(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水平ロールにおける当該テーパー形状を有しないロール部分の範囲は、当該水平ロールのロール半径方向において被圧延材のフランジ片幅寸法の1/2以下であることを特徴とする、請求項1に記載の中間ユニバーサル圧延ロール。
前記竪ロールにおけるテーパー形状を有しないロール部分の範囲は、当該竪ロールのロール胴長方向において前記水平ロールのテーパー形状を有しないロール部分の範囲の2倍に設定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の中間ユニバーサル圧延ロール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、非特許文献1に代表される一般的なH形鋼の製造での中間圧延工程では、中間ユニバーサル圧延機の水平ロール側面部の摩耗が進行する影響によりロール胴幅が次第に狭まっていく。そこで、そのようなロールの摩耗によるサイズダウンを防止するために、水平ロールの側面部には例えば3°〜8°程度のテーパー角が設けられ、円周部を改削して径を落とす(径を小径化する)ことで、もとのロール胴幅に戻すこと(以下、幅回復とも呼称する)が可能な構成とされることが知られている。
【0006】
図1は、中間ユニバーサル圧延機の上下一対の水平ロール100における幅回復についての説明図であり、(a)は幅回復前、(b)は幅回復後を示している。また、
図1(a)には、破線にて幅回復後の形状も図示している。なお、
図1においては、上下一対で構成される水平ロール100のうち、上ロールについてのみ図示し、下ロールについては図示を省略しているが、下ロールについても上ロールと同様の幅回復が行われる。
図1に示すように、中間ユニバーサル圧延機に設けられる上下一対の水平ロール100の表面は、被圧延材Wのウェブに対向する円周面部(ロール周面部)110と、フランジ内側面に対向する左右の側面部112、113から構成されている。ユニバーサル圧延が実施されるにつれ、当該円周面部110及び側面部112、113は被圧延材Wとの摩擦により摩耗するが、被圧延材Wとの速度差が大きい側面部112、113の摩耗がとりわけ著しい。
【0007】
図1(a)に示すように、摩耗が進行した水平ロール100はサイズダウンし、ロール胴幅がHからH’に減少し、H’の値が設備限界値を下回ると所望の寸法の圧延が実施できなくなるため、水平ロール100の円周面部110を改削し、元のロール胴幅Hに復元するロールの幅回復が実施される。即ち、水平ロール100のロール直径Dを2ΔRだけ小径化して得られるロール直径D’の円周面部110’、摩耗深さの最も大きい側面部112、113をΔSだけ改削して得られる側面部112’、113’が当該小径化されたロールに新たに設けられることになる。
図1(a)破線部及び
図1(b)はこのように新たに小径化された水平ロール100’である。
図1(a)から明らかなように、側面部112、113のテーパー角をθとして、側面部112、113の改削量ΔSに対してΔR=ΔS/tanθの関係式を満足するように小径化すれば、摩耗して減少したロールの胴幅H’をもとのロール胴幅Hに戻すことができる。なお、θの値は通常3°〜8°程度に設定される。
【0008】
図1(b)に示す小径化された(幅回復された)水平ロール100’は、ロール直径こそ小径化されているものの、ロール胴幅はH、かつ、側面部112’、113’のテーパー角はθであり、これら寸法は元の水平ロール100(即ち、円周面部110、側面部112、113)と同じであるため、従前と同様の寸法精度でもってユニバーサル圧延を実施することが可能である。
【0009】
以上
図1を参照して説明したように、従来の中間ユニバーサル圧延機では、水平ロールの側面部の摩耗対策として、当該側面部には幅回復を行うためのテーパー形状が設けられている。しかしながら、このように側面部にテーパー形状を有する水平ロールをユニバーサル圧延に用いる場合には、水平ロール軸直下まで被圧延材Wのフランジ内側面と水平ロール100の側面部112、113の間に隙間が存在するため、左右の竪ロールから被圧延材Wのフランジ外側部に作用する押圧力をウェブ部が支えることになり、ウェブ部がこれに抗しきれずに挫屈し、その結果、被圧延材が傾斜した状態で中間圧延工程が進んでいく場合がある。特に、中間ユニバーサル圧延機の竪ロールが被圧延材Wのフランジ部の外側面に当接し始め、水平ロールの円周面部による被圧延材のウェブ部に対する圧下がまだ始まらない非拘束のままの状態では、被圧延材Wの姿勢が不安定になり易い。このような状態で中間圧延工程が進んだ場合、ウェブ中心偏り(ウェブ部の板厚中心線に対してフランジ部の板幅中心がずれる現象)が生じ、フランジ部が非対称形状に造形される恐れがある。
【0010】
そこで、上記事情に鑑み、本発明の目的は、H形鋼を製造する際の中間ユニバーサル圧延機において、ウェブ中心偏りを抑制し、従来に比べ寸法精度・形状精度の高い中間圧延工程を実現させることが可能なH形鋼の製造方法とそれに用いる中間圧延ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、H形鋼製品の製造において略H形形状の被圧延材に対して中間圧延工程を行う中間ユニバーサル圧延機に備えられる中間ユニバーサル圧延ロールであって、前記被圧延材のウェブ部上下面に対向し、圧延時には当該ウェブ部を挟持して圧延方向に搬送する上下一対の水平ロールと、前記被圧延材のフランジ部外側面に対向し、圧延時には当該外側面に当接して押圧する左右一対の竪ロールと、を備え、前記水平ロールは、側面部にテーパー形状を有しないロール部分と、側面部にテーパー形状を有するロール部分から構成され、
前記水平ロールにおいて、側面部にテーパー形状を有しないロール部分は、側面部にテーパー形状を有するロール部分よりもピッチライン近傍に位置し、前記竪ロールは、周面部にテーパー形状を有しないロール部分と、周面部にテーパー形状を有するロール部分から構成され
、前記竪ロールにおいて、周面部にテーパー形状を有しないロール部分は当該竪ロールのロール軸方向中央に位置し、周面部にテーパー形状を有するロール部分は、当該竪ロールのロール軸方向において前記周面部にテーパー形状を有しないロール部分の上下端部に位置し、前記水平ロールならびに前記竪ロールを構成するテーパー形状を有するロール部分のテーパー角度は3°以上8°以下であることを特徴とする、中間ユニバーサル圧延ロールが提供される。
【0012】
前記水平ロールにおける当該テーパー形状を有しないロール部分の範囲は、当該水平ロールのロール半径方向において被圧延材のフランジ片幅寸法の1/2以下であっても良い。
【0013】
前記竪ロールにおけるテーパー形状を有しないロール部分の範囲は、当該竪ロールのロール胴長方向において前記水平ロールのテーパー形状を有しないロール部分の範囲の2倍に設定されても良い。
【0015】
また、本発明によれば、H形鋼製品の製造において、略H形形状の粗形材に対して当該粗形材のウェブ部及びフランジ部を圧延し中間材を造形する中間ユニバーサル圧延機であって、上記記載の中間ユニバーサル圧延ロールを備えることを特徴とする、中間ユニバーサル圧延機が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、H形鋼を製造する際の中間ユニバーサル圧延機において、ウェブ部の中心偏りを抑制し、従来に比べ寸法精度・形状精度の高い中間圧延工程を実現させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
図2は、本実施の形態にかかる圧延設備1を含むH形鋼の製造ラインTについての説明図である。
図2に示すように、製造ラインTには上流側から順に、加熱炉2、粗圧延機4、中間ユニバーサル圧延機(以下、単に中間圧延機とも記載する)5、仕上圧延機8が配置されている。また、中間ユニバーサル圧延機5に近接してエッジャー圧延機9が設けられている。なお、以下では、説明のために製造ラインTにおける鋼材を、総称して「被圧延材W」と記載し、各図において適宜その形状を破線・斜線等を用いて図示する場合がある。
【0020】
図2に示すように、製造ラインTでは、加熱炉2から抽出された例えばスラブ11等の被圧延材Wが粗圧延機4において粗圧延される。次いで、中間圧延機5において中間圧延される。この中間圧延時には、必要に応じてエッジャー圧延機9によって被圧延材のフランジ対応部12の端部に対して圧下が施される。通常の場合、粗圧延機4のロールには、合わせて4〜6個程度の孔型が刻設されており、これらを経由して10数パス程度のリバース圧延でH形粗形材13が造形され、該H形粗形材13を前記中間圧延機5−エッジャー圧延機9の2つの圧延機からなる圧延機列を用いて、通常7〜10数パスの圧下が加えられ、中間材14が造形される。そして中間材14は、仕上圧延機8において製品形状に曲げ加工され、H形鋼製品16が製造される。
【0021】
次に、以下では本実施の形態にかかる中間圧延機5の詳細な構成について図面を参照して説明する。なお、上記
図2に示した加熱炉2、粗圧延機4、仕上圧延機8、エッジャー圧延機9等は、従来よりH形鋼の製造に用いられている一般的な装置であり、その装置構成等は既知であるため本明細書では説明を省略する。
【0022】
図3は中間圧延機5の概略平面図であり、
図4は中間圧延機5の概略側面図である。なお、
図3(a)は、
図4に示す概略側面図のF−F断面を図示したものであり、
図3(b)は、
図4に示す概略側面図のG−G断面を図示したものである。
【0023】
図3及び
図4に示すように、中間圧延機5は、略H形形状の被圧延材W(上記H形粗形材13)の左右のフランジ部20、21の外側面に沿って当接し、当該フランジ部20、21の圧下、造形を行う左右一対の竪ロール30、31と、被圧延材Wのウェブ部25の上下面を挟持して板厚を圧下する上下一対の水平ロール40、41を備えている。なお、
図3においては、下水平ロール41は図示しておらず、
図4の概略側面図においては、竪ロール30、31は図示していない。
【0024】
このように構成される中間圧延機5においては、被圧延材Wのフランジ部20、21が、竪ロール30、31と水平ロール40、41の側面部との間に挟持されることで当該フランジ部20、21の圧下、造形が行われる。また、被圧延材Wのウェブ部25が、上水平ロール40の円周面部と下水平ロール41の円周面部との間に挟持されることで当該ウェブ部25の圧下、造形が行われる。
【0025】
また、
図5〜
図9は、中間圧延機5において被圧延材W(即ち、フランジ部20、21及びウェブ部25)が圧延される様子を正面から見た概略断面図であり、
図5は圧延開始前、
図6はフランジ部の圧延開始時、
図7はウェブ部の圧下開始時、
図8は水平ロール軸直下における圧延終了時、
図9は圧延終了後をそれぞれ示している。即ち、
図5〜
図9は、それぞれ
図3及び
図4におけるA−A断面、B−B断面、C−C断面、D−D断面、E−E断面を示している。
【0026】
図5〜
図9に示すように、上水平ロール40及び下水平ロール41はウェブ部25を上下方向から挟持すると共に、その側面部は被圧延材Wの圧延進行に応じてフランジ部20、21の内側面に当接するような形状に構成されている。
ここで、上水平ロール40は、側面部にテーパー形状を有しない(即ち、テーパー角度0°)水平ロール部分40aと、側面部に所定角度のテーパー形状を有する水平ロール部分40bから構成されており、圧延時には水平ロール部分40aの円周面部がウェブ部25に当接する。
同様に、下水平ロール41は、側面部にテーパー形状を有しない(即ち、テーパー角度0°)水平ロール部分41aと、側面部にテーパー形状を有する水平ロール部分41bから構成されており、圧延時には水平ロール部分41aの円周面部がウェブ部25に当接する。
【0027】
また、左右の竪ロール30、31は、その周面部が圧延進行と共に左右のフランジ部20、21の外側面に当接され、当該フランジ部20、21を各竪ロール30、31と上記水平ロール40、41の側面部とで挟持することで圧延を行う構成となっている。
ここで、左竪ロール30は、周面部にテーパー形状を有しない(即ち、テーパー角度0°)竪ロール部分30aと、周面部に所定角度のテーパー形状を有する竪ロール部分30bから構成されている。竪ロール部分30aの上下2箇所に竪ロール部分30bが形成され、圧延進行時には、フランジ部20の幅方向中央部近傍に竪ロール部分30aが当接し、フランジ部20の幅方向両端部近傍に竪ロール部分30bが当接する。
同様に、右竪ロール31は、周面部にテーパー形状を有しない(即ち、テーパー角度0°)竪ロール部分31aと、周面部に所定角度のテーパー形状を有する竪ロール部分31bから構成されている。竪ロール部分31aの上下2箇所に竪ロール部分31bが形成され、圧延進行時には、フランジ部21の幅方向中央部近傍に竪ロール部分31aが当接し、フランジ部21の幅方向両端部近傍に竪ロール部分31bが当接する。
【0028】
以下では、
図5〜
図9に沿って圧延時の各工程について説明する。
先ず、
図5に示すように、圧延開始前(
図3、4のA−A断面時)においては、竪ロール30、31とフランジ部20、21とは離隔した状態となっており、ウェブ部25も水平ロール40、41とは離隔した状態となっている。
【0029】
そして、
図6に示すように、フランジ部20、21の圧延開始時(
図3、4のB−B断面時)においては、竪ロール30、31とフランジ部20、21の外側面とが当接し始めている。一方で、ウェブ部25には水平ロール40、41の円周面部は当接していないものの、水平ロール部分40a、41aの側面部はフランジ部20、21の内側面に当接した状態となっている。即ち、ウェブ部25は非拘束な状態であるものの、フランジ部20、21は外側面に竪ロール30、31が当接し、内側面に水平ロール部分40a、41aの側面部が当接した状態となり、フランジ部20、21は拘束・圧下が開始された状態となる。
【0030】
続いて、
図7に示すように、ウェブ部25の圧下開始時(
図3、4のC−C断面時)においては、竪ロール30、31とフランジ部20、21の外側面とが当接し、また、ウェブ部25には水平ロール40、41の円周面部が当接し、水平ロール部分40a、41aのいずれの側面部もフランジ部20、21の内側面に当接した状態となっている。即ち、ウェブ部25、フランジ部20、21のいずれもが拘束された状態で圧延が行われる状態となる。
【0031】
そして、
図8に示すように、水平ロール軸直下における圧延終了時(
図3、4のD−D断面時)においては、竪ロール30、31とフランジ部20、21とは当接し、水平ロール部分40a、40b、41a、41bの全ての側面部がフランジ部20、21の内側面に当接した状態となっている。一方で、ウェブ部25は水平ロール40、41の円周面部間で挟持されている。即ち、フランジ部20、21、ウェブ部25のいずれも拘束された状態にある。
【0032】
そして、
図9に示すように、圧延終了後(
図3、4のE−E断面時)においては、竪ロール30、31とフランジ部20、21とは再び離隔した状態となり、ウェブ部25も水平ロール40、41とは再び離隔した状態となり圧延が終了している。
【0033】
以上、
図5〜
図9に示したように、本実施の形態に係る中間圧延機5においては、フランジ部20、21の圧延開始時(
図6)からフランジ部20、21及びウェブ部25の圧延終了時(
図8)まで、被圧延材Wのフランジ部20、21が竪ロール30、31の周面部と水平ロール部分40a、41aの側面部に挟持される形で拘束されたままの状態で中間圧延工程が実施される。
【0034】
一方、従来のH形鋼の中間ユニバーサル圧延機においては、既知の構成である水平ロール対と竪ロール対を用いて同様の造形工程が行われる。ここで本発明者らは、高い寸法・形状精度を実現するためには、従来より既知の水平ロール対と竪ロール対で構成される中間ユニバーサル圧延機では、特にウェブ中心位置精度が十分でないことを見出し、上記
図3〜
図9に示した構成を創案した。そこで、以下では、従来より既知の水平ロール対と竪ロール対を備えた中間ユニバーサル圧延機での寸法精度に係る問題点について図面を参照して説明する。
【0035】
図10は、従来の中間ユニバーサル圧延機において圧延される被圧延材の様子を正面から見た概略断面図であり、(a)が圧延開始前、(b)はフランジ部20、21の外側面にそれぞれ竪ロール60、61が当接し圧延が開始する時、(c)はウェブ部25の圧下開始時、(d)は水平ロール軸直下における圧延終了時、(e)は圧延終了後を示している。なお、
図10において、上下一対の水平ロール50、51、左右一対の竪ロール60、61以外の構成要素については、上記
図5〜
図9と同様であるため、共通の符号を用いて図示・説明する。
【0036】
図10に示すように、従来の中間ユニバーサル圧延機においては、上下水平ロール50、51の側面部にはロールの幅回復を行うためのテーパー形状が側面部全体に亘って設けられている。また、竪ロール60、61の周面部は当該水平ロール50、51の側面部に対応したテーパー形状を有しており、これら竪ロール60、61の周面部と水平ロール50、51の側面部との間でフランジ部20、21を圧延する構成となっている。
【0037】
このように構成される従来の中間ユニバーサル圧延機においては、
図10(a)〜(c)に示すように、水平ロール50、51の側面部は圧延開始前から水平ロール軸直下に至るまでフランジ部20、21の内側面に当接していない。また、水平ロール50、51の円周面部も圧延開始前からウェブ部25の圧下開始時に至るまでウェブ部25に当接していない。即ち、特に
図10(b)に示すフランジ部20、21の圧延開始時から、
図10(c)に示すウェブ部25の圧下開始時までの間においては、フランジ部20、21の内側面及びウェブ部25の上下面のいずれもロール面に当接せず、拘束されていない状態で通材されており、被圧延材Wは非拘束で圧延されていることが分かる。
【0038】
図11は、従来の中間ユニバーサル圧延機においてフランジ部20、21の圧延開始時からウェブ部25の圧下開始時までの間に被圧延材Wが非拘束であることに起因して生じる問題点の概略説明図である。なお、
図11においても、上記
図10に合わせて(a)が圧延開始前、(b)はフランジ部20、21の外側面にそれぞれ竪ロール60、61が当接し圧延が開始する時、(c)はウェブ部25の圧下開始時、(d)は水平ロール軸直下における圧延終了時、(e)は圧延終了後を示している。
【0039】
図11(a)、(b)に示すように、従来の中間ユニバーサル圧延機においては、ウェブ部25の圧延開始時までフランジ部20、21及びウェブ部25のいずれも拘束されていない状態で通材されており、図示したように被圧延材Wが傾斜した状態で圧延工程が進んでいく場合がある。このような状態で圧延が進んだ場合、
図11(c)、(d)に示すように、ウェブ部25の中心偏りS1、S2(ウェブ部25の板厚中心線に対するフランジ部20の板幅中心線のずれ量S1、フランジ部21の板幅中心線のずれ量S2)が生じ、これに伴いフランジ部20、21が非対称形状に圧延・造形される。これにより、
図11(e)に示すように、最終的に非対称形状の中間材が圧延され、製品の形状不良等が生じてしまう恐れがある。
【0040】
本発明者らは、
図11を参照して説明したような問題点に鑑み鋭意検討を行ったところ、ロールと被圧延材Wとの接触によるロール摩耗はフランジ部20、21の先端部近傍において顕著であり、フランジ部20、21とウェブ部25との接続部近傍(所謂コーナー部近傍)における摩耗深さは小さいことに着目し、径改削量ΔRを従来より増加させることなく、圧延形状の安定化を図るための中間圧延機の実現を図った。即ち、被圧延材Wを圧延開始時から可能な限り拘束し、被圧延材形状の安定化を図ると共に、径改削量ΔRを従来より増加させることのない上記
図3〜
図9を参照して説明した構成を有する中間圧延機5を創案した。
【0041】
本実施の形態に係る構成の中間圧延機5によれば、
図5〜
図9に示したように、上水平ロール40が、側面部にテーパー形状を有しない(即ち、テーパー角度0°)水平ロール部分40aと、側面部に所定角度のテーパー形状を有する水平ロール部分40bから構成され、下水平ロール41は、側面部にテーパー形状を有しない(即ち、テーパー角度0°)水平ロール部分41aと、側面部にテーパー形状を有する水平ロール部分41bから構成されるものとしている。
また、左竪ロール30は、周面部にテーパー形状を有しない(即ち、テーパー角度0°)竪ロール部分30aと、周面部に所定角度のテーパー形状を有する竪ロール部分30bから構成され、右竪ロール31は、周面部にテーパー形状を有しない(即ち、テーパー角度0°)竪ロール部分31aと、周面部に所定角度のテーパー形状を有する竪ロール部分31bから構成されるものとしている。
【0042】
水平ロール40、41及び竪ロール30、31を上記のようなテーパー形状を有しないロール部分とテーパー形状を有するロール部分とから構成することで、
図6に示すようにフランジ部の圧延開始時であっても、水平ロールのロール部分40a、41aの側面部とフランジ部20、21の内側面とを当接させた状態にさせることができる。よって、フランジ部の圧延開始時からフランジ部20、21を、竪ロール30、31と水平ロールのロール部分40a、41aとの間に挟持して拘束させて圧延を実施することができるため、ウェブ部25や被圧延材W全体が傾斜した状態で圧延・造形が行われてしまうといった
図11に示した従来の中間ユニバーサル圧延機における問題点を解消することが可能となる。更には、ウェブ中心偏りといった形状不良を抑制させ、寸法精度の高い中間圧延工程を実現させることができる。
【0043】
また、ロールと被圧延材Wとの接触・摩擦によるロール摩耗はフランジ部20、21の先端部近傍において顕著であり、フランジ部20、21とウェブ部25との接続部近傍(所謂コーナー部近傍)における摩耗深さは小さいことから、
図1を参照して説明した水平ロールの幅回復については、側面部にテーパー形状を有する水平ロール部分40b、41bのみにおいて実施すれば実用上十分であり、従前行われていたロールの幅回復を担保することができる。
【0044】
また、中間ユニバーサル圧延機には、通材を補助するためのガイドが設置されていることが知られているが、本実施の形態に係る中間圧延機を用いることで、中間圧延開始時から被圧延材Wが拘束されるため、圧延機導入前における被圧延材Wの予変形を抑制させることができ、ガイド設定の緩化やガイドコスト等の低減が図られる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0046】
例えば、上記実施の形態に係る中間圧延機5において、側面部に所定角度のテーパー形状を有する水平ロール部分40b、41b及び周面部にテーパー形状を有する竪ロール部分30b、31bのテーパー角度については規定しておらず任意であるが、当該テーパー角度は従来の中間ユニバーサル圧延機と同様に、例えば3°以上8°以下であることが好ましい。
【0047】
また、上記実施の形態に係る中間圧延機5の水平ロール40、41には、側面部にテーパー形状を有しない水平ロール部分40a、41aと、側面部にテーパー形状を有する水平ロール部分40b、41bが設けられているが、水平ロール40、41の側面部においてテーパー形状を形成させる範囲をどの程度に設定するかについては任意である。但し、ロールの幅回復を効率的に行うといった観点からは、当該テーパー形状を有しないロール部分の範囲が半径方向に被圧延材のフランジ片幅寸法の1/2以下であることが好適である。その理由は、
図12に示すように、水平ロール40、41の側面部のこの範囲では摩耗深さが小さいことから幅回復のためのテーパー形状を設ける必要がない(即ち、テーパー角度0°)からであり、摩耗深さの大きいフランジ片幅寸法の残りの部分にのみテーパー形状を付与すれば十分である。
【0048】
同様に、上記実施の形態において竪ロール30、31には、周面部にテーパー形状を有しない竪ロール部分30a、31aと、周面部にテーパー形状を有する竪ロール部分30b、31bが設けられているが、テーパー形状を形成させる範囲は任意に設定可能である。但し、水平ロール40、41に形成されるテーパー形状に対向するように設けられることが好ましく、水平ロール40、41の形状によって好適に変更することが好ましい。竪ロール30、31については、水平ロール40、41とは異なり側面部がなく幅回復する必要がないのでテーパー角を設ける必要はない。ただし、
図13のように上下一対の水平ロール40、41の円周面部同士を接触させ、そこにさらに左右一対の竪ロール30、31を前記水平ロール40、41の側面部に接触させて荷重をかけて、圧延機のガタを除去する(所謂、ロール零調)際に、上下水平ロール40、41の円周面間、および該水平ロール40、41の側面部と前記竪ロール30、31の周面部の間に隙間がないことが望ましい。その観点から、
図13のように竪ロール30、31の周面部において、テーパー形状を有しないロール部分30a、31aの範囲は、前記水平ロール40、41のテーパー形状を有しないロール部分40a、41aの範囲(δ)の2倍(2δ)に設定するのが好適である。
【0049】
また、上記実施の形態においては、中間圧延機5のロール構成について説明したが、中間圧延機5に付随して近接配置されるエッジャー圧延機9のロール構成についても適用可能である。即ち、エッジャー圧延機9のエッジャーロールについても、テーパー形状を有するロール部分とテーパー形状を有しないロール部分から構成されるようにしても良い。