(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流入部は、試料水中の成分を反応させる反応器、又は、前記反応器における反応後の試料水が供給される測定セルであることを特徴とする請求項1に記載の水質分析計。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反応器や測定セルには、試料水、試薬又は希釈水などの液体が設定された量だけ供給される。このとき、オフラインで水質分析計にセットされた試料水、あるいは、貯留部に貯留された試薬又は希釈水が不足していれば、設定された量の液体を反応器や測定セルに供給できない場合がある。また、オンラインで供給される試料水が水質分析計に到達していない場合には、試料水を反応器や測定セルに供給することができない。
【0006】
そこで、フロートセンサなどのセンサを用いて、反応器や測定セルに供給される液体の有無を検知するような構成が考えられる。しかしながら、例えば反応器や測定セルに連通する配管の途中で液体が漏れているような場合には、フロートセンサなどのセンサを用いたとしても、液体の有無を検知できないおそれがある。また、センサを別途設けることによりコストが高くなるという問題もある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、試料水、試薬又は希釈水などの液体の有無を低コストで良好に検知することができる水質分析計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る水質分析計は、流入部と、温度センサと、流入状態判定処理部とを備える。前記流入部には、試料水、試薬又は希釈水が個別に、あるいは、混合液として流入する。前記温度センサは、前記流入部内の液体の温度を検知する。前記流入状態判定処理部は、前記温度センサにより検知される温度の変化に基づいて、前記流入部内への液体の流入状態を判定する。
【0009】
このような構成によれば、流入部内に流入する液体の温度を温度センサにより検知し、その温度変化に基づいて、流入部内への試料の流入状態を判定することができる。すなわち、流入部内に液体が流入する際には、流入部の温度が比較的大きく変動する一方で、流入部内に液体が流入していない場合には、そのような変動が生じない。したがって、流入部内への液体の供給時に、通常生じるような温度変化が生じなかった場合には、流入部内に設定量の液体が流入していないと判定することができる。
【0010】
この場合、流入部に連通する配管の途中で液体が漏れているような場合でも、液体の有無を検知することができるため、フロートセンサなどのセンサを用いるような構成と比較して、試料水、試薬又は希釈水などの液体の有無を良好に検知することができる。また、流入部の温度を一定に制御するにあたり必要となる温度センサが、当初から水質分析計に備えられている場合には、センサを別途設ける必要がないため、試料水、試薬又は希釈水などの液体の有無を低コストで検知することができる。
【0011】
前記流入部は、試料水中の成分を反応させる反応器、又は、前記反応器における反応後の試料水が供給される測定セルであってもよい。
【0012】
このような構成によれば、反応器又は測定セルに供給される試料水、試薬又は希釈水などの液体の有無を良好に検知することができる。特に、反応器や測定セルには、通常、流入部の温度を一定に制御するにあたり必要となる温度センサが備えられているため、その温度センサを用いることにより、センサを別途設けることなく液体の有無を低コストで検知することができる。
【0013】
前記流入状態判定処理部は、前記流入部内に混合液として流入する試料水、試薬及び希釈水の流入タイミングを基準とする一定時間内に、前記温度センサにより検知される温度の変化に基づいて、前記流入部内への混合液の流入状態を判定してもよい。
【0014】
このような構成によれば、流入部内に混合液が流入する際に生じる温度変化を検知することにより、混合液の有無を検知することができる。反応器や測定セルには、分析時に試料水、試薬及び希釈水の混合液が流入するため、その流入タイミングを基準とする一定時間内における温度変化に基づいて、混合液の有無を良好に検知することができる。
【0015】
前記流入状態判定処理部は、前記流入部内に個別に流入する希釈水の流入タイミングを基準とする一定時間内に、前記温度センサにより検知される温度の変化に基づいて、前記流入部内への希釈水の流入状態を判定してもよい。
【0016】
このような構成によれば、流入部内に希釈水が個別に流入する際に生じる温度変化を検知することにより、希釈水の有無を検知することができる。反応器や測定セルには、洗浄時などに希釈水が個別に流入するため、その流入タイミングを基準とする一定時間内における温度変化に基づいて、希釈水の有無を良好に検知することができる。
【0017】
前記水質分析計は、前記流入状態判定処理部による判定結果に基づいて異常を報知する異常報知処理部をさらに備えていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、流入部内への液体の供給時に、通常生じるような温度変化が生じなかった場合には、流入部内に設定量の液体が流入していないと判定し、その判定結果に基づいて異常を報知することができる。したがって、異常状態のまま分析が行われることを防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、流入部に連通する配管の途中で液体が漏れているような場合でも、液体の有無を検知することができるため、試料水、試薬又は希釈水などの液体の有無を良好に検知することができる。また、本発明によれば、センサを別途設ける必要がないため、試料水、試薬又は希釈水などの液体の有無を低コストで検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る水質分析計の構成例を示した概略図である。本実施形態に係る水質分析計は、試料水の全窒素濃度(TN濃度)及び全リン濃度(TP濃度)を測定可能な全窒素全リン計であり、試料水などの液体の流路に関する構成のみを
図1に示している。
【0022】
試料水は、下水、河川水又は工場排水などであり、窒素化合物やリン化合物などの各種成分を含んでいる。試料水中の窒素化合物は、例えば硝酸イオン、亜硝酸イオン、アンモニウムイオン及び有機態窒素として存在している。試料水の全窒素濃度を測定する際には、試料水中の全ての窒素化合物を硝酸イオンに酸化させた上で、その濃度を測定する。
【0023】
また、試料水中のリン化合物は、例えばリン酸イオン、加水分解性リン及び有機態リンとして存在している。試料水中の全リン濃度を測定する際には、試料水中の全てのリン化合物をリン酸イオンに酸化させた上で、その濃度を測定する。
【0024】
本実施形態に係る水質分析計には、例えば第1マルチポートバルブ1、第2マルチポートバルブ2、シリンジ3、反応器(リアクタ)4、測定セル5、攪拌ポンプ6、排出ポンプ7、第1切替バルブ8及び第2切替バルブ9などが備えられている。これらの各部は、配管を介して互いに接続されている。
【0025】
第1マルチポートバルブ1及び第2マルチポートバルブ2は、例えば8ポートバルブからなり、それぞれ1つの共通ポートと、当該共通ポートに対して選択的に連通可能な8つのポート(第1〜第8ポート)とを備えている。
図1において、第1マルチポートバルブ1及び第2マルチポートバルブ2の各ポートには、第1〜第8ポートにそれぞれ対応付けて「1」〜「8」の数字を示している。
【0026】
第1マルチポートバルブ1の共通ポートは、第2マルチポートバルブ2の第1ポートに接続されている。第2マルチポートバルブ2の共通ポートは、シリンジ3に接続されている。シリンジ3には、例えば筒体31及びプランジャ32が備えられており、筒体31内に挿入されているプランジャ32を変位させることにより、シリンジ3への吸引動作及びシリンジ3からの吐出動作を行うことができる。
【0027】
第1マルチポートバルブ1の第1ポートには、予め採取されて水質分析計にセットされた試料水が、試料水貯留部(図示せず)からオフラインで供給される。したがって、第1マルチポートバルブ1の第1ポートと共通ポートを連通させるとともに、第2マルチポートバルブ2の第1ポートと共通ポートとを連通させた状態で、シリンジ3による吸引動作を行えば、シリンジ3内にオフラインで試料水を供給することができる。
【0028】
第1マルチポートバルブ1の第2ポートには、排水設備などの試料水供給源から、配管を介して試料水がオンラインで供給される。したがって、第1マルチポートバルブ1の第2ポートと共通ポートを連通させるとともに、第2マルチポートバルブ2の第1ポートと共通ポートとを連通させた状態で、シリンジ3による吸引動作を行えば、シリンジ3内にオンラインで試料水を供給することができる。このとき、オンラインで供給される試料は、例えば前処理装置(図示せず)により所定の前処理が行われた後、第2ポートに供給されるようになっている。
【0029】
第2マルチポートバルブ2の第2〜第7ポートには、それぞれ異なる試薬が貯留された試薬貯留部21〜26が接続されている。これらのいずれかのポートと共通ポートを連通させてシリンジ3による吸引動作を行うことにより、シリンジ3内に試薬を供給して試料水と混合させることができる。各試薬貯留部21〜26に貯留される試薬としては、硫酸、モリブデン酸、アスコルビン酸、水酸化ナトリウム、ペルオキソ及び塩酸などを例示することができるが、これらに限らず、他の任意の試薬を試薬貯留部21〜26に貯留させることができる。
【0030】
第1マルチポートバルブ1の第6ポートには、希釈水貯留部12が接続されている。希釈水貯留部12には、試料水を希釈する際や、反応器4又は測定セル5の洗浄の際などに使用される希釈水が貯留されている。第1マルチポートバルブ1の第6ポートと共通ポートを連通させるとともに、第2マルチポートバルブ2の第1ポートと共通ポートとを連通させた状態で、シリンジ3による吸引動作を行えば、シリンジ3内に希釈液を供給して試料水と混合させることができる。
【0031】
このように、第1マルチポートバルブ1及び第2マルチポートバルブ2を適宜切り替えて、シリンジ3による吸引動作を行うことにより、シリンジ3内に試料水、試薬及び希釈水の混合液を生成することができる。シリンジ3内の混合液は、攪拌ポンプ6の駆動により攪拌される。第1マルチポートバルブ1の第4ポートには反応器4が接続されており、当該第4ポートと共通ポートを連通させるとともに、第2マルチポートバルブ2の第1ポートと共通ポートとを連通させた状態で、シリンジ3による吐出動作を行えば、シリンジ3内の混合液を反応器4に供給することができる。
【0032】
反応器4は、試料水、試薬及び希釈水が混合液として流入する流入部であり、内部の混合液に対して光源41から紫外線を照射することにより、試料水中の窒素化合物やリン化合物などの各種成分を酸化させる。光源41としては、例えば低圧水銀灯を用いることができるが、これに限らず、エキシマレーザ、重水素ランプ、キセノンランプ又はHg−Zn−Pbランプなどの他の光源41を用いてもよい。反応器4内の液体は、例えばヒータ(図示せず)により加熱される。このとき、反応器4内の液体の温度を検知する温度センサ42(
図2参照)からの検知信号に基づいて、液体の温度が予め設定された温度となるように制御される。
【0033】
反応器4における反応後(酸化後)の混合液は、シリンジ3による吸引動作によりシリンジ3内に供給される。第1マルチポートバルブ1の第7ポートには測定セル5が接続されており、当該第7ポートと共通ポートを連通させるとともに、第2マルチポートバルブ2の第1ポートと共通ポートとを連通させた状態で、シリンジ3による吐出動作を行えば、シリンジ3内の混合液を測定セル5に供給することができる。
【0034】
測定セル5は、反応器4における反応後の試料水(混合液)が流入する流入部であり、内部の試料水に対して光源51から測定光が照射される。光源51としては、例えばキセノンランプを用いることができるが、これに限らず、重水素ランプ又はタングステンランプなどの他の光源51を用いてもよい。測定セル5を透過した測定光は、例えばフォトダイオードなどの検出器52により検出され、その検出信号に基づいて試料水中の全窒素濃度又は全リン濃度が測定される。測定セル5内の液体は、例えばヒータ(図示せず)により加熱される。このとき、測定セル5内の液体の温度を検知する温度センサ53(
図2参照)からの検知信号に基づいて、液体の温度が予め設定された温度となるように制御される。
【0035】
なお、反応器4や測定セル5には、試料水、試薬及び希釈水の混合液だけでなく、希釈水が個別に流入する場合もある。すなわち、シリンジ3内に希釈水を個別に吸引し、その希釈水をシリンジ3から反応器4に流入させれば、反応器4内を洗浄することができる。また、シリンジ3内に希釈水を個別に吸引し、その希釈水をシリンジ3から測定セル5に流入させれば、測定セル5内を洗浄することができる。
【0036】
第1マルチポートバルブ1の第3ポートには、スパン液貯留部11が接続されている。スパン液貯留部11には、スパン校正を行う際に使用されるスパン液が貯留されている。第1マルチポートバルブ1の第3ポートと共通ポートを連通させるとともに、第2マルチポートバルブ2の第1ポートと共通ポートとを連通させた状態で、シリンジ3による吸引動作を行えば、スパン液貯留部11からシリンジ3内にスパン液を供給することができる。その後、第1マルチポートバルブ1の第7ポートと共通ポートを連通させて、シリンジ3による吐出動作を行うことにより、測定セル5内にスパン液を供給してスパン校正を行うことができる。
【0037】
第1マルチポートバルブ1の第8ポートには、第1切替バルブ8を介して2つの標準試料貯留部13,14が接続されている。標準試料貯留部13,14には、それぞれゼロ校正を行う際に使用される標準試料が貯留されており、一方の標準試料貯留部13には全窒素濃度測定用の標準試料が貯留され、他方の標準試料貯留部14には全リン濃度測定用の標準試料が貯留されている。第1切替バルブ8は、流路を切り替えることにより、2つの標準試料貯留部13,14のいずれか一方を選択的に第8ポートに連通させることができる。
【0038】
第1マルチポートバルブ1の第8ポートと共通ポートを連通させるとともに、第2マルチポートバルブ2の第1ポートと共通ポートとを連通させた状態で、シリンジ3による吸引動作を行えば、2つの標準試料貯留部13,14のいずれか一方からシリンジ3内に標準試料を供給することができる。その後、第1マルチポートバルブ1の第7ポートと共通ポートを連通させて、シリンジ3による吐出動作を行うことにより、測定セル5内に標準試料を供給してゼロ校正を行うことができる。
【0039】
測定セル5内の液体は、装置外へと廃液される。また、反応器4内の液体についても、排出ポンプ7の駆動により装置外へと廃液される。第1マルチポートバルブ1の第5ポートは、第2切替バルブ9を介して廃液先及び排水先に連通している。第2切替バルブ9は、流路を切り替えることにより、装置内の液体を廃液先又は排水先のいずれか一方に選択的に導くことができる。
【0040】
図2は、
図1の水質分析計の電気的構成を示したブロック図である。この水質分析計の動作は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む制御部100によって制御される。制御部100には、上述した各部の他、記憶部200及び表示部300などが電気的に接続されている。
【0041】
制御部100は、CPUがプログラムを実行することにより、分析制御部101、流入状態判定処理部102及び異常報知処理部103などとして機能する。記憶部200は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)又はハードディスクを含む構成であり、水質分析計の動作に必要なデータを記憶する。表示部300は、例えば液晶表示器により構成されており、試料水の分析結果や、その他の必要な情報を表示する。
【0042】
分析制御部101は、記憶部200に記憶されている分析プログラムに基づいて、上述した各部の動作を制御することにより、試料水の分析に必要な処理を行う。具体的には、分析制御部101は、第1マルチポートバルブ1及び第2マルチポートバルブ2を切り替えるとともに、シリンジ3、攪拌ポンプ6、排出ポンプ7、第1切替バルブ8及び第2切替バルブ9を適宜動作させる。これにより、試料水、試薬又は希釈水が個別に、あるいは、混合液として、反応器4や測定セル5、その他の供給先(廃液先又は排水先を含む。)へと送られる。
【0043】
分析プログラムは、第1マルチポートバルブ1又は第2マルチポートバルブ2を切り替えるタイミングや、シリンジ3、攪拌ポンプ6、排出ポンプ7、第1切替バルブ8又は第2切替バルブ9を動作させるタイミングなど、各部の動作タイミングに関する情報を含んでいる。これらの動作タイミングは、作業者が予め設定した液体の温度や供給量などの設定条件に基づいて決定されてもよい。
【0044】
流入状態判定処理部102は、反応器4や測定セル5への液体の流入状態を判定するための処理を行う。具体的には、反応器4内の液体の温度を検知する温度センサ42や、測定セル5内の液体の温度を検知する温度センサ53などからの検知信号に基づいて、これらの液体の温度変化が流入状態判定処理部102により監視される。反応器4内や測定セル5内に液体が流入する際には、反応器4や測定セル5の温度が比較的大きく変動する一方で、反応器4内や測定セル5内に液体が流入していない場合には、そのような変動が生じない。したがって、反応器4内又は測定セル5内への液体の供給時に、通常生じるような温度変化が生じなかった場合には、反応器4内又は測定セル5内に設定量の液体が流入していないと判定することができる。
【0045】
この場合、反応器4や測定セル5に連通する配管の途中で液体が漏れているような場合でも、液体の有無を検知することができるため、フロートセンサなどのセンサを用いるような構成と比較して、試料水、試薬又は希釈水などの液体の有無を良好に検知することができる。また、本実施形態のように、反応器4や測定セル5には、通常、流入部の温度を一定に制御するにあたり必要となる温度センサ42,53が備えられているため、その温度センサ42,53を用いれば、センサを別途設けることなく液体の有無を低コストで検知することができる。
【0046】
なお、上述の「通常生じるような温度変化」が生じているか否かは、各種の態様で判断することができる。例えば、一定時間内における温度の最大値と最小値との差(変動量)が閾値以下である場合、一定時間内における温度変化の勾配が閾値以下である場合、又は、一定時間内における温度変化から予想される温度に到達しなかった場合などに、通常生じるような温度変化が生じなかったと判断し、反応器4内又は測定セル5内に設定量の液体が流入していないと判定することができる。
【0047】
上記一定時間は、反応器4や測定セル5などの流入部内に液体が流入すべきタイミングを基準に決定されることが好ましい。流入部内に液体が流入すべきタイミングは、記憶部200に記憶されている分析プログラムに基づいて判断することができる。すなわち、分析プログラムに含まれる各部の動作タイミングに関する情報に基づいて、流入部内に液体が流入すべきタイミングを予測することができる。当該タイミングを基準にして、例えば当該タイミングから一定時間、又は、当該タイミングを含む一定時間といった態様で、流入部への液体の流入状態を判定する際の期間を設定することができる。
【0048】
例えば、反応器4又は測定セル5などの流入部内に混合液として流入する試料水、試薬及び希釈水の流入タイミングを基準に、上記一定時間を設定してもよい。この場合、当該一定時間内において流入部内に混合液が流入する際に生じる温度変化を温度センサ42,53で検知することにより、混合液の有無を検知することができる。すなわち、反応器4や測定セル5には、分析時に試料水、試薬及び希釈水の混合液が流入するため、その流入タイミングを基準とする一定時間内における温度変化に基づいて、混合液の有無を良好に検知することができる。
【0049】
ただし、流入部内における混合液の有無に限らず、試料水、試薬又は希釈水の有無を個別に検知することも可能である。例えば、反応器4又は測定セル5などの流入部の洗浄時などに、当該流入部内に個別に流入する希釈水の流入タイミングを基準に、上記一定時間を設定してもよい。この場合、当該一定時間内において流入部内に希釈水が個別に流入する際に生じる温度変化を検知することにより、希釈水の有無を検知することができる。すなわち、反応器4や測定セル5には、洗浄時などに希釈水が個別に流入するため、その流入タイミングを基準とする一定時間内における温度変化に基づいて、希釈水の有無を良好に検知することができる。
【0050】
異常報知処理部103は、流入状態判定処理部102による判定結果に基づいて、異常を報知するための処理を行う。具体的には、流入状態判定処理部102により、流入部内に液体が流入していない、あるいは、流入量が設定量に満たないと判定された場合に、その旨を表示部300に表示させることにより作業者に報知する。
【0051】
これにより、流入部内への液体の供給時に、通常生じるような温度変化が生じなかった場合には、流入部内に設定量の液体が流入していないと判定し、その判定結果に基づいて異常を報知することができる。したがって、異常状態のまま分析が行われることを防止できる。ただし、異常報知処理部103による報知は、表示に限らず、音声などの他の態様で行われるような構成であってもよい。
【0052】
図3A〜
図3Cは、反応器4内の液体の温度変化を示した図である。
図3Aは、反応器4内に試料水、試薬及び希釈水がいずれも正常に供給された場合の温度変化を示している。
図3Bは、反応器4内に試料水が正常に供給されなかった場合の温度変化を示している。
図3Cは、反応器4内に希釈水が正常に供給されなかった場合の温度変化を示している。
【0053】
反応器4内に液体が流入する期間としては、希釈水のみが流入するタイミングを基準とする一定期間(希釈水流入期間T11,T14)や、試料水、試薬及び希釈水の混合液が流入するタイミングを基準とする一定期間(混合液流入期間T12,T13)などがある。
図3Aに示すように、反応器4内に試料水、試薬及び希釈水がいずれも正常に供給された場合には、希釈水流入期間T11,T14及び混合液流入期間T12,T13のいずれにおいても、反応器4内の液体の温度が比較的大きく変動する。
【0054】
一方、反応器4内に試料水が正常に供給されなかった場合には、
図3Bに示すように、混合液流入期間T12,T13において
図3Aに示すような変動が生じない。また、反応器4内に希釈水が正常に供給されなかった場合には、
図3Cに示すように、希釈水流入期間T11,T14において
図3Aに示すような変動が生じない。このように、通常生じるような温度変化が生じなかった場合に、試料水や希釈水などの液体が反応器4内に正常に流入していないと判定することができる。
【0055】
なお、混合液流入期間T12は、全窒素濃度を測定するために反応器4内に混合液を流入させる期間であり、全窒素濃度測定中における反応器4内の混合液の温度は、例えば70℃に設定される。また、混合液流入期間T13は、全リン濃度を測定するために反応器4内に混合液を流入させる期間であり、全リン濃度測定中における反応器4内の混合液の温度は、例えば95℃に設定される。一方、希釈水流入期間T11,T14は、反応器4を洗浄するために希釈水を反応器4内に流入させる期間である。反応器4内の混合液の温度は、上記のように全窒素濃度測定中と全リン濃度測定中とで異なる温度に温調されてもよいし、同じ温度に温調されてもよい。
【0056】
図4A〜
図4Cは、測定セル5内の液体の温度変化を示した図である。
図4Aは、測定セル5内に試料水、試薬及び希釈水がいずれも正常に供給された場合の温度変化を示している。
図4Bは、測定セル5内に試料水が正常に供給されなかった場合の温度変化を示している。
図4Cは、測定セル5内に希釈水が正常に供給されなかった場合の温度変化を示している。
【0057】
測定セル5内に液体が流入する期間としては、希釈水のみが流入するタイミングを基準とする一定期間(希釈水流入期間T21,T22,T24,T26)や、試料水、試薬及び希釈水の混合液が流入するタイミングを基準とする一定期間(混合液流入期間T23,T25)などがある。
図4Aに示すように、測定セル5内に試料水、試薬及び希釈水がいずれも正常に供給された場合には、希釈水流入期間T21,T22,T24,T26及び混合液流入期間T23,T25のいずれにおいても、測定セル5内の液体の温度が比較的大きく変動する。
【0058】
一方、測定セル5内に試料水が正常に供給されなかった場合には、
図4Bに示すように、混合液流入期間T23,T25において
図4Aに示すような変動が生じない。また、測定セル5内に希釈水が正常に供給されなかった場合には、
図4Cに示すように、希釈水流入期間T21,T22,T24,T26において
図4Aに示すような変動が生じない。このように、通常生じるような温度変化が生じなかった場合に、試料水や希釈水などの液体が測定セル5内に正常に流入していないと判定することができる。
【0059】
なお、混合液流入期間T23は、全窒素濃度を測定するために測定セル5内に混合液を流入させる期間であり、全窒素濃度測定中における測定セル5内の混合液の温度は、例えば50℃に設定される。また、混合液流入期間T25は、全リン濃度を測定するために測定セル5内に混合液を流入させる期間であり、全リン濃度測定中における測定セル5内の混合液の温度は、例えば50℃に設定される。一方、希釈水流入期間T21,T26は、測定セル5を洗浄するために希釈水を測定セル5内に流入させる期間であり、希釈水流入期間T22,T24は、希釈水の測光強度を測定するために希釈水を測定セル5内に流入させる期間である。測定セル5内の混合液の温度は、上記のように全窒素濃度測定中と全リン濃度測定中とで同じ温度に温調されてもよいし、異なる温度に温調されてもよい。
【0060】
以上の実施形態では、流入部が、反応器4又は測定セル5である場合について説明した。しかし、このような構成に限らず、流入部は、試料水、試薬又は希釈水が個別に、あるいは、混合液として流入するものであれば、他の容器や流路などによって構成されていてもよい。
【0061】
水質分析計は、2つのマルチポートバルブ1,2を備えた構成に限らず、マルチポートバルブが1つだけ設けられた構成であってもよいし、3つ以上設けられた構成であってもよい。また、少なくとも試料水、試薬又は希釈水が個別に、あるいは、混合液として流入する流入部を備えた水質分析計であれば、バルブや配管などの種類や数は任意であり、上記実施形態のような構成に限られるものではない。
【0062】
さらに、本発明は、全窒素全リン計に限らず、全有機体炭素計などの他の任意の水質分析計に適用することができる。この場合、反応器4は、試料水中の成分を酸化させるものに限らず、例えば還元などの他の態様で試料水中の成分を反応させるものであってもよい。