(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ステップ(5)において、測定信号の強度が、前記ピーク値から所定レベルだけ低下したときに、前記メモリに記憶されている測定信号の強度の中から前記ピーク値から所定レベルだけ低下した測定信号の強度を示す測定周波数のうち先に検出されたものを前記下限側又は上限側の帯域端周波数の一方の帯域端周波数とし、
前記ステップ(6)において、測定信号の強度が、前記ピーク値から所定レベルだけ低下した値に達したときに、そのときの測定周波数を他方の帯域端周波数とする、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ特性検出方法。
前記測定信号の強度測定を、測定信号の強度の変化が増加する方向及び減少する方向のいずれであっても、一定の間隔で行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルタ特性検出方法。
【背景技術】
【0002】
スーパーヘテロダイン受信装置では、アンテナを介して受信した入力信号を高周波回路で増幅し、この増幅された信号に局部発振器で発生させた所定周波数の信号を周波数混合器にて混合して中間周波信号に変換し、さらに中間周波信号を中間周波回路で増幅した後、復調回路で復調し、スピーカなどから音声を出力している。中間周波回路には、増幅回路の他に、所望する中間周波信号を通過させるためのIFフィルタなどが設けられている。IFフィルタは、個々の部品としての個体差や温度特性の影響により、その特性(中心周波数)が変動する。そのため、周波数混合器により生成される中間周波信号がIFフィルタの中心を通過するように、局部発振器の発振周波数を調整(キャリブレーション)する必要がある。また、キャリブレーションを行うためには、IFフィルタの特性、特に中心周波数を把握しておく必要がある。
【0003】
特許文献1に記載された従来のフィルタの中心周波数検出方法について、
図6を参照しつつ説明する。まず、フィルタの所定中心周波数fc、フィルタの所定帯域幅Bw、許容誤差を考慮したフィルタの帯域端より外側位置となる周波数fs、ステップ幅fp及びステップ番号N(初期値N=0)を設定する。そして、上記初期値に基づいて、周波数が
BFO(−)=fc−Bw/2−(fs−fp・N)
となる第1周波数信号を発生させる。このN=0における第1周波数BFO(−)は、フィルタの所定帯域幅の外である。かかる第1周波数BFO(−)の第1周波数信号をフィルタに通過させ、その出力信号の強度を検出し、それに応じた値P(−)を記憶する。
【0004】
次に、周波数が
BFO(+)=fc+Bw/2−(fs−fp・N)
となる第2周波数信号を発生させる。この第2周波数BFO(+)は、第1周波数BFO(−)に対して、所定帯域幅Bwだけの差を有する。このN=0における第2周波数BFO(+)は、フィルタの所定帯域幅の内にある。かかる第2周波数BFO(+)の第2周波数信号をフィルタに通過させ、その出力信号の強度を検出し、それに応じた値P(+)を記憶する。
【0005】
さらに、先に記憶した値P(−)とP(+)を読み出し、P(−)とP(+)との強度を比較する。P(−)>P(+)でなければ、Nを1つ増加させて、周波数がそれぞれfsだけ増加した次の第1周波数BFO(−)及び第2周波数BFO(+)について、P(−)とP(+)を検出し、比較する。このようにして、Nを1つずつ順次に増加させて、所定帯域幅の周波数差を有する第1周波数BFO(−)及び第2周波数BFO(+)について、P(−)とP(+)を検出し、比較する。
【0006】
図6から明らかなように、はじめは、第1周波数信号の強度P(−)が第2周波数信号の強度P(+)よりも小さく、Nを増加させるに従って、P(−)の値が増加し、P(−)とP(+)の差が徐々に少なくなる。そして、P(−)とP(+)の比較結果が反転する、すなわちP(−)<P(+)になると、そのときの第1周波数BFO(−)と第2周波数BFO(+)がフィルタの所定帯域幅の上下両端の帯域端周波数より高い周波数側にずれたことがわかる。そこで、比較結果が反転するNの1つ前の状態で第1周波数BFO(−)と第2周波数BFO(+)をフィルタの所定帯域幅の上下両端の帯域端周波数に最も近い周波数として特定することができる。また、フィルタの中心周波数は、特定された上下両端の帯域端周波数の中央値、すなわち第1周波数BFO(−)と第2周波数BFO(+)の中央値とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、実際のフィルタの特性は、
図6のようななだらかな波形を示すとは限らず、特性曲線に凹凸が生じ、複数のピークを示すこともありうる。その場合、上記のように第1周波数信号の強度P(−)と第2周波数信号の強度P(+)の比較結果が反転する1つ前の状態で第1周波数BFO(−)と第2周波数BFO(+)をフィルタの所定帯域幅の上下両端の帯域端周波数に最も近い周波数として特定すると、これらは実際のフィルタの所定帯域幅の上下両端の帯域端周波数とは異なる周波数である可能性がある。
【0009】
また、第1周波数BFO(−)及び第2周波数BFO(+)を変化させつつ、第1周波数信号の強度P(−)と第2周波数信号の強度P(+)を検出するために無線通信装置内部のシグナルメータの値を用いる場合、シグナルメータはAGC(自動ゲイン調節)回路からの出力信号で動作するので、AGCの特性(ファーストアタック・スローリリース)の影響を受ける。そのため、第1周波数信号の強度P(−)又は第2周波数信号の強度P(+)が増加していく間は、比較的短い間隔で第1周波数BFO(−)又は第2周波数BFO(+)を変化させることができる。それに対して、第1周波数信号の強度P(−)又は第2周波数信号の強度P(+)が減少していくときは、AGC回路の特性を考慮して、第1周波数信号の強度P(−)又は第2周波数信号の強度P(+)の検出値を安定させるために、第1周波数BFO(−)又は第2周波数BFO(+)を変化させてから信号強度を読み取るまでの間隔を長くする(遅延処理する)必要がある。上記従来の方法の場合、第1周波数BFO(−)及び第2周波数BFO(+)を同じ方向(増加する方向)に変化させているが、第2周波数信号の強度P(+)の方が先に減少し始めるので、第1周波数BFO(−)及び第2周波数BFO(+)を同じタイミングで変化させると、正確なフィルタ特性が検出できなくなる。正確なフィルタ特性を検出するには、上記の遅延処理を行う必要があるが、特に、第1周波数BFO(−)及び第2周波数BFO(+)を交互に変化させているので、帯域端周波数の検出に要する時間が長くなる。
【0010】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、複数のピークを有するフィルタであっても正確にフィルタの中心周波数を検出することができ、また、フィルタを通過した信号の強度を、無線通信装置内部のシグナルメータを用いて測定する場合に、AGCの特性の影響を受けにくくして、帯域端周波数の検出に要する時間を短くすることが可能な、無線通信装置におけるフィルタ特性検出方法及びその機能を備えた無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る無線通信装置におけるフィルタ特性検出方法は、
(1)前記無線通信装置に設けられた第1発振器から出力される第1周波数の信号と、前記無線通信装置に設けられた第2発振器から出力される第2周波数の信号を混合させることによって測定信号を生成し、
(2)前記第2周波数を変化させて、前記測定信号の周波数(以下、「測定周波数」とする)を、フィルタの設計上の通過周波数帯の下限値又は上限値から中心周波数に向かって所定周波数ずつ増加又は減少させ、
(3)測定周波数の異なる新たな測定信号が生成されるたびに、その測定信号を前記フィルタに通過させ、前記フィルタを通過した測定信号の強度を測定し、その測定信号の強度をメモリに記憶し、
(4)前記メモリに記憶されている前回測定した測定信号の強度と今回測定した測定信号の強度を比較し、前回測定した測定信号の強度よりも今回測定した測定信号の強度が減少したときに、前回測定した測定信号の強度を前記フィルタの通過特性の1つのピーク値とし、
(5)測定信号の強度が、前記ピーク値が1つの時はそのピーク値から又は前記ピーク値が複数ある時は最も高いピーク値から所定レベルだけ低下するまで、測定信号の強度測定を継続し、
(6)次に、前記測定周波数を、前記フィルタの設計上の通過周波数帯の上限値又は下限値から、前記ピーク値を測定するときとは逆方向に、前記所定周波数ずつ減少又は増加させて、測定信号の強度測定を行い、
(7)測定信号の強度が前記ピーク値から所定レベルだけ低下した値を示す測定周波数から、下限側又は上限側の帯域端周波数をそれぞれ特定し、2つの帯域端周波数の中央値を前記フィルタの中心周波数として特定する、
ことを特徴とする。
【0012】
前記ステップ(5)において、測定信号の強度が、前記ピーク値から所定レベルだけ低下したときに、前記メモリに記憶されている測定信号の強度の中から前記ピーク値から所定レベルだけ低下した測定信号の強度を示す測定周波数のうち先に検出されたものを前記下限側又は上限側の帯域端周波数の一方の帯域端周波数とし、
前記ステップ(6)において、測定信号の強度が、前記ピーク値から所定レベルだけ低下した値に達したときに、そのときの測定周波数を他方の帯域端周波数とする、
ようにしてもよい。
【0013】
前記測定信号の強度測定を、測定信号の強度の変化が増加する方向及び減少する方向のいずれであっても、一定の間隔で行うようにしてもよい。
【0014】
また、本発明の他の一態様に係る無線通信装置は、
第1周波数の信号を出力する第1発振器と、
第2周波数の信号を出力する第2発振器と、
前記第1周波数の信号と前記第2周波数の信号を混合して測定信号を生成する周波数混合器と、
前記測定信号を通過させるフィルタと、
前記フィルタを通過した前記測定信号の強度を測定する強度測定器と、
前記強度測定装置により測定された測定信号の強度を記憶するメモリと、
前記フィルタの特性を検出する制御回路を備え、
前記制御回路は、
前記第2周波数を変化させて、前記前記測定信号の周波数(以下、「測定周波数」とする)を、前記フィルタの設計上の通過周波数帯の下限値又は上限値から中心周波数に向かって所定周波数ずつ増加又は減少させ、
前記メモリに記憶されている前回測定した測定信号の強度と今回測定した測定信号の強度を比較し、前回測定した測定信号の強度よりも今回測定した測定信号の強度が減少したときに、前回測定した測定信号の強度を前記フィルタの通過特性の1つのピーク値とし、
測定信号の強度が、前記ピーク値が1つの時はそのピーク値から又は前記ピーク値が複数ある時は最も高いピーク値から所定レベルだけ低下するまで、測定信号の強度測定を継続し、
次に、前記測定周波数を、前記フィルタの設計上の通過周波数帯の上限値又は下限値から、前記ピーク値を測定するときとは逆方向に、前記所定周波数ずつ減少又は増加させて、測定信号の強度測定を行い、
測定信号の強度が前記ピーク値から所定レベルだけ低下した値を示す測定周波数から、下限側又は上限側の帯域端周波数をそれぞれ特定し、2つの帯域端周波数の中央値を前記フィルタの中心周波数として特定する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このような構成によれば、フィルタの中心周波数を検出する際、第2周波数の信号の周波数を変化させて、測定周波数をフィルタの設計上の通過周波数帯の下限値又は上限値から中心周波数に向かって所定周波数ずつ増加又は減少させ、メモリに記憶されている前回測定した測定信号の強度と今回測定した測定信号の強度を比較し、前回測定した測定信号の強度よりも今回測定した測定信号の強度が減少したときに、前回測定した測定信号の強度をフィルタの通過特性の1つのピーク値として検出することができる。その際、ピーク値の検出時を除いて、測定信号の強度は連続的に増加する方向に変化しているので、比較的短い間隔で測定信号の生成及び測定信号の強度測定を行っても、正確なフィルタ特性を検出することができる。また、最初にピーク値を検出した後も測定周波数を同じ方向に増加又は減少させて、測定信号の強度測定を継続することにより、フィルタの特性曲線に凹凸が生じ、ピーク値が複数ある場合でも、最も高い値を示す真のピーク値を見逃してしまう可能性が低減される。さらに、測定信号の強度値が減少する方向に変化しているときは、AGC回路の特性によって測定信号の強度値が正確でない可能性があるが、フィルタの通過周波数帯のうち未測定の周波数帯域について、測定周波数を逆方向に所定周波数ずつ減少又は増加させて測定信号の強度測定を行うことにより、下限側の帯域端周波数と上限側の帯域端周波数の2つの帯域端周波数をいずれも測定信号の強度値が増加する方向で検出することができ、帯域端周波数及び中心周波数を正確に特定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る線通信装置におけるフィルタ特性検出方法及びその機能を備えた無線通信装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る線通信装置の一例としてSSB受信装置の構成を示す。無線通信装置1は、アンテナ2を介して受信した高周波信号(以下、「受信信号」とする)の増幅などを行う高周波回路3と、増幅された受信信号に第1局部発振器12で発生された周波数f
Lの第1局発信号を混合して第1中間周波数f
Rの信号(以下、「第1IF信号」とする)を発生させる第1周波数混合器4と、第1周波数混合器4から出力される第1IF信号の増幅などを行う第1中間周波回路5と、第1中間周波回路5から出力される増幅された第1IF信号に第2局部発振器13で発生された周波数f
L2の第2局発信号を混合して第2中間周波数f
R2の信号(以下、「第2IF信号」とする)を発生させる第2周波数混合器6と、第2周波数混合器6から出力される第2IF信号の増幅などを行う第2中間周波回路7と、第2中間周波回路7から出力される増幅された第2IF信号を復調して可聴音信号を出力する復調回路8と、可聴音信号を増幅する低周波増幅器9と、増幅された可聴音信号を出力するスピーカ10などを備えている。
【0018】
高周波回路3は、高周波増幅器31と、高周波増幅器31に入力する信号を切り替える入力選択スイッチ32などを備えており、入力選択スイッチ32は、高周波増幅器31に入力する信号のソースを、アンテナ2とマーカ発振器11のいずれかに切り替えることが可能である。マーカ発振器11、第1局部発振器12及び第2局部発振器13には、それぞれ基準信号発生器14が接続されており、基準信号に基づいて、マーカ発振器11は第1周波数f
Iの信号(以下の説明では「擬似入力信号」とする)を、第1局部発振器12は第2周波数f
Lの第1局発信号を、第2局部発振器13は第3周波数f
L2の第2局発信号を、それぞれ生成し出力する。第1中間周波回路5は、所望する第1IF信号を通過させるためのIFフィルタ51及びIFフィルタ51を通過した第1IF信号を増幅するための中間周波増幅器52などを備えている。第2中間周波回路7にはIFフィルタはなく、それ以外の増幅器などを有している(詳細な説明は省略する)。第1局部発振器12、第2局部発振器13及び復調回路8には、IFフィルタ51の中心周波数を検出し、その中心周波数に基づいて第1局部発振器12の発振周波数を調整するためのキャリブレーション機能を備えた制御回路15が接続されている。制御回路15は、例えばCPU及びメモリなどで構成されたマイクロコンピュータであり、この無線通信装置1の全体を制御する。復調回路8は、例えばディジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)であり、キャリブレーション時には、復調回路8から出力されるシグナルメータの値を用いて、IFフィルタ51を通過した信号の強度を検出し、信号強度の値を制御回路15に出力する。
【0019】
ユーザによって、操作パネル上のアイコン又は物理スイッチなどが操作され、第1局部発振器12の発振周波数のキャリブレーションが選択されると、入力選択スイッチ32がマーカ発振器11側に切り替えられ、マーカ発振器11から第1周波数f
Iの擬似入力信号が高周波増幅器31に入力される。キャリブレーション中、この擬似入力信号の第1周波数f
I及び第2局部発振器13の第2局発信号の第3周波数f
L2の値は固定されている。同時に、第1局部発振器12から第2周波数f
Lの第1局発信号が出力され、第1周波数混合器4によって擬似入力信号と混合される。キャリブレーション中、この第1局発信号の第2周波数f
Lの値は、所定周波数ピッチで増加又は減少される。第1周波数混合器4によって生成される第1IF信号(以下、「測定信号」とする)の周波数(以下、「測定周波数」とする)f
Rは、f
R=f
L−f
Iで表される。第1局部発振器12からの第2周波数f
Lの値を変化させることによって、IFフィルタ51を通過する測定信号の測定周波数f
Rが変化する。
【0020】
制御回路15は、第1局部発振器12から出力される第1局発信号の第2周波数f
Lの値を、例えば10Hzずつ変化させながら、復調回路8から出力される測定信号の強度の値をモニタし、メモリに記憶する。そして、測定信号の強度のピーク値から所定レベル(例えば−3dB)だけ低下した値を示す測定周波数を、IFフィルタ51の上限側の帯域端周波数f
HE及び下限側の帯域端周波数f
LEとして決定し、上限側の帯域端周波数f
HEと下限側の帯域端周波数f
LEの中央値をIFフィルタ51の中心周波数f
CNとして決定する。
【0021】
図2は、無線通信装置1におけるIFフィルタ51の特性を示す波形図、
図3〜
図5は本実施形態に係るIFフィルタの中心周波数検出方法を示すフローチャートである。
図2において、周波数f
Dは、IFフィルタ51の設計上の中心周波数であり、太線で示す特性曲線C
Cは、IFフィルタ51の周波数通過特性を示す。制御回路15は、IFフィルタ51を通過する信号の周波数の範囲、すなわち測定範囲として、設計上の中心周波数f
Dに対して所定の通過周波数帯(例えば、±1700Hz)をスキャンし、復調回路8から出力される各測定信号の強度の値SA
Xのデータを使用する。
【0022】
ユーザによって、第1局部発振器12から出力される第1局発信号の発振周波数のキャリブレーションが選択されると、制御回路15は、入力選択スイッチ32をマーカ発振器11側に切り換え、マーカ発振器11をオンする(#1)と共に、初期値を設定する(#2)。初期値としては、中心周波数f
Dに対するシフト量Δ=−1700Hz(通過周波数帯の下限値)、信号強度の最大値SA
MAX=0を設定する。次に、制御回路15は、第1局部発振器12から出力される第1局発信号の第2周波数f
Lの低い方の初期値として、f
L=f
I+f
D+Δを演算する(#3:f
R=f
L−f
I、f
R=f
D+Δなので、f
L=f
I+f
R=f
I+f
D+Δとなる)。次に、制御回路15は、シフト量Δ=−1700Hzか否かを判断する(#4)。最初は、シフト量Δ=−1700Hzであるので(#4でYES)、マーカ発振器11や第1局部発振器12など、無線通信装置1の各部に性能が安定するのを待つため、例えば300msec測定を待機する(#5)。そして、制御回路15は、復調回路8からのシグナルメータ出力である信号強度の値SA
Xを読み込み(#7)、読み込んだ信号強度の値SA
Xを測定周波数f
R(=f
D+Δ)の値又はシフト量Δの値と関連づけて、メモリに記憶させる(#8)。
【0023】
次に、制御回路15は、SA
MAX<SA
Xか否かを判断する(#9)。SA
MAXの初期値は0であるので、SA
Xの値が僅かでもあれば、SA
Xの値をSA
MAXに置き替える(#10)。そして、制御回路15は、SA
MAX>SA
X+3dBか否かを判断する(#11)。この段階では、SA
MAX=SA
Xであるので、シフト量Δを10Hz増加させ(#12)、さらにシフト量Δ>+1700Hz(通過周波数帯の上限値)か否かを判断する(#13)。ステップ#9でSA
MAX<SA
Xか否かを判断し、続けてステップ#11でSA
MAX>SA
X+3dBか否かを判断するのは、実際のフィルタの特性曲線に凹凸が生じ、複数のピークを示すことを想定し、最初にピークが現れてからも、一定の範囲でSA
Xの検出を継続することで、真のピーク値を特定するためである。さらに、シフト量Δ>+1700Hzか否かを判断するのは、誤動作を検出するためである。
【0024】
シフト量Δ=−1700Hzについて正常に測定信号の強度の値SA
Xが検出されると、ステップ#3に戻って、同様の手順で、シフト量Δ=−1690Hzについて新たな測定信号の強度の値SA
Xを検出する。2回目からは、無線通信装置1の各部の性能が安定しているので、シグナルメータの反応時間分、例えば10msecだけ測定を待機する(#6)。そして、ステップ#11でSA
MAX>SA
X+3dBになるまで、このルーチンを繰り返す。
図2に示すIFフィルタの特性曲線はピークが1つだけであり、測定信号の強度のピーク値を示すピーク周波数f
PVまでは、信号強度の値SA
Xは連続して増加している。そこで、メモリに記憶されている前回測定した測定信号の強度と今回測定した測定信号の強度を比較し、前回測定した測定信号の強度よりも今回測定した測定信号の強度が減少したときに、前回測定した測定信号の強度をIFフィルタ51の通過特性の1つのピーク値と判定することができる。ピーク周波数f
PVよりも高くなると、測定信号の強度の値SA
Xが減少に転じ(#9でNO)、さらに測定周波数f
HEにおいて測定信号の強度の値SA
Xが、ピーク周波数f
PVで得られた測定信号の強度のピーク値SA
MAXよりも3dB以上小さくなる(#11でYES)。そこで、制御回路15は、一旦シフト量Δの増加及び測定信号の強度の値SA
Xの検出を中断し、メモリに記憶されている測定信号の強度の値SA
Xの中から、ピーク値SA
MAXよりもほぼ3dB低下した強度を示す測定周波数のうち時間的に先に検出されたもの、すなわち、ピーク周波数f
PVよりも下限側の帯域端周波数f
LEを探し出す(#14)。
【0025】
図2に示すIFフィルタの特性曲線では、この段階で上限側の帯域端周波数f
HEと下限側の帯域端周波数f
LEが特定可能であるが、ピークを示す測定周波数f
PVから上限側の帯域端周波数f
HEまでの間、測定信号の強度は減少を示している。AGC回路の特性により、測定信号の強度が減少する方向では、シフト量Δを変更してから測定信号の強度測定を行うまでの間隔(待機時間)を長くとらなければ、正確なシグナルメータ出力が得られない。本実施形態では、測定信号の強度測定の間隔を一定に維持しつつ、正確なシグナルメータ出力を得るために、反対側からも測定信号の強度のピーク値SA
MAXよりもほぼ3dB小さい上限側の帯域端周波数f
HEを探す。制御回路15は、シフト量Δ=+1700Hzを設定し(#15)、第1局部発振器12から出力される局発信号の第2周波数f
Lの高い方の初期値として、f
L=f
I+f
D+Δを演算する(#16)。次に、制御回路15は、シフト量Δ=+1700Hzか否かを判断する(#17)。最初は、シフト量Δ=+1700Hzであるので(#17でYES)、マーカ発振器11や第1局部発振器12など、無線通信装置1の各部に性能が安定するのを待つため、例えば300msec測定を待機する(#18)。そして、制御回路15は、例えば300msec待機した後(#18)、復調回路8からの出力である測定信号の強度の値SA
Xを読み込み(#20)、SA
X>SA
MAX−3dBか否かを判断する(#21)。この段階では、SA
X<SA
MAX−3dBであるので、シフト量Δを10Hz減少させ(#22)、さらにシフト量Δ<−1700Hzか否か、すなわちエラーが発生していないかどうかを判断する(#23)。なお、この逆方向からの測定信号の強度の測定に関しては、既に真のピーク値SA
MAXがわかっているので、読み込んだ信号強度の値SA
Xはメモリに記憶させなくてもよい。
【0026】
シフト量Δ=+1700Hzについて正常に測定信号の強度の値SA
Xが検出されると、ステップ#16に戻って、同様の手順で、シフト量Δ=+1690Hzについて測定信号の強度の値SA
Xを検出する。2回目からは、無線通信装置1の各部の性能が安定しているので、シグナルメータの反応時間分、例えば10msecだけ測定を待機する(#19)。そして、ステップ#19でSA
X>SA
MAX−3dBになるまで、このルーチンを繰り返す。SA
X>SA
MAX−3dBに達すると(#21でYES)、SA
X≒SA
MAX−3dBとなる上限側の帯域端周波数f
HEを特定する(#24)。そして、制御回路15は、上限側の帯域端周波数f
HEと下限側の帯域端周波数f
LEの中央値を、このIFフィルタ51の中心周波数f
Dとして求め(#23)、フィルタの中心周波数検出フローを終了する。
【0027】
また、IFフィルタ51の上限側の帯域端周波数f
HE及び下限側の帯域端周波数f
LEの中央値を中心周波数f
CNとして決定すると、制御回路15は、実際のアンテナ2からの信号の受信時には、第2IF信号の周波数=f
CNとなるように、第1局部発振器12から出力される第1局発信号の第2周波数f
Lを補正すると共に、第2局部発振器13から出力される第2局発信号の第3周波数f
L2も補正する。例えば、
図1に示す無線通信装置1では、局部発振器、周波数混合器及び中間周波回路を2組有しており、周波数変換を2回行う。ここで、マーカ発振器11から出力される擬似入力信号の第1周波数f
Iを10MHz、第1IF信号の第1中間周波数f
Rを64.555MHz、第2IF信号の第2中間周波数f
R2を36kHzとすると、第1局部発振器12から出力される第1局発信号の第2周波数f
Lは74.555MHz、第2局部発振器13から出力される第2局発信号の第3周波数f
L2は64.491MHzとなる。第1中間周波回路5のIFフィルタ51中心周波数が設計上の中心周波数とδHzだけずれていることが検出されると、制御装置12は、第1局部発振器12の第1局発信号の第2周波数f
Lを74.555MHz+δHzに補正する。また、そのままでは復調回路8に入力される第2IF信号の周波数f
R2が36kHz+δHzに変化してしまうため、制御装置12は、第2局部発振器13の第2局発信号の第3周波数f
L2を64.491MHz+δHzに補正する。それによって、復調回路8に入力される第2IF信号の周波数f
R2が36kHzに維持される。
【0028】
このように、本実施形態に係る無線通信装置におけるフィルタ特性検出方法によれば、
(1)無線通信装置1に設けられたマーカ発振器(第1発振器)11から出力される第1周波数f
Iの擬似入力信号と、局部発振器(第2発振器)12から出力される第2周波数f
Lの局発信号を混合させることによって測定信号を生成し、
(2)第2周波数f
Lを変化させて、測定周波数f
Rを、IFフィルタ51の設計上の通過周波数帯の下限値(例えば、−1700Hz)又は上限値(例えば、+1700Hz)から中心周波数f
Dに向かって所定周波数(例えば、10Hz)ずつ増加又は減少させ、
(3)測定周波数の異なる新たな測定信号が生成されるたびに、その測定信号をIFフィルタ51に通過させ、IFフィルタ51を通過した測定信号の強度を測定し、その測定信号の強度をメモリに記憶し、
(4)メモリに記憶されている前回測定した測定信号の強度と今回測定した測定信号の強度を比較し、前回測定した測定信号の強度よりも今回測定した測定信号の強度が減少したときに、前回測定した測定信号の強度を前記フィルタの通過特性の1つのピーク値とし、
(5)測定信号の強度が、ピーク値が1つの時はそのピーク値から又はピーク値が複数ある時は最も高いピーク値から所定レベルだけ低下するまで、測定信号の強度測定を継続し、
(6)次に、測定周波数を、IFフィルタ51の設計上の通過周波数帯の上限値又は下限値から、前記ピーク値を測定するときとは逆方向に、前記所定周波数ずつ減少又は増加させて、測定信号の強度測定を行い、
(7)測定信号の強度がピーク値から所定レベル(例えば、−3dB)だけ低下した値を示す測定周波数を下限側の帯域端周波数f
LE及び上限側の帯域端周波数f
HEとしてそれぞれ特定し、2つの帯域端周波数の中央値をIFフィルタ51の中心周波数f
CNとして特定している。
【0029】
そのため、ピーク値の検出時を除いて、測定信号の強度は連続的に増加する方向に変化しているので、比較的短い間隔で測定信号の生成及び測定信号の強度測定を行っても、復調回路8のAGC回路の特性の影響を受けにくい。また、最初にピーク値を検出した後も測定周波数を同じ方向に増加又は減少させて、測定信号の強度測定を継続することにより、フィルタの特性曲線に凹凸が生じ、ピーク値が複数ある場合でも、最も高い値を示す真のピーク値を見逃してしまう可能性が低減される。さらに、測定信号の強度値が減少する方向に変化しているときは、AGC回路の特性によって測定信号の強度値が正確でない可能性があるが、IFフィルタ51の通過周波数帯のうち未測定の周波数帯域について、測定周波数を逆方向に所定周波数ずつ減少又は増加させて測定信号の強度測定を行うことにより、下限側の帯域端周波数及び上限側の帯域端周波数の2つの帯域端周波数をいずれも測定信号の強度値が増加する方向で検出することができ、帯域端周波数及び中心周波数を正確に特定することができる。
【0030】
なお、上記実施形態では、最初に測定周波数f
Rを、通過周波数帯の下限側から所定周波数(10Hz)ずつ増加させ、その後通過周波数帯の上限側から逆方向に所定周波数ずつ減少させるように変化させたが、順番はこれに限定されず、この逆であってもよい。また、上記実施形態の説明において用いた数値は例示であって、これらの値に限定されるものではない。
【0031】
また、無線通信装置の種類は特に限定されず、受信周波数と送信周波数が異なる、いわゆるスプリット運用が可能なものであってもよいし、一方の周波数で送受信を行いながら、他方の周波数で受信のみを行う、2波同時受信が可能なものであってもよい。それらの場合、それぞれの送信器、受信器又は送受信機について、上記局部発振器のキャリブレーション又はフィルタ特性検出を行うことができる。また、特性検出を行うフィルタはIFフィルタに限定されず、本発明をその他のフィルタの特性検出に応用できることはいうまでもない。