特許 6394563 スイッチ装置および時計

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6394563

(24)【登録日】2018年9月7日

(45)【発行日】2018年9月26日

(54)【発明の名称】スイッチ装置および時計

(51)【国際特許分類】

   G04B 37/10 20060101AFI20180913BHJP

   G04B 43/00 20060101ALI20180913BHJP

【ＦＩ】

   G04B37/10 L

   G04B43/00 Z

【請求項の数】9

【全頁数】18

(21)【出願番号】特願2015-207015(P2015-207015)

(22)【出願日】2015年10月21日

(65)【公開番号】特開2017-78654(P2017-78654A)

(43)【公開日】2017年4月27日

【審査請求日】2016年9月2日

【前置審査】

(73)【特許権者】

【識別番号】000001443

【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社

(72)【発明者】

【氏名】鈴木 純一郎

【審査官】 榮永 雅夫

(56)【参考文献】

【文献】 実開昭５４−０９７１５２（ＪＰ，Ｕ）

【文献】 スイス国特許発明第００１６０８０２（ＣＨ，Ａ５）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｇ０４Ｂ ３７／０６

Ｇ０４Ｂ ３７／１０

Ｇ０４Ｂ ４３／００

Ｇ０４Ｇ ２１／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

貫通孔が設けられ、かつモジュールが内蔵されたケースと、
前記ケースの前記貫通孔に取り付けられ、内端部が前記ケース内に突出して前記モジュールに保持され、かつ外端部が前記ケースの外部に突出する筒状部材と、
前記筒状部材内にその軸方向にスライド可能に配置されて前記モジュールを操作するための軸部、および前記軸部の外端部に設けられて前記筒状部材の前記外端部を覆ってスライド可能に保持される頭部を備えた操作部材と、
前記操作部材の前記頭部の内周面に弾接して前記筒状部材に保持される弾性保持部材と、
を備え、
前記筒状部材は、前記ケースの前記貫通孔に挿入されて保持され、かつ内端部が前記ケース内に突出して前記モジュールに保持される小径筒部と、前記小径筒部の外端部に設けられて前記操作部材の前記頭部に保持される大径筒部と、を備え、
前記弾性保持部材は、前記筒状部材の前記大径筒部の外周にその径方向に突出して設けられ、かつ突出した外周部が前記頭部の内周面に弾接して前記筒状部材の前記大径筒部に保持されることを特徴とするスイッチ装置。

【請求項2】

請求項１に記載のスイッチ装置において、前記操作部材の前記頭部内の内端面と前記筒状部材の外端面との間に配置された緩衝部材を備えていることを特徴とするスイッチ装置。

【請求項3】

請求項１又は請求項２に記載のスイッチ装置において、前記操作部材の前記頭部の内周面に設けられ、前記操作部材が前記ケースの外部に向けて引き出された第２の位置における前記弾性保持部材の弾接力を、前記操作部材が前記ケースの内部に向けて押し込まれた第１の位置における前記弾性保持部材の弾接力よりも小さくする弾接調整部を備えていることを特徴とするスイッチ装置。

【請求項4】

請求項３に記載のスイッチ装置において、前記弾接調整部は、前記操作部材の前記頭部の内径が前記第１の位置から前記第２の位置に向けて次第に大きくなるテーパ面に形成されていることを特徴とするスイッチ装置。

【請求項5】

請求項４に記載のスイッチ装置において、前記弾接調整部は、前記テーパ面の傾斜が、前記筒状部材の前記外端部の外周から前記弾性保持部材の突出する長さの範囲内で傾斜していることを特徴とするスイッチ装置。

【請求項6】

請求項１〜請求項５のいずれかに記載のスイッチ装置において、前記筒状部材の前記外端部と前記操作部材の前記頭部とによって囲われる前記頭部内の空間と、前記ケースの外部と、に連通する流通路を備えていることを特徴とするスイッチ装置。

【請求項7】

請求項１〜請求項６のいずれかに記載のスイッチ装置において、前記筒状部材の前記大径筒部の外周部に前記弾性保持部材の内周側を通して軸方向に沿って形成された切欠き溝部と、前記頭部の内周面と前記大径筒部の外周面との間に設けられた流通部と、を備えていることを特徴とするスイッチ装置。

【請求項8】

貫通孔が設けられ、かつモジュールが内蔵されたケースと、
前記ケースの前記貫通孔に取り付けられ、内端部が前記ケース内に突出して前記モジュールに保持され、かつ外端部が前記ケースの外部に突出する筒状部材と、
前記筒状部材内にその軸方向にスライド可能に配置されて前記モジュールを操作するための軸部、および前記軸部の外端部に設けられて前記筒状部材の前記外端部を覆ってスライド可能に保持される頭部を備えた操作部材と、
前記筒状部材の前記外端部と前記操作部材の前記頭部とによって囲われる前記頭部内の空間と、前記ケースの外部と、に連通する流通路と、
を備えていることを特徴とするスイッチ装置。

【請求項9】

請求項１〜請求項８のいずれかに記載されたスイッチ装置を備えていることを特徴とする時計。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

この発明は、腕時計や携帯電話機、携帯情報端末などの電子機器に用いられるスイッチ装置およびそれを備えた時計に関する。

【背景技術】

【0002】

例えば、腕時計のスイッチ装置においては、特許文献１に記載されているように、時計モジュールが内蔵された腕時計ケースの貫通孔内に筒状部材を取り付ける際に、腕時計ケースの貫通孔の内周面と筒状部材の外周面との間に弾性部材を設け、この状態で筒状部材の内部に時計モジュールを操作する操作部材を設けた構成のものが知られている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１０−２４９７１６号公報

【0004】

この種のスイッチ装置は、腕時計ケースが外部から衝撃を受けて、腕時計ケースと時計モジュールとの間で位置ずれが生じた際に、腕時計ケースの貫通孔の内周面と筒状部材の外周面との間に設けられた弾性部材が弾性変形して、筒状部材をその径方向に変位させることにより、筒状部材の径方向への変位に応じて操作部材に生じるせん断力などの負荷を軽減するように構成されている。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、このような腕時計のスイッチ装置では、腕時計ケースの貫通孔の内周面と筒状部材の外周面との間に設けられた弾性部材によって筒状部材を保持する構成であるから、筒状部材がその径方向に変位し易く不安定であるため、筒状部材の外径を大きく形成しなければ、筒状部材の強度を確保することができない。このため、筒状部材の外径が大きくなるばかりか、腕時計ケースの貫通孔の内径も大きくなり、これらに伴って腕時計ケースの厚みが厚くなるという問題がある。

【0006】

この発明が解決しようとする課題は、筒状部材の外径およびケースの貫通孔の内径を小さくして、ケースの薄型化を図ることができるスイッチ装置およびそれを備えた時計を提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0007】

この発明は、貫通孔が設けられ、かつモジュールが内蔵されたケースと、このケースの前記貫通孔に取り付けられ、内端部が前記ケース内に突出して前記モジュールに保持され、かつ外端部が前記ケースの外部に突出する筒状部材と、この筒状部材内にその軸方向にスライド可能に配置されて前記モジュールを操作するための軸部、およびこの軸部の外端部に設けられて前記筒状部材の前記外端部を覆ってスライド可能に保持される頭部を備えた操作部材と、前記操作部材の前記頭部の内周面に弾接して前記筒状部材に保持される弾性保持部材と、を備え、前記筒状部材は、前記ケースの前記貫通孔に挿入されて保持され、かつ内端部が前記ケース内に突出して前記モジュールに保持される小径筒部と、前記小径筒部の外端部に設けられて前記操作部材の前記頭部に保持される大径筒部と、を備え、前記弾性保持部材は、前記筒状部材の前記大径筒部の外周にその径方向に突出して設けられ、かつ突出した外周部が前記頭部の内周面に弾接して前記筒状部材の前記大径筒部に保持されることを特徴とするスイッチ装置である。

【発明の効果】

【0008】

この発明によれば、筒状部材をケースの貫通孔とモジュールと操作部材との３点で保持することができるので、筒状部材をケースに安定した状態で確実にかつ強固に保持することができる。このため、筒状部材の外径を小さく形成しても、筒状部材の強度を確保することができると共に、筒状部材の外径の大きさに伴ってケースの貫通孔の内径を小さく形成することができる。これにより、ケースの厚みを薄くすることができるので、ケースの薄型化を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】この発明を腕時計に適用した一実施形態を示した拡大正面図である。

【図2】図１に示された腕時計のＡ−Ａ矢視における要部を示した拡大断面図である。

【図3】図１に示された腕時計ケースを示し、（ａ）はその拡大斜視図、（ｂ）はその腕時計ケース内に配置された中枠の要部であるＡ部を示した拡大図である。

【図4】図２に示されたスイッチ装置の筒状部材を示した拡大斜視図である。

【図5】図４に示された筒状部材を示し、（ａ）はその拡大断面図、（ｂ）はその拡大右側面図である。

【図6】図２に示されたスイッチ装置の操作部材を示した拡大断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0010】

以下、図１〜図６を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、図１〜図３に示すように、腕時計ケース１を備えている。この腕時計ケース１は、第１ケース２と第２ケース３とで構成されている。これら第１ケース２と第２ケース３とは、チタン（Ｔｉ）などの軽量で剛性の高い金属によって形成されている。

【0011】

この場合、第２ケース３は、図２および図３に示すように、第１ケース２の上部に防水リング３ａを介して取り付けられ、その外周が第１ケース２の外周から外部に少し突出した構成になっている。この腕時計ケース１の上部開口部、つまり第２ケース３の上部開口部には、時計ガラス４がパッキン４ａを介して取り付けられている。また、この腕時計ケース１の下部、つまり第１ケース２の下部には、裏蓋５が防水リング５ａを介して取り付けられている。

【0012】

この腕時計ケース１の内部、つまり第１ケース２の内部には、図２に示すように、時計モジュール６が中枠７と共に配置されている。時計モジュール６は、指針を駆動するための時計ムーブメントや、時刻などの情報を電気光学的に表示する表示パネルなど、時計機能に必要な各種の部品（いずれも図示せず）を備えている。

【0013】

この場合、時計モジュール６は、図２に示すように、各種の部品を搭載するハウジング（図示せず）を備え、このハウジングの外周に合成樹脂製の中枠７が取り付けられ、この状態で第１ケース２内に組み込まれるように構成されている。また、この時計モジュール６の上面には、その上方を指針が運針する文字板（図示せず）が配置されている。さらに、時計モジュール６の上側に位置する第２ケース３の内周面には、第１、第２の見切り部材３ｂ、３ｃが設けられている。

【0014】

また、腕時計ケース１の１２時側と６時側との各側部には、図１に示すように、バンド取付部８がそれぞれ外部に突出して設けられている。さらに、この腕時計ケース１の２時側、４時側、および８時側の各側部には、押釦スイッチ９がそれぞれ設けられており、この腕時計ケース１の３時側の側部には、スイッチ装置１０が設けられている。

【0015】

スイッチ装置１０は、図２に示すように、腕時計ケース１の第１ケース２に設けられた貫通孔１１に嵌め込まれて第１ケース２の内部と外部とに突出する筒状部材１２と、この筒状部材１２にスライド可能に挿入されて内端部が時計モジュール６内に差し込まれ、かつ外端部が筒状部材１２の外端部をスライド可能に覆った状態で保持する操作部材１３と、を備えている。この場合、貫通孔１１は、第１ケース２の側壁部にその内部から外部に貫通して設けられている。

【0016】

筒状部材１２は、図２、図４および図５に示すように、第１ケース２の貫通孔１１内に圧入によって嵌め込まれて第１ケース２内に突出する小径筒部１２ａと、この小径筒部１２ａの外端部に設けられて第１ケース２の外部に突出する大径筒部１２ｂと、を備え、これらがステンレスなどの剛性の高い金属で一体に形成されている。

【0017】

この場合、小径筒部１２ａは、図２および図４に示すように、その外径が第１ケース２の貫通孔１１の内径と同じ大きさに形成され、全体が円筒状に形成されている。この小径筒部１２ａは、その軸方向の長さが第１ケース２の貫通孔１１の軸方向の長さよりも長く形成され、その内端部が第１ケース２の内部に突出して時計モジュール６の中枠７に保持されるように構成されている。

【0018】

すなわち、中枠７は、図３（ｂ）に示すように、合成樹脂によってリング状に形成され、第１ケース２の内周面に配置されるように構成されている。この中枠７には、小径筒部１２ａの内端部をその径方向から挟んで保持する四角形状の切欠き部７ａが設けられている。この切欠き部７ａは、中枠７の円周方向の長さと上下方向の長さとが小径筒部１２ａの内端部の外径とほぼ同じ長さで、上辺部が開放された形状に形成されている。

【0019】

これにより、小径筒部１２ａは、図２および図３（ｂ）に示すように、第１ケース２の貫通孔１１に挿入されて内端部が第１ケース２内に突出した状態で、時計モジュール６を中枠７と共に第１ケース２内に組み込む際に、第１ケース２内に突出した内端部が中枠７の切欠き部７ａ内にその上辺側から嵌め込まれることにより、切欠き部７ａの下辺部に当接した状態で切欠き部７ａの両側部で挟み付けられて保持されるように構成されている。

【0020】

このため、この小径筒部１２ａは、図２および図３に示すように、第１ケース２の貫通孔１１内に圧入されて、内端部が第１ケース２内に配置された時計モジュール６の中枠７の切欠き部７ａに嵌め込まれることにより、第１ケース２に対して２点支持によって取り付けられるように構成されている。

【0021】

大径筒部１２ｂは、図２、図４および図５に示すように、その外径が第１ケース２の上下方向の高さとほぼ同じ大きさで、小径筒部１２ａの外径よりも大きく形成されている。この大径筒部１２ｂは、その内径が小径筒部１２ａの内径と同じ大きさで、小径筒部１２ａと同一軸上に対応して形成されている。

【0022】

また、この大径筒部１２ｂは、図２、図４および図５に示すように、その軸方向の長さが小径筒部１２ａの軸方向の長さとほぼ同じ長さか、それよりも少し短い長さで形成されている。また、この筒状部材１２は、小径筒部１２ａと大径筒部１２ｂとの間に境界部１２ｃが設けられた構成になっている。この境界部１２ｃは、第１ケース２の内部側に位置する内端部が第１ケース２の外周面に当接するように構成されている。

【0023】

これにより、筒状部材１２は、図２および図４に示すように、小径筒部１２ａが第１ケース２の貫通孔１１に圧入により挿入されて保持されていると共に、小径筒部１２ａの内端部が時計モジュール６の中枠７の切欠き部７ａに嵌め込まれて保持され、かつ小径筒部１２ａと大径筒部１２ｂとの境界部１２ｃが第１ケース２の外周面に当接することにより、第１ケース２に対して回転しない状態で強固に取り付けられている。

【0024】

また、この筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周面には、図２、図４および図５に示すように、弾性保持部材１４が装着する装着溝１２ｄが環状に設けられている。この弾性保持部材１４は、ゴムなどの弾力性を有する材料によってリング状に形成されている。この弾性保持部材１４は、大径筒部１２ｂの装着溝１２ｄに取り付けられた際に、その外周部が大径筒部１２ｂの外周面から突出するように構成されている。

【0025】

一方、操作部材１３は、図２および図６に示すように、筒状部材１２内にスライド可能に挿入される軸部１５と、この軸部１５の外端部に設けられた頭部１６と、を備えている。軸部１５は、丸棒状に形成され、筒状部材１２内にスライドおよび回転可能な状態で挿入されている。この軸部１５は、その外径が筒状部材１２の小径筒部１２ａの内径とほぼ同じ大きさで、軸方向の長さが筒状部材１２の軸方向の長さよりも少し長く形成されている。

【0026】

この場合、軸部１５の外周には、図２および図６に示すように、複数の防水リング１７が環状に設けられている。これら複数の防水リング１７は、筒状部材１２の小径筒部１２ａの内周面に圧接した状態でスライド可能に摺動することにより、軸部１５の外周面と筒状部材１２の小径筒部１２ａの内周面との間の防水を図るように構成されている。また、この軸部１５の外端部には、頭部１６が一体に設けられている。

【0027】

頭部１６は、図２および図６に示すように、筒状部材１２の大径筒部１２ｂを覆う円筒形のキャップ状に形成されている。この頭部１６は、その軸方向の長さが大径筒部１２ｂの軸方向の長さよりも長く形成されている。また、この頭部１６は、その内径が大径筒部１２ｂの外径よりも少し大きく形成され、大径筒部１２ｂの装着溝１２ｄに取り付けられた弾性保持部材１４の外周部が摺動可能に弾接するように構成されている。

【0028】

これにより、頭部１６は、図２および図６に示すように、その内周面に大径筒部１２ｂの装着溝１２ｄに取り付けられた弾性保持部材１４の外周部が弾接していることにより、筒状部材１２に挿入された軸部１５と共に大径筒部１２ｂをスライドおよび回転可能な状態で保持するように構成されている。

【0029】

このため、筒状部材１２は、図２に示すように、小径筒部１２ａが第１ケース２の貫通孔１１に挿入されて保持され、小径筒部１２ａの内端部が時計モジュール６の中枠７の切欠き部７ａに嵌め込まれて保持され、かつ大径筒部１２ｂが頭部１６によって保持されていることにより、第１ケース２に対して３点で保持された状態で取り付けられるように構成されている。

【0030】

この場合、弾性保持部材１４は、図２に示すように、操作部材１３の頭部１６の内周面に弾接していることにより、筒状部材１２の大径筒部１２ｂと操作部材１３との芯出しを行ってその両者の偏心を防ぎ、かつ筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周面と頭部１６の内周面との間の防水を図るように構成されている。

【0031】

また、この頭部１６内には、図２および図６に示すように、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外端面に接離可能に当接する緩衝部材１８が設けられている。この緩衝部材１８は、ゴムなどの弾力性を有する材料によってリング状に形成され、操作部材１３の軸方向の衝撃を緩衝するように構成されている。すなわち、この緩衝部材１８は、その内径が軸部１５の外径とほぼ同じ大きさに形成され、軸部１５の外周に装着された状態で、頭部１６の内端面と大径筒部１２ｂの外端面との間に配置されている。

【0032】

これにより、操作部材１３は、図２および図６に示すように、軸部１５が筒状部材１２の内部にその軸方向にスライド可能でかつ回転可能な状態で挿入され、頭部１６が筒状部材１２の大径筒部１２ｂを覆った状態で、軸方向にスライド可能でかつ回転可能な状態で配置されることにより、筒状部材１２に対してその軸方向に沿ってスライドすると共に回転するように構成されている。

【0033】

また、この操作部材１３は、図２に示すように、軸部１５の内端部に巻真２０が取り付けられている。この巻真２０は、第１ケース２内に設けられた時計モジュール６内に差し込まれて、時計モジュール６内の時計ムーブメント（図示せず）に連結されるように構成されている。すなわち、この巻真２０は、操作部材１３のスライド動作に応じてスライドすると共に、操作部材１３の回転操作に応じて回転するように構成されている。

【0034】

これにより、巻真２０は、図２に示すように、操作部材１３が第１ケース２の内部に向けて押し込まれた第１の状態のときに、操作部材１３と共にスライドして巻真２０の内端部が時計ムーブメントの内部に押し込まれ、この状態で操作部材１３の回転操作に応じて回転しても、時計ムーブメントが動作しないニュートラル状態となるように構成されている。

【0035】

また、この巻真２０は、図２に示す状態で、操作部材１３が第１ケース２の外部に向けて引き出された第２の状態のときに、操作部材１３のスライド動作に応じてスライドして巻真２０の内端部が時計ムーブメントを操作可能な状態にし、この状態で操作部材１３の回転操作に応じて回転することにより、時計ムーブメントを動作させて時刻修正を行うように構成されている。

【0036】

また、この操作部材１３は、図２および図６に示すように、頭部１６の内周面に弾接調整部２１が設けられ、この弾接調整部２１に弾性保持部材１４が弾接するように構成されている。この弾接調整部２１は、操作部材１３が第１ケース２の外部に向けて引き出された第２の位置において、弾性保持部材１４が弾接する弾接力を、操作部材１３が第１ケース２の内部に向けて押し込まれた第１の位置において、弾性保持部材１４が弾接する弾接力よりも小さくするように構成されている。

【0037】

すなわち、この弾接調整部２１は、図２および図６に示すように、操作部材１３の頭部１６の内径が第１の位置から第２の位置に向けて次第に大きくなるテーパ面に形成されている。この場合、弾接調整部２１は、そのテーパ面の傾斜が、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周面から弾性保持部材１４の突出する長さの範囲内で傾斜するように構成されている。

【0038】

これにより、弾接調整部２１は、図２および図６に示すように、操作部材１３が第１ケース２の内部に向けて押し込まれた第１の状態のときに、弾性保持部材１４の弾接力を大きくし、操作部材１３が第１ケース２の外部に向けて引き出されて第２の位置にスライドする際に、弾性保持部材１４の弾接力を操作部材１３のスライド動作に応じて徐々に小さくするように構成されている。

【0039】

ところで、筒状部材１２には、図４および図５に示すように、大径筒部１２ｂと操作部材１３の頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内の空間と、第１ケース２の外部と、を連通させる流通路２２が設けられている。すなわち、この流通路２２は、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周部に弾性保持部材１４の内周側を通して軸方向に沿って形成された一対の切欠き溝部２２ａと、頭部１６の内周面と大径筒部１２ｂの外周面との間に設けられた流通部２２ｂと、を備えている。

【0040】

一対の切欠き溝部２２ａそれぞれは、図４および図５（ｂ）に示すように、半円弧状の溝であり、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外端部から大径筒部１２ｂの装着溝１２ｄを通して大径筒部１２ｂの軸方向におけるほぼ中間部に亘って形成されている。この場合、一対の切欠き溝部２２ａは、その深さが大径筒部１２ｂの装着溝１２ｄの深さよりも深く形成されている。

【0041】

このため、一対の切欠き溝部２２ａそれぞれは、図５（ｂ）に示すように、大径筒部１２ｂの装着溝１２ｄに装着された弾性保持部材１４の内周部と一対の切欠き溝部２２ａの底部との間に隙間が形成され、この隙間を通して空気や水などの流体が流通するように構成されている。

【0042】

これにより、流通路２２は、図２、図４および図５（ｂ）に示すように、操作部材１３の頭部１６が第１ケース２の内部に向けて押し込まれる際に、筒状部材１２の大径筒部１２ｂと頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内における空間内の空気や水などの流体が圧縮され、この圧縮された流体を第１ケース２の外部に排出させることにより、大径筒部１２ｂと頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内における空間内の圧力を第１ケース２の外部の圧力とほぼ同じ圧力にするように構成されている。

【0043】

また、この流通路２２は、図２、図４および図５（ｂ）に示すように、操作部材１３の頭部１６が第１ケース２の外部に向けて引き出される際に、大径筒部１２ｂと頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内における空間内の空気や水などの流体が膨張することにより、第１ケース２の外部の空気や水などの流体を大径筒部１２ｂと頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内の空間内に送り込み、大径筒部１２ｂと頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内における空間内の圧力を第１ケース２の外部の圧力とほぼ同じ圧力にするように構成されている。

【0044】

次に、このような腕時計におけるスイッチ装置１０の作用について説明する。
このスイッチ装置１０は、通常の状態のときに、操作部材１３が第１ケース２の内部に向けて押し込まれて、図２に示す第１の位置に配置されている。この状態のときには、筒状部材１２の大径筒部１２ｂに設けられた弾性保持部材１４が操作部材１３の頭部１６の内周面に設けられた弾接調整部２１のテーパ面における内径の最も小さい箇所に強く弾接している。

【0045】

このため、筒状部材１２の大径筒部１２ｂと操作部材１３の頭部１６との間の防水が図られる。また、このときには、操作部材１３の頭部１６の内端面と筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外端面との間に緩衝部材１８が弾力的に挟まれている。さらに、このときには、操作部材１３の軸部１５に取り付けられた巻真２０が時計モジュール６の時計ムーブメント（図示せず）内に押し込まれている。この状態では、操作部材１３の回転操作に応じて巻真２０が回転しても、時計ムーブメントが動作しないニュートラル状態になっている。

【0046】

この状態のときに、操作部材１３の頭部１６がその外部から衝撃を受けた際には、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの装着溝１２ｄに取り付けられた弾性保持部材１４と、操作部材１３の軸部１５の外周に位置して頭部１６の外端面と大径筒部１２ｂ内の内端面との間に配置された緩衝部材１８とによって、外部からの衝撃が緩衝される。

【0047】

すなわち、操作部材１３の頭部１６がその軸方向と直交する方向の衝撃を受けた際には、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの装着溝１２ｄに取り付けられた弾性保持部材１４によって、外部からの衝撃が緩衝される。また、操作部材１３の頭部１６がその軸方向の衝撃を受けた際には、頭部１６の外端面と大径筒部１２ｂ内の内端面との間に配置された緩衝部材１８によって、外部からの衝撃が緩衝される。このため、頭部１６がその軸方向に対する斜め方向の衝撃を受けた際には、弾性保持部材１４と緩衝部材１８とによって衝撃が緩衝される。

【0048】

ところで、時計モジュール６の時計ムーブメント（図示せず）を操作させて時刻修正をする際には、まず、操作部材１３を第１ケース２の外部に向けて引き出して第２の位置に配置する。このときには、操作部材１３の頭部１６を第１ケース２の外部に向けて引き出す。すると、操作部材１３の軸部１５が筒状部材１２内をスライドして第１ケース２の外部に向けて引き出されると共に、頭部１６が筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周に沿ってスライドして第１ケース２の外部に向けて引き出される。

【0049】

すなわち、操作部材１３の軸部１５が第１ケース２の外部に向けて引き出される際には、軸部１５の外周に設けられた複数の防水リング１７が筒状部材１２の内周面に圧接した状態で摺動する。これにより、軸部１５の外周面と筒状部材１２の内周面との間の防水が図れる。また、頭部１６が第１ケース２の外部に向けて引き出される際には、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの弾性保持部材１４が頭部１６の内周面に設けられた弾接調整部２１に弾接した状態で摺動することにより、頭部１６の内周面と筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周面との間の防水が図れる。

【0050】

このときには、頭部１６の内周面に設けられた弾接調整部２１が、操作部材１３の押し込まれた第１の位置から操作部材１３の引き出された第２の位置に向けて次第に大きくなるテーパ面に形成されている。これにより、頭部１６の内周面に設けられた弾接調整部２１に弾接する弾性保持部材１４の弾接力が操作部材１３の引き出し操作に応じて徐々に小さくなる。

【0051】

すなわち、操作部材１３が第１ケース２の内部に向けて押し込まれた第１の位置における頭部１６の弾接調整部２１に弾接する弾性保持部材１４の弾接力が最も大きく、操作部材１３が第１ケース２の外部に向けて引き出された第２の位置における頭部１６の弾接調整部２１に弾接する弾性保持部材１４の弾接力が徐々に小さくなる。これにより、操作部材１３を第１ケース２の外部に向けて引き出す際に、その引き出し操作力が徐々に軽くなる。

【0052】

このときには、弾接調整部２１のテーパ面の傾斜が筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周から弾性保持部材１４の突出する長さの範囲内で傾斜していることにより、操作部材１３の引き出し操作力が徐々に軽くなっても、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの弾性保持部材１４が頭部１６の内周面に設けられた弾接調整部２１に弾接した状態で摺動する。これにより、頭部１６の内周面と筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周面との間の防水が図れる。

【0053】

また、操作部材１３が引き出される際には、筒状部材１２の大径筒部１２ｂと操作部材１３の頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内における空間内の空気や水などの流体が膨張する。このため、第１ケース２の外部の空気や水などの流体が、大径筒部１２ｂと頭部１６との間に設けられた流通路２２を通して、大径筒部１２ｂと頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内の空間内に送り込まれる。

【0054】

すなわち、第１ケース２の外部の空気や水などの流体は、頭部１６の内周面と大径筒部１２ｂの外周面との間に設けられた流通部２２ｂから筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周部に弾性保持部材１４の内周側を通して軸方向に沿って形成された一対の切欠き溝部２２ａを通して、大径筒部１２ｂと頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内の空間内に送り込まれる。

【0055】

これにより、大径筒部１２ｂと操作部材１３の頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内における空間内の圧力が、第１ケース２の外部の圧力とほぼ同じ圧力になる。このため、操作部材１３が引き出される際に、操作部材１３を筒状部材１２に対して第１ケース２の外部側に向けて円滑にかつ良好にスライドさせることができる。

【0056】

このようにして、操作部材１３が引き出された際には、操作部材１３の軸部１５に取り付けられた巻真２０が、操作部材１３のスライド動作に応じてスライドし、この巻真２０の内端部が時計モジュール６の時計ムーブメント（図示せず）を操作可能な状態にする。この状態で、操作部材１３の頭部１６を回転操作すると、この頭部１６の回転操作に応じて巻真２０が回転し、この巻真２０の回転によって時計ムーブメントを動作させて時刻修正が行われる。

【0057】

このときには、操作部材１３が引き出されて、頭部１６の弾接調整部２１に弾接する弾性保持部材１４の弾接力が小さくなっているので、操作部材１３の頭部１６を回転操作する際に、頭部１６を軽い力で円滑にかつ良好に回転させることができる。このため、操作部材１３の操作性が向上し、操作部材１３を良好に操作することができる。

【0058】

そして、操作部材１３を第１ケース２の内部に向けて押し込んで、再び通常の初期状態に戻す際には、操作部材１３の頭部１６を第１ケース２の内部側に向けて押し込んで、図２に示す第１の位置に配置する。このときには、操作部材１３の軸部１５が筒状部材１２内をスライドして第１ケース２の内部に向けて押し込まれると共に、頭部１６が筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周に沿ってスライドして第１ケース２の内部に向けて押し込まれる。

【0059】

すなわち、操作部材１３の軸部１５が第１ケース２の内部に向けて押し込まれる際には、軸部１５の外周に設けられた複数の防水リング１７が筒状部材１２の内周面に圧接した状態で摺動する。また、頭部１６が第１ケース２の内部に向けて押し込まれる際には、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの弾性保持部材１４が頭部１６の内周面に設けられた弾接調整部２１に弾接した状態で摺動する。

【0060】

このときには、頭部１６の弾接調整部２１に弾接する弾性保持部材１４の弾接力が操作部材１３の押し込み操作に応じて徐々に大きくなる。すなわち、操作部材１３が第１ケース２の外部に向けて引き出された第２の位置における頭部１６の弾接調整部２１に弾接する弾性保持部材１４の弾接力が最も小さい。

【0061】

このため、操作部材１３が第１ケース２の内部に向けて押し込まれた第１の位置における頭部１６の弾接調整部２１に弾接する弾性保持部材１４の弾接力が最も大きくなる。これにより、操作部材１３を第１ケース２の内部に向けて押し込む際には、その押し込み操作力が徐々に重くなる。

【0062】

また、このように操作部材１３が第１ケース２の内部に向けて押し込まれる際には、筒状部材１２の大径筒部１２ｂと操作部材１３の頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内における空間内の空気や水などの流体が圧縮される。この圧縮された流体が大径筒部１２ｂに設けられた流通路２２を通して第１ケース２の外部に排出される。

【0063】

すなわち、大径筒部１２ｂと頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内の空間内の空気や水などの流体は、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周部に弾性保持部材１４の内周側を通して軸方向に沿って形成された一対の切欠き溝部２２ａから頭部１６の内周面と大径筒部１２ｂの外周面との間に設けられた流通部２２ｂを通して、第１ケース２の外部に排出される。

【0064】

これにより、大径筒部１２ｂと頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内における空間内の圧力が、第１ケース２の外部の圧力とほぼ同じ圧力になる。このため、操作部材１３を第１ケース２の内部側に向けて円滑にかつ良好にスライドさせることができる。そして、操作部材１３が押し込まれた際には、操作部材１３が通常の初期状態に戻る。このため、操作部材１３を回転操作させても、時計ムーブメントが動作しないニュートラル状態になる。

【0065】

このように、この腕時計のスイッチ装置１０によれば、時計モジュール６が内蔵された腕時計ケース１の貫通孔１１に取り付けられ、内端部が腕時計ケース１内に突出して時計モジュール６に対して保持され、かつ外端部が腕時計ケース１の外部に突出する筒状部材１２と、この筒状部材１２内にその軸方向にスライド可能に配置されて時計モジュール６を操作するための軸部１５、およびこの軸部１５の外端部に設けられて筒状部材１２の外端部を覆ってスライド可能に保持する頭部１６を備えた操作部材１３と、を備えていることにより、筒状部材１２の外径および腕時計ケース１の貫通孔１１の内径を小さくして、腕時計ケース１の薄型化を図ることができる。

【0066】

すなわち、この腕時計のスイッチ装置１０では、筒状部材１２を腕時計ケース１の貫通孔１１と時計モジュール６と操作部材１３との３点で保持することができるので、筒状部材１２を腕時計ケース１に対して安定した状態で確実にかつ強固に保持することができる。このため、筒状部材１２の外径を２０％程度小さく形成することができると共に、筒状部材１２の外径を小さく形成しても、筒状部材１２の強度を確保することができ、かつ筒状部材１２の外径の大きさに伴って腕時計ケース１の貫通孔１１の内径を小さく形成することができる。これにより、腕時計ケース１の厚みを１０％程度薄くすることができるので、腕時計ケース１の薄型化を図ることができる。

【0067】

この場合、筒状部材１２は、腕時計ケース１の貫通孔１１に挿入されて保持され、かつ内端部が腕時計ケース１内に突出して時計モジュール６に対して保持される小径筒部１２ａと、この小径筒部１２ａの外端部に設けられて操作部材１３の頭部１６に保持される大径筒部１２ｂと、を備えていることにより、筒状部材１２を腕時計ケース１の貫通孔１１と時計モジュール６と操作部材１３との３点で保持することができ、これにより筒状部材１２を腕時計ケース１に対して確実にかつ強固に保持することができる。

【0068】

この場合、時計モジュール６は、時計機能に必要な各種の部品を搭載するハウジングの外周に取り付けられる中枠７を備えており、腕時計ケース１内に突出する筒状部材１２の内端部が中枠７に設けられた切欠き部７ａ内に挟まれて保持されていることにより、筒状部材１２の内端部を確実に保持することができる。すなわち、中枠７の切欠き部７ａは、中枠７の円周方向の長さと上下方向の長さとが小径筒部１２ａの内端部の外径とほぼ同じ長さで、上辺部が開放された形状に形成されているので、筒状部材１２の内端部を確実に保持することができる。

【0069】

これにより、小径筒部１２ａは、腕時計ケース１の貫通孔１１に挿入されて内端部が腕時計ケース１内に突出した状態で、時計モジュール６を中枠７と共に腕時計ケース１内に組み込む際に、腕時計ケース１内に突出した内端部が中枠７の切欠き部７ａ内にその上辺側から嵌め込まれることにより、小径筒部１２ａの内端部を切欠き部７ａの下辺部に当接させて切欠き部７ａの両側部で確実に挟み付けて保持することができる。

【0070】

このため、筒状部材１２の小径筒部１２ａは、腕時計ケース１の貫通孔１１内に圧入されて固定され、内端部が腕時計ケース１内に配置された時計モジュール６の中枠７の切欠き部７ａに嵌め込まれて固定されることにより、小径筒部１２ａを腕時計ケース１に対して２点支持によって確実にかつ強固に保持することができる。

【0071】

また、このスイッチ装置１０では、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周にその径方向に突出して設けられ、かつこの突出した大径筒部１２ｂが操作部材１３の頭部１６の内周面に弾接して筒状部材１２の大径筒部１２ｂを保持する弾性保持部材１４を備えているので、操作部材１３の頭部１６の内周面に弾接する弾性保持部材１４を介して筒状部材１２の大径筒部１２ｂを操作部材１３の頭部１６によって良好に保持することができる。

【0072】

すなわち、操作部材１３は、その軸部１５が筒状部材１２内に挿入されて保持され、この軸部１５の外端部に頭部１６が設けられ、この頭部１６の内周面に弾性保持部材１４が弾接していることにより、操作部材１３の頭部１６が軸部１５と共に筒状部材１２の大径筒部１２ｂを確実に保持することができる。このため、筒状部材１２の大径筒部１２ｂが腕時計ケース１の外部に突出した状態で設けられていても、その大径筒部１２ｂを安定した状態で確実にかつ良好に保持することができる。

【0073】

この場合、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周面には、弾性保持部材１４が取り付けられる装着溝１２ｄが設けられており、弾性保持部材１４は、装着溝１２ｄに取り付けられた際に、その外周部が大径筒部１２ｂの外周面から突出していることにより、大径筒部１２ｂの外周面から突出している弾性保持部材１４によって、操作部材１３の頭部１６が衝撃を受けた際に、その衝撃のうちの頭部１６の軸方向と直交する方向の衝撃を緩衝することができる。

【0074】

また、この弾性保持部材１４は、その外周部が大径筒部１２ｂの外周面から突出していることにより、筒状部材１２の大径筒部１２ｂと操作部材１３との芯出しを行うことができ、これによりその両者の偏心を防ぐことができるほか、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周面と頭部１６の内周面との間の防水を図ることができる。

【0075】

また、このスイッチ装置１０では、操作部材１３の頭部１６内の内端面と筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外端面との間に緩衝部材１８が配置されていることにより、操作部材１３の頭部１６が衝撃を受けた際に、緩衝部材１８によってその衝撃のうちの頭部１６の軸方向の衝撃を緩衝することができる。このため、頭部１６がその軸方向に対する斜め方向の衝撃を受けた際には、弾性保持部材１４と緩衝部材１８とによって衝撃を緩衝することができる。

【0076】

また、このスイッチ装置１０では、操作部材１３の頭部１６の内周面に設けられ、操作部材１３が腕時計ケース１の外部に向けて引き出された第２の位置における弾性保持部材１４の弾接力を、操作部材１３が腕時計ケース１の内部に向けて押し込まれた第１の位置における弾性保持部材１４の弾接力よりも小さくする弾接調整部２１を備えていることにより、操作部材１３の操作性を向上させることができる。

【0077】

すなわち、このスイッチ装置１０では、腕時計ケース１の外部に向けて引き出された第２の位置に配置された際に、頭部１６の内周面に設けられた弾接調整部２１に弾接する弾性保持部材１４の弾接力を小さくすることができるので、操作部材１３の頭部１６を軽い力で回転操作させることができ、これにより頭部１６の回転操作性を向上させることができる。

【0078】

また、このスイッチ装置１０では、腕時計ケース１の内部に向けて押し込まれた第１の位置に配置された際に、頭部１６の内周面に設けられた弾接調整部２１に弾接する弾性保持部材１４の弾接力を大きくすることができるので、操作部材１３の頭部１６の回転力を重くすることができ、これにより頭部１６が不用意に回転するのを防ぐことができる。

【0079】

この場合、弾接調整部２１は、操作部材１３の頭部１６の内径が第１の位置から第２の位置に向けて次第に大きくなるテーパ面に形成されていることにより、操作部材１３を腕時計ケース１の外部に向けて引き出す際に、弾接調整部２１に弾接する弾性保持部材１４の弾接力を操作部材１３の引き出し操作に応じて徐々に軽くすることができ、これにより操作部材１３の引き出し操作性を向上させることができる。

【0080】

また、この弾接調整部２１は、操作部材１３を腕時計ケース１の内部に向けて押し込む際に、弾接調整部２１に弾接する弾性保持部材１４の弾接力を操作部材１３の押し込み操作に応じて徐々に重くすることができ、これにより操作部材１３を押し込んだ際に、操作部材１３を筒状部材１２の大径筒部１２ｂにかつ良好に固定することができる。

【0081】

この場合、弾接調整部２１は、テーパ面の傾斜が筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周から弾性保持部材１４の突出する長さの範囲内で傾斜していることにより、操作部材１３を腕時計ケース１の外部に向けて引き出す際にも、また操作部材１３を腕時計ケース１の内部に向けて押し込む際にも、弾性保持部材１４を弾接調整部２１に確実にかつ良好に弾接させることができ、これにより筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周面と頭部１６の内周面との間の防水を良好に図ることができる。

【0082】

さらに、このスイッチ装置１０では、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外端部と操作部材１３の頭部１６とによって囲われる頭部１６内の空間と、腕時計ケース１の外部と、に連通する流通路２２を備えていることにより、操作部材１３を腕時計ケース１の外部に向けて引き出す際にも、また操作部材１３を腕時計ケース１の内部に向けて押し込む際にも、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外端部と操作部材１３の頭部１６とによって囲われる頭部１６内の空間の圧力を腕時計ケース１の外部の圧力とほぼ同じ圧力に保つことができる。

【0083】

すなわち、流通路２２は、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外周部に弾性保持部材１４の内周側を通して軸方向に沿って形成された一対の切欠き溝部２２ａと、頭部１６の内周面と大径筒部１２ｂの外周面との間に設けられた流通部２２ｂと、を備えていることにより、筒状部材１２の大径筒部１２ｂの外端部と操作部材１３の頭部１６とによって囲われる頭部１６内の空間と、腕時計ケース１の外部とに、空気や水などの流体を確実にかつ良好に流通させることができる。

【0084】

これにより、このスイッチ装置１０では、操作部材１３の頭部１６が腕時計ケース１の内部側に向けて押し込まれる際に、大径筒部１２ｂと頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内における空間内の空気や水などの流体が圧縮されても、この圧縮された流体を大径筒部１２ｂの流通路２２によって、腕時計ケース１の外部に排出することができる。

【0085】

このため、このスイッチ装置１０では、大径筒部１２ｂと頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内における空間内の圧力を、腕時計ケース１の外部の圧力とほぼ同じ圧力にすることができ、これにより操作部材１３の頭部１６を腕時計ケース１の内部側に向けて押し込む際に、操作部材１３を円滑にかつ良好にスライドさせることができる。

【0086】

また、このスイッチ装置１０では、操作部材１３の頭部１６が腕時計ケース１の外部側に向けて引き出される際に、筒状部材１２の大径筒部１２ｂと頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内における空間内の空気や水などの流体が膨張しても、腕時計ケース１の外部の空気や水などの流体を大径筒部１２ｂの流通路２２によって、大径筒部１２ｂと頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内の空間内に送り込むことができる。

【0087】

このため、このスイッチ装置１０では、大径筒部１２ｂと頭部１６とによって囲われた大径筒部１２ｂ内における空間内の圧力を、腕時計ケース１の外部の圧力とほぼ同じ圧力にすることができ、これにより操作部材１３の頭部１６を腕時計ケース１の外部側に向けて引き出す際に、操作部材１３を円滑にかつ良好にスライドさせることができる。

【0088】

なお、上述した実施形態では、筒状部材１２の小径筒部１２ａの内端部を時計モジュール６の中枠７で保持するように構成した場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば時計モジュール６のハウジングで保持するように構成しても良い。

【0089】

また、上述した実施形態では、腕時計ケース１が第１ケース２と第２ケース３とで構成されている場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば第１ケース２と第２ケース３とを一体に形成した構成であっても良い。

【0090】

また、上述した実施形態では、弾接調整部２１は、操作部材１３の頭部１６の内径が第１の位置から第２の位置に向けて次第に大きくなるテーパ面に形成されている場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば操作部材１３の頭部１６の内径が第１の位置に対して第２の位置の方が大きい段差形状であっても良い。さらに、第１の位置〜第３の位置というように複数の位置に対して段差を複数形成して操作部材１３の頭部１６の内径が第１の位置〜第３の位置に向けて次第に大きくなるようにしても良い。

【0091】

さらに、上述した実施形態およびその各変形例では、腕時計に適用した場合について述べたが、この発明は必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の時計に適用することができる。また、この発明は必ずしも時計である必要はなく、例えば携帯電話機、携帯情報端末機などの各種の電子機器にも適用することができる。

【0092】

以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。

【0093】

（付記）
請求項１に記載の発明は、貫通孔が設けられ、かつモジュールが内蔵されたケースと、前記ケースの前記貫通孔に取り付けられ、内端部が前記ケース内に突出して前記モジュールに対して保持され、かつ外端部が前記ケースの外部に突出する筒状部材と、前記筒状部材内にその軸方向にスライド可能に配置されて前記モジュールを操作するための軸部、および前記軸部の外端部に設けられて前記筒状部材の前記外端部を覆ってスライド可能に保持する頭部を備えた操作部材と、を備えていることを特徴とするスイッチ装置である。

【0094】

請求項２に記載の発明は、請求項１に記載のスイッチ装置において、前記筒状部材は、前記ケースの前記貫通孔に挿入されて保持され、かつ内端部が前記ケース内に突出して前記モジュールに対して保持される小径筒部と、前記小径筒部の外端部に設けられて前記操作部材の前記頭部に保持される大径筒部と、を備えていることを特徴とするスイッチ装置である。

【0095】

請求項３に記載の発明は、請求項２に記載のスイッチ装置において、前記筒状部材の前記大径筒部の外周にその径方向に突出して設けられ、かつ突出した外周部が前記頭部の内周面に弾接して前記筒状部材の前記大径筒部を保持する弾性保持部材を備えていることを特徴とするスイッチ装置である。

【0096】

請求項４に記載の発明は、請求項１〜請求項３のいずれかに記載のスイッチ装置において、前記操作部材の前記頭部内の内端面と前記筒状部材の外端面との間に配置された緩衝部材を備えていることを特徴とするスイッチ装置である。

【0097】

請求項５に記載の発明は、請求項３または請求項４に記載のスイッチ装置において、前記操作部材の前記頭部の内周面に設けられ、前記操作部材が前記ケースの外部に向けて引き出された第２の位置における前記弾性保持部材の弾接力を、前記操作部材が前記ケースの内部に向けて押し込まれた第１の位置における前記弾性保持部材の弾接力よりも小さくする弾接調整部を備えていることを特徴とするスイッチ装置である。

【0098】

請求項６に記載の発明は、請求項５に記載のスイッチ装置において、前記弾接調整部は、前記操作部材の前記頭部の内径が前記第１の位置から前記第２の位置に向けて次第に大きくなるテーパ面に形成されていることを特徴とするスイッチ装置である。

【0099】

請求項７に記載の発明は、請求項６に記載のスイッチ装置において、前記弾接調整部は、前記テーパ面の傾斜が、前記筒状部材の前記外端部の外周から前記弾性保持部材の突出する長さの範囲内で傾斜していることを特徴とするスイッチ装置である。

【0100】

請求項８に記載の発明は、請求項１〜請求項７のいずれかに記載のスイッチ装置において、前記筒状部材の前記外端部と前記操作部材の前記頭部とによって囲われる前記頭部内の空間と、前記ケースの外部と、に連通する流通路を備えていることを特徴とするスイッチ装置である。

【0101】

請求項９に記載の発明は、請求項８に記載のスイッチ装置において、前記流通路は、前記筒状部材の前記大径筒部の外周部に前記弾性保持部材の内周側を通して軸方向に沿って形成された切欠き溝部と、前記頭部の内周面と前記大径筒部の外周面との間に設けられた流通部と、を備えていることを特徴とするスイッチ装置である。

【0102】

請求項１０に記載の発明は、請求項１〜請求項９のいずれかに記載されたスイッチ装置を備えていることを特徴とする時計である。

【符号の説明】

【0103】

１ 腕時計ケース
２ 第１ケース
３ 第２ケース
６ 時計モジュール
７ 中枠
７ａ 切欠き部
１０ スイッチ装置
１１ 貫通孔
１２ 筒状部材
１２ａ 小径筒部
１２ｂ 大径筒部
１２ｄ 装着溝
１３ 操作部材
１４ 弾性保持部材
１５ 軸部
１６ 頭部
１７ 防水リング
１８ 緩衝部材
２０ 巻真
２１ 弾接調整部
２２ 流通路
２２ａ 切欠き溝部
２２ｂ 流通部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】