特許第6394482号(P6394482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394482
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   H05K9/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-91354(P2015-91354)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-207955(P2016-207955A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 安良
【審査官】 梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−287261(JP,A)
【文献】 特開2001−308576(JP,A)
【文献】 特開2012−118277(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3113691(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
G03G 15/00
B41J 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不要輻射の発生源となる電子部品が実装された基板と、当該基板を取り付けた基板取り付け板とが間隔をおいて略平行に配置された電子機器であって、
機器内には、前記電子部品から前記基板取り付け板側に放射された間接波が反射されるノイズ反射面として機能する部材が配置されており、
前記基板と前記基板取り付け板との間隙に、前記電子部品と前記ノイズ反射面との間を遮るように、長さが不要輻射の内の低減させたい周波数の波長λに対して、λ/6以上λ/4以下に設定されている間接波分散部材が配置され、
前記間接波分散部材は、前記基板と面接触する上面を有し、前記基板取り付け板に接触する下面が開口部として、金属導体である前記基板取付け板にプレス加工を施すことで形成され、
前記上面には、前記基板を前記基板取り付け板に取り付けるネジが貫通するネジ孔が形成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記間接波分散部材は、錐台形状であり、下底が前記基板取り付け板に、上底が前記基板にそれぞれ接触していることを特徴とする請求項記載の電子機器。
【請求項3】
不要輻射の発生源となる電子部品が実装された基板と、当該基板を取り付けた基板取り付け板とが間隔をおいて略平行に配置された電子機器であって、
機器内には、前記電子部品から前記基板取り付け板側に放射された間接波が反射されるノイズ反射面として機能する部材が配置されており、
前記基板と前記基板取り付け板との間隙に、前記電子部品と前記ノイズ反射面との間を遮るように配置された間接波分散部材を具備し、
前記間接波分散部材は、第1部材と第2部材とで構成され、前記第1部材に対して前記第2部材を長さ方向にスライドさせることで、長さを変更可能であることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不要輻射の発生源となる電子部品(以下、ノイズ発生源と称す)が搭載された電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子装置、例えば複写機等の画像形成装置やコンピュータから放射される不要輻射によって他の電子機器が障害を起こすことが問題となっている。このため、電子装置から放射される不要輻射のレベル強度を規格値以下に抑える必要がある。ノイズ発生源からの放射は、シミュレーションや実測によって把握することができる。しかし、シミュレーションや実測によって不要輻射のレベル強度が規格値以下になるはずのノイズ発生源であっても、実際に電子機器に搭載、すなわち、図7に示すように、ノイズ発生源1が実装された基板2を電子機器の基板取り付け板3に取り付けると、不要輻射が想定したレベル強度を上回ってしまうことがある。このような場合、従来は、ノイズ発生源1や基板2の周囲をシールドするシールド構造を採用することで対応していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−97874公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、ノイズ発生源に対して大容積となる構成が必要となり、電子機器全体が大きくなってしまう。また、シールド構造にかかるコストが増大すると共に、作業工数も増加してしまう。
【0005】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、想定外の不要輻射を効果的に低減させることができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子機器は、不要輻射の発生源となる電子部品が実装された基板と、当該基板を取り付けた基板取り付け板とが間隔をおいて略平行に配置された電子機器であって、機器内には、前記電子部品から前記基板取り付け板側に放射された間接波が反射されるノイズ反射面として機能する部材が配置されており、前記基板と前記基板取り付け板との間隙に、前記電子部品と前記ノイズ反射面との間を遮るように、長さが不要輻射の内の低減させたい周波数の波長λに対して、λ/6以上λ/4以下に設定されている間接波分散部材が配置され、前記間接波分散部材は、前記基板と面接触する上面を有し、前記基板取り付け板に接触する下面が開口部として、金属導体である前記基板取付け板にプレス加工を施すことで形成され、前記上面には、前記基板を前記基板取り付け板に取り付けるネジが貫通するネジ孔が形成されていることを特徴とする
さらに、本発明の電子機器において、前記間接波分散部材は、錐台形状であり、下底が前記基板取り付け板に、上底が前記基板にそれぞれ接触していても良い
また、本発明の電子機器は、不要輻射の発生源となる電子部品が実装された基板と、当該基板を取り付けた基板取り付け板とが間隔をおいて略平行に配置された電子機器であって、機器内には、前記電子部品から前記基板取り付け板側に放射された間接波が反射されるノイズ反射面として機能する部材が配置されており、前記基板と前記基板取り付け板との間隙に、前記電子部品と前記ノイズ反射面との間を遮るように配置された間接波分散部材を具備し、前記間接波分散部材は、第1部材と第2部材とで構成され、前記第1部材に対して前記第2部材を長さ方向にスライドさせることで、長さを変更可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、間接波分散部材によって間接波を分散させ、間接波がノイズ反射面に到達することを妨げることができ、想定外の不要輻射を効果的に低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る電子機器の実施の形態の構成を示す三面図である。
図2図1に示す間接波分散部材の構成を示す三面図及び断面図である。
図3図1に示す間接波分散部材の取り付け例を示す分解斜視図である。
図4】不要輻射の強度レベルを測定する測定例を示す図である。
図5図4に示す測定例での測定結果を示す図である。
図6】間接波分散部材の他の実施の形態の構成を示す図である。
図7】従来の電子機器の構成を示す三面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
本実施の形態の電子機器では、図1を参照すると、ノイズ発生源1が実装された基板2と、基板2が取り付けられた基板取り付け板3との間隙に、ノイズ発生源1と仕切板4との間を遮るように間接波分散部材5が設けられている。
【0010】
基板2は、ノイズ発生源1を含む複数の電子部品を表面に実装して電子回路を構成するプリント基板である。基板取り付け板3は、アルミニウム等の金属導体で構成されている。基板2は、基板取り付け板3に垂直方向に突出して形成されたネジ締結部31にネジ止めされて取り付けられ、基板取り付け板3に対して間隔をおいて略平行に配置される。なお、ネジ締結部31の代わりに図示しないスペーサを介して基板2を基板取り付け板3に取り付けるようにしても良い。
【0011】
仕切板4は、アルミニウム等の金属導体で構成され、ノイズ発生源1から放射される不要輻射の影響が電子機器内に設けられている他の電子部品に及ばないように設置されている。仕切板4は、基板2に対して略垂直に、基板2と間隔をおいて配置されている。このように配置された仕切板4は、不要輻射を反射するノイズ反射面として機能してしまう。
【0012】
ノイズ発生源1から放射される不要輻射は、基板2の表面側、すなわち基板取り付け板3とは反対方向に直接放射される直接波と、基板取り付け板3側に放射される間接波とからなる。従来の電子機器において、間接波は、図7に示すように、基板2と基板取り付け板3との間隙を通って、仕切板4に到達する。なお、図7において、実線矢印が直接波であり、点線矢印が間接波である。そして、仕切板4に到達した間接波は、仕切板4で反射され、直接波と合成される。このように直接波と間接波とが合成されることで、不要輻射が想定したレベル強度を上回ってしまうことがある。
【0013】
そこで、本願発明では、図1に示すように、間接波分散部材5によって間接波を減衰させ、ノイズ分散を図るように構成されている。なお、図1において、実線矢印が直接波であり、点線矢印が間接波である。
【0014】
間接波分散部材5は、図2(a)に示すように、下底51と上底52とが二つの等しい長さの平行線と二つの半円形からなる角丸長方形である錐台形状をしている。そして、間接波分散部材5は、下面である下底51が基板取り付け板3に、上面である上底52が基板2にそれぞれ接触するように取り付けられる。間接波分散部材5は、例えば、板金にプレス加工を施すことで形成され、図2(b)に示すように、下底51は、開口部となっている。なお、図2において(b)は、(a)に示すX−X断面図である。また、上底52の半円形部には、基板2を基板取り付け板3に取り付けるネジが貫通するネジ孔54が形成されている。
【0015】
間接波分散部材5は、ノイズ発生源1と仕切板4との間を遮るように配置され、錐体面53によって間接波を分散させ、間接波が仕切板4に到達することを妨げる。なお、間接波分散部材5は、基板取り付け板3に下底51が接触した錐台形状であるため、間接波は、錐体面53によって基板2に向けて反射され、基板2によって減衰される。
【0016】
また、間接波分散部材5の長さL(上底52の長さ)は、不要輻射の内の低減させたい周波数の波長λに対して、λ/6以上λ/4以下に設定されている。これにより間接波分散部材5は、低減させたい周波数に共振してアンテナになることがない。
【0017】
さらに、上底52の幅Wは、基板2と線接触とならないように、3mm以上に設定されている。なお、本実施の形態では、上底52にネジ孔54が形成されているため、上底52の幅Wは、ネジ径以上に設定されている。
【0018】
間接波分散部材5は、図3に示すように、ノイズ発生源1と仕切板4との間に存在しているネジ締結部31を用いて、ノイズ発生源1と仕切板4とを遮るように取り付けることができる。本実施の形態では、ノイズ発生源1と仕切板4との間に円錐台形状のネジ締結部31が存在しており、このネジ締結部31を間接波分散部材5のネジ孔54が形成されている半円形部に嵌め込み、基板2をネジ止めすることで、基板2と基板取り付け板3との間隙に間接波分散部材5が位置決めされて固定される。このように基板2を基板取り付け板3に取り付けるための既存の締結部(ネジ締結部31+ネジ)を用いて間接波分散部材5を取り付けるように構成すると、新たに締結部を追加する必要がないため、組立作業工数が増加しない。また、間接波分散部材5が基板2のボードサポートの代替となり、コネクタ挿入時の基板2のたわみがなくなるため、たわみによる基板2の破損を防止することができる。
【0019】
従来の間接波分散部材5が設けられていない電子機器に対し、図4(a)に示すように、基板2の垂直方向に3m離してアンテナ10を配置して、不要輻射の周波数毎のレベル強度(μdB/m)を測定した。その結果、シミュレーションでは、ノイズ発生源1から放射される不要輻射のレベル強度がいずれの周波数でも40(μdB/m)未満に収まるはずであったが、図5(a)に示すように、周波数:789.6[MHz]において、44.1(μdB/m)と想定を越える値となった。
【0020】
そこで、間接波分散部材5を設けた本実施の形態の電子機器に対し、図4(b)に示すように、基板2の垂直方向に3m離してアンテナ10を配置して、不要輻射の周波数毎のレベル強度(μdB/m)を測定した。この場合、低減させたい周波数は789.6[MHz]であり、波長はλ≒379.9[mm]である。従って、λ/6≒63.3[mm]、λ/4≒95.0[mm]となるため、間接波分散部材5の長さLは、λ/6〜λ/4の範囲内である70[mm]とした。その結果、図5(a)に示すように、周波数:789.6[MHz]において、レベル強度を40(μdB/m)未満に収めることができた。
【0021】
従来の電子機器において、周波数:789.6[MHz]で想定を越える値となったのは、直接波と、仕切板4で反射された間接波との合成によると考えられる。これに対し、本実施の形態の電子機器では、間接波分散部材5によって間接波を分散させて仕切板4での反射を防止することで、周波数:789.6[MHz]の不要輻射を低減させることができたものと考えられる。
【0022】
なお、本実施の形態では、別部材の間接波分散部材5を基板2と基板取り付け板3との間隙に取り付けるように構成したが、予め低減させたい周波数がわかっている場合には、間接波分散部材5を基板取り付け板3に形成しておくようにしても良い。
【0023】
また、間接波分散部材5は、低減させたい周波数によって長さLを変更する必要がある。そこで、図6(a)、(b)に示すように、間接波分散部材5を幅方向に切断した形状を有する第1部材50aと第2部材50bとからなる間接波分散部材50を採用すると好適である。なお、図6において、(b)は(a)に示すX−X断面図である。間接波分散部材50は、第1部材50aに対して第2部材50bを長さ方向にスライドさせることで、長さLを変更することができる。従って、低減させたい周波数に応じた長さLに設定することができる。なお、間接波分散部材50を採用する場合には、図6(c)に示すように、第2部材50bと係合する位置決め部材32を複数個突出させた基板取り付け板30を用い、第2部材50bと係合する位置決め部材32を選択することで、長さLを変更可能に構成すると良い。位置決め部材32として、例えば、基板取り付け板30に切り欠きを形成し、その切り欠き片を用いることができる。
【0024】
なお、本実施の形態では、基板2と基板取り付け板3との間隙に、別部材である間接波分散部材5を取り付けるように構成したが、間接波分散部材5の全部もしくは一部を基板取り付け板3と同一部材で構成しても良い。すなわち、基板取り付け板3にプレス加工等を施すことで、間接波分散部材5を基板取り付け板3から垂直方向に突出させて形成することもできる。また、第1部材50aと第2部材50bとからなる間接波分散部材50を用いる場合には、第1部材50aもしくは第2部材50bのいずれかを基板取り付け板3と同一部材で構成することができる。
【0025】
以上説明したように、本実施の形態は、不要輻射の発生源となる電子部品であるノイズ発生源1が実装された基板2と、基板2を取り付けた基板取り付け板3とが間隔をおいて略平行に配置された電子機器であって、機器内には、ノイズ発生源1から基板取り付け板3側に放射された間接波が反射されるノイズ反射面として機能する仕切り板4が配置されており、基板2と基板取り付け板3との間隙に、ノイズ発生源1と仕切り板4との間を遮るように配置された間接波分散部材5を備えている。
この構成により、間接波分散部材5によって間接波を分散させ、間接波が仕切板4に到達することを妨げることができ、想定外の不要輻射を効果的に低減させることができる。
【0026】
さらに、本実施の形態において、間接波分散部材5の長さLは、不要輻射の内の低減させたい周波数の波長λに対して、λ/6以上λ/4以下に設定されている。
この構成により、間接波分散部材5が、低減させたい周波数に共振するアンテナになることを防止することができる。
【0027】
さらに、本実施の形態において、間接波分散部材5は、錐台形状であり、下底51が基板取り付け板3に、上底52が基板2にそれぞれ接触している。
この構成により、間接波が錐体面53によって基板2に向けて反射され、基板2によって間接波を減衰させることができる。
【0028】
さらに、本実施の形態において、間接波分散部材5は、基板2と面接触する上面(上底52)を有し、基板取り付け板3に接触する下面(下底51)が開口部として形成された板金であり、上面(上底52)には、基板2を基板取り付け板3に取り付けるネジが貫通するネジ孔が形成されている。
この構成により、基板2を基板取り付け板3に取り付ける締結部(ネジ締結部31+ネジ)を用いて間接波分散部材5を固定することができる。新たに締結部を追加する必要がないため、組立作業工数が増加しない。また、間接波分散部材5が基板2のボードサポートの代替となり、コネクタ挿入時の基板2のたわみがなくなるため、たわみによる基板2の破損を防止することができる。
【0029】
さらに、本実施の形態において、間接波分散部材50は、第1部材50aと第2部材50bとで構成され、第1部材50aに対して第2部材50bを長さ方向にスライドさせることで、長さLを変更可能である。
この構成により、低減させたい周波数によって間接波分散部材50の長さLを変更することができる。
【0030】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【符号の説明】
【0031】
1 ノイズ発生源
2 基板
3、30 基板取り付け板
4 仕切板
5 間接波分散部材
10 アンテナ
31 ネジ締結部
32 位置決め部材
50 間接波分散部材
50a 第1部材
50b 第2部材
51 下底
52 上底
53 錐体面
54 ネジ孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7