特許第6394588号(P6394588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6394588(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394588
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/33 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   C07D307/33 330
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-502941(P2015-502941)
(86)(22)【出願日】2014年2月26日
(86)【国際出願番号】JP2014054609
(87)【国際公開番号】WO2014132975
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2016年11月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-38505(P2013-38505)
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152593
【弁理士】
【氏名又は名称】楊井 清志
(72)【発明者】
【氏名】安本 学
(72)【発明者】
【氏名】岡本 隆一
(72)【発明者】
【氏名】名倉 裕力
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 英之
(72)【発明者】
【氏名】石井 章央
【審査官】 新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−513377(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/090046(WO,A1)
【文献】 特表2008−507547(JP,A)
【文献】 特表2008−513456(JP,A)
【文献】 ZHANG, Pingsheng et al.,A practical synthesis of (2R)-3,5-di-O-benzoyl-2-fluoro-2-C-methyl-D- ribono-γ-lactone,Tetrahedron: Asymmetry,2009年,Vol.20, No.3,pp.305-312
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[1]で表される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の製造方法において、一般式[2]で示されるラクトン前駆体のジアステレオマー混合物を、酢酸、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、またはトリフルオロ酢酸を用いて脱保護し、続いてラクトン化させることにより、一般式[3]で表されるジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物を得る工程と、得られた混合物をアルコール系、芳香族炭化水素系、エステル系、ニトリル系、エーテル系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、水、および脂肪族炭化水素系からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒で再結晶することにより、一般式[4]で表される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンを分離精製する工程と、分離精製されたラクトンをアセチル化、ベンゾイル化またはホルミル化する工程と、を含む、(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の製造方法。
【化31】
[式中、Rベンゾイル基、ホルミル基、またはアセチル基を表す]
【化32】
[式中、R炭素数が1から6の直鎖または枝分れのアルキル基または置換アルキル基を表し、Aは酸素原子を表す。PおよびPはそれぞれ同時に1つの保護基を採り、該保護基がイソプロピリデン基またはシクロヘキシリデン基を表す。*は不斉炭素を表す。]
【化33】
[式中、*は不斉炭素を表す。]
【化34】
【請求項2】
ジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物の再結晶に用いる溶媒が、イソプロパノール、トルエン、酢酸エチルまたはn−ヘプタンである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物の再結晶に用いる溶媒が、
イソプロパノール、トルエン及びn−ヘプタンの混合溶媒、
または、
イソプロパノール、酢酸エチル及びn−ヘプタンの混合溶媒
である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
アセチル化における試剤が無水酢酸、アセチルクロリドであり、ホルミル化における試剤がギ酸であり、ベンゾイル化における試剤がベンゾイルクロリド、安息香酸無水物、シアン化ベンゾイルまたはトリフルオロメタンスルホン酸ベンゾイルである、請求項1乃至3の何れかに記載の製造方法。
【請求項5】
塩基の存在下でアセチル化、ベンゾイル化またはホルミル化を行う、請求項1乃至4の何れかに記載の製造方法。
【請求項6】
塩基がアミン類、水酸化物類、アルカリ金属の炭酸塩もしくは炭酸水素塩類である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
ベンゾイル化反応を、試剤としてベンゾイルクロリドを用い、かつ、塩基としてピリジンの存在下で行う、請求項1乃至6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の工業的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の製造方法は既に幾つか報告されている。大量規模での製造にも適した手法としては環状硫酸エステル体への開環フッ素化が挙げられ、本出願人は1,2−ジオール類と有機塩基の存在下におけるスルフリルフルオリドとの反応を開示している(特許文献1)。この反応では立体選択的にフッ素原子を導入することで、(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン前駆体を高い収率で再現良く得ることができる。一方、2−フルオロプロピオン酸エチルと塩基存在下における(R)−(+)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシアルデヒドとのアルドール反応によりジアステレオマー混合物として(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン前駆体を得た後、酵素による基質選択的加水分解反応を行うことでジアステレオマーの分離を行う方法が報告されている[下記スキームを参照、Etはエチル基を表し、Bzはベンゾイル基を表す](特許文献2、非特許文献1)。また、2−フルオロプロピオン酸エステルの代わりに2−フルオロプロピオン酸アミド類もしくはチオエステルを用いることで、塩基存在下の(R)−(+)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−カルボキシアルデヒドとのアルドール反応における(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン前駆体の選択性を上げる手法も報告されている(特許文献3)。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2011/152155号公報
【特許文献2】米国公開2008/0145901号公報
【特許文献3】米国公開2008/0177079号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tetrahedron: Asymmetry(英国)、2009年、第20巻、p.305-312
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の工業的な製造方法を提供することにある。
【0006】
特許文献1の方法では、本願発明の原料基質でもある1,2−ジオール類が開示されているが、この化合物は公知の方法により製造可能とは言え、Wittig反応、金属試薬を用いる立体選択的ジヒドロキシ化反応で製造する方法を採用していることもあり、コスト削減がいくぶん困難であった。一方、特許文献2、非特許文献1の方法では、特許文献1の製法に比べて工程は短縮できるが、総収率は低く、またジアステレオマーの分離に酵素反応を利用することで再現性や生産性という点でも依然として問題が残るため、工業的な製造方法としての要件(高い生産性で再現良く)を満たすことは困難であった。特許文献3では十分な選択性と収率は得られておらず、依然として効率的な分離法が求められている。よって、本発明で対象とする(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンの精製方法の開発においても、従来法に比べて簡便な操作による効率的なジアステレオマーの分離が強く望まれていた。
【0007】
尚、前述の従来技術では(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン前駆体および3,5位がアシル化された(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類については酵素反応、再結晶、カラムなどを駆使したジアステレオマーの分離精製検討がなされているが、3,5位がアシル化されていない(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンの、ジアステレオマーの分離精製による効率的な製造方法は一切報告されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を踏まえて鋭意検討した結果、一般式[2]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン前駆体のジアステレオマー混合物を、酸性条件下で脱保護し、続いてラクトン化させることにより、一般式[3]で示されるジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物を得、続いて該混合物を再結晶精製することで効率的なジアステレオマーの分離が可能となり、光学活性2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンを容易に製造できることを見出した。
【化2】
[式中、R1はアルキル基または置換アルキル基を表し、Aは酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表す。P1およびP2はそれぞれヒドロキシル基の保護基を表す。*は不斉炭素を表す。]
【化3】
[式中、*は不斉炭素を表す。]
【0009】
また、再結晶溶媒としてはアルコール系、ニトリル系、エステル系、エーテル系、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、水を用いることができ、これらを単独または組み合わせて用いることで、高い収率で再現良く高純度の光学活性2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンを得ることができることを見出した。
【0010】
ここで得られた当該ラクトンはアシル化反応を行うことにより、対応する保護体を収率良く得ることができる。
【0011】
尚、本発明では、「再結晶精製」と「アシル化反応」を行う順番に特徴がある。すなわち、ジアステレオマーを、混合する3,5位がアシル化された(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類から再結晶を行う、すなわち、最初にアシル化を行った後に再結晶を行っても目的の立体配置を持つ生成物を効率よく分離することはできなかった(後述の比較例1を参照)。この結果は、3、5位がヒドロキシル基である場合(3,5位がアシル化されていない場合)と3,5位がアシル化された場合とでは、ジアステレオマーの分離における挙動が明らかに異なることを示唆しており、特に(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類と(2S)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の分離においては挙動に顕著な差が見られた。このことは特許文献2、特許文献3および非特許文献1で開示されている内容を大きく超えるものである。
【0012】
この様に、(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の極めて有用な製造方法を見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は、[発明1]−[発明7]に記載の(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の工業的な製造方法を提供する。
【0014】
[発明1]
一般式[1]で表される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の製造方法において、一般式[2]で表されるラクトン前駆体のジアステレオマー混合物を、酸性条件下で脱保護し、続いてラクトン化させることにより、一般式[3]で表されるジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物を得る工程と、得られた混合物を再結晶することにより、一般式[4]で表される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンを分離精製する工程と、分離精製されたラクトンをアシル化する工程と、を含む、(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の製造方法。
【化4】
[式中、R2はアシル基を表す]
【化5】
[式中、R1はアルキル基または置換アルキル基を表し、Aは酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表す。P1およびP2はそれぞれヒドロキシル基の保護基を表す。*は不斉炭素を表す。]
【化6】
[式中、*は不斉炭素を表す。]
【化7】
【0015】
[発明2]
ジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物の再結晶に用いる溶媒が、アルコール系、芳香族炭化水素系、エステル系、ニトリル系、エーテル系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、水、および脂肪族炭化水素系からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒である、発明1に記載の製造方法。
【0016】
[発明3]
ジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物の再結晶に用いる溶媒が、イソプロパノール、トルエン、酢酸エチルまたはn−ヘプタンである、発明1または2に記載の製造方法。
【0017】
[発明4]
一般式[2]におけるR1が、炭素数が1から6の直鎖または枝分れのアルキル基または置換アルキル基である、発明1に記載の製造方法。
【0018】
[発明5]
一般式[2]におけるP1およびP2が、イソプロピリデン基またはシクロヘキシリデン基である、発明1に記載の製造方法。
【0019】
[発明6]
ラクトン前駆体のジアステレオマー混合物を、酸性条件下で脱保護し、続いてラクトン化させる際、用いる酸が酢酸、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、またはトリフルオロ酢酸である、発明1に記載の製造方法。
【0020】
[発明7]
一般式[1]におけるR2が、ベンゾイル基、ホルミル基、またはアセチル基である、発明1に記載の製造方法。
【0021】
本発明が従来技術に比べて有利な点を以下に述べる。
【0022】
本発明では、ジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物に対して再結晶精製を行うことで、該混合物に含まれるジアステレオマーのうち、目的とする(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンを効率的に得ることができる。さらに、好適な再結晶条件を採用することにより高い収率で再現良く高純度の(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンを得ることができる。特許文献2および非特許文献1に対して、本発明では、従来の酵素を用いた基質選択的加水分解反応は必要とせず、酵素反応を要しない簡便な操作による効率的なジアステレオマーの分離は再現性を有し、生産性を高めることも可能である。本発明は、工業的な製造方法としての要件も同時に満たしている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンの製造方法について詳細に説明する。
【0024】
本発明は、一般式[2]で示されるラクトン前駆体のジアステレオマー混合物を酸性条件下で脱保護およびラクトン化反応させることにより、一般式[3]で示されるジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物を得る工程と、前工程で得られた該混合物を再結晶により一般式[4]で示される高純度の(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンを得る工程と、前工程で得られた(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンをアシル化する工程とを含む、(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の製造方法である。
【0025】
一般式[2]におけるR1は、アルキル基または置換アルキル基を表す。アルキル基は、炭素数が1から12の、直鎖または枝分れの鎖式、または環式(炭素数が3以上の場合)を採ることができる。置換アルキル基は、該アルキル基の任意の炭素原子上に、任意の数でさらに任意の組み合わせで置換基を有する。係る置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の低級アルコキシ基等が挙げられる。本明細書において“低級”は炭素数が1から6を意味し、直鎖または枝分れの鎖式、または環式(炭素数が3以上の場合)を採ることができる。その中でも炭素数が1から6のアルキル基または置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
【0026】
一般式[2]におけるAは酸素原子または窒素原子または硫黄原子を表し、前述のR1の定義とあわせ、具体的な構造の例は以下の通りである(なお、式中の波線は結合部位である)。
【化8】
【0027】
一般式[2]で示されるラクトン前駆体のP1およびP2は、それぞれヒドロキシル基の保護基を表す。係る保護基としては、Protective Groups in Organic Synthesis、Third Edition、1999、John Wiley & Sons、Inc.に記載されたもの等が挙げられる。P1とP2は同じ保護基または異なる保護基を採ることができ、さらに同時に1つの保護基を採ることもできる。その中でも同時に1つの保護基を採るものが好ましく(下記を参照)、イソプロピリデン基またはシクロヘキシリデン基で保護されたものが特に好ましい。
【化9】
【0028】
一般式[2]で示されるラクトン前駆体のジアステレオマー混合物は、特許文献2または非特許文献1等を参考にして同様に製造することができる。尚、ここで言う「ラクトン前駆体のジアステレオマー混合物」は、具体的な構造を以下に示すが、4種類の立体配置が異なる化合物(式[2a]−式[2d])のことを言う。
【化10】
【0029】
次に、脱保護およびラクトン化反応について説明する。
【0030】
一般式[2]で示されるラクトン前駆体のジアステレオマー混合物を酸性条件下にて反応させることにより、脱保護が進行した後に、連続して速やかにラクトン化反応が進行し、一般式[3]で示されるジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物を得ることが出来る。尚、ここで言う「ジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物」は、具体的な構造を以下に示すが、4種類の立体配置が異なる化合物(式[3a]−式[3d])のことを言う。
【化11】
【0031】
酸性条件下における脱保護およびラクトン化反応において、酸としては酢酸、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸が挙げられる。酸はこれらに限定されるものではなく、有機合成において一般的に用いられるものも挙げられる。その中でも酢酸、硫酸、塩酸が特に好ましい。これらの酸は単独または組み合わせて用いることができる。
【0032】
酸の使用量は、一般式[2]で示されるラクトン前駆体のジアステレオマー混合物1モルに対して0.05モル以上用いればよく、0.1モルから50モルが好ましく、0.2モルから20モルが特に好ましい。
【0033】
反応溶媒としてはメタノール、エタノールなどのアルコール系、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系、水、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その中でもメタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、水、テトラヒドロフランおよびジメチルスルホキシドが好ましく、メタノール、エタノール、アセトニトリル、水およびテトラヒドロフランが特に好ましい。これらの反応溶媒は単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0034】
反応温度は、−20から+150℃の範囲で行えば良く、−10から+125℃が好ましく、0から+100℃が特に好ましい。
【0035】
反応時間は、96時間以内の範囲で行えば良く、原料基質および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、原料基質が殆ど消失した時点を終点とすることが好ましい。
【0036】
次に、一般式[3]で示されるジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物に対する再結晶操作について説明する。
【0037】
一般式[3]で示されるジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物から一般式[4]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンを分離精製する際、再結晶溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、ジi−プロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール系、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独でまたは組み合わせて用いることができる。その中でも、単独の溶媒を組みあせたもの、すなわち、イソプロパノール/トルエン、イソプロパノール/酢酸エチル、イソプロパノール/トルエン/n−ヘプタン、イソプロパノール/酢酸エチル/n−ヘプタン、アセトニトリル/トルエン、アセトニトリル/トルエン/n−ヘプタンが好ましく、イソプロパノール/トルエン/n−ヘプタンまたはイソプロパノール/酢酸エチル/n−ヘプタンが特に好ましい。
【0038】
再結晶溶媒の使用量としては、一般式[3]で示されるジヒドロキシラクトンの混合物1gに対して通常0.5mL以上用いればよく、1〜30mLが好ましく、特に2〜10mLがより好ましい。
【0039】
再結晶の方法としては特に制限はないが、加熱溶解し、放置または攪拌下、徐々に降温しながら、−20〜+20℃の範囲内で、1〜48時間かけて、結晶を十分に析出させ、析出した結晶を濾過する方法が好適に採用される。結晶化の際に、種結晶を使用することも可能である。
【0040】
再結晶工程で得られた(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンは、塩基の存在下、アシル化反応することにより一般式[1]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類に誘導できる。本発明で用いるアシル化反応は、アセチル化、ベンゾイル化、ホルミル化等が挙げられる。
【0041】
アシル化剤としては、アセチル化においては無水酢酸、アセチルクロリドなどがあり、またホルミル化においてはギ酸などがあり、またベンゾイル化においてはベンゾイルクロリド、安息香酸無水物、シアン化ベンゾイル、トリフルオロメタンスルホン酸ベンゾイルなどがあるが、これらに限定されない。本発明では、アシル化反応のうち、好ましくはアセチル化、ベンゾイル化反応であり、より好ましくはベンゾイル化反応である。ベンゾイル化反応における具体的な試剤は、前述した試剤のうち、ベンゾイルクロリドが特に好ましい。
【0042】
アシル化剤の使用量は、(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン1モルに対し、通常1〜20モルであるが、2〜10モルが好ましく、2〜5モルがより好ましい。アシル化反応に用いる反応溶媒としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、ジi−プロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系等が挙げられる。これらの反応溶媒は、反応条件により適宜選択して用いればよく、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0043】
また、用いることができる塩基として、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン、コリジン、N,N−ジメチルアニリン等のアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水酸化物類、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩もしくは炭酸水素塩類、等が挙げられる。これらの塩基は、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0044】
反応温度は、反応条件により適切な反応温度を選択できるが、通常0〜30℃で行うとよい。
【0045】
一般式[1]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類のR2はアシル基を示す。アシル基は、ベンゾイル基、ホルミル基、アセチル基などが挙げられ、これらは前述したアシル化剤に対応する。
【実施例】
【0046】
実施例により本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例1から実施例6を行った。また、比較例1も行った。尚、以下の化学式において、Meはメチル基を表す。
【0047】
[実施例1]
100mlナスフラスコに下記式[6]−[9]で示されるラクトン前駆体のジアステレオマー混合物17.47g[[6]:22.3mmol、[7]:16.1mmol、[8]+[9]:9.9mmol(19F−NMRによる内部標準法で定量)]、メタノール24ml(0.5L/mol)、12N塩酸1.5ml(18mmol、0.37eq)を加え、室温で18時間攪拌した。
【化12】
反応終了液は減圧濃縮し、トルエン15mlで5回共沸減圧濃縮し、真空乾燥することにより、下記式[4]、[5]、[10]および[11]で示されるジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物11.90gを得た。
【化13】
粗生成物の19F−NMRを下に示す。
19F−NMR[基準物質;C、重溶媒;CDCN]、
[4]:δ ppm;−6.60(m、1F)、
[5]:δ ppm;6.51(m、1F)、
[10]または[11]:δ ppm;−8.70(m、1F)、
[10]または[11]:δ ppm;7.70(m、1F)。
上記で得られたジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物11.90gをイソプロパノール17.9ml(1.5vol)とトルエン59.5ml(5vol)、n−ヘプタン11.9ml(1vol)の混合溶媒から再結晶し、濾取した結晶を氷冷したn−ヘプタン11.9mlで洗浄し、真空乾燥することにより、上記式[4]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンの淡褐色結晶を3.17g(19.3mmol)得た。収率は86.5%であった。結晶のガスクロマトグラフィー純度は94.4%で、主な不純物である上記式[5]で示されるジアステレオマーは3.7%であった。
上記で得られた(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン3.17g(19.3mmol)に、アセトニトリル19.3ml(1L/mol)、とピリジン3.51g(44.4mmol、2.30eq)を加えて、ベンゾイルクロリド5.97g(42.5mmol、2.20eq)を氷冷下で加えて、室温で2時間攪拌した。反応終了液に水18mlを氷冷下で加え、室温で10分攪拌し、酢酸エチル36mlで抽出し、回収有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液18mlで洗浄し、5%食塩水18mlで洗浄し、減圧濃縮し、真空乾燥することにより下記式[28]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類を7.18g得た。
【化14】
粗生成物の19F−NMRを下に示す。
19F−NMR[基準物質;C、重溶媒;CDCl]δ ppm;−5.44(m、1F)
上記で得られた粗生成物全量7.18g(便宜上19.3mmolとする)を酢酸エチル10.8ml(1.5vol)、イソプロパノール10.8ml(1.5vol)、n−ヘプタン64.6ml(9vol)の混合溶媒から再結晶し、濾取した結晶をn−ヘプタン14.9mlで洗浄し、真空乾燥することにより、上記式で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の白色結晶を6.52g(17.5mmol)得た。収率は90.7%であった。結晶のガスクロマトグラフィー純度は99.3%であった。
【0048】
[実施例2]
100mlナスフラスコに下記式[12]−[15]で示されるラクトン前駆体のジアステレオマー混合物20.58g[[12]:23.1mmol、[13]:16.2mmol、[14]+[15]:6.7mmol(19F−NMRによる内部標準法で定量)]、メタノール23ml(0.5L/mol)、12N塩酸1.4ml(16.8mmol、0.37eq)を加え、室温で18時間攪拌した。
【化15】
反応終了液は減圧濃縮し、トルエン15mlで5回共沸減圧濃縮し、真空乾燥することにより、下記式[4]、[5]、[10]および[11]で示されるジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物13.90gを得た。
【化16】
粗生成物の19F−NMRは実施例1と同様であった。
上記で得られたジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物13.90gをイソプロパノール20.9ml(1.5vol)とトルエン69.5ml(5vol)、n−ヘプタン27.8ml(2vol)の混合溶媒から再結晶し、濾取した結晶を氷冷したトルエン13.9mlで洗浄し、真空乾燥することにより、上記式[4]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンの淡褐色結晶を3.73g(22.7mmol)得た。収率は98.3%であった。結晶のガスクロマトグラフィー純度は90.3%で、主な不純物である上記式[5]で示されるジアステレオマーは6.3%であった。この結晶3.73gを用いて再度イソプロパノール5.6ml(1.5vol)とトルエン18.7ml(5vol)、n−ヘプタン3.7ml(1vol)の混合溶媒から再結晶し、濾取した結晶を氷冷したトルエン3.7mlで洗浄し、真空乾燥することにより、上記式[4]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンの淡黄色結晶を2.94g(17.9mmol)得た。回収率は78.8%であった。結晶のガスクロマトグラフィー純度は99.1%で、主な不純物である上記式[5]で示されるジアステレオマーは0.4%であった。
上記で得られた(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン2.94g(17.9mmol)に、アセトニトリル17.9ml(1L/mol)、とピリジン3.26g(41.2mmol、2.30eq)を加えて、ベンゾイルクロリド5.54g(39.4mmol、2.20eq)を氷冷下で加えて、室温で2時間攪拌した。反応終了液に水17mlを氷冷下で加え、室温で10分攪拌し、酢酸エチル34mlで抽出し、回収有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液17mlで洗浄し、5%食塩水17mlで洗浄し、減圧濃縮し、真空乾燥することにより下記式[28]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類を7.09g得た。
【化17】
粗生成物の19F−NMRは実施例1と同様であった。
上記で得られた粗生成物全量7.09g(便宜上17.9mmolとする)を酢酸エチル10.6ml(1.5vol)、イソプロパノール10.6ml(1.5vol)、n−ヘプタン63.ml(9vol)の混合溶媒から再結晶し、n−ヘプタン13.8mlで洗浄し、真空乾燥することにより、上記式で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の白色結晶を6.17g(16.6mmol)得た。収率は92.6%であった。結晶のガスクロマトグラフィー純度は99.8%であった。
【0049】
[実施例3]
100mlナスフラスコに下記式[6]−[9]で示されるラクトン前駆体のジアステレオマー混合物35.26g[[6]:44.4mmol、[7]:31.7mmol、[8]+[9]:22.7mmol(19F−NMRによる内部標準法で定量)]、水79ml(0.8L/mol)、酢酸88.99g(1.48mol、15eq)を加え、90度で1時間攪拌した。
【化18】
反応終了液は減圧濃縮し、トルエン30mlで5回共沸減圧濃縮し、真空乾燥することにより、下記式[4]、[5]、[10]および[11]で示されるジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物24.80gを得た。
【化19】
上記で得られたジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物24.80gをイソプロパノール10ml(0.4vol)と酢酸エチル42ml(1.7vol)、n−ヘプタン52ml(2.1vol)の混合溶媒から再結晶し、濾取した結晶をn−ヘプタン20mlで洗浄し、真空乾燥することにより、上記式[4]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンの淡褐色結晶を5.85g(35.6mol)得た。収率は80.1%であった。結晶のガスクロマトグラフィー純度は95.4%で、主な不純物である上記式[5]で示されるジアステレオマーは3.9%であった。
上記で得られた(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン5.85g(35.6mmol)に、アセトニトリル35.8ml(1L/mol)、とピリジン6.48g(81.9mmol、2.30eq)を加えて、ベンゾイルクロリド11.01g(78.3mmol、2.20eq)を氷冷下で加えて、室温で2時間攪拌した。反応終了液に水33mlを氷冷下で加え、室温で10分攪拌し、酢酸エチル66mlで抽出し、回収有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液33mlで洗浄し、5%食塩水33mlで洗浄し、減圧濃縮し、真空乾燥することにより下記式[28]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類を13.81g得た。
【化20】
粗生成物の19F−NMRは実施例1と同様であった。
上記で得られた粗生成物全量13.81g(便宜上35.6mmolとする)を酢酸エチル20.7ml(1.5vol)、イソプロパノール20.7ml(1.5vol)、n−ヘプタン124.3ml(9vol)の混合溶媒から再結晶し、濾取した結晶をn−ヘプタン27.4mlで洗浄し、真空乾燥することにより、上記式で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の白色結晶を11.99g(32.2mmol)得た。収率は90.5%であった。結晶のガスクロマトグラフィー純度は95.8%であった。
【0050】
[実施例4]
100mlナスフラスコに下記式[16]−[19]で示されるラクトン前駆体のジアステレオマー混合物16.73g[[16]:18.5mmol、[17]:12.0mmol、[18]+[19]:8.9mmol(19F−NMRによる内部標準法で定量)]、メタノール19.7ml(0.5L/mol)、12N塩酸1.2ml(14.4mmol、0.36eq)を加え、室温で18時間攪拌した。
【化21】
反応終了液は減圧濃縮し、トルエン15mlで5回共沸減圧濃縮し、真空乾燥することにより、下記式[4]、[5]、[10]および[11]で示されるジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物8.72gを得た。
【化22】
粗生成物の19F−NMRは実施例1と同様であった。
上記で得られたジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物8.72gをイソプロパノール13.1ml(1.5vol)とトルエン43.6ml(5vol)、n−ヘプタン8.7ml(1vol)の混合溶媒から再結晶し、濾取した結晶を氷冷したトルエン8.7mlで洗浄し、真空乾燥することにより、上記式[4]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンの淡褐色結晶を2.45g(14.9mmol)得た。収率は80.5%であった。結晶のガスクロマトグラフィー純度は81.8%で、主な不純物である上記式[5]で示されるジアステレオマーは8.0%であった。この結晶2.31gを用いて再度イソプロパノール3.5ml(1.5vol)とトルエン11.6ml(5vol)、n−ヘプタン2.3ml(1vol)の混合溶媒から再結晶し、濾取した結晶を氷冷したトルエン2.3mlで洗浄し、真空乾燥することにより、上記式[4]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンの淡黄色結晶を1.78g(10.8mmol)得た。収率は77%であった。結晶のガスクロマトグラフィー純度は99.7%で、主な不純物である上記式[5]で示されるジアステレオマーは0.3%であった。
上記で得られた(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン1.78g(10.8mmol)に、アセトニトリル10.8ml(1L/mol)、とピリジン1.96g(24.8mmol、2.30eq)を加えて、ベンゾイルクロリド3.34g(23.7mmol、2.19eq)を氷冷下で加えて、室温で2時間攪拌した。反応終了液に水10mlを氷冷下で加え、室温で10分攪拌し、酢酸エチル20mlで抽出し、回収有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで洗浄し、5%食塩水10mlで洗浄し、減圧濃縮し、真空乾燥することにより下記式[28]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類を4.16g得た。
【化23】
粗生成物の19F−NMRは実施例1と同様であった。
上記で得られた粗生成物全量4.16g(便宜上10.8mmolとする)を酢酸エチル6.2ml(1.5vol)、イソプロパノール6.2ml(1.5vol)、n−ヘプタン37.4ml(9vol)の混合溶媒から再結晶し、濾取した結晶を氷冷したメタノール8.3mlで洗浄し、真空乾燥することにより、上記式で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類の白色結晶を3.63g(9.7mmol)得た。収率は89.8%であった。結晶のガスクロマトグラフィー純度は99.1%であった。
【0051】
[実施例5]
100mlナスフラスコに下記式[20]−[23]で示されるラクトン前駆体のジアステレオマー混合物1.01g[[20]:1.08mmol、[21]:0.77mmol、[22]+[23]:0.54mmol(19F−NMRによる内部標準法で定量)]、メタノール1.2ml(0.5L/mol)、12N塩酸1.2ml(0.9mol、0.36eq)を加え、室温で18時間攪拌した。
【化24】
反応終了液は減圧濃縮し、トルエン10mlで5回共沸減圧濃縮し、真空乾燥することにより、下記式[4]、[5]、[10]および[11]で示されるジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物0.52gを得た。
【化25】
粗生成物の19F−NMRは実施例1と同様であった。
上記で得られたジヒドロキシラクトンの混合物0.52gをイソプロパノール0.8ml(1.5vol)とトルエン2.6ml(5vol)、n−ヘプタン0.5ml(1vol)の混合溶媒から再結晶し、濾取した結晶を氷冷したn−ヘプタン3.0mlで洗浄し、真空乾燥することにより、上記式[4]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンの淡褐色結晶を0.14g(0.84mmol)得た。収率は77.5%であった。結晶のガスクロマトグラフィー純度は87.6%で、主な不純物である上記式[5]で示されるジアステレオマーは5.3%であった
【0052】
[実施例6]
100mlナスフラスコに下記式[24]−[27]で示されるラクトン前駆体のジアステレオマー混合物13.80g[[24]:13.9mmol、[25]:11.0mmol、[26]+[27]:6.2mmol(19F−NMRによる内部標準法で定量)]メタノール15.6ml(0.5L/mol)、12N塩酸0.96ml(11.5mmol、0.37eq)を加え、室温で18時間攪拌した。
【化26】
反応終了液は減圧濃縮し、トルエン15mlで5回共沸減圧濃縮し、真空乾燥することにより、下記式[4]、[5]、[10]および[11]で示されるジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物6.84gを得た。
【化27】
粗生成物の19F−NMRは実施例1と同様であった。
上記で得られたジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物6.84gをイソプロパノール10.3ml(1.5vol)とトルエン34.2ml(5vol)、n−ヘプタン6.8ml(1vol)の混合溶媒から再結晶し、濾取した結晶を氷冷したn−ヘプタン6.8mlで洗浄し、真空乾燥することにより、上記式[4]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンの淡褐色色結晶を1.80g(11.0mmol)得た。収率は78.8%であった。結晶のガスクロマトグラフィー純度は81.8%で、主な不純物である上記式[5]で示されるジアステレオマーは8.0%であった
【0053】
[比較例1]
100mlナスフラスコに下記式[6]−[9]で示されるラクトン前駆体のジアステレオマー混合物79.03g[[6]:73.6mmol、[7]:62.1mmol、[8]+[9]:30.4mmol(19F−NMRによる内部標準法で定量)]、メタノール83ml(0.5L/mol)、12N塩酸5.1ml(61.4mmol、0.37eq)を加え、室温で18時間攪拌した。
【化28】
反応終了液は減圧濃縮し、トルエン55mlで5回共沸減圧濃縮し、真空乾燥することにより、下記式[4]、[5]、[10]および[11]で示されるジヒドロキシラクトンのジアステレオマー混合物70.27gを得た。
【化29】
粗生成物の19F−NMRは実施例1と同様であった。
上記で得られたジヒドロキシラクトンの混合物70.27g(便宜上166.1mmolとする)に、アセトニトリル166.1ml(1L/mol)、とピリジン30.29g(382.9mmol、2.31eq)を加えて、ベンゾイルクロリド51.60g(367.1mmol、2.21eq)を氷冷下で加えて、室温で2時間攪拌した。反応終了液に水150mlを氷冷下で加え、室温で10分攪拌し、酢酸エチル300mlで抽出し、回収有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液150mlで洗浄し、5%食塩水150mlで洗浄し、減圧濃縮し、真空乾燥することにより下記式[28]−[31]で示される(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類を含むジアステレオマー混合物131.74g[[1]:75.7mmol、[20]:69.8mmol、[21]+[22]:24.2mmol(19F−NMRによる内部標準法で定量)]を得た。
【化30】
次いで、該混合物を酢酸エチル197ml(1.5vol)、イソプロパノール197ml(1.5vol)、n−ヘプタン1180ml(9vol)の混合溶媒から再結晶し、濾取した結晶を氷冷したメタノール132mlで洗浄し、真空乾燥することにより白色結晶40.36gを得た。この結晶をガスクロマトグラフィーにより分析したところ[1]:61%、[20]:33%が含まれていた。この結晶40.36gを用いて再度、酢酸エチル60ml(1.5vol)、イソプロパノール60ml(1.5vol)、n−ヘプタン364ml(9vol)の混合溶媒から再結晶し、濾取した結晶を氷冷したメタノール81mlで洗浄し、真空乾燥することにより白色結晶33.25gを得た。この結晶をガスクロマトグラフィーにより分析したところ[1]:67%、[20]:33%が含まれていた。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明で対象とする(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンは、抗ウイルス活性を有する2’−デオキシ−2’−フルオロ−2’−C−メチルシチジンの重要中間体として利用できる。