特許第6394479号(P6394479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394479
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】CO又はメタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/40 20170101AFI20180913BHJP
   C07C 1/12 20060101ALI20180913BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   C01B32/40
   C07C1/12
   C07C9/04
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-88569(P2015-88569)
(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公開番号】特開2016-204211(P2016-204211A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】吉村 篤軌
(72)【発明者】
【氏名】中川 博之
(72)【発明者】
【氏名】水野 恒
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−105625(JP,A)
【文献】 米国特許第05022970(US,A)
【文献】 INOUE, Tooru et al.,Photoelectrocatalytic reduction of carbon dioxide in aqueous suspensions of semiconductor powders,Nature,1979年,Volume 277,pp. 637-638
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00−32/991
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2を還元してCO又はCH4を製造する方法において、CO2が溶存するとともに複数のSiCと複数の研磨材とが分散した水を、攪拌状態とすることにより、SiCと水とCO2とを接触させることを特徴とするCO又はCH4の製造方法。
【請求項2】
研磨材は粒子である請求項1記載のCO又はCH4の製造方法。
【請求項3】
SiCは粒子である請求項1又は2記載のCO又はCH4の製造方法。
【請求項4】
SiCは粒径が2mm以下の粒子であり、研磨材は粒径がSiCの粒径よりも大きい粒子である請求項1記載のCO又はCH4の製造方法。
【請求項5】
研磨材の材料はセラミックである請求項1、2、3又は4記載のCO又はCH4の製造方法。
【請求項6】
セラミックはZrO2、Al23又はガラスである請求項5記載のCO又はCH4の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2(二酸化炭素)を還元してCO(一酸化炭素)又はCH4(メタン)を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、CO2を還元してCH4等を得る方法が検討されている。例えば、特開平8−127544号公報(特許文献1)には、固定床流通反応装置に、Ce−Ni合金、Ce・Ni複合酸化物又はCe・Ni混合酸化物を触媒としてセットし、CO2とH2(水素)の混合ガスを5MPaで供給し、加熱下で反応させてCH4を製造したこと、反応温度200℃で同触媒が触媒作用を示し始めたことが記載されている。
【0003】
しかし、この方法では、H2ガスの供給と高温高圧を必要とすることから、反応設備が複雑になり高コストになる等の問題がある。
【0004】
特開2000−344689号公報(特許文献2)には、ガラス容器に蒸留水を入れ、その蒸留水にFe(鉄)を触媒として分散させ、その分散液にCO2ガスで一定時間バッブリングした後、室温下で一定時間放置したところ、CH4とC2H6(エタン)が生成されたことが記載されている。この方法では、H2ガスの供給も高温高圧も必要としていない。
【0005】
しかし、この方法を本発明者らが追試したところ、同公報に記載されている程のCH4等を得ることができなかった(炭化水素の収量が小さい)。また、Fe粉は直ちに酸化物や水酸化物となってしまうため、一度反応させると反応が終了してしまい、繰り返し使用できなかった。
【0006】
特開2001−97894号公報(特許文献3)には、電解質膜の片面にTiO2からなる第1の光触媒層と導電層とからなるアノードを形成し、電解質膜の他面にSiCからなる第2の光触媒層と導電層とからなるカソードを形成し、この電解質膜を容器中にセットして両導電層の導通をとり、アノードサイトに水を供給し、カソードサイトにCO2ガスを供給し、両光触媒層に太陽光やランプ光によって光照射すると、カソードサイトにおいてホルムアルデヒドとメタノールとギ酸が検出されたことが記載されている。
【0007】
しかし、この方法は、電解質膜と、光照射を必要とすることから、反応設備が複雑になり高コストになる等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−127544号公報
【特許文献2】特開2000−344689号公報
【特許文献3】特開2001−97894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の第1の目的は、H2ガスの供給も高温高圧も光照射も必要とせず(但しこれらを除外はしない。)、CO2を還元してCO又はCH4を低コストで製造することができ、反応設備を簡単化できるようにすることにある。第2の目的は、使用材料(SiC)の繰り返し使用性を発現して、消耗するまで使用できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、CO2を還元してCO又はCH4を製造する方法において、CO2が溶存するとともに複数のSiCと複数の研磨材とが分散した水を、攪拌状態とすることにより、SiC(炭化ケイ素)と水とCO2とを接触させることを特徴とする。
【0011】
この接触によりCO又はCH4が生成する反応機構については、次のように推測している。
図1に示すように、SiCと水とCO2とが接触すると、SiC+3CO2→SiO2+4COの反応と、SiC+2H2O→SiO2+2H2+Cの反応が生じ(さらにO2が接触する場合はSiC+3/2O2→SiO2+COの反応も生じ)、SiCの表面が酸化されるとともにCOとH2が生成する。
そして、CO+3H2→CH4+H2Oの反応でCH4が生成するものと考えられる。
【0012】
上記反応は、SiCの表面に形成されるSiO2膜を除去しながら行うことが好ましい。SiCの表面に形成されるSiO2膜は酸化保護膜となって以後の反応を抑制するので、これを除去して反応を持続させ、SiCの繰り返し使用性を発現させるためである。このSiO2膜の除去は、衝突、擦れ等による粉砕といった物理的な除去を例示できる。
【0015】
そこで、本発明は、CO2が溶存するとともに複数のSiCと複数の研磨材とが分散した水を、攪拌状態とすることにより行う。この攪拌によりSiCどうしが衝突するとともに、研磨材がSiCに衝突して、上述したSiO2膜の粉砕除去が効率的に行われると考えられるからである。
【0016】
研磨材は粒子である態様を例示できる。SiCは粒子である態様を例示できる。好ましくは、SiCは粒径が2mm以下(より好ましくは0.2μm〜0.4mm)の粒子であり、研磨材は粒径がSiCの粒径よりも大きい(より好ましくは5μm〜5mm)粒子である態様を例示できる。研磨材の粒径がSiCの粒径よりも大きいと、SiCに衝突するエネルギーが大きくなり、上述したSiO2膜の粉砕除去がより効率的に行われると考えられるからである。
【0017】
研磨材の材料はセラミック(SiCを除く。)が好ましい。セラミックはZrO2(ジルコニア)、Al23(アルミナ)又はガラスを例示できる。セラミックは硬度が高いため、同じく硬質であるSiO2膜を粉砕しやすいと考えられるからである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、H2ガスの供給も高温高圧も光照射も必要とせず(但しこれらを除外はしない。)、CO2を還元してCO又はCH4を低コストで製造することができ、反応設備を簡単化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明におけるCO又はCH4の生成反応機構を説明する図である。
図2】本発明の実施例C1〜C11の繰り返し試験におけるCO収率の変化を示すグラフである。
図3】本発明の実施例C1〜C11の繰り返し試験におけるCH4収率の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.SiC
SiCの形態は、特に限定されないが、粒子状、線状、板片状等を例示できる。比表面積が大きく反応量が多くなることから、粒子が好ましい。SiC粒子の粒径は、特に限定されないが、0.1μm〜2mmを例示できる。
【0021】
2.水
水の状態は、液体(霧状を含む。)でも、気体(水蒸気)でもよい。
【0022】
3.CO2
CO2の状態は、液体の水に溶存した状態でも、気体(CO2ガス)でもよい。CO2ガスであっても、SiCと水とに接触させると、一部が水に溶ける。
【0023】
4.研磨材
研磨材の形態は、特に限定されないが、粒子状を例示できる。研磨材粒子の粒径は、特に限定されないが、5μm〜5mmを例示できる。SiCが粒子である場合、研磨材の粒径はSiCの粒径よりも大きいことが好ましい。研磨材の粒径が大きいと、SiC粒子に衝突するときのエネルギが大きいため、SiC表面のSiO2膜を除去する作用が強いからである。
【0024】
研磨材の材料は、特に限定されないが、セラミック(SiCを除く。)、金属、樹脂等を例示でき、モース硬度が7以上である材料が好ましい。セラミックは、ZrO2、Al23、B4C(炭化ホウ素)、BN(窒化ホウ素)等を例示できる。
【0025】
5.SiCと水とCO2との接触
SiCと水とCO2との接触の態様としては、特に限定されないが、次の態様を例示できる。
(1)液体の水にCO2が溶存するとともに複数のSiCが分散した態様。
この態様は、例えば、液体の水中にSiCを投入しCO2をバブリングする方法や、すでにCO2を溶存する液体の水中にSiCを投入する方法で実施できる。
(2)SiCと水蒸気又は霧状の水とCO2ガスとが接触した態様。
この態様は、例えば、CO2が存在する気中にSiCを入れ、そのSiCに水蒸気や霧状の水を接触させる方法で実施できる。
【0026】
6.攪拌状態
CO2が溶存するとともに複数のSiCが分散した液体の水を攪拌状態とする方法としては、特に限定されないが、水を入れた容器を上下又は左右に振動させる方法、マグネチックスターラーを用いる方法、撹拌翼(インペラー)を用いる方法等を例示できる。
【0027】
7.温度及び圧力について
本発明の方法は、常温常圧で反応を行わせることができるので、反応設備を簡素化することができる。但し、本発明は、常温常圧以外で反応を行わせることを排除するものではない。常温とは例えば20±15℃(5〜35℃)である。常圧とは例えば0.1±0.05MPa(0.05〜0.15MPa)である。
常温常圧以外の二例を下に挙げる。
(1)反応に伴う発熱又は吸熱等による温度変化や、反応容器内のガス量の変化(ガスの生成又は分解)等による圧力変化によって、常温常圧以外となる例。
(2)外部から加熱や冷却又は加圧や減圧の操作を行って、常温常圧以外とする例。
【0028】
6.水素ガスについて
本発明によれば、外部からH2ガスを供給する必要がないので、反応設備を簡素化することができる。但し、本発明は、外部からH2ガスを供給することを排除するものではない。
【実施例】
【0029】
[実施例A1〜A19]
まず、主に材料について検討するため、次の表1及び表2に示すとおり、実施例A1〜A19として、SiCとして6種のSiC粒子から1種を選択して使用し、研磨材を使用しないか又は研磨材として10種の研磨材粒子から1種を選択して使用し、CO2が溶存するとともに複数のSiC粒子と複数の研磨材粒子とが分散した水を、上下振動による攪拌状態として、24時間反応を行わせ、生成したガス成分を分析した。なお、各表において「ND」は検出下限以下を意味する。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
ここで、使用したSiCの詳細は、次のとおりである。
β−SiC:立方晶SiCの粒子(粒径0.2〜0.4μm)
α−SiC:六方晶SiCの粒子(粒径3μm以下)
カーボランダム♯16:同名称で一般に市販されているSiCを主成分とする粒子(粒径1.18mm)
カーボランダム♯100:同名称で一般に市販されているSiCを主成分とする粒子(粒径125μmm)
カーボランダム♯400:同名称で一般に市販されているSiCを主成分とする粒子(粒径30μm)
【0033】
使用した研磨材の詳細は、次のとおりである。
ZrO2ビーズ(SG):サンゴバン社製のZrO2粒子(粒径0.5mm)
ZrO2粉末:和光純薬工業社製のZrO2粒子(粒径3μm以下)
NK−ZrO2ビーズ:ニッカトー社製のZrO2粒子(粒径0.3mm)
NM−ZrO2ビーズ:ニイミ産業社製のZrO2粒子(粒径30μm)
CZCビーズ:アズワン製のZrO2粒子(粒径0.9〜1.1mm)
高純度Al23ボール:アズワン社製のAl23粒子(粒径1mm)
HDボール:アズワン社製のAl23粒子(粒径2mm)
アルミナ粉末:Axens Canada社製のAl23粒子(粒径12μm)
ガラスビーズ:アズワン社製のガラス粒子(粒径0.5〜0.71mm)
ナイロン球:アズワン社製のナイロン粒子(粒径3.2mm)
【0034】
試験方法の詳細は、次のとおりである。
[1 材料の接触]:容量150mLの無色透明のバイアル瓶に、まずSiCのみ又はSiC及び研磨材を入れ、次に90mLの水(純水)を入れた。その後、バイアル瓶の口から挿入した管を用いて、バイアル瓶内の底部付近から水中にCO2ガスを流量0.8L/分で1分間吹き込んで、バブリングを行った。その後、管をバイアル瓶から抜出した後、蓋をしてバイアル瓶を密封した。
[2 上下振動]:そして、このバイアル瓶を、約23℃に温度調整された常圧下(外部から加圧又は減圧の操作を行わない)の室内で、シェーカーにより振動数10回/秒で上下振動させ、バイアル瓶内の材料をこの上下振動による攪拌状態として24時間反応を行わせた。
[3 ガス分析]:そして、反応後のバイアル瓶内のヘッドスペースからシリンジを用いてガスを採取して、生成したCOガス成分又はCH4ガス成分をガスクロマトグラフィー(新コスモス電機社製の100HC)により分析した。
【0035】
[実施例B1〜B11]
次に、主に攪拌について検討するため、次の表3に示すとおり、実施例B1〜B11として、上記のβ−SiCとZrO2ビーズ(SG)を使用し、CO2が溶存するとともに複数のSiC粒子と複数の研磨材粒子とが分散した水を、静置状態、スターラーによる攪拌状態又は上下振動による攪拌状態として、24時間又はそれ以上にわたり反応を行わせ、生成したCOガス成分又はCH4ガス成分を分析した。
【0036】
【表3】
【0037】
試験方法の詳細は、上記の実施例A1〜A19と基本的に同様であり、但し、静置状態と、スターラーによる攪拌状態については下記の方法で行った。
[2’ 静置]:[1 材料の接触]後のバイアル瓶を、約23℃に温度調整された常圧下(外部から加圧又は減圧の操作を行わない)の室内におけるテーブル上に静置し、バイアル瓶内の材料を静置状態として24時間反応を行わせた。
[2” スターラー]:[1 材料の接触]の最後でバイアル瓶にスターラーバー(攪拌子)を入れて蓋をした。そのバイアル瓶を、約23℃に温度調整された常圧下(外部から加圧又は減圧の操作を行わない)の室内で、マグネチックスターラーに載せ、回転数500rpmでスターラーバーを回転させ、バイアル瓶内の材料をこの回転により攪拌状態として、24時間又はそれ以上にわたり反応を行わせた。
【0038】
[実施例C1〜C11]
次に、主に材料の繰り返し使用性について検討するため、次の表4に示すとおり、実施例C1〜C11として、上記のβ−SiCとZrO2ビーズ(SG)を使用し、CO2が溶存するとともに複数のSiC粒子と複数の研磨材粒子とが分散した水を、上下振動による攪拌状態として24時間反応を行わせ、生成したCOガス成分又はCH4ガス成分を分析し、これを1回目とした。試験方法の詳細は、上記の実施例A1〜A19と同様である。
続いて、バイアル瓶の蓋を開け、再びバイアル瓶の口から挿入した管を用いて、バイアル瓶内の底部付近から水中にCO2ガスを流量0.8L/分で1分間吹き込んで、バブリングを行った。その後、管をバイアル瓶から抜出した後、蓋をしてバイアル瓶を密封した。そして、同様に上下振動による攪拌状態として24時間反応を行わせ、生成したCOガス成分又はCH4ガス成分を分析し、これを2回目とした。
続いて、2回目と同様の方法を繰り返し、3回目〜8回目とした。表4のCO収率及びCH4収率の結果は、それぞれグラフ化して図2及び図3にも示す。
【0039】
【表4】
【0040】
[考察]
1.SiCに関して
結晶構造の異なるSiCを用いても、また、主成分SiCに不純物を含むカーボランダムを用いても、CO及び/又はCH4が生成する(実施例A1〜A19)。SiCの使用量を0.0005gから10gまで多くするほど、CO及びCH4の生成量が多くなる傾向となる(実施例A2,A6,C3〜C11の各1回目)。この結果から、上述したCO又はCH4の生成反応機構が推測される。
【0041】
SiCの粒径が3μm以下とされているものよりも0.2〜0.4μmの方が、CH4の生成量が多い(実施例A2vsA5)。また、SiCの粒径が30μm〜1.18mmよりも0.2〜0.4μmの方が、CO及びCH4の生成量が多い(実施例A15〜A17,C9の1回目)。この結果は、SiCの粒径が小さいと比表面積が大きいため、反応量が大きくからであると考えられる。
【0042】
2.攪拌に関して
CO及びCH4の生成量は、静置状態では少ない(実施例B1〜B3)のに対し、スターラーによる攪拌状態では多くなり(実施例B4〜B7)、上下振動による攪拌状態ではより多くなる(実施例C9)。この結果は、上述したように、攪拌によりSiCどうしが衝突し、さらに研磨材がSiCに衝突して、SiO2膜の粉砕除去が行われたことによるものと考えられる。また、上下振動の方がスターラーよりも激しく攪拌するため、上記衝突の程度と頻度が大きいと考えられる。静置状態とした実施例B1〜B3は参考例とする。
【0043】
3.研磨材に関して
研磨材を用いないよりも用いた方が、CO及びCH4の生成量が多くなる(実施例A1vsA2)(実施例A4vsA5)(実施例A12〜A14vsA15〜A17)。この結果は、SiCどうしの衝突に加えて、研磨材がSiCに衝突して、上述したSiO2膜の粉砕除去が効率的に行われたことによるものと考えられる。研磨材を用いなかった実施例A1,A4,A12〜A14,C1,C2は参考例とする。
【0044】
但し、CO及びCH4の生成量が多くなる程度は、研磨材粒子の粒径が12μmのものでは小さく(実施例A3,A7)、30μmm以上のものでは顕著に大きかった(実施例A11等)。この結果は、上述したように、研磨材の粒径が大きいと衝突エネルギーが大きいことによるものと考えられる。
【0045】
また、研磨材の材料は、ZrO2、Al23、ガラス、ナイロンのいずれであっても、CO及びCH4の生成量が多くなる。但し、その多くなる程度はナイロンでは小さく(実施例C1の1回目vsA19)、ガラスでは大きく(実施例C1の1回目vsA18)、ZrO2、Al23では顕著に大きかった(実施例C1の1回目vsA9〜A11)。この結果は、上述したように、セラミックは硬度が高いため、同じく硬質であるSiO2膜を粉砕しやすいからであると考えられる。
【0046】
4.材料の繰り返し使用性について
図2及び図3に示すとおり、収率の差をおくと、基本的にSiCも研磨材も、消耗するまで複数回繰り返し使用することができる(実施例C1〜C11)。
【0047】
5.光に関して
各実施例の反応時間中、バイアル瓶内の材料には、室内の天井設置の蛍光灯照明からの光が当たっていた。そこで、光の影響の有無を調べるため、複数の前記実施例について、全く光を当てないで同じ時間反応させた場合と、ライトから太陽光並の強さの光を当てて同じ時間反応させた場合とを試行した。すると、光の有無及び強さによっては、CO及びCH4の生成量にほとんど差異がなかった。このことから、本発明の方法において光照射は不要であることが分かった。但し、本発明は、光照射することを排除するものではない。
【0048】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
図1
図2
図3