(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それぞれ導電性の芯線および前記芯線の外周面に形成された絶縁被覆を有し、さらに前記芯線の端部の表面に形成されて前記芯線と電気的に接続されるメッキを有する複数の被覆シールド素線と、
前記被覆シールド素線各々の前記メッキの部分をそれらが環状に並ぶ状態で保持する環状の筒部を有する導電性の端部保持部材と、
前記被覆シールド素線各々における前記メッキの部分を、それらが環状に並ぶ状態で前記筒部の外周面との間に挟んで固定する端部固定部材と、を備え、
平面内で並列に並ぶ3本以上の前記被覆シールド素線が前記筒部に保持されることによって環状に並ぶ状態にされ、
平面内で並列に並ぶ3本以上の前記被覆シールド素線のうち並列方向に沿った一端および他端に位置する2本の被覆シールド素線をそれぞれ第一被覆シールド素線および第二被覆シールド素線とした場合に、
前記被覆シールド素線各々における両端部の間の中間部どうしを、前記筒部に保持されることによって環状に並ぶ状態において隣り合う前記第一被覆シールド素線と前記第二被覆シールド素線との間以外において間隔を空けて連結する柔軟なシールド素線連結部をさらに備える電磁シールド部材。
前記筒部の外周面における前記被覆シールド素線各々の前記メッキの部分が横断する領域に凸部および穴部のうちの少なくとも一方が形成されている、請求項1に記載の電磁シールド部材。
前記第一被覆シールド素線の前記中間部と前記第二被覆シールド素線の前記中間部とを間隔を空けて緩やかに結束するシールド素線結束部材をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の電磁シールド部材。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら、実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。以下に示される電磁シールド部材およびそれを備えるワイヤハーネスは、例えば自動車などの車両用である。
【0023】
<第1実施形態>
まず、
図1〜5を参照しつつ、第1実施形態に係るワイヤハーネス10について説明する。
図1,2が示すように、ワイヤハーネス10は、電磁シールドの対象となる主電線81を含むモールド樹脂付電線9と電磁シールド部材1とを備えている。
【0024】
<モールド樹脂付電線>
モールド樹脂付電線9は、端子付電線80と樹脂モールド部7とを含む。端子付電線80は、主電線81およびその端部に接続された端子82を有する。なお、
図1,2は、主電線81の一方の端部の付近におけるモールド樹脂付電線9の構造を示している。モールド樹脂付電線9は、主電線81の両端部において
図1,2が示す構造を有している。
【0025】
主電線81は、例えば線状の導体である芯線811とその外周面に形成された絶縁被覆812とを有する絶縁電線である。この場合、主電線81の端部において、芯線811の端部が絶縁被覆812の端から延び出て形成されている。
【0026】
主電線81の芯線811は、例えば銅またはアルミニウムを主成分とする金属の線材である。また、主電線81の絶縁被覆812は、例えばポリ塩化ビニルまたはポリエチレンなどを主成分とする絶縁性(非導電性)の合成樹脂の被覆である。
【0027】
端子82は、主電線81における芯線811の端部に接続された金具である。例えば、端子82が芯線811の端部に溶接によって接続されること、または端子82が芯線811の端部に圧着されることなどが考えられる。端子82は、例えば銅もしくは黄銅などの銅合金の部材またはそれらの部材に、錫(Sn)のメッキもしくは錫に銀(Ag)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)などが添加された錫合金のメッキが施された導電性の部材である。
【0028】
樹脂モールド部7は、主電線81の芯線811における絶縁被覆812から延び出た部分全体と端子82における芯線811と接触する部分とを密封する状態に成形された合成樹脂の部材である。樹脂モールド部7は、端子付電線80における絶縁被覆812の端部から端子82の一部までの領域をインサート部とするインサート成形によって形成される。
【0029】
樹脂モールド部7は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレートまたはポリアミドなどの絶縁性の合成樹脂の成形部材である。
【0030】
本実施形態においては、モールド樹脂付電線9は、複数の端子付電線80を備え、樹脂モールド部7は、複数の端子付電線80における主電線81の端部をそれらが並列に並ぶ状態で一括して保持している。なお、主電線81が1本であることも考えられる。
【0031】
<電磁シールド部材>
電磁シールド部材1は、複数の被覆シールド素線2と端部保持部材3と端部固定部材4とを含む。
図4は、被覆シールド素線2の固定構造の断面図である。より具体的には、
図4は、電磁シールド部材1における被覆シールド素線2の端部周辺の縦断面図である。
【0032】
なお、
図1,2,4は、複数の被覆シールド素線2の一方の端部の付近における電磁シールド部材1の構造を示している。電磁シールド部材1は、複数の被覆シールド素線2の両端部において
図1,2,4が示す構造を有している。
【0033】
図4が示すように、被覆シールド素線2各々は、導電性の芯線21およびその芯線21の外周面に形成された絶縁被覆22を有する絶縁電線である。複数の素線が撚り合わされた撚り線が芯線21として採用されれば、被覆シールド素線2の柔軟性を高めることができる。また、芯線21が単線であることも考えられる。
【0034】
例えば、被覆シールド素線2は、線状の導体(芯線21)とその導体の表面に樹脂塗料の塗布によって形成された絶縁被覆(エナメル被覆)とを有するエナメル線である。被覆シールド素線2がエナメル線である場合、その絶縁被覆22は、例えば変性ポリウレタン、ポリエスルテイミドまたはポリアミドイミドなどを含む絶縁性の合成樹脂の被覆である。
【0035】
なお、被覆シールド素線2の絶縁被覆22が、芯線21の外側に押出成形によって形成された被覆であることも考えられる。この場合の絶縁被覆22は、例えばポリ塩化ビニルまたはポリエチレンなどを主成分とする絶縁性の合成樹脂の被覆である。
【0036】
被覆シールド素線2の芯線21は、例えば銅またはアルミニウムなどを主成分とする金属の線材である。全ての被覆シールド素線2の芯線が同じ金属材料の線材であることも考えられるが、電磁シールド部材1がそれぞれ材料の異なる芯線21を有する複数種類の被覆シールド素線2を含むことも考えられる。
【0037】
例えば、電磁シールド部材1において、軽量なアルミニウムを主成分とする芯線21を有する被覆シールド素線2と、シールド特性に優れた銅を主成分とする芯線21を有する被覆シールド素線2とが混在していることが考えられる。複数種類の芯線21の割合は、例えば電磁シールド部材1の軽量化とシールド特性とのバランスを考慮して決定される。
【0038】
被覆シールド素線2各々は、その端部20における芯線21の表面に形成されたメッキ200を有する。メッキ200は、芯線21の端部の表面にその周囲の絶縁被覆22を溶解させつつ形成された金属膜である。メッキ200は、芯線21における先端面および端部の全周に亘って形成されている。メッキ200を形成する工程については後述する。
【0039】
本実施形態においては、複数の被覆シールド素線2は、シールド素線連結部5によって予め繋がれてシールド素線群2Xを構成している。
図3はシールド素線群2Xの平面図である。本実施形態における電磁シールド部材1は、3本以上の被覆シールド素線2を備えている。
【0040】
以下の説明において、3本以上の被覆シールド素線2のうち、端部固定部材4に保持されることによって環状に並ぶ状態において隣り合う特定の2本の被覆シールド素線2のことをそれぞれ第一被覆シールド素線201および第二被覆シールド素線202と称する。さらに、残りの全ての被覆シールド素線2のことを第三被覆シールド素線203と称する。
【0041】
シールド素線連結部5は、柔軟性を有する部材である。シールド素線連結部5は、3本以上の被覆シールド素線2各々における両端部20の間の中間部どうしを、第一被覆シールド素線201と第二被覆シールド素線202との間以外において間隔を空けて連結している。
【0042】
即ち、シールド素線連結部5は、全ての第三被覆シールド素線203の中間部を間隔を空けて一連に連結している。さらに、シールド素線連結部5は、第一被覆シールド素線201の中間部と少なくとも1本の第三被覆シールド素線203の中間部とを間隔を空けて連結している。さらに、シールド素線連結部5は、第二被覆シールド素線202の中間部と少なくとも1本の第三被覆シールド素線203の中間部とを間隔を空けて連結している。
【0043】
なお、
図5が示す例では、シールド素線連結部5は、隣り合う被覆シールド素線2どうしを間隔を空けて連結しているが、そうでない例も考えられる。例えば、シールド素線連結部5が2つ隣りの被覆シールド素線2どうしを連結することなども考えられる。
【0044】
シールド素線連結部5は、例えば柔軟性を有する合成樹脂の部材である。シールド素線連結部5を構成する合成樹脂は、例えば弾性を有するエラストマー、ポリ塩化ビニルまたはポリエチレンなどであることが考えられる。
【0045】
シールド素線連結部5は、後述する端部保持部材3の筒部301に固定される前の複数の被覆シールド素線2に形成される。即ち、シールド素線群2Xの端部が端部保持部材3に固定される前の時点において、複数の被覆シールド素線2は柔軟なシールド素線連結部5によってすだれ状に一体化されている。
【0046】
後述するように、すだれ状のシールド素線群2Xの両端におけるメッキ200の部分各々は、2つの端部固定部材4各々によって2つの端部保持部材3各々の筒部301に環状に並ぶ状態で固定される。
【0047】
シールド素線群2Xを含む電磁シールド部材1は、主電線81の経路に沿って曲げて取り付けられた場合であっても、被覆シールド素線2相互の間隔が概ね一定に維持され、複数の被覆シールド素線2が周方向において一部に偏ることなく概ね一様に分布する。その結果、被覆シールド素線2の間に部分的に大きな隙間が形成されてしまってシールド性能が悪化することを防止できる。
【0048】
さらに、複数の被覆シールド素線2がすだれ状に一体化されているため、被覆シールド素線2各々を端部固定部材4に接合する際における複数の被覆シールド素線2の取り扱いが容易となる。
【0049】
端部保持部材3は、環状に形成された導電性の部材である。本実施形態において、端部保持部材3は、環状の筒部301およびその筒部301に連なった留め部302を有する導電性の部材である。
【0050】
図1,2が示す例において、端部保持部材3は、いわゆるシールドシェル部材である。端部保持部材3(シールドシェル部材)は、主電線81の接続先である電装機器を収容する筐体における開口の縁部に取り付けられる部材である。
【0051】
筒部301は、被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分をそれらが環状に並ぶ状態で保持する。一方、留め部302は、モールド樹脂付電線9の接続先の機器を収容する金属製の不図示の筐体に留められる部分である。留め部302は筒部301からその外側に形成されている。
【0052】
端部保持部材3の筒部301には、主電線81の通路を成す貫通孔300が形成されている。端部保持部材3は、筒部301の貫通孔300と筐体の開口とが重なる状態で筐体に取り付けられる。
【0053】
図1,2が示す例では、端部保持部材3を筐体に留めるためのネジが通されるネジ孔303が留め部302に形成されている。端部保持部材3は、例えばアルミニウムまたは銅などを主成分とする金属部材である。また、端部保持部材3の表面に錫(Sn)のメッキもしくは錫に銀(Ag)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)などが添加された錫合金のメッキが形成されていることも考えられる。
【0054】
本実施形態においては、モールド樹脂付電線9の樹脂モールド部7が、端部保持部材3における筒部301の貫通孔300に嵌め入れられる。これにより、樹脂モールド部7を貫通する端子付電線80が、筒部301の貫通孔300を貫通した状態になる。
【0055】
端部固定部材4は、被覆シールド素線2各々におけるメッキ200の部分を、それらが環状に並ぶ状態で筒部301の外周面との間に挟んで固定する部材である。例えば、端部固定部材4は、曲げ変形可能な金属製の帯状部材が端部保持部材3における筒部301の外周面に接続された構造を有する。
【0056】
本実施形態においては、複数の被覆シールド素線2が交差せずに並列に並ぶ状態で被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分が筒部301の外周面と環状に成形された端部固定部材4の内周面との間に挟み込まれている。そして、端部固定部材4は、端部保持部材3の筒部301の外周面に沿って環状に曲げられ、その筒部301に接続される。
【0057】
例えば、元々帯状の端部固定部材4は、その長手方向における両端部どうしがカシメ加工により連結され、これにより環状に形成される。また、元々帯状の端部固定部材4の両端部が折り重ねられることによって連結されることも考えられる。また、端部固定部材4が筒部301に対するカシメ加工により接続されることも考えられる。
【0058】
複数の被覆シールド素線2各々の両端部20各々が、それぞれ端部固定部材4と組み合わされた2つの端部保持部材3各々によって環状に保持されている。そのため、複数の被覆シールド素線2は、2つの端部保持部材3により、主電線81の周囲を囲む筒状に並ぶ状態に保持されている。
【0059】
被覆シールド素線2各々の芯線21は、その端部の表面においてメッキ200と接触しており、そのメッキ200が筒部301に接触している。従って、複数の被覆シールド素線2各々の芯線21は、メッキ200を介して端部保持部材3と電気的に接続される。
【0060】
図5は、電磁シールド部材1を製造する途中のメッキ形成工程を示す図である。
図5が示すように、メッキ形成工程は被覆シールド素線2各々の端部20がメッキ液200Xに浸漬される湿式メッキ工程である。メッキ形成工程において、被覆シールド素線2各々における絶縁被覆22が形成されたままの端部20がメッキ槽90に溜まったメッキ液200Xに浸漬される。
【0061】
溶融金属であるメッキ液200Xの温度、即ち、メッキ200の融点は、被覆シールド素線2の絶縁被覆22の融点よりも高い。そのため、被覆シールド素線2各々の端部20の絶縁被覆22が高温のメッキ液200Xに触れて芯線21の表面から溶出する。さらに、溶出した絶縁被覆22の内側の芯線21がメッキ液200Xに曝され、その芯線21の表面にメッキ200が形成される。
【0062】
図5が示す例では、複数の被覆シールド素線2は、メッキ形成工程の前にシールド素線連結部5によってシールド素線群2Xとして一体化されている。そして、メッキ形成工程は、シールド素線群2Xとして一体化された複数の被覆シールド素線2の端部20について一括して実行される。
【0063】
なお、例えばメッキ形成工程が電気メッキ工程である場合、カソード電極としての被覆シールド素線22各々の端部20と不図示のアノード電極とがメッキ液200Xに浸漬される。この場合、シールド素線22各々と不図示のアノード電極とに電圧が印加される。また、メッキ200が無電解メッキ法によって形成されることも考える。
【0064】
<効果>
電磁シールド部材1において、複数の被覆シールド素線2は、シールド素線として機能する絶縁電線である。また、被覆シールド素線2各々のメッキ200は、被覆シールド素線2各々における絶縁被覆22が形成されたままの端部20がメッキ液200Xの槽(メッキ槽90)に浸漬されることによって形成される。メッキ形成工程において、被覆シールド素線2各々の端部20の絶縁被覆22は、高温のメッキ液200Xに触れて芯線21の表面から溶出する。
【0065】
そして、被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分が導電性の端部保持部材3の筒部301と端部固定部材4との間に挟み込まれることにより、被覆シールド素線2各々の芯線21がメッキ200を介して端部保持部材3と電気的に接続される。また、端部保持部材3の留め部302が筐体に固定されることにより、被覆シールド素線2各々の芯線21がメッキ200および端部保持部材3を介して筐体と電気的に接続される。
【0066】
従って、電磁シールド部材1が採用されれば、被覆シールド素線2各々の端部20の絶縁被覆22を予め剥がす工程を要することなく、被覆シールド素線2各々の端部20を簡易に端部固定部材4に接合することができ、ひいては被覆シールド素線2の端部20を簡易に筐体接地できる。
【0067】
電磁シールド部材1において、複数の被覆シールド素線2が柔軟なシールド素線連結部5によってシールド素線群2Xとしてすだれ状に一体化されている。そのため、被覆シールド素線2各々を筒部301に固定する際における複数の被覆シールド素線2の取り扱いが容易となる。
【0068】
<被覆シールド素線の固定構造の第1応用例>
次に、
図6を参照しつつ、ワイヤハーネス10に適用可能な第1応用例に係る被覆シールド素線の固定構造について説明する。
図6は第1応用例に係る被覆シールド素線の固定構造の断面図である。以下、この第1応用例と
図4が示す被覆シールド素線の固定構造との相違点について説明する。
【0069】
図6が示す第1応用例において、端部保持部材3Aは、筒部301Aと留め部302とを有している。なお、端部保持部材3Aの留め部302は端部保持部材3の留め部302と同じであるため、
図6において留め部302の描画は省略されている。
【0070】
端部保持部材3Aにおいて、筒部301Aの外周面における被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分が横断する領域に凸部304が形成されている。
図6が示す例では、複数の凸部304が筒部301Aの外周面に形成されているが、凸部304が1つであることも考えられる。
【0071】
端部固定部材4は、筒部301Aの外周面における凸部304が位置する部分に対して被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分を挟み込む状態で接続される。これにより、被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分および端部固定部材4は、凸部304の頭頂部分に沿って歪む。即ち、凸部304の頭頂部分が被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分に食い込んだ状態となる。そのため、被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分と端部保持部材3の筒部301とがより確実に電気的に接続される。
【0072】
<被覆シールド素線の固定構造の第2応用例および第3応用例>
次に、
図7,8を参照しつつ、ワイヤハーネス10に適用可能な第2応用例および第3応用例に係る被覆シールド素線の固定構造について説明する。
図7は第2応用例に係る被覆シールド素線の固定構造の断面図である。
図8は第3応用例に係る被覆シールド素線の固定構造の断面図である。以下、それら第2応用例および第3応用例と
図4が示す被覆シールド素線の固定構造との相違点について説明する。
【0073】
図7が示す第2応用例において、端部保持部材3Bは、筒部301Bと留め部302とを有している。また、
図8が示す第3応用例において、端部保持部材3Cは、筒部301Cと留め部302とを有している。なお、端部保持部材3B,3Cの留め部302は端部保持部材3の留め部302と同じであるため、
図7,8において留め部302の描画は省略されている。
【0074】
端部保持部材3Bにおいて、筒部301Bの外周面における被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分が横断する領域に穴部305が形成されている。穴部305は、筒部301Bの外周面からその厚みよりも浅く窪んだ部分である。
【0075】
同様に、端部保持部材3Cにおいて、筒部301Cの外周面における被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分が横断する領域に穴部305Xが形成されている。穴部305Xは、筒部301Bの外周面から内周面まで貫通した穴(貫通孔)である。
【0076】
図8,9が示す例では、1つの穴部305,305Xが筒部301B,301Cの外周面に形成されているが、複数の穴部305,305Xが筒部301B,301Cに形成されていることも考えられる。
【0077】
端部固定部材4は、筒部301B,301Cの外周面における穴部305,305Xが位置する部分に対して被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分を挟み込む状態で接続される。これにより、被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分および端部固定部材4は、穴部305,305Xの縁部分に沿って歪む。即ち、穴部305,305Xの縁部分が被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分に食い込んだ状態となる。そのため、被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分と端部保持部材3の筒部301とがより確実に電気的に接続される。
【0078】
<第2実施形態>
次に、
図9を参照しつつ、第2実施形態に係るワイヤハーネス10Aについて説明する。
図9はワイヤハーネス10Aの主要部の斜視図である。
図9において、
図1〜8に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス10Aにおけるワイヤハーネス10と異なる点について説明する。
【0079】
ワイヤハーネス10Aは、ワイヤハーネス10と同様に、主電線81を含むモールド樹脂付電線9と電磁シールド部材1Aとを備えている。電磁シールド部材1Aは、電磁シールド部材1と同様に、複数の被覆シールド素線2と端部保持部材3と端部固定部材4とを含む。
【0080】
図9が示す例において、端部固定部材4の両端部は、折り重ねられることによって連結された連結部310を形成している。これにより端部固定部材4は、複数の被覆シールド素線2各々におけるメッキ200が形成された部分を筒部301との間に挟み込んだ状態で環状に維持される。
【0081】
なお、
図9に示される端部保持部材3および端部固定部材4は、
図1,2に示される端部保持部材3および端部固定部材4と形状が異なるものの同じ構造を有している。
【0082】
電磁シールド部材1Aは、電磁シールド部材1の構成に加えてシールド素線結束部材6を備えている。シールド素線結束部材6は、第一被覆シールド素線201の中間部と第二被覆シールド素線202の中間部とを間隔を空けて緩やかに結束する部材である。
【0083】
例えば、シールド素線結束部材6は、第一被覆シールド素線201の中間部および第二被覆シールド素線202の中間部に螺旋状に緩やかに巻き付けられた紐状の部材である。
図9が示す例では、紐状のシールド素線結束部材6の端部60が接着剤などによって端部固定部材4に固定されている。
【0084】
電磁シールド部材1Aが採用されれば、シールド素線結束部材6が、シールド素線連結部5で連結されていない第一被覆シールド素線201とその隣の第二被覆シールド素線202との間に大きな隙間が形成されてしまうことも防止できる。従って、シールド性能の悪化をより確実に防止できる。
【0085】
<電磁シールド部材の応用例>
次に、
図10を参照しつつ、ワイヤハーネス10に適用可能な応用例に係る電磁シールド部材1Bについて説明する。
図10は電磁シールド部材1Bの主要部の斜視図である。
図10において、
図1〜9に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド部材1Bにおける電磁シールド部材1と異なる点について説明する。
【0086】
電磁シールド部材1Bにおいて、複数の被覆シールド素線2は、一般的な編組線と同様に筒状に編み込まれた構造を有している。また、編み込まれて筒状に形成された複数の被覆シールド素線2の両端部において、芯線21の表面にメッキ200が形成されている。
【0087】
本応用例における被覆シールド素線2各々のメッキ200も、
図5が示すメッキ形成工程によって形成される。即ち、編み込まれて筒状に形成された複数の被覆シールド素線2の端部20は、絶縁被覆22が形成されたままの状態でメッキ液200Xに浸漬される。これにより、メッキ200が形成される。
【0088】
そして、電磁シールド部材1Bにおいても、被覆シールド素線2各々におけるメッキ200の部分が、端部固定部材4によって端部保持部材3の筒部301に固定されている。即ち、筒部301が、筒状に編み込まれた被覆シールド素線2各々のメッキ200の部分をそれらが環状に並ぶ状態で保持している。さらに、端部固定部材4が、筒状に編み込まれた被覆シールド素線2各々におけるメッキ200の部分を、それらが環状に並ぶ状態で筒部301の外周面との間に挟んで固定している。
【0089】
図10が示す電磁シールド部材1Bが採用される場合も、電磁シールド部材1が採用される場合と同様の効果が得られる。また、シールド素線連結部5およびシールド素線結束部材6を省くことができる。そのため、電磁シールド部材1Bの構成部品の点数を少なくすることができる。
【0090】
<シールド素線群の応用例>
次に、
図11を参照しつつ、ワイヤハーネス10,10Aに適用可能な応用例に係るシールド素線群2Yについて説明する。
図11はシールド素線群2Yの平面図である。
図11において、
図1〜10に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、シールド素線群2Yにおけるシールド素線群2Xと異なる点について説明する。
【0091】
シールド素線群2Yもシールド素線群2Xと同様に複数の被覆シールド素線2がシールド素線連結部5Aによってすだれ状に連結された構造を有している。
【0092】
シールド素線連結部5Aは、柔軟性を有する紐状の部材であり、シールド素線連結部5と同じ機能を果たす。シールド素線連結部5Aは、3本以上の被覆シールド素線2各々における両端部20の間の中間部どうしを、第一被覆シールド素線201と第二被覆シールド素線202との間以外において間隔を空けて連結している。
【0093】
図11が示す例では、シールド素線連結部5Aは、被覆シールド素線2各々の中間部に結び付けられた複数の結び部52とそれら結び部52を繋ぐ紐状基部51とを有している。このようなシールド素線連結部5Aによって複数の被覆シールド素線2が連結された構造を有するシールド素線群2Yが、シールド素線群2Xの代わりに採用されることも考えられる。
【0094】
<その他の応用例>
電磁シールド部材1,1A,1Bにおいて、端部保持部材3および端部固定部材4によって挟持される複数のシールド素線が、複数の被覆シールド素線2と複数の裸電線とを含むことも考えられる。この場合、シールド素線として採用される裸電線各々は同種の金属の電線である。
【0095】
電磁シールド部材1,1A,1Bにおいて、端部固定部材4は、被覆シールド素線2各々におけるメッキ200の部分を、それらが環状に並ぶ状態で筒部301,301A,301Bの外周面との間に挟んで固定する部材であればよい。例えば、端部固定部材4が導電部材である場合の他、端部固定部材4が絶縁部材(非導電性の部材)であることも考えられる。また、端部固定部材4として、例えば、カシメリングまたはカシメバンドの他、形状記憶合金からなるゼンマイ状のバンド部材などが採用されることも考えられる。
【0096】
なお、本発明に係る電磁シールド部材およびワイヤハーネスは、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された各実施形態および各応用例を自由に組み合わせること、或いは実施形態および各応用例を適宜、変形するまたは一部を省略することによって構成されることも可能である。