特許第6394513号(P6394513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394513
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】残留応力測定装置及び残留応力測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2055 20180101AFI20180913BHJP
   G01N 23/207 20180101ALI20180913BHJP
   G01N 23/203 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G01N23/2055 310
   G01N23/207
   G01N23/203
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-123248(P2015-123248)
(22)【出願日】2015年6月18日
(65)【公開番号】特開2017-9356(P2017-9356A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐次
(72)【発明者】
【氏名】松井 彰則
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−213999(JP,A)
【文献】 特開2001−56303(JP,A)
【文献】 特開2002−333409(JP,A)
【文献】 特開2002−181638(JP,A)
【文献】 米国特許第4489425(US,A)
【文献】 佐々木 敏彦,「小型・迅速・低コスト化が可能な二次元検出器方式のcosα法X線応力測定」,検査技術,日本工業出版株式会社,2015年 6月 1日,Vol. 20, No. 6,pp. 42-51,ISSN 1342-9825
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/2055
G01N 23/207
G01N 23/203
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物にX線を照射するX線発生源と、
前記測定対象物の回折X線の強度を第1検出位置で検出する第1検出素子と、
前記測定対象物の回折X線の強度を前記第1検出位置とは異なる第2検出位置で検出する第2検出素子と、
X線の入射方向と直交する方向に延びる直線に沿って前記第1検出素子及び前記第2検出素子をそれぞれ移動させる移動機構と、
前記移動機構を駆動させて前記第1検出素子及び前記第2検出素子のそれぞれの検出位置を制御する移動制御部と、
前記移動機構により前記第1検出素子及び前記第2検出素子がそれぞれ移動することによってそれぞれ検出された回折X線の強度ピークに基づいて、前記測定対象物の残留応力を算出する応力算出部と、
を備える残留応力測定装置。
【請求項2】
前記移動制御部は、前記第1検出素子の動きと前記第2検出素子の動きとを同期させる請求項1に記載の残留応力測定装置。
【請求項3】
X線発生源、測定対象物の回折X線の強度を第1検出位置で検出する第1検出素子、測定対象物の回折X線の強度を第1検出位置とは異なる第2検出位置で検出する第2検出素子、及び、X線の入射方向と直交する方向に延びる直線に沿って第1検出素子及び第2検出素子をそれぞれ移動させる移動機構を備えた残留応力測定装置を用いて、前記測定対象物の残留応力を測定する残留応力測定方法であって、
測定対象物にX線を照射するX線照射ステップと、
前記移動機構を駆動させて前記第1検出素子及び前記第2検出素子を移動させる移動制御ステップと、
前記移動制御ステップの実行中に前記第1検出素子及び前記第2検出素子がそれぞれ検出した前記測定対象物の回折X線の強度ピークに基づいて、前記測定対象物の残留応力を算出する応力算出ステップと、
を備える残留応力測定方法。
【請求項4】
前記移動制御ステップでは、前記第1検出素子の動きと前記第2検出素子の動きとを同期させる請求項3に記載の残留応力測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の種々の側面は、残留応力測定装置及び残留応力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、X線を用いて測定対象物の残留応力を測定する装置が記載されている。この装置は、X線を測定対象物へ出射するX線出射器、測定対象物の回折光を受光するイメージングプレート、イメージングプレートを回転させる回転機構、イメージングプレートからの読み出しを行うレーザ装置、及び、これらの構成要素を制御するコントローラを備えている。
【0003】
コントローラは、残留応力に対応した回折環の形状をリファレンスとして予め記憶している。そして、この装置は、測定対象物からの回折光をイメージングプレートで受光し、回転機構でイメージングプレートを回転させながらレーザ装置で受光強度を読み出して回折環を取得し、取得した回折環の形状とリファレンスの回折環の形状とを比較する。そして、この装置は、最も近い形状の回折環に対応した残留応力を測定対象物の残留応力として算出する。測定した回折環が不連続である場合、この装置は、回折環の形状に基づいてcosα法により残留応力を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−113734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の装置は、残留応力の測定に時間がかかるおそれがある。例えば、イメージングプレートを回転させて信号を取得する必要があるため、信号読み出しに時間がかかるおそれがある。本技術分野では、残留応力の測定時間の短縮が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る残留応力測定装置は、測定対象物にX線を照射するX線発生源と、測定対象物の回折X線の強度を第1検出位置で検出する第1検出素子と、測定対象物の回折X線の強度を第1検出位置とは異なる第2検出位置で検出する第2検出素子と、X線の入射方向と直交する方向に延びる直線に沿って第1検出素子及び第2検出素子をそれぞれ移動させる移動機構と、移動機構を駆動させて第1検出素子及び第2検出素子のそれぞれの検出位置を制御する移動制御部と、移動機構により第1検出素子及び第2検出素子がそれぞれ移動することによってそれぞれ検出された回折X線の強度ピークに基づいて、測定対象物の残留応力を算出する応力算出部と、を備える。
【0007】
この装置では、移動機構及び移動制御部により、測定対象物の回折X線の強度を第1検出位置で検出する第1検出素子、及び、測定対象物の回折X線の強度を第1検出位置とは異なる第2検出位置で検出する第2検出素子を備える。このように構成することで、一度のX線の照射で2角度の回折X線を得ることができる。さらに、第1検出素子及び第2検出素子のぞれぞれは、X線の入射方向と直交する方向に延びる直線に沿って移動することで、X線強度分布(回折ピーク)を素子ごとに取得することができる。また、少なくとも2つの回折ピークを取得することにより、測定対象物の残留応力を算出することができるため、イメージングプレートを回転させて回折環の全てのデータを取得する必要がなくなる。従って、従来の残留応力測定装置と比べて、残留応力の測定時間の短縮を図ることができる。
【0008】
一実施形態では、移動制御部は、第1検出素子の動きと第2検出素子の動きとを同期させてもよい。この場合、第1検出素子と第2検出素子とを個々に制御する場合に比べて残留応力の測定時間の短縮を図ることができる。
【0009】
本発明の他の側面に係る残留応力測定方法は、X線発生源、測定対象物の回折X線の強度を第1検出位置で検出する第1検出素子、測定対象物の回折X線の強度を第1検出位置とは異なる第2検出位置で検出する第2検出素子、及び、X線の入射方向と直交する方向に延びる直線に沿って第1検出素子及び第2検出素子をそれぞれ移動させる移動機構を備えた残留応力測定装置を用いて、測定対象物の残留応力を測定する残留応力測定方法であって、測定対象物にX線を照射するX線照射ステップと、移動機構を駆動させて第1検出素子及び第2検出素子を移動させる移動制御ステップと、移動制御ステップの実行中に第1検出素子及び第2検出素子がそれぞれ検出した測定対象物の回折X線の強度ピークに基づいて、測定対象物の残留応力を算出する応力算出ステップと、を備える。
【0010】
一実施形態では、移動制御ステップでは、第1検出素子の動きと第2検出素子の動きとを同期させてもよい。
【0011】
上述した残留応力測定方法は、上述した残留応力測定装置と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の側面及び実施形態によれば、残留応力の測定時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る残留応力測定装置の構成を説明する概要図である。
図2】本実施形態に係る残留応力測定装置の模式的な構成を説明する図である。
図3】本実施形態に係る残留応力測定装置の検出位置を説明する概要図である。
図4】回折環を説明する概要図である。
図5】本実施形態に係る残留応力測定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
本実施形態に係る残留応力測定装置1は、X線を用いて測定対象物の残留応力を測定する装置である。残留応力測定装置1は、例えば、工場のラインにおいて、製造された製品の品質を検査する場合に採用され得るが、これに限定されるものではない。測定対象物は、例えば、無配向(等方性の結晶構造)であり、金属多結晶材料で形成され得る。
【0016】
図1は、本実施形態に係る残留応力測定装置1の構成を説明する概要図である。図1に示されるように、残留応力測定装置1は、X線発生源10を含む装置本体100及び制御装置200を備えている。
【0017】
装置本体100は、箱状の筐体であり、例えばその内部にX線発生源10を収容する。X線発生源10は、X線管球を備え、所定波長のX線を発生させる装置である。X線発生源10は、例えば装置本体100に固定されている。X線は、測定対象物Sに合わせて適宜の波長のX線が用いられる。装置本体100の前面には、X線照射用の窓(コリメータの一例:不図示)が形成されている。X線発生源10で発生したX線は、窓を介して測定対象物Sへ照射される。
【0018】
装置本体100は、第1検出素子11A及び第2検出素子11Bを備えている。第1検出素子11A及び第2検出素子11Bは、ここでは装置本体100のX線照射用の窓(不図示)が形成された側面に配置されている。第1検出素子11A及び第2検出素子11Bは、測定対象物Sの回折X線の強度をそれぞれ検出する。第1検出素子11Aは、0次元のX線強度測定素子である。0次元とは、素子の配置位置でX線の強度を測定するとの意味である。つまり、第1検出素子11Aは、複数の素子が直線に沿って配置された1次元のラインセンサや複数の素子が平面に配置された2次元のイメージングプレートとは異なる。第2検出素子11Bも、0次元のX線強度測定素子である。第1検出素子11A及び第2検出素子11Bとして、例えば、シンチレーションカウンタが用いられる。
【0019】
装置本体100は、第1検出素子11A及び第2検出素子11BをX線の入射方向と直交する方向に延びる直線に沿ってそれぞれ移動させる移動機構120を備えている。X線の入射方向と直交する方向に延びる直線とは、入射X線を法線とする平面上の直線を意味する。図1の例では、移動機構120は、X方向に延びる直線に沿って第1検出素子11A及び第2検出素子11Bを移動させる。移動機構120は、例えば電動アクチュエータが用いられる。より具体的な一例としては、移動機構120は、例えば、電動モータ121、ボールねじ部122及びナット部123A,123Bを備えている。電動モータ121は、ボールねじ部122に備わるねじ軸に対して、軸方向を中心とした回転力を与えるように接続されている。ボールねじ部122には、ナット部123A,123Bが軸方向へ移動可能に取り付けられている。ナット部123Aには、第1検出素子11Aが取り付けられており、ナット部123Bには、第2検出素子11Bが取り付けられている。電動モータ121が駆動すると、ボールねじ部122のねじ軸が回転し、ナット部123A,123Bが同一方向に同期して移動する。つまり、第1検出素子11Aと第2検出素子11Bは、同一のねじ軸に沿って同一方向に同期して移動する。移動機構120によって、第1検出素子11A及び第2検出素子11Bは、X線強度の検出位置を直線上で変更することができる。
【0020】
第1検出素子11Aは、測定対象物Sの回折X線の強度を第1検出位置で検出する。第2検出素子11Bは、測定対象物Sの回折X線の強度を第1検出位置とは異なる第2検出位置で検出する。第1検出位置及び第2検出位置は、測定対象物Sの材料や焦点距離に応じて変化させることができる。本実施形態では、第1検出素子11A及び第2検出素子11Bは、予め設定された同一の距離を同期して移動する。予め設定された距離は、必要な回折強度分布を得ることができる範囲の距離である。
【0021】
移動機構120は、制御装置200に接続されている。制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などを備えた汎用的なコンピュータで構成されている。制御装置200は、例えば処理装置201、入力装置202及び出力装置203を備えている。
【0022】
図2は、本実施形態に係る残留応力測定装置の模式的な構成を説明する図である。図2に示されるように、処理装置201は、入出力部20、移動制御部21、応力算出部22及び記憶部23を備えている。
【0023】
入出力部20は、ネットワークカードなどの通信機器及びグラフィックカードなどの入出力装置である。例えば、入出力部20は、電動モータ121と通信可能に接続されている。入出力部20は、例えば、入力装置202及び出力装置203と通信可能に接続されている。さらに、入出力部20は、第1検出素子11A及び第2検出素子11Bに接続されている。後述する移動制御部21及び応力算出部22は、入出力部20を介して各構成要素と情報のやり取りを行う。
【0024】
移動制御部21は、移動機構120を駆動させて第1検出素子11A及び第2検出素子11Bのそれぞれの検出位置を制御する。例えば、移動制御部21は、測定対象物Sを構成する材料に基づいて定まるピーク出現角度を予め取得し、ピーク出現角度を含むように、第1検出素子11A及び第2検出素子11Bのそれぞれの検出位置を制御する。測定対象物Sを構成する材料に基づいて定まるピーク出現位置は、例えば記憶部23に記憶されている。
【0025】
図3は、本実施形態に係る残留応力測定装置1の検出位置を説明する概要図である。図3では、測定対象物Sに対して入射X線XINを照射し、回折角2θで回折X線が出力される場合を示している。この場合、所定平面PLにおいて回折X線によって回折環Rが描かれる。ここで、本実施形態では、回折X線の回折環の0°に対応する検出位置、回折X線の回折環の180°に対応する検出位置のそれぞれで強度ピークが出現し、この部分(つまり対称となる点)の回折強度を取得する場合を例とする。図4は、回折環を説明する概要図である。図4では、図3に対応した部分を同一符号で示している。図3,4に示されるように、回折環Rの0°に対応する第1検出位置P1では、回折X線XR1が検出され、回折環Rの180°に対応する第2検出位置P2では、回折X線XR2が検出される。この場合、移動制御部21は、回折環Rの0°に対応する第1検出位置P1を含む範囲を第1検出素子11Aが移動するように設定する。同様に、移動制御部21は、回折環Rの180°に対応する第2検出位置P2を含む範囲を第2検出素子11Bが移動するように設定する。これにより、一度のX線の照射で2角度の回折X線を得て、2つのX線回折強度分布を得ることができる。
【0026】
応力算出部22は、第1検出位置P1及び第2検出位置P2のぞれぞれで検出されたX線回折強度分布(角度及び強度の関係)に基づいて、回折ピークを取得する。ここでは、回折環Rの0°に対応する強度ピーク、回折環Rの180°に対応する強度ピークの2つの強度ピークを得ることができる。図4に示される破線の回折環Rは、測定対象物に残留応力が存在しない場合の回折環である。残留応力が存在する回折環Rは、残留応力が存在しない回折環Rに比べて残留応力に応じて中心位置がずれる。応力算出部22は、この差を利用して残留応力値を算出する。例えば、応力算出部22は、cosα法を用いて残留応力値を算出する。cosα法では、cosα(α:回折中心角)と回折環上の4箇所(α,π+α,−α,π−α)の歪み(εα,επ+α,ε−α,επ−α)を用いて表される歪みεとの関係を示すε-cosα線図の傾きから残留応力を得る。応力算出部22は、α=0°,180°の2点を用いてε-cosα線図の傾き(1次関数の傾き)を算出する。そして、応力算出部22は、1次関数の傾きに、X線応力測定乗数を乗じて残留応力を得る。X線応力測定乗数は、ヤング率、ポアソン比、ブラッグ角の余角及びX線入射角によって定まる定数であり、例えば記憶部23に予め記憶されている。応力算出部22は、算出した残留応力を記憶部23へ記憶してもよいし、出力装置203へ出力してもよい。
【0027】
以上で、残留応力測定装置1の構成について説明を終了する。次に、残留応力測定装置1を用いた残留応力測定方法を説明する。図5は、本実施形態に係る残留応力測定方法を示すフローチャートである。
【0028】
最初に、残留応力測定前の調整処理が行われる。図5の(A)は、残留応力測定前の調整処理を示すフローチャートである。図5の(A)に示されるように、まず、角度調整処理(S10)が行われる。この処理では、測定対象物Sに対する入射X線の角度が調整される。例えば、図2に示されるように、装置本体100を傾けて煽り角θ1を調整することで、入射X線の角度が調整される。なお、装置本体100を傾ける処理は、別途の装置(制御部及びアクチュエータ)が行ってもよいし、測定者が行ってもよい。S10の処理により、測定中の入射角度が所定角度(単一角度)に固定される。
【0029】
次に、焦点調整処理(S12)が行われる。この処理では、測定対象物Sに対する入射X線の焦点が調整される。例えば、測定対象物Sの高さが変更されたり、装置本体100の位置が変更されることにより、入射X線の焦点が調整される。なお、高さや位置を変更する処理は、別途の装置(制御部及びアクチュエータ)が行ってもよいし、測定者が行ってもよい。
【0030】
以上で図5の(A)に示されるフローチャートが終了する。図5の(A)に示されるフローチャートが終了すると、測定対象物Sの残留応力を測定可能な状況となる。そして、残留応力の測定を行う。図5の(B)は、残留応力の測定方法を示すフローチャートである。
【0031】
図5の(B)に示されるように、最初にX線照射処理(S20:X線照射ステップ)が行われる。S20のX線照射処理では、X線発生源10から測定対象物SへX線を照射させる。次に、S20のX線照射処理の実行中において測定処理(S22:移動制御ステップ)が行われる。S22の測定処理では、移動機構120及び移動制御部21によって、第1検出素子11A及び第2検出素子11Bを移動させ、移動中の検出結果に基づいて、2つのX線回折強度分布を得る。S22の測定処理が終了した場合、X線の照射を終了してもよい。次に、残留応力算出処理(S24:応力算出ステップ)が行われる。S24の残留応力算出処理では、応力算出部22により、移動中に得られた2つのX線回折強度分布に基づいて、2つの強度ピークが取得される。そして、応力算出部22によって、ε-cosα線図の傾きが算出され、X線応力測定乗数が乗じられて残留応力が算出される。最後に、応力算出部22により算出された残留応力が記憶部23に記憶され、又は、出力装置203へ出力される。
【0032】
以上で図5の(B)に示されるフローチャートが終了する。図5の(B)に示す制御処理を実行することにより、第1検出素子及び第2検出素子を移動させて得られたデータを用いて残留応力を算出することができる。
【0033】
上述したように、本実施形態に係る残留応力測定装置1は、移動機構120及び移動制御部21により、回折X線の強度を第1検出位置P1で検出する第1検出素子11A、及び、回折X線の強度を第1検出位置P1とは異なる第2検出位置P2で検出する第2検出素子を備える。このように構成することで、一度のX線の照射(単一角度での照射)で2角度の回折X線を得ることができる。さらに、第1検出素子11A及び第2検出素子11Bのぞれぞれは、X線の入射方向と直交する方向に延びる直線に沿って移動することで、X線強度分布(回折ピーク)を素子ごとに取得することができる。また、少なくとも2つの回折ピークを取得することにより、測定対象物Sの残留応力を算出することができるため、イメージングプレートを回転させて回折環の全てのデータを取得する必要がなくなる。従って、従来の残留応力測定装置と比べて、残留応力の測定時間の短縮を図ることができる。
【0034】
また、本実施形態に係る残留応力測定装置1では、イメージングプレートを回転させる機構や読み出し機構を備える必要がないため、従来の残留応力測定装置と比べて、装置が簡略化され軽量化される。このため、従来の残留応力測定装置と比べて、装置の設置が容易となったり、他の機械に組み込み易い構造とすることができる。さらに、装置構成が簡略化されることによって、従来の残留応力測定装置と比べて、装置の製造コストを低減することができる。
【0035】
さらに、移動制御部21が、第1検出素子11Aの動きと第2検出素子11Bの動きとを同期させることで、第1検出素子11Aと第2検出素子11Bとを個々に制御する場合に比べて残留応力の測定時間の短縮を図ることができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限られない。本発明は、上述した実施形態に対して当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0037】
例えば、上記実施形態では、残留応力測定装置1が工場のラインにおいて採用される例を説明したが、残留応力測定装置1がラインに配置されていない装置に設けられてもよい。また、上記実施形態では、残留応力測定装置1が第1検出素子11A及び第2検出素子11Bを備えている例を説明したが、少なくとも2つの検出素子を備えていればよい。つまり、残留応力測定装置1は3つ以上の検出素子を備えていてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、移動機構120が一組の電動モータ121及びボールねじ部122で第1検出素子11A及び第2検出素子11Bをそれぞれ移動させる例を説明したが、第1検出素子11A及び第2検出素子11Bそれぞれに対応する電動モータ及びボールねじ部を備えてもよい。この場合、制御装置200は、第1検出素子11A及び第2検出素子11Bそれぞれに対応する電動モータを制御することにより、第1検出素子11A及び第2検出素子11Bの動きを制御することができる。制御装置200は、2つのボールねじ軸を制御して、第1検出素子11A及び第2検出素子11Bの動きを同期させることもできるし、異なる動きとすることもできる。
【0039】
さらに、上記実施形態に係る残留応力測定装置1は、ショットピーニング装置などに組み込まれてもよい。この場合、上記実施形態で説明した入出力部20は、ショットピーニング装置の制御盤のシーケンサーから出力される信号を受け取るように構成され、当該信号に基づいて移動制御部21及び応力算出部22が動作することで、残留応力の測定が行われる。
【符号の説明】
【0040】
1…残留応力測定装置、2θ…回折角、10…X線発生源、11A…第1検出素子、11B…第2検出素子、21…移動制御部、22…応力算出部、120…移動機構。
図1
図2
図3
図4
図5