(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1は、本実施の形態のターボ分子ポンプを示す図である。ターボ分子ポンプ100は、真空排気を行うポンプユニット1と、ポンプユニット1を駆動制御するコントロールユニット2とを備えている。
【0009】
ポンプユニット1は、回転翼41と固定翼31とで構成されるターボポンプ段と、円筒部42とステータ32とで構成されるドラッグポンプ段(ネジ溝ポンプ段)とを有している。ネジ溝ポンプ段においては、ステータ32または円筒部42にネジ溝が形成されている。回転側排気機能部である回転翼41および円筒部42はポンプロータ4に形成されている。ポンプロータ4はシャフト5に締結されている。ポンプロータ4とシャフト5とによって回転体ユニットRYが構成される。
【0010】
複数段の固定翼31は、軸方向に対して回転翼41と交互に配置されている。各固定翼31は、スペーサリング33を介してベース3上に載置される。ポンプケーシング30をベース3にボルト固定すると、積層されたスペーサリング33がベース3とポンプケーシング30の係止部30aとの間に挟持され、固定翼31が位置決めされる。
【0011】
図1に示すターボ分子ポンプ100は磁気浮上式のターボ分子ポンプであり、シャフト5は、ベース3に設けられた磁気軸受34,35,36によって非接触支持される。詳細な図示は省略したが、各磁気軸受34〜36は電磁石と変位センサとを備えている。変位センサによりシャフト5の浮上位置が検出される。シャフト5、すなわちポンプロータ4の回転数(1秒当たりの回転数)は、回転センサ43によって検出される。
【0012】
シャフト5はモータMにより回転駆動される。磁気軸受が作動していない時には、シャフト5は非常用のメカニカルベアリング37a,37bによって支持される。ベース3の外周には、ステータ32を昇温するためのヒータ38が設けられている。ステータ32の温度は温度センサ39によって検出され、その検出結果はコントロールユニット2に入力される。
【0013】
図2は、コントロールユニット2の概略構成を示すブロック図である。コントロールユニット2は、主制御部20、電源部21、モータ制御部22、軸受制御部23、温度制御部24、操作部25および表示部26を備えている。
【0014】
電源部21には外部電源から交流電力が供給される。電源部21は、供給された交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を主制御部20、モータ制御部22、軸受制御部23等に供給する。モータ制御部22は、ポンプユニット1のモータステータ10に駆動電力を供給し、モータMの回転を制御する。軸受制御部23は、磁気軸受34〜36に設けられた変位センサからの変位信号に基づいて磁気軸受34〜36の電磁石に励磁電流を供給し、シャフト5を所望の位置に磁気浮上させる。温度制御部24は、温度センサ39からの温度検出信号に基づいてヒータ38の通電および非通電を制御し、ステータ32を所望の目標温度T0に制御する。なお、温度センサ39からの温度検出信号は主制御部20に入力され、温度制御部24は主制御部20から温度情報を受けて通電制御を行う。
【0015】
操作部25はコントロールユニット2への入力操作を行うものであり、電源スイッチ25a、スタートスイッチ25bが設けられている。電源スイッチ25aをオンすると電源部21に電源が投入され、軸受制御部23、温度制御部24等に電力が供給され、磁気軸受34〜36による磁気浮上が開始される。スタートスイッチ25bをオンすると、モータ制御部22によるモータ駆動制御が開始される。表示部26には、ポンプユニット1の状態、例えばロータ回転数や運転状態(加速、定常など)やステータ温度等、が表示される。
【0016】
主制御部20はコントロールユニット2全体の制御を行うものであり、後述する始動制御も主制御部20によって実行される。主制御部20には、温度センサ39からの温度検出信号および回転センサ43からの回転検出信号が入力される。また、主制御部20には、上位コントローラ(例えば、ポンプユニット1が搭載される真空装置のコントローラ)からの指令がリモート信号として入力される。また、主制御部20から上位コントローラにポンプ情報を出力することもできる。
【0017】
前述したように、堆積物が生じるガスを排気すると、排気下流側のステータ32や円筒部42に堆積物が生じ易い。そのため、本実施の形態のターボ分子ポンプでは堆積物の生成を抑制するためにステータ32をヒータ38により昇温する。昇温の目標温度T0は排気するガスの種類によって異なるが、昇華温度の高い堆積物ではステータ温度を百数十℃程度まで昇温させる場合もある。
【0018】
ステータ温度が上昇するとステータ32が熱膨張するので、ステータ32と円筒部42とのギャップ寸法が大きくなる。このギャップ寸法は、ステータ32がヒータ38により昇温され、所定の目標温度T0に維持されているときに最適ギャップ寸法となるように設定されている。そのため、ステータ温度が目標温度T0よりも低い場合には、ギャップ寸法が最適ギャップ寸法よりも小さくなり、円筒部42とステータ32とが接触するおそれがある。特に、ステータ32が常温で、ロータ温度が上昇して円筒部42が外周側に熱膨張した場合に、接触しやすくなる。
【0019】
図3は円筒部42とステータ32とのギャップ寸法を説明する模式図である。
図3(a)は、ロータ回転数が定常回転数であって、ステータ32の温度が目標温度T0となっているポンプ使用時の状況を示している。定常回転数とはポンプ仕様で定められた回転数であり、一般的に、ガス負荷の大小に関係なくロータ回転数が定常回転数となるように制御される。なお、ポンプ使用時においては円筒部42の温度も上昇するが、ここでは常温であるとして考える。
図3(b)はポンプ停止時の状況、すなわちロータ回転数がゼロで、ステータ32の温度が常温(例えば20℃)の場合を示す。rは円筒部42の外周半径であり、Rはステータ32の内周半径である。
【0020】
図3(a)に示すポンプ使用状態では、ステータ32は熱膨張により径方向外側(図示右側)に変形し、円筒部42は遠心力により径方向外側に変形する。このときのステータ32と円筒部42とのギャップ寸法が、最適ギャップ寸法G0となるように設計されている。一方、
図3(b)のポンプ停止状態においては、遠心力による円筒部42の変形、昇温によるステータ32の熱膨張が生じていないので、ステータ32と円筒部42のギャップ寸法はG1(<G0)となっている。昇温の目標温度T0が高い場合、
図3に示すようにG1<G0となる。そのため、
図3(b)に示す状態から、ステータ32を昇温せずにポンプロータ4を回転させると、円筒部42が遠心力により変形してギャップ寸法が減少し、円筒部42がステータ32に接触するおそれがある。
【0021】
本実施の形態では、上述のような接触が防止されるように、スタートスイッチ25bのオン操作またはスタート信号の入力に対して
図4に示すような始動制御を行う。
図4のフローチャートは、電源投入後にスタートスイッチ25bがオンされて、ロータ回転数が定常回転数となるまでの処理を示したものである。主制御部20は、電源スイッチ25aのオン操作により電源が投入されると
図4に示す制御を実行する。
【0022】
ステップS10では、温度制御部24によりヒータ38の通電が開始される。ステップS20では、スタート信号が主制御部20に入力されたか否かを判定する。スタート信号は、スタートスイッチ25bのオン操作またはリモート操作により主制御部20に入力される。ステップS20において入力有り(YES)と判定されると、ステップS30へ進む。ステップS30では、温度センサ39の検出信号に基づいて、ステータ32の温度Tが所定温度Tthを超えたか否かを判定する。所定温度Tthの詳細については後述する。
【0023】
ステップS30でステータ32の温度Tが所定温度Tthを超えたと判定されると、ステップS40へ進み、定常回転数を目標回転数とする通常加速動作をモータ制御部22に行わせる。ステップS42では、加速開始から所定時間Δtが経過したか否かを判定する。ステップS42で所定時間Δtが経過したと判定されると、ステップS50へ進む。ステップS50では、ロータ回転数nがn>0か否か、すなわち、ポンプロータ4が回転し始めたか否かを判定する。この場合の所定時間Δtとしては、2分程度で良い。これにより、ポンプロータ4が堆積物生成によりステータ32と固着しているか否かを判断することができる。固着している場合には、n=0なのでステップS50においてnoと判定され、ステップS52へ進んでポンプロータ4の回転動作を停止する。続くステップS54では、回転が開始されないことを報知する異常報知処理を行う。異常処理報知の方法としては、
図2の表示部26へのエラー表示や、上位コントローラへの異常信号出力などがある。
【0024】
ステップS60では、ポンプロータ4の回転数が目標回転数である定常回転数に達したか否かを判定する。ステップS60で定常回転数に達したと判定されると、一連の始動処理を終了し、一方、定常回転数に達していない場合にはステップS42へ戻る。
【0025】
一方、ステップS30でステータ温度Tが所定温度Tth以下であると判定されると、ステップS32へ進み、定常回転数よりも遙かに低い低速回転数で回転させる低速動作(回転数=0の回転停止の場合も含む)をモータ制御部22に行わせる。低速回転数としては、ステータ温度Tが常温(例えば20℃)であって、熱膨張および遠心力によりポンプロータ4が変形した場合でも、円筒部42がステータ32に接触しない回転数とする。例えば、接触に対する余裕を考慮して、定常回転数の10%(数十rps)程度に設定される。
【0026】
ステップS33およびステップS34は、上述したステップS42およびステップS50と同様の処理である。ステップS33で所定時間Δtが経過していないと判定されるとステップS30へ戻り、所定時間Δtが経過していると判定されるとステップS34へ進む。そして、ステップS34でロータ回転数nがn>0と判定されるとステップS30へ戻り、n=0と判定されるとステップS52へ進む。このように、ステータ32の温度が所定温度Tthを超えるまでは、低速回転数での回転駆動が維持され、その間、ステップS33,S34においてポンプロータ4がステータ32に固着しているか否かを判断する。そして、T>TthとなったならばステップS30からステップS40へ進み、定常回転数への加速動作が自動的に開始される。
【0027】
(所定温度Tthの説明)
図5は、上述した所定温度Tthを説明する図である。
図5(a)は、ポンプ始動後のステータ32の熱膨張による変形、および円筒部42の遠心力による変形の時間的変化を示す図である。曲線LRはステータ32の内周半径R(
図3(b)参照)を示したものであり、時刻t=0に昇温を開始し(ステータ温度は20℃であるとする)、時刻t1にステータ温度が目標温度T0に達している。時刻t1以降は、ステータ温度は目標温度T0に維持される。一方、曲線Lrは円筒部42の外周半径r(
図3(b)参照)を示したものであり、時刻t1にロータ回転が開始され、時刻t2にロータ回転数が定常回転数に到達している。
【0028】
ステータ32の内周半径Rは、時刻t=0(ステータ温度20℃)においてはR1(20)であり、時刻t1(ステータ温度はT0)にはR0(T0)まで増加する。円筒部42の外周半径rは、回転開始時(t=t1)においてはr1であり、定常回転数に到達したとき(時刻t2)にはr0まで増加する。時刻t=0におけるギャップ寸法G1(
図3(b)参照)はG1=R1(20)−r1で与えられ、時刻t2における最適ギャップ寸法G0はG0=R0(T0)−r0で与えられる。
図5(a)の場合には、昇温開始からポンプ使用可能状態(定常回転数、ステータ温度がT0)となるまでに要する時間は、昇温時間Δt1に加速時間Δt2を加えた時間となる。昇温時間Δt1は、ステータ32の昇温設定温度(目標温度T0)やポンプ機種の容量(排気速度)、環境温度によって異なるが、通常は数十分から1時間程度である。
【0029】
本実施の形態では、
図4において説明したように、ステータ温度Tが所定温度Tth以下の場合には、定常回転数よりも遙かに低い低速回転数(数十rps)で回転させる低速動作を行い、T>Tthとなったならば定常回転数への加速動作を行うようにした。なお、所定温度Tthは、例えば、目標温度T0−10℃に設定されると良い。低速回転数における円筒部42の外周半径rはr2であり、G2(=R1(20)−r2)は回転開始時のギャップ寸法である。上記低速回転数は、ギャップ寸法G2がステータ32と円筒部42との接触が防止できる許容値以上となるように設定される。
【0030】
図5(b)に示す例では、所定温度Tthとして、昇温開始から時間t3が経過したときのステータ温度とした。時刻t3から加速を開始すると時刻t4に定常回転数となり、そのときの円筒部42の外周半径rはr0となる。そして、時刻t4におけるギャップ寸法G3が時刻t=0でのギャップ寸法G2と同程度以上となるように、時刻t3すなわち所定温度Tthを設定する。
【0031】
破線で示す曲線Lr2は、時刻t3よりも早い時刻に加速動作を開始した場合を示す。この場合、定常回転数到達時のギャップ寸法がG3よりも小さく、外乱等によるロータ振動により円筒部42がステータ32に接触するおそれがある。また、破線で示す曲線Lr1は、ステータ温度が目標温度T0に達する時刻t1に、定常回転数に到達するように時刻t5にロータ回転の加速開始した場合を示す。すなわち、t4−t3=t1−t5である。
【0032】
低速回転数から加速動作へ移行する時刻を、時刻t3と時刻t5との間に設定することにより、昇温時間Δt1が経過したならば直ちにターボ分子ポンプは本排気状態となり、真空装置の処理動作を開始することが可能となる。
図5(a)のようにステータ温度が目標温度T0となってから加速動作を開始する場合に比べて、加速時間Δt2だけポンプ起動時間を短縮することができる。もちろん、
図5(b)の時刻t4における温度をT(t4)としたとき、所定温度TthをT(t4)<Tth≦T0のように設定しても構わない。この場合、処理可能状態となるまでの時間は昇温時間Δt1よりも長くなる。
【0033】
上述したように、本実施の形態では、スタートスイッチ25bが操作されると、ステータ温度が所定温度Tthを超えるまでは、すなわち加速開始しても円筒部42とステータ32との接触を防止できるステータ温度となるまでは低速回転数で駆動され、所定温度Tthを超えると自動的に定常回転数への加速動作が開始される。そのため、オペレータは、予め決められた昇温時間を待ってからスタートスイッチ25bをオン操作するという、煩わしい操作を行う必要がない。また、電源投入後のスタートスイッチ25bの操作タイミングがどのようなタイミングであっても、円筒部42とステータ32とが接触するのを防止することができる。
【0034】
(変形例)
変形例においては、ステータ温度の状況を示す昇温情報を提示するような構成とした。具体的には、表示部26に温度表示や昇温完了推定時間を表示したり、昇温完了表示を表示したりする。また、それらの情報(温度情報、推定時間情報、完了情報)を外部に出力するようにしても良い。昇温情報を提示することで、昇温系に異常が生じた場合に昇温情報から検知することが可能となる。また、昇温完了推定時間が分かることで、次の操作に対する準備を適切なタイミングで行うことができる。
【0035】
温度表示は温度センサ39の出力信号に基づいて行い、温度センサ39に基づく検出温度が目標温度T0となったならば昇温完了信号を表示部26に表示する。また、昇温完了推定時間は、
図6に示すような昇温時のステータ温度と時間との相関関係LTを予め求めておき、その相関関係LTを用いて昇温完了時間を推定する。
図6において、縦軸は温度(℃)、横軸は時間である。また、tsはヒータ通電開始時刻、Tsは通電開始時のステータ温度、時刻teはステータ温度が目標温度T0となる時刻である。温度センサ39で検出される現在(時刻t1)のステータ温度がT1であるとすると、昇温完了推定時間ΔtfはΔtf=te−t1となる。
【0036】
−第2の実施の形態−
図7,8は、本発明の第2の実施の形態を説明する図である。第2の実施の形態では、ステータ温度に応じて、円筒部42とステータ32とが接触しないようなロータ回転数を複数設定するようにした。
図7は、ステータ温度Tとロータ回転数との関係の一例を示す図であり、縦軸Nは回転数を定常回転数に対する%で示したものである。第2の実施の形態では、ステータ温度が60℃未満の場合には定常回転数の10%の回転数で回転させ、ステータ温度が60℃以上100℃未満の場合には定常回転数の50%の回転数で回転させ、ステータ温度が100℃以上の場合には定常回転数(すなわち100%の回転数)で回転させるようにした。
【0037】
図8は、第2の実施の形態における制御動作を示すフローチャートである。ステップS110では、温度制御部24によりヒータ38の通電が開始される。ステップS120ではスタート信号が主制御部20に入力されたか否かを判定し、入力有り(YES)と判定されるとステップS130へ進む。
【0038】
ステップS130では、温度センサ39の検出信号に基づいて、ステータ温度Tが60℃未満であるか否かを判定し、T<60℃と判定されるとステップS140へ進み、それ以外の場合にはステップS132へ進む。ステップS140では、ロータ回転数を定常回転数の10%に設定する。ステップS150では、加速開始から所定時間Δtが経過したか否かを判定し、所定時間Δtが経過するとステップS152へ進む。ステップS152では、ロータ回転数nがn>0か否か、すなわち、ポンプロータ4が回転し始めたか否かを判定する。ステップS152でn>0と判定されるとステップS130へ戻り、n=0と判定されるとステップS160へ進む。ステップS160ではロータ回転動作を停止し、続くステップS170では回転が開始されないことを報知する異常報知処理を行い、一連の処理を終了する。
【0039】
一方、ステップS130からステップS132へ進んだ場合には、ステップS132においてステータ温度Tが60℃≦T<100℃を満足するか否かを判定する。ステップS132で60℃≦T<100℃と判定されると、ステップS134へ進んでロータ回転数を定常回転数の60%に変更し、ステップS132へ戻る。一方、ステップS132で60℃≦T<100℃でないと判定されると、ステップS136へ進んでロータ回転数を定常回転数(100%)に設定する。
【0040】
図7に示すように、ステータ温度の変化に対応させてロータ回転数を段階的に変更することにより、ステータ温度T=T0および定常回転数の状態に達する時間を短縮することができ、ほぼ昇温時間と同程度とすることができる。
【0041】
以上説明した実施の形態では、ターボ分子ポンプ100は、ステータ32を目標温度T0に昇温するヒータ38と、ステータ32の温度を検出する温度センサ39とを有するポンプユニット1と、制御部であるコントロールユニット2とを備える。コントロールユニット2は、ヒータ38の通電開始後に回転開始指令が入力されると、ステータ32の温度が目標温度T0未満に設定された所定温度Tthに達するまでは、ポンプロータ4の定常回転数での回転駆動を禁止し、ステータ32の温度が所定温度Tthを超えると定常回転数での回転駆動を行わせる。
【0042】
このような構成としたことにより、オペレータは、ステータ32の温度が目標温度T0に到達したのを見計らってスタート操作をするという、ポンプ始動時のスタート操作の煩わしさから解放される。さらに、所定温度Tthは目標温度T0未満に設定され、設定することにより、ポンプ始動に要する時間、すなわち、ヒータ通電から目標温度T0および定常回転数となるまでの時間を、(昇温時間Δt1+加速時間Δt2)よりも短くすることができる。なお、所定温度Tthは、例えば、定常回転数に到達したときにポンプロータ4の円筒部42とステータ32とが接触しない温度に設定される。
【0043】
所定温度Tthに達するまでのロータ駆動制御としては、
図5(b)のように定常回転数よりも低い回転数でポンプロータ4を回転させても良いし、
図5(a)の曲線Lrの場合のようにポンプロータ4を停止状態としても良い。
【0044】
また、
図5(b)のように低回転数で回転駆動を開始させる場合において、回転開始した後にポンプロータ4が停止状態であることがコントロールユニット2の主制御部20で判定されると、主制御部20から異常信号を出力する構成や、表示部26に異常であることを表示する構成とし、異常報知を行うようにしても良い。その結果、堆積物生成により円筒部42がステータ32に固着する等して、ポンプロータ4が回転しないことを検出することができる。
【0045】
また、
図7に示すように、所定温度Tth(
図7の場合には100℃)以下のポンプ使用温度領域が複数の温度領域に区分され、所定回転数を高温側の温度範囲ほど大きく設定するようにしても良い。
図7に示す例では、60℃未満の温度領域ではロータ回転数は10%とされ、より温度の高い60℃以上100℃未満の温度領域ではロータ回転数は50%とされる。このように設定することで、ポンプ始動に要する時間を、昇温時間Δt1とほぼ同一程度まで短縮することができる。
【0046】
なお、上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、ベース3の外周にヒータ38を設けたが、特許文献1に記載の発明のようにステータ32にヒータを設けて、ステータ32をヒータにより直接加熱するような構成としても良い。
【0047】
また、上述した実施の形態では、スタートスイッチ操作後にステータ温度が所定温度Tthを超えると自動的に定常回転数への加速動作を開始したが、スタートスイッチ25bの操作と同時に定常回転数への加速動作を行う構成の場合にも、昇温完了信号や昇温完了推定時間を提示することで、オペレータはスタートスイッチ操作タイミングが分かりやすくなる。