(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から
図5(a)及び
図5(b)を参照しつつ、本発明に係る中留及びこの中留を有するバンドを備える腕時計の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態では中留を有するバンドが時計のモジュール等を収納する腕時計の時計ケースに取り付けられる時計バンドである場合を例として説明する。また、以下の実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
図1は、本実施形態における中留が適用された時計バンドを備える腕時計の斜視図である。
図1に示すように、腕時計100は、後述する中留10を備える時計バンド1と、この時計バンド1が取り付けられる機器ケースである時計ケース2と、時計ケース2の視認側(腕時計100の表面側)に配置される表示部3と、を備えている。表示部3は、時計ケース2内に収納される図示しないモジュールにより動作するようになっている。
なお、
図1では、腕時計100が、指針31等を有する文字板32を備えるアナログ方式の表示部3を備えている場合を例示しているが、腕時計100に設けられる表示部3はこれに限定されず、例えば液晶パネル等で構成されるデジタル方式の表示部や、アナログ方式、デジタル方式の両方を備える表示部であってもよい。
【0011】
時計バンド1は、第1のバンド1aと第2のバンド1bとを備え、第1のバンド1aと第2のバンド1bとは、中留10によって連結されている。
本実施形態では、時計ケース2の一端側である時計の6時側にバンド取付部21aが設けられており、このバンド取付部21aに第1のバンド1aが取り付けられている。
また、時計ケース2の他端側である時計の12時側にバンド取付部21bが設けられており、このバンド取付部21bに第2のバンド1bが取り付けられている。
【0012】
本実施形態において、時計バンド1(第1のバンド1a及び第2のバンド1b)は、複数の駒体11が連結されることにより構成されている。
時計バンド1を構成する駒体11は、例えばABS樹脂や、ポリアリレート(PAR)等のスーパーエンジニアリング・プラスチック、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)等のエンジニアリング・プラスチック等の硬質の合成樹脂で形成されている。
なお、駒体11を構成する材料はここに例示したものに限定されない。例えばチタニウムやステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属や、セラミック等によって駒体11を形成してもよい。
【0013】
本実施形態における中留10は、下板4と、カバー部材5と、係止用部材6と、を備えている。
図2(a)は、中留10及びこれに連結されている第1のバンド1a及び第2のバンド1bの一部分を時計バンド1の外側(すなわち、腕時計100を腕に嵌めた際の外側)から見た平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)における矢視b方向から見た時計バンドの側面図であり、
図2(c)は、
図2(a)の状態からカバー部材5と第2のバンド1bを取り外して下板4及び係止用部材6の構成を示した平面図である。
また、
図3(a)は、中留10及びこれに連結されている第1のバンド1a及び第2のバンド1bの一部分の斜視図であり、
図3(b)は、
図3(a)におけるb-b線に沿う断面図であり、
図3(c)は、
図3(a)におけるc-c線に沿う断面図である。
【0014】
下板4は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料で形成された長尺な板状の部材であり、平板状の部分である下板本体41を有している。本実施形態では、
図1等に示すように、下板本体41は、時計バンド1を腕に装着した際に腕の形状に沿うように、長手方向においてわずかに湾曲している。
図1及び
図2(a)から
図2(c)に示すように、この下板本体41の一端側には、下板4を第1のバンド1aの自由端側と連結させるための第1のバンド連結部42が設けられている。第1のバンド連結部42は、下板本体41の外側面(すなわち、腕時計100を腕に嵌めた際に外側となる面)から上方に立ち上がるように形成された一対の立設部である。
駒体11には、駒体11の幅方向(すなわち、時計バンド1の幅方向)に貫通する連結用の軸孔(図示せず)が形成されており、第1のバンド連結部42には、この駒体11の連結用の軸孔に対応する位置に連結軸12を挿通させる貫通孔421が形成されている。
本実施形態では、第1のバンド1aの自由端側に設けられた駒体11に形成されている軸孔と、第1のバンド連結部42の貫通孔421とに連結軸12を挿通させることにより、この連結軸12等を介して下板4の一端側が第1のバンド1aの自由端側に回動自在に取り付けられる。
なお、第1のバンド連結部42は、第1のバンド1aを下板4に回動自在に連結可能なものであればよく、その構成は図示例に限定されない。
【0015】
下板本体41の他端側には、下板4に係止用部材6を連結させるための係止用部材連結部43が設けられている。
係止用部材連結部43は、下板本体41の外側面の上に立ち上がるように形成されており、係止用部材連結部43には下板本体41の幅方向(時計バンド1の幅方向)に貫通する貫通孔431が形成されている。
本実施形態では、下板本体41における他端側の一部に、係止用部材6におけるU字の閉塞側の端部(これを以下「閉塞側端部61」とする。)を巻き込むように折り曲げ加工を施すことにより、貫通孔431を有する係止用部材連結部43が形成されている。
係止用部材6は、係止用部材連結部43の貫通孔431に係止用部材6の閉塞側端部61を挿通させることにより、下板4に回動自在に取り付けられる。
なお、係止用部材連結部43は、係止用部材6を下板4に回動自在に連結可能なものであればよく、その構成は図示例に限定されない。
【0016】
また、下板4における下板本体41の外側面(すなわち、腕時計100を腕に嵌めた際に外側となる面)には、係止用突起44が設けられている。
本実施形態では、係止用突起44は、下板本体41上の第1のバンド連結部42の近傍であって、時計バンド1の幅方向のほぼ中央部に配置されている。
図3(b)、
図3(c)等に示すように、本実施形態において、係止用突起44は、下板本体41の上に立設された軸部441と当該軸部441の先端に設けられ当該軸部441の径よりも径が大きく形成された係止部442からなり、外形形状がほぼきのこ状に形成されたロックピンである。本実施形態において、係止部442は、下方に向かって徐々に径が大きくなり、側面視において傘状に広がった形状となっている。
なお、係止用突起44の形状や配置等は図示例に限定されない。
係止用突起44は、下板本体41に一体的に形成されていてもよいし、別部材として形成したものを下板本体41に固定してもよい。係止用突起44は、中留10部分を繰り返し操作することによる磨耗に耐え得るように剛性に優れた材料で形成されている。
【0017】
カバー部材5は、中留10の折り畳み時(すなわち、中留10による第1のバンド1aと第2のバンド1bとの連結時)において下板4の外側面の上に重なり合うように配置されるものであり、中留10の外観部分を構成する。
カバー部材5は、例えばABS樹脂や、ポリアリレート(PAR)等のスーパーエンジニアリング・プラスチック、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)等のエンジニアリング・プラスチック等の硬質の合成樹脂で形成されている。なお、カバー部材5を構成する材料はここに例示したものに限定されない。例えばチタニウムやステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属や、セラミック等によってカバー部材5を形成してもよい。
なお、カバー部材5は、第1のバンド1a及び第2のバンド1bを構成する駒体11と同じ材料で形成されていることが好ましい。このようにすることによって、中留10の部分が目立たなくなり、第1のバンド1a及び第2のバンド1bがあたかも一繋がりであるかのような優れた外観の時計バンド1を実現することができる。
【0018】
カバー部材5の一端側には、カバー部材5を第2のバンド1bの自由端側と連結させるための第2のバンド連結部51が設けられている。
駒体11には、駒体11の幅方向(すなわち、時計バンド1の幅方向)に貫通する連結用の軸孔(図示せず)が形成されており、第2のバンド連結部51には、この駒体11の連結用の軸孔に対応する位置に連結軸13を挿通させる貫通孔511が形成されている。
本実施形態では、第2のバンド1bの自由端側に設けられた駒体11に形成されている軸孔と、第2のバンド連結部51の貫通孔511とに連結軸13を挿通させることにより、この連結軸13等を介してカバー部材5の一端側が第2のバンド1bの自由端側に回動自在に取り付けられる。
【0019】
また、カバー部材5における内側面(すなわち、腕時計100を腕に嵌めた際に内側となる面であり、下板4の外側面に対向する面)であって、カバー部材5の他端側(第2のバンド1bとの連結側とは反対の側)には、凹部52が形成されている。
凹部52は、少なくとも中留10の折り畳み時において下板4の係止用突起44に対応する部分が係止用突起44の高さよりも深く窪むように形成されており、中留10の折り畳み時において、凹部52内に係止用突起44が収容されるようになっている。
本実施形態では、
図3(c)に示すように、中留10の折り畳み時において、凹部52の内側上面に係止用突起44の上端部がほぼ当接するようになっている。
凹部52の深さは係止用突起44の高さよりも深ければよく、図示例に限定されないが、凹部52の内側上面に係止用突起44の上端部がほぼ当接する程度の深さとした場合には、中留10を留めた状態において、カバー部材5の遊びが少なくなり、カバー部材5の上下方向のがたつきを抑えることができる。
【0020】
凹部52を構成する両側壁には、後述する係止用部材6の開口側端部63を回動自在に係止する係止用部材連結部53がそれぞれ形成されている。
本実施形態において、係止用部材連結部53は、凹部52の内側から外側に向かって貫通する貫通孔となっており、係止用部材6の開口側端部63が凹部52の内側から外側に向かって貫通孔内に差し込まれるようになっている。
なお、係止用部材連結部53は、係止用部材6の開口側端部63を回動自在に係止することができるものであればよく、貫通孔に限定されない。例えば、係止用部材連結部53は凹部52の内側に形成され、係止用部材6の開口側端部63を差し込むことが可能な凹部であってもよい。
【0021】
また、カバー部材5における外側の両側部であって第2のバンド連結部51の近傍には、それぞれ引掛部54が設けられている。
引掛部54は、中留10部分を開閉させる際に爪や指を引っ掛けることのできる部分であり、本実施形態ではカバー部材5の両側部に張り出した凸部である。
引掛部54を設けることは必須ではないが、引掛部54を設けた場合には、中留10を開閉する際に操作がしやすくなり、特にカバー部材5を引き起こす際に力が入れやすくなる。また、中留10を駒体11と同じ材料で形成して目立たない作りとした場合には、引掛部54を設けることで、中留10の操作位置(すなわち、中留10のカバー部材5を引き起こす際に指を掛ける位置)がユーザにとって分かり易くなる。
なお、引掛部54は、爪や指を引っ掛けることのできるものであればよく、その形状は図示例に限定されない。また、引掛部は凸部に限定されない。例えば引掛部は、カバー部材5における外側の両側部に形成された凹部であってもよい。引掛部を外側に張り出さない構成とした場合には、外観に影響を与えないため、あたかも第1のバンド1a及び第2のバンド1bと中留10とが一繋がりとなっているようなデザインの時計バンド1を実現することができる。
【0022】
本実施形態では、引掛部54に爪や指を掛けて上方向に引き起こすと、カバー部材5における第2のバンド連結部51の側からカバー部材5が浮き上がり、カバー部材5における凹部52が形成されている側の端部が、下板4の第1のバンド連結部42及びこれに連結されている第1のバンド1aの駒体11の端部に突き当たる。そして、カバー部材5を引き起こすに従い、駒体11の端部等に突き当たっているカバー部材5の端部を回動の支点としてカバー部材5が第2のバンド1b側から第1のバンド1a側に向かって回動するようになっている。
【0023】
係止用部材6は、例えばステンレス鋼(SUS)等の剛性を有する金属材料等で形成された線状部材をほぼU字状に屈曲することで形成された係止用のワイヤである。
なお、係止用部材6を形成する材料や、係止用部材6の太さ、断面形状等は特に限定されないが、係止用部材6は、中留10の繰り返しの使用に耐え得るように、ある程度の剛性を有する材料、形状で形成される。
【0024】
係止用部材6は、そのU字の閉塞側の端部(閉塞側端部61)が下板4の他端側(本実施形態では、第2のバンド1bの側に配置される側)に回動自在に連結されるとともに、U字の開口側の端部(開口側端部63)がカバー部材5の他端側(本実施形態では、第1のバンド1aの側に配置される側)に回動自在に係止されている。
具体的には、前述のように、閉塞側端部61が下板4の係止用部材連結部43の貫通孔431に挿通されることで下板4に回動自在に連結され、開口側端部63がカバー部材5の係止用部材連結部53に差し込まれることでカバー部材5に回動自在に係止される。
そして、中留10の折り畳み時において、係止用部材6は、下板4の外側面とカバー部材5の内側面との間に配置される。
図2(c)等に示すように、係止用部材6は、U字の閉塞側から開口側に向かって徐々に時計バンド1の幅方向における距離が近接していき、係止用部材6における開口側には、線状部材同士の距離が最も近接する部分である狭窄部62が設けられている。
狭窄部62は、係止用突起44の係止部442の径よりも広い幅まで拡開可能であるとともに、バネ性により係止部442の径よりも狭い幅まで押し縮められるようになっている。
また、係止用部材6は、狭窄部62の先で線状部材の先端部が時計バンド1の幅方向の両側に向かって開くように屈曲している。
また、係止用部材6は狭窄部62の手前で上方向に立ち上がるように屈曲しており、中留10の折り畳み時には、狭窄部62が係止用突起44の係止部442の下側に当接する程度の位置に配置される。このように、中留10の折り畳み時に狭窄部62が係止用突起44の係止部442の下側に当接する場合には、中留10の折り畳み時において狭窄部62が位置決めされ、上下方向のがたつきが生じるのを抑えることができる。
【0025】
また、本実施形態において、係止用部材6における開口側に形成された狭窄部62は、係止用突起44を引っ掛け可能に構成されている。
すなわち、狭窄部62は、軸部441を挟み込む幅から係止用突起44の係止部442の径よりも広い幅まで変化可能となっており、中留10の折り畳み時にカバー部材5が押し下げられた際に、係止用部材6の狭窄部62が係止用突起44の係止部442に突き当たると係止部442によって線状部材同士の間隔が押し広げられ、係止部442を乗り越える。係止部442を乗り越えた後は、狭窄部62は、そのバネ性により係止部442の径よりも幅の狭い状態まで線状部材同士の間隔が狭まり、係止用突起44の係止部442を引っ掛けて容易に抜けない係止状態となる。
【0026】
次に、本実施形態における中留及びこれを適用した腕時計100の作用について説明する。
【0027】
本実施形態において、時計バンド1は、時計ケース2のバンド取付部21aに第1のバンド1aを取り付け、バンド取付部21bに第2のバンド1bを取り付けて、第1のバンド1aと第2のバンド1bの各自由端を繋ぐ位置に中留10を取り付けることで構成される。
中留10を時計バンド1に取り付ける際には、中留10の下板4における第1のバンド連結部42に第1のバンド1aの自由端側を取り付け、カバー部材5における第2のバンド連結部51に第2のバンド1bの自由端側を取り付ける。
さらに、下板4の係止用部材連結部43に係止用部材6の閉塞側端部61を取り付ける。また、係止用部材6の開口側を時計バンド1の幅方向に押し縮めながら係止用部材6の開口側端部63をカバー部材5の係止用部材連結部53に係止させる。これにより時計バンド1が完成する。
なお、上記組み立て順は一例であり、例えば、係止用部材6の閉塞側端部61を下板4の係止用部材連結部43に取り付け、係止用部材6の開口側端部63をカバー部材5の係止用部材連結部53に係止させて、中留10部分を組み立てた後、この中留10の下板4を第1のバンド1aの自由端側を取り付け、カバー部材5を第2のバンド1bの自由端側を取り付けて時計バンド1を完成させてもよい。
【0028】
中留10を留める(連結する)際には、係止用部材6を間に挟み込んだ状態でカバー部材5が下板4の上に重なるように折り畳むとともに、カバー部材5を上方から下方へと押し込む。これにより、カバー部材5の下側に配置された係止用部材6の狭窄部62が係止用突起44に突き当たり、狭窄部62が時計バンド1の幅方向に押し広げられて係止部442を乗り越える。その後狭窄部62は、係止用部材6のバネ性によって時計バンド1の幅方向に押し縮められ、係止用突起44の軸部441を挟み込んだ状態となる。この状態において、狭窄部62の上側は傘状に広がった係止部442の下側に配置されるため、容易に係止部442を乗り越えることができず、狭窄部62によって係止部442を引っ掛けた係止状態が維持される。これにより、中留10は、第1のバンド1aと第2のバンド1bとを連結させた連結状態となる。
なお、
図2(b)、
図3(a)から
図3(c)に示すように、中留10が連結状態となった際には、係止用突起44の係止部442の上端は、カバー部材5の凹部52の下面にほぼ当接するとともに、狭窄部62は、その上側が係止部442の下側に当接する程度の高さに配置される。このため、係止用部材6及びその上に配置されているカバー部材5の上下方向のがたつきも抑えられる。
【0029】
次に、
図4(a)及び
図4(b)、
図5(a)及び
図5(b)を参照しつつ、中留10を外す(連結を解除する)場合について説明する。
中留10を外す(連結を解除する)際には、カバー部材5の引掛部54に指等を掛けて、第2のバンド1bの側から第1のバンド1aに向かってカバー部材5を引き起こす。
図4(a)は、カバー部材5を引き起こす様子を示す中留及びこれに連結される時計バンドの要部側面図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示す中留及びこれに連結される時計バンドの要部斜視図である。
カバー部材5を引き起こすと、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、カバー部材5の第2のバンド1bの側が下板4から浮き上がるとともに、カバー部材5の第1のバンド1aの側の端部が、下板の第1のバンド連結部42及びこれに連結されている第1のバンド1aの端部に突き当てられる。そして、カバー部材5をさらに引き起こすと、この第1のバンド1aの側のカバー部材5の端部を支点としてカバー部材5が上方に回動し、てこの原理によって比較的小さな力で係止用部材6の狭窄部62が係止用突起44の係止部442を乗り越えて係止状態が解除される。
図5(a)は、係止用部材6の狭窄部62による係止用突起44の係止部442の係止状態が解除された様子を時計バンドの下側(裏面側)から見た斜視図であり、
図5(b)は、
図5(a)に示す状態を時計バンドの上側(表面側)から見た斜視図である。
狭窄部62による係止用突起44の係止部442の係止状態が解除されると、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、中留10の連結状態が解除され、時計バンド1が取り外し可能な状態となる。
【0030】
以上のように、本実施形態によれば、中留10が、その折り畳み時において下板4の外側面とカバー部材5の内側面との間に配置され、線状部材をU字状に屈曲することで形成された係止用部材6を備え、この係止用部材6における開口側に、係止用突起44を引っ掛け可能に構成された狭窄部62が設けられている。
これにより、三つ折れ方式の中留10を下板4とカバー部材5と係止用部材6の3つの部材で構成でき、中留10を留めるための構成も簡易であるため、中留10を軽量・コンパクトで、かつ安価に構成することができる。
また、中留10を外す際には、カバー部材5を第1のバンド1aの側に引き起こすだけで、てこの原理により比較的小さな力で係止用部材6による係止用突起44の係止を解除することができる。このため、ユーザが爪等を傷めたりすることなく、容易に中留10を着脱することができる。
特に係止用部材6は線状部材に折り曲げ加工を施して形成するものであるため、製造も比較的容易であるとともに、板状の部材とするよりも材料が少なくて済み、また、金属材料で形成しても比較的軽量なものとすることができる。
さらに、例えば従来のプッシュボタン方式の中留(すなわち、プッシュボタンをプッシュ操作することにより係合部が係止部から外れてバンドの連結が解除される方式の中留)であれば、係止用突起を係止するための複雑な機構をカバー部材の内部に設けなければならず、カバー部材の内部に十分な空間を確保するためにできるだけ薄く形成できる金属材料等でカバー部材を形成していた。
これに対して、本実施形態では、カバー部材5の内部に複雑な機構を組み込む必要がなく、形状も比較的単純であるため、各種の合成樹脂やセラミック等でカバー部材5を形成することが可能である。これにより、時計バンド1の駒体11を合成樹脂やセラミック等で形成した場合でも、これと同じ材料でカバー部材5を形成することも可能となり、第1のバンドと第2のバンドとの繋ぎ目が目立たないようにする等、時計バンド1のデザインのバリエーションが広がり、デザイン性に優れた時計バンド1を実現することができる。
特に、時計バンド1を各種の合成樹脂で形成した場合には、材料が軽量であるとともに形状加工が容易であり、色も様々なものを選択できる。このため、時計バンド1を軽量かつデザイン性に優れたものとすることができる。本実施形態では、このような場合に、中留10のカバー部材5もこれと同じ材料により統一的なデザインの形状等とすることができ、中留10の目立たない優れたデザインの時計バンド1を構成することができる。
また、係止用突起44は、軸部441と当該軸部441の先端に設けられ当該軸部441よりも径が大きく形成された係止部442からなるきのこ状のロックピンであり、係止用部材6における開口側には、係止部442の径よりも広い幅まで拡開可能であるとともに、バネ性により係止部442の径よりも狭い幅まで押し縮められる狭窄部62が設けられている。
このように、バネ性を有するワイヤである係止用部材6で係止用突起44の係止部442を係止させることにより、係止用突起44の係止及び係止状態の解除を行うための機構が簡易となり、中留10の軽量化、部品点数の減少による組み立て工数や生産コストの低減を実現することができる。
また、本実施形態の腕時計100は、以上のような中留10を有する時計バンド1を備えているため、爪等を傷めることなく、比較的軽い力で簡易に中留10を着脱することができる。
【0031】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0032】
例えば、本実施形態では、時計バンド1が複数の駒体11から構成されている場合を例として説明したが、本発明の中留を適用可能な時計バンドは複数の駒体11で構成されるものに限定されない。例えば、時計バンド1(第1のバンド1a及び第2のバンド1b)がウレタン樹脂や革等で形成され、第1のバンド1a及び第2のバンド1bを連結させるバックル部分に本発明の中留を適用してもよい。
【0033】
また、本実施形態では、中留10が腕時計100の時計バンド1に設けられている場合を例示したが、本発明の中留を適用可能なバンドは、時計バンドに限定されない。
第1のバンドと第2のバンドとを備え、これらを中留によって連結する構造のバンドであれば、本発明の中留を広く適用することができる。
【0034】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
機器ケースの一端側に取り付けられた第1のバンドと他端側に取り付けられた第2のバンドとを連結させるバンドの中留であって、
一端側が第1のバンドの自由端側に取り付けられるとともに、外側面に係止用突起が形成された下板と、
一端側が第2のバンドの自由端側に取り付けられるとともに、折り畳み時において前記下板の外側面に重なり合うように配置されるカバー部材と、
線状部材をU字状に屈曲することで形成され、U字の閉塞側が前記下板の他端側に回動自在に連結されるとともに、U字の開口側が前記カバー部材の他端側に回動自在に連結され、折り畳み時において前記下板の外側面と前記カバー部材の内側面との間に配置される係止用部材と、
を備え、
前記係止用部材における前記開口側は、前記係止用突起を引っ掛け可能に構成されていることを特徴とする中留。
<請求項2>
前記係止用突起は、軸部と当該軸部の先端に設けられ当該軸部よりも径が大きく形成された係止部からなるきのこ状のロックピンであり、
前記係止用部材における前記開口側には、前記係止部の径よりも広い幅まで拡開可能であるとともに、バネ性により前記係止部の径よりも狭い幅まで押し縮められる狭窄部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の中留。
<請求項3>
請求項1及び請求項2に記載の中留を備える時計バンドと、
前記時計バンドが取り付けられる時計ケースと、
前記時計ケースの視認側に配置される表示部と、
を備えていることを特徴とする腕時計。