(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の非水系二次電池は、アルカリ金属を吸蔵・放出する正極活物質を有する正極と、アルカリ金属を吸蔵・放出する負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しアルカリ金属イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えている。本発明の非水系二次電池は、負極及び正極の少なくとも一方として、本発明の非水系二次電池用電極を備えている。本発明の非水系二次電池用電極は、芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含む有機骨格層と、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を有する層状構造体を電極活物質として備えている。この本発明の非水系二次電池用電極は、負極とするのが好ましい。また、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属は、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができるが、Liが好ましい。また、充放電により吸蔵・放出されるアルカリ金属は、アルカリ金属元素層のアルカリ金属元素と異なるものとしてもよいし、同じものとしてもよく、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができる。以下では、説明の便宜のため、層状構造体を負極活物質とし、アルカリ金属元素層にLiを含み、充放電により吸蔵・放出されるアルカリ金属をLiとした非水系二次電池を以下主として説明する。
【0012】
本発明の負極(非水系二次電池用電極)は、負極集電体(電極集電体)と、負極集電体上に形成された負極合材(電極合材)と、を備えている。
【0013】
本発明の負極において、負極集電体としてのアルミニウム集電体は、アルミニウム金属又はアルミニウム合金を基材とするものとしてもよい。例えば、純アルミニウム系の1085や1N30、1100、Al−Mn系の3003、Al−Fe系の8021(JIS規格)などを用いることができる。この負極集電体は、その表面(負極合材が形成される面)の少なくとも一部が、エッチングされているかカーボンコートされていればよく、例えば、負極集電体の片面がエッチングやカーボンコートされていてもよいし、両面がエッチングやカーボンコートされていてもよい。また、表面の全部がエッチングやカーボンコートされていてもよい。表面がエッチングされているものでは、表面が粗面化されて表面積が増加しており、表面の酸化皮膜の面積が多い。また、表面がカーボンコートされているものでは、カーボンコートが含酸素官能基を有している。こうした酸化被膜やカーボンコートに含まれる含酸素官能基は、層状構造体に含まれるカルボン酸−アルカリ金属構造との相互作用により、負極集電体と負極合材との間に緻密な界面層を形成し、電子の授受を円滑にする役割を果たすと考えられる。エッチングの方法は、特に限定されないが、例えば、塩酸液などのエッチング液にアルミニウムを浸漬する化学エッチングや、塩酸水溶液などのエッチング液中でアルミニウムを陽極として電解する電気化学的エッチングなどとしてもよい。また、負極集電体は、エッチング後に陽極酸化処理をしたものとしてもよい。こうしたものでは、より強固な酸化皮膜が形成される。陽極酸化処理の方法は、例えば、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム等の水溶液中で、エッチングしたアルミニウムに電圧を印加する方法などとしてもよい。カーボンコートの方法は、特に限定されないが、例えば、導電性の微粒カーボンをグラビア印刷などの印刷によりコーティングしたものとしてもよい。また、CVDやPVDなどの蒸着によりコーティングしたものとしてもよいし、スパッタによりコーティングしたものとしてもよい。カーボンコート層の厚みは、5μm以下などとしてもよく、1μm程度のものとしてもよい。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
【0014】
本発明の負極において、負極合材は、層状構造体を負極活物質として備えている。
図1は、本発明の層状構造体の構造の一例を示す説明図である。この層状構造体は、有機骨格層とアルカリ金属元素層とを備えている。この層状構造体は、芳香族化合物のπ電子相互作用により層状に形成され、空間群P2
1/cに帰属される単斜晶型の結晶構造を有するものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。また、層状構造体は、異なるジカルボン酸アニオンの酸素4つとアルカリ金属元素とが4配位を形成する次式(1)の構造を備えているものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。但し、この式(1)において、Rは1以上の芳香族環構造を有し、複数あるRのうち2以上が同じであってもよいし、1以上が異なっていてもよい。また、Aはアルカリ金属元素である。このように、アルカリ金属元素によって有機骨格層が結合した構造を有することが好ましい。
【0016】
有機骨格層は、1以上の芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含んでいる。芳香族化合物は、1の芳香族環構造を有するものとしてもよいが、2以上の芳香族環構造を有するものが好ましい。すなわち、式(1)のRは、2以上の芳香族環構造を有することが好ましい。芳香族環構造が2以上では層状構造を形成しやすいからである。2以上の芳香族環構造は、例えば、ビフェニルなど2以上の芳香族環が結合した芳香族多環化合物としてもよいし、ナフタレンやアントラセン、ピレンなど2以上の芳香族環が縮合した縮合多環化合物としてもよい。また、芳香族化合物は、5以下の芳香族環構造を有するものが好ましい。芳香族環構造が5以下ではエネルギー密度をより高めることができるからである。この芳香族環は、五員環や六員環、八員環としてもよく、六員環が好ましい。この有機骨格層は、ジカルボン酸アニオンのうちカルボン酸アニオンの一方と他方とが芳香族環構造の対角位置に結合されている芳香族化合物を含むものとするのが好ましい。こうすれば、有機骨格層とアルカリ金属元素層とによる層状構造を形成しやすい。カルボン酸が結合されている対角位置とは、一方のカルボン酸の結合位置から他方のカルボン酸の結合位置までが最も遠い位置としてもよく、例えば芳香族環構造がベンゼンであれば1,4位(パラ位)が挙げられ、ナフタレンであれば2,6位が挙げられ、ピレンであれば2,7位が挙げられる。この有機骨格層は、一般式(2)で示される構造を含む芳香族化合物により構成されているものとしてもよい。但し、Rは1以上の芳香族環構造を有する上記芳香族環構造であるものとしてもよい。具体的には、この有機骨格層は、次式(3)〜(5)のうちいずれか1以上の芳香族化合物を備えているものとしてもよい。但し、式(3)〜(5)において、nは1以上5以下の整数、mは0以上3以下の整数であることが好ましい。nが1以上5以下では、有機骨格層の大きさが好適であり、充放電容量をより高めることができる。また、mが0以上3以下では、有機骨格層の大きさが好適であり、充放電容量をより高めることができる。この式(3)〜(5)において、これらの芳香族化合物は、その構造中に置換基、ヘテロ原子を有してもよい。具体的には、芳香族化合物の水素の代わりに、ハロゲン、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、水酸基を置換基として持っていてもよいし、芳香族化合物の炭素の代わりに、窒素、硫黄、酸素が導入された構造であってもよい。なお、式(2)〜(5)におけるLiは、アルカリ金属元素層を構成するLiを示している。
【0019】
アルカリ金属元素層は、例えば
図1に示すように、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成している。このアルカリ金属元素は、Li,Na及びKのうちいずれか1以上としてもよいが、このうちLiが好ましい。アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素は、層状構造体の骨格を形成することから、充放電に伴うイオン移動には関与しないもの、すなわち、充放電時に吸蔵放出されないものと推察される。このように構成された層状構造体は、
図1に示すように、構造においては、有機骨格層とこの有機骨格層の間に存在するLi層(アルカリ金属元素層)とにより形成されている。また、エネルギー貯蔵メカニズムにおいては、層状構造体の有機骨格層はレドックス(e
-)サイトとして機能する一方、Li層はLi
+吸蔵サイトとして機能するものと考えられる。即ち、この層状構造体は、次式(6)に示すようにエネルギーを貯蔵・放出すると考えられる。更に、この層状構造体において、有機骨格層にはLiが入り込み可能な空間が形成されていることがあり、式(6)におけるアルカリ金属層以外の部分にもLiを吸蔵放出可能であり、充放電容量をより高めることができると推察される。
【0021】
本発明の負極において、負極合材は、層状構造体の他に、導電材を含むものであることが好ましい。導電材は、負極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維などの炭素材料、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。導電材は、粒子状のものとしてもよいし繊維状のものとしてもよいが、粒子状のものが好ましい。有機系の活物質では一般に導電性が低いため、繊維状の導電材を加えて導電性を向上させることが多いが、そうした繊維状の導電材を使用しなくてもよい点で、本発明を適用する意義が高いからである。なお、繊維状とは、例えば、直交する3軸方向の寸法をa,b,c(a≧b≧c)としたときに、a/c及びa/bがいずれも2よりも大きいものとしてもよい。また、粒子状とは、繊維状以外のものとしてもよく、例えば、このうち、a/c及びb/cがいずれも3以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.2以下であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明の負極において、負極合材は、水溶性ポリマーを含むものであることが好ましい。水溶性ポリマーは、カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールのうちの少なくとも一方である。水溶性ポリマーは、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める結着材としての役割を果たすものとしてもよい。カルボキシメチルセルロースは、例えば、カルボキシメチル基の末端がナトリウムやカルシウムなどである無機塩としてもよいし、カルボキシメチル基の末端がアンモニウムであるアンモニウム塩としてもよい。この負極は、水溶性ポリマーに加えて、スチレンブタジエン共重合体をさらに含むものとしてもよい。スチレンブタジエン共重合体は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める結着材としての役割を果たすものとしてもよい。スチレンブタジエン共重合体を含むものでは、活物質粒子間をより強く結着できる点で好ましい。
【0023】
本発明の負極において、負極合材は、上述した水溶性ポリマーを2質量%以上8質量%以下の範囲で含むものであることが好ましい。水溶性ポリマーを2質量%以上の範囲で含むものでは、容量維持率をより高めることができる。また、水溶性ポリマーを8質量%以下の範囲で含むものでは、電極材料同士や電極材料と集電体との密着性が高い。このうち、水溶性ポリマーを7質量%以下の範囲で含むものが好ましく、6質量%以下の範囲で含むものがより好ましい。また、スチレンブタジエン共重合体を含む場合、スチレンブタジエン共重合体を8質量%以下の範囲で含むことが好ましい。8質量%以下であれば、活物質、導電材、水溶性ポリマーの量が少なくなり過ぎないため、活物質や導電材、水溶性ポリマーの機能を十分に発揮できる。また、負極合材は、活物質を70質量%以上90質量%以下の範囲で含むことが好ましい。有機系の活物質を用いた電極では一般に導電性が低く導電材を多量に加えて導電性を向上させる必要があるため、活物質の量は70質量%未満となってしまうが、本発明では、活物質を70質量%以上にまで増加させることができる点で好ましい。活物質を90質量%以下の範囲で含むものでは、導電材や水溶性ポリマーの量が少なくなり過ぎないため、導電材や水溶性ポリマーの機能を十分に発揮できる。また、負極合材は、導電材を5質量%以上15質量%以下の範囲で含むことが好ましい。5質量%以上であれば、電極に十分な導電性を持たせることができ、充放電特性の劣化を抑制できる。また、15質量%以下であれば、電極活物質や水溶性ポリマーが少なくなり過ぎないため、電極活物質や水溶性ポリマーの機能を十分に発揮できる。
【0024】
本発明の負極は、例えば電極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、上述した水溶性ポリマーやスチレンブタジエン共重合体のほか、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン−モノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等としてもよい。これらは、単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、水を用いてもよいし、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いてもよい。なお、上述した水溶性ポリマーやスチレンブタジエン共重合体を結着材とする場合には、水が好適である。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。
【0025】
本発明の負極は、芳香族環構造(好ましくはナフタレン骨格又はベンゼン骨格)を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含む有機骨格層とカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備えた層状構造体と、導電材と、を含む負極合材(電極合材)を、負極集電体上に形成した後、不活性雰囲気中で250℃以上450℃以下の温度範囲で焼成処理されているものとしてもよい。こうすれば、結晶構造をより好適なものとすることができ、芳香族化合物のπ電子相互作用が高まり、電子の授受が容易となるなどして、充放電特性をより高めることができる。この焼成処理において、焼成温度が250℃以上では、充放電特性を向上することができ好ましく、450℃以下では、層状構造体の構造破壊をより抑制することができ好ましい。この焼成温度は、275℃以上であることが好ましく、350℃以下であることがより好ましく、300℃程度が更に好ましい。また、焼成時間は、焼成温度に応じて適宜選択するが、例えば、2時間以上24時間以下の範囲が好ましい。また、不活性雰囲気は、例えば、窒素ガス、He,Arなどの希ガスとしてもよく、このうちArが好ましい。導電材や負極集電体は、上述したものとしてもよいし、上述したように、負極合材には、結着材や溶剤を含むものとしてもよい。
【0026】
本発明の非水系二次電池の正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS
2、TiS
3、MoS
3、FeS
2などの遷移金属硫化物、Li
(1-a)MnO
2(0<a<1など、以下同じ)、Li
(1-a)Mn
2O
4などのリチウムマンガン複合酸化物、Li
(1-a)CoO
2などのリチウムコバルト複合酸化物、Li
(1-a)NiO
2などのリチウムニッケル複合酸化物、LiV
2O
3などのリチウムバナジウム複合酸化物、V
2O
5などの遷移金属酸化物などを用いることができる。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2、LiV
2O
3などが好ましい。また、正極に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、それぞれ負極で例示したものを用いることができる。正極の集電体には、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、負極と同様のものを用いることができる。なお、正極の集電体は、負極の集電体と同じものとしてもよい。
【0027】
本発明の非水系二次電池のイオン伝導媒体としては、支持塩を含む非水系電解液や非水系ゲル電解液などを用いることができる。非水電解液の溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。この組み合わせによると、充放電の繰り返しでの電池特性を表すサイクル特性が優れているばかりでなく、電解液の粘度、得られる電池の電気容量、電池出力などをバランスの取れたものとすることができる。なお、環状カーボネート類は、比誘電率が比較的高く、電解液の誘電率を高めていると考えられ、鎖状カーボネート類は、電解液の粘度を抑えていると考えられる。
【0028】
本発明の非水系二次電池に含まれている支持塩は、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、LiSbF
6、LiSiF
6、LiAlF
4、LiSCN、LiClO
4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl
4などが挙げられる。このうち、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiClO
4などの無機塩、及びLiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この電解質塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。電解質塩の濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、この非水電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。
【0029】
また、液状のイオン伝導媒体の代わりに、固体のイオン伝導媒体、例えばイオン伝導性ポリマーをイオン伝導媒体として用いることもできる。イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、アクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデンなどのポリマーと支持塩とで構成されるポリマーゲルを用いることができる。更に、イオン伝導性ポリマーと非水系電解液とを組み合わせて用いることもできる。また、イオン伝導媒体としては、イオン伝導性ポリマーのほか、無機固体電解質あるいは有機ポリマー電解質と無機固体電解質の混合材料、若しくは有機バインダーによって結着された無機固体粉末などを利用することができる。
【0030】
本発明の非水系二次電池は、正極と負極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、非水系二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0031】
本発明の水溶液系二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。
図2は、本発明の非水系二次電池10の一例を示す模式図である。この非水系二次電池10は、集電体11に正極合材12を形成した正極シート13と、集電体14の表面に負極合材17を形成した負極シート18と、正極シート13と負極シート18との間に設けられたセパレータ19と、正極シート13と負極シート18の間を満たす電解液20と、を備えたものである。この非水系二次電池10では、正極シート13と負極シート18との間にセパレータ19を挟み、これらを捲回して円筒ケース22に挿入し、正極シート13に接続された正極端子24と負極シートに接続された負極端子26とを配設して形成されている。負極シート18の集電体14は、少なくとも負極合材17が形成される側の表面の一部が、エッチングされ又はカーボンコートされている。負極合材17は、芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含み、ジカルボン酸アニオンのうちカルボン酸アニオンの一方と他方とが芳香族化合物の対角位置に結合されている有機骨格層と、カルボン酸アニオンに含まれる酸素に配位したアルカリ金属元素層と、を備えた層状構造体を負極活物質として含んでいる。
【0032】
本発明の非水系二次電池では、層状構造体がカルボン酸−アルカリ金属構造を有してしている。また、エッチングされたアルミ集電体では、エッチングによる表面積の増加により、表面の酸化皮膜面積が増大していると考えられる。また、カーボンコートされたアルミ集電体では、表面に、カーボンコートに含まれる含酸素官能基が存在すると考えられる。そして、層状構造体のカルボン酸−アルカリ金属構造と、集電体表面の酸化皮膜や含酸素官能基などとの間の相互作用によって、層状構造体と集電体との間に緻密な界面層が形成され、電子の授受が円滑に行われるため、充放電特性をより高めることができると推察される。また、活物質である層状構造体が、ジカルボン酸の酸素とLi元素とが4配位を形成しており、非水系のイオン伝導媒体に溶けにくく、結晶構造を保つことができるため、充放電特性(特に充放電効率)をより高められるものと推察される。この層状構造体は、有機骨格層が酸化還元部位として機能し、Li層がLiイオンの吸蔵部位として機能するものと推察される。また、負極は、充放電電位がリチウム金属基準で0.5V以上1.0V以下の範囲を示すため、電池の作動電圧低下に伴う大幅なエネルギー密度の低下を抑えることができる一方、リチウム金属の析出も抑制することができる。この層状構造体(結晶性有機・無機複合材料)により、充放電特性をより高めることができるものと推察される。また、負極の集電体に用いられるアルミニウムは、豊富に存在し、耐食性に優れるため、集電体として好適に用いることができる。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0034】
例えば上述した実施形態では、非水系二次電池として説明したが、非水系二次電池用電極としてもよい。
【0035】
上述した実施形態では、正極活物質を含む正極合材が正極の集電体に形成され、負極活物質を含む負極合材が負極の集電体に形成された電極を一例として説明したが、正極活物質を含む正極合材が集電体の一方の面に形成され、負極活物質を含む負極合材が集電体の他方の面に形成された双極型電極としてもよい。即ち、本発明の非水系二次電池用電極は、アルカリ金属を吸蔵及び放出する正極活物質を含む正極合材と、このアルカリ金属を吸蔵及び放出する上述の層状構造体を負極活物質層として含む負極合材と、一方の面に正極合材が形成され、且つ他方の面に負極合材が形成されており、正極活物質の酸化還元電位よりも溶出電位が
高く、且つ負極活物質の酸化還元電位よりも上記アルカリ金属との合金化反応電位が
低い集電体金属で形成された集電体と、を備えたものとしてもよい。こうすれば、正極及び負極の集電体を別の材料とする必要が無く、材料調達や正極、負極の造り分けなど製造工程における煩雑さをより低減することができ、二次電池の集電体の占める体積をより低減することができる。また、この双極型電極をイオン伝導媒体を介して複数積層させることにより、非水系二次電池を効率よく複数接続することができる。この双極型電極において、集電体は、エッチングされた表面及びカーボンコートされた表面の少なくとも一方の表面を負極合材が形成されている面に有するアルミニウム集電体である。この集電体は、正極合材が形成されている面についても、エッチングされた表面やカーボンコートされた表面を有していてもよい。なお、リチウム金属基準で0.27Vでアルミニウムとリチウムとの合金化反応が生じてしまうため、リチウムを吸蔵放出する非水系二次電池の負極では、一般に、アルミニウム集電体以外の集電体が用いられる。本発明の層状構造体は、リチウム金属基準で0.7V以上0.85V以下の範囲で主として充放電反応する。したがって、負極活物質の酸化還元電位よりもアルカリ金属との合金化反応電位が
低い集電体金属としてアルミニウム金属を用いることができる。なお、ここでは、充放電により吸蔵及び放出されるアルカリ金属がLiである場合について説明したが、NaやKとしてもよい。
【0036】
この双極型電極において、正極合材は、本発明の非水系二次電池用負極活物質を負極に用いた場合に、作動可能な正極活物質を含むものとすればよい。正極合材は、上述した正極活物質を含むものとしてもよいが、例えば、一般式LiNi
xMn
2-xO
4(但し0≦x≦0.5である。)で表されるスピネル構造を有する正極活物質、及び一般式LiNi
1-yM
yO
2(但し0≦y≦0.5,より好ましくはy≦0.2であり、Mは、Mg,Ti,Cr,Fe,Co,Cu,Zn,Al,Ge,Snから選ばれる1以上である。)で表される層状構造を有する正極活物質、のうち少なくとも一方を含んでいることが好ましい。具体的には、LiMn
2O
4やLiNi
0.5Mn
1.5O
4などのスピネル型構造のもの、LiCoO
2やLiNiO
2、LiNi
0.5Mn
0.5O
2、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2などの層状岩塩構造のものなどが挙げられる。このうち、スピネル構造のものが電池電圧をより高めることができ、より好ましい。この双極型電極において、正極合材が形成された正極側と負極合材が形成された負極側との平均充放電電位差が3.0V以上とすることが好ましく、4.0V以上であることがより好ましい。例えば、層状構造体の負極活物質と上記層状構造を有する正極活物質とを用いると、平均充放電電位差を3.0V以上とすることができる。また、層状構造体の負極活物質と上記スピネル構造を有する正極活物質とを用いると、平均充放電電位差を4.0V以上とすることができる。
【0037】
上述した実施形態では、正極シートと、負極シートと、イオン伝導媒体と、を備えた非水系二次電池として説明したが(
図2参照)、上記双極型電極である非水系二次電池用電極と、アルカリ金属イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えた非水系二次電池を複数接続して構成した組電池としてもよい。
図3は、本発明の組電池30の一例を示す模式図である。
図3に示すように、組電池30は、一端に負極集電端子35を有し、他端に正極集電端子36を有し、双極型電極38とイオン伝導媒体34とを複数積層した構造を有している。双極型電極38は、集電体31と、正極合材32と、負極合材33と、を備え、集電体31には、一方の面に正極合材32が形成され、他方の面に負極合材33が形成されている。そして、隣り合う双極型電極38の集電体31と集電体31との間には、正極合材32、イオン伝導媒体34、負極合材33が順に配置されており、この配置により単電池37が形成されている。このようにして、組電池30は、集電体31を共有した複数の単電池37が複数積層した構造を有している。こうすれば、双極型電極38を用いて、より効率的に複数の単電池37を積層することができる。なお、非水系二次電池は、組電池30としてもよいが、単電池37としてもよい。
【0038】
上述した、双極型電極(非水系二次電池用電極)及び双極型電極を備えた単電池や組電池では、集電体金属とアルカリ金属との合金化反応が抑制されるため、集電体の表裏に正極合材と負極合材とを形成することができる。このため、正極活物質の酸化還元電位よりも溶出電位が低く且つ負極活物質の酸化還元電位よりも上記アルカリ金属との合金化反応電位が高い集電体金属を用いた双極型電極と、アルカリ金属イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えた非水系二次電池を効率よく複数接続することができる。したがって、高エネルギー密度を有する組電池(非水系二次電池)をより容易に実現することができる。なお、双極方電極及び組電池においても、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属は、LiのほかNaやKとしてもよい。
【実施例】
【0039】
以下では、まず、上述した層状構造体を用いた非水系二次電池における電極合材の配合比について、参考例として検討した。
【0040】
[参考例1〜12]
(2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムの合成)
層状構造体(電極活物質)としての2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウム(式(7)参照)の合成には、出発原料として2,6−ナフタレンジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H
2O)を用いた。水酸化リチウム1水和物(0.556g)にメタノール(100mL)を加え撹拌した。水酸化リチウム1水和物がとけた後に2,6−ナフタレンジカルボン酸(1.0g)を加え1時間撹拌した。撹拌後溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより白色の粉末試料を合成した。
【0041】
【化5】
【0042】
(X線回折測定)
合成した2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムの粉末X線回折測定を行った。測定は、放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用し、X線回折装置(リガク製RINT2200)を用いて行った。また、測定は、X線の単色化にはグラファイトの単結晶モノクロメーターを用い、印加電圧を40kV、電流を30mAに設定し、4°/分の走査速度で2θ=10°〜90°の角度範囲で行った。
図4は、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムのX線回折測定結果である。
図4に示すように、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムは、空間群P2
1/cに帰属される単斜晶を仮定した時の(001)、(111)、(102)、(112)ピークが明確に現れていることから、
図1に示した、リチウム層と有機骨格層からなる層状構造を形成していると推察された。また、参考例1は、空間群P2
1/cに帰属される単斜晶であることから、4つの異なる芳香族ジカルボン酸分子の酸素とリチウムとが4配位を形成する構造を形成し、有機骨格の部分でπ電子共役雲による相互作用が働いているものと推察された。
【0043】
(塗工電極の作製)
合成した2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムを73.9質量%、粒子状炭素導電材としてカーボンブラック(東海カーボン製、TB5500(直径約50nm))を13.0質量%、水溶性ポリマーであるカルボキシメチルセルロース(CMC)(ダイセルファインケム製、CMCダイセル1120)を5.2質量%、スチレンブタジエン共重合体(SBR)(日本ゼオン製、BM−400B)を7.8質量%の割合で混合し、これに分散剤としての水を適量添加して分散させてスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2.05cm
2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。その後、アルゴン不活性雰囲気下、120℃で12時間、乾燥を行った。
【0044】
(二極式評価セルの作製)
エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比で30:40:30の割合となるよう混合した非水溶媒に、六フッ化リン酸リチウムを1mol/Lとなるように添加して非水電解液を作製した。上記電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚み300μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東レ東燃製)を挟んで二極式評価セルを作製した。
【0045】
(充放電試験)
上記二極式評価セルを用い、20℃の温度環境下、0.14mAで0.5Vまで還元(放電)したのち、0.14mAで2.0Vまで酸化(充電)させた。この充放電操作において、1回目の還元容量をQ(1st)red、酸化容量をQ(1st)oxiとし、10回目の還元容量をQ(10th)red、酸化容量をQ(10th)oxiとした。そして、(Q(1st)oxi/Q(1st)red)×100の式より初期効率を算出した。また、(Q(10th)oxi/Q(1st)oxi)×100の式より10サイクル後の容量維持率を算出した。また、最大容量は、1回目から10回目の酸化容量のうち最大のものとした。
【0046】
[参考例2〜12]
塗工電極の作成において、負極の構成を表1に示すものに変更した以外は、参考例1と同様にセルを作製し、充放電試験を行った。なお、参考例12では、繊維状導電材として、繊維状炭素(気相成長炭素繊維、昭和電工製、VGCF(直径約150nm、長さ約10〜20μm))を用い、結着材としてポリフッ化ビニリデンをを用い、分散剤としてN−メチル−2−ピロリドンを用いた。
【0047】
[結果と考察]
表1に、参考例1〜12の、最大容量、初期効率及び容量維持率の結果を示す。また、
図5〜7にCMCの割合と最大容量、初期効率、容量維持率との関係を表すグラフを示す。表1より、CMC系結着材を用いなかった参考例10や、CMC系結着材を過剰に用いた参考例11、PVdF系結着材を用いた参考例12に比べて、CMC系結着材を2質量%以上8質量%以下の割合で用いた参考例1〜8では、最大容量、初期効率及び容量維持率の全てにおいて優れていることが分かった。この点について、電極の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、参考例1〜8では電極合材全体が黒っぽく、活物質、導電材及び水溶性ポリマーが均一に混合しており集電体に密着していた。これに対し、参考例10では、電極合材に白い部分と黒い部分とが混在しており、相分離していた。また、参考例11や12では、電極合材が集電体に密着していない部分が多く観察された。このことから、CMC系結着材を適量用いた参考例1〜8では、CMC系結着材を用いない参考例10、CMC系結着材を過剰に用いた参考例11、PVdF系の結着材を用いた参考例12よりも、活物質や導電材を均一に混合させて集電体に密着させる効果が高いため、電極内での不均一反応の発生を抑制することができ、充放電特性をより高めることができるものと推察された。また、
図5,6より、電極中のCMCが8.0質量%以下であれば、最大容量や初期効率をより高めることができることがわかった。また、
図7より、電極中のCMCが2.0質量%以上8.0質量%以下であれば、容量維持率をより高めることができることがわかった。なお、電極中のCMCが1.9質量%である参考例9では、最大容量や初期効率は参考例1〜8と同等であるものの、容量維持率は参考例1〜8よりも1割以上低い値となった。よって、電極は、水溶性ポリマーを2質量%以上8質量%以下の範囲で含むものとすることで、より良好な発現容量、初期効率、容量維持率を示すことがわかった。なお、上述した参考例1〜12は、集電体が銅箔であり、本発明とは集電体が異なるため、参考例とした。しかし、本発明においても、電極合材の配合を参考例1〜8のような配合とすることで、参考例9〜12のような配合とした場合よりも充放電特性をより高めることができると推察された。以下の実験例では、上述した参考例に基づき、実験例1〜3において、参考例1と同じ配合の電極合材を用いて実験を行った。
【0048】
【表1】
【0049】
以下では、本発明の非水系二次電池を具体的に作製した例を、実験例として説明する。なお、実験例2〜5が本発明の実施例に相当し、実験例1,6が比較例に相当する。本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0050】
[実験例1]
【0051】
(塗工電極の作製)
参考例1と同様に調整したスラリー状合材を15μm厚さのアルミ箔集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2.05cm
2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。その後、アルゴン不活性雰囲気下、300℃で12時間、焼成を行った。
【0052】
(二極式評価セルの作製)
エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートを体積比で30:40:30の割合で混合した非水溶媒に六フッ化リン酸リチウムを1mol/Lになるように添加して非水電解液を作製した。上記電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚み300μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東レ東燃製)を挟んで二極式評価セルを作製した。
【0053】
(充放電試験)
上記二極式評価セルを用い、20℃の温度環境下、0.085mAで0.5Vまで還元(放電)した後、0.085mAで1.5Vまで酸化(充電)させた。この充放電操作の1回目の放電容量Qdisc(1st)に対する1回目の充電容量をQc(1st)の比から初回充放電効率(%)を求め、1回目の放電容量Qdisc(1st)に対する2回目の放電容量Qdisc(2nd)の比から初回放電効率(%)を求めた。また、10回目の充電容量をQc(10th)とし、(Qc(10th)/Qc (1st))×100で求められる値を10サイクル後の容量維持率(%)とした。
【0054】
[実験例2]
塗工電極の作製において、集電体として表面をエッチングした20μm厚さのアルミ箔 (日本蓄電器工業、20C054)を用いた以外は実験例1と同じとした。
【0055】
[実験例3]
塗工電極の作製において、集電体として表面にカーボンをコートした20μm厚さのアルミ箔(昭和電工、SDX−PM)を用いた以外は実験例1と同じとした。
【0056】
[実験例4]
塗工電極の作製において、2,6−ナフタレンジカルボン酸リチウムを63質量%、粒子状炭素導電材としてカーボンブラックを11質量%、繊維状炭素導電材としてカーボンファイバ(昭和電工、VGCF)を15質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデン(クレハ製、KFポリマ)を11質量%を混合し、分散剤としてNメチルピロリドンを適量添加、分散してスラリー状合材とし、集電体として陽極酸化処理により表面をエッチングした20μm厚さのアルミ箔集電体を用いた以外は実験例1と同じとした。
【0057】
[実験例5]
塗工電極の作製において、集電体として表面にカーボンをコートした20μm厚さのアルミ箔を用いた以外は実験例4と同じとした。
【0058】
[実験例6]
塗工電極の作製において、集電体として10μm厚さの銅箔を用いた以外は実験例4と同じとした。
【0059】
図8〜13に、それぞれ、実験例1〜6の1〜10サイクル目の充放電曲線を示す。また、表2及び
図14〜16に、実験例1〜6の初回充放電効率、初回放電効率、容量維持率を示す。
【0060】
【表2】
【0061】
集電体として銅を用いた実験例6に比べて、集電体としてアルミニウムを用いた実験例1〜5では初回充放電効率(
図14)、初回放電効率(
図15)、容量維持率(
図16)に優れていることが分かった。これはカルボン酸アニオン基(R−COO−)を有する層状構造体と、集電体として用いるアルミやエッチングアルミ表面に存在する酸化物(アルミナ等)、あるいはコートされたカーボンと、の間に相互作用が働き、その結果、効率的で電気化学的に有効な界面を形成することで初回充放電効率、初回放電効率、容量維持率を向上させたものと推察された。
【0062】
集電体としてアルミニウムを用いた実験例1〜5のうち、結着材としてCMC及びSBRを用いた実験例1〜3を比較すると、集電体として、エッチングアルミを用いた実験例2や、カーボンコートアルミを用いた実験例3で、充放電効率が良好であった。このことから、集電体は、アルミニウム集電体であるだけでなく、その一部にエッチングされた部位又はカーボンコートされた部位の少なくとも一方を有する必要があることが分かった。なお、結着材としてPVdFを用いたものでも、同様であると推察された。
【0063】
次に、結着材の種類について検討すると、結着材としてCMC及びSBRを用いた実験例1〜3では、結着材としてPVdFを用いた実験例4,5よりも、初回充放電効率、初回放電効率、容量維持率のいずれもが優れていた。こうした効果が得られた理由としては、層状構造体のカルボン酸−アルカリ金属構造と、結着材であるCMCに含まれる含酸素官能基とが、集電体として用いるアルミやエッチングアルミ表面に存在する酸化物(アルミナ)、あるいはコートされたカーボンとの間に相互作用が存在し、その結果、効率的で電気化学的に有効な界面を形成することで初回充放電効率、初回放電効率、容量維持率を向上させたためと推察された。このことから、結着材としてCMCを含むことが好ましいことがわかった。
【0064】
なお、実験例1〜6では、電極活物質として2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウム(式(7)参照)を用いたが、特願2011−115093の記載より、電極活物質は、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム(式(8)参照)や、テレフタル酸ジリチウム(式(9)参照)など、式(1)で表されるものであればよいと推察された。特願2011−115093の実施例では、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムや、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム、テレフタル酸ジリチウム、これらにおけるリチウムをナトリウムとしたものが、非水系二次電池の電極活物質として使用可能であることが確認されている。
【0065】
【化6】