転させる。
【0038】
ボールネジ62が回転すると、スライダ30が
図3で示すように基板に向かって下降する。スライダ30が下降すると、スライダ30の下部に装着されているホルダ50が下降して、ホルダ50の下端部に装着されているカッターホイール51が基板の上面に当接する。
【0039】
続いて、基板をコンベアベルトの進行方向に移動させながらスクライブ作業を実施した後、コンベアベルトを逆回転させ、基板をスクライブ作業開始時の元の位置に復帰させた後、次のスクライブ作業を実施する。このようなスクライブ作業を繰り返し連続して実施するためには、基板に圧接されながらスクライブ作業を実施しているカッターホイール51(すなわち、ホルダ50)を基板から上昇させ、また基板上に下降させる工程を繰り返す。ただし、カッターホイール51の刃先角度を90度ずつ変えながら実施しなければならない。
【0040】
具体的には、ボールネジ62によってスライダ30が上昇されると、スライダ30の下部に装着されている回転子42がボールネジ62の終端部と結合し、回転子42もボールネジ62の回転方向に回転される。本実施形態では、ボールネジ62及び回転子42が連動して円滑に動作できるように、ボールネジ62の下端部に磁石部63aが装着され、回転子42の上端部に別の磁石部63bが装着されている。磁石部は磁石の強度によって一般の磁石や磁性の強度が大きいネオジム磁石などを利用することができ、また磁性の強度によって磁石の大きさを変えて使用することができる。
【0041】
回転子42の磁石部63bとボールネジ62の磁石部63aが互いに結合されるとき、回転子42が90度分だけ回転されるように調節しておくと、回転子42から外筒部材43を介して回転されるホルダ50も正確に90度ずつ回転しながら基板のスクライブ作業を実施することができる。
【0042】
回転子42の磁石部63b及びボールネジ62の磁石部63aが結合した状態で90度回転すると、回転後の角度が変わらないように、外筒部材43の外周部に90度の角度で付着金属部25が設置され、付着金属部25と対向する位置のスライダ30上に磁石部24が設置される。
【0043】
すなわち、
図4に示すように、付着金属部25と磁石部24が接近し、磁石部24の磁力が付着金属部25に及ぶようになると、付着金属部25が磁力により引っ張られ、90度回転した状態が安定して維持される。
【0044】
また、ボールネジ62によって回転子42が予定の角度まで回転されなくても、
図4に示すように、磁石部24が付着金属部25を矢印方向に引っ張るので、円滑に角度の変更が行われる。すなわち、外筒部材43が90度よりも多く、または90度よりも少なく回転された時に、磁石部24の磁力が及ぶ範囲まで付着金属部25を引っ張ることができるようになっているので、正確かつ円滑な角度の変更が行われる。
【0045】
本実施形態では、
図4に示すように、外筒部材43の外周上に付着金属部25が90度の間隔で形成され、スライダ30上の付着金属部25と対向する位置に磁石部24が1つ形成されているが、
図5に示すように、スライダ30に90度毎に磁石部25を形成してもよい。
【0046】
それだけでなく、本実施形態の磁石部25は、永久磁石または電磁石を利用することができる。特に、磁石部25として電磁石を利用する場合は、磁石部の磁力を調節することができるので、回転の精度を向上させることができるという利点がある。
【0047】
前記のように、スライダ30上の磁石部24の磁力により外筒部材43の付着金属部25が引っ張られているので、付着金属部25が形成された外筒部材43は、90度回転された状態で一定以上の回転力が加わらない限り、その角度が変わらない。
【0048】
そして、ボールネジ62を利用して、スライダ30の上昇動作を繰り返すことにより、回転子42の回転角度を90度ずつ変更させ、これにより、回転子42に連動され回転するホルダ50及びカッターホイール51の回転角度も90度ずつ精度良くかつ容易に変更させることができ、縦方向及び横方向へのスクライブ作業を連続的に実施することができる。
【0049】
一方、サーボモータ60を駆動してボールネジ62を逆方向に回転させると、スライダ30は、基板に向かって下降するようになる。スライダ30が下降すると、ボールネジの下端部に装着されている磁石部63aと回転子42の上端部に装着されている磁石部63bは分離される。磁石部63aと磁石部63bが分離する時点までに回転子42に加えられた回転力は、回転子42の外周部に装着されたワンウェイクラッチ40により外筒部材43には伝わらない。
【0050】
すなわち、回転子42の回転力は、ワンウェイクラッチ40によって、常時一方向のみ伝達されるので、スライダ30を下降させるためにボールネジ62が回転しても、既に先の動作で90度回転させられたカッターホイール51及びホルダ50は、マイナス90度回転せず、固定された状態が維持される。
【0051】
また、外筒部材43の外周部には、
図2に示すように、刃先位置確認溝27が形成され、刃先位置確認溝27に隣接して刃先方向検出センサ部26が設置されている。したがって、外筒部材43がボールネジ62及び回転子42とともに正確に回転し、外筒部材43の下部に結合されているホルダ50のカッターホイール51が正確に90度だけ回転されたのかを検出することができる。
【0052】
刃先位置確認溝27の位置が刃先方向検出センサ部26によって検出されないときは、スクライブ装置が作動停止するようにセッティングされている。すなわち、ホルダ50を回転させることができない事態が発生しても、刃先方向検出センサ部26からのエラー信号によってスクライブ作業が行われないので、カッターホイール51によって基板にスクラッチ(引っ掻き傷)などが発生して不良品が量産されることを未然に防止することができる。
【0053】
また、
図2に示すように、本実施形態では、より精密なスクライブ作業を実施するために、外筒部材43の下端部に一側に切開された回転結合溝45が形成されており、回転結合溝45に対向する位置のホルダ50の上端部には、キャスターピン52が突設されて、回転結合溝45に嵌まり込むようになっている。
【0054】
具体的には、外筒部材43が90度回転すると、その下端部側に形成された回転結合溝45も同一の方向に90度回転する。この時、回転結合溝45にホルダ50のキャスターピン52が係合されているので、キャスターピン52も同様に回転し、これによりホルダ50も同一の回転方向に90度回転する。
【0055】
なお、本実施形態においては、回転結合溝45とキャスターピン52は、互いに無理に嵌合されておらず、キャスターピン52が微小角度自在に回転できるように少し緩めに嵌合されている。これは次のような理由による。すなわち、回転結合溝45とキャスターピン52が完全に嵌合された状態で基板のスクライブ作業を実施した場合、カッターホイール51が正確に90度回転されていなければ、カッターホイール51の刃先方向がスクライブヘッドの移動方向と正確に一致せず、基板面に引っ掻き傷をもたらすおそれがあるので、カッターホイール51が装着されたホルダは外周方向に少し遊びを持たせておくことが好ましい。
【0056】
以上のように構成されたスクライブヘッドは、ボールネジ62を用いてカッターホイール51を昇降させると同時に、ボールネジ62の回転力を利用してカッターホイール51の角度を強制的に90度ずつ回転させることができ、基板のスクライブ作業の正確性と迅速性を確保することができる。具体的には、ボールネジ62を用いてスライダ30を上昇させながらホルダ50に装着されたカッターホイール51を一次的に90度ずつ回転させると同時に、カッターホイール51が正確に回転されたのかを刃先位置確認溝27及び刃先方向検出センサ部26の構成によって二次的に確認した後、カッターホイール51が正確に回転された状態であったときのみに、基板のスクライブ作業が実行される。
【0057】
特に、本実施形態では、スライダ30上の磁石部24及び外筒部材43上の付着金属部25により、外筒部材43の回転角度が90度となるように正確に回転力を伝達させることができる。また、外筒部材43の回転角度が、決められた回転角度よりも少し足りないか、または超える場合にも、外筒部材43の付着金属部25が、磁石部24の磁力が及ぶ範囲内に入っていれば、磁力によって引っ張られ、自動的に回転角度を合わせるように制御されるので、回転角度の誤差による問題点を未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0058】
24 磁石部
25 付着金属部
30 スライダ
42 回転子
50 ホルダ
51 カッターホイール
62 ボールネジ
63a,63b 磁石部