(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高炉が有する複数の出銑口のうち、出銑に利用される複数の出銑口に対する出銑順の繰り返しパターンと、前記出銑順で隣り合う2つの出銑口のうち先行する出銑口と後行する出銑口との双方が1回の出銑において同時期に開口している時間であるラップ時間と、前記出銑に利用される複数の出銑口における開口径の初期値である初期出銑口径と、を設定する設定手段と、
前記出銑順の繰り返しパターンと前記ラップ時間とに基づき、次に開口する前記出銑口を開口するタイミングであるか否かを判定する開口タイミング判定手段と、
前記高炉の炉下部に単位時間当たりに滴下する溶銑および溶融スラグの量と、開口している出銑口から排出される溶銑および溶融スラグの排出速度とを境界条件として用いて、前記高炉の炉下部における溶銑および溶融スラグの速度分布を数値解析により導出する速度分布導出手段と、
前記高炉の炉下部に単位時間当たりに滴下する溶銑および溶融スラグの量から求められる溶銑および溶融スラグの体積消滅速度、並びに、前記速度分布導出手段により導出された前記高炉の炉下部における溶銑および溶融スラグの速度分布に基づいて、前記高炉の炉下部における溶融スラグと気体との界面の高さ位置であるスラグレベルを数値解析により導出するスラグレベル導出手段と、
前記スラグレベル導出手段により導出されたスラグレベルが、開口している前記出銑口の炉内側の所定の高さ位置になると、当該出銑口を閉塞するタイミングであると判定する閉塞タイミング判定手段と、を有し、
前記速度分布導出手段は、前記開口タイミング判定手段により判定されたタイミングで、前記次に開口する出銑口が前記初期出銑口径で開口され、その後、当該出銑口が時間の経過とともに拡大されるものとし、且つ、前記閉塞タイミング判定手段により判定されたタイミングで、前記開口している出銑口が閉塞されるものとして、前記高炉の炉下部における溶銑および溶融スラグの速度分布を導出することを特徴とする高炉状態解析装置。
前記出銑順の繰り返しパターンの一周期よりも長い所定の期間において前記スラグレベル導出手段により導出された前記スラグレベルの最大値である最大スラグレベルを導出する最大スラグレベル導出手段と、
前記出銑順の繰り返しパターンの一周期よりも長い所定の期間において前記スラグレベル導出手段により導出された前記スラグレベルの最大値と最小値との差であるスラグレベルの変動幅とを導出するスラグレベル変動幅導出手段と、を更に有し、
前記収束判定手段は、
前記最大スラグレベル導出手段により導出された最大スラグレベルが、安定的な操業状態を維持するための所定の上限値以下であるか否かを判定する最大スラグレベル判定手段と、
前記スラグレベル変動幅導出手段により導出されたスラグレベルの変動幅が、安定的な操業状態を維持するための所定の上限値以下であるか否かを判定するスラグレベル変動幅判定手段と、を更に有し、
前記最大スラグレベル判定手段による判定の結果と、前記スラグレベル変動幅判定手段による判定の結果とに基づいて、前記スラグレベル導出手段により導出された前記スラグレベルの状態が、安定的な操業状態を維持するための所定の条件を満たすか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の高炉状態解析装置。
前記出銑方法変更手段は、オペレータによる入力操作に基づいて、前記ラップ時間と前記初期出銑口径の少なくとも何れか一方の変更値を入力し、入力した変更値を設定することを特徴とする請求項4または5に記載の高炉状態解析装置。
前記スラグレベル導出手段は、VOF(Volume Of Fluid)法を用いて前記スラグレベルを導出することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の高炉状態解析装置。
高炉が有する複数の出銑口のうち、出銑に利用される複数の出銑口に対する出銑順の繰り返しパターンと、前記出銑順で隣り合う2つの出銑口のうち先行する出銑口と後行する出銑口との双方が1回の出銑において同時期に開口している時間であるラップ時間と、前記出銑に利用される複数の出銑口における開口径の初期値である初期出銑口径と、を設定する設定工程と、
前記出銑順の繰り返しパターンと前記ラップ時間とに基づき、次に開口する前記出銑口を開口するタイミングであるか否かを判定する開口タイミング判定工程と、
前記高炉の炉下部に単位時間当たりに滴下する溶銑および溶融スラグの量と、開口している出銑口から排出される溶銑および溶融スラグの排出速度とを境界条件として用いて、前記高炉の炉下部における溶銑および溶融スラグの速度分布を数値解析により導出する速度分布導出工程と、
前記高炉の炉下部に単位時間当たりに滴下する溶銑および溶融スラグの量から求められる溶銑および溶融スラグの体積消滅速度、並びに、前記速度分布導出工程により導出された前記高炉の炉下部における溶銑および溶融スラグの速度分布に基づいて、前記高炉の炉下部における溶融スラグと気体との界面の高さ位置であるスラグレベルを数値解析により導出するスラグレベル導出工程と、
前記スラグレベル導出工程により導出されたスラグレベルが、開口している前記出銑口の炉内側の所定の高さ位置になると、当該出銑口を閉塞するタイミングであると判定する閉塞タイミング判定工程と、を有し、
前記速度分布導出工程は、前記開口タイミング判定工程により判定されたタイミングで、前記次に開口する出銑口が前記初期出銑口径で開口され、その後、当該出銑口が時間の経過とともに拡大されるものとし、且つ、前記閉塞タイミング判定工程により判定されたタイミングで、前記開口している出銑口が閉塞されるものとして、前記高炉の炉下部における溶銑および溶融スラグの速度分布を導出することを特徴とする高炉状態解析方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。尚、各図では、説明および表記の都合上、説明に必要な構成のみを必要に応じて簡略化して示す。
(高炉の操業の概要)
図1は、高炉の炉下部の概略構成の一例を示す図である。
図1は、高炉の軸に沿って切った断面を示す。
高炉では、炉頂部から、原料である鉄鉱石とコークスを層状に装入すると共に、炉下部の送風羽口110から約1200[℃]の高温の熱風を吹き込み、高温還元反応によって溶銑を製造する。溶銑と副生成物である溶融スラグは炉内を滴下し(
図1に示す白抜きの矢印線を参照)、炉底に溜まって湯溜まりを形成する。尚、銑鉄の比重はスラグの比重よりも大きいことから、湯溜まりにおいては、溶銑の上に溶融スラグが位置する。
【0019】
この湯溜まりに向かって炉外から貫通孔(出銑口TH)を形成できるように、炉底部の出銑口形成位置には、マッド材と称される閉塞材(耐火物)が充填されている。このマッド材の部分を炉外から開口機で機械的に開口することにより出銑口が形成され、溶銑と溶融スラグとの混合液体が出銑口から炉外に排出される(
図1の出銑口THから高炉の外側に向かう矢印線を参照)。出銑口THの大きさは、時間の経過とともに大きくなる。溶銑と溶融スラグとの混合液体の排出を継続させた後、開口した出銑口をマッド材で閉塞する。以上のようにして、1つの出銑口についての1回の出銑作業が終了する。
【0020】
(高炉の具体的な操業)
表1に、同時に使用する出銑口の最大数が1つである場合の高炉の操業方法の一例を示す。また、表2に、同時に使用する出銑口の最大数が2つである場合の高炉の操業方法の一例を示す。尚、表1および表2は、高炉の操業方法の概念を説明するためのものであり、大凡の表記としている。例えば、溶銑と溶融スラグは、実際には分離した相として炉内に存在するが、表1および表2では、両者が混合した相であるとした場合について表記する。
【0023】
図2は、高炉に設けられている出銑口の一例を示す図である。
図2では、4つの出銑口1TH〜4THが設けられている場合を例に挙げて示す。また、
図2は、高炉を、その高さ方向に沿って見た図である(
図2に示す円は、高炉の炉壁(側壁)を示す)。
図3は、タッチ出銑、ラップ出銑、およびパラレル出銑の一例を説明する図である。
図3に示すように、4つの出銑口がある場合、通常、そのうちの1つは出銑樋の補修のために使用されない。したがって、3つの出銑口が使用される。そこで、本実施形態では、
図2に示す3つの出銑口1TH、2TH、3THをこの順で開口・閉塞して出銑作業を行う場合を例に挙げて示す。尚、
図3において、黒塗りの横長の矩形で示す間、出銑(溶銑と溶融スラグとの混合液体の排出)が行われることを示す。
【0024】
表1および表2において、出銑口稼働本数は、同時に使用する出銑口の数を表す。銑滓バランスは、単位時間当たりに排出される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量と単位時間当たりに生成(炉下部に滴下)される銑滓の量との大小関係を表す。銑滓レベルは、出銑口を基準とした場合の銑滓相の表面(溶融スラグと気体との界面)の高さ位置を表す(
図1を参照)。
【0025】
表2において、ラップ率(R)とは、或る出銑口における1回の出銑時間に対する、当該出銑口と当該出銑口の次に開口する出銑口の、1回の出銑において重複する出銑時間の割合をいう。ラップ率(R)の具体例を説明すると、
図3(b)および
図3(c)において、出銑口1THにおける1回の出銑時間T
Aに対する、出銑口1TH、2THの1回の出銑において重複する出銑時間T
Bの割合(=T
B÷T
A)がラップ率(R)になる。尚、以下の説明では、当該出銑口と当該出銑口の次に開口する出銑口の、1回の出銑において重複する出銑時間(すなわち、1回の出銑においてこれら2つの出銑口が同時期に開口する時間)を必要に応じてラップ時間T
Bと称する。尚、
図3(a)では、出銑口1TH・2TH、2TH・3TH、3TH・1THの1回の出銑において重複する出銑時間は0(ゼロ)であるので、ラップ時間T
Bは0(ゼロ)になる。
【0026】
表1において、「間欠出銑」とは、或る出銑口を開口した後、当該出銑口からガスが噴き出すと当該出銑口を閉塞し、その状態を一定時間保持してから、当該出銑口を再び開口する操業方法である。この場合には、当該出銑口が開口されている期間における単位時間当たりに排出される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量は、単位時間当たりに生成される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量を上回る。すなわち、時々刻々変化する当該出銑口が開口されている期間の銑滓の平均排出速度(=(当該出銑口からの銑滓の排出量の積算値)÷(当該出銑口からの出銑時間))は、銑滓の平均生成速度を上回る。したがって、閉塞時には、鉄滓層相の表面の高さ位置は上昇する。
【0027】
「連続出銑」とは、或る出銑口を連続的に開口する操業方法である。この場合には、単位時間当たりに排出される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量は、単位時間当たりに生成される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量と等しくなる。ただし、このような操業は、一般には行われない。
「不能」とは、単位時間当たりに生成される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量が、単位時間当たりに排出される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量を上回るために、銑滓相の表面の高さ位置が常に上昇することを表す。この場合、同時に使用する出銑口の数が1つでは、生成した銑滓を排出できないので、同時に使用する出銑口の数を2つにする必要がある(表1の「不能」の欄の「2本出銑へ」を参照)。
【0028】
表2において、「溜め出し出銑」とは、或る出銑口を開口した後、当該出銑口からガスが噴き出すと当該出銑口を閉塞し、その状態を一定時間保持してから、当該出銑口の次の出銑口を開口することを、3つの出銑口1TH〜3THについてこの順で繰り返し行う操業方法である。この場合には、当該出銑口が開口されている期間における単位時間当たりに排出される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量は、単位時間当たりに生成される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量を上回る。したがって、閉塞時には、鉄滓層相の表面の高さ位置は上昇する。また、この場合には、同時に使用される出銑口の数は0(ゼロ)または1であるので、ラップ率(R)は0(ゼロ)になる。
【0029】
「タッチ出銑」とは、
図3(a)に示すように、或る出銑口を開口した後、当該出銑口からガスが噴き出すと当該出銑口を閉塞し、すぐに、当該出銑口の次の出銑口を開口することを、3つの出銑口1TH〜3THについてこの順で繰り返し行う操業方法である。この場合には、単位時間当たりに排出される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量は、単位時間当たりに生成される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量と等しくなる。また、この場合には、同時に使用される出銑口の数は1であるので、前述したように、ラップ率(R)は0(ゼロ)になる。
【0030】
「ラップ出銑」とは、
図3(b)に示すように、或る出銑口を開口した後、当該出銑口からガスが噴き出すタイミングよりも前に、当該出銑口の次の出銑口を開口することを、3つの出銑口1TH〜3THについて順番に行う操業方法である。「ラップ出銑」では、ラップ率(R)が0(ゼロ)を上回り、1/2を下回るようにする。この場合、単位時間当たりに生成される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量は、当該出銑口から単位時間当たりに排出される銑滓の量を上回り、且つ、当該出銑口から単位時間当たりに排出される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量の2倍を下回る。
【0031】
「パラレル出銑」とは、
図3(c)に示すように、或る出銑口を開口した後、当該出銑口からガスが噴き出すタイミングよりも前に、当該出銑口の次の出銑口を開口することを、3つの出銑口1TH〜3THについてこの順で繰り返し行う操業方法である。この点は「ラップ出銑」と同じである。ただし、「パラレル出銑」では、ラップ率(R)が1/2になるようにする。したがって、常に2つの出銑口から出銑が行われる(表2の「パラレル出銑」の欄の「出銑口稼働本数」(=2)を参照)。この場合、単位時間当たりに生成される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量は、当該出銑口から単位時間当たりに排出される銑滓(溶銑・溶融スラグ)の量の丁度2倍になる。
【0032】
「不能」とは、単位時間当たりに生成される銑滓の量が、当該出銑口から単位時間当たりに排出される銑滓の量の2倍を上回るために、銑滓相の表面の高さ位置が常に上昇することを表す。この場合、同時に使用する出銑口の数が2つでは、出銑作業を行えないので、同時に使用する出銑口の数を3つにする必要がある(表1の「不能」の欄の「3本出銑へ」を参照)。ただし、現在の高炉では、このような状態になることは想定され難いので、本実施形態でも、このような状態を想定しない場合を例に挙げて説明する。
【0033】
(経緯)
前述したように、本発明者等は、非特許文献1に記載の高炉炉下部数学モデルを開発した。しかし、非特許文献1に記載の高炉炉下部数学モデルは、1つの出銑口により出銑する形態に限定したものであり、複数の出銑口を同時に使用する出銑形態に対応できない。すなわち、非特許文献1には、或る1つの出銑口を開口した場合の炉下部の溶銑・溶融スラグの状態を解析することが記載されている。しかしながら、2つの出銑口を開口することや、2つの出銑口を開口した場合の炉下部の溶銑・溶融スラグの状態を解析することや、炉下部の溶銑・溶融スラグの状態に基づいて出銑方法を決定することについては記載されていない。
【0034】
表2に示すように、1つの出銑口により出銑する出銑形態には、タッチ出銑(連続出銑)または溜め出し出銑(間欠出銑)があり、出銑比がさほど高くない高炉では、この形態がとられてきた。一方、複数の出銑口から同時に出銑する出銑形態としては、ラップ出銑やパラレル出銑があり、これらの出銑形態は、高炉の高出銑比化に伴い必須の出銑形態となってきた。
【0035】
そこで、本実施形態では、非特許文献1に記載の高炉炉下部数学モデルを、ラップ出銑およびパラレル出銑のような、複数の出銑口から同時に出銑する出銑形態に適用できるように変更し、且つ、炉下部における最大スラグレベルの低減とスラグレベルの変動幅の低減とを達成する出銑方法を導出できるようにする。
図3に示すように、同時に使用する出銑口の数が2つ以上である場合には、ラップ時間を考慮する必要がある。そこで、本実施形態では、出銑口の開口径の初期値である初期出銑口径に加えて、ラップ時間を調整して、スラグレベル推定モデルによる計算を行うことにより、最大スラグレベルとスラグレベルの変動幅が、操業上要求される所定の条件を満たす場合の出銑方法を導出する。
【0036】
ここで、出銑方法は、複数の出銑口のそれぞれを開口するタイミング(すなわち、ラップ時間)と、当該複数の出銑口の初期出銑口径により定められるものとする。
また、最大スラグレベルとは、出銑パターンの一周期よりも長い所定の期間において、炉下部に溜まっている溶融スラグの表面(溶融スラグと気体との界面)の高さ位置が最も高くなる位置をいう。
スラグレベルの変動幅とは、出銑パターンの一周期よりも長い所定の期間において、炉下部に溜まっている溶融スラグの表面(溶融スラグと気体との界面)の高さ位置が最も高くなる位置と、炉下部に溜まっている溶融スラグの表面(溶融スラグと気体との界面)の高さ位置が最も低くなる位置との差をいう。
出銑パターンとは、出銑に利用される出銑口1TH〜3THに対する出銑順の繰り返しパターンをいい、本実施形態の例では、出銑口1TH→出銑口2TH→出銑口3TH→出銑口1TH→出銑口2TH→・・・のパターンをいう。また、出銑パターンの一周期とは、かかる出銑パターンの繰り返し周期をいう(
図3に示す期間T
pを参照)。
【0037】
(スラグレベル推定モデル)
本実施形態のスラグレベル推定モデルについて説明する。尚、非特許文献1に記載されている内容については、その詳細な説明を省略する。また、ここでは説明を簡単にするために、温度に関わる部分の説明を省略する。ただし、各時間ステップにおいて、炉下部の溶銑・溶融スラグの温度分布を求め、温度に依存する変数(粘度等)を、当該温度分布に基づいて計算してもよい。
【0038】
まず、非特許文献1に示されているように、以下の(1)式に示す連続の式と(2)式〜(4)式に示す運動量保存式(ナビエ−ストークス方程式(Navier-Stokes equations))とを、例えば、有限体積法により差分化し、HSMAC法により解を求める。求める解は、炉下部の各位置(各計算セル)、各時間ステップにおける流体の速度ベクトル(u
r,uθ,u
z)と圧力pである。
【0040】
ここで、rは、高炉内の炉下部の半径方向の座標(m)、θは、高炉の軸を原点とする円周方向の角度(rad)、zは、高炉の鉛直方向の座標(m)、u
rは、半径方向における流体の速度(m/s)、u
zは、鉛直方向における流体の速度(m/s)、uθは、円周方向における流体の速度(m/s)、εは、空隙率(−)、Sは、流体と充填層との相互作用力(m/s
2)、ρは、密度(kg/m
3)、pは、圧力(Pa)、tは、時間(s)、gは、重力加速度(m/s
2)である。
生成項S(流体と充填層との相互作用力)は、例えば、以下の(5)式で表すことができる。
【0042】
ここで、μは、流体の粘度(Pa・s)、d
pは、コークスの粒径(m)、uは、流体の速度ベクトル(u
r,uθ,u
z)である。
【0043】
その際の境界条件として、以下の(I)および(II)を設定する。
(I)溶銑・溶融スラグの生成速度
炉下部に溜まっている溶融スラグの表面(溶融スラグと気体との界面)における溶銑・溶融スラグの滴下速度(すなわち、溶銑・溶融スラグの生成速度)を境界条件として設定する。溶銑・溶融スラグの生成速度は、溶銑と溶融スラグとで個別に設定される。
例えば、炉頂から旋回シュートを介して単位時間に炉内に装入される原料(焼結鉱、ペレット、塊鉱石等の鉄源を含む原料)の体積の、炉の半径方向の分布に基づいて、溶銑・溶融スラグの生成速度を設定することができる。溶銑・溶融スラグの生成速度は、例えば、非特許文献2等に記載されている公知の高炉数学モデルにより求めることができる。尚、溶銑・溶融スラグの生成速度に、炉の半径方向の分布を持たせず、溶銑・溶融スラグの生成速度の平均値を設定してもよい。尚、以下の説明では、溶銑・溶融スラグの生成速度を必要に応じて銑滓生成速度と称する。
【0044】
(II)溶銑・溶融スラグの排出速度
溶銑・溶融スラグの排出速度v(m
3/s)を境界条件として設定する。溶銑・溶融スラグの排出速度vは、溶銑と溶融スラグのトータルの排出速度である。本実施形態では、出銑口を、直径D(m)、出銑口深度L(m)、表面粗さe(m)の円管であると仮定し、以下の(6)式により、溶銑・溶融スラグの排出速度vを設定する。
【0046】
(6)式において、f
cは、摩擦係数(−)であり、例えば、以下の(7)式で表される。また、出銑口の直径D(m)は、例えば、以下の(8)式で表される。また、ρは、密度(kg/m
3)であり、ΔPは、出銑口の炉内側の圧力と炉外側の圧力(大気圧)との圧力差(Pa)である。
本実施形態では、出銑口深度Lと表面粗さeを一定であるとする。
【0048】
(7)式において、Reは、レイノルズ数(−)である。また、(8)式において、D
0(m)は、初期出銑口径(出銑口の直径の初期値)であり、T(分)は、出銑口の出銑作業(開口作業)を開始してからの経過時間である。
その他、炉内の気体の圧力は、送風圧力により定められ、炉外の圧力は、大気圧であるものとする。
【0049】
以上の(1)式〜(8)式に基づいて、出銑口が開口した後の各時間ステップにおいて、炉下部の各位置(各計算セル)における流体の速度ベクトル(u
r,uθ,u
z)と圧力pとを計算する。
本実施形態では、ラップ時間T
Bと初期出銑口径D
0とを指定して、炉下部の各位置(各計算セル)における流体の速度ベクトル(u
r,uθ,u
z)と圧力pとを、各時間ステップにおいて計算する。
【0050】
このラップ時間T
Bにより、表2に示す「溜め出し出銑」、「タッチ出銑」、「ラップ出銑」および「パラレル出銑」の何れで操業されるのかが定められる。ラップ時間T
Bが負の値である場合には「溜め出し出銑」となり、ラップ時間T
Bが0(ゼロ)である場合には「タッチ出銑」となり、ラップ時間T
Bが正の値である場合には「ラップ出銑」または「パラレル出銑」になる。
【0051】
本実施形態では、各出銑口1TH〜3THを開口するタイミングを、例えば、以下のようにして定める。
すなわち、現在、出銑している出銑口の出銑開始時刻からの経過時間と、指定されたラップ時間T
Bとの和が、前回の当該出銑口の出銑時間と一致すると、次の出銑口を開口する。例えば、
図3(c)において、現在、出銑している出銑口が出銑口1THであり、その出銑開始時刻がt
0であるとする。この場合、出銑開始時刻t
0からの経過時間とラップ時間T
Bとの和が、前回の出銑口1THの出銑時間T
A1になる時刻t
sに、出銑口2THの開口を開始する。尚、
図3(c)では、出銑口1THの前回の出銑時間と今回の出銑時間とが共にT
Aである場合を例に挙げて示す。
【0052】
以上のようにして、出銑口が開口した後の各時間ステップにおいて、炉下部の各位置(各計算セル)における流体の速度ベクトル(u
r,uθ,u
z)と圧力pとを計算する。本実施形態では、流体の速度ベクトル(u
r,uθ,u
z)を、溶銑と溶融スラグとで区別されないもの(1つの流体の速度ベクトル)とする。
【0053】
出銑口が開口した後の各時間ステップにおける流体の速度ベクトル(u
r,uθ,u
z)が得られると、当該各時間ステップにおける流体の速度ベクトル(u
r,uθ,u
z)に基づいて、当該各時間ステップにおける流体の流速分布を計算することができる。さらに、当該各時間ステップにおける流体の流速分布に基づいて、溶融スラグと気体との界面の位置と、溶融スラグと溶銑との界面の位置とを、当該各時間ステップにおいて計算することができる。
【0054】
本実施形態では、VOF(Volume Of Fluid)法を用いて、溶融スラグと気体との界面の位置と、溶融スラグと溶銑との界面の位置とを計算する。VOF法は、公知の技術であるが、その概要を簡単に説明する。
VOF法とは、或る流体iの体積存在率f
i(−)を用いて表現した移流方程式を解いた結果に基づいて界面を移動させ、界面の形状を、或る流体とそれ以外の流体の境界線(または境界面)として間接的に追跡する方法である。体積存在率f
iは0から1までの間の値をとる。
【0055】
或る流体iの或る計算セルにおける体積存在率f
iが「1」である場合には、当該計算セルには当該流体iのみが存在することを示す。或る流体iの或る計算セルにおける体積存在率f
iが「0(ゼロ)」である場合には、当該計算セルには当該流体iが存在しないことを示す。或る流体iの或る計算セルにおける体積存在率f
iが「0(ゼロ)」を上回り「1」を下回る場合には、当該計算セルには当該流体iとそれ以外の流体とが存在することを示す。
【0056】
本実施形態では、変数iを、溶銑および溶融スラグを示す変数とする。具体的に変数iは「1」または「2」をとる。変数iが「1」であることは、溶銑であることを示し、変数iが「2」であることは、溶融スラグであることを示す。前述したように、溶銑の比重は溶融スラグの比重よりも重いため、溶銑の方が溶融スラグよりも下に位置する。
例えば、或る計算セルにおいて、溶銑の体積存在率f
1が0.3であるとする。この場合、当該計算セルの最下部から、当該計算セルの高さの30(%)の高さの領域まで溶銑が存在し、残りの領域に溶融スラグが存在することになる。すなわち、当該計算セルに溶銑と溶融スラグの界面が存在することになる。
【0057】
本実施形態では、各計算セルにおける、溶銑の体積存在率f
1と溶融スラグの体積存在率f
2とを、以下の(9)式の計算を行うことにより計算する。
【0059】
(9)式において、R
iは、体積消滅速度(1/s)であり、tは、時間(s)である。体積消滅速度R
iの境界条件としては、例えば、前述した溶銑・溶融スラグの生成速度を用いることができる。化学反応により生成・消滅する溶銑・溶融スラグを考慮して、体積消滅速度R
iを求めてもよい。
尚、本実施形態では、非特許文献1と同様に、(9)式を計算する際には、ドナー・アクセプター法を用いて離散化する。
また、前述したように、本実施形態では、流体の速度ベクトル(u
r,uθ,u
z)を、溶銑と溶融スラグとで区別されないもの(1つの流体の速度ベクトル)とする。すなわち、同一の計算セルにおいて、溶銑の速度ベクトルと溶融スラグの速度ベクトルとを個別に計算しない。
【0060】
以上のようにして計算された溶銑の体積存在率f
1が「0(ゼロ)」になる高さ位置を、炉底から炉頂に向けて探索し、この高さ位置を、溶融スラグと溶銑との界面の位置とする。さらに、溶銑の体積存在率f
1と溶融スラグの体積存在率f
2との和が「0(ゼロ)」になる(すなわち、溶銑の体積存在率f
1と溶融スラグの体積存在率f
2とが共に「0(ゼロ)」になる)高さ位置を、炉底から炉頂に向けて探索し、この高さ位置を、溶融スラグと気体との界面の位置とする。
【0061】
以上のような探索を、炉の円周方向および半径方向の位置(計算セル)を異ならせて行うことにより、或る時間ステップにおける炉下部全体の「「溶融スラグと溶銑との界面の位置」と「溶融スラグと気体との界面の位置」」とが得られる。そして、各時間ステップにおいて以上の計算を行うことにより、各時間ステップにおける炉下部全体の「「溶融スラグと溶銑との界面の位置」と「溶融スラグと気体との界面の位置」」とが得られる。
【0062】
本実施形態では、このようにして得られる「溶融スラグと気体との界面の位置」に基づいて、各出銑口1TH〜3THを閉塞するタイミングを定める。
具体的には、溶融スラグと気体との界面の位置が、開口している出銑口の高さ位置であるか否かを判定する。この判定の結果、溶融スラグと気体との界面の位置が、開口している出銑口の高さ位置であると、当該出銑口を閉塞する。出銑口を閉塞する場合には、当該出銑口における溶銑・溶融スラグの排出速度vとして0(ゼロ)が設定される。
【0063】
ここで、操業上の安全性を確保する観点から、開口している出銑口の高さ位置は、当該出銑口の炉内側開口部の最上端の高さ位置であるのが好ましい。ただし、当該出銑口の炉内側開口部の最下端から最上端までの高さ位置を、開口している出銑口の高さ位置とすることができる。
【0064】
尚、本実施形態では、流体の速度ベクトル(u
r,uθ,u
z)の計算セルに関しては、体積存在率f
1、f
2の計算セルに対して半分ずれたセル(スタガード格子)を使用する。ただし、これらの計算セルを同じにしてもよい。また、炉下部の各位置における流体の速度ベクトル(u
r,uθ,u
z)と圧力pとを計算する時間ステップと、溶銑の体積存在率f
1と溶融スラグの体積存在率f
2を計算する時間ステップとを同じにする。
【0065】
そして、炉下部の各位置における流体の速度ベクトル(u
r,uθ,u
z)および圧力pを計算する際には、各計算セルにおける溶銑の体積存在率f
1または溶融スラグの体積存在率f
2に基づいて、各計算セルにおける溶銑と溶融スラグの存在割合を計算し、当該計算割合に基づいて、各計算セルにおける次の時間ステップの密度ρおよび粘度μを計算する。
【0066】
また、炉内の初期状態は、予め設定された状態であるものとする。例えば、前述した(I)溶銑・溶融スラグの生成速度に従って、溶銑と溶融スラグを炉下部に一定時間滴下させた状態とし、前述したVOF法を用いて、開口する出銑口に最も近い計算セルにおける溶銑と溶融スラグの存在割合を計算する。そして、当該計算した存在割合に基づいて、当該計算セルにおける密度ρを計算し、その値と初期出銑口径D
0を、前述した(6)式および(7)式に与えて、当該出銑口における溶銑・溶融スラグの排出速度vの初期値を境界条件として設定する。
【0067】
以降の各時間ステップにおいても、初期状態と同様に、開口している出銑口に最も近い計算セルにおける溶銑と溶融スラグの存在割合を計算する。そして、当該計算した存在割合に基づいて、当該計算セルにおける密度ρを計算し、その値と前述した(8)式に示す出銑口の直径Dを、前述した(6)式および(7)式に与えて、当該出銑口における溶銑・溶融スラグの排出速度vを境界条件として設定する。尚、(8)式に示すように、時間Tの経過と共に、出銑口の直径Dは拡大する。また、以下の説明では、溶銑・溶融スラグの排出速度を必要に応じて出銑滓速度と称する。
【0068】
以上のように本実施形態では、複数の出銑口1TH〜3THのそれぞれに対応して、(1)式〜(9)式を適用する。すなわち、それぞれの出銑口における出銑を開始するタイミングを異ならせ、それぞれの出銑口における溶銑・溶融スラグの排出速度vを導出する。このとき、複数の出銑口が開口している場合には、それら複数の出銑口における出銑滓速度を同じ時間ステップにおいて導出する。
そして、それぞれの出銑口における溶銑・溶融スラグの排出速度vを境界条件として導出された各計算セルにおける流体の速度ベクトル(u
r,uθ,u
z)に基づいて、溶銑・溶融スラグの体積存在率f
iを導出する。この溶銑・溶融スラグの体積存在率f
iは、出銑口の位置(隣り合う出銑口における、出銑口の中心と炉の軸とを結ぶ直線のなす角度)により影響を受ける。
【0069】
そこで、本実施形態では、それぞれの出銑口1TH〜3THに対して(6)式〜(9)式を適用可能とするために、それぞれの出銑口の情報(圧力差ΔP、出銑口の直径D、密度ρ、出銑口深度L、出銑口の表面粗さe、出銑開始からの経過時間、前回の出銑時間、開口・閉塞状況等)を個別に管理する機能を、スラグレベル推定モデルに追加した。
【0070】
(炉下部の状態の計算結果の概要)
本実施形態のスラグレベル推定モデルにより計算される炉下部の溶銑と溶融スラグの状態の概要の一例を説明する。
図4は、タッチ出銑の場合の炉下部の溶銑と溶融スラグの状態の一例を示す図である。
図4は、本実施形態のスラグレベル推定モデルによる計算の結果から得られたものである。
溶銑の粘度は、溶融スラグの粘度に対し、ほぼ100倍小さいので、粘度の小さな溶銑が優先して出銑口1THから排出される。その結果、
図4に示す位置Dは、位置Cより低い。すなわち、溶銑と溶融スラグとの界面の高さは、出銑口1THから遠くなるほど、低くなる。一方、位置Aは、位置Bより大きく高い位置にある。すなわち、溶融スラグと気体との界面の高さ(スラグレベル)は、出銑口1THから遠くなるほど、高くなる。そして、出銑末期には、溶融スラグと気体との界面の高さ(スラグレベル)は出銑口1THに向かって大きく傾斜し、この傾斜によって、出銑終了時に炉内に残留する溶融スラグの量が決まる。
【0071】
図5は、パラレル出銑の場合の炉下部の溶銑と溶融スラグの状態の一例を示す図である。
図5も、
図4と同様に、本実施形態のスラグレベル推定モデルによる計算の結果から得られたものである。
本実施形態のスラグレベル推定モデルの計算の結果から、本発明者らは、以下の知見を得た。
まず、炉下部の溶銑と溶融スラグの流動・排出の挙動には、複数の出銑口からの出銑滓速度と、出銑口の位置関係とが複雑に影響するという知見を得た。また、炉下部の溶銑との溶融スラグ体積存在率f
iは、それぞれの出銑口からの出銑滓速度、コークスの粒径、溶融スラグの粘度等に依存し、出銑滓速度の増加およびコークスの粒径の低下に伴い、溶融スラグと気体との界面の高さ(スラグレベル)の傾きは大きくなるという知見を得た。
【0072】
図6は、出銑を開始してからのスラグレベルの経時変化の一例を示す図である。具体的に
図6(A)は、タッチ出銑の場合のスラグレベルの経時変化の一例を示す。また、
図6(B)は、ラップ出銑の場合のスラグレベルの経時変化の一例を示す。また、
図6(C)は、パラレル出銑の場合のスラグレベルの経時変化の一例を示す図である。
図6も、
図4および
図5と同様に、本実施形態のスラグレベル推定モデルによる計算の結果から得られたものである。
【0073】
高炉の出銑口の開口は、出銑口の閉塞時に充填したマッド材に対して開口機を挿入することにより行われる。初期の出銑滓速度は小さいが、出銑を開始してからの時間の経過に伴うマッド材の侵食により、出銑口の直径は大きくなり、出銑滓速度は徐々に速くなる。
図6(A)に示すように、タッチ出銑の場合、出銑初期の出銑滓速度v
1は小さく、出銑滓速度v
1は、銑滓生成速度Pよりも下回る。このため、溶銑・溶融スラグは炉内に貯留する(出銑時間T
1における出銑滓速度v
1と銑滓生成速度Pを参照)。
その後、時間の経過に従い、出銑口の直径は徐々に拡大する。この出銑口の直径の拡大に伴い、出銑滓速度も上昇し、時刻T
Cで、出銑滓速度v
1と銑滓生成速度Pはバランスし、スラグレベルは、最大スラグレベルM
1になる。時刻T
Cを過ぎると出銑滓速度v
1は銑滓生成速度Pを上回るので、スラグレベルは、減少に転ずる。その後、スラグレベルは徐々に低下し、スラグレベルが出銑口の高さ位置に到達した時点で、ガスが噴き出し、当該出銑口からの出銑が終了となる。
【0074】
銑滓生成速度と出銑滓速度との差を小さくするために、初期出銑口径を拡大するとともに、マッド材の溶損速度を低下させ、出銑口の直径の拡大速度を低下させる方法もある。しかしながら、マッド材の溶損速度を低下させるためには、マッド材の改良や、マッド材の焼成時間の確保等、解決すべき多くの問題があり容易ではない。よって、マッド材の溶損速度の低下に依らない別の方法で、出銑初期と末期の出銑滓速度の差を低減する必要が望まれる。
【0075】
出銑初期と末期の出銑滓速度の差を低減する方策として、複数の出銑口から同時に出銑するラップ出銑およびパラレル出銑がある。
図6(B)に示すように、ラップ出銑では、出銑口1THからの出銑の末期と、出銑口2THからの出銑の初期とを一部ラップさせることにより、見かけ上、出銑初期の出銑滓速度をタッチ出銑の場合よりも向上させることができる。出銑初期の出銑滓速度V
1を向上させることにより、出銑初期の出銑滓速度V
1と銑滓生成速度Pとの差を、タッチ出銑の場合よりも小さくすることができ、炉内に貯留する溶銑・溶融スラグの量を少なくすることができる(
図6(A)および
図6(B)の出銑時間T
1における出銑滓速度v
1と銑滓生成速度Pとの差を参照)。尚、
図6(B)において、n回目、m回目、k回目は、それぞれ、出銑口1TH、2TH、3THごとに個別に数えた場合の出銑回数を示す。また、V
s1、V
s2、V
s3は、それぞれ、出銑口1TH、2TH、3THにおける出銑初期の出銑滓速度を示し、V
f1、V
f2、V
f3は、それぞれ、出銑口1TH、2TH、3THにおける出銑末期の出銑滓速度を示す。これらの符号の意味は、
図6(C)でも同じである。
【0076】
図6(C)に示すように、パラレル出銑では、高炉全体の出銑滓速度は、出銑口1THからの出銑滓速度と出銑口2THからの出銑滓速度との合計である。したがって、タッチ出銑時の初期出銑口径よりも小さな初期出銑口径を用いることにより、パラレル出銑では、見かけ上、出銑初期の出銑滓速度を、ラップ出銑の場合よりも向上させ、出銑末期の出銑滓速度を、ラップ出銑の場合よりも低下させることができる。なぜなら、出銑初期の出銑滓速度v
1は、出銑口2THの初期の出銑滓速度V
S2と、出銑口1THの中期の出銑滓速度V
m1との合計だからである。同様に、出銑末期の出銑滓速度v
2も、ラップ出銑の場合よりも低下させることができる。
出銑滓速度の変化を低減することにより、出銑終了時に炉内に残る溶銑・溶融スラグの量が低下すると共に、出銑初期と末期の出銑滓速度の差が低下するため、最大スラグレベルの低下と、スラグレベルの変動幅の低減とが可能となる。
【0077】
以上のように、最大スラグレベルの低下と、スラグレベルの変動幅の低減との双方を実現するという観点から、溜め出し出銑、タッチ出銑、ラップ出銑、およびパラレル出銑のうち、最適な解は、パラレル出銑になる。しかしながら、例えば、所定期間(例えば1日当たり)の出銑回数が多すぎて現実的な出銑回数にならない場合には、パラレル出銑以外の出銑を選択する必要がある。また、最大スラグレベルやスラグレベルの変動幅がある程度の大きさであれば許容できる場合には、必ずしもパラレス出銑を選択する必要はない。
【0078】
そこで、本実施形態では、所定期間(例えば1日当たり)の出銑回数の指定と、最大スラグレベルの指定と、スラグレベルの変動幅の指定とを行うことができるようにする。また、例えば、これらの指定が必要ないような場合のために、初期出銑口径D
0の上限値の指定も行うことができるようにする。そして、これらの指定に基づいて、高炉の炉下部の状態を解析し、その解析の結果に基づいて、出銑方法(ラップ時間T
Bと初期出銑口径D
0)を決定する。
【0079】
ここで、高炉の大型化に伴う出銑量の増加に対し、複数の出銑口から同時に出銑するラップ出銑の形態を採用する場合、ラップ時間の増加に伴う出銑時間の低下、すなわち1日当たりの出銑回数の増加が問題となる。出銑回数の増加は、開口機による開口作業、マッドガンによる閉塞作業等の炉前作業頻度の増加はもとより、出銑口の閉塞に必要なマッド材の使用量の増加、すなわち、溶銑コストの上昇を引き起こす。このため、1日当たりの出銑回数は一定回数以下に抑えることが望ましい。
しかしながら、一般に、最大スラグレベルおよびスラグレベルの変動幅は、出銑回数の増加に伴い低下する。このため、炉前作業頻度、溶銑コスト、最大スラグレベルおよびスラグレベルの変動幅の全てを考慮した上で、初期出銑口径D
0およびラップ時間T
Bを決定する必要がある。
尚、1日あたりの出銑回数を低減するために、ラップ出銑時およびパラレル出銑時の初期出銑口直径を、タッチ出銑時の出銑滓速度の経時変化に基づき、タッチ出銑時よりも小さな値に設定するのが好ましい。
以上のような観点で、本実施形態の高炉状態解析装置700を構成するに至った。
【0080】
(高炉状態解析装置700の処理)
図7は、高炉状態解析装置700の機能的な構成の一例を示す図である。高炉状態解析装置700のハードウェアの構成は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを用いることにより実現される。また、専用のハードウェアを構築して高炉状態解析装置700を構成してもよい。
図8〜
図11のフローチャートを参照しながら、高炉状態解析装置700の処理の一例を説明する。
図8〜
図11のフローチャートは、例えば、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
【0081】
図8は、高炉状態解析装置700の全体処理の一例を説明するフローチャートである。前述したように、ここでは、
図2に示す3つの出銑口1TH、2TH、3THをこの順で開口・閉塞して出銑作業を行う場合を例に挙げて示す。また、高炉の炉下部の1日における状態を解析し、その結果に基づいて出銑方法を決定する場合を例に挙げて説明する。また、前述したように、説明を簡単にするために、ここでは、温度に関わる部分の説明を省略する。
【0082】
ステップS801において、計算条件設定部701は、スラグレベル推定モデルによる計算に必要な情報である計算条件を設定する。
本実施形態では、計算条件設定部701は、高炉状態解析装置700のユーザインターフェースの操作等に基づいて、以下の情報を計算条件として入力して設定する。
【0083】
・溶銑の1日当たりの生成量
・溶融スラグの1日当たりの生成量
・溶銑の単位時間当たりの生成量の半径方向の分布(炉内の半径方向の各位置における溶銑の単位時間当たりの生成量)
・溶融スラグの単位時間当たりの生成量の半径方向の分布(炉内の半径方向の各位置における溶融スラグの単位時間当たりの生成量)
・空隙率ε
・コークスの粒径d
p
・溶銑・溶融スラグの密度、粘度
・送風圧力
・出銑口深度L
・出銑口の表面粗さe
・出銑口1TH、2TH、3THの位置
・出銑口1TH、2TH、3THの開口順
・1日当たりの出銑回数の指定の有無
・1日当たりの出銑回数の指定がある場合の指定回数
・最大スラグレベルの上限値の指定の有無
・最大スラグレベルの上限値の指定がある場合の当該上限値
・スラグレベルの変動幅の上限値の指定の有無
・スラグレベルの変動幅の上限値の指定がある場合の当該上限値
・初期出銑口径D
0の上限値の指定の有無
・初期出銑口径D
0の上限値の指定がある場合の当該上限値
【0084】
尚、これらの情報は、代表的なものであり、これらの情報以外にも種々の情報を計算条件に含めることができる。例えば、ラップ時間T
Bと初期出銑口径D
0等の初期値を計算条件に含めることができる。また、コークスの粒径および空隙率以外にも、炉下部の充填構造に関する情報が必要になる場合には、当該情報を計算条件に含めることができる。また、温度を考慮する場合には、生成される溶銑・溶融スラグの温度に関する情報を計算条件に含めることができる。
【0085】
次に、ステップS802において、炉下部状態解析部702は、ステップS801で設定された計算条件を用いて、炉下部状態解析処理を行う。炉下部状態解析処理は、前述したスラグレベル推定モデルを用いることにより、1日における炉下部の溶銑・溶融スラグの状態の変動を、ラップ時間T
Bと初期出銑口径D
0とを指定して計算する処理をいう。ステップS802の処理の詳細については、
図9を参照しながら、後述する。
【0086】
次に、ステップS803において、収束判定部703は、ステップS802における炉下部状態解析処理の結果に基づいて、炉下部の状態が収束したか否かを判定する。ステップS803の判定の詳細については、
図10を参照しながら、後述する。
ステップS803の結果、炉下部の状態が収束していない場合には、ステップS804に進む。ステップS804に進むと、出銑方法変更部704は、ラップ時間T
Bまたは初期出銑口径D
0を変更する出銑方法変更処理を行う。そして、ステップS802に戻り、変更後のラップ時間T
Bまたは初期出銑口径D
0を用いて、炉下部状態解析処理を再び行う。ステップS804の処理の詳細については、
図11を参照しながら、後述する。
【0087】
一方、ステップS803の判定の結果、炉下部の状態が収束した場合には、ステップS805に進む。ステップS805に進むと、出力部705は、ステップS803で炉下部の状態が収束したと判定されたときの出銑方法(ラップ時間T
Bおよび初期出銑口径D
0)を示す情報を出力する。この他、出力部705は、ステップS803で炉下部の状態が収束したと判定されたときのステップS802における炉下部状態解析処理の結果を示す情報を出力してもよい。例えば、最大スラグレベルやスラグレベルの変動幅の時間変化を示す情報として、炉下部を模擬したグラフィックスや、グラフを出力してもよい。
そして、
図8のフローチャートによる処理を終了する。
【0088】
次に、
図9のフローチャートを参照しながら、
図8のステップS802の処理(炉下部状態解析処理)の詳細の一例を説明する。
ステップS901において、炉下部状態解析部702は、出銑口を開口する条件を満足したか否かを判定する。前述したように、本実施形態では、現在、出銑している出銑口の出銑開始時刻t
0からの経過時間と、指定されたラップ時間T
Bとの和が、前回の当該出銑口の出銑時間T
A1になる時刻t
sになると、次の出銑口を開口する(
図3(c)を参照)。
【0089】
尚、最初にステップS901の判定を行う際には、炉下部における溶銑・溶融スラグの状態(速度分布、圧力分布、溶銑・溶融スラグの体積存在率f
1、f
2、界面の位置)が、予め設定された基準状態になっているものとし、且つ、出銑口1THを開口する条件を満足したと判定するものとする。
【0090】
この判定の結果、出銑口を開口する条件を満足していない場合には、ステップS902を省略して後述するステップS903に進む。
一方、出銑口を開口する条件を満足した場合には、ステップS902に進む。ステップS902に進むと、炉下部状態解析部702は、ステップS901で開口する条件を満足した出銑口を開口する処理を行う。ステップS902の具体例を説明すると、炉下部状態解析部702は、開口する条件を満足した出銑口に対して初期出銑口径D
0を与える。そして、ステップS903に進む。
【0091】
ステップS903に進むと、炉下部状態解析部702は、現在の時間ステップにおける流体の速度ベクトル(u
r,uθ,u
z)を導出し((1)式〜(8)式を参照)、現在の時間ステップにおける炉下部における流体の速度分布を導出する。尚、このステップS903において、炉下部状態解析部702は、現在の時間ステップにおける炉下部における圧力分布も導出する。
【0092】
次に、ステップS904において、炉下部状態解析部702は、ステップS903で導出された速度分布に基づいて、溶銑の体積存在率f
1と溶融スラグの体積存在率f
2とを移流させ、次の時間ステップにおける溶銑の体積存在率f
1と溶融スラグの体積存在率f
2とを導出する((9)式を参照)。これにより、溶融スラグと気体との界面(スラグレベル)と、溶融スラグと溶銑との界面が移動する。
次に、ステップS905において、炉下部状態解析部702は、ステップS904で導出された溶銑の体積存在率f
1・溶融スラグの体積存在率f
2と基づいて、次の時間ステップにおけるスラグレベル(溶融スラグと気体との界面の位置)を導出する。尚、このステップS905において、炉下部状態解析部702は、次の時間ステップにおける溶融スラグと溶銑との界面の位置も導出する。
【0093】
次に、ステップS906において、炉下部状態解析部702は、(8)式に基づき、次の時間ステップにおける当該出銑口の直径Dの計算を行うとともに、ステップS903で導出された炉下部における流体の流速分布・圧力分布と、ステップS904で導出された溶銑の体積存在率f
1・溶融スラグの体積存在率f
2とに基づいて、次の時間ステップにおける出銑口からの溶銑・溶融スラグの排出速度vを導出する((6)式〜(8)式を参照)。尚、現在の時間ステップにおいて開口している出銑口が複数ある場合、それら複数の出銑口のそれぞれからの溶銑・溶融スラグの排出速度vが個別に導出される。また、溶銑・溶融スラグの排出速度vは、次の時間ステップにおけるステップS903の計算の境界条件として使用される。
【0094】
ステップS906の具体例を説明すると、炉下部状態解析部702は、開口している出銑口に最も近い計算セルにおける溶銑と溶融スラグの存在割合を導出する。次に、炉下部状態解析部702は、当該計算した存在割合に基づいて、当該計算セルにおける密度ρを導出する。また、炉下部状態解析部702は、ステップS903で導出された炉下部における圧力分布と大気圧から、圧力差ΔPを導出する。そして、炉下部状態解析部702は、これらの値と、当該出銑口の直径Dと、計算条件(出銑口深度Lおよび出銑口の表面粗さe)とを(6)式および(7)式に与えて、当該出銑口からの溶銑・溶融スラグの排出速度vを導出する。
【0095】
ステップS907において、炉下部状態解析部702は、ステップS905で導出されたスラグレベルに基づいて、スラグレベル(溶融スラグと気体との界面の位置)が、開口している出銑口の高さ位置に到達したか否かを判定する。
この判定の結果、現在のスラグレベルが、開口している出銑口の高さ位置に到達していない場合には、ステップS908を省略して後述するステップS909に進む。
【0096】
一方、現在のスラグレベルが、開口している出銑口の高さ位置に到達している場合には、ステップS908に進む。ステップS908に進むと、炉下部状態解析部702は、当該出銑口を閉塞する処理を行う。ステップS908の具体例を説明すると、炉下部状態解析部702は、当該出銑口の直径Dを0(ゼロ)にする。すなわち、炉下部状態解析部702は、当該出銑口については、ステップS906で導出された溶銑・溶融スラグの排出速度vを0(ゼロ)にする。そして、ステップS909に進む。
【0097】
ステップS909に進むと、炉下部状態解析部702は、1日分の計算が終了したか否かを判定する。
ステップS909の具体例を説明すると、炉下部状態解析部702は、溶銑・溶融スラグの排出速度vと、出銑口の直径Dと、溶銑・スラグの比重と、開口している出銑口に最も近い計算セルにおける溶銑と溶融スラグの存在割合とに基づいて当該時間ステップにおける出銑量を導出する。そして、炉下部状態解析部702は、当該導出した当該時間ステップにおける出銑量を、当該時間ステップまでに出銑された出銑量に加えることにより、総出銑量を導出し、総出銑量が、計算条件に含まれる1日当たりの溶銑・溶融スラグの生成量以上になった場合に、1日分の計算が終了したと判定する。
【0098】
この判定の結果、1日分の計算が終了していない場合には、ステップS910に進む。ステップS910に進むと、炉下部状態解析部702は、時間ステップを1つ進める。そして、ステップS901に戻り、次の時間ステップにおける処理を行う。
一方、1日分の計算が終了した場合には、ステップS911に進む。ステップS911に進むと、炉下部状態解析部702は、1日当たりの出銑回数を導出する。ステップS911の具体例を説明すると、炉下部状態解析部702は、ステップS902で出銑口を開口した回数を出銑回数として導出する。
【0099】
尚、このステップS911において、炉下部状態解析部702は、1つの出銑口における1回当たりの出銑時間と、全ての出銑口における1日当たりの出銑時間(各出銑口における1日当たりの出銑時間の合計)も導出する。尚、1つの出銑口の1回当たりの出銑時間は、当該出銑口についてステップS902で開口したときの時間ステップから、当該出銑口についてステップS908で閉塞したときの時間ステップまでの時間である。
【0100】
さらに、炉下部状態解析部702は、最大スラグレベルとスラグレベルの変動幅を導出する。例えば、炉下部状態解析部702は、ステップS905で導出したスラグレベルの最大値(高さ位置が最も高い値)を最大スラグレベルとして導出する。また、炉下部状態解析部702は、ステップS905で導出したスラグレベルの最大値から最小値を引いた値をスラグレベルの変動幅として導出する。ただし、前述したように、1日ではなく、出銑パターンの1周期よりも長い所定の期間において、最大スラグレベルとスラグレベルの変動幅を導出してもよい。
そして、
図9のフローチャートによる処理を終了する。
【0101】
次に、
図10のフローチャートを参照しながら、
図8のステップS803の処理の詳細の一例を説明する。
ステップS1001において、収束判定部703は、
図8のステップS801で設定された計算条件において、最大スラグレベルの上限値が指定されているか否かを判定する。この判定の結果、最大スラグレベルの上限値が指定されていない場合には、後述するステップS1005に進む。
一方、最大スラグレベルの上限値が指定されている場合には、ステップS1002に進む。ステップS1002に進むと、収束判定部703は、
図9のステップS911で導出された最大スラグレベルが、最大スラグレベルの上限値以下であるか否かを判定する。この判定の結果、最大スラグレベルが、最大スラグレベルの上限値以下でない場合、収束判定部703は、炉下部の状態が収束していないと判定する。そして、
図10のフローチャートによる処理を終了する。
【0102】
一方、最大スラグレベルが、最大スラグレベルの上限値以下である場合には、ステップS1003に進む。ステップS1003に進むと、収束判定部703は、
図8のステップS801で設定された計算条件において、スラグレベルの変動幅の上限値が指定されているか否かを判定する。
この判定の結果、スラグレベルの変動幅の上限値が指定されていない場合には、後述するステップS1006に進む。
一方、スラグレベルの変動幅の上限値が指定されている場合には、ステップS1004に進む。ステップS1004に進むと、収束判定部703は、
図9のステップS911で導出されたスラグレベルの変動幅が、スラグレベルの変動幅の上限値以下であるか否かを判定する。
【0103】
この判定の結果、スラグレベルの変動幅が、スラグレベルの変動幅の上限値以下でない場合、収束判定部703は、炉下部の状態が収束していないと判定する。そして、
図10のフローチャートによる処理を終了する。
一方、スラグレベルの変動幅が、スラグレベルの変動幅の上限値以下である場合、収束判定部703は、炉下部の状態が収束していると判定する。そして、
図10のフローチャートによる処理を終了する。
【0104】
前述したように、ステップS1001の判定の結果、最大スラグレベルの上限値が指定されていない場合には、ステップS1005に進む。ステップS1005に進むと、収束判定部703は、最大スラグレベルが最小値であるか否かを判定する。
この判定の結果、最大スラグレベルが最小値である場合には、前述したステップS1003に進む。
一方、最大スラグレベルが最小値でない場合、収束判定部703は、炉下部の状態が収束していないと判定する。そして、
図10のフローチャートによる処理を終了する。
【0105】
また、前述したように、ステップS1003の判定の結果、スラグレベルの変動幅の上限値が指定されていないと判定された場合には、ステップS1006に進む。ステップS1006に進むと、収束判定部703は、スラグレベルの変動幅が最小値であるか否かを判定する。
この判定の結果、スラグレベルの変動幅が最小値である場合、収束判定部703は、炉下部の状態が収束していると判定する。そして、
図10のフローチャートによる処理を終了する。
一方、スラグレベルの変動幅が最小値でない場合、収束判定部703は、炉下部の状態が収束していないと判定する。そして、
図10のフローチャートによる処理を終了する。
【0106】
ステップS1005(S1006)の具体例を説明すると、収束判定部703は、最大スラグレベル(スラグレベルの変動幅)が、予め設定されている下限値以下になった場合に、最大スラグレベル(スラグレベルの変動幅)が最小値であると判定することができる。この他、収束判定部703は、山登り法やGA(遺伝的アルゴリズム)等の公知の数理計画法における最適化探索手法を用いることにより、最大スラグレベル(スラグレベルの変動幅)の最小値を求めることもできる。
【0107】
次に、
図11のフローチャートを参照しながら、
図8のステップS804の処理(出銑方法変更処理)の詳細の一例を説明する。
ステップS1101において、出銑方法変更部704は、
図8のステップS801で設定された計算条件において、1日当たりの出銑回数が指定されており、且つ、
図9のステップS911で導出された1日当たりの出銑回数が指定回数を上回るか否かを判定する。
【0108】
この判定の結果、1日当たりの出銑回数が指定されていない場合、または、1日当たりの出銑回数が指定回数を上回らない場合には、後述するステップS1106に進む。
一方、1日当たりの出銑回数が指定されており、且つ、1日当たりの出銑回数が、1日当たりの出銑回数の指定値を上回る場合には、ステップS1102に進む。
【0109】
ステップS1102に進むと、出銑方法変更部704は、前回のステップS804(
図11のフローチャート)の処理で、ラップ時間T
Bを変更したか否かを判定する。この判定の結果、前回のステップS804の処理で、ラップ時間T
Bを変更した場合には、ステップS1103に進む。ステップS1103に進むと、出銑方法変更部704は、初期出銑口径D
0を1(mm)縮小する。そして、
図11のフローチャートによる処理を終了する。
【0110】
一方、前回のステップS804の処理で、ラップ時間T
Bを変更していない場合には、ステップS1104に進む。ステップS1104に進むと、出銑方法変更部704は、現在のラップ時間T
Bが1(min)以上であるか否かを判定する。この判定の結果、現在のラップ時間T
Bが1(min)以上でない場合には、前述したステップS1103に進み、出銑方法変更部704は、初期出銑口径D
0を1(mm)縮小し、
図11のフローチャートによる処理を終了する。
【0111】
一方、現在のラップ時間T
Bが1(min)以上である場合には、ステップS1105に進む。ステップS1105に進むと、出銑方法変更部704は、ラップ時間T
Bを1(min)短縮する。そして、
図11のフローチャートによる処理を終了する。
前述したように、ステップS1101において、1日当たりの出銑回数が指定されていない場合、または、1日当たりの出銑回数が指定回数を上回らないと判定された場合には、ステップS1106に進む。
【0112】
ステップS1106に進むと、出銑方法変更部704は、
図8のステップS801で設定された計算条件において、最大スラグレベルの上限値が指定されていないか、または、
図9のステップS911で導出された最大スラグレベルが、最大スラグレベルの上限値を上回るか、を判定する。この判定の結果、最大スラグレベルの上限値が指定されており、且つ、最大スラグレベルが、最大スラグレベルの上限値を上回らない場合には、後述するステップS1112に進む。
【0113】
一方、最大スラグレベルの上限値が指定されていない場合、または、最大スラグレベルが、最大スラグレベルの上限値を上回る場合には、ステップS1107に進む。
ステップS1107に進むと、出銑方法変更部704は、前回のステップS804(
図11のフローチャート)の処理で、初期出銑口径D
0を変更したか否かを判定する。この判定の結果、前回のステップS804の処理で、初期出銑口径D
0を変更していない場合には、後述するステップS1110に進む。
【0114】
一方、前回のステップS804の処理で、初期出銑口径D
0を変更した場合には、ステップS1108に進む。ステップS1108に進むと、出銑方法変更部704は、現在のラップ時間T
Bが、ステップS911で導出された1つの出銑口における1回当たりの出銑時間の0.5倍を下回るか否かを判定する。この判定の結果、現在のラップ時間T
Bが、1つの出銑口における1回当たりの出銑時間の0.5倍を下回らない場合には、後述するステップS1110に進む。
【0115】
一方、現在のラップ時間T
Bが、1つの出銑口における1回当たりの出銑時間の0.5倍を下回る場合には、ステップS1109に進む。ステップS1109に進むと、出銑方法変更部704は、ラップ時間T
Bを1(min)延長する。そして、
図11のフローチャートによる処理を終了する。
前述したように、ステップS1107において、前回のステップS804の処理で、初期出銑口径D
0を変更していないと判定された場合と、ステップS1108において、現在のラップ時間T
Bが、1つの出銑口における1回当たりの出銑時間の0.5倍を下回らないと判定された場合には、ステップS1110に進む。
【0116】
ステップS1110に進むと、出銑方法変更部704は、
図8のステップS801で設定された計算条件において、初期出銑口径D
0の上限値が指定されており、且つ、現在の初期出銑口径D
0が、初期出銑口径D
0の上限値を下回るか否かを判定する。
この判定の結果、初期出銑口径D
0の上限値が指定されていない場合、または、現在の初期出銑口径D
0が、初期出銑口径D
0の上限値を下回らない場合には、
図11のフローチャートによる処理を終了する。
一方、初期出銑口径D
0の上限値を下回る場合には、ステップS1111に進む。ステップS1111に進むと、出銑方法変更部704は、初期出銑口径D
0を1(mm)拡大する。そして、
図11のフローチャートによる処理を終了する。
【0117】
前述したように、ステップS1106において、最大スラグレベルの上限値が指定されており、且つ、最大スラグレベルが、最大スラグレベルの上限値を上回らないと判定された場合には、ステップS1112に進む。ステップS1112に進むと、出銑方法変更部704は、
図8のステップS801で設定された計算条件において、スラグレベルの変動幅の上限値が指定されていないか、または、
図9のステップS911で導出されたスラグレベルの変動幅が、スラグレベルの変動幅の上限値を上回るか、を判定する。この判定の結果、スラグレベルの変動幅の上限値が指定されており、且つ、スラグレベルの変動幅が、スラグレベルの変動幅の上限値を上回らない場合には、
図11のフローチャートによる処理を終了する。
一方、スラグレベルの変動幅の上限値が指定されていない場合、または、スラグレベルの変動幅が、スラグレベルの変動幅の上限値を上回る場合には、前述したステップS1107に進む。
【0118】
(実施例)
次に、実施例を説明する。
[実施例1]
内容積が5775(m
3)の高炉に、コークス比が300(kg/t)、微粉炭比が180(kg/t)、還元材比が480(kg/t)、スラグ比が313(kg/t)の条件で原料が装入され、且つ、
図2に示す位置関係にある出銑口1TH〜3THからこの順でパラレル出銑を行うものとした場合であって、1日当たりの出銑量(t/d)、炉下部のコークスの粒径(mm)、炉下部の空隙率(%)を変更した場合の、最大スラグレベルおよびスラグレベルの変動幅を、前述した本実施形態のスラグレベル推定モデルを用いて計算した。この際、初期出銑口径D
0を60(mm)として前述した(8)式で出銑口直径Dを計算した。また、出銑口深度Lを4(m)とし、出銑口の表面粗さeを1(mm)とした。
その結果を、表3に示す。出銑口基準の最大スラグレベル(出銑口の高さ位置を基準とした最大スラグレベル)は、0.77(m)〜1.46(m)であり、出銑口基準の羽口レベル(出銑口の高さ位置を基準とした送風羽口の高さ位置)である5.3mに対し十分に小さいものであり、安定した高炉操業が可能となることが分かる。
【0120】
(実施例2)
内容積が5775(m
3)の高炉において、コークス比が300(kg/t)、微粉炭比が(180kg/t)、還元材比が480(kg/t)、スラグ比が313(kg/t)の条件で原料が装入され、且つ、
図2に示す位置関係にある出銑口1TH〜3THからこの順でパラレル出銑を行うものとした場合であって、炉下部のコークスの粒径を30(mm)、炉下部の空隙率を30(%)、1日当たりの出銑回数の指定回数を12(回)および10(回)とした場合の、最大スラグレベルおよびスラグレベルの変動幅を、前述した本実施形態のスラグレベル推定モデルを用いて計算した。この際、出銑口基準の最大スラグレベルの上限値を1.7(m)とした。また、初期出銑口径D
0を60(mm)として前述した(8)式で出銑口直径Dを計算した。また、出銑口深度Lを4(m)とし、出銑口の表面粗さeを1(mm)とした。
【0121】
その結果を表4に示す。1日当たりの出銑回数の指定回数が12(回)の場合には、初期出銑口径が74(mm)、ラップ時間が13(min)となった。また、1日当たりの出銑回数の指定回数が10(回)の場合には、初期出銑口径が76(mm)、ラップ時間が6(min)となった。何れの場合も、出銑口基準の最大スラグレベルが1.7m以下となり、安定した高炉操業が可能となることが分かる。
【0123】
(まとめ)
前述したように従来は、炉内で生成される溶銑・溶融スラグの量を、高炉に装入される鉄鉱石の量から算出し、出銑口から排出される溶銑の量を、受銑容器(トーピードカー)の秤量により測定し、出銑口から排出される溶融スラグの量を、水砕のコンベアの秤量により測定していた。しかしながら、秤量のタイミングのずれや、秤量誤差等により正確な管理が困難であった。
また、非特許文献1に記載の技術では、同時に出銑することが可能な出銑口の数が1つである場合の炉下部の状態を計算することはできるが、複数の出銑口から同時に出銑することが可能な出銑形態で出銑を行う場合の炉下部の状態の計算はできない。
【0124】
これに対して本実施形態では、炉下部における溶銑・溶融スラグの流速の分布を各時間ステップにおいて導出し、導出した流速の分布に基づいて、溶銑・溶融スラグを移動し、移動後のスラグレベルを導出する。この際、ラップ時間T
Bと、出銑作業を行う出銑口1TH〜3THの順序とに基づいて各出銑口1TH〜3THを開口するタイミングを判定し、出銑口を開口するタイミングになると初期出銑口径D
0で当該出銑口が開口する状態にする。また、スラグレベルが出銑口の高さ位置に達した場合、当該出銑口が閉塞する状態にする。このようにして1日の操業におけるスラグレベルの変動を導出し、最大スラグレベル、スラグレベルの変動幅、初期出銑口径D
0とのうち、予め指定されたものが所定の条件を満足するようになるラップ時間T
Bと初期出銑口径D
0を探索する。
【0125】
したがって、複数の出銑口から同時に出銑する出銑形態であっても、炉下部の状態を高精度に推定することができる。したがって、炉下部におけるにおける最大スラグレベルとスラグレベルの変動幅を低減することが可能な出銑方法を導出することができる。
【0126】
(変形例)
[変形例1]
本実施形態では、高炉状態解析装置700が、ラップ時間T
Bと初期出銑口径D
0の変更を、
図11に示す所定のアルゴリズムに基づいて自動的に行う場合を例に挙げて説明した(
図11を参照)。しかしながら、炉下部の状態が収束したか否かの判定の結果、炉下部の状態が収束していない場合、オペレータが、高炉状態解析装置700のユーザインターフェースに対して入力操作を行うことにより、ラップ時間T
Bと初期出銑口径D
0の少なくとも何れか一方の変更値を入力してもよい。例えば、
図11のフローチャートによる手順をオペレータ自身の判断で行ってもよいが、その他の手順で変更値を定めてもよい。このことは、ラップ時間T
Bと初期出銑口径D
0の変更を高炉状態解析装置700が自動的に行う場合も同様である。例えば、
図11のステップS1101の判定を、
図8のステップS802とステップS803との間で行い、1日当たりの出銑回数が指定されており、且つ、
図9のステップS911で導出された1日当たりの出銑回数が指定回数を上回る場合には、
図11のステップS1102に進み、そうでない場合であって、ステップS803で炉下部の状態が収束していないと判定された場合には、
図11のステップS1106に進むようにしてもよい。
【0127】
[変形例2]
本実施形態では、ラップ時間T
Bと初期出銑口径D
0の双方を変更し得る場合を例に挙げて説明した(
図11を参照)。しかしながら、ラップ時間T
Bと初期出銑口径D
0の一方を固定し、他方を変更してもよい。本変形例は、高炉状態解析装置700が変更を自動的に行う場合と、オペレータが変更値の入力を行う場合の双方に適用される。
[変形例3]
本実施形態では、最大スラグレベルの上限値およびスラグレベルの変動幅の上限値を指定し、最大スラグレベルおよびスラグレベルの変動幅が、それぞれ上限値以下であるか否かを判定する場合を例に挙げて説明した(
図10のS1001〜S1004を参照)。しかしながら、最大スラグレベルの上限値およびスラグレベルの変動幅の上限値を指定せずに、最大スラグレベルおよびスラグレベルの変動幅が、それぞれ最小値である場合に、炉下部の状態が収束したと判定し、そうでない場合には、炉下部の状態が収束していないと判定してもよい。また、これとは逆に、最大スラグレベルおよびスラグレベルの変動幅が、それぞれ最小値であるか否かを判定せずに、最大スラグレベルおよびスラグレベルの変動幅が、それぞれ上限値以下であるか否かを判定してもよい。このように、スラグレベルの状態が操業上要求される所定の条件を満たすか否かを判定していれば、炉下部の状態が収束したか否かを判定する手法は、本実施形態で説明した手法に限定されない。
【0128】
[変形例4]
本実施形態では、初期出銑口径D
0、出銑口深度Lおよび出銑口の表面粗さeが出銑口に関わらず同じ値である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、これらの少なくとも1つを出銑口ごとに異ならせてもよい。また、初期出銑口径D
0(m)を、出銑口の直径の初期値としたが、直径の代わりに半径を用いてもよい。このように、初期出銑口径は、出銑口の開口径の初期値であればよい。
[変形例5]
本実施形態では、出銑に利用する出銑口の数が3つである場合を例に挙げて説明した。しかしながら、出銑に利用する出銑口の数は2つ以上であれば、幾つであってもよい。出銑に利用する出銑口の数が2つである場合、出銑形態としてパラレル出銑を含めてもよいが、出銑形態をパラレル出銑にすると、2つの出銑口を常に開口することになる。したがって、出銑に利用する出銑口の数が2つである場合には、出銑形態が、「溜め出し出銑」、「タッチ出銑」および「ラップ出銑」の何れかになるように、ラップ時間T
Bと初期出銑口径D
0を探索するのが好ましい。また、出銑に利用する出銑口の数がN(Nは3以上の整数)である場合には、常に(N−1)の出銑口から出銑が行われる出銑形態を採用することができる。例えば、出銑に利用する出銑口の数が4つである場合には、常に3つの出銑口から出銑が行われる出銑形態を採用することができる。
【0129】
[変形例6]
本実施形態では、連続の式と運動量保存式を有限体積法により差分化する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、炉下部における溶銑・溶融スラグの流速および圧力を数値解析により計算していれば、必ずしも有限体積法を用いる必要はない。例えば、有限差分法を用いてもよい。
[変形例7]
本実施形態では、VOF法を用いて、体積存在率f
iを導出し、溶融スラグと気体との界面の高さ位置と、溶融スラグと溶銑との界面の高さ位置とを導出する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、界面の高さ位置を移流方程式に基づき数値解析により計算していれば、必ずしも、VOF法を用いる必要はない。例えば、ALE(Arbitrary Lagrangian and Eulerian)法を用いてもよい。
【0130】
[変形例8]
本実施形態では、1日当たりの出銑回数が指定回数を上回るか否かを判定する場合を例に挙げて説明した(
図11のステップS1101)。しかしながら、出銑回数を求める期間は、必ずしも1日である必要はなく、1日よりも短い期間でも長い期間でもよい。
[変形例9]
本実施形態では、3次元の解析を行う場合を例に挙げて説明した。しかしながら、例えば、高炉の高さ方向と、当該高炉の高さ方向に垂直な方向とにより定まる2次元の解析を行うようにしてもよい。
[変形例10]
本実施形態では、炉下部の状態が収束したか否かを判定し、炉下部の状態が収束していない場合には、初期出銑口径D
0およびラップ時間T
Bの何れか一方を修正する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこれらの処理を行わなくてもよい。例えば、或る初期出銑口径D
0およびラップ時間T
Bにおける最大スラグレベルおよびスラグレベルの変動幅を確認することを目的とする場合には、これらの処理を行わなくてもよい。
【0131】
[その他の変形例]
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0132】
(請求項との関係)
[請求項1、8]
設定手段は、例えば、計算条件設定部701を用いることにより実現される(
図8のステップS801、および、変形例5も参照)。
開口タイミング判定手段は、例えば、炉下部状態解析部702を用いることにより実現される(
図9のステップS901も参照)。
速度分布導出手段は、例えば、炉下部状態解析部702を用いることにより実現される(
図9のステップS902、S903、S906、S908、スラグレベル推定モデルの説明((1)式〜(8)式)、および、変形例6も参照)。
スラグレベル導出手段は、例えば、炉下部状態解析部702を用いることにより実現される(
図9のステップS905、S906、スラグレベル推定モデルの説明((9)式)、および、変形例7も参照)。
閉塞タイミング判定手段は、例えば、炉下部状態解析部702を用いることにより実現される(
図9のステップS907、および、スラグレベル推定モデルの説明も参照)。
[請求項2]
収束判定手段は、例えば、収束判定部703を用いることにより実現される(
図8のステップS803、スラグレベル推定モデルの説明、および、変形例3、10も参照)。
[請求項3]
最大スラグレベル導出手段およびスラグレベル変動幅導出手段は、例えば、炉下部状態解析部702を用いることにより実現される(
図9のステップS911も参照)。
最大スラグレベル判定手段は、例えば、収束判定部703を用いることにより実現される(
図10のステップS1002、S1005も参照)。
スラグレベル変動幅判定手段は、例えば、収束判定部703を用いることにより実現される(
図10のステップS1004、S1006も参照)。
[請求項4、6、7]
出銑方法変更手段は、例えば、出銑方法変更部704を用いることにより実現される(
図8のステップS804、
図11、および変形例1、2も参照)。
[請求項5]
出銑回数導出手段は、例えば、炉下部状態解析部702を用いることにより実現される(
図9のステップS911、および、変形例8も参照)。
前記出銑方法変更手段は、例えば、出銑方法変更部704を用いることにより実現される(
図8のステップS804、
図11のステップS1101〜1105、および変形例1も参照)。