特許第6394239号(P6394239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394239
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】連結柱
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20180913BHJP
   E04C 3/32 20060101ALI20180913BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   E04B1/24 F
   E04C3/32
   E04H9/02 321C
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-197893(P2014-197893)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-69839(P2016-69839A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100178283
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 孝太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭一
(72)【発明者】
【氏名】寺沢 太沖
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−325637(JP,A)
【文献】 特許第3254603(JP,B2)
【文献】 特開2008−002136(JP,A)
【文献】 特開平09−228473(JP,A)
【文献】 特開平10−169095(JP,A)
【文献】 特開平03−233062(JP,A)
【文献】 特公昭49−005969(JP,B1)
【文献】 実開昭51−039309(JP,U)
【文献】 米国特許第02114902(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/00−1/61
2/56−2/70
E04C3/00−3/46
E04H9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の主架構柱として複数の部材を連結させて構成される連結柱であって、
各々の主架構柱の少なくとも両側部に一対となって配置されるH形鋼の鉛直支持材と、各々の主架構柱の中間部に配置される1箇又は複数のH形鋼の連結材とを備え、
前記鉛直支持材及び前記連結材は、前記鉛直支持材の上端及び下端が、建築物の主架構梁に固定されるとともに、前記連結材の上端及び下端が、建築物の主架構梁に固定されることなく間隙を形成させるものであり、前記鉛直支持材のフランジと前記連結材のフランジとが互いに板厚方向で乾式接合されることで、建築物の横方向に連続させて連結されるものとなること
を特徴とする連結柱。
【請求項2】
前記連結材は、1箇のH形鋼、又は、複数のH形鋼の少なくとも一部で、ウェブに開口部が形成されること
を特徴とする請求項1記載の連結柱。
【請求項3】
前記連結材は、1箇のH形鋼、又は、複数のH形鋼の少なくとも一部で、材軸方向で複数に分割されたH形鋼の短尺材が、縦方向に隙間を有するものとなるように設けられること
を特徴とする請求項1又は2記載の連結柱。
【請求項4】
前記連結材は、1箇のH形鋼、又は、複数のH形鋼の少なくとも一部で、ウェブ及びフランジの何れか一方又は両方に、前記鉛直支持材の鋼材よりも低強度の鋼材が用いられること
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の連結柱。
【請求項5】
前記鉛直支持材及び前記連結材は、溶接軽量H形鋼が用いられること
を特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の連結柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の主架構柱として複数の部材を連結させて構成される連結柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軽量で剛性の高い建造物の柱構造体を提供することを目的として、例えば、特許文献1に開示される柱構造体が提案されている。また、製作・運搬・施工が容易で比較的高い剛性を有するとともに、地震等のエネルギーを効率よく吸収する耐震壁を提供することを目的として、例えば、特許文献2に開示される耐震壁が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示された柱構造体は、縦方向に延在するH形鋼にて構成される一対の縦弦材と、一対の縦弦材の間に架け渡される丸型パイプにて構成される複数の斜材とを備えて、斜材端部にスリットが形成されるとともに、縦弦材のフランジ面にガセットプレートが設けられて、ガセットプレートをスリットに挿入して溶接することで、斜材が縦弦材に接合される。
【0004】
特許文献2に開示された耐震壁は、複数のH形鋼からなるパネルを備えて、H形鋼のウェブの降伏耐力よりも低い降伏耐力の領域をウェブに有するものであり、複数のH形鋼を横方向に連続して接合することで、複数の鉄骨柱の間に耐震壁が構成される。
【0005】
特許文献2に開示された耐震壁は、H形鋼のパネルの上端及び下端が、上梁及び下梁との間に間隙を形成させることなく、上梁及び下梁に取付部材で固定されるものとなる。また、特許文献2に開示された耐震壁は、複数のH形鋼のフランジがボルト接合されることによりパネルが構成されるものの、複数のH形鋼のパネルと鉄骨柱との間に間隙が形成されるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−136898号公報
【特許文献2】特開平10−153013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された柱構造体は、建造物に用いられる各々の柱構造体において、縦弦材のフランジ面にガセットプレートが溶接等で設けられるとともに、ガセットプレートに丸型パイプが溶接で接合されるため、溶接作業が必要となることで製作性及び施工性が低下するものとなる。また、特許文献1に開示された柱構造体は、H形鋼や丸型パイプ等の形状の異なる複数の構成部材が用いられることで、各々の柱構造体の構成部材を共通化させることができず、製作、運搬コスト及び施工コストが増大するものとなるという問題点があった。
【0008】
特許文献2に開示された耐震壁は、H形鋼のパネルの上端及び下端が、複数の鉄骨柱の間で上梁及び下梁に間隙を形成させることなく固定されることで、地震等のエネルギーを吸収するものとして、複数の鉄骨柱の間に設けられるものとなる。このため、特許文献2に開示された耐震壁は、複数のH形鋼のパネルと鉄骨柱との間に間隙を形成して、複数のH形鋼のパネルを上梁及び下梁に固定することが必要となり、各々の鉄骨柱をH形鋼のパネルで補強するものとならないことから、各々の鉄骨柱の剛性及び耐力等を向上させることができないものとなるという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、建築物の各々の主架構柱で、部材を共通化させるとともに製作性及び施工性を向上させて、各々の主架構柱の剛性及び耐力等を向上させることのできる連結柱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る連結柱は、建築物の主架構柱として複数の部材を連結させて構成される連結柱であって、各々の主架構柱の少なくとも両側部に一対となって配置されるH形鋼の鉛直支持材と、各々の主架構柱の中間部に配置される1箇又は複数のH形鋼の連結材とを備え、前記鉛直支持材及び前記連結材は、前記鉛直支持材の上端及び下端が、建築物の主架構梁に固定されるとともに、前記連結材の上端及び下端が、建築物の主架構梁に固定されることなく間隙を形成させるものであり、前記鉛直支持材のフランジと前記連結材のフランジとが互いに板厚方向で乾式接合されることで、建築物の横方向に連続させて連結されるものとなることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る連結柱は、第1発明において、前記連結材は、1箇のH形鋼、又は、複数のH形鋼の少なくとも一部で、ウェブに開口部が形成されることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る連結柱は、第1発明又は第2発明において、前記連結材は、1箇のH形鋼、又は、複数のH形鋼の少なくとも一部で、材軸方向で複数に分割されたH形鋼の短尺材が、縦方向に隙間を有するものとなるように設けられることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係る連結柱は、第1発明〜第3発明の何れかにおいて、前記連結材は、1箇のH形鋼、又は、複数のH形鋼の少なくとも一部で、ウェブ及びフランジの何れか一方又は両方に、前記鉛直支持材の鋼材よりも低強度の鋼材が用いられることを特徴とする。
【0014】
第5発明に係る連結柱は、第1発明〜第4発明の何れかにおいて、前記鉛直支持材及び前記連結材は、溶接軽量H形鋼が用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明〜第5発明によれば、鉛直支持材及び連結材に略同一形状のH形鋼が用いられるため、各々の主架構柱を構成する複数の部材を共通化させることができるものとなり、鉛直支持材及び連結材の製作コスト、運搬コスト及び主架構柱の施工コストの増大を抑制することが可能となる。第1発明〜第5発明によれば、鉛直支持材及び連結材をボルト接合、ネジ、ビス、嵌合等により連結することで各々の主架構柱が構成されるため、乾式接合であるボルト接合等のみにより主架構柱が製作されて、建築現場における溶接作業を必要としないものとなり、主架構柱の製作性及び施工性を向上させるとともに、鉛直支持材又は連結材の部材の事後的な交換等を容易にすることが可能となる。第1発明〜第5発明によれば、鉛直支持材及び連結材に略同一形状のH形鋼が用いられるため、各々の主架構柱を構成する複数の部材を共通化させることができるものとなり、同じ機械設備でH形鋼の製作を可能として、工業化にも適したものとなることから(例えば、プレハブ住宅の工業化ラインでのH形鋼の製作が可能)、製作性の向上に寄与することが可能となる。
【0016】
第1発明〜第5発明によれば、連結材の上端及び下端の各々が、上部及び下部の主架構梁との間に間隙を形成させるものとなるため、鉛直支持材の上端及び下端のベースプレートを主架構梁にボルト接合させるときに、間隙で接合作業を実施することができるものとなり、ベースプレートの周辺でのボルト接合のための施工空間を大きく確保して、鉛直支持材を固定するための接合作業を容易にすることが可能となる。第1発明〜第5発明によれば、各々の主架構柱において必要となる鉛直支持力及び曲げ抵抗を鉛直支持材により確保するとともに、連結材の材長を短くする等により適宜調整して、各々の主架構柱の全体が所定の剛性、耐力等を有するものとなるように容易に調整することが可能となる。
【0017】
第1発明〜第5発明によれば、左側部の鉛直支持材と右側部の鉛直支持材とが、横方向に離間させて配置されて、1箇又は複数の連結材で連結されて一体化することで、各々の主架構柱の両側部の鉛直支持材から作用する力が連結材を介して互いに伝達されるものとなり、各々の鉛直支持材を連結材で連結することなく単独で設置する場合よりも、各々の主架構柱の断面性能を向上させることが可能となる。
【0018】
特に、第2発明によれば、H形鋼の連結材のウェブに、所定の形状、大きさの開口部が形成されるため、連結材のウェブの一部を欠損させて連結材の剛性が適宜調整されることで、各々の主架構柱の全体が所定の剛性、耐力等を有するものとなるように容易に調整することが可能となる。第2発明によれば、H形鋼の連結材のウェブに開口部が形成されることで、水道、ガス及び電気等の配管を開口部に挿通させて、配管用の開口として開口部を有効利用することが可能となる。
【0019】
特に、第3発明によれば、複数に分割されたH形鋼の短尺材が連結材として設けられることで、各々の短尺材を個別にボルト接合させることができるものとなり、各々の短尺材の接合作業の精度を高くするとともに、接合作業を容易にすることが可能となる。第3発明によれば、複数の短尺材が縦方向で互いに隙間を有するものとなるように設けられることで、各々の主架構柱が全体として所定の剛性、耐力等を有するものとなるように、連結材の剛性を適宜調整することが可能となり、また、配管用の開口として隙間を有効利用することが可能となる。
【0020】
特に、第4発明によれば、鉛直支持材の鋼材よりも相対的に低強度の鋼材が、連結材に用いられることで、鉛直支持材の上端及び下端を上部及び下部の主架構梁に固定して鉛直支持材に所定の鉛直支持力を発揮させながら、大地震等のときに水平方向に作用する地震エネルギーを、低強度の連結材の鉛直支持材に先行させた塑性化により吸収させて、各々の主架構柱で鉛直支持機能とエネルギー吸収機能(性能)とを同時に確保することが可能となる。
【0021】
特に、第5発明によれば、鉛直支持材のH形鋼及び連結材のH形鋼の各々に溶接軽量H形鋼が用いられることで、横方向の幅寸法の許容差が小さいH形鋼が用いられるものとなり、複数の鉛直支持材及び連結材を横方向に連続させて連結させるものであるにもかかわらず、各々の主架構柱の全体における幅寸法の製作誤差を極小化することができるため、各々の主架構柱の製作、施工精度を向上させることが可能となる。さらに、溶接軽量H形鋼は、ウェブとフランジとを高周波抵抗溶接することから、アーク溶接で製作された通常の溶接H形鋼よりも溶接熱影響が少なく、ウェブやフランジの母材の熱影響による材質変化が狭い範囲で済むものとなるため、設計上想定した通りの所期する構造性能をH形鋼に発揮させることがより容易に可能となり、特に、溶接軽量H形鋼に低降伏点鋼を用いる場合には、当該H形鋼に所期する構造性能を発揮させることのできるという効果が大きいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明を適用した連結柱が用いられる建築物の主架構柱を示す斜視図である。
図2】本発明を適用した連結柱が複数箇所に設けられた建築物を示す平面図である。
図3】本発明を適用した連結柱のH形鋼の鉛直支持材を示す斜視図である。
図4】本発明を適用した連結柱のH形鋼の連結材を示す斜視図である。
図5】本発明を適用した連結柱で2箇の鉛直支持材と1箇の連結材とを示す正面図である。
図6】(a)は、本発明を適用した連結柱で鉛直支持材と連結材とを連結させた状態を示す拡大正面図であり、(b)は、鉛直支持材を主架構梁に固定した状態を示す拡大正面図である。
図7】(a)は、本発明を適用した連結柱で連結材のウェブに形成された略円形状の開口部を示す正面図であり、(b)は、略矩形状の開口部を示す正面図である。
図8】(a)は、本発明を適用した連結柱で連結材のウェブにバーリング加工して形成された開口部を示す断面図であり、(b)は、リングカバーが取り付けられた状態の開口部を示す断面図である。
図9】(a)は、本発明を適用した連結柱で複数に分割された短尺材が設けられた連結材を示す正面図であり、(b)は、建築物の縦方向に偏心して配置された連結材を示す正面図である。
図10】本発明を適用した連結柱で2箇の鉛直支持材と複数の連結材とを示す正面図である。
図11】本発明を適用した連結柱で複数の連結材の一部のウェブに形成された開口部を示す正面図である。
図12】本発明を適用した連結柱で複数の連結材の一部に設けられた短尺材を示す正面図である。
図13】本発明を適用した連結柱で複数の連結材の間に設けられた鉛直支持材を示す正面図である。
図14】(a)は、2箇の鉛直支持材が1箇の連結材で連結された状態を示す正面図であり、(b)は、2箇の鉛直支持材が連結材で連結されない状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した連結柱1を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
本発明を適用した連結柱1は、図1に示すように、建築物8の主架構柱80として、複数の部材を連結させて構成されるものであり、複数の部材としての鉛直支持材2及び連結材3が、建築物8の横方向Xに連続させて連結されるものとなる。
【0025】
建築物8は、建築物8を支持するための骨組みを構成する構造部材の柱材として、建築物8の縦方向Yに延びる主架構柱80が設けられるとともに、建築物8を支持するための骨組みを構成する構造部材の梁材として、建築物8の横方向Xに延びる主架構梁81が設けられる。
【0026】
建築物8は、図2に示すように、建築物8の複数箇所に主架構柱80が設けられるとともに、必要に応じて、複数箇所に設けられた主架構柱80の間に壁面材82が設けられる。建築物8は、図2のA部、B部に示すように、建築物8の複数箇所に設けられた主架構柱80の各々で、本発明を適用した連結柱1が用いられるものとなる。
【0027】
ここで、建築物8の横方向Xとは、建築物8の縦方向Yに略直交する方向をいうものであり、略鉛直方向を縦方向Yとする場合は、略水平面内方向の全てが横方向Xに該当して、例えば、図2の壁面材82と略平行となる方向のみが建築物8の横方向Xに該当するものではなく、図2の壁面材82に略垂直となる方向等も建築物8の横方向Xとなる。
【0028】
本発明を適用した連結柱1は、図1に示すように、建築物8の縦方向Yに延びる2箇以上のH形鋼の鉛直支持材2と、建築物8の縦方向Yに延びる1箇又は複数のH形鋼の連結材3とを備える。本発明を適用した連結柱1は、各々の主架構柱80の横方向Xの両側部において、2箇の鉛直支持材2が左側部80a及び右側部80bに一対となって配置されるとともに、各々の主架構柱80の横方向Xの中間部80cにおいて、1箇又は複数の連結材3が配置される。
【0029】
鉛直支持材2は、図3に示すように、左側端に設けられる略平板状の左側のフランジ4と、右側端に設けられる略平板状の右側のフランジ5と、左側のフランジ4及び右側のフランジ5の略中央に連設する略平板状のウェブ6とを備えて、材軸方向で断面略H形状に形成される。鉛直支持材2は、左側のフランジ4及び右側のフランジ5の何れか一方又は両方で、板厚方向に貫通させたボルト挿通孔20が所定の箇所に形成される。
【0030】
鉛直支持材2は、左側のフランジ4、右側のフランジ5及びウェブ6の各々に、板厚の薄い鋼材が用いられるとともに、左側のフランジ4、右側のフランジ5及びウェブ6が互いに溶接接合されることで、溶接軽量H形鋼が用いられるものとなる。鉛直支持材2は、これに限らず、左側のフランジ4、右側のフランジ5及びウェブ6を熱間圧延等で一体的に形成させた圧延H形鋼が用いられてもよい。
【0031】
鉛直支持材2は、溶接軽量H形鋼が用いられる場合に、例えば、左側のフランジ4、及び、右側のフランジ5の板厚寸法が9mm程度で、奥行寸法が100mm程度となり、ウェブ6の板厚寸法が6mm程度、幅寸法が241mm程度となる。鉛直支持材2は、例えば、材軸方向の材長を、2700mm程度としたものが用いられる。
【0032】
鉛直支持材2は、材軸方向の上端2a及び下端2bの各々に、略平板状に形成されたベースプレート7が設けられる。ベースプレート7は、例えば、板厚寸法が19mm程度の略矩形状に形成されるものであり、左側のフランジ4、右側のフランジ5及びウェブ6の各々の上端面及び下端面に溶接により取り付けられる。ベースプレート7は、板厚方向に貫通させたボルト挿通孔70が所定の箇所に形成される。
【0033】
連結材3は、図4に示すように、左側端に設けられる略平板状の左側のフランジ4と、右側端に設けられる略平板状の右側のフランジ5と、左側のフランジ4及び右側のフランジ5の略中央に連設する略平板状のウェブ6とを備えて、材軸方向で断面略H形状に形成される。連結材3は、左側のフランジ4及び右側のフランジ5の各々で、板厚方向に貫通させたボルト挿通孔30が所定の箇所に形成される。
【0034】
連結材3は、左側のフランジ4、右側のフランジ5及びウェブ6の各々に、板厚の薄い鋼材が用いられるとともに、左側のフランジ4、右側のフランジ5及びウェブ6が互いに溶接接合されることで、溶接軽量H形鋼が用いられるものとなる。連結材3は、これに限らず、左側のフランジ4、右側のフランジ5及びウェブ6を熱間圧延等で一体的に形成させた圧延H形鋼が用いられてもよい。
【0035】
連結材3は、溶接軽量H形鋼が用いられる場合に、例えば、左側のフランジ4、及び、右側のフランジ5の板厚寸法が6mm程度で、奥行寸法が100mm程度となり、ウェブ6の板厚寸法が6mm程度、幅寸法が229mm程度となる。連結材3は、例えば、材軸方向の材長を、2250mm程度としたものが用いられる。
【0036】
本発明を適用した連結柱1は、例えば、図2のA部に示すように、2箇の鉛直支持材2と、1箇の連結材3とが、建築物8の横方向Xに連続させて連結されることで、建築物8の各々の主架構柱80において、3箇のH形鋼が用いられるものとなる。
【0037】
このとき、本発明を適用した連結柱1は、図5に示すように、各々の主架構柱80の左側部80a及び右側部80bの各々に1箇の鉛直支持材2が配置されるとともに、左側部80aの鉛直支持材2と右側部80bの鉛直支持材2との間で、各々の主架構柱80の中間部80cに1箇の連結材3が配置されるものとなる。
【0038】
本発明を適用した連結柱1は、左側部80aの鉛直支持材2の右側のフランジ5と、連結材3の左側のフランジ4とが、互いに当接された状態でボルト接合されて、また、右側部80bの鉛直支持材2の左側のフランジ4と、連結材3の右側のフランジ5とが、互いに当接された状態でボルト接合されることで、2箇の鉛直支持材2と1箇の連結材3とが、横方向Xに連続させて連結される。
【0039】
本発明を適用した連結柱1は、主架構柱80の上方に設けられる上部の主架構梁81、及び、主架構柱80の下方に設けられる下部の主架構梁81に、鉛直支持材2の上端2a及び下端2bの各々に設けられたベースプレート7がボルト接合される。
【0040】
本発明を適用した連結柱1は、鉛直支持材2の上端2a及び下端2bのベースプレート7の各々が、上部の主架構梁81及び下部の主架構梁81に当接させてボルト接合されることで、鉛直支持材2の上端2aが、上部の主架構梁81に固定されるとともに、鉛直支持材2の下端2bが、下部の主架構梁81に固定されるものとなる。
【0041】
本発明を適用した連結柱1は、鉛直支持材2の上端2aにおいて、ベースプレート7が上部の主架構梁81に当接されるとともに、鉛直支持材2の下端2bにおいて、ベースプレート7が下部の主架構梁81に当接されるものとなるように、鉛直支持材2が材軸方向に所定の材長を有するものであり、また、連結材3が材軸方向に所定の材長を有して、鉛直支持材2よりも連結材3の材長が短いものとなる。
【0042】
本発明を適用した連結柱1は、鉛直支持材2よりも連結材3の材長を短いものとすることで、連結材3の上端3a及び下端3bの各々が、上部及び下部の主架構梁81から離間したものとなる。本発明を適用した連結柱1は、連結材3の上端3a及び下端3bの各々が、上部及び下部の主架構梁81から離間することで、上部及び下部の主架構梁81に固定されることなく、上部及び下部の主架構梁81との間に間隙Sを形成させるものとなる。
【0043】
本発明を適用した連結柱1は、必要に応じて、鉛直支持材2の鋼材よりも低強度の鋼材が、連結材3に用いられる。本発明を適用した連結柱1は、例えば、鉛直支持材2の鋼材が、通常の強度を有する普通鋼、又は、普通鋼よりも高い強度を有する高強度鋼となる場合に、連結材3の鋼材が、普通鋼よりも低い強度を有する低降伏点鋼となるものであり、また、鉛直支持材2の鋼材が高強度鋼となる場合に、連結材3の鋼材が普通鋼又は低降伏点鋼となる。本発明を適用した連結柱1は、連結材3のウェブ6及びフランジの何れか一又は両方に、鉛直支持材2の鋼材よりも低強度の鋼材が用いられるものであり、例えば、連結材3のウェブ6及びフランジの両方において低強度の鋼材が用いられるもののみならず、連結材3のウェブ6だけに低強度の鋼材が用いられるものであってもよい。
【0044】
鉛直支持材2及び連結材3は、例えば、工場等で各々が個別に製造されるとともに、各々が互いに連結される前の状態で、建築現場まで個別に運搬される。鉛直支持材2及び連結材3は、図6(a)に示すように、互いに重ね合わされた鉛直支持材2のボルト挿通孔20と連結材3のボルト挿通孔30とにボルト85を挿通させて、ボルト85にナット86を仮締めさせることで、建築現場で横置きさせた状態で仮組みされる。
【0045】
鉛直支持材2及び連結材3は、建築現場で横置きさせた状態で仮組みした後に、材軸方向が縦方向Yとなるように立設させて、図6(b)に示すように、鉛直支持材2のベースプレート7を主架構梁81に当接させる。鉛直支持材2及び主架構梁81は、鉛直支持材2を主架構梁81に固定するときに、ベースプレート7のボルト挿通孔70と主架構梁81のボルト挿通孔83とを互いに重ね合わせてボルト85を挿通させて、ボルト85にナット86を締結させる。
【0046】
鉛直支持材2及び連結材3は、図6に示すように、ベースプレート7のボルト挿通孔70と主架構梁81のボルト挿通孔83とに挿通されたボルト85にナット86を締結させて、また、鉛直支持材2のボルト挿通孔20と連結材3のボルト挿通孔30とに挿通されたボルト85にナット86を本締めさせて、本発明を適用した連結柱1が組み立てられるものとなる。
【0047】
なお、鉛直支持材2及び連結材3は、建築現場で横置きさせた状態で仮組みされるもののみならず、建築現場で横置きさせた状態での仮組みをすることなく、建築現場で立設させた状態でボルト85にナット86を本締めさせて本組みされるものであってもよく、重量、サイズ的に運搬や施工に支障がなければ、工場等で本組み又は仮組みされるものであってもよい。
【0048】
本発明を適用した連結柱1は、図7に示すように、H形鋼の連結材3のウェブ6を板厚方向に貫通させて、所定の形状、大きさの開口部60が、連結材3のウェブ6の所定の箇所に形成されてもよい。開口部60は、例えば、図7(a)に示すように、略円形状に形成されるものであり、また、図7(b)に示すように、略矩形状に形成されてもよい。開口部60は、図8(a)に示すように、バーリング加工等により突出部60aが形成されることで補強されてもよく、また、図8(b)に示すように、略円環状等のリングカバー60bが開口部60の外縁に沿って取り付けられることで補強されてもよい。
【0049】
本発明を適用した連結柱1は、図9(a)に示すように、連結材3の材軸方向で複数に分割された複数のH形鋼の短尺材35が、1箇の連結材3として設けられてもよい。複数の短尺材35は、連結材3の材軸方向で互いに離間させた状態で、主架構柱80の左側部80aの鉛直支持材2及び右側部80bの鉛直支持材2にボルト接合されることにより、縦方向Yで互いに隙間Gを有するものとなるように設けられる。
【0050】
本発明を適用した連結柱1は、図9(b)に示すように、連結材3の上端3a及び下端3bの各々が、上部及び下部の主架構梁81から離間させる距離を互いに異ならせるようにして、縦方向Yで上方又は下方の何れかに偏心させた状態で連結材3が設けられてもよい。本発明を適用した連結柱1は、連結材3が縦方向Yに偏心させて設けられて、上部の主架構梁81との間の間隙S1の高さと、下部の主架構梁81との間の間隙S2の高さとが、縦方向Yで異なるものとなる。
【0051】
本発明を適用した連結柱1は、2箇の鉛直支持材2と、2箇以上の連結材3とが、横方向Xに連続させて連結されてもよく、例えば、図2のB部に示すように、2箇の鉛直支持材2と、3箇の連結材3とが、建築物8の横方向Xに連続させて連結されることで、建築物8の各々の主架構柱80において、5箇のH形鋼が用いられるものとなる。
【0052】
このとき、本発明を適用した連結柱1は、図10に示すように、各々の主架構柱80の左側部80a及び右側部80bの各々に1箇の鉛直支持材2が配置されるとともに、左側部80aの鉛直支持材2と右側部80bの鉛直支持材2との間で、各々の主架構柱80の中間部80cに3箇の連結材3が配置されるものとなる。
【0053】
本発明を適用した連結柱1は、左側部80aの鉛直支持材2の右側のフランジ5と、左側部80aの鉛直支持材2に隣り合う連結材3の左側のフランジ4とが、互いに当接された状態でボルト接合されて、また、右側部80bの鉛直支持材2の左側のフランジ4と、右側部80bの鉛直支持材2に隣り合う連結材3の右側のフランジ5とが、互いに当接された状態でボルト接合される。
【0054】
さらに、本発明を適用した連結柱1は、左側部80aの鉛直支持材2に隣り合う連結材3の右側のフランジ5、及び、右側部80bの鉛直支持材2に隣り合う連結材3の左側のフランジ4が、中央の連結材3の左側のフランジ4及び右側のフランジ5と、互いに当接された状態でボルト接合されることで、2箇の鉛直支持材2と3箇の連結材3とが、横方向Xに連続させて連結される。
【0055】
本発明を適用した連結柱1は、必要に応じて、複数の連結材3のH形鋼の少なくとも一部で、鉛直支持材2の鋼材よりも低強度の鋼材が用いられる。本発明を適用した連結柱1は、2箇の鉛直支持材2に3箇の連結材3が連続させて連結されるときに、左側部80aの鉛直支持材2に隣り合う連結材3、右側部80bの鉛直支持材2に隣り合う連結材3、及び、中央の連結材3のうち一部又は全部のH形鋼で、鉛直支持材2の鋼材よりも低強度の鋼材が用いられる。
【0056】
本発明を適用した連結柱1は、図11に示すように、複数の連結材3のH形鋼の少なくとも一部で、H形鋼の連結材3のウェブ6を板厚方向に貫通させて、所定の形状、大きさの開口部60が、連結材3のウェブ6の所定の箇所に形成されてもよい。本発明を適用した連結柱1は、2箇の鉛直支持材2に3箇の連結材3が連続させて連結されるときに、左側部80aの鉛直支持材2に隣り合う連結材3、右側部80bの鉛直支持材2に隣り合う連結材3、及び、中央の連結材3のうち一部又は全部のH形鋼で、ウェブ6に開口部60が形成される。
【0057】
本発明を適用した連結柱1は、図12に示すように、複数の連結材3のH形鋼の少なくとも一部で、連結材3の材軸方向で複数に分割された複数のH形鋼の短尺材35が、1箇の連結材3として設けられてもよい。本発明を適用した連結柱1は、2箇の鉛直支持材2に3箇の連結材3が連続させて連結されるときに、左側部80aの鉛直支持材2に隣り合う連結材3、右側部80bの鉛直支持材2に隣り合う連結材3、及び、中央の連結材3のうち一部又は全部のH形鋼で、材軸方向で複数に分割されたH形鋼の短尺材35が、縦方向Yに隙間Gを有するものとなるように設けられる。
【0058】
本発明を適用した連結柱1は、図13に示すように、各々の主架構柱80の左側部80a、右側部80b及び中間部80cの各々に、1箇の鉛直支持材2が配置されるとともに、各々の主架構柱80の中間部80cで、左側部80aの鉛直支持材2と中間部80cの鉛直支持材2との間、及び、右側部80bの鉛直支持材2と中間部80cの鉛直支持材2との間の各々に、1箇の連結材3が配置されてもよい。
【0059】
このとき、本発明を適用した連結柱1は、左側部80aの鉛直支持材2に隣り合う連結材3の右側のフランジ5が、中間部80cの鉛直支持材2の左側のフランジ4に当接された状態でボルト接合されて、また、右側部80bの鉛直支持材2に隣り合う連結材3の左側のフランジ4が、中間部80cの鉛直支持材2の右側のフランジ5に当接された状態でボルト接合されることで、3箇の鉛直支持材2と2箇の連結材3とが、横方向Xに連続させて連結される。
【0060】
本発明を適用した連結柱1は、これに限らず、各々の主架構柱80の左側部80a及び右側部80bの各々に、複数の連続させて連結された鉛直支持材2が配置されるとともに、左側部80aの複数の鉛直支持材2と右側部80bの複数の鉛直支持材2との間に、1箇又は複数の連結材3が配置されてもよく、必要に応じて、各々の主架構柱80の中間部80cにも、1箇又は複数の鉛直支持材2が配置されてもよい。本発明を適用した連結柱1は、各々の主架構柱80の中間部80cに配置された複数の連結材3が、材軸方向で互いの材長を略同一として、又は、互いの材長を異なるものとして設けられる。
【0061】
ここで、本発明を適用した連結柱1は、図14(a)に示すように、左側部80aの鉛直支持材2と右側部80bの鉛直支持材2とが、1箇の連結材3で連結されて一体化することで、図14(b)に示すように、左側部80aの鉛直支持材2と右側部80bの鉛直支持材2とが、連結材3で連結されない場合と比較して、断面性能を向上させる効果が高いものとなる。
【0062】
例えば、鉛直支持材2及び連結材3として用いられるH形鋼は、断面形状の幅寸法が250mmで、左側のフランジ4、及び、右側のフランジ5の板厚寸法9mm、奥行寸法125mm、ウェブ6の板厚寸法6mmとして、単位長さあたりのH形鋼の重量が29.0kg/mとなり、また、鉛直支持材2の材軸方向の材長を2750mm、連結材3の材軸方向の材長を2250mmとして、各々の鉛直支持材2の強軸方向の断面二次モーメントは3960cm4となる。
【0063】
したがって、図14(b)に示すように、両側部の鉛直支持材2が連結材3で連結されない場合は、両側部の鉛直支持材2による強軸方向の断面二次モーメントは7920cm4となり、また、H形鋼の総重量が159.5kgとなるため、単位重量あたりの断面二次モーメントは49.7cm4/kgとなる。これに対して、図14(a)に示すように、両側部の鉛直支持材2が連結材3で連結される場合は、両側部の鉛直支持材2及び連結材3による強軸方向の断面二次モーメントは54132.5cm4となり、また、H形鋼の総重量が224.8kgとなるため、単位重量あたりの断面二次モーメントは240.9cm4/kgとなり、両側部の鉛直支持材2が連結材3で連結されない場合と比較して、単位重量あたりの断面二次モーメントが約4.8倍にもなるため、断面性能を向上させる効果が非常に高いものとなることがわかる。
【0064】
本発明を適用した連結柱1は、図1に示すように、鉛直支持材2及び連結材3に略同一形状のH形鋼が用いられるため、各々の主架構柱80を構成する複数の部材を共通化させることができるものとなり、鉛直支持材2及び連結材3の製作コスト、運搬コスト及び主架構柱80の施工コストの増大を抑制することが可能となる。本発明を適用した連結柱1は、鉛直支持材2及び連結材3に略同一形状のH形鋼が用いられるため、同じ機械設備でH形鋼の製作を可能として、工業化にも適したものとなることから(例えば、プレハブ住宅の工業化ラインでのH形鋼の製作が可能)、製作性の向上に寄与することが可能となる。
【0065】
本発明を適用した連結柱1は、鉛直支持材2及び連結材3をボルト接合により連結することで各々の主架構柱80が構成されるため、乾式接合であるボルト接合のみにより主架構柱80が製作されて、建築現場における溶接作業を必要としないものとなり、主架構柱80の製作性及び施工性を向上させるとともに、鉛直支持材2又は連結材3の部材の事後的な交換等を容易にすることが可能となる。なお、本発明を適用した連結柱1は、ボルト接合による乾式接合だけでなく、ネジ、ビス、嵌合等による乾式接合により主架構柱80を製作することもできる。
【0066】
本発明を適用した連結柱1は、図5に示すように、連結材3の上端3a及び下端3bの各々が、上部及び下部の主架構梁81との間に間隙Sを形成させるものとなるため、鉛直支持材2の上端2a及び下端2bのベースプレート7を主架構梁81にボルト接合させるときに、間隙Sで接合作業を実施することができるものとなり、ベースプレート7の周辺でのボルト接合のための施工空間を大きく確保して、鉛直支持材2を固定するための接合作業を容易にすることが可能となる。
【0067】
本発明を適用した連結柱1は、鉛直支持材2よりも連結材3の材長を短いものとすることで、各々の主架構柱80において必要となる鉛直支持力及び曲げ抵抗を鉛直支持材2により確保するとともに、連結材3の材長を短くする等により適宜調整して、各々の主架構柱80の全体が所定の剛性、耐力等を有するものとなるように容易に調整することが可能となる。本発明を適用した連結柱1は、連結材3の材長を短くするもののほか、フランジ同士の接合箇所の仕様(ボルト接合等の位置やボルト数量)を調整したり、連結材3のウェブ6の板厚寸法を変えることによっても、各々の主架構柱80の全体が所定の剛性、耐力等を有するものとなるように容易に調整することが可能となる。
【0068】
本発明を適用した連結柱1は、各々の主架構柱80において必要となる鉛直支持力に加えて、地震力等により生じる曲げモーメントにも抵抗するものであり、地震力等により生じる曲げモーメントにより、連結柱1の両側端(連結柱1全体の断面における最外縁)に、材軸方向の大きな力が生じるものの、連結柱1の両側端に鉛直支持材2が配置されることで、地震力等により生じる曲げモーメントに対しても合理的な抵抗機構を実現することが可能となる。
【0069】
本発明を適用した連結柱1は、図7に示すように、H形鋼の連結材3のウェブ6に、所定の形状、大きさの開口部60が形成されるため、連結材3のウェブ6の一部を欠損させて連結材3の剛性が適宜調整されることで、各々の主架構柱80の全体が所定の剛性、耐力等を有するものとなるように容易に調整することが可能となる。本発明を適用した連結柱1は、H形鋼の連結材3のウェブ6に開口部60が形成されることで、水道、ガス及び電気等の配管を開口部60に挿通させて、配管用の開口として開口部60を有効利用することが可能となる。
【0070】
本発明を適用した連結柱1は、図9(a)に示すように、複数に分割されたH形鋼の短尺材35が連結材3として設けられることで、各々の短尺材35を個別にボルト接合させることができるものとなり、各々の短尺材35の接合作業の精度を高くするとともに、接合作業を容易にすることが可能となる。本発明を適用した連結柱1は、複数の短尺材35が縦方向Yで互いに隙間Gを有するものとなるように設けられることで、各々の主架構柱80が全体として所定の剛性、耐力等を有するものとなるように、連結材3の剛性を適宜調整することが可能となり、また、配管用の開口として隙間Gを有効利用することが可能となる。
【0071】
本発明を適用した連結柱1は、図9(b)に示すように、縦方向Yで上方又は下方の何れかに偏心させた状態で連結材3が設けられることで、連結材3を偏心させない場合に比較して、連結材3の材長を相対的に短いものとしながら、各々の主架構柱80で必要な部位を連結材3で重点的に補強することができるものとなり、連結材3に用いられるH形鋼の材料費の増大を抑制しながら、各々の主架構柱80に所定の剛性、耐力等を付与することが可能となる。
【0072】
本発明を適用した連結柱1は、図10に示すように、左側部80aの鉛直支持材2と右側部80bの鉛直支持材2とが、横方向Xに離間させて配置されて、1箇又は複数の連結材3で連結されて一体化することで、各々の主架構柱80の両側部の鉛直支持材2から作用する力が連結材3を介して互いに伝達されるものとなり、各々の鉛直支持材2を連結材3で連結することなく単独で設置する場合よりも、各々の主架構柱80の断面性能を向上させることが可能となる。
【0073】
本発明を適用した連結柱1は、鉛直支持材2の鋼材よりも相対的に低強度の鋼材が、連結材3に用いられることで、鉛直支持材2の上端2a及び下端2bを上部及び下部の主架構梁81に固定して鉛直支持材2に所定の鉛直支持力を発揮させながら、大地震等のときに水平方向に作用する地震エネルギーを、低強度の連結材3の鉛直支持材2に先行させた塑性化により吸収させて、各々の主架構柱80で鉛直支持機能とエネルギー吸収機能(性能)とを同時に確保することが可能となる。
【0074】
ここで、圧延H形鋼の製作精度における横方向Xの幅寸法の許容差は、2.0mm〜3.0mm以内(JIS G 3192)であるのに対して、溶接軽量H形鋼の製作精度における横方向Xの幅寸法の許容差は、1.0mm以内(JIS G 3353)であるものと規定されている。
【0075】
本発明を適用した連結柱1は、鉛直支持材2のH形鋼及び連結材3のH形鋼の各々に、溶接軽量H形鋼が用いられることで、横方向Xの幅寸法の許容差が小さいH形鋼が用いられるものとなり、複数の鉛直支持材2及び連結材3を横方向Xに連続させて連結させるものであるにもかかわらず、各々の主架構柱80の全体における幅寸法の製作誤差を極小化することができるため、各々の主架構柱80の製作、施工精度を向上させることが可能となる。
【0076】
さらに、溶接軽量H形鋼は、ウェブとフランジとを高周波抵抗溶接することから、アーク溶接で製作された通常の溶接H形鋼よりも溶接熱影響が少なく、ウェブやフランジの母材の熱影響による材質変化が狭い範囲で済むものとなるため、設計上想定した通りの所期する構造性能をH形鋼に発揮させることがより容易に可能となり、特に、溶接軽量H形鋼に低降伏点鋼を用いる場合には、当該H形鋼に所期する構造性能を発揮させることのできるという効果が大きいものとなる。
【0077】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0078】
例えば、本発明を適用した連結柱1は、下部の主架構梁81を建築物8の土台とすることで、鉛直支持材2の下端2bが、アンカーボルト等により土台に固定されるとともに、連結材3の下端3bが、建築物8の土台に固定されることなく、土台との間に間隙Sを形成させるものとなってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 :連結柱
2 :鉛直支持材
20 :鉛直支持材のボルト挿通孔
2a :鉛直支持材の上端
2b :鉛直支持材の下端
3 :連結材
3a :連結材の上端
3b :連結材の下端
30 :連結材のボルト挿通孔
35 :短尺材
4 :左側のフランジ
5 :右側のフランジ
6 :ウェブ
60 :開口部
60a :突出部
60b :リングカバー
7 :ベースプレート
70 :ベースプレートのボルト挿通孔
8 :建築物
80 :主架構柱
80a :主架構柱の左側部
80b :主架構柱の右側部
80c :主架構柱の中間部
81 :主架構梁
82 :壁面材
83 :主架構梁のボルト挿通孔
85 :ボルト
86 :ナット
X :横方向
Y :縦方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14