(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
孔状をなす電池保持部を持つホルダと電池セルとを準備する準備工程と、前記電池セルの外周面に接着層を形成する接着層形成工程と、前記ホルダの前記電池保持部に前記電池セルを挿入する挿入工程と、を有し、
前記接着層形成工程において、
前記電池セルの外周面の一部の領域である第1領域に、変形可能な多孔層を設け、かつ、
前記第1領域に対して前記電池セルの挿入方向の後側に隣接する第2領域に、接着剤で構成される接着剤層を設けることで、前記多孔層と前記接着剤とを含む接着層を形成する、電池モジュールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体例を挙げて本発明の電池モジュールの製造方法を説明する。以下、必要に応じて、各実施例の電池モジュールの製造方法を単に各実施例の製造方法と略する。
【0015】
なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施形態中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0016】
(実施例1)
実施例1は本発明の第1の電池モジュールの製造方法に関する。
図1は実施例1の電池モジュールを模式的に表す斜視図である。
図2は、
図1に示す実施例1の電池モジュールの分解斜視図である。
図3は、実施例1の電池モジュールを
図1中X−X位置で切断した様子を模式的に表す断面図である。
図4は、実施例1の製造方法における接着層形成工程を模式的に表す説明図である。
図5は実施例1の製造方法における挿入工程を模式的に表す説明図である。
【0017】
以下、実施例において、上、下、左、右、前、後とは
図1に示す上、下、左、右、前、後を指す。実施例において、電池セルの軸方向Yとは
図1に示す上下方向を指す。なお、電池セル以外の部材における軸方向Yとは、
図1に示す組み付け状態において軸方向Yに一致する方向を指す。さらに、以下、電池セルの挿入方向とは、軸方向Yに一致する方向を指す。
【0018】
<電池モジュールの製造方法>
実施例1の電池モジュールの製造方法は、電池セル1、接着部42およびホルダ5を持つ電池モジュール(
図1および
図2参照)を製造する方法である。
【0019】
各電池セル1は、ホルダ5に設けられた貫通孔状の電池保持部50に挿入される。接着部42は、後述するように、多孔層40と固化した接着剤とを含む層であり、電池保持部50の内周面51と、電池セル1の外周面11と、の間に介在し、両者を固着する。実施例1の電池モジュールの製造方法は、準備工程、接着層形成工程および挿入工程を備える。
【0020】
(準備工程)
準備工程においては、上述した電池セル1およびホルダ5を準備した。電池セル1は略円柱状をなし、ホルダ5の電池保持部50は電池セル1の外径よりもやや大径の貫通孔状をなす。電池セル1は、
図1および
図3に示す組み付け状態において、ホルダ5における電池保持部50の内部に配置される部分と、その他の部分、つまり電池保持部50の外部に配置される部分とを有する。したがって、電池セル1の外周面11は、組み付け状態において、ホルダ5の電池保持部50の内周面51に対面する領域(固着領域Zと呼ぶ)と、その他の領域と、を有する。固着領域Zは、電池セル1の外周面11における軸方向Yの一部の領域からなる。固着領域Zは電池セル1の周方向の全周にわたって連続的に形成される。電池保持部50の内周面51と電池セル1の外周面11との隙間を、接着空間20と呼ぶ。
【0021】
(接着層形成工程)
図4に示すように、実施例1の製造方法における接着層形成工程では、先ず、電池セル1の外周面11に筒状の多孔層40を設ける。実施例1においては、多孔層40は、スポンジ製のテープの裏面にテープ用の接着剤層(図略)が積層されたスポンジテープが電池セル1の外周面11に巻回されてなる。なお、多孔層40のテープつまりスポンジ部分は、連泡型の発泡ウレタン樹脂製であり、弾性変形可能である。
【0022】
次いで、上記した多孔層40に流体状の接着剤を含浸させる。多孔層40に接着剤を含浸させる方法は特に限定せず、接着剤の種類や多孔層40の細孔径等に応じて既知の方法を適宜選択すれば良い。例えば、接着剤が低粘度である場合つまり接着剤の流動性が比較的高い場合や、多孔層40の細孔径が大きい場合には、多孔層40に接着剤を塗布するだけで多孔層40に接着剤を含浸させ得る。また、例えば接着剤が比較的高粘度である場合つまり接着剤の流動性が比較的低い場合や、多孔層40の細孔径が比較的小さい場合には、電池セル1に多孔層40を設け当該多孔層40の表面に接着剤を塗布したものを、真空室等の減圧雰囲気下におくことで、多孔層40に接着剤を含浸させることもできる。多孔層40に接着剤を含浸させる方法は、これに限らず、種々の方法を用い得る。多孔層40に接着剤を含浸させることで、電池セル1の外周面11に、多孔層40と接着剤とで構成される接着層4を形成し得る。
この工程によって、多孔層40に接着剤が含浸した接着層4を形成した。その後、放置して接着層4を固化させ接着部42とすることで、実施例1の電池モジュールを得た。
【0023】
挿入前の状態における接着層4の外径は、ホルダ5における電池保持部50の孔径よりも大きい。つまり、このとき接着層4の厚さは、組み付け状態における電池セル1の外周面11と電池保持部50の内周面51との距離よりも大きい。さらに換言すると、
図5中左側部分に示すように、挿入工程前の段階においてホルダ5の電池保持部50と電池セル1とを軸合わせして配置したとき(以下、必要に応じて軸合せ時と呼ぶ)に、筒状をなす接着層4の外周面41は電池保持部50の内周面51よりも径方向外側に位置する。また、略筒状をなす接着層4の内径は、電池保持部50の孔径よりも小さい。つまり、筒状をなす接着層4の内周面は電池セル1の外周面11と一致するため、軸合せ時には、接着層4の内周面は電池保持部50の内周面51よりも径方向内側に位置する。
【0024】
実施例1の製造方法において、多孔層40の厚さは1.0〜2.0mm程度であり、接着層4の厚さは0.4〜1.0mm程度であった。また、接着空間20の幅は0.1〜0.4mm程度であった。接着層4の厚さと接着空間20の幅との差は0〜0.4mm程度であった。なお、ここでいう多孔層40の厚さおよび接着層4の厚さとは、各層の厚さの平均値を指し、接着空間20の幅とは、電池セル1の外周面11と電池保持部50の内周面51との距離の平均値を指す。
【0025】
(挿入工程)
上述した接着層形成工程後に、接着層4を形成した電池セル1を、ホルダ5の電池保持部50に対して軸合わせして、電池セル1を電池保持部50に挿入した。具体的には、
図5中の左側の部分に示すように、固定したホルダ5に対して電池セル1を軸方向Yに沿って移動させることで、
図5中の中央の部分に示すように電池セル1を電池保持部50に挿入した。このとき電池セル1は
図1中下側から上側に向けてホルダ5に対して相対移動した。
【0026】
上述したように、電池セル1の外周面11には接着層4が設けられている。また、接着層4の厚さは、接着空間20の幅よりも大きい。このため、
図5中の中央部分に示すように、電池セル1を電池保持部50に挿入する際には、接着層4が電池保持部50の挿入端面52および内周面51に圧接し、圧縮されつつ接着空間20に入り込む。
【0027】
上記したように、接着層4には多数の細孔を有する多孔層40が含まれ、この多孔層40は変形可能である。このため、挿入工程においては、接着層4における多孔層40は変形しつつ接着空間20に向けて押圧される。多孔層40はそれ自身で形状維持できるため、
図5中の中央部分に示すように、多少の圧縮変形を伴いながらも、全体としては接着空間20に入り込む。
【0028】
またこのとき、多孔層40の変形に伴い、多孔層40の細孔に入り込んでいた接着剤の一部は多孔層40の外部に漏出し、多孔層40の表面つまり接着層4の表面に移動する。接着剤は、流体であり、多孔層40および電池保持部50よりも変形し易いため、多孔層40に対する潤滑剤として機能する。他方、多孔層40は形状維持能があるため、多孔層40は接着剤を塗り広げるための押圧材として機能する。このため、挿入工程においては、多孔層40が接着空間20に入り込み、それに伴って多孔層40に保持されていた接着剤もまた接着空間20に入り込み、接着空間20内で接着剤が電池保持部50の内周面51に塗り広げられるとともに、接着剤の潤滑作用によって多孔層40がさらに挿入方向の先側に進む。このようにして、接着層4は接着空間20に隙間なく充填される。
【0029】
(セル固着工程)
上記した挿入工程後、電池保持部50に電池セル1が挿入され、かつ、接着空間20に接着層4が充填されてなる、電池セル1、ホルダ5、および接着層4の複合体を静置し、流体状の接着剤を硬化させ固体状に状態変化させることで、接着部42と電池セル1とホルダ5とを有する実施例1の電池モジュールを得た。
なお、挿入工程後の多孔層40の軸方向長さは固着領域Zの軸方向長さと略同じであり、電池モジュールにおける接着部42の軸方向長さもまた固着領域Zの軸方向長さと略同じであった。
【0030】
実施例1の製造方法においては、接着層4を多孔層40と接着剤との2要素で構成し、上記したように挿入工程において、多孔層40と接着剤とを相互的に作用させたことで、ホルダ5の電池保持部50と電池セル1との間に充分に接着層4が充填されてなる電池モジュールを容易に製造できる。
【0031】
換言すると、実施例1の製造方法で得られた電池モジュールにおいては、多孔層40と接着剤とで構成された接着層4が、ホルダ5の電池保持部50と電池セル1との間に充填され、接着層4が固化してなる接着部42の接着強度に優れる。
【0032】
本発明の製造方法においては、上記したように、多孔層40は変形可能であり、接着剤は多孔層40よりも流動性が高く多孔層40よりも変形し易ければ良い。換言すると、多孔層40は変形可能な固体であり、接着剤は流体である。さらに言うと、固体である多孔層40は変形しても壊れず、流体である接着剤は流動性があり相手形状に沿う。本発明の製造方法では、このような多孔層40と接着剤とを組み合わせることによって、ホルダ5の電池保持部50と電池セル1との間に充分に接着層4が充填されてなる電池モジュールを容易に製造できる。
【0033】
実施例1の製造方法における接着層形成工程では、多孔層40は電池セル1における外周面11の全周にわたって設けたが、本発明の製造方法における接着層形成工程では、多孔層40は電池セル1の外周面11における全周に設けなくても良い。例えば多孔層40には、軸方向Yに延びるスリットを1つ以上設けても良い。この場合、多孔層40の変形量が充分に大きく、かつ、スリット幅が充分に細ければ、挿入工程において多孔層40が変形する際にスリットが閉じる。接着剤は多孔層40に追従してスリットに満たされるので、接着層4は実質的に電池セル1の外周面11全周に設けられる。
【0034】
接着層形成工程において、接着剤は多孔層40の全体に含浸するのが好ましいが、接着層形成工程においては多孔層40には部分的に接着剤の含浸されていない部分があっても良い。つまり、挿入工程において多孔層40の変形に伴って接着剤が移動することで、多孔層40の変形量によっては、接着層形成工程において接着剤が含浸されていなかった多孔層40の部分にも、挿入工程において接着剤が行き渡るためである。なお、接着層4の接着性を考慮すると、接着層4に接着剤が多く含まれているのが好ましく、接着層形成工程において接着剤は多孔層40の表面を濡らす程度に多孔層40に含浸されるのが好ましい。
【0035】
実施例1の製造方法における多孔層40は弾性変形可能であったが、本発明の製造方法においては、多孔層40は変形可能であれば良く、塑性変形しても良い。多孔層40が弾性変形可能であれば、挿入工程において電池保持部50の内周面51および/またはホルダ5の挿入端面52に圧接して弾性変形した多孔層40が、自身の弾性によって接着空間20に充ちる。また、変形時に多孔層40から漏出した接着剤は、多孔層40が弾性により元の形状に戻る際に、多孔層40に再度吸収される。したがってこの場合には、接着空間20には接着剤を充分に保持した多孔層40つまり接着層4が充填される。また、接着剤が多孔層40に再度吸収されることで、電池セル1の軸方向Yの端部における接着剤の漏出を抑制できる。このため、接着剤のロスを抑制できるとともに、電池セル1における軸方向Yの端部つまり電池セル1の端子部付近に、漏出した接着剤による絶縁部が形成されることを抑制できる。
【0036】
端子部に当接しない限り多孔層40は導電性であっても良いが、当然乍ら、多孔層40は絶縁性であるのが好ましい。絶縁性の多孔層40の材料としては、例えば、樹脂、ゴム、エラストマ、グラスファイバー等が例示できる。これらの材料を、例えばスポンジ状、不織布状、織布状、ネット状、コイル状および/またはブラシ状等の立体形状にしたものを多孔層40として使用すれば良い。多孔層40における細孔の数や形状、気孔率等は特に限定しないが、接着剤を含浸させることを考慮すると、多孔層40は連泡型であるのが好ましい。連泡型の多孔層40とは、連続気泡型の細孔を有する多孔層40を指し、より具体的には、多孔層40における少なくとも一部の細孔が互いに連通して貫通孔を形成するものを指す。これに対して独泡型の多孔層40とは、独立気泡型の細孔を有する多孔層40を指し、より具体的には、多孔層40における細孔が互いに独立し連通していないものを指す。
第1の電池モジュールの製造方法で用いる多孔層40は連泡型のものである必要があり、第2の電池モジュールの製造方法で用いる多孔層40は連泡型であっても独泡型であっても良いが、連泡型であるのが好ましい。また、接着剤を含浸させることを考慮すると、多孔層40における細孔の平均細孔径は100μm以上であるのが好ましく、1000μm以上であるのがより好ましい。なお、平均細孔径は窒素ガス吸着法によって測定可能である。
【0037】
接着剤は如何なるものであっても良く、その材料や粘度等は特に限定しないが、固化前の状態における多孔層40に対する接触角が小さいのが良い。具体的には、当該接触角は30°以下であるのが好ましく、15°以下であるのがより好ましい。
以下、参考までに実施例1の電池モジュールを説明する。
【0038】
<電池モジュール>
実施例1の電池モジュールは、実施例1の電池モジュールの製造方法で得られたものである。
図1および
図2に示すように、実施例1の電池モジュールは、電池セル1、接着部42、ホルダ5、セパレータ90、および、バスバー91で構成されている。
【0039】
実施例1の電池モジュールは16個の電池セル1を持つ。各電池セル1は、略同形の円筒形セルであり、軸方向Yの両端にそれぞれ端子19(正極端子、負極端子)を持つ。ホルダ5は略板状をなし、16個の電池保持部50を持つ。各電池保持部50は貫通孔状をなし、各電池保持部50の内径は各電池セル1の外径よりもやや大きい。各電池保持部50にはそれぞれ対応する電池セル1が挿入される。実施例1の電池モジュールにおいて、各電池セル1は、4本一組としてバスバー91によって直列に接続される。バスバー91と電池セル1との間には、図略の導電材層が設けられている。導電材層はバスバー91と電池セル1の端子19とを電気的に接続するための層である。導電材層の形状は特に限定されず、タブ溶接やワイヤーボンディング、ろう付け等の方法の既知の方法で形成できる。
【0040】
バスバー91と電池セル1との間には、局所的に、セパレータ90が介在している。セパレータ90は、電池セル1とバスバー91との電気的接続を部分的に遮断することで、短絡を防ぎつつ、バスバー91によって電池セル1を接続するための部材である。セパレータ90は絶縁材で構成すれば良く、本実施例では絶縁樹脂製である。
【0041】
接着部42は、硬化した接着剤と多孔層40とで構成される層であり、ホルダ5に設けられている電池保持部50の内周面51と、電池セル1の外周面11と、の間に介在し、電池保持部50の内周面51および電池セル1の外周面11に固着している。
図3に示すように、接着部42は、多孔層40と、多孔層40に含浸されている接着剤とで構成された二相構造をなす。換言すると、接着部42は多孔層40からなるマトリックスに接着剤が分散されてなる。接着部42は、電池セル1の固着領域Zの全体に設けられている。接着部42は固着領域Zにおいて、電池セル1の周方向全周にわたって電池保持部50の内周面51と電池セル1の外周面11との間に介在している。このため接着部42は、実施例1においては
図2に示すように略筒状をなす。接着部42の内周面は電池セル1の外周面11に接し、接着部42の外周面41は電池保持部50の内周面51に接している。つまり、接着部42は、固着領域Zにおいて、電池セル1の外周面11と電池保持部50の内周面51との間に行き渡り、周方向の全周および軸方向の全長にわたって隙間なく充填されている。
【0042】
実施例1の製造方法によると、上述したように、挿入工程において接着層4の略全体が接着空間20に入り込む。したがって、
図3に示すように、実施例1の製造方法で得られた実施例1の電池モジュールにおいては、電池保持部50における挿入方向の後側端面に漏れ出るまたは残存する接着部42は非常に少ない。これは、挿入工程において、それ自体で形状を維持できる多孔層40が挿入方向の先側にあり、この多孔層40が接着剤を接着空間20に引き込むためである。また、多孔層40は細孔に接着剤を保持するため、電池セル1における挿入方向の先側端面に漏れ出る接着部42もまた非常に少ない。このため、実施例1の電池モジュールにおいては、電池セル1や電池保持部50の接着剤による汚染が抑制される。
【0043】
(実施例2)
実施例2は本発明の第2の電池モジュールの製造方法に関する。実施例2の製造方法は、接着層形成工程以外は実施例1の製造方法と概略同じである。実施例2の電池モジュールは、接着層以外は実施例1の電池モジュールと概略同じである。したがって、実施例2の製造方法における準備工程およびセル固着工程は実施例1の製造方法と概略同じである。よって、実施例2では接着層形成工程および挿入工程のみを説明する。
図6は実施例2の製造方法における接着層形成工程を模式的に表す説明図である。
図7は実施例2の製造方法における挿入工程を模式的に表す説明図である。
【0044】
(接着層形成工程)
実施例2の製造方法における接着層形成工程では、電池セル1の外周面11に実施例1よりも軸方向長さの短い多孔層40を形成し、この多孔層40に実施例1と同じ接着剤を含浸させた。電池セル1の外周面11において多孔層40を形成した領域を第1領域Iと呼ぶ。第1領域Iは、電池セル1の外周面11において挿入方向の先側に位置する領域である。
【0045】
また、電池セル1の外周面11において、第1領域Iに対して挿入方向の後側に隣接する第2領域IIに、多孔層40に含浸させた接着剤よりも高粘度の接着剤を塗布し、接着剤層を設けた。「高粘度の接着剤」は「挿入工程においても形状維持され易いためにホルダと電池セルとの相対位置を維持し得る接着剤」、或いは、「低粘度の接着剤に比べて流動性の低い接着剤」と言い換える事もできる。また、「低粘度の接着剤」は「挿入工程において潤滑剤として機能し得る接着剤」、或いは、「高粘度の接着剤に比べて流動性の高い接着剤」と言い換える事もできる。以下、必要に応じて、接着剤層を構成する接着剤を高粘度接着剤と呼び、多孔層40に含浸させた接着剤を低粘度接着剤と呼ぶ。多孔層40および多孔層40に含浸された接着剤からなる層を先側部45と呼び、高粘度接着剤からなる層を後側部46と呼ぶ。つまり、実施例2の製造方法においては、先側部45と後側部46とで接着層4が構成される。なお、実施例2の製造方法における後側部46は、本発明の製造方法における接着剤層に相当する。
【0046】
先側部45は、その軸方向長さ以外は、実施例1の製造方法における接着層4と概略同じである。先側部45の厚さと後側部46の厚さとは略同じであり、これらの厚さは実施例1における接着層4の厚さと略同じである。後側部46における挿入方向先側端面47は、先側部45における挿入方向後側端面48に接触している。先側部45および後側部46は、何れも、電池セル1の外周面11の全周にわたって設けられている。
【0047】
図7中の左側部分に示すように、軸合せ時において、筒状をなす先側部45の外周面および後側部46の外周面は電池保持部50の内周面51よりも径方向外側に位置する。実施例2の製造方法においても、多孔層40の厚さは1.0〜2.0mm程度であり、接着層4の厚さは0.4〜1.0mm程度であった。また、接着空間20の幅は0.1〜0.4mm程度であった。接着層4の厚さと接着空間20の幅との差は0〜0.4mm程度であった。
【0048】
(挿入工程)
上述した接着層形成工程後に、接着層4を形成した電池セル1をホルダ5の電池保持部50に対して軸合わせし、電池セル1を電池保持部50に挿入した。電池セル1の外周面11に設けられた接着層4の厚さは接着空間20の幅よりも大きい。このため、実施例2の製造方法においても、電池セル1を電池保持部50に挿入する際には、接着層4が電池保持部50の挿入端面52、および、電池保持部50の内周面51に圧接する。接着層4における挿入方向の先側部分を構成する先側部45は、実施例1における接着層4と同様に、変形可能な多孔層40と、多孔層40よりも流動性が高く多孔層40よりも変形し易い接着剤とを含む。このため先側部45は、実施例1における接着層4と同様に、多孔層40と接着剤との相互的な作用によって、接着空間20に隙間なく入り込む。他方、先側部45に隣接する後側部46は、多孔層40を含まないものの、先側部45に引き込まれて接着空間20に入り込む。後側部46を構成する接着剤は、先側部45を構成する低粘度接着剤よりも粘度の高い高粘度接着剤であるため、後側部46は先側部45における多孔層40と同様に、低粘度接着剤の潤滑作用によって接着空間20に滑り込むとともに、低粘度接着剤を電池保持部50の内周面51に塗り広げる。このため、後側部46もまた先側部45と同様に接着空間20に隙間なく充填される。したがって、挿入工程においては、接着空間20には接着層4が周方向の全周および軸方向の全長にわたって隙間なく充填される。
【0049】
つまり、実施例2の製造方法によっても、ホルダ5の電池保持部50と電池セル1との間に充分に接着層4が充填されてなる電池モジュールを容易に製造できる。
【0050】
なお、実施例2の製造方法の接着層形成工程では、先側部45の軸方向長さと後側部46の軸方向長さとが略同じであったが、先側部5の形状が充分に維持できれば、先側部45の軸方向長さと後側部46の軸方向長さとの比に特に制限はない。
後側部46に用いる高粘度接着剤は、挿入工程において低粘度接着剤よりも粘度が高ければ良く、接着層形成工程前、および、挿入工程後の粘度は特に問わない。
【0051】
実施例2においては後側部46が高粘度接着剤を含み先側部45が低粘度接着剤を含むが、後側部46を構成する接着剤と先側部45を構成する接着剤とは同じものであっても良い。また、先側部45を構成する接着剤が高粘度接着剤であり後側部46を構成する接着剤が低粘度接着剤であっても良い。何れの場合にも、先側部45は多孔層40と接着剤との相互作用によって接着空間20に入り込み、先側部45に接触する後側部46もまた先側部45によって接着空間20に引き込まれるため、接着空間20には周方向の全周および軸方向の全長にわたって、接着層4が隙間なく充填される。
【0052】
なお、先側部45と後側部46とは接着層形成工程において互いに接触するように設けるのが好ましいが、例えば、先側部45と後側部46とは接着層形成工程においては僅かに離間していても良い。この場合、挿入工程において変形し、挿入方向の後側に膨出した先側部45が後側部46に接触すれば、同様に後側部46は先側部45に引き込まれて接着空間20に入り込む。
【0053】
ところで、本発明における接着剤とは、流体状から固体状に状態変化可能であり、流体状から固体状に状態変化する際に少なくとも電池セル1の外周面11と電池保持部50の内周面51とに固着可能な組成物を指す。例えば接着剤は、挿入工程つまり電池保持部50に電池セル1を挿入している時点においては流体状であれば良い。そして、接着剤は、セル固着工程つまり電池保持部50に電池セル1が挿入された後には、化学反応や溶媒の気化等によって硬化することで、流体状から固体状に状態変化し、電池保持部50の内周面51および電池セル1の外周面11に固着できれば良い。ここでいう流体状とは流動可能である状態を指し、液状、ゲル状、ゾル状、スラリー状等を含む概念である。接着剤として、具体的には、反応系接着剤、溶剤系接着剤、エマルジョン系接着剤、ホットメルト系接着剤、合成ゴム系接着剤等が挙げられる。
【0054】
高粘度接着剤は低粘度接着剤よりも粘度が高ければ良く、高粘度接着剤と低粘度接着剤とは異なる材料で構成されていても良いし、同じ材料で構成されていても良い。接着剤の粘度は種々の方法によって調整できる。例えば、接着剤に含まれるオリゴマー、ポリマー等の樹脂構成成分の分子量を適宜設定することにより、粘度調整することもできる。一般に、低分子量の樹脂構成成分は高分子量の樹脂構成成分に比べて粘度が低いとされている。或いは、接着剤に各種のフィラーを配合することで接着剤の粘度を調整することもできる。さらには、フィラーの種類や量を適宜設定することによって接着剤の粘度を調整することも可能である。フィラーの種類や粒径等にもよるが、小径のフィラーを用いる場合であれば、一般には、フィラーの配合量が多い程、接着剤の粘度が高まるとされている。接着剤が溶剤系接着剤やエマルジョン系接着剤であれば、溶媒や分散媒の配合割合(つまり接着剤の固形分濃度)を適宜調整することによって、接着剤の粘度を調整することもできる。固形分濃度が高い程、接着剤の粘度が高まる。さらに、主剤と硬化剤との混合比や主剤および/または硬化剤の種類を適宜変更することによっても、接着剤の粘度を調整し得る。
【0055】
実施例2の製造方法で得られた実施例2の電池モジュールは、接着部42以外は実施例1の電池モジュールと概略同じであり、先側部45にのみ多孔層40が存在し、後側部46に多孔層40が存在しない点で実施例1の電池モジュールと大きく相違する。
【0056】
(実施例3)
実施例3は本発明の第2の電池モジュールの製造方法に関する。実施例3の製造方法もまた、接着層形成工程以外は実施例1の製造方法と概略同じであり、実施例3の電池モジュールは、接着部以外は実施例1の電池モジュールと概略同じである。したがって、実施例2と同様に、実施例3では接着層形成工程および挿入工程のみを説明する。
図8は実施例3の製造方法における接着層形成工程を模式的に表す説明図である。
図9は実施例3の製造方法における挿入工程を模式的に表す説明図である。
【0057】
(接着層形成工程)
図8に示すように、実施例3の製造方法における接着層形成工程では、電池セル1の外周面11における第1領域Iに実施例2よりもさらに軸方向長さの短い多孔層40を形成し、この多孔層40には接着剤を含浸させなかった。第2領域IIには実施例2と同じ高粘度接着剤を塗布し、接着剤層を設けた。つまり、実施例3においては、先側部45に接着剤が含まれず、先側部45の軸方向長さL1が実施例2に比べて短く、後側部46の軸方向長さL2が実施例2に比べて長い。先側部45の軸方向長さL1と後側部46の軸方向長さL2との和、つまり、接着層4の軸方向長さは実施例2と同じである。また、接着層4の厚さもまた実施例2と同じである。後側部46における挿入方向先側端面47は、先側部45における挿入方向後側端面48に接触している。先側部45および後側部46は、何れも、電池セル1の外周面11の全周にわたって設けられている。
【0058】
図9中の左側部分に示すように、軸合せ時において、筒状をなす先側部45の外周面および後側部46の外周面は電池保持部50の内周面51よりも径方向外側に位置する。実施例3の製造方法においても、多孔層40の厚さは1.0〜2.0mm程度であり、接着層4の厚さは0.4〜1.0mm程度であった。また、接着空間20の幅は0.1〜0.4mm程度であった。接着層4の厚さと接着空間20の幅との差は0〜0.4mm程度であった。
【0059】
(挿入工程)
上述した接着層形成工程工程後に、接着層4を形成した電池セル1をホルダ5の電池保持部50に対して軸合わせし、電池セル1を電池保持部50に挿入した。電池セル1の外周面11に設けられた接着層4の厚さは接着空間20の幅よりも大きいため、
図9中の中央部分に示すように、実施例3の製造方法においても、電池セル1を電池保持部50に挿入する際には、接着層4が電池保持部50の挿入端面52、および、電池保持部50の内周面51に圧接する。
【0060】
接着層4のうち先側部45は、変形可能な多孔層40のみからなる。このため先側部45は、接着剤による潤滑作用はないものの、多孔層40自身の形状維持力によって、接着空間20に隙間なく入り込む。他方、先側部45に隣接する後側部46は、多孔層40を含まないものの、実施例2と同様に、先側部45に引き込まれて接着空間20に入り込む。後側部46は接着剤で構成されているため、後側部46は自身の潤滑作用によって接着空間20に滑り込むとともに、電池保持部50の内周面51に塗り広げられる。後側部46における挿入方向先側端面47は先側部45に当接しているため、後側部46は先側部45に接着されていると言い換える事もできる。このため、後側部46は主として先側部45に引き込まれることで接着空間20に隙間なく充填される。したがって、実施例3の製造方法においても、挿入工程において接着空間20には周方向の全周および軸方向の全長にわたって接着層4が隙間なく充填される。
【0061】
つまり、実施例3の製造方法によっても、ホルダ5の電池保持部50と電池セル1との間に充分に接着部42が充填されてなる電池モジュールを容易に製造できる。
【0062】
なお、実施例3の製造方法の接着層形成工程では、後側部46の軸方向長さL2を先側部45の軸方向長さL1よりも長くした。しかし、本発明の製造方法においては、後側部46の軸方向長さL2と先側部45の軸方向長さL1との比は特に限定されない。例えば、電池モジュールに要求される接着強度によっては、後側部46の軸方向長さL2を先側部45の軸方向長さL1よりも短くしても良い。
【0063】
参考までに、実施例3においては、後側部46の軸方向長さL2を先側部45の軸方向長さL1よりも長くすることで、接着層4に占める接着剤の割合を大きくし、接着層4の接着強度を高めている。接着強度の観点からは、後側部46の軸方向長さL2を先側部45の軸方向長さL1よりも長くするのが好ましい。より具体的には、後側部46の軸方向長さL2は、先側部45の軸方向長さL1の2倍以上であるのが好ましく、3倍以上であるのがより好ましい。
【0064】
実施例3の製造方法で用いた多孔層40には、接着剤が含浸しなくても良い。このため、実施例3の製造方法では、多孔層40として独泡型のものを用いる事もできる。なお、この場合にも、先側部45における後側部46との境界部分には、後側部46を構成する接着剤が付着する。したがって、先側部45のなかで当該境界部分に開口する細孔には、接着剤が含浸される。したがって、この場合にも先側部45の少なくとも一部には接着剤が含浸されると言える。なお、挿入工程において先側部45によって後側部46を信頼性高く引き込むためには、接着剤層形成工程において先側部45が後側部46に接着性高く接着されるのが好ましい。したがって、先側部45における後側部46との境界部分は表面積が大きいのが好ましく、先側部45は連泡型の多孔層40で構成されるのが好ましい。なお、先側部45を連泡型の多孔層40で構成する場合、接着剤の粘度や先側部45と後側部46との軸方向長さの比率等によっては、挿入工程時に先側部45の全体に接着剤が含浸される場合もある。
【0065】
実施例3の製造方法で得られた実施例3の電池モジュールは、接着部42以外は実施例2の電池モジュールと概略同じであり、先側部45に接着剤が略存在しない点で実施例2の電池モジュールと大きく相違する。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の電池モジュールの用途は特に限定されず、様々な装置や備品等に配設できる。具体例としては、車両用に搭載する組電池を挙げることができる。
【0067】
(備考1)
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【0068】
(備考2)
本発明の電池モジュールの製造方法は、以下のように表現できる。
(1)孔状をなす電池保持部50を持つホルダ5と電池セル1とを準備する準備工程と、前記電池セル1の外周面11に接着層4を形成する接着層形成工程と、前記ホルダ5の前記電池保持部50に前記電池セル1を挿入する挿入工程と、を有し、
前記接着層形成工程において、変形可能な多孔層40を前記電池セル1の外周面11に設け、かつ、前記多孔層40に接着剤を含浸させることで、前記多孔層と前記接着剤とを含む接着層を形成する、電池モジュールの製造方法。
(2)孔状をなす電池保持部50を持つホルダ5と電池セル1とを準備する準備工程と、前記電池セル1の外周面11に接着層4を形成する接着層形成工程と、前記ホルダ5の前記電池保持部50に前記電池セル1を挿入する挿入工程と、を有し、
前記接着層形成工程において、
前記電池セル1の外周面11の一部の領域である第1領域Iに、変形可能な多孔層40を設け、かつ、
前記第1領域Iに対して前記電池セル1の挿入方向の後側に隣接する第2領域IIに、接着剤で構成される接着剤層を設けることで、前記多孔層と前記接着剤とを含む接着層を形成する、電池モジュールの製造方法。
(3)前記接着層形成工程において、
前記電池セル1の外周面11における軸方向Yの少なくとも一部の領域において、前記電池セル1の外周面11の全周にわたって前記接着層4を設ける、(1)または(2)に記載の電池モジュールの製造方法。
(4)前記多孔層40は、弾性変形可能である、(1)〜(3)の何れか一項に記載の電池モジュールの製造方法。
(5)前記接着層形成工程において、前記多孔層40と前記接着剤層とを接触させる、(2)〜(4)の何れか一項に記載の電池モジュールの製造方法。
(6)前記接着層形成工程において、前記多孔層40に、前記接着剤層を構成する接着剤よりも粘度の低い低粘度接着剤を含浸させる、(2)〜(5)の何れか一項に記載の電池モジュールの製造方法。
(7)孔状をなす電池保持部50を持つホルダ5と、前記ホルダ5の前記電池保持部50に挿入されている電池セル1と、前記ホルダ5と前記電池セル1との間に介在している接着部42と、を有し、
前記接着部42は、多孔層40と、前記多孔層40の少なくとも一部に含浸されている接着剤と、を有する、電池モジュール。