特許第6394354号(P6394354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394354
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】車両用自動変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/66 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   F16H3/66 B
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-253559(P2014-253559)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-114162(P2016-114162A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】中村 栄希
(72)【発明者】
【氏名】高木 清春
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 篤弘
【審査官】 藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−222071(JP,A)
【文献】 特開2012−016988(JP,A)
【文献】 特開2015−161401(JP,A)
【文献】 特開2015−200326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
シングルピニオン式の第1プラネタリ機構、シングルピニオン式又はダブルピニオン式の第2プラネタリ機構、及びシングルピニオン式の第3プラネタリ機構が、前記ハウジングに回転軸線と同軸に支承され、前記第2プラネタリ機構がシングルピニオン式の場合、速度線図の並び順で第2サンギヤ、第2キャリア、第2リングギヤを第1要素、第2要素、第3要素とし、ダブルピニオン式の場合、速度線図の並び順で第2キャリア、第2リングギヤ、第2サンギヤを第1要素、第2要素、第3要素とし、それらのうち前記第1プラネタリ機構の第1リングギヤと前記第3プラネタリ機構の第3サンギヤとが互いに連結され、前記第2プラネタリ機構の第1要素と前記第3プラネタリ機構の第3リングギヤとが互いに連結された3個のプラネタリ機構と、
前記ハウジングに前記回転軸線回りに回転可能に支承され、前記第1プラネタリ機構の第1キャリアに連結された入力軸と、
前記ハウジングに前記回転軸線回りに回転可能に支承され、前記第3プラネタリ機構の第3キャリアに連結された出力軸と、
前記第1プラネタリ機構の第1サンギヤを前記ハウジングに係脱可能に固定する第1ブレーキと、
互いに連結された前記第1要素と前記第3リングギヤとを前記ハウジングに係脱可能に固定する第2ブレーキと、
前記第3要素を前記ハウジングに係脱可能に固定する第1ポジション、前記第3要素を前記第1要素及び前記第3リングギヤに係脱可能に固定する第2ポジション、又は前記第3要素を前記ハウジング並びに前記第1要素及び前記第3リングギヤに対し拘束されない状態にする第3ポジションの切り替え選択が可能な切替クラッチと、
前記第1キャリアと前記第3要素とを係脱可能に連結する第1クラッチと、
前記第1サンギヤと前記第3要素とを係脱可能に連結する第2クラッチと、
前記第1リングギヤと前記第2要素とを係脱可能に連結する第3クラッチと、
前記第2要素と前記第3キャリアとを係脱可能に連結する第4クラッチと、を備え、
後進変速段形成時、
前記第1ブレーキは、前記第1サンギヤを前記ハウジングに固定し、
前記切替クラッチは、前記第3要素を前記ハウジングに固定し、
前記第4クラッチは、前記第2要素と前記第3キャリアとを連結する、車両用自動変速機。
【請求項2】
前記シングルピニオン式の第1プラネタリ機構、第2プラネタリ機構及び第3プラネタリ機構は、この順序で前記入力軸側から前記出力軸側に向かって順次並列に配置され、
前記第1ブレーキは、前記第1サンギヤに連結された第1ブレーキ連結部材を介して前記第1サンギヤの回転を制動し、
前記切替クラッチは、前記第3要素に連結された第1クラッチ連結部材を介して前記第3要素の回転を制動し、
前記第4クラッチは、前記第3キャリアに連結された第4クラッチ連結部材を介して、前記第3キャリアに連結されているとともに、前記第2要素に前記入力軸側で連結された第4クラッチ連結部材を介して、前記第2要素と前記第3キャリアとを係脱可能に連結する、請求項1に記載の車両用自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジン等が出力する回転駆動力を変速する車両用自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記に示す特許文献1,2に記載の車両用自動変速機は、3つのシングルピニオン式プラネタリ機構並びに6つの係合要素、すなわち2つのブレーキ及び4つのクラッチで構成され、そのうちの3要素を係合させることで、前進10速段、後進1速段の変速段を形成している。図7に示すように、第1、第2、第3プラネタリ機構P11,P12,P13は、入力軸N側から出力軸T側に向かって順次並列に配置されている。以下の説明では、第1、第2、第3プラネタリ機構P11,P12,P13を構成する各要素は、第1、第2、第3ピニオンQ11,Q12,Q13を支承する第1、第2、第3キャリアC11,C12,C13、第1、第2、第3サンギヤS11,S12,S13及び第1、第2、第3リングギヤR11,R12,R13と称する。
【0003】
第2キャリアC12は、入力軸Nと連結している。第2リングギヤR12は、第3サンギヤS13と連結している。第2サンギヤS12は、第1ブレーキB11によりハウジングHとの固定を選択可能であり且つ第2クラッチCL12により第1サンギヤS11との連結を選択可能である。第2キャリアC12は、第1クラッチCL11により第1サンギヤS11との連結を選択可能である。
【0004】
第2リングギヤR12は、第3クラッチCL13により第1キャリアC11との連結を選択可能である。第1リングギヤR11は、第3キャリアC13と連結している。第1キャリアC11は、第4クラッチCL14により第3リングギヤR13との連結を選択可能である。第3リングギヤR13は、第2ブレーキB12によりハウジングHとの固定を選択可能である。第3キャリアC13は、出力軸Tと連結している。
【0005】
図8は、各変速段に対応する各クラッチCL11,CL12,CL14及び各ブレーキB11,B12の作動状態を示しており、欄に丸印が付されている場合、係合状態にあることを示す。図9は、後進変速段形成時における第1、第2、第3プラネタリ機構P11,P12,P13を構成する各要素であるサンギヤS11,S12,S13、キャリアC11,C12,C13、リングギヤR11,R12,R13を横軸方向にギヤ比λ1,λ2,λ3に対応させた間隔で配置し、縦軸方向に各要素に対応してその回転速度比を取った回転速度線図を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7828688号明細書
【特許文献2】米国特許第7131926号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9に示すように、特許文献1,2に示される車両用自動変速機12では、後進変速段形成時に、第1クラッチCL11を係合状態にして入力軸Nの回転駆動力を第1サンギヤS11に入力する。そして、第4クラッチCL14を係合状態にして第1キャリアC11と第3リングギヤR13とを連結し、第2ブレーキB12を係合状態にして第1キャリアC11を固定することにより、第1リングギヤR11に逆回転駆動力を作り出す。この第1リングギヤR11の逆回転駆動力は、第3キャリアC13を介して出力軸Tに出力される。つまり、この車両用自動変速機12では、第1プラネタリ機構P11への入力と第1プラネタリ機構P11へのブレーキの作動のみで逆回転駆動力を作り出している。
【0008】
そして、第3サンギヤS13は、第3リングギヤR13が固定され、第3キャリアC13が逆回転しているため、受動的に第3キャリアC13よりも増速で逆回転となる。そして、第2リングギヤR12は、第3サンギヤS13と連結しているので逆回転となり、第2キャリアC12は、入力軸Nの回転が入力されているため、第2サンギヤS12は、高速回転に晒される。すなわち、第2サンギヤS12の回転速度比は、ギヤ比λ2(=第2サンギヤS12の歯数/第2リングギヤR12の歯数)の逆数と、第2リングギヤR12の回転速度比の絶対値及び入力回転速度比の和とを積算した値に、入力回転速度比を加算した値Hとなる。
【0009】
よって、第2サンギヤS12を第1サンギヤS11に係脱可能な第2クラッチCL12及びハウジングHに係脱可能な第1ブレーキB11は、相対回転速度が大きくなって焼け等が発生し易くなる。また、第2サンギヤS12を支持している軸受等は、耐久性の低下が著しくなる。また、第2サンギヤS12に連結している軸に油路を形成している場合は、軸上に設置されているシーリングの耐久性も問題になるおそれがある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、後進変速段形成時におけるギヤの高速回転化を抑制できる車両用自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の車両用自動変速機は、ハウジングと、シングルピニオン式の第1プラネタリ機構、シングルピニオン式又はダブルピニオン式の第2プラネタリ機構、及びシングルピニオン式の第3プラネタリ機構が、前記ハウジングに回転軸線と同軸に支承され、前記第2プラネタリ機構がシングルピニオン式の場合、速度線図の並び順で第2サンギヤ、第2キャリア、第2リングギヤを第1要素、第2要素、第3要素とし、ダブルピニオン式の場合、速度線図の並び順で第2キャリア、第2リングギヤ、第2サンギヤを第1要素、第2要素、第3要素とし、それらのうち前記第1プラネタリ機構の第1リングギヤと前記第3プラネタリ機構の第3サンギヤとが互いに連結され、前記第2プラネタリ機構の第1要素と前記第3プラネタリ機構の第3リングギヤとが互いに連結された3個のプラネタリ機構と、前記ハウジングに前記回転軸線回りに回転可能に支承され、前記第1プラネタリ機構の第1キャリアに連結された入力軸と、前記ハウジングに前記回転軸線回りに回転可能に支承され、前記第3プラネタリ機構の第3キャリアに連結された出力軸と、前記第1プラネタリ機構の第1サンギヤを前記ハウジングに係脱可能に固定する第1ブレーキと、互いに連結された前記第1要素と前記第3リングギヤとを前記ハウジングに係脱可能に固定する第2ブレーキと、前記第3要素を前記ハウジングに係脱可能に固定する第1ポジション、前記第3要素を前記第1要素及び前記第3リングギヤに係脱可能に固定する第2ポジション、又は前記第3要素を前記ハウジング並びに前記第1要素及び前記第3リングギヤに対し拘束されない状態にする第3ポジションの切り替え選択が可能な切替クラッチと、前記第1キャリアと前記第3要素とを係脱可能に連結する第1クラッチと、前記第1サンギヤと前記第3要素とを係脱可能に連結する第2クラッチと、前記第1リングギヤと前記第2要素とを係脱可能に連結する第3クラッチと、前記第2要素と前記第3キャリアとを係脱可能に連結する第4クラッチと、を備え、後進変速段形成時、前記第1ブレーキは、前記第1サンギヤを前記ハウジングに固定し、前記切替クラッチは、前記第3要素を前記ハウジングに固定し、前記第4クラッチは、前記第2要素と前記第3キャリアとを連結する、ことを要旨とする。
【0012】
この構成の車両用自動変速機では、後進変速段形成時に、第2プラネタリ機構の第2要素に逆回転駆動力を作り出し、この逆回転駆動力は、第3プラネタリ機構の第3キャリアを介して出力軸に出力される。第2プラネタリ機構の第1要素及び第3プラネタリ機構の第3リングギヤは、同一回転で、第3プラネタリ機構の第3キャリアの回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第2プラネタリ機構の第1要素の回転は、第2プラネタリ機構の第3要素が固定され、第2プラネタリ機構の第2要素が出力回転であるので、従来の車両用自動変速機と比較して高速回転に達することはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の車両用自動変速機の実施形態を模式的に示したスケルトン図である。
図2】本実施形態の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
図3】本実施形態の各変速段におけるプラネタリ機構を構成する各要素の回転速度比を示す速度線図である。
図4】本実施形態の後進変速段形成時におけるプラネタリ機構を構成する各要素の回転速度比を示す速度線図である。
図5】本実施形態の切替クラッチのポジションが異なる後進変速段形成時における係合要素が受けるトルクの分担比を示す図である。
図6】本実施形態の変形例の車両用自動変速機を模式的に示したスケルトン図である。
図7】従来の車両用自動変速機のスケルトン図である。
図8】従来の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
図9】従来の後進変速段形成時におけるプラネタリ機構を構成する各要素の回転速度比を示す速度線図である。
図10】比較例の車両用自動変速機を模式的に示したスケルトン図である。
図11】比較例の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態の車両用自動変速機の機械構成)
以下、本発明の車両用自動変速機を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。実施形態において、車両用自動変速機は、車両に搭載されたエンジンが出力する回転駆動力を変速する装置として用いられる。車両は、車両用自動変速機により変速された回転駆動力が差動装置などを介して駆動輪に伝達され、車両用自動変速機において成立した所定の変速段で前進または後進するように構成される。
【0015】
車両用自動変速機1の概略構成について図1を参照して説明する。車両用自動変速機1は、入力側(図1の左側)から出力側(図1の右側)に向かって軸方向に沿って並設された3つのシングルピニオン式のプラネタリ機構P1,P2,P3と、各プラネタリ機構P1,P2,P3を構成する要素同士を選択的に係脱可能に連結する4つのクラッチCL1,CL2,CL3,CL4と、所定の要素をハウジングHに係脱可能に固定する2つのブレーキB1,B2とを備える。
【0016】
さらに、所定の要素をハウジングHに係脱可能に固定する第1ポジションa、所定の要素同士を係脱可能に固定する第2ポジションc、もしくはハウジングH及び所定の要素に対しフリー状態にする第3ポジションbに切替可能な切替クラッチDと、所定の要素同士を連結する部材5,6と、各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4と所定の要素とを連結するための部材U11,U21,U31,U41,U12,U22,U32,U42と、各ブレーキB1,B2と所定の要素とを固定するための部材V1,V2と、入力軸Nと、出力軸Tとを備える。
【0017】
また、この車両用自動変速機1は、車両のECU2による制御信号に基づいて各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4及び各ブレーキB1,B2からなる係合要素、並びに切替クラッチDの作動状態を制御される。そして、本実施形態においては、上記係合要素のうち3つ又は2つの係合要素、及び切替クラッチDを作動させることによって、入力軸Nから入力される回転駆動力を、前進12速段及び後進1速段の何れかに変速して、出力軸Tから出力可能な構成となっている。車両用自動変速機1おける係合要素の作動状態と成立する変速段に関する詳細については後述する。
【0018】
入力軸N及び出力軸Tは、ハウジングHに、回転軸線L周りに回転可能に支承される。入力軸Nは、図略のクラッチ装置などを介してエンジンの回転駆動力を車両用自動変速機1に入力する軸部材である。出力軸Tは、入力軸Nと同軸上に配置され、変速されたエンジンの回転駆動力を図略の差動装置などを介して駆動輪に出力する軸部材である。
【0019】
各プラネタリ機構P1、P2,P3は、キャリアC1、C2,C3に回転可能に支持されたピニオンギヤQ1、Q2,Q3がサンギヤS1、S2,S3及びリングギヤR1、R2,R3に噛合するシングルピニオン式であり、入力側から順に第1、第2、第3プラネタリ機構P1,P2,P3と称する。そして、各プラネタリ機構P1,P2,P3の各要素は、第1、第2、第3サンギヤS1,S2,S3、第1、第2、第3キャリアC1,C2,C3、第1、第2、第3リングギヤR1,R2,R3と称する。なお、この第1実施形態においては、シングルピニオン式の第2プラネタリ機構P2を用いているため、第2プラネタリ機構P2の各要素は、図3に示す速度線図の並び順で、第2サンギヤS2が本発明の「第1要素」に相当し、第2キャリアC2が本発明の「第2要素」に相当し、第2リングギヤR2が本発明の「第3要素」に相当する。
【0020】
第1プラネタリ機構P1は、第1サンギヤS1、複数の第1ピニオンQ1、第1キャリアC1及び第1リングギヤR1で構成される。第1サンギヤS1は、複数の第1ピニオンQ1と噛合され、複数の第1ピニオンQ1は、第1キャリアC1に支承されるとともに、第1リングギヤR1と噛合される。第1リングギヤR1は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承される。
【0021】
第2プラネタリ機構P2は、第2サンギヤS2、複数の第2ピニオンQ2、第2キャリアC2及び第2リングギヤR2で構成される。第2サンギヤS2は、複数の第2ピニオンQ2と噛合され、複数の第2ピニオンQ2は、第2キャリアC2に支承されるとともに、第2リングギヤR2と噛合される。第2キャリアC2は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承される。
【0022】
第3プラネタリ機構P3は、第3サンギヤS3、複数の第3ピニオンQ3、第3キャリアC3及び第3リングギヤR3で構成される。第3サンギヤS3は、複数の第3ピニオンQ3と噛合され、複数の第3ピニオンQ3は、第3キャリアC3に支承されるとともに、第3リングギヤR3と噛合される。第3サンギヤS3は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承される。
【0023】
第1リングギヤR1及び第3サンギヤS3は、第1サンギヤS1の内側を通って軸線方向に沿って延在する第1ギヤ連結部材5を介して連結される。
第2サンギヤS2及び第3リングギヤR3は、第2サンギヤS2及び第3リングギヤR3の外側を通って軸線方向に沿って延在する第2ギヤ連結部材6を介して連結される。なお、詳細は後述するが、第2ギヤ連結部材6には、切替クラッチDの構成部材が設けられている。
【0024】
各ブレーキB1,B2は、ハウジングHに設けられ、所定の要素の回転を制動する係合要素である。本実施形態では、各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4と同様に、ハウジングHに形成された油路から供給される油圧によって作動する油圧式としている。これにより、各ブレーキB1,B2は、例えばECU2による制御指令に基づいて作動する油圧ポンプから油圧を供給されると、図示しないディスクにパッドを押圧して、対象とする所定の要素の回転を制動する。そして、油圧ポンプによる油圧の供給が遮断されると、ディスクからパッドを離間させて、所定の要素の回転を許容する。
【0025】
第1ブレーキB1は、第1ブレーキ連結部材V1に連結される第1サンギヤS1の回転を、第1ブレーキ連結部材V1を介して制動する。
第2ブレーキB2は、第2ブレーキ連結部材V2に連結される第3リングギヤR3の回転を、第2ブレーキ連結部材V2を介して制動するとともに、第2ギヤ連結部材6に連結される第2サンギヤS2の回転を、第2ギヤ連結部材6に連結される第2ブレーキ連結部材V2を介して制動する。
【0026】
各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4は、複数の要素同士を選択的に連結可能な係合要素である。本実施形態では、各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4は、常開型であり、供給される油圧によって作動する油圧式としている。これにより、各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4は、例えばECU2による制御指令に基づいて作動する油圧ポンプから入力軸NやハウジングHに形成された油路を介して油圧を供給されると、図示しない複数のクラッチ板を接触させて、対象の要素間で駆動力が伝達されるように要素同士を連結する。そして、上記の油圧ポンプによる油圧の供給が遮断されると、クラッチ板同士を離間させて、対象の要素間で駆動力が伝達されないように要素同士を離脱させる。
【0027】
第1クラッチCL1の一方は、第1クラッチ連結部材U11を介して、第1キャリアC1に連結され、第1クラッチCL1の他方は、第1クラッチ連結部材U12を介して、第2リングギヤR2に連結される。第1クラッチCL1は、第1キャリアC1と第2リングギヤR2とを係脱可能に連結する。なお、詳細は後述するが、第1クラッチ連結部材U12には、切替クラッチDの構成部材が設けられている。
【0028】
第2クラッチCL2の一方は、第1ブレーキ連結部材V1に連結される第2クラッチ連結部材U21を介して、第1サンギヤS1に連結され、第2クラッチCL2の他方は、第1クラッチ連結部材U12に連結される第2クラッチ連結部材U22を介して、第2リングギヤR2に連結される。第2クラッチCL2は、第1サンギヤS1と第2リングギヤR2とを係脱可能に連結する。
【0029】
第3クラッチCL3の一方は、第3クラッチ連結部材U31を介して、第2キャリアC2に連結され、第3クラッチCL3の他方は、第1ギヤ連結部材5に連結される第3クラッチ連結部材U32を介して、第1リングギヤR1及び第3サンギヤS3に連結される。第3クラッチCL3は、第1リングギヤR1及び第3サンギヤS3と第2キャリアC2とを係脱可能に連結する。
【0030】
第4クラッチCL4の一方は、第4クラッチ連結部材U41を介して、第3キャリアC3に連結され、第4クラッチCL4の他方は、第3クラッチ連結部材U31に連結される第4クラッチ連結部材U42を介して、第3キャリアC3に連結される。第4クラッチCL4は、第2キャリアC2と第3キャリアC3とを係脱可能に連結する。
【0031】
切替クラッチDは、第2リングギヤR2を第1クラッチ連結部材U12を介してハウジングHに係脱可能に固定する第1ポジションa、第2リングギヤR2を第2ギヤ連結部材6に連結される第2サンギヤS2及び第3リングギヤR3に係脱可能に固定する第2ポジションc、又は第2リングギヤR2をハウジングH並びに第2サンギヤS2及び第3リングギヤR3に対しフリー状態にする第3ポジションbを切り替える。
【0032】
この切替クラッチDとしては、例えば、ドグクラッチ、湿式クラッチ、シンクロ機構等が使用可能であり、切替クラッチDの駆動源Mとしては、例えば、油圧やモータ等が使用可能である。切替クラッチDが、ドグクラッチの場合、第1クラッチ連結部材U12には、軸方向にスライド可能なギヤD1が設けられ、ハウジングHには、ギヤD1と噛合可能なギヤD2が設けられ、第2ギヤ連結部材6には、ギヤD1と噛合可能なギヤD3が設けられる。
【0033】
入力軸Nは、回転軸線Lから外側に向けて延在し、第1リングギヤR1の外側を通って軸線方向に向けて延在する入力軸連結部材3を介して第1キャリアC1に連結される。
出力軸Tは、回転軸線Lから外側に向けて延在する出力軸連結部材4を介して第3キャリアC3に連結される。
【0034】
(実施形態の車両用自動変速機の作動)
上述の車両用自動変速機1は、第1、第2、第3、第4クラッチCL1,CL2,CL3,CL4、第1及び第2ブレーキB1,B2及び切替クラッチDを選択的に作動して第1、第2、第3プラネタリ機構P1,P2,P3の要素の回転を規制することにより、前進12段、後進1段の変速段を成立することができる。図2において、各変速段に対応する各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4、各ブレーキB1,B2、切替クラッチDの作動状態を示しており、各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4及びブレーキB1,B2の欄に丸印が付されている場合、係合状態にあることを示し、切替クラッチDの欄にaが付されている場合、図1においてaとD2が係合状態、cが付されている場合、図1においてcとD3が係合状態、切替クラッチDの欄にbが付されている場合、いずれの要素とも係合していない状態にあることを示す。
【0035】
例えば、車両用自動変速機1における第1速段は、係合表(図2参照)によると、第1クラッチCL1、第3クラッチCL3及び第2ブレーキB2が係合状態にあり、切替クラッチDがb状態、すなわち解放状態にある。この状態では、第1クラッチCL1により、第1キャリアC1及び第2リングギヤR2が一体回転し、第3クラッチCL3により、第1リングギヤR1、第2キャリアC2及び第3サンギヤS3が一体回転する。第1キャリアC1から出力された入力軸Nの回転駆動力は、第2サンギヤS2が第2ブレーキB2により固定されているので、第2キャリアC2から第3サンギヤS3に伝達される。第3サンギヤS3から入力された回転駆動力は、第3リングギヤR3は第2ブレーキB2により固定されているので歯数に応じた変速比で減速され、第3キャリアC3から出力軸連結部材4を介して出力軸Tに伝達される。
【0036】
そして、車両用自動変速機1が第1速段から第2速段に移行するには、第3クラッチCL3及び第2ブレーキB2の係合状態並びに切替クラッチDのb状態(解放状態)を維持しつつ、第1クラッチCL1を解放状態にするとともに第2クラッチCL2を係合状態にする切り替えを行う。この状態では、第2クラッチCL2により、第1サンギヤS1及び第2リングギヤR2が一体回転し、第3クラッチCL3により、第1リングギヤR1、第2キャリアC2及び第3サンギヤS3が一体回転する。第1キャリアC1から出力された入力軸Nの回転駆動力は、第1サンギヤS1及び第1リングギヤR1に分担される。第1サンギヤS1から出力された回転駆動力は、第2サンギヤS2が第2ブレーキB2により固定されているので、第2キャリアC2から第3サンギヤS3に伝達される。第3サンギヤS3から入力された回転駆動力は、第3リングギヤR3が第2ブレーキB2により固定されているので歯数に応じた変速比で減速され、第3キャリアC3から出力軸連結部材4を介して出力軸Tに伝達される。
【0037】
このように、車両用自動変速機1は、6つの係合要素のうち3つの係合要素を選択的に係合状態にするとともに、切替クラッチDのb状態(解放状態)を維持することによって、図3の速度線図に示すように、第1速(1st)から第8速(8th(b))までの変速比となる変速段を成立可能としている。そして、車両用自動変速機1は、切替クラッチDのb状態(解放状態)を維持したまま、図2の係合表に示すように、係合状態になっている3つの係合要素のうち1つを切り替えることによって、隣り合う変速段に移行可能としている。
【0038】
ここで、切替クラッチDがb状態(解放状態)のときの車両用自動変速機1は、図10に示すように、切替クラッチDを備えていないが他の構成は車両用自動変速機1と同一構成の車両用自動変速機11(以下、比較例の車両用自動変速機11という)に置き換えることができる。この比較例の車両用自動変速機11は、図11の係合表に示すように、前進11段及び後進1段の変速機となる。一方、車両用自動変速機1は、図2の係合表に示すように、前進12段及び後進1段の変速機となる。
【0039】
すなわち、この比較例の車両用自動変速機11の第1速段(1st)から第8速段(8th)までの係合は、車両用自動変速機1の第1速段(1st)から第8速段(8th(b))までの係合と同一であり、比較例の車両用自動変速機11の第9速段(9th)から第11速段(11th)までの係合は、車両用自動変速機1の第10速段(10th(b))から第12速段(12th)までの係合と同一である。つまり、車両用自動変速機1の第9速段(9th)は、比較例の車両用自動変速機11では得られない変速段となる。
【0040】
以上のことから、車両用自動変速機1は、比較例の車両用自動変速機11と比較して、切替クラッチDを備えることにより、変速段を一段増加(第9速段)することができる。上述のように、車両用自動変速機1は、第1速段(1st)から第8速段(8th(b))までは、切替クラッチDのb状態(解放状態)を維持したまま、係合状態になっている3つの係合要素のうち1つを切り替えることによって、隣り合う変速段に移行可能としている。
【0041】
しかし、車両用自動変速機1は、第8速段(8th(b))から第9速段(9th)に移行するには、切替クラッチDをb状態(解放状態)からc状態(係合状態)に切り替えるとともに、第3、第4クラッチCL3,CL4を解放状態にし第1ブレーキB1を係合状態にする必要、すなわち係合状態になっている3つの係合要素のうち2つを1つに切り替える必要があり、油圧の制御動作時間が長くなるという問題がある。
【0042】
そこで、車両用自動変速機1は、第8速段(8th(b))において、切替クラッチDをb状態(解放状態)からc状態(係合状態)に切り替えるとともに、第1、第3、第4クラッチCL1,CL3,CL4のうち第3クラッチCL3のみを解放状態にする動作、すなわち係合状態になっている3つの係合要素のうち1つを切り替える動作を行って第8速段(8th(c))に一旦移行する。
【0043】
これにより、車両用自動変速機1は、第8速段(8th(c))から第9速段(9th)に移行するときは、切替クラッチDのc状態(係合状態)を維持したまま、第1、第4クラッチCL1,CL4のうち第4クラッチCL4を解放状態にし第1ブレーキを係合状態にする動作、すなわち係合状態になっている2つの係合要素のうち1つを切り替える動作でよく、油圧の制御動作時間を短くできる。そして、第9速段(9th)から第10速段(10th(c1))に移行するときも同様の動作でよい。
【0044】
しかし車両用自動変速機1は、第10速段(10th(c1))から第11速段(11th)に移行するには、切替クラッチDをc状態(係合状態)からb状態(解放状態)に切り替えるとともに、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1のうち第4クラッチCL4を解放状態にし第1、第3クラッチCL1,CL3を係合状態にする必要、すなわち係合状態になっている2つの係合要素のうち1つを2つに切り替える必要があり、油圧の制御動作時間が長くなるという問題がある。
【0045】
そこで、車両用自動変速機1は、第10速段(10th(c1))において、切替クラッチDはc状態(係合状態)に、第4クラッチCL4と第1ブレーキB1も係合状態に維持したまま、第3クラッチCL3を係合することで第10速段(10th(c2))に一旦移行する。
【0046】
さらに、車両用自動変速機1は、第10速段(10th(c3))において、切替クラッチDをc状態(係合状態)からb状態(解放状態)に切り替える動作を行って第10速段(10th(b))に一旦移行する。
【0047】
これにより、車両用自動変速機1は、第10速段(10th(b))から第11速段(11th)に移行するときは、切替クラッチDのb状態(解放状態)を維持したまま、第3、第4クラッチCL3,CL4及び第1ブレーキB1のうち第4クラッチCL4を解放状態にし第1クラッチCL1を係合状態にする動作、すなわち係合状態にする3つの係合要素のうち1つを切り替える動作でよく、油圧の制御動作時間を短くできる。
【0048】
ここで、課題で説明したように、従来の車両用自動変速機12では、図9に示すように、後進変速段形成時に、第2サンギヤS12が高速回転(回転速度比H)に晒されるので、第2クラッチCL12及び第1ブレーキB11は、相対回転速度が大きくなって焼け等が発生し易くなる等の問題がある。この問題は、図10に示す比較例の車両用自動変速機11及び図1に示す車両用自動変速機1で解消することができ、以下に説明する。
【0049】
図10に示す比較例の車両用自動変速機11では、図11に示すように後進変速段形成時に、第1ブレーキB1及び第2クラッチCL2を係合状態にして第1サンギヤS1及び第2リングギヤR2を固定し、第4クラッチCL4を係合状態にして第2キャリアC2と第3キャリアC3とを連結することにより、第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、第3キャリアC3を介して出力軸Tに出力される。
【0050】
比較例の車両用自動変速機11は、車両用自動変速機1において切替クラッチDをb状態にしたときと同一であるため、比較例の車両用自動変速機11における後進変速段形成時と同一にするには、車両用自動変速機1では、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1を係合状態にすればよい。
【0051】
この車両用自動変速機1における後進変速段形成時には、第2サンギヤS2及び第3リングギヤR3は、同一回転で第3キャリアC3の回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第2サンギヤS2の回転速度比は、第2プラネタリ機構P2に着目して算出すると、第2リングギヤR2が固定され、第2キャリアC2が出力回転であるので、図4に示すように、ギヤ比λ2(=第2サンギヤS2の歯数/第2リングギヤR2の歯数)の逆数+1と、出力回転速度比とを積算した値hとなるため、従来の車両用自動変速機12の第2サンギヤS12の回転速度比Hのような高速回転に達することはない。よって、車両用自動変速機1(11)では、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1の焼け等の発生を防止できる。
【0052】
しかし、車両用自動変速機1が上記後進変速段に形成されているときは、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1には、出力の反力が掛かることになる。すなわち、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1は、各プラネタリ機構P1,P2,P3のギヤ比λ1,λ2,λ3で表されるトルク分担比で反力を受ける必要があり、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1が大型化する。
【0053】
具体的には、図5の左側のCL2に示す白抜きグラフが、切替クラッチDが第3ポジションbのときの第2クラッチCL2のトルク分担比を示し、図5の左側のB1に示す白抜きグラフが、切替クラッチDが第3ポジションbのときの第1ブレーキB1のトルク分担比を示し、図5の左側のDが、切替クラッチDが第3ポジションbのときの切替クラッチDのトルク分担比(この場合は0)を示す。
【0054】
そこで、車両用自動変速機1では、図2に示すように後進変速段形成時に、第2クラッチCL2は係合状態にせずに解放状態のままとし、第1ブレーキB1を係合状態にして第1サンギヤS1を固定するとともに、切替クラッチDをa状態にして第2リングギヤR2を固定し、第4クラッチCL4を係合状態にして第2キャリアC2と第3キャリアC3とを連結することにより、第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。
【0055】
これにより、第2クラッチCL2は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第1ブレーキB1のトルク分担比は前進変速段で第2クラッチCL2と同時に係合状態となっていないときと同じ小さい値となり、切替クラッチDが大部分のトルクを分担することになる。よって、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図ったり内部構成の自由度を高められる。
【0056】
具体的には、図5の右側のCL2が、切替クラッチDが第1ポジションaのときの第2クラッチCL2のトルク分担比(この場合は0)を示し、図5の右側のB1に示す網掛けグラフが、切替クラッチDが第1ポジションaのときの第1ブレーキB1のトルク分担比を示し、図5の右側のDに示す網掛けグラフが、切替クラッチDが第1ポジションaのときの切替クラッチDのトルク分担比を示す。図5から明らかなように、切替クラッチDを第1ポジションaとし、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1を係合状態とする後進変速段は、切替クラッチDを第1ポジションbとし、第2、第4クラッチCL2,CL4及び第1ブレーキB1を係合状態とする後進変速段と比較して、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1のトルク分担比を大幅に減少させることができる。
【0057】
また、切替クラッチDを第1ポジションaとし、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1を係合状態とする後進変速段では、第2サンギヤS2及び第3リングギヤR3は、同一回転で、第3キャリアC3の回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第2サンギヤS2の回転は、第2リングギヤR2が固定され、第2キャリアC2が出力回転であるので、従来の車両用自動変速機12と比較して高速回転に達することはない。よって、車両用自動変速機1では、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1の焼け等の発生を防止できる。
【0058】
また、車両用自動変速機1では、後進変速段形成時に、第1キャリアC1は、入力軸Nの回転が入力され、第1サンギヤS1は、第1ブレーキB1により固定されているので、第1リングギヤR1は、増速の回転を得ており、前進段のうち5,7,9〜12速段を構成しているときと同じ回転を得ているため、後進変速時特有の特異な回転を生じない。
また、車両用自動変速機1では、切替クラッチDをドグクラッチとすることにより引き摺り要素を増やすことなく上述の効果を得られ、引き摺りによる燃費の悪化を抑制できる。
【0059】
(実施形態の変形例の車両用自動変速機の機械構成)
実施形態の車両用自動変速機1の変形例の概略構成について図1に対応させて示す図6を参照して説明する。なお、図6においては、図1に示す部材と同一部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この車両用自動変速機10は、第2プラネタリ機構P2をシングルピニオン式からダブルピニオン式に変更した点で実施形態の車両用自動変速機1と異なる構成となっている。この変形例においては、ダブルピニオン式の第2プラネタリ機構P2を用いているため、第2プラネタリ機構P2の各要素は、速度線図の並び順で第2キャリアC2が本発明の「第1要素」に相当し、第2リングギヤR2が本発明の「第2要素」に相当し、第2サンギヤS2が本発明の「第3要素」に相当する。
【0060】
この車両用自動変速機10は、第2キャリアC2及び第3リングギヤR3は、第3ギヤ連結部材9を介して連結される。第1クラッチCL1の一方は、第1クラッチ連結部材U11を介して、第1キャリアC1に連結され、第1クラッチCL1の他方は、第1クラッチ連結部材U12を介して、第2サンギヤS2に連結される。第1クラッチCL1は、第1キャリアC1と第2サンギヤS2とを係脱可能に連結する。
【0061】
切替クラッチDは、第2サンギヤS2を第1クラッチ連結部材U12を介してハウジングHに係脱可能に固定する第1ポジションa、第2サンギヤS2を第3ギヤ連結部材9に連結される第2キャリアC2及び第3リングギヤR3に係脱可能に固定する第2ポジションc、又は第2サンギヤS2をハウジングH並びに第2キャリアC2及び第3リングギヤR3に対しフリー状態にする第3ポジションbを切り替える。
【0062】
このような構成の車両用自動変速機10においても、実施形態の車両用自動変速機1と同様の効果を得ることができる。
なお、複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合せることが可能であることは、明らかである。
【符号の説明】
【0063】
1,10,11,12:車両用自動変速機、 3:入力軸連結部材、 4:出力軸連結部材、 5,6:第1、第2ギヤ連結部材、 9:第3ギヤ連結部材、 H:ハウジング、 N:入力軸、 T:出力軸、 L:回転軸線、 CL1:第1クラッチ、 CL2:第2クラッチ、 CL3:第3クラッチ、 CL4:第4クラッチ、 B1:第1ブレーキ、 B2:第2ブレーキ、 D:切替クラッチ、 P1:第1プラネタリ機構、 P2:第2プラネタリ機構、 P3:第3プラネタリ機構、 S1:第1サンギヤ、 S2:第2サンギヤ、 S3:第3サンギヤ、 C1:第1キャリア、 C2:第2キャリア、 C3:第3キャリア、 R1:第1リングギヤ、 R2:第2リングギヤ、 R3:第3リングギヤ、 V1,V2:第1、第2ブレーキ連結部材、 U11,U21,U31,U41:第1、第2、第3、第4クラッチ連結部材、 U12,U22,U32,U42:第1、第2、第3、第4クラッチ連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11