(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された弁開閉時期制御装置として、特許文献1には、電動モータにより回転する回転軸(文献では遊星枠)の回転を回転作動歯車機構により減ずることにより駆動側回転体と従動側回転体との相対回転位相を設定する技術が示されている。
【0003】
この特許文献1では、回転作動歯車機構が、電動モータにより回転軸芯(文献では回転軸線)を中心に駆動回転する回転軸の偏心部に支持され大径の外歯部と小径の外歯部とが一体形成されたインナギヤ(文献では遊星歯車)と、駆動側回転体に支持される大径のリングギヤと、従動側回転体に支持される小径のリングギヤとを備えている。更に、大径のリングギヤの内歯部の一部にインナギヤの大径(大径部)の外歯部の一部を噛合させ、小径のリングギヤの内歯部の一部にインナギヤの小径(大径部)の外歯部の一部を噛合させることで差動型の減速機構が構成されている。
【0004】
この減速機構は、大径のリングギヤの内歯部の歯数がインナギヤの大径の外歯部の歯数より多く、小径のリングギヤの内歯部の歯数がインナギヤの小径の外歯部の歯数より多く設定されている。
【0005】
この構成から、電動モータの駆動力により回転軸芯を中心に回転軸を回転させることにより、大径のインナギヤが、リングギヤの大径部に対する噛み合い位置を変化させる形態で回転軸の偏心部を中心に自転する。この自転によりインナギヤの小径部が小径のリングギヤに対する噛み合い位置を変化させる形態で作動する。これにより大径のリングギヤとのインナギヤの大径部との間での差動、及び、小径のリングギヤとインナギヤの小径部との差動により減速が実現する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されるように、回転軸の外端部がベアリングを介して駆動側回転体に支持(片持ち状に支持)され。リングギヤの内歯部の一部に対してインナギヤの外歯部の一部を噛合させ、インナギヤを、偏心軸芯を中心に回転させる減速系では、回転軸に対して曲げ方向への荷重が常に作用する。
【0008】
尚、特許文献1では、大径のリングギヤと小径のリングギヤとの境界に段差部が形成され、この段差部にインナギヤの側面が接触可能な構成であるため、曲げ方向への荷重が増大した場合でも、インナギヤが段差部に接触することで回転軸の姿勢の大きな変動は抑制されるように構成されている。
【0009】
小型化のため減速機構を、例えば、1つのリングギヤと1つのインナギヤとの組み合わせにより構成したものを想定すると、特許文献1に示される段差部が形成されない構成となる。従って、回転軸に対して曲げ方向に作用する荷重により、回転軸の姿勢が大きく変化した場合には、リングギヤの内歯部とインナギヤの外歯部との噛み合い部が分離する状態に陥ることも考えられた。特に、電動モータの回転速度の変更時には曲げ方向への荷重が増減し、リングギヤの内歯部とインナギヤの外歯部との噛み合い部が一層離脱しやすくなることも考えられた。
【0010】
本発明の目的は、インナギヤを支持する回転軸の姿勢の変動を抑制して安定した作動を行う弁開閉時期制御装置を構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、回転軸芯を中心に内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、
前記駆動側回転体と同軸芯上で相対回転自在に配置され、前記内燃機関の弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体と、
電動アクチュエータの駆動力により前記駆動側回転体及び前記従動側回転体の相対回転位相を設定するギヤ式の位相調節機構とを備え、
前記位相調節機構が、前記回転軸芯と同軸芯上に配置される回転軸と、
前記回転軸芯と同軸芯上に配置されるリングギヤと、前記回転軸芯と平行姿勢の偏心軸芯と同軸芯上に配置され前記リングギヤの内周の内歯部に噛合する外歯部を有するインナギヤと、前記回転軸芯を中心に回転自在に備えられ前記インナギヤを相対回転自在に支持する偏心部とを有し、前記リングギヤの内周の内歯部の一部に前記インナギヤの外歯部の一部を噛み合わせた状態で、前記電動アクチュエータの駆動力で前記回転軸を駆動回転させることで前記偏心軸芯の位置を公転させ、前記リングギヤの歯数と前記インナギヤの歯数との差分に相当する角度だけ前記リングギヤに対して前記インナギヤを相対回転させる差動型の減速機構に構成され、
前記回転軸
の一端部を前記回転軸芯を中心に回転自在に支持する第1軸受が前記駆動側回転体に備えられると共に、前記回転軸の前記回転軸芯に直交する方向への
前記回転軸の他端部の変位を抑制する第2軸受が前記従動側回転体に備えられ
、
前記第2軸受が環状を成し、かつ、前記回転軸の前記他端部の外面を取り囲む支持部を有する点にある。
【0012】
これによると、回転軸が第1軸受により回転軸芯を中心に回転自在に駆動側回転体に支持される。また、回転軸のうち第2軸受の側に曲げ荷重が作用し、この第2軸受の側が回転軸芯に直交する方向に変位する場合でも、この変位を第2軸受が受け止めるため、回転軸の姿勢を大きく変動させることがない。
従って、インナギヤを支持する回転軸の姿勢の変動を抑制して安定した作動を行う弁開閉時期制御装置が構成された。
【0015】
本発明は、
前記第2軸受が、前記カムシャフト側に一体形成されても良い。
【0016】
これによると、カムシャフト側に一体形成される第2軸受が環状を成すことにより、カムシャフト、あるいは、カムシャフトと一体回転する部材に第2軸受を取り付ける工程が不要となり、回転軸の姿勢が変化した場合には支持部によって強力に受け止めることが可能となる。
【0017】
本発明は、
前記第2軸受が、前記カムシャフト側に取付られても良い。
【0018】
これによると、カムシャフト側に取り付けられる第2軸受が環状を成すことにより、カムシャフト、あるいは、カムシャフトと一体回転する部材の基本的な形状を変更する設計変更を行わずとも、第2軸受を取り付けるだけで回転軸の姿勢が変化した場合には支持部によって強力に受け止めることが可能となる。
【0019】
本発明は、前記支持部と、前記支持部に対向する前記回転軸の外周面との間に隙間が形成されても良い。
【0020】
これによると、回転軸の他端部の外周と第2軸受の支持部との間に隙間を形成しても、回転軸の姿勢が変化した場合には、第2軸受の環状の支持部に回転軸が接触することにより、回転軸の姿勢変化の抑制が可能になる。また、隙間を形成することにより、例えば、第1軸の他端部の外周に第2軸受の支持部を接触させた構成のように摩耗を招くことや、相対回転位相を変更する作動時に、回転軸に抵抗を作用させて相対回転位相の変位速度を低下させることもない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1及び
図2には、電動アクチュエータとしての電動モータMの駆動力により駆動側回転体Aと従動側回転体Bとの相対回転位相を制御することにより吸気バルブ3Bの開閉時期(開閉タイミング)を制御する弁開閉時期制御装置1を示している。
【0023】
エンジンE(内燃機関の一例)は、シリンダブロックの複数のシリンダボアに対してピストン4を摺動自在に収容し、ピストン4をコネクティングロッド5によりクランクシャフト2に連結して4サイクル型に構成されている。このエンジンEは乗用車等の車両に備えられるものを想定しているが、乗用車以外の車両等に備えられるものでも良い。
【0024】
この弁開閉時期制御装置1は、クランクシャフト2の出力スプロケット2Sと、駆動側回転体Aの外周に形成された駆動スプロケット11Sとに亘ってタイミングチェーン6を巻回することにより装置全体が、駆動回転方向Sに向けて回転する。尚、クランクシャフト2の回転力を弁開閉時期制御装置1に伝える伝動構成として、タイミングベルトを用いて良く、多数のギヤを有するギヤトレインによりクランクシャフト2の駆動力を駆動側回転体Aに伝える構成を用いても良い。
【0025】
この弁開閉時期制御装置1は、内燃機関としてのエンジンEのクランクシャフト2と同期回転する駆動側回転体Aと、エンジンEの吸気カムシャフト3に連結する従動側回転体Bとを備えると共に、電動モータM(電動アクチュエータの一例)の駆動力により駆動側回転体Aと従動側回転体Bとの相対回転位相を設定する位相調節機構Cを備えている。
【0026】
吸気カムシャフト3は、回転に伴い複数のカム部3Aにより吸気バルブ3Bの開閉を制御する構成を有している。そして、位相調節機構Cで駆動側回転体Aと従動側回転体Bとの相対回転位相が設定されることにより、カム部3Aによる吸気バルブ3Bの開閉時期の制御が実現する。
【0027】
本発明の弁開閉時期制御装置1は、吸気カムシャフト3に備えるものだけを制御の対象とするものではなく、排気カムシャフトに備えることにより排気バルブの開閉時期を制御するように用いても良い。また、本発明の弁開閉時期制御装置1を、吸気カムシャフト3と排気カムシャフトとの双方に備えても良い。
【0028】
〔弁開閉時期制御装置〕
図1〜
図5に示すように、弁開閉時期制御装置1は、駆動側回転体Aとして駆動スプロケット11Sが形成されたリアケース11とフロントケース12とを複数の締結ボルト13で締結した構成を有している。リアケース11とフロントケース12とで形成される空間にハイポトロコイド型減速ギヤ(差動型の減速機構の具体例)として構成される位相調節機構Cが収容されている。
【0029】
従動側回転体Bは、位相調節機構Cを構成するリングギヤ21と、これに連結する従動プレート21Pとで構成されている。従動プレート21Pが連結ボルト35により吸気カムシャフト3に連結固定することにより、従動側回転体Bは吸気カムシャフト3と一体回転する。更に、位相調節機構Cを構成するインナギヤ22がオルダム継手30を介してフロントケース12に連係している。つまり、インナギヤ22は、回転軸芯Xと平行姿勢の偏心軸芯Yを中心に自転するため、インナギヤ22と駆動側回転体Aとを等しく回転させるオルダム継手30が用いられている。この位相調節機構Cの作動形態は後述する。
【0030】
弁開閉時期制御装置1では、吸気カムシャフト3の回転軸芯Xと同軸芯上に駆動側回転体Aを配置するものであり、電動モータMを支持フレーム7によりエンジンEに支持することにより、電動モータMの出力軸Maが回転軸芯Xと同軸芯上に配置されている。
【0031】
この弁開閉時期制御装置では、クランクシャフト2からの駆動力により駆動側回転体Aが駆動回転方向Sに回転する。そして、位相調節機構Cの駆動により駆動側回転体Aに対して従動側回転体Bが駆動回転方向Sと同方向へ回転する方向を進角方向Saと称し、この逆方向への回転方向を遅角方向Sbと称している。
【0032】
尚、相対回転位相を、進角方向Saに変位させることにより吸気バルブ3Bの開閉タイミングが早まり、遅角方向Sbに変位させることにより吸気バルブ3Bの開閉タイミングを遅らせる。
【0033】
〔制御構成〕
弁開閉時期制御装置1は、エンジンEの稼働時に吸気カムシャフト3の回転速度と等速で電動モータMの出力軸Maを回転させることにより、吸気バルブ3Bの開閉時期が維持される。この回転速度より出力軸Maの回転速度を増大させる又は減少させることにより位相調節機構Cの作動により相対回転位相を進角方向Sa又は遅角方向Sbを変位させる制御が実現する。
【0034】
この弁開閉時期制御装置1では、電動モータMの回転を制御する制御部50を備え、この制御部50は、吸気カムシャフト3の回転位相を検出するカムシャフトセンサ51と、クランクシャフト2の回転位相を検出するクランクシャフトセンサ52とからの検知信号を取得して電動モータMの回転速度を制御するように構成されている。
【0035】
この構成から、弁開閉時期制御装置1の相対回転位相を維持する場合には、電動モータMの回転速度を吸気カムシャフト3の等速にする制御を行う。そして、弁開閉時期制御装置1によって吸気バルブ3Bの吸気タイミングを変更する場合には、制御部50が、カムシャフトセンサ51とクランクシャフトセンサ52とからの検知信号をフィードバックすることにより相対回転位相が所定の値に達するまで電動モータMの駆動速度を増速する又は減速する制御が行われる。この制御により相対回転位相が所定の値に達した場合には、電動モータMの回転速度を吸気カムシャフト3の等速に復帰する制御が行われる。
【0036】
〔弁開閉時期制御装置:位相調節機構〕
位相調節機構Cは、単一のリングギヤ21と、単一のインナギヤ22と、インナギヤ22を駆動する回転軸としての駆動シャフト24を備えている。リングギヤ21は回転軸芯Xと同軸芯に配置されると共に、多数の内歯部21Aを有している。このリングギヤ21は、従動プレート21Pが吸気カムシャフト3に対して連結ボルト35により連結固定されることにより吸気カムシャフト3と一体的に回転する。
【0037】
インナギヤ22は、リングギヤ21の歯数より少ない歯数の外歯部22Aを有し、駆動シャフト24(回転軸の一例)の偏心部24Bに第2ボールベアリング27を介して支持されることにより回転軸芯Xから偏心する偏心軸芯Yを中心に回転自在となる。
【0038】
駆動シャフト24(回転軸の一例)は、回転軸芯Xを中心とする孔部24Cを有し、全体的に筒状に形成されている。この駆動シャフト24の外端部(一端部)には回転軸芯Xを中心とする外面形状となる第1被支持部24Aが形成され、内端部(他端部)には、前述したように回転軸芯Xから偏心し、回転軸芯Xと平行姿勢の偏心軸芯Yを中心とする外面形状の偏心部24Bが形成されている。更に、この内端部(他端部)の端部位置には、回転軸芯Xを中心とする第2被支持部24Sが形成されている。また、偏心部24Bの外周の一部には切欠部が形成され、この切欠部にバネ部材25が嵌め込まれている。
【0039】
駆動シャフト24の孔部24Cには、回転軸芯Xに沿う方向に一対の係合溝24Tが形成されている。電動モータMの出力軸Maには係合溝24Tに係合するように径方向に突出する係合部材28を備えている。
【0040】
図1に示すように、フロントケース12の開口部分には、回転軸芯Xを中心にして第1軸受としての第1ボールベアリング26が支持され、これに駆動シャフト24の第1被支持部24Aが内嵌している。これにより、駆動シャフト24が駆動側回転体Aに対し回転軸芯Xを中心に回転自在に支持される。また、駆動シャフト24の外端部の係合溝24Tに電動モータMで駆動される係合部材28が係合している。
【0041】
駆動シャフト24の偏心部24Bに対して第2ボールベアリング27が外嵌し、この外周にインナギヤ22が支持されている。これにより、インナギヤ22が偏心部24Bの偏心軸芯Yを中心に回転自在に支持され、リングギヤ21の内歯部21Aの一部にインナギヤ22の外歯部22Aの一部が噛み合う。更に、インナギヤ22はバネ部材25の付勢力により噛み合い状態が維持される。
【0042】
尚、位相調節機構Cはリングギヤ21の歯数を多くして減速比を高くすることが望ましいが、減速比を高くする場合にはリングギヤ21の内歯部21Aに高い強度が要求される。このような理由から、内歯部21Aの強度を高めるために噛み合い率を確保出来るトロコイド歯形に成形されている。
【0043】
〔弁開閉時期制御装置:オルダム継手〕
オルダム継手30はフロントケース12とインナギヤ22との間に配置されるオルダムリング31を備えると共に、インナギヤ22の側面に支持される一対の第1キー32と、フロントケース12に支持される一対の第2キー33とを備えている。オルダムリング31には、回転軸芯Xに直交する方向への第1キー32の径方向への相対変位を許す一対の第1キー溝30Aと、第1キー溝30Aと直交する姿勢で形成され、回転軸芯Xと直交する方向への第2キー33の相対変位を許す一対の第2キー溝30Bが形成されている。
【0044】
また、オルダムリング31においてキー溝が形成されない領域に凹状部30Cを形成することにより、このオルダムリングの軽量化を図り、慣性モーメントの低減を実現している。
【0045】
また、第1キー32は、インナギヤ22の側面に固定される、又は、インナギヤ22の側面に一体的に形成される。第2キー33は、フロントケース12の係合凹部12Aに係入する突起部33Aが一体形成されている。これにより第2キー33はフロントケース12に対して固定状態で支持される。尚、この第2キー33はフロントケース12に対して一体的に形成されるものであっても良い。
【0046】
〔軸受〕
この位相調節機構Cは、前述したように駆動シャフト24の外端部(一端部)が第1軸受としての第1ボールベアリング26により片持ち状態で支持されている。この位相調節機構Cでは、リングギヤ21の内歯部21Aの一部にインナギヤ22の外歯部22Aの一部が噛み合うため駆動シャフト24に対して常に曲げ方向(回転軸芯Xに対して直交する方向)に荷重が作用する。特に、電動モータMの回転速度の変更時には荷重が増減するため、駆動シャフト24の内端部(他端部)に作用する曲げ荷重により、回転軸芯Xに直交する方向へ大きく変位し、リングギヤ21の内歯部21Aからインナギヤ22の外歯部22Aが離脱する不都合に繋がることも想像された。
【0047】
このような不都合を抑制するため、従動プレート21P(従動側回転体B)に対して第2軸受として環状部40を備えている。この環状部40は、回転軸芯Xと同軸芯上に配置される環状であり内周側の内支持部40S(第2軸受の支持部の一例)が駆動シャフト24の第2被支持部24Sに近接する位置に一体形成される状態で配置されている。
【0048】
尚、環状部40は、
図1に示す如く、従動プレート21Pに対して一体的に形成されるものでも、別部材で構成したものを従動プレート21Pに取り付けるものでも良い。
【0049】
このような構成から、駆動シャフト24の第1被支持部24Aが第1ボールベアリング26により回転軸芯Xを中心に回転自在に支持され、この駆動シャフト24は回転軸芯Xを中心に回転自在となる。また、駆動シャフト24は、曲げ方向への荷重により内端部が変位した場合には、この駆動シャフト24の第2被支持部24Sの外面が、環状部40の内支持部40Sに接触して受け止められる形態となり、駆動シャフト24の変位が抑制される。これによりリングギヤ21の内歯部21Aからインナギヤ22の外歯部22Aが離脱する不都合を招くことはなく弁開閉時期制御装置1の安定した作動を実現している。
【0050】
この軸受構成では、環状部40の内支持部40Sと、駆動シャフト24の第2被支持部24Sの外周面との間に隙間が形成される位置関係で配置することにより、駆動シャフト24と環状部40との間の摩擦力の作用を軽減している。本発明では、環状部40の内支持部40Sと、駆動シャフト24の第2被支持部24Sの外周面とが密接する位置関係で配置されても良く、これらの間に、ボールベアリングやブッシュ等の部材を介装しても良い。
【0051】
本発明では、駆動シャフト24の内端部(他端部)の端部に第2被支持部24Sを形成せず、偏心部24Bを駆動シャフト24の内端部の端部に達する位置まで形成し、この内端部(偏心部24B)を内支持部40Sが取り囲むように環状部40を備えても良い。尚、偏心部24Bを取り囲む位置に環状部40を備える場合には、環状部40の内支持部40Sが偏心部24Bの外周面から離間する位置に配置されるが、この構成でも、駆動シャフト24の内端部が曲げ方向に変位した場合に、この偏心部24Bの外周を環状部40の内支持部40Sに接触させることが可能となり、駆動シャフト24の姿勢の維持が可能となる。
【0052】
また、この環状部40は、回転軸芯Xに沿う方向での突出量が大きいほど、内支持部40Sと偏心部24Bとが接触した場合の面圧を低下させ(前述した第2被支持部24Sと接触する場合にも同様に面圧を低下させる)、接触状態が頻繁に発生する場合でも摩耗を抑制することも可能となる。
【0053】
〔作動形態〕
この構成から、吸気カムシャフト3の回転速度より高速又は低速で電動モータMを駆動することにより、駆動シャフト24が回転軸芯Xを中心に回転すると共に、偏心部24Bが回転軸芯Xを中心に公転する。この公転によりリングギヤ21の内歯部21Aに対するインナギヤ22の外歯部22Aに対する噛み合い位置がリングギヤ21の内周に沿って変位し、この変位に伴いインナギヤは偏心軸芯Yを中心に自転する。
【0054】
この駆動シャフト24の回転が継続され、例えば、インナギヤ22が1回だけ公転した時点で、リングギヤ21の内歯部21Aの歯数と、インナギヤ22の外歯部22Aの歯数差に相当する角度だけリングギヤ21に対してインナギヤ22が相対回転する。
【0055】
この相対回転は、インナギヤ22を基準に考えるとインナギヤ22に対してリングギヤ21を回転させるものである。この弁開閉時期制御装置1では、インナギヤ22がオルダム継手30を介して駆動側回転体Aと等速で(一体的に)回転する構成であるため、相対回転力はインナギヤ22からリングギヤ21に伝えられ、従動プレート21Pを介して吸気カムシャフト3を相対回転させることになる。
【0056】
また、電動モータMの駆動時には、インナギヤ22の中心(偏心軸芯Y)の位置が、回転軸芯Xを中心にして公転すると共に、オルダム継手30が、この公転を許容する。
【0057】
特に、第2軸受として環状部40を従動プレート21Pに備えたことにより、電動モータMの回転速度の増減時に、駆動シャフト24の内端部に作用する曲げ荷重が増大して、駆動シャフト24の内端部が大きく変位した場合でも、環状部40が駆動シャフト24の変位を抑制して、リングギヤ21の内歯部21Aからインナギヤ22の外歯部22Aが離脱する不都合を抑制し、位相調節機構Cの安定した作動を実現する。
【0058】
〔弁開閉時期制御装置の変形例〕
弁開閉時期制御装置として、リングギヤ21を駆動側回転体Aに支持し、インナギヤ22をオイルダム継手30等の連係機構を介して従動側回転体Bに連係させるように位相調節機構Cを構成しても良い。この変形例でも、リングギヤ21とインナギヤ22との差動による減速は同様に行われ、リングギヤ21とインナギヤ22との差動に起因する回転を吸気カムシャフト3に伝えることが可能となる。
【0059】
また、この変形例においても、駆動シャフト24の内端部(他端部)の外周に近接する位置に環状部40を配置することにより、駆動シャフト24が外力の作用により変位する現象を抑制できる。
【0060】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0061】
(a)
図6に示すように、回転軸としての駆動シャフト24の内端部(他端部)に対して、回転軸芯Xを中心とする内周面24Uを有する孔状部が形成され、この内周面24Uに対向する外支持部45S(第2軸受の支持部の一例)が外周(全周)に形成された内挿部材45を第2軸受として従動側回転体Bを構成する従動プレート21Pに備えている。この別実施形態(a)では、内挿部材45が回転軸芯Xと同軸芯上に形成されている。
【0062】
この構成では、駆動シャフト24の内端部の内周面24Uに対して、内挿部材45の外支持部45Sが対向して配置されるため、駆動シャフト24の内端部が曲げ荷重の作用により変位した場合には、この変位を内挿部材45が受け止め、リングギヤ21の内歯部21Aからインナギヤ22の外歯部22Aが離脱する不都合を招くことがない。
【0063】
尚、内挿部材45は、
図6に示す如く、従動プレート21Pに対して一体的に形成されるものでも、従動プレート21Pに対して別部材で構成したものを取り付けても良い。また、駆動シャフト24の内周面24Uと、内挿部材45の外支持部45Sとの間にボールベアリングやブッシュ等の部材を介装しても良い。
【0064】
この別実施形態(a)の変形例として、連結ボルト35の頭部の外周、あるいは、頭部に対して軸受部材を取り付けることにより、連結ボルト35の頭部を内挿部材45として用いても良い。このように内挿部材45を構成する場合に、先に説明した別実施形態(a)のように孔部24Cと別個に形成した内周面24Uに対して、外支持部45Sを対向させる構成を採用して良く、駆動シャフト24の孔部24Cの内周に内挿部材45の外支持部45Sを対向させる構成を採用しても良い。
【0065】
尚、この変形例でも、駆動シャフト24の内周面24U又は孔部24Cの内面と、内挿部材45の外支持部45Sとの間に、ボールベアリングやブッシュ等の部材を介装しても良い。
【0066】
(b)実施形態の環状部40と、別実施形態(a)の内挿部材45とを第2軸受として従動プレート21Pに備える。この構成では、駆動シャフト24に曲げ方向に荷重が作用し、その内端部が変位した場合には、環状部40と内挿部材45との双方が変位を抑制し、リングギヤ21の内歯部21Aからインナギヤ22の外歯部22Aが離脱する不都合を招くことがない。