(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御処理が、前記第1及び第4スイッチング素子をオフとしてから第1所定時間後に前記第5スイッチング素子をオンとし、前記第6スイッチング素子をオフとしてから第2所定時間後に前記第2及び第3スイッチング素子をオンとし、前記第2及び第3スイッチング素子をオフとしてから第3所定時間後に前記第6スイッチング素子をオンとし、前記第5スイッチング素子をオフとしてから第4所定時間後に前記第1及び第4スイッチング素子をオンとする処理である
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
前記制御部は、前記制御処理と共に、各スイッチング素子の制御タイミング間に前記第1乃至第4所定時間を設けたことによる出力波形の歪を補償するデッドタイム補償処理を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下で説明する実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0014】
図3に、本発明の一実施形態に係る電力変換装置10の構成及び使用形態を示す。
【0015】
本実施形態に係る電力変換装置10は、太陽電池(太陽電池アレイ)35と接続されて使用される、系統と連系可能なパワーコンディショナである。図示してあるように、電力変換装置10は、昇圧回路11と、インバータ回路(INV回路)12と、一対の出力端子21及び22と、制御部30とを備える。
【0016】
電力変換装置10が備える一対の出力端子21及び22は、家庭内の交流消費機器が負荷40として接続される、自立運転時にインバータ回路12の出力が供給される出力端子である。この出力端子21及び22間には、コンデンサ17が配置されている。なお、電力変換装置10は、系統と連系可能なものであるため、連系運転時にインバータ回路12の出力が供給される一対の出力端子(図示略)も備えている。
【0017】
昇圧回路11は、太陽電池35の出力電圧を昇圧するための、スイッチング素子と受動素子(リアクトル、ダイオード等)とを組み合わせた昇圧チョッパ回路である。この昇圧回路11の入力端子間(電力変換装置10の入力端子間)には、コンデンサ15が配置されている。
【0018】
インバータ回路12は、昇圧回路11が出力する直流電圧を、交流電圧に変換するためのHERIC型回路(詳細は後述)である。図示してあるように、このインバータ回路12の入力端子間(昇圧回路11の出力端子間)には、コンデンサ16が配置されている。また、インバータ回路12の各出力端子は、リアクトル18を介して、出力端子21又は出力端子22に接続されている。
【0019】
以下、
図4を用いて、インバータ回路12の構成をさらに具体的に説明する。
【0020】
図4に示してあるように、インバータ回路12は、インバータ回路12の一対の入力端子23p、23n間に並列に接続された第1レグ25と第2レグ26とにより構成されたフルブリッジ回路を備える。
【0021】
第1レグ25は、直列接続されたスイッチング素子UH及びULと、各スイッチング素子(IGBT)のエミッタ、コレクタ間に配置された
環流ダイオードとにより構成されている。第2レグ26は、直列接続されたスイッチング素子WH及びWLと、各スイッチング素子のエミッタ、コレクタ間に配置された
環流ダイオードとにより構成されている。そして、第1レグ25の、スイッチング素子UH及びULの接続点25cは、リアクトル18を介して出力端子21と接続されており、第2レグ26の、スイッチング素子WH及びWLの接続点26cは、リアクトル18を介して出力端子22と接続されている。なお、入力端子23pが、高電位側の入力端子である。従って、スイッチング素子UH及びWHが、ハイサイドスイッチング素子であり、スイッチング素子UL及びWLが、ローサイドスイッチング素子である。
【0022】
さらに、インバータ回路12は、短絡回路27を備えている。図示してあるように、短絡回路27は、エミッタが接続点25cに接続されたスイッチング素子WSと、スイッチング素子WSのコレクタにコレクタが接続され、接続点26cにエミッタが接続されたスイッチング素子USと、各スイッチング素子のエミッタ、コレクタ間に配置された
環流ダイオードとにより構成されている。すなわち、短絡回路27は、スイッチング素子WSのオン/オフにより、接続点25c側から接続点26c側へ流れる電流(出力端子21側から出力端子22側へ流れる電流)のオン/オフが可能な回路であると共に、スイッチング素子USのオン/オフにより、接続点26c側から接続点25c側へ流れる電流のオン/オフが可能な回路となっている。
【0023】
図3に戻って、電力変換装置10の構成の説明を続ける。
【0024】
制御部30は、電力変換装置10内の各部(昇圧回路11、インバータ回路12)を統合的に制御するユニットである。制御部30は、プロセッサ(CPU、マイクロコントローラ等)とその周辺回路から構成されており、制御部30には、電力変換装置10の各所に設けられたセンサ(電流センサ、電圧センサ;図示略)の出力が入力されている。
【0025】
以下、本実施形態に係る電力変換装置10の制御部30の、自立運転時におけるインバータ回路12の制御機能を説明する。
【0026】
制御部30は、自立運転中は、スイッチング周期(T
SW)毎に、インバータ回路12内の各スイッチング素子を
図5に示したパターンでON/OFFする制御処理を繰り返すように、構成(プログラミング)されている。
【0027】
すなわち、制御部30は、制御処理時、インバータ回路12内の各スイッチング素子を、以下の条件を満たすようにON/OFFする。
【0028】
条件1:スイッチング素子USがオンとなっており、且つ、スイッチング素子WSがオフとなっている期間中に、スイッチング素子UL及びスイッチング素子WHがオンとなる。条件2:スイッチング素子USがオフとなっており、且つ、スイッチング素子WSがオンとなっている期間中に、スイッチング素子UH及びスイッチング素子WLがオンとなる。条件3:スイッチング素子UH及びWLがオフとなった後、且つ、スイッチング素子WSがオフとなる前に、スイッチング素子USがオンとなる。
条件4:スイッチング素子UL及びWHがオフとなった後、且つ、スイッチング素子USがオフとなる前に、スイッチング素子WSがオンとなる。
条件5:スイッチング素子UH及びWLをオフとしてからスイッチング素子USをオンとするまでの時間、スイッチング素子WSをオフとしてからスイッチング素子UL及びWHをオンとするまでの時間、スイッチング素子UL及びWHをオフとしてからスイッチング素子WSをオンとするまでの時間、スイッチング素子USをオフとしてからスイッチング素子UH及びWLをオンとするまでの時間が、いずれも、予め設定されているデッドタイム(本実施形態では、2μs)となる。
【0029】
この制御処理の内容は、HERIC型回路であるインバータ回路12の効率を向上させるべく、鋭意、研究を行った結果として、得られたものである。以下、従来の制御処理(
図2)と比較することにより、上記制御処理により得られる効果を具体的に説明する。なお、以下では、
図1に示したHERIC型回路のこともインバータ回路12と表記し、インバータ回路12の入力電圧(昇圧回路11の出力電圧、コンデンサ16の端子間電圧)のことを、DDVと表記する。また、従来の制御処理(
図2)、制御部30が行う制御処理(
図5)ことを、それぞれ、旧制御処理、新制御処理と表記する。
【0030】
図6Aに、旧制御処理(
図2)により形成される状態1〜8における各スイッチング素子のON/OFF状態を、各状態におけるインバータ回路12の出力電圧と共に示す。また、
図6Bに、新制御処理(
図5)により形成される状態1〜8における各スイッチング素子のON/OFF状態を、各状態におけるインバータ回路12の出力電圧と共に示す。
【0031】
これらの図から明らかなように、新制御処理では、インバータ回路12のフルブリッジ回路内の各スイッチング素子は、旧制御処理と同様にオン/オフ制御される。ただし、新制御処理は、スイッチング素子
US及びWSに対する制御内容が、旧制御処理とは全く異なる処理となっている。そのため、新制御処理が行われると、インバータ回路12内の電流経路が、旧制御処理時とは異なるパターンで時間変化することになる。
【0032】
以下、新制御処理、旧制御処理によるインバータ回路12内の電流経路の時間変化パターンの違いを、1制御処理中(1スイッチング周期中)のインバータ瞬時出力電流が0以上である場合と、0未満である場合と、1制御処理中にインバータ瞬時出力電流の符号が変わる場合とに分けて、説明する。
【0033】
・インバータ瞬時出力電流≧0の場合
この場合、新制御処理及び旧制御処理によりインバータ回路12内の電流経路は、
図7−1及び
図7−2に示したように時間変化する。なお、
図7−1及び
図7−2中の、(An)(n=1〜8)とラベルを付してある図は、旧制御処理が行われているインバータ回路12内の状態nにおける電流経路の説明図である。
図7−1及び
図7−2中の、(Bn)(n=1〜8)とラベルを付してある図は、新制御処理が行われているインバータ回路12内の状態nにおける電流経路の説明図である。また、各説明図において、その名称(“UH”、“WH”等)が矩形枠で囲まれているスイッチング素子が、オンとなっているスイッチング素子である。
【0034】
図7−1及び
図7−2から明らかなように、旧制御処理が行われた場合も、新制御処理が行われた場合も、状態1、3〜7におけるインバータ回路12内の電流経路は同じものとなる。ただし、新制御処理が行われた場合、状態2(説明図(A2)、(B2)参照)と状態8(説明図(A8)、(B8)参照)において、インバータ回路12内を、旧制御処理が行われた場合とは異なる経路で電流が流れる。
【0038】
そのため、新制御処理によれば、旧制御処理よりもインバータ回路12を効率的に制御できる。
【0039】
具体的には、インバータ回路12では、各スイッチング素子のターンオン損失Eon、ターンオフ損失Eoff及び導通損失Esatと、各ダイオードの導通損失Ef及びリカバリー損失Errとが発生し得る。状態X(X=1〜8)への移行時に発生するターンオン損失Eon、状態Xから次状態への移行時に発生するターンオフ損失Eoff及びリカバリー損失Errを、状態Xにおける損失として取り扱うと、旧制御処理では、
図8−1及び
図8−2に示したような形で各損失が発生することになる。
【0040】
すなわち、
図8−1に示してあるように、旧制御処理が行われた場合、状態1では、スイッチング素子UHとスイッチング素子WLとを電流が流れるため、スイッチング素子UHの導通損失Esatとスイッチング素子WLの導通損失Esatとが発生する。また、状態1から状態2への移行時には、電流が流れているスイッチング素子UH及びWLがオフとなって、インバータ回路12の出力電位が反転する。そのため、状態1から状態2への移行時には、スイッチング素子UHのターンオフ損失Eoffとスイッチング素子WLのターンオフ損失EoffとダイオードD
WSのリカバリー損失Errとが発生する。なお、上記説明及び以下の説明において、ダイオードD
α(α=WS、UH等)とは、スイッチング素子αに並列に接続されている環流ダイオードのことである。
【0041】
また、状態8(
図8−2参照)から状態1への移行時には、スイッチング素子UH及びWLがオンされて、ダイオードD
UL及びD
WHを流れていた電流がスイッチング素子UH及びWHを流れるようになってインバータ回路12の出力電位が反転する。そのため、状態8から状態1への移行時には、スイッチング素子UH及びWLのターンオン損失Eonが発生すると共に、ダイオードD
UL、D
WH及びD
USのリカバリー損失Errが発生する。ただし、既に説明したように、ダイオードD
UL、D
WH及びD
USのリカバリー損失Errは、状態8における損失として取り扱われる。従って、状態1では、
図8−1に示してあるように、ターンオン損失Eon、ターンオフ損失Eoff、導通損失Esat、リカバリー損失Errが、それぞれ、2回、2回、2回、1回発生することになる。
【0042】
また、
図8−1に示してあるように、状態2では、ダイオードD
ULとダイオードD
WHとを電流が流れるため、ダイオードD
ULの導通損失EfとダイオードD
WHの導通損失Efとが発生する。そして、状態2から状態3への移行時には、スイッチング素子US及びWSがオンとなって、ダイオードD
UL及びD
WHを流れていた電流が、ダイオードD
USとスイッチング素子WSとを流れるようになる。そのため、ダイオードD
UL及びD
WHの導通損失Efとスイッチング素子WSのターンオン損失Eonとが発生するが、スイッチング素子WSのターンオン損失Eonは、状態3の損失として取り扱われる。従
って、状態2では、導通損失Ef、リカバリー損失Errが、それぞれ、2回ずつ発生することになる。
【0043】
図8−1に示してあるように、状態3では、ダイオードD
USとスイッチング素子WSとを電流が流れる。また、状態3から状態4への移行時には、電流が流れているスイッチング素子WSがオフされる。そして、既に説明したように、状態2から状態3への移行時に、スイッチング素子WSのターンオン損失Eonが発生するので、状態3では、ターンオン損失Eon、ターンオフ損失Eoff、導通損失Esat、導通損失Efが、それぞれ、1回ずつ発生する。
【0044】
図8−1に示してあるように、状態4では、ダイオードD
ULとダイオードD
WHとを電流が流れる。従って、状態4では、導通損失Efが2回発生することになる。なお、状態4から状態5への移行時に、スイッチング素子UL及びWHがオンとなるが、スイッチング素子UL及びWHがオンとなっても、各スイッチング素子に電流が流れない。そのため、状態4では、ターンオン損失Eonは発生せずに、導通損失Efだけが2回発生する。
【0045】
図8−2に示してあるように、状態5においても、ダイオードD
ULとダイオードD
WHとを電流が流れる。そして、状態5におけるスイッチング素子UL及びWHには、電流が流れていないため、状態6への移行時にスイッチング素子UL及びWHがオフとなっても、ターンオフ損失Eoffは発生しない。従って、状態5では、導通損失Efだけが2回発生する。
【0046】
図8−2に示してあるように、状態6においても、ダイオードD
ULとダイオードD
WHとを電流が流れる。そのため、ダイオードD
ULの導通損失EfとダイオードD
WHの導通損失Efとが発生する。また、状態6から状態7への移行時には、スイッチング素子WSがオンされて、ダイオードD
UL及びD
WHを流れていた電流が、ダイオードD
USとスイッチング素子WSとを流れるようになる。そのため、状態6から状態7への移行時には、ダイオードD
UL及びD
WHのリカバリー損失Errとスイッチング素子WSのターンオン損失Eonとが発生する。ただし、スイッチング素子WSのターンオン損失Eonは、状態7の損失として取り扱われるため、状態6では、導通損失Efとリカバリー損失Errとがそれぞれ2回ずつ発生することになる。
【0047】
図8−2に示してあるように、状態7では、ダイオードD
USとスイッチング素子WSとを電流が流れるため、ダイオードD
USの導通損失Erとスイッチング素子WSの導通損失Esatとが発生する。また、上記したように、状態6から状態7への移行時に、スイッチング素子WSのターンオン損失Eonが発生する。さらに、状態7から状態8への移行時に、電流が流れているスイッチング素子WSがオフされるため、スイッチング素子WSのターンオフ損失Eoffが発生する。従って、状態7では、ターンオン損失Eonとターンオフ損失Eoffと導通損失Esatと導通損失Efとがそれぞれ1回ずつ発生する。
【0048】
図8−2に示してあるように、状態7から状態8への移行時には、電流が流れていたスイッチング素子WSがオフされ、状態8への移行後には、ダイオードD
ULとダイオードD
WHとを電流が流れる。そして、既に説明したように、状態8から状態1への移行時には、ダイオードD
UL、D
WH及びD
USのリカバリー損失Errが発生するので、状態8では、導通損失Efが2回発生し、リカバリー損失Errが3回発生する。
【0049】
一方、新制御処理を行った場合、
図9−1及び
図9−2に示したような形で各損失が発生することになる。
【0050】
すなわち、
図9−1に示してあるように、新制御処理が行われた場合にも、旧制御処理が行われた場合(
図8−1参照)と同様に、状態8から状態1への移行時には、スイッチング素子UHとスイッチング素子WLとがオンとなる。また、新制御処理が行われた場合にも、旧制御処理が行われた場合と同様に、状態1の移行後には、スイッチング素子UHとスイッチング素子WLとを電流が流れる。そのため、新制御処理が行われた場合の状態1でも、スイッチング素子UH及びWLのターンオン損失Eonとスイッチング素子UH及びWLの導通損失Esatとが発生する。
【0051】
また、新制御処理でも、状態1から状態2への移行時に、電流が流れているスイッチング素子UH及びWLがオフされる。そのため、新制御処理が行われた場合の状態1でも、スイッチング素子UH及びWLのターンオフ損失Eoffが発生する。ただし、新制御処理が行われた場合には、
図9−1に示してあるように、状態1から状態2への移行時に、インバータ回路12の出力電位が反転しない。従って、新制御処理が行われた場合の状態1では、リカバリー損失Errが発生せずに(
図8−1参照)、ターンオン損失Eon、ターンオフ損失Eoff、導通損失Esatが、それぞれ、2回ずつ発生することになる。
【0052】
また、新制御処理が行われている場合、
図9−1に示してあるように、状態2では、ダイオードD
USとスイッチング素子WSとを電流が流れる。そのため、状態2では、スイッチング素子WSの導通損失EsatとダイオードD
USの導通損失Efとが発生する。また、状態2から状態3への移行時には、スイッチング素子USがオンとなる。ただし、スイッチング素子USがオンとなってもスイッチング素子USには電流が流れないため、スイッチング素子USのターンオン損失Eonは発生しない。従って、状態2では、導通損失Esat、導通損失Efが、それぞれ、1回ずつ発生することになる。
【0053】
状態3においても、ダイオードD
USとスイッチング素子WSとを電流が流れるため、ダイオードD
USの導通損失Efとスイッチング素子WSの導通損失Esatとが発生する。また、状態3から状態4への移行時には、電流が流れている状態にあるスイッチング素子WSがオフとなるため、スイッチング素子WSのターンオフ損失Eoffが発生する。従って、状態3では、ターンオフ損失Eoff、導通損失Esat、導通損失Efが、それぞれ、1回ずつ発生することになる。
【0054】
図9−1に示してあるように、状態4では、ダイオードD
ULとダイオードD
WHとを電流が流れる。また、状態4から状態5への移行時には、スイッチング素子UL及びWHがオンとなるが、各スイッチング素子がオンとなっても各スイッチング素子には電流が流れない。従って、状態4では、ターンオン損失Eonが発生せずに、導通損失Efが2回発生する。
【0055】
状態5においても、状態4と同様に、ダイオードD
ULとダイオードD
WHとを電流が流れる。また、状態5から状態6への移行時には、スイッチング素子UL、WHがオフされる。ただし、
図9−1に示してあるように、状態5におけるスイッチング素子UL、WHには、電流が流れていないため、ターンオフ損失Eoffは、発生しない。従って、状態5では、導通損失Efだけが2回発生する。
【0056】
図9−2に示してあるように、状態6では、ダイオードD
ULとダイオードD
WHとを電流が流れるため、ダイオードD
ULの導通損失EfとダイオードD
WHの導通損失Efとが発生する。また、状態6から状態7への移行時には、スイッチング素子WSがオンされて、ダイオードD
UL及びD
WHを流れていた電流が、ダイオードD
USとスイッチング素子WSとを流れるようになる。そのため、状態6から状態7への移行時には、ダイオ
ードD
UL及びD
WHのリカバリー損失Errとスイッチング素子WSのターンオン損失Eonとが発生する。ただし、スイッチング素子WSのターンオン損失Eonは、状態7の損失として取り扱われるため、状態6では、導通損失Efとリカバリー損失Errとがそれぞれ2回ずつ発生することになる。
【0057】
状態7では、ダイオードD
USとスイッチング素子WSとを電流が流れる。また、上記したように、状態6から状態7への移行時に、スイッチング素子WSのターンオン損失Eonが発生する。そして、状態7から状態8への移行時には、電流が流れていないスイッチング素子USがオフされるだけであるため、特に損失は発生しない。従って、状態7では、
図9−2に示してあるように、ターンオン損失Eonと導通損失Esatと導通損失Efとがそれぞれ1回ずつ発生することになる。
【0058】
状態8においても、ダイオードD
USとスイッチング素子WSとを電流が流れるため、スイッチング素子WSの導通損失EsatとダイオードD
USの導通損失Efとが発生する。そして、状態8から状態1への移行時にインバータ回路12の出力電位が反転してダイオードD
USのリカバリー損失Errが発生するので、状態8では、導通損失Esatと導通損失Efとリカバリー損失Errとがそれぞれ1回ずつ発生することになる。
【0059】
以上、制御処理別及び状態別に説明した各損失の発生回数を纏めると、旧制御処理を行った場合には、
図10Aに示した形で各損失が発生し、新制御処理を行った場合には、
図10Bに示した形で各損失が発生することになる。
【0060】
これらの図から明らかなように、インバータ瞬時出力電流≧0である場合、新制御処理を行えば、スイッチング素子と
環流ダイオードの導通損失の合計は変わらないが、スイッチング損失(ターンオン損失、ターンオフ損失及びリカバリー損失)を総計で7回低減することができる。従って、インバータ瞬時出力電流≧0である場合に新制御処理を行えば、旧制御処理よりもインバータ回路12を効率的に(損失が少ない形で)動作させることができる。
【0061】
・インバータ瞬時出力電流<0の場合
この場合、新制御処理及び旧制御処理によりインバータ回路12内の電流経路は、
図11−1及び
図11−2に示したように時間変化する。なお、
図11−1及び
図11−2中の、(An)(n=1〜8)とラベルを付してある図は、旧制御処理が行われているインバータ回路12内の状態nにおける電流経路の説明図である。
図11−1及び
図11−2中の、(Bn)(n=1〜8)とラベルを付してある図は、新制御処理が行われているインバータ回路12内の状態nにおける電流経路の説明図である。また、各説明図において、その名称(“UH”、“WH”等)が矩形枠で囲まれているスイッチング素子が、オンとなっているスイッチング素子である。
【0062】
図11−1及び
図11−2から明らかなように、いずれの制御処理を行った場合にも、状態1〜3、5、7、8におけるインバータ回路12内の電流経路は同じものとなる。ただし、新制御処理を行うと、インバータ回路12の状態が状態4(説明図(A4)、(B4)参照)である場合と状態6(説明図(A6)、(B6)参照)である場合とに、インバータ回路12内を旧制御処理時とは異なる経路で電流が流れる。
【0063】
そのため、旧制御処理、新制御処理を行った場合におけるスイッチング素子のターンオン損失Eon、ターンオフ損失Eoff及び導通損失Esatと、ダイオードの導通損失Ef及びリカバリー損失Errの発生回数は、それぞれ、
図12A、
図12Bに示したものとなる。なお、これらの図に示してある各損失の発生回数も、状態X(X=1〜8)への移行時に発生するターンオン損失Eon、状態Xから次状態への移行時に発生するターンオフ損失E
off及びリカバリー損失Errを、状態Xにおける損失として取り扱ったものである。
【0064】
図12A及び
図12Bから明らかなように、インバータ瞬時出力電流<0である場合、新制御処理を行えば、スイッチング素子と
環流ダイオードの導通損失の合計は変わらないが、スイッチング損失(ターンオン損失、ターンオフ損失及びリカバリー損失)を総計で7回低減することができる。従って、インバータ瞬時出力電流<0
である場合に新制御処理を行えば、旧制御処理よりもインバータ回路12を効率的に(損失が少ない形で)動作させることができる。
【0065】
・インバータ瞬時出力電流の符号が変わる場合
新制御処理及び旧制御処理によりインバータ回路12内の電流経路は、
図13−1及び
図13−2に示したように時間変化する。
【0066】
図13−1及び
図13−2中の、(An)(n=2〜4,6〜8)とラベルを付してある図は、旧制御処理が行われているインバータ回路12内の状態nにおける電流経路の説明図である。
図13−1中の、(A1a)とラベルを付してある図は、旧制御処理が行われているインバータ回路12の状態が状態1であり、且つ、インバータ瞬時出力電流が負である場合における電流経路の説明図である。
図13−1中の、(A1b)とラベルを付してある図は、旧制御処理が行われているインバータ回路12の状態が状態1であり、且つ、インバータ瞬時出力電流が正である場合における電流経路の説明図である。
図13−2中の、(A5a)とラベルを付してある図は、旧制御処理が行われているインバータ回路12の状態が状態5であり、且つ、インバータ瞬時出力電流が正である場合における電流経路の説明図である。
図13−2中の、(A5b)とラベルを付してある図は、旧制御処理が行われているインバータ回路12の状態が状態5であり、且つ、インバータ瞬時出力電流が負である場合における電流経路の説明図である。
【0067】
図13−1及び
図13−2中の、(Bn)(n=2〜4,6〜8)とラベルを付してある図は、新制御処理が行われているインバータ回路12内の状態nにおける電流経路の説明図である。
図13−1中の、(B1a)とラベルを付してある図は、新制御処理が行われているインバータ回路12の状態が状態1であり、且つ、インバータ瞬時出力電流が負である場合における電流経路の説明図である。
図13−1中の、(B1b)とラベルを付してある図は、新制御処理が行われているインバータ回路12の状態が状態1であり、且つ、インバータ瞬時出力電流が正である場合における電流経路の説明図である。
図13−2中の、(B5a)とラベルを付してある図は、新制御処理が行われているインバータ回路12の状態が状態5であり、且つ、インバータ瞬時出力電流が正である場合における電流経路の説明図である。
図13−2中の、(B5b)とラベルを付してある図は、新制御処理が行われているインバータ回路12の状態が状態5であり、且つ、インバータ瞬時出力電流が負である場合における電流経路の説明図である。
【0068】
すなわち、旧制御処理中にインバータ瞬時出力電流の符号が変わる場合、インバータ瞬時出力電流は、
図14Aに示したように変化する。そのため、インバータ回路12(HERIC型回路)の状態が状態1である期間中及び状態5である期間中に、インバータ回路12(HERIC型回路)内の電流経路が変化する(
図13−1及び
図13−2の説明図(A1a)、(A1b)、(A5a)、(A5b)参照)。新制御処理中にインバータ瞬時出力電流の符号が変わる場合にも、インバータ瞬時出力電流は、
図14Bに示したように変化する。従って、新制御処理時にも、インバータ回路12の状態が状態1である期間中及び状態5である期間中に、インバータ回路12内の電流経路が変化する(
図13−1及び
図13−2の説明図(B1a)、(B1b)、(B5a)、(B5b)参照)。
【0069】
図13−1及び
図13−2から、旧制御処理、新制御処理を行った場合におけるスイッチング素子のターンオン損失Eon、ターンオフ損失Eoff、導通損失Esatと、ダイオードの導通損失Ef及びリカバリー損失Errの発生回数をカウントすると、旧制御処理を行った場合の各損失の発生回数は、
図15Aに示したものとなる。また、新制御処理を行った場合の各損失の発生回数は、
図15Bに示したものとなる。なお、これらの図に示してある各損失の発生回数も、状態X(X=1〜8)への移行時に発生するターンオン損失Eon、状態Xから次状態への移行時に発生するターンオフ損失E
off及びリカバリー損失Errを、状態Xにおける損失として取り扱ったものである。
【0070】
図15A及び
図15Bから明らかなように、インバータ瞬時出力電流の符号が変わる場合、新制御処理を行えば、スイッチング素子と
環流ダイオードの導通損失の合計は変わらないが、スイッチング損失(ターンオン損失、ターンオフ損失及びリカバリー損失)を総計で8回低減することができる。
【0071】
そして、新制御処理によれば、上記したように、インバータ瞬時出力電流が0以上である場合にも、インバータ瞬時出力電流が0未満である場合にも、旧制御処理よりもインバータ回路12を効率的に(損失が少ない形で)動作させることができる。従って、新制御処理によれば、常に、旧制御処理よりもインバータ回路12を効率的に(損失が少ない形で)動作させることができることになる。
【0072】
また、新制御処理によれば、デッドタイム補償量を低減することも可能となる。
【0073】
具体的には、新制御処理は、上記した2μsのデッドタイム(“条件5”参照)を設けるために、各スイッチング素子のゲートに供給する各パルスの前縁側及び後縁側を、1μsずつ削減する処理となっている。
【0074】
旧制御処理も、各スイッチング素子のゲートに供給する各パルスの前縁側及び後縁側を、1μsずつ削減する処理であると仮定すると、インバータ瞬時出力電流が0以上である場合に、
図7−1及び
図7−2における説明図(A1)〜(A8)のように電流経路が時間変化する旧制御処理では、状態1から状態2への遷移時に、本来、DDVが出力されるべきであるにも拘わらず、−DDVが出力される時間が1μs存在することになる。また、状態2から状態3への遷移時に、本来、0Vが出力されるべきであるにも拘わらず、−DDVが出力される時間が1μs存在することにもなる。他の各遷移についても同様に考えていくと、旧制御処理では、インバータ瞬時出力電流が0以上である場合、
図16Aに示したように、デッドタイムによる出力の変化分を補償するために、トータルで“DDV×8μs”分のデッドタイム補償を行う必要があることになる。
【0075】
一方、新制御処理では、インバータ瞬時出力電流が0以上である場合、
図7−1及び
図7−2における説明図(B1)〜(B8)のように電流経路が時間変化する。従って、新制御処理では、インバータ瞬時出力電流が0以上である場合、
図16Bに示したように、デッドタイムによる出力の変化分を補償するために、トータルで“DDV×4μs”分のデッドタイム補償を行えばよいことになる。
【0076】
また、インバータ瞬時出力電流が0未満である場合、旧制御処理では、
図11−1及び
図11−2における説明図(A1)〜(A8)のように電流経路が時間変化し、新制御処理では、
図11−1及び
図11−2における説明図(B1)〜(B8)のように電流経路が時間変化する。従って、インバータ瞬時出力電流が0未満である場合、旧制御処理では、
図17Aに示したように、デッドタイムによる出力の変化分を補償するために、トータルで“−DDV×8μs”分のデッドタイム補償を行う必要があることになる。一方、新制御処理では、インバータ瞬時出力電流が0未満である場合、
図17Bに示したように、
デッドタイムによる出力の変化分を補償するために、トータルで“−DDV×4μs”分のデッドタイム補償を行えばよいことになる。
【0077】
また、インバータ瞬時出力電流の符号が変わる場合、旧制御処理では、
図13−1及び
図13−2における説明図(A1a)〜(A8)のように電流経路が時間変化し、新制御処理では、
図13−1及び
図13−2における説明図(B1a)〜(B8)のように電流経路が時間変化する。従って、インバータ瞬時出力電流の符号が変わる場合、旧制御処理では、
図18Aに示したように、デッドタイムによる出力の変化分を補償する必要はないことになる。また、新制御処理でも、
図18Bに示したように、デッドタイムによる出力の変化分を補償する必要はないことになる。
【0078】
以上の説明から明らかなように、新制御処理は、旧制御処理よりも、デッドタイムによる出力の変化分を補償するために必要とされるデッドタイム補償量が少ない処理となっている。そして、デッドタイム補償を行うためのエネルギーは、DDVから供給されるのであるから、新制御処理によれば、デッドタイム補償のために消費されるDDVが少ない分、DDVが低くても、インバータ回路12を問題なく機能させることができる。そのため、電力変換装置10(パワーコンディショナ)は、動作可能であると判断する太陽電池35の最小出力電圧をより低く設定したものとなっている。
【0079】
最後に、制御部30が行うデッドタイム補償処理について説明する。
制御部30は、上記した制御処理と共に、デッドタイム補償処理を行う。上記したように、制御部30が行う制御処理は、1制御処理中のインバータ瞬時出力電流が0以上である場合(つまり、比較的に大きな正の電流を出力すべき場合)には、“DDV×4
μs”分のデッドタイム補償を行えばよく、1制御処理中のインバータ瞬時出力電流が0未満である場合(つまり、比較的に大きな負の電流を出力すべき場合)には、“−DDV×4μs”分のデッドタイム補償処理を行えばよいものである。
【0080】
そのため、制御部30は、
図19に模式的に示したように、出力電流が所定の閾値(>0)である場合には、“DDV×4μs”分のデッドタイム補償を行い、出力電流が所定の閾値(<0)である場合には、“−DDV×4μs”分のデッドタイム補償を行い、出力電流が“0”近傍である場合には、出力電流に比例した量のデッドタイム補償を行うように構成されている。
【0081】
以上、説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10の制御部30は、上記条件1〜6を満たすように、インバータ回路12内の各スイッチング素子をON/OFFする制御処理を繰り返す。従って、本実施形態に係る電力変換装置10によれば、従来よりも効率的にインバータ回路12(HERIC型回路)を動作させることができる。
【0082】
《変形形態》
上記した実施形態に係る電力変換装置10は、各種の変形を行えるものである。例えば、スイッチング素子UH及びWLをオフとしてからスイッチング素子USをオンとするまでの時間、スイッチング素子WSをオフとしてからスイッチング素子UL及びWHをオンとするまでの時間、スイッチング素子UL及びWHをオフとしてからスイッチング素子WSをオンとするまでの時間、スイッチング素子USをオフとしてからスイッチング素子UH及びWLをオンとするまでの時間が、同一ではない装置に、電力変換装置10
を変形してもよい。
【0083】
制御部30を、出力電流が“0”近傍である場合に、出力電流が増加するにつれ、階段状にデッドタイム補償量が増加していくデッドタイム補償処理を行うものに変形してもよい。また、電力変換装置10から、デッドタイム補償を行う機能を取り除いておいてもよ
いことや、電力変換装置10を、パワーコンディショナではない装置に変形してもよいことなどは、当然のことである。
【解決手段】制御部は、HERIC型回路12に対して、SW素子USがオンとなっており、且つ、SW素子WSがオフとなっている期間中に、SW素子UL及びSW素子WHがオンとなり、SW素子USがオフとなっており、且つ、SW素子WSがオンとなっている期間中に、SW素子UH及びSW素子WLがオンとなり、SW素子UH及びWLがオフとなった後、且つ、SW素子WSがオフとなる前に、SW素子USがオンとなり、SW素子UL及びWHがオフとなった後、且つ、SW素子USがオフとなる前に、SW素子WSがオンとなるよように、各SW素子を制御する。