【実施例】
【0029】
[実施例A1〜A19]
まず、主に材料について検討するため、次の表1及び表2に示すとおり、実施例A1〜A19として、SiCとして6種のSiC粒子から1種を選択して使用し、研磨材を使用しないか又は研磨材として10種の研磨材粒子から1種を選択して使用し、CO
2が溶存するとともに複数のSiC粒子と複数の研磨材粒子とが分散した水を、上下振動による攪拌状態として、24時間反応を行わせ、生成したガス成分を分析した。なお、各表において「ND」は検出下限以下を意味する。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
ここで、使用したSiCの詳細は、次のとおりである。
β−SiC:立方晶SiCの粒子(粒径0.2〜0.4μm)
α−SiC:六方晶SiCの粒子(粒径3μm以下)
カーボランダム♯16:同名称で一般に市販されているSiCを主成分とする粒子(粒径1.18mm)
カーボランダム♯100:同名称で一般に市販されているSiCを主成分とする粒子(粒径125μmm)
カーボランダム♯400:同名称で一般に市販されているSiCを主成分とする粒子(粒径30μm)
【0033】
使用した研磨材の詳細は、次のとおりである。
ZrO
2ビーズ(SG):サンゴバン社製のZrO
2粒子(粒径0.5mm)
ZrO
2粉末:和光純薬工業社製のZrO
2粒子(粒径3μm以下)
NK−ZrO
2ビーズ:ニッカトー社製のZrO
2粒子(粒径0.3mm)
NM−ZrO
2ビーズ:ニイミ産業社製のZrO
2粒子(粒径30μm)
CZCビーズ:アズワン製のZrO
2粒子(粒径0.9〜1.1mm)
高純度Al
2O
3ボール:アズワン社製のAl
2O
3粒子(粒径1mm)
HDボール:アズワン社製のAl
2O
3粒子(粒径2mm)
アルミナ粉末:Axens Canada社製のAl
2O
3粒子(粒径12μm)
ガラスビーズ:アズワン社製のガラス粒子(粒径0.5〜0.71mm)
ナイロン球:アズワン社製のナイロン粒子(粒径3.2mm)
【0034】
試験方法の詳細は、次のとおりである。
[1 材料の接触]:容量150mLの無色透明のバイアル瓶に、まずSiCのみ又はSiC及び研磨材を入れ、次に90mLの水(純水)を入れた。その後、バイアル瓶の口から挿入した管を用いて、バイアル瓶内の底部付近から水中にCO
2ガスを流量0.8L/分で1分間吹き込んで、バブリングを行った。その後、管をバイアル瓶から抜出した後、蓋をしてバイアル瓶を密封した。
[2 上下振動]:そして、このバイアル瓶を、約23℃に温度調整された常圧下(外部から加圧又は減圧の操作を行わない)の室内で、シェーカーにより振動数10回/秒で上下振動させ、バイアル瓶内の材料をこの上下振動による攪拌状態として24時間反応を行わせた。
[3 ガス分析]:そして、反応後のバイアル瓶内のヘッドスペースからシリンジを用いてガスを採取して、生成したCOガス成分又はCH
4ガス成分をガスクロマトグラフィー(新コスモス電機社製の100HC)により分析した。
【0035】
[実施例B1〜B11]
次に、主に攪拌について検討するため、次の表3に示すとおり、実施例B1〜B11として、上記のβ−SiCとZrO
2ビーズ(SG)を使用し、CO
2が溶存するとともに複数のSiC粒子と複数の研磨材粒子とが分散した水を、静置状態、スターラーによる攪拌状態又は上下振動による攪拌状態として、24時間又はそれ以上にわたり反応を行わせ、生成したCOガス成分又はCH
4ガス成分を分析した。
【0036】
【表3】
【0037】
試験方法の詳細は、上記の実施例A1〜A19と基本的に同様であり、但し、静置状態と、スターラーによる攪拌状態については下記の方法で行った。
[2’ 静置]:[1 材料の接触]後のバイアル瓶を、約23℃に温度調整された常圧下(外部から加圧又は減圧の操作を行わない)の室内におけるテーブル上に静置し、バイアル瓶内の材料を静置状態として24時間反応を行わせた。
[2” スターラー]:[1 材料の接触]の最後でバイアル瓶にスターラーバー(攪拌子)を入れて蓋をした。そのバイアル瓶を、約23℃に温度調整された常圧下(外部から加圧又は減圧の操作を行わない)の室内で、マグネチックスターラーに載せ、回転数500rpmでスターラーバーを回転させ、バイアル瓶内の材料をこの回転により攪拌状態として、24時間又はそれ以上にわたり反応を行わせた。
【0038】
[実施例C1〜C11]
次に、主に材料の繰り返し使用性について検討するため、次の表4に示すとおり、実施例C1〜C11として、上記のβ−SiCとZrO
2ビーズ(SG)を使用し、CO
2が溶存するとともに複数のSiC粒子と複数の研磨材粒子とが分散した水を、上下振動による攪拌状態として24時間反応を行わせ、生成したCOガス成分又はCH
4ガス成分を分析し、これを1回目とした。試験方法の詳細は、上記の実施例A1〜A19と同様である。
続いて、バイアル瓶の蓋を開け、再びバイアル瓶の口から挿入した管を用いて、バイアル瓶内の底部付近から水中にCO
2ガスを流量0.8L/分で1分間吹き込んで、バブリングを行った。その後、管をバイアル瓶から抜出した後、蓋をしてバイアル瓶を密封した。そして、同様に上下振動による攪拌状態として24時間反応を行わせ、生成したCOガス成分又はCH
4ガス成分を分析し、これを2回目とした。
続いて、2回目と同様の方法を繰り返し、3回目〜8回目とした。表4のCO収率及びCH
4収率の結果は、それぞれグラフ化して
図2及び
図3にも示す。
【0039】
【表4】
【0040】
[考察]
1.SiCに関して
結晶構造の異なるSiCを用いても、また、主成分SiCに不純物を含むカーボランダムを用いても、CO及び/又はCH
4が生成する(実施例A1〜A19)。SiCの使用量を0.0005gから10gまで多くするほど、CO及びCH
4の生成量が多くなる傾向となる(実施例A2,A6,C3〜C11の各1回目)。この結果から、上述したCO又はCH
4の生成反応機構が推測される。
【0041】
SiCの粒径が3μm以下とされているものよりも0.2〜0.4μmの方が、CH
4の生成量が多い(実施例A2vsA5)。また、SiCの粒径が30μm〜1.18mmよりも0.2〜0.4μmの方が、CO及びCH
4の生成量が多い(実施例A15〜A17,C9の1回目)。この結果は、SiCの粒径が小さいと比表面積が大きいため、反応量が大きくからであると考えられる。
【0042】
2.攪拌に関して
CO及びCH
4の生成量は、静置状態では少ない(実施例B1〜B3)のに対し、スターラーによる攪拌状態では多くなり(実施例B4〜B7)、上下振動による攪拌状態ではより多くなる(実施例C9)。この結果は、上述したように、攪拌によりSiCどうしが衝突し、さらに研磨材がSiCに衝突して、SiO
2膜の粉砕除去が行われたことによるものと考えられる。また、上下振動の方がスターラーよりも激しく攪拌するため、上記衝突の程度と頻度が大きいと考えられる。
静置状態とした実施例B1〜B3は参考例とする。
【0043】
3.研磨材に関して
研磨材を用いないよりも用いた方が、CO及びCH
4の生成量が多くなる(実施例A1vsA2)(実施例A4vsA5)(実施例A12〜A14vsA15〜A17)。この結果は、SiCどうしの衝突に加えて、研磨材がSiCに衝突して、上述したSiO
2膜の粉砕除去が効率的に行われたことによるものと考えられる。
研磨材を用いなかった実施例A1,A4,A12〜A14,C1,C2は参考例とする。
【0044】
但し、CO及びCH
4の生成量が多くなる程度は、研磨材粒子の粒径が12μmのものでは小さく(実施例A3,A7)、30μmm以上のものでは顕著に大きかった(実施例A11等)。この結果は、上述したように、研磨材の粒径が大きいと衝突エネルギーが大きいことによるものと考えられる。
【0045】
また、研磨材の材料は、ZrO
2、Al
2O
3、ガラス、ナイロンのいずれであっても、CO及びCH
4の生成量が多くなる。但し、その多くなる程度はナイロンでは小さく(実施例C1の1回目vsA19)、ガラスでは大きく(実施例C1の1回目vsA18)、ZrO
2、Al
2O
3では顕著に大きかった(実施例C1の1回目vsA9〜A11)。この結果は、上述したように、セラミックは硬度が高いため、同じく硬質であるSiO
2膜を粉砕しやすいからであると考えられる。
【0046】
4.材料の繰り返し使用性について
図2及び
図3に示すとおり、収率の差をおくと、基本的にSiCも研磨材も、消耗するまで複数回繰り返し使用することができる(実施例C1〜C11)。
【0047】
5.光に関して
各実施例の反応時間中、バイアル瓶内の材料には、室内の天井設置の蛍光灯照明からの光が当たっていた。そこで、光の影響の有無を調べるため、複数の前記実施例について、全く光を当てないで同じ時間反応させた場合と、ライトから太陽光並の強さの光を当てて同じ時間反応させた場合とを試行した。すると、光の有無及び強さによっては、CO及びCH
4の生成量にほとんど差異がなかった。このことから、本発明の方法において光照射は不要であることが分かった。但し、本発明は、光照射することを排除するものではない。
【0048】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。