特許第6394744号(P6394744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6394744
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】冷凍装置の室外ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/22 20110101AFI20180913BHJP
   F24F 1/24 20110101ALI20180913BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   F24F1/22
   F24F1/24
   F25B49/02 560
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-114256(P2017-114256)
(22)【出願日】2017年6月9日
【審査請求日】2018年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩輝
(72)【発明者】
【氏名】田中 侑毅
(72)【発明者】
【氏名】濱中 徹
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−85649(JP,A)
【文献】 特開2000−205604(JP,A)
【文献】 特開2008−101824(JP,A)
【文献】 特開2011−149648(JP,A)
【文献】 実開平7−18132(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/20−1/24
F25B 49/02
F24H 4/00−4/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品が実装されている基板(43)と、
前記発熱部品を冷却するために前記基板の下面に固定されているヒートシンク(51)と、
前記ヒートシンクが前記基板から外れたときに、外れた前記ヒートシンクを受け止める金属製の捕獲部材(41g,41h,41i,41j,41k)と
を備え、
前記捕獲部材は、前記ヒートシンクの真下に位置する前記捕獲部材の部位の上面視における面積が、前記ヒートシンクの上面視における面積の10%未満となるように構成されている、冷凍装置の室外ユニット。
【請求項2】
前記捕獲部材は、前記ヒートシンクから絶縁隙間を空けて配置されている、
請求項1に記載の冷凍装置の室外ユニット。
【請求項3】
前記基板を内部に収納するとともに前記ヒートシンクを外部に露出させる構造を有する電装品箱(40)の金属製筐体(41)をさらに備え、
前記捕獲部材は、前記金属製筐体の一部が突出した突出部を含む、
請求項1または請求項2に記載の冷凍装置の室外ユニット。
【請求項4】
前記金属製筐体に固定され、前記基板を支持する樹脂製支持部材(42)をさらに備え、
前記捕獲部材は、前記樹脂製支持部材が融けたときに前記ヒートシンクを支えるように構成されている、
請求項3に記載の冷凍装置の室外ユニット。
【請求項5】
前記捕獲部材は、少なくとも1つの支持片(41g,41h,41i)を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷凍装置の室外ユニット。
【請求項6】
前記捕獲部材は、前記基板から外れた前記ヒートシンクを、前記ヒートシンクの周辺近傍に配置された3つの箇所で受け止めて支持する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の冷凍装置の室外ユニット。
【請求項7】
前記捕獲部材は、前記ヒートシンクの周辺に沿って延びる2本の支持リブ(41j,41k)を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷凍装置の室外ユニット。
【請求項8】
ユニット前面に配置されているベルマウス(25)と、
前記ベルマウス内に配置され、ユニット後面から前記ユニット前面に向かう気流を発生させるファン(31)と
をさらに備え、
前記ヒートシンクは、前記ベルマウスの上方においてユニット後面から前記ユニット前面に向かって配置されている、
請求項1から7のいずれか一項に記載の冷凍装置の室外ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置の室外ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷凍装置は、その室外ユニットが設置されている建物などの火災に巻き込まれて延焼することがある。このように、火災などで室外ユニットが焼損してユニット内部まで燃えてしまった場合には、電装品箱もその内部まで同時に燃える可能性がある。このように電装品箱の内部が燃えて電装品箱内に収納されているプリント基板が火で直接焼かれた場合、その後の調査において、発火源がプリント基板であるか室外ユニットの外部であるか見分けがつかなくなり、発火源の特定ができなくなるという問題がある。そこで、例えば、特許文献1(特開2007−85649号公報)では、火災時において電装品箱から部品が落下することを防止するとともに電装品箱の内部に火が回り込むことを防止することができる電装品箱の組立体及びその取付構造が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されている電装品箱においては、ヒートシンクの下方の多くの部分が覆われているので、ヒートシンクの冷却機能が低下するという問題が生じる。
【0004】
本発明の課題は、冷凍装置の室外ユニットの外部で発生した火災によって電装品箱の基板まで延焼が及ぶのを抑制するとともに、基板に取り付けられているヒートシンクの冷却機能が基板の延焼対策が原因で低下するのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る冷凍装置の室外ユニットは、発熱部品が実装されている基板と、発熱部品を冷却するために基板の下面に固定されているヒートシンクと、ヒートシンクが基板から外れたときに、外れたヒートシンクを受け止める金属製の捕獲部材とを備え、捕獲部材は、ヒートシンクの真下に位置する捕獲部材の部位の上面視における面積が、ヒートシンクの上面視における面積の10%未満となるように構成されている。
【0006】
第1観点に係る室外ユニットによれば、ヒートシンクの真下に位置する捕獲部材の部位の上面視における面積が、ヒートシンクの上面視における面積の10%未満となるように捕獲部材が構成されていることから、室外ユニットの通常運転時には、基板の下面に配置されているヒートシンクに流れる気流を捕獲部材が妨げるのを抑制できる。
【0007】
本発明の第2観点に係る冷凍装置の室外ユニットは、第1観点の室外ユニットにおいて、捕獲部材は、ヒートシンクから絶縁隙間を空けて配置されている、ものである。
【0008】
第2観点に係る室外ユニットによれば、捕獲部材がヒートシンクから絶縁隙間を空けて配置されていることから、室外ユニットの通常運転時には、金属製の捕獲部材とヒートシンクとの間に絶縁隙間が形成されている。
【0009】
本発明の第3観点に係る冷凍装置の室外ユニットは、第1観点または第2観点の室外ユニットにおいて、基板を内部に収納するとともにヒートシンクを外部に露出させる構造を有する電装品箱の金属製筐体をさらに備え、捕獲部材は、金属製筐体の一部が突出した突出部を含む、ものである。
【0010】
第3観点に係る室外ユニットによれば、捕獲部材を構成する突出部が金属製筐体の一部であることから、捕獲部材を構成するために新たに追加する材料が少なくて済み、また捕獲部材を設ける手間を省くことができる。
【0011】
本発明の第4観点に係る冷凍装置の室外ユニットは、第3観点の室外ユニットにおいて、金属製筐体に固定され、基板を支持する樹脂製支持部材をさらに備え、捕獲部材は、樹脂製支持部材が融けたときにヒートシンクを支えるように構成されている、ものである。
【0012】
第4観点に係る室外ユニットによれば、樹脂製支持部材が融けたときにヒートシンクを捕獲部材が支えるように構成されていることから、樹脂製支持部材が融けても基板とヒートシンクが落下するのを防ぐことができ、電装品箱の外側からの出火を示す痕跡を残せるケースを増やすことができる。
【0013】
本発明の第5観点に係る冷凍装置の室外ユニットは、第1観点から第4観点のいずれかの室外ユニットにおいて、捕獲部材は、少なくとも1つの支持片を含む、ものである。
【0014】
第5観点に係る室外ユニットによれば、少なくとも1つの支持片を含むことから、基板の下面からヒートシンクを通って下方に抜ける気流が大きな部材によって邪魔されるのを防ぐことができる。
【0015】
本発明の第6観点に係る冷凍装置の室外ユニットは、第1観点から第5観点のいずれかの室外ユニットにおいて、捕獲部材は、基板から外れたヒートシンクを、ヒートシンクの周辺近傍に配置された3つの箇所で受け止めて支持する、ものである。
【0016】
第6観点に係る室外ユニットによれば、ヒートシンクの周辺近傍に配置された3つの箇所で受け止めて支持することから、捕獲部材がヒートシンクを支持する部分を小さく構成することが容易になり、またヒートシンクに流れる気流の邪魔にならない場所に設置し易くなる。
【0017】
本発明の第7観点に係る冷凍装置の室外ユニットは、第1観点から第4観点のいずれかの室外ユニットにおいて、捕獲部材は、ヒートシンクの周辺に沿って延びる2本の支持リブを含む、ものである。
【0018】
第7観点に係る室外ユニットによれば、2本の支持リブがヒートシンクの周辺に沿って延びることから、ヒートシンクに流れる気流の邪魔にならない場所に設置し易くなる。
【0019】
本発明の第8観点に係る冷凍装置の室外ユニットは、第1観点から第7観点のいずれかの室外ユニットにおいて、ユニット前面に配置されているベルマウスと、ベルマウス内に配置され、ユニット後面からユニット前面に向かう気流を発生させるファンとをさらに備え、ヒートシンクは、ベルマウスの上方においてユニット後面からユニット前面に向かって配置されている、ものである。
【0020】
第8観点に係る室外ユニットによれば、ヒートシンクがベルマウスの上方においてユニット後面からユニット前面に向かって配置されているから、ヒートシンクを冷やす気流がユニット後方から入ってファンに向ってヒートシンクから下方に向う。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1観点に係る冷凍装置の室外ユニットでは、室外ユニットの通常運転時のヒートシンクの冷却機能の低下を抑制しながら、例えば火災などで室外ユニット内部が燃えたときに基板まで延焼するのを防止する役割を、捕獲部材が受け止めたヒートシンクに果たさせることができる。
【0022】
本発明の第2観点に係る冷凍装置の室外ユニットでは、金属製の捕獲部材とヒートシンクとが接触することによる絶縁不良を防止することができる。
【0023】
本発明の第3観点に係る冷凍装置の室外ユニットでは、捕獲部材を設けるためのコストを削減することができる。
【0024】
本発明の第4観点に係る冷凍装置の室外ユニットでは、室外ユニットが例えば火災に巻き込まれたときに出火の原因の分析にヒートシンクと基板を役立てる機会を増やすことができる。
【0025】
本発明の第5観点に係る冷凍装置の室外ユニットでは、ヒートシンクの冷却能力の低下を十分に抑制することができる。
【0026】
本発明の第6観点または第7観点に係る冷凍装置の室外ユニットでは、ヒートシンクを冷やす気流の妨げにならないように捕獲部材を設けることが容易になる。
【0027】
本発明の第8観点に係る冷凍装置の室外ユニットでは、捕獲部材に邪魔されずに十分な気流が形成されてヒートシンクの冷却能力を確保し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態に係る室外ユニットを、天板などを取り外した状態で示す平面図。
図2図1の室外ユニットを、グリッド及び熱交換器などを取り外した状態で示す正面図。
図3図2の室外ユニットを、保護金網などを取り外した状態で示す背面図。
図4】実施形態に係る電装品箱の斜視図。
図5図4の電装品箱の正面図。
図6図4の電装品箱の左側面図。
図7図4の電装品箱の分解斜視図。
図8図4の電装品箱に流れる気流を説明するための概念図。
図9】ヒートシンクと支持片の関係を示す模式的な平面図。
図10】ヒートシンクと支持リブとの関係を示す模式的な平面図。
図11】ヒートシンクと支持片及び支持リブとの関係を示す模式的な平面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(1)全体構成
図1には、本発明の実施形態に係る、天板などを取り外した状態の冷凍装置の室外ユニットを、上方から見た室外ユニットの内部の様子が示されている。室外ユニット10は、ケーシング20を備え、そのケーシング20の内部にファン31と熱交換器32と電装品箱40とを備えている。なお、室外ユニット10は、圧縮機などの他の機器も備えているが、発明の内容にとって重要で無い機器の説明は省かれている。
【0030】
図1に示されている室外ユニットを正面から見たときの室外ユニットの外観が図2に示され、背面から見た室外ユニットの外観が図3に示されている。なお、図1においては、天板及び安全を確保するためにユニット前面に設けられるグリッドなどが取り外された状態が示され、図2及び図3においては、ユニット後面側に配置される熱交換器32及び保護金網などが取り外された状態が示されている。熱交換器32及び保護金網などが取り外されているため、図3には、ファン31を支持するファンモータ台27が描かれている。
【0031】
室外ユニット10は、鉛直方向に延びるZ軸に沿った辺と、前後方向に延びるY軸に沿った辺と、左右方向に延びるX軸方向に沿った辺を持つ直方体形状を基礎とした外観を呈するケーシング20を備えている。図1には示されていないが、完成品の室外ユニット10においては、左右(X軸方向)に長く、前後(Y軸方向)に短い長方形状の金属板の周囲を下方に折り曲げた天板がケーシング20の天面に位置する。また、ケーシング20の他の5面にも金属板が配されている。ユニット前面に配置されているケーシング20の前板21の中央部分には、円形の開口部21aが形成されている。ユニット右側面に配置されているケーシング20の右側板22には、図示しない室内ユニットに接続して冷媒を循環させるための接続部22aが設けられている。右側板22は、実質的に直角に曲げられており、ユニット後面側の一部も覆っている。そして、ユニット後面には、大きな長方形状の開口部22bが形成されている。また、ユニット左側面に配置されているケーシング20の左側板24にも室外ユニット10の内部に空気を吸い込むための開口部(図示せず)が形成されている。そして、室外ユニット10の内部から外部に向って空気を吹き出す円形の開口部21aの周囲の前板21にベルマウス25が設けられている。ケーシング20の底は、金属製の底フレーム26で覆われている。
【0032】
ファン31は、ベルマウス25に配置されているプロペラ31aと、プロペラ31aを回転駆動させるモータ(図示せず)を有している。熱交換器32は、ユニット後面からユニット左側面にかけて配置されている。開口部22b及び左側板24の開口部を通って室外ユニット10の外部から内部に吸い込まれる空気が、この熱交換器32を通過する。熱交換器32を通過する気流は、ファン31によって発生する。つまり、ファン31が駆動されることにより、ユニット後面の開口部22b及びユニット左側面の開口部などから熱交換器32及びベルマウス25を通過する気流が生じる。後ほど詳しく説明するヒートシンク51は、この気流を使って、電装品箱40に収納されている電気部品を冷却する。ヒートシンク51などを有する電装品箱40は、ケーシング20の天面に沿ってユニット右側面寄りに配置されている。
【0033】
(2)詳細構成
(2−1)電装品箱40
図4には、左斜め上方から見た電装品箱40の外観が示されている。図5には、ユニット前面の側から見た電装品箱40の外観が示されている。図6には、ユニット左側面から見た電装品箱40の外観が示されている。図7は、電装品箱40の分解斜視図である。
【0034】
電装品箱40は、金属製筐体41と、樹脂製支持部材42と、プリント配線基板43と、金属製の蓋44と、金属製のヒートシンク51とを備えている。
【0035】
(2−1−1)金属製筐体41
金属製筐体41は、底壁41aが底面を覆っており、底壁41aから立ち上がった4つの壁41b,41c,41d,41eによって前後左右が囲まれている。ユニット前面側の壁41eが一部切り欠かれるとともに底壁41aの前面側が一部切り欠かれて、プリント配線基板43に配線を引き回すための開口が形成されている。
【0036】
ユニット左側面側の壁41cは、垂直上方に立ち上がって途中でユニット左側面の方向に向って折れ曲がった後にさらに垂直に立ち上がる形状を有している。そして、壁41cの水平になっている部分には、ヒートシンク51が電装品箱40から下方に向って露出するための開口(図示せず)が形成されている。ヒートシンク51のユニット左側面側においては、爪部41fが壁41cから下がった後にユニット右側面の方向に折れ曲がっている。この折れ曲がった先端部分が支持片41gである。この爪部41fは、壁41cのユニット後面側に配置されている。
【0037】
壁41cが底壁41aから立ち上がった部分に支持片41h,41iが形成されている。支持片41hは、Y軸方向において支持片41gと重なる場所に形成されている。つまり、ユニット前面側の壁41eから支持片41hと同じ距離のところには支持片41gが位置している。この支持片41hは、XZ平面に平行な板状の部材である。支持片41hをY軸に沿ってユニット前面側の壁41eの方に平行移動した場所に支持片41iが形成されている。この支持片41iもXZ平面に平行な板状の部材である。これら支持片41g,41h,41iは、金属製筐体41を形成している金属板が折り曲げられて形成されたものである。言い換えると、支持片41g,41h,41iは、金属製筐体41の一部が突出した突出部である。従って、支持片41g,41h,41iは、金属製筐体41と一体になっている。また、支持片41h,41iは、金属製筐体41を形成している金属板の厚みと上面視において同じ幅しか有しておらず、ヒートシンク51から下方に向う気流に対しては、非常に小さな送風抵抗しか生じない。
【0038】
図8には、ヒートシンク51に流れる気流が矢印ARで示されている。ヒートシンク51の高さは熱交換器32の上端よりも低い位置にあり、また熱交換器32の前にあるので、熱交換器32を通過してユニット前面側に向かう気流がヒートシンク51の後方から入る。そして、前後(Y軸方向)に延びる複数のフィン51aの間を気流が流れる。
しかし、ヒートシンク51の前方にある前板21に邪魔されて真っ直ぐ前には気流が流れず、途中から下方のベルマウス25に向ってヒートシンク51から下向きに流れる気流が生じる。上述の支持片41g,41h,41iは、ヒートシンク51を通過して流れる気流に対してはわずかな送風抵抗にしかならないように、ヒートシンク51の真下に位置する部位の上面視における面積は、ヒートシンク51の上面視における面積の10%未満となるように構成されることが好ましい。図9に示されているヒートシンク51と支持片41g,41h,41iとの関係では、この割合が5%未満になっている。
【0039】
支持片41g,41h,41iは、金属製であることから、絶縁性の確保を図るため、金属製のヒートシンク51との間に上下方向に絶縁隙間In1,In2が形成される配置になっている。しかし、この絶縁隙間In1,In2が大きすぎると、ヒートシンク51がプリント配線基板43から外れて、下に落下したときに支持片41g,41h,41iでヒートシンク51が受け止められても、ヒートシンク51とプリント配線基板43との間に大きな隙間ができる。大きな隙間ができると、炎がヒートシンク51とプリント配線基板43の隙間からプリント配線基板43に容易に到達するため、火災などで室外ユニット10が燃えたときに、火元の特定のための分析において、火元が電装品箱40の中なのか外なのかが分からなくなってしまう。従って、絶縁隙間In1,In2は、10mm未満に設定されるのが好ましい。この電装品箱40では、例えば4〜8mmの範囲で絶縁隙間In1,In2が設定される。万一火災のときに、この程度の絶縁隙間In1,In2の分だけヒートシンク51が落下しても、ヒートシンク51とプリント配線基板43の隙間がわずかであるので炎の侵入が抑制される。さらには、落下したヒートシンク51の周囲は、壁41b,41c,41dで囲まれているので、炎は落下したヒートシンク51とプリント配線基板43の隙間には侵入が防止される。
【0040】
(2−1−2)樹脂製支持部材42
樹脂製支持部材42は、上面視において長方形状の環状に形成されている枠部42aを有しており、金属製筐体41の壁41b,41c,41d,41eに沿って、金属製筐体41の内側に嵌り込む。樹脂製支持部材42は、金属製筐体41に例えばビス止めされる。この樹脂製支持部材42は、プリント配線基板43を金属製筐体41及び蓋44から絶縁した状態で支える部材である。樹脂製支持部材42にプリント配線基板43が嵌め込まれた状態では、樹脂製支持部材42がプリント配線基板43の周囲を額縁のように覆っている。また、樹脂製支持部材42は、ヒートシンク51の周囲を覆って、ヒートシンク51と金属製筐体41とを絶縁する機能も有している。プリント配線基板43に取り付けられているヒートシンク51を下方に向って露出させるために、壁41cの開口と重なる部分に、樹脂製支持部材42にも開口が形成されている。
【0041】
(2−1−3)プリント配線基板43
プリント配線基板43は、絶縁性を有しており、そのために樹脂を含むものであって、例えば樹脂と繊維状の材料との混成部材である。プリント配線基板43の材料としては、例えば紙フェノール、紙エポキシ、またはガラスエポキシが用いられる。図示が省略されているが、プリント配線基板43の領域43aの上に発熱部品が実装されている。発熱部品は、ヒートシンク51により冷却される対象であり、例えば、インテリジェントパワーモジュール(IPM)、ダイオードブリッジ及び電力制御用のパワートランジスタなどである。プリント配線基板43の領域43aの下方には、ヒートシンク51が取り付けられている。ヒートシンク51は、プリント配線基板43に例えばビス止めされている。ヒートシンク51には、例えば発熱部品がシリコン樹脂を介して取り付けられている。
【0042】
(2−1−4)蓋44
金属製の蓋44は、長方形状の上面44aと、上面44aから下向きの突出したリング状に形成されているリブ44bとによって構成されている。蓋44のリブ44bは、樹脂製支持部材42の枠部42aの外周側に嵌るように構成されている。
【0043】
(3)変形例
(3−1)変形例1A
上記実施形態では、火災時にプリント配線基板43から外れるヒートシンク51を、支持片41g,41h,41iによって3箇所で受け止める場合について説明したが、図10に示されている2本の支持リブ41j,41kで受け止めるように構成してもよい。支持リブ41j,41kは、上面視における面積が、ヒートシンク51の上面視における面積の10%未満となるように構成されている。これら支持リブ41j,41kは、金属製筐体41の一部を切り起こして形成することが好ましい。また、図示が省略されているが、支持リブ41j,41kとヒートシンク51との間には、支持片41g,41h,41iと同様に、絶縁隙間が設けられている。
【0044】
(3−2)変形例1B
また、図11に示されているように、1本の支持リブ41jと1つの支持片41gとで捕獲部材を構成してもよい。さらには、4つ以上の支持片を用いて捕獲部材を構成してもよい。
【0045】
(3−3)変形例1C
上記実施形態、変形例1A及び変形例1Bでは、支持片41g,41h,41i並びに支持リブ41j,41kが左右方向(X軸方向)に沿って突出するように設けられている場合について説明したが、例えば支持片及び支持リブは前後方向(Y軸方向)に沿って突出するように設けられてもよく、支持片及び支持リブの突出する方向が上述の方向に限定されるものではない。
【0046】
(3−4)変形例1D
上記実施形態では、ヒートシンク51が1つだけの場合について説明したが、電装品箱40に複数のヒートシンクが設けられている場合に、それぞれのヒートシンクに対して捕獲部材を設けるように構成してもよい。
【0047】
(4)特徴
(4−1)
室外ユニット10において、ヒートシンク51は、発熱部品を冷却するために、プリント配線基板43の下面に固定されている。そして、火災などで室外ユニット10内が燃えてプリント配線基板43の下面からヒートシンク51が外れたときには、金属製捕獲部材である支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kによって、外れたヒートシンク51が受け止められる。ヒートシンク51の真下に位置する支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kの上面視における面積が、ヒートシンク51の上面視における面積の10%、さらには5パーセント未満となるように構成されているから、例えば図8に矢印ARで示されているヒートシンク51に流れる気流を捕獲部材である支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kが妨げることが抑制されている。その結果、室外ユニット10の運転時には支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kが設けられていてもヒートシンク51の冷却機能の低下が抑制されており、さらには例えば火災などで室外ユニット10の内部が燃えたときに、支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kに受け止められたヒートシンク51がプリント配線基板43までの延焼を抑制する役割を果たすことができる。
【0048】
(4−2)
捕獲部材である支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kがヒートシンク51から絶縁隙間In1,In2を空けて配置されていることから、支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kとヒートシンク51との間で十分な絶縁が行える。その結果、ヒートシンクの真下に金属製の支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kが設けられても、ヒートシンク51と支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kとが接触することによる絶縁不良を防止することができる。
【0049】
(4−3)
捕獲部材を構成する金属製筐体41の突出部である支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kが金属製筐体41の一部であることから、支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kを設けるために、例えば金属製筐体41の材料である金属板で壁になる部分を切り起こして活用したり打ち抜かれて捨てられる部分を活用したりすることなどができ、新たに追加する材料が少なくて済む。また、例えば金属板をプレス成形するなどして金属製筐体41を成形するときに一緒に支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kを設けることができるので、支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kを設ける手間を省くことができる。その結果、上述の室外ユニット10では、捕獲部材を設けるためのコストが削減できている。
【0050】
(4−4)
樹脂製支持部材42が融けたときにヒートシンク51を支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kが支えるように構成されていることから、樹脂製支持部材42が融けても基板とヒートシンクが落下するのを防ぐことができ、電装品箱の外側からの出火を示す痕跡を残せるケースを増やすことができる。その結果、室外ユニット10が出火に巻き込まれたときに出火の原因の分析にヒートシンク51とプリント配線基板43を役立てる機会を増やすことができる。
【0051】
(4−5)
捕獲部材に少なくとも1つの支持片である支持片41g,41h,41iが含まれることから、大きな部材を使ってプリント配線基板43の下の大きな面積を覆わなくても済むので、プリント配線基板43の下面からヒートシンク51を通って下方に抜ける気流が大きな部材によって邪魔されるのを防ぐことができ、ヒートシンク51の冷却能力の低下を十分に抑制することができる。
【0052】
(4−6)
室外ユニット10の中が万一燃えてヒートシンク51が落ちたとしても、ヒートシンク51の周辺近傍に配置された3つの箇所で支持片41g,41h,41iが受け止めて支持することから、捕獲部材がヒートシンク51を支持する部分を小さく構成することが容易になり、またヒートシンク51に流れる気流の邪魔にならない場所に設置し易くなる。そのため、上述の室外ユニット10では、ヒートシンク51を冷やす気流の妨げにならないように捕獲部材を設けることが容易になっている。
【0053】
(4−7)
捕獲部材である2本の支持リブ41j,41kがヒートシンク51の周辺に沿って延びることから、ヒートシンク51に流れる気流の邪魔にならない場所に捕獲部材を設置し易くなり、ヒートシンク51を冷やす気流の妨げにならないように捕獲部材を設けることが容易になる。
【0054】
(4−8)
室外ユニット10では、ヒートシンク51がベルマウス25の上方においてユニット後面からユニット前面に向かって配置されているから、ヒートシンク51を冷やす気流がユニット後方から入ってファン31に向ってヒートシンク51から下方に向う。このような状況において、ヒートシンク51の真下に位置する捕獲部材である支持片41g,41h,41iまたは支持リブ41j,41kの部位の上面視における面積がヒートシンク51の上面視における面積の10%未満となっているから、捕獲部材に邪魔されずに十分な気流が形成されてヒートシンク51の冷却能力を確保し易くなる。
【符号の説明】
【0055】
10 室外ユニット
25 ベルマウス
31 ファン
32 熱交換器
40 電装品箱
41 金属製筐体
41g,41h,41i 支持片
41j,41k 支持リブ
42 樹脂製支持部材
43 プリント配線基板
51 ヒートシンク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【特許文献1】特開2007−85649号公報
【要約】      (修正有)
【課題】冷凍装置の室外ユニットの外部で発生した火災によって電装品箱の基板まで延焼が及ぶのを抑制するとともに、基板に取り付けられているヒートシンクの冷却機能が基板の延焼対策が原因で低下するのを抑制する。
【解決手段】金属製の捕獲部材である支持片41g,41h,41iは、ヒートシンク51が、例えば火災などによって室外ユニットの内部が燃えることにより、プリント配線基板から外れたときに、外れたヒートシンク51を受け止める。ヒートシンク51の真下に位置する支持片41g,41h,41iの部位の上面視における面積が、ヒートシンク51の上面視における面積の10%未満となるように構成されている。
【選択図】図4
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