特許第6394814号(P6394814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6394814
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】補強材の作製方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 57/00 20060101AFI20180913BHJP
   F16L 55/18 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   F16L57/00 A
   F16L55/18 Z
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-541722(P2017-541722)
(86)(22)【出願日】2017年2月1日
(86)【国際出願番号】JP2017003567
【審査請求日】2017年8月7日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(72)【発明者】
【氏名】西田 秀高
(72)【発明者】
【氏名】川井 良文
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−201374(JP,A)
【文献】 特開平09−057380(JP,A)
【文献】 特開2016−017534(JP,A)
【文献】 特開2014−005862(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/013753(WO,A1)
【文献】 米国特許第05735551(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0023975(US,A1)
【文献】 特開2016−023687(JP,A)
【文献】 特開2016−153693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 57/00
F16L 55/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の補強対象部位の外形よりも大きい外形を有する管状部材を準備する準備工程と、
該管状部材を軸線方向に沿った分割線により分割して複数の分割片を形成する分割工程と、を含み、
前記分割線は、応力解析により前記補強対象部位のうち所定値以上の応力が加わると解析された高応力発生部位を回避した位置に設定されていることを特徴とする補強材の作製方法。
【請求項2】
前記準備工程は、金属製の平板を筒状に加工して直管を得る工程と、前記直管を前記補強対象部位の形状に合わせて曲げ加工する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の補強材の作製方法。
【請求項3】
前記準備工程は、金属製の平板を筒状に加工して直管を得る工程と、複数の前記直管を接合して該直管同士が交叉状態で連結された前記管状部材を得る工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の補強材の作製方法。
【請求項4】
前記準備工程で準備する前記管状部材が既製品であり、前記分割工程により得られる前記各分割片の内面を前記補強対象部位の外形状に合わせて加工する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の補強材の作製方法。
【請求項5】
前記分割片同士を接合するためのフランジを前記分割線に沿って形成する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の補強材の作製方法。
【請求項6】
配管の補強対象部位の外形よりも大きい外形を有する複数の半管状部材を準備する準備工程と、
該半管状部材同士の周方向端部を対向させて仮固定することにより得られる直管を補強対象部位の形状に合わせて曲げ加工する工程と、を含み、
前記曲げ加工後の前記半管状部材同士を組み合わせた場合に、前記半管状部材同士が対向する部位は、前記補強対象部位のうち、応力解析により所定値以上の応力が加わると解析された高応力発生部位を回避した位置に設定されていることを特徴とする補強材の作製方法。
【請求項7】
前記半管状部材同士を接合するためのフランジを、該半管状部材の周方向端部に軸方向に沿って形成する工程を含むことを特徴とする請求項に記載の補強材の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を輸送する配管の外周部を被覆することにより配管を補強する配管用の補強材の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン等の動力として使用される動力用蒸気は高温高圧の流体である。動力用蒸気には、例えば温度が300℃から650℃、圧力が5MPaから8MPa程度の蒸気が用いられる。動力用蒸気を輸送する金属製の蒸気配管は、常時、高温高圧の蒸気に曝されるためクリープによる劣化が生じる。
【0003】
クリープ劣化に伴う蒸気配管の破壊を防止するため、蒸気配管に対する改修や補強が行われる。通常、改修には、蒸気配管の補強対象部位を切断し、切断箇所に健全な配管を接合する方法が採られる。しかし、この方法では、蒸気配管の溶接作業や熱処理作業が伴うため、作業に手間がかかるという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、蒸気配管の補強対象部位の外側に補強用具を嵌めることによって蒸気配管の補強を行うことが記載されている。特許文献1に記載の補強用具は、軸方向、即ち蒸気の輸送方向に沿って並ぶ複数の補強部から構成される。各補強部は、蒸気配管の周方向の半分を囲繞する湾曲板部と湾曲板部の周方向端部に設けられたフランジ部を有する一対の補強部材を備えている。補強部材のフランジ部同士をボルト及びナットを用いて一体化することにより、蒸気配管の周方向の全体を囲繞して蒸気配管を補強する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−5862公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、配管の軸方向に働く応力を効果的に低減するためには、補強用具が軸方向において一体的な構成を有することが望ましい。しかし、蒸気配管のように比較的大規模な配管を補強する補強材の作製方法は、確立されていないのが現状である。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、配管の軸方向に働く応力を効果的に低減することができる配管用の補強材の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、配管の補強対象部位の外形よりも大きい外形を有する管状部材を準備する準備工程と、該管状部材を軸線方向に沿った分割線により分割して複数の分割片を形成する分割工程と、を含み、前記分割線は、応力解析により前記補強対象部位のうち所定値以上の応力が加わると解析された高応力発生部位を回避した位置に設定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項に記載の発明は、前記準備工程は、金属製の平板を筒状に加工して直管を得る工程と、前記直管を前記補強対象部位の形状に合わせて曲げ加工する工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項に記載の発明は、前記準備工程は、金属製の平板を筒状に加工して直管を得る工程と、複数の前記直管を接合して該直管同士が交叉状態で連結された前記管状部材を得る工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記準備工程で準備する前記管状部材が既製品であり、前記分割工程により得られる前記各分割片の内面を前記補強対象部位の外形状に合わせて加工する工程を含むことを特徴とする
【0013】
請求項に記載の発明は、前記分割片同士を接合するためのフランジを前記分割線に沿って形成する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の発明は、配管の補強対象部位の外形よりも大きい外形を有する複数の半管状部材を準備する準備工程と、該半管状部材同士の周方向端部を対向させて仮固定することにより得られる直管を補強対象部位の形状に合わせて曲げ加工する工程と、を含み、前記曲げ加工後の前記半管状部材同士を組み合わせた場合に、前記半管状部材同士が対向する部位は、前記補強対象部位のうち、応力解析により所定値以上の応力が加わると解析された高応力発生部位を回避した位置に設定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項に記載の発明は、前記半管状部材同士を接合するためのフランジを、該半管状部材の周方向端部に軸方向に沿って形成する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配管の軸方向に働く応力を効果的に低減することができる配管用の補強材を作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一の実施形態に係る配管用補強材の作製手順を示すフローチャートである。
図2】配管用補強材の作製手順の一例を示す模式的斜視図である。
図3】配管用補強材の作製手順の一例を示す模式的斜視図である。
図4】配管用補強材の作製手順の一例を示す模式的斜視図である。
図5】配管用補強材を配管に装着した様子を模式的に示した横断面図である。
図6】本発明の第二の実施形態において補強対象となるチーズ型の配管の平面図である。
図7】本発明の第二の実施形態に係る配管用補強材の作製手順を示すフローチャートである。
図8】配管用補強材の作製手順の一例を示す模式的斜視図である。
図9】配管用補強材の作製手順の一例を示す模式的斜視図である。
図10】配管用補強材の作製手順の一例を示す模式的斜視図である。
図11】チーズ型の管状部材を二分割した例を示す模式的斜視図である。
図12】本発明の第三の実施形態において補強対象となる管台型の配管の平面図である。
図13】(a)、(b)は、管状部材準備工程の一例を示す模式的斜視図である。
図14】第三の実施形態に係る配管用補強材を示す模式的斜視図である。
図15】本発明の第四の実施形態に係る配管用補強材の作製手順を示すフローチャートである。
図16】配管用補強材の作製手順の一例を示す模式的斜視図である。
図17】配管用補強材の作製手順の一例を示す模式的斜視図である。
図18】配管用補強材の作製手順の一例を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、配管の補強対象部位の外形よりも一回り大きい外形を有する管状部材を準備し、これを分割して配管用補強材とする点に特徴がある。また、本発明は、配管の補強対象部位の外形よりも一回り大きい外形を有する複数の半管状部材を準備し、これを組み合わせて配管用補強材とする点に特徴がある。
【0019】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0020】
以下の説明においては配管用補強材を単に「補強材」という。また、以下の説明において配管の軸方向とは配管の中心軸に沿った方向であり、補強材又は管状部材の軸方向とは補強材を配管に取り付けたときに配管の軸方向に沿った方向を意味する。
【0021】
〈配管と補強材の材質〉
配管と補強材の材質について説明する。
500度〜600度、或いはそれ以上の高温環境下で使用される耐熱鋼からなる配管についてクリープ変形による破壊を防止する目的で補強する場合、補強材には配管材料よりもクリープ強度の高い材料を用いる。例えば、配管材料としてフェライト系のクロム鋼である9Cr-1Mo鋼や2.25Cr-1Mo鋼等の耐熱鋼が用いられている場合、補強材には一例としてオーステナイト系ステンレスである18−8ステンレス鋼や、ニッケル合金等を好適に用いることができる。また、温度条件によっては補強材にコバルト合金、高クロム鋼を用いてもよい。
配管のクリープ変形による破壊を防止する必要がない場合、言い換えれば、クリープ変形が発生しないような低温環境下で使用される配管の場合、補強材には配管に使用されている材料と同じ材料(いわゆる「とも材」)を用いることができる。
【0022】
〈配管と補強材の大きさ〉
ここで、補強材の肉厚は、配管に加わる応力の低減効果が得られる厚さに決定する。例えば、直径800mm、肉厚40mm(直径の1/20)の配管に対して、補強材の肉厚は8mm(配管の直径の1/100)のように決定できる。
【0023】
〈第一の実施形態〉
本発明の第一の実施形態に係る配管用補強材の作製方法について説明する。第一の実施形態においては、配管の補強対象部位の外形よりも一回り大きい外形を有する管状部材を作製し、これを分割して配管用補強材を得る点に特徴がある。
【0024】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る配管用補強材の作製手順を示すフローチャートである。図2図4は、配管用補強材の作製手順の一例を示す模式的斜視図である。図5は、配管用補強材を配管に装着した様子を模式的に示した横断面図である。
【0025】
《補強材の形状》
本実施形態における補強材は、配管のエルボ部分を補強するための補強材である。補強材100は、図4(b)、及び図5に示すように、配管150の外周面に密着する複数の(ここでは二つの)半管状の分割体110,110から構成されている。各分割体110,110は、周方向の各端部に、軸方向及び径方向に沿って伸びるフランジ111,111(鍔部、又は接合片)を備えている。フランジ111には、軸方向に沿って所定の間隔でボルト穴113が貫通形成されている。フランジ111,111は、両分割体110,110をボルトB及びナットNにより接合し、一体化するための部位である。
図5に示すように、各分割体110,110の内周面を配管150の外周面に密着させると共に、互いに連通する両フランジ111,111のボルト穴113,113に跨がってボルトBを挿通し、ボルトBにナットNを螺着することにより、両分割体110,110を接合、一体化する。なお、補強材100から配管に対して、配管の膨張に対抗できる程度の締め付け力を発生させるため、両分割体110,110を配管に取り付けたときにフランジ111,111の間には5〜10mm程度の隙間ができるようになっている。
【0026】
《補強材の作製手順》
図1に示すように、配管用補強材の作製手順は、ステップS1「計測・解析工程」、ステップS3a「管状部材準備工程」、ステップS5「分割工程」、ステップS7「フランジ形成工程」、ステップS9「調整工程」、及び、ステップS11「ボルト穴形成工程」を含む。
ステップS1は配管用補強材を作製するために必要な情報を収集する事前の準備段階であり、金属材料の加工等はステップS3a以下の工程にて行われる。
【0027】
《ステップS1:計測・解析工程》
「計測・解析工程」においては、配管の三次元計測と応力解析を実行する。
三次元計測では、現在の配管の外形を測定する。三次元計測には、レーザ計測、多数の視点から撮影した画像による解析等を利用できる。
応力解析では、設計時の配管形状を基準として、配管に加わる応力をコンピュータ・シミュレーションにより解析する。解析の結果、例えば所定値以上の主応力が加わっていると判定された部分を補強対象部位と決定する。
補強対象部位の三次元計測の結果と応力解析の結果とに基づいて、補強範囲、補強材の形状、大きさ、及び分割位置等を決定する。
【0028】
《ステップS3a:管状部材準備工程》
第一の実施形態における「管状部材準備工程」では、配管の補強対象部位の外形よりも一回り大きい外形を有する管状部材を作製する。図2(a)〜(c)は、管状部材準備工程の一例を示している。
図2(a)に示すように、最終的に得る補強材の形状やサイズに応じた大きさ及び厚さの金属製の平板121を用意する。具体的には、「配管の外周長×補強対象部位の軸方向長」の大きさ、及び補強材に求められる肉厚を有した矩形状の金属製の平板121を用意する。
図2(b)に示すように、平板121をロール加工により円筒状に加工して、対向する二つの辺121a,121aを溶接することにより直管123(直線状の円筒管)を作製する。
最後に、図2(c)に示すように、直管123に対して補強対象部位の形状に合わせて曲げ加工を施すことにより、補強対象部位の曲率に湾曲したエルボ型の管状部材125を作製する。曲げ加工には、一例として、湾曲した配管を作製する方法の一つである高周波誘導加熱を利用した熱間曲げ加工を用いることができる。
本工程により得られるエルボ型の管状部材125は、補強対象部位の外形よりも一回り大きい外形を有するものであり、補強対象部位と同様の湾曲形状を有し、内周長が補強対象部位の外周長に実質的に等しい。即ち、管状部材125の中空部内の大きさは、配管の補強対象部位を収容可能な大きさである。
【0029】
《ステップS5:分割工程》
図3(a)は分割工程を示し、(b)はフランジ形成工程を示す図である。
「分割工程」では、管状部材125を軸方向に沿って伸びる分割線127で切断して、分割線127により分割された半筒状の複数の分割片129,129を形成する。管状部材125の分割には、プラズマ切断、レーザ切断、工作機械による切断等を用いることができる。本工程では管状部材125を図示するように二分割してもよいし、三以上に分割してもよい。少なくとも、補強対象である配管を分解することなく、配管に対して補強材を装着可能となるように管状部材を複数に分割する。
エルボ型の配管の場合は軸方向における曲率の最大部分と最小部分の応力が高くなる傾向にあるため、配管を効果的に補強するためには、図示するように曲率の最大部分と最小部分を回避した位置、言い換えれば曲率の中間部分にて管状部材125を切断することが望ましい。もちろん、配管が設置されている現場の状況に応じて、補強材の配管への取付作業が効率的となる箇所に分割線を設定して構わない。
上述の通り、補強材100から配管に対して締め付け力を発生させるため、両分割体110,110を配管に取り付けたときにフランジ111,111には5〜10mm程度の隙間ができるようになっている(図5参照)。この隙間は、分割工程で切断する管状部材125の切断幅によって調整することができる。
【0030】
《ステップS7:フランジ形成工程》
「フランジ形成工程」では、図3(b)に示すように、分割片129,129同士を接合するためのフランジ111,111を分割線127に沿って形成して分割体110,110を得る。本実施形態においては、各分割片129,129の軸方向の曲率に合わせて湾曲させた金属製の帯板を分割片129,129の周方向の各端部に溶接してフランジ111,111とする。
【0031】
《ステップS9:調整工程》
図4(a)は調整工程を示し、(b)はボルト穴形成工程を示す図である。
「調整工程」では、分割体110,110の内形状を配管の補強対象部位の外形状に合わせて調整する。
ここで、補強対象となる配管は、高温環境下での使用によりクリープ変形して、横断面形状が当初の真円形状から偏平形状となっている場合がある。そこで、調整工程では、ステップS1の計測・解析工程で計測された配管の現在の三次元形状に基づいて、各分割体110,110の内形状を配管の補強対象部位の外形状に合わせて調整する。具体的には、油圧ジャッキ等を用いて各分割体110,110の内径を拡径又は縮径させて、各分割体110,110が配管に密着するように調整する。なお、フランジ形成工程の後に調整工程を実施することで、フランジの溶接により各分割体110,110に発生したひずみを取り除くことが可能である。
また、本工程では、補強対象となる配管の外周面に溶接部の余盛り、γプラグ、吊りピース等による突出部位が存在する場合、分割体110,110の内面を切削し、又は分割体110,110に開口を形成して、突出部位と分割体110,110との干渉を防止する。なお、開口を形成した場合は、必要に応じて開口に金属板を溶接して開口を閉止して再補強する。
【0032】
《ステップS11:ボルト穴形成工程》
「ボルト穴形成工程」では、図4(b)に示すように、二つの分割体110,110の周方向端部に位置するフランジ111,111を対向させることにより、両分割体110,110を湾曲する円筒状に組み合わせた上で、両フランジを仮固定する。仮固定した状態にて、対向するフランジ111,111を貫通する複数のボルト穴113,113(所謂「とも穴」)を形成する。なお、本工程を調整工程の後に実施することで、二つの分割体110,110間でのボルト穴113,113の位置ずれを防止する。
【0033】
《効果》
本実施形態に係る補強材100は、図4(b)に示すように、軸方向に沿って伸びる分割線で分割された二つの分割体110,110から構成されている。補強材100は、軸方向には分割されていない一体物であるので、軸方向に沿って働く応力(例えば軸方向に沿って湾曲しようとする曲げ応力)に対する抵抗力を発揮することができる。また、図5に示すように、装着時に二つの分割体110,110によって、配管150に対してその径方向に圧縮する力を加えるので、配管150の内圧(配管が膨らもうとする力)に対する抵抗力を発揮することもできる。
【0034】
本実施形態においては、金属製の直管を形成した後、直管に対して曲げ加工を施すことにより、配管の外形状と同様の形状で配管よりも一回り大きい管状部材を作製する。このようにして作製した管状部材を分割して補強材を構成する分割片とする。従って、軸方向に湾曲した半円筒状の各分割片を別個に作製する場合に比べて各分割片の形成及び形状調整が容易である。また、補強材の作製に必要な作業量を効果的に低減することができ、作業時間の短縮及び作製費用の低減を図ることができる。本実施形態によれば、例えば外径が800mm以上といった比較的大径の配管に対する補強材を容易に作成することができる。
【0035】
なお、本実施形態に係る補強材の作製方法は、直線状の配管を補強する補強材に対しても適用することができる。
【0036】
本実施形態においては、フランジを形成してボルトとナットを用いて二つの分割体を一体化するようにしたが、フランジを形成せずに、図3(a)に示す一対の分割片129,129を、ステップS9にて形状調整した後に補強材として使用してもよい。この場合、分割片129,129を配管の補強対象部位に装着した後、補強材と同材質の帯鋼を複数回、分割片129,129の上から螺旋状に巻き付けて、適宜スポット溶接を施すことにより、帯鋼を固定すればよい。また、分割片129,129を配管の補強対象部位に装着した後、二つの分割片129,129を溶接により一体化してもよい。
【0037】
なお、本実施形態に示した各ステップは、適宜入れ替えて実施することも可能である。例えば、ステップS3aにて得られる直管をステップS5で分割して、ステップS7でフランジを形成した後に、分割片を仮接合してステップS3aの曲げ加工を施してもよい。
【0038】
本実施形態においては、配管が円筒形である場合の例を示したが、補強対象となる配管の形状、及び補強材の形状は円筒形に限定されない。
【0039】
〈第二の実施形態〉
本発明の第二の実施形態に係る配管用補強材の作製方法について説明する。第二の実施形態においては、規格品(又は既製品)の管継手から補強材を作製する点に特徴がある。以下、チーズ型の補強材の例により、第一の実施形態と異なる部分を中心に述べる。
【0040】
《補強対象となる配管の形状》
図6は、本発明の第二の実施形態において補強対象となるチーズ型の配管の平面図である。
本実施形態において補強対象となる配管250(補強対象部位)はチーズ型であり、直線的に伸びる主配管251と分岐配管253とが交叉するように、T字型に連結された形状を有する。主配管251と分岐配管253との接続部分には湾曲部255が形成されている。
補強材は配管250に対して少なくともずれない程度に密着する必要があるが、主配管251と分岐配管253との間に湾曲部255を有する配管250に対しては、第一の実施形態のような方法で補強材の元となる管状部材125(図2参照)を作製することは困難である。また、仮に管状部材を一から作製できるとしても作製手順が煩雑であり、多大な費用と時間が必要となる可能性がある。
そこで、本実施形態においては、2つの直管の接続部分に湾曲部を有する規格品(又は既製品)の管継手を利用して、補強材を作製する。
【0041】
《作製手順》
図7は、本発明の第二の実施形態に係る配管用補強材の作製手順を示すフローチャートである。第一の実施形態と同様のステップには、同一のステップ番号を付して、適宜その説明を省略する。
本実施形態における配管用補強材の作製手順は、ステップS1「計測・解析工程」、ステップS3b「管状部材準備工程」、ステップS5「分割工程」、ステップS7「フランジ形成工程」、ステップS10「内面加工工程」、及び、ステップS11「ボルト穴形成工程」を含む。
ステップS1の「計測・解析工程」は、第一の実施形態と同一である。
【0042】
図8図10は、配管用補強材の作製手順の一例を示す模式的斜視図である。
【0043】
図8(a)、(b)は、管状部材準備工程の一例を示している。
ステップS3bの「管状部材準備工程」では、配管の補強対象部位の外形よりも一回り大きい外形を有するチーズ型の規格品の管継手221を準備する(図8(a))。例えば、工業規格で外径が約50mmごとに規定されている場合は、補強対象部位の外径よりも1サイズ大きい管継手221を準備する。ここで準備する管継手221の内径は補強対象部位の外径よりも小さく、且つ、管継手221の肉厚は内面の切削加工後において補強対象部位の補強に必要な肉厚を残せることが必要である。即ち、管継手221の中空部内の大きさは、配管の補強対象部位の外形よりも小さく、配管の補強対象部位収容できないものである。
本工程で準備した管継手221を管状部材として次の「分割工程」で分割してもよいが、補強対象部位の長さにより、必要に応じて管継手221の軸方向の各端部に延長管223を夫々溶接して、図8(b)に示すチーズ型の管状部材225とする。管状部材225は、図6に示す配管250の主配管251を被覆する主部227、及び分岐配管253を被覆する分岐部229を有する。
【0044】
図9(a)は分割工程を示し、(b)はフランジ形成工程を示す図である。
ステップS5の「分割工程」は、第一の実施形態と同様である。図9(a)は管状部材を三分割した例を示している。本図は、図8(b)に示す管状部材225の主部227を分割する分割線231aと、分岐部229を分割する分割線231bとが互いに直交する平面内に配置されている例である。分割工程を経ることにより、軸方向に直線的に伸びる1つの半円筒状の分割片233aと、二つの対称な略L字形状の分割片233b,233bが得られる。
ステップS7のフランジ形成工程は、第一の実施形態と同様である。図9(b)に示すように、本例では、分割片233a,233b,233bの周方向の各端部に金属製の帯板を溶接してフランジ211とする。
【0045】
図10(a)は内面加工工程を示し、(b)はボルト穴形成工程を示す図である。
ステップS10の内面加工工程では、分割片233a,233b,233bの内面を、ステップS1にて計測した配管250(図6参照)の外形状に応じて切削加工する。ここで、切削加工には、例えば多軸マシニングセンタによるフライス加工を用いることができる。このとき、ステップS1にて計測した配管の外形状のデータから切削加工用のCADデータを生成して多軸マシニングセンタに入力することで、配管250の外側に嵌まる内形状を有する分割体210a,210b,210bを作製することが可能である。
【0046】
ステップS11のボルト穴形成工程は、第一の実施形態と同様である。各分割体210a,210b,210bを組み付けて仮固定した状態にて、フランジ211にボルト穴213を形成して、補強材200を得る。
【0047】
《他の分割例》
ステップS5の「分割工程」においては、管状部材を二分割してもよいし、三以上に分割してもよい。図11は、チーズ型の管状部材を二分割した例を示す模式的斜視図である。本図は、図8(b)に示した管状部材225の主部227を分割する分割線231cと分岐部229を分割する分割線231dが同一の平面内に配置されている例である。このように分割することで、平面視概略T字形状の対称な二つの分割片233c,233cを得ることができる。管状部材を二分割した場合も、三分割した場合と同様に以降の工程を実施できるため、各工程の説明を省略する。
管状部材を二分割する場合も三以上に分割する場合も、補強対象部位で特に高い応力を発生する部位が、管状部材の分割線と重ならないようにすることが望ましい。管状部材の分割位置及び分割数については、応力解析の結果と現場の作業環境に応じて最適なものを適宜決定すればよい。
【0048】
《効果》
以上のように本実施形態によれば、規格品(又は既製品)の管継手から補強材を作製するので、補強対象となる配管と同形状の管状部材が作製しにくい形状であっても、容易に補強材を作製することができる。なお、本実施形態は補強対象部位が直管型、エルボ型、又はその他の形状である場合にも適用することができる。
【0049】
〈第三の実施形態〉
本発明の第三の実施形態に係る配管用補強材の作製方法について説明する。
【0050】
図12は、本発明の第三の実施形態において補強対象となる管台型の配管の平面図である。本実施形態において補強対象となる配管350は管台型であり、直線的に伸びる主配管351と分岐配管353とが交叉するように、T字型に連結された形状を有する。図示する配管350は、図6に示したチーズ型の配管250と異なり、主配管351と分岐配管353との接続部分は湾曲した形状ではないため、配管350よりも一回り大きい管状部材を作製することは容易である。そこで、本実施形態においては、第一の実施形態と同様の手順により補強材を作製する。
【0051】
以下、補強材の作製手順について図1を参照しながら、第一の実施形態と異なる部分を中心に述べる。
【0052】
《作製手順》
ステップS1の「計測・解析工程」は、第一の実施形態と同一である。
【0053】
図13(a)、(b)は、管状部材準備工程の一例を示す模式的斜視図である。
ステップS3aの「管状部材準備工程」では、配管350の補強対象部位よりも一回り大きい管台型の管状部材を作製する。
まず、配管350の主配管351の外径と実質的に同一の内径を有すると共に直線的に伸びる第一補強管321と、分岐配管353の外径と実質的に同一の内径を有すると共に直線的に伸びる第二補強管323を準備する(図13(a))。第一補強管321と第二補強管323の作製方法は、第一の実施形態(図2(a)、(b))と同様である。次に、第一補強管321の軸方向中間部に、第二補強管323の内径と略同サイズの丸穴325を貫通形成する。続いて第二補強管323の軸方向の一端部323aを第一補強管321の曲率に合わせた形状に加工する。丸穴325の形成と一端部323aの加工には、プラズマ切断、レーザ切断、工作機械による切断等を利用することができる。
最後に第二補強管323の軸方向の一端部323aを第一補強管321に溶接して、第一補強管321の中空部内と第二補強管323の中空部内とを丸穴325を介して連通させることにより、補強管同士が交叉状態で連結された管台型の管状部材327を得る(図13(b))。
【0054】
ステップS5の「分割工程」は、第一、及び第二の実施形態と同様である。管状部材327の分割位置及び分割数は、第二の実施形態(図9(a)、図11参照)と同様に設定できる。図13(b)には、互いに直交する平面内にある2つの分割線331a,331bによって管状部材327を三分割する例を示している。
ステップS7〜ステップS11も、第一の実施形態と同様である。
【0055】
図14は、第三の実施形態に係る配管用補強材を示す模式的斜視図である。上記各工程を経ることにより、配管350の外側に嵌まる内形状を有する分割体310a,310b,310bから構成される補強材300を得ることができる。なお、符号311はフランジであり、符号313はボルト穴である。
【0056】
《効果》
このように、第一の実施形態に示した補強材の作製方法は、直管同士が交叉状態で連結されることにより、分岐を有する配管を補強する補強材についても同様に適用できる。
なお、第一補強管321の丸穴325と、第二補強管323の軸方向の一端部323aの加工については円筒状の補強管を形成する前の段階で金属製の平板(図2(a)参照)に対して施してもよい。
【0057】
〈第四の実施形態〉
本発明の第四の実施形態に係る配管用補強材の作製方法について説明する。本実施形態に係る補強材は、管状部材の代わりに半管状部材を作製する点に特徴がある。以下、第一〜第三の実施形態と異なる部分を中心に述べる。
【0058】
図15は、本発明の第四の実施形態に係る配管用補強材の作製手順を示すフローチャートである。図16図18は、配管用補強材の作製手順の一例を示す模式的斜視図である。
【0059】
《作製手順》
本実施形態における配管用補強材の作製手順は、ステップS1「計測・解析工程」、ステップS3c「半管状部材準備工程」、ステップS7「フランジ形成工程」、ステップS8「曲げ加工工程」、ステップS9「調整工程」及び、ステップS11「ボルト穴形成工程」を含む。
ステップS1の「計測・解析工程」は、第一の実施形態と同一である。
【0060】
ステップS3cの「半管状部材準備工程」では、二つの直線的な半円筒状の半管状部材を作製する。図16(a)〜(c)は、フランジを有する半管状部材の作製手順の一例を示す図である。図16(a)に示すように、「(配管の外周長/2+フランジ長)×(補強対象部位の軸方向長)」の大きさを有する矩形状の金属製の平板421を2枚用意する。図16(b)に示すように、平板421をロール加工により湾曲させて半円筒状の半管状部材423を得る。
ステップS7の「フランジ形成工程」では、各半円筒状の部材の幅方向両端部をプレス加工等により折り曲げてフランジ411,411を形成する。
【0061】
図17(a)、(b)は、ステップS8の「曲げ加工工程」を示している。
【0062】
ステップS8の「曲げ加工工程」では、直線状の二つの半管状部材423,423を円筒状に組み合わせた後に、配管の曲率に合わせて曲げ加工をする。
ここで補強材を配管に取り付けたときにフランジ411,411の間に5〜10mm程度の隙間を設けるため、曲げ加工を行う前に二つの半管状部材423,423のフランジ411,411の間に、フランジ411,411と同材質の金属製の帯板からなるスペーサSを挿入する(図17(a))。なお、ステップS3cとステップS7の工程では、フランジ411,411の間に設ける隙間を考慮した寸法で加工する。フランジ411,411とスペーサSの適所を溶接することにより、二つの半管状部材423,423を仮固定して、図17(a)に示すような直管状にする。
続いて、直管状に組み合わせられた二つの半管状部材423,423に対して曲げ加工を施すことにより、図17(b)に示すような補強対象部位の曲率に湾曲したエルボ型の分割体410,410を作製する。この工程は、第一の実施形態(図2(c))と同様である。
【0063】
図18(a)は調整工程を示し、(b)はボルト穴形成工程を示す図である。
ステップS9の「調整工程」では、二つの半管状部材423,423の仮固定を外して得られる夫々の分割体410について、第一の実施形態(図4(a))と同様の方法により、内径及び内面形状を調整する。
ステップS11の「ボルト穴形成工程」は、第一の実施形態と同様である。このようにして、図18(b)に示すような補強材400を得る。なお、符号413はボルト穴である。
【0064】
《効果》
以上のように、本実施形態によっても、軸方向において一体的な構成を有する一対の分割体410,410を含む補強材を得ることができる。
なお、フランジを有さない補強材を作製する場合は、ステップS7の「フランジ形成工程」を省略することができる。この場合は、フランジを形成していない半管状部材423を直管状に組み合わせて仮固定した後にステップS8の曲げ加工を実施すればよい。
【0065】
〈本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〉
《第一の実施態様》
本態様に係る補強材の作製方法は、配管150の補強対象部位の外形よりも大きい外形を有する管状部材125を準備する準備工程(ステップS3a)と、管状部材を軸線方向に沿った分割線127により分割して複数の分割片129を形成する分割工程(ステップS5)と、を含むことを特徴とする。
本態様により得られる補強材100は複数の分割体110から構成されている。補強材は、周方向にみれば複数に分割されているが、軸方向においては一体的な構成を有する。従って、本態様により得られる補強材は、配管の軸方向に働く応力を効果的に低減することができる。
【0066】
また、本態様は、配管の一部として使用可能な管状部材を軸線方向に沿って切断することにより複数の分割片を形成し、形成された分割片から補強材を得るものである。このため、分割体を個別に作製する場合に比べて、補強材を補強対象部位に対応させる為の形状調整が容易である。
なお、最終的に得られる補強材は配管の外面に密着する内形状を有することが必要であるが、準備工程において準備する管状部材の内径は、配管の補強対象部位の外径と略同等か、これより小さくてよい。
【0067】
《第二〜第四の実施態様》
第二の態様に係る補強材の作製方法において、準備工程(ステップS3a)は、金属製の平板121を筒状に加工して直管123を得る工程を含むことを特徴とする。
【0068】
第三の態様に係る補強材の作製方法において、準備工程(ステップS3a)は、直管123を補強対象部位の形状に合わせて曲げ加工する工程を含むことを特徴とする。
【0069】
第四の態様に係る補強材の作製方法において、準備工程(ステップS3a)は、複数の直管(第一補強管321、第二補強管323)を接合して直管同士が交叉状態で連結された管状部材327を得る工程を含むことを特徴とする。
【0070】
準備工程は配管の補強対象部位の形状に応じた管状部材を準備する工程である。準備工程においては、管状部材を一から作製してもよい。第二の態様においては金属製の平板から管状部材として直管を得ることができ、第三の態様においては金属製の平板からエルボ型の管状部材を得ることができ、第四の態様においては金属製の平板から複数の管が交叉する管状部材(チーズ型やY字型、或いはその他の形状の管状部材)を得ることができる。上記各管状部材の作製には補強対象部位の形状に応じて種々の方法を採ることができる。
【0071】
《第五の実施態様》
本態様に係る補強材の作製方法において、準備工程(ステップS3b)で準備する管状部材(管継手221)が既製品であり、分割工程(ステップS5)により得られる各分割片233b,233bの内面を補強対象部位の外形状に合わせて加工する工程を含むことを特徴とする。
【0072】
準備工程は配管の補強対象部位の形状に応じた管状部材を準備する工程である。準備工程においては、既製品の管状部材を準備してもよい。
【0073】
上述のように、補強材は配管の補強対象部位の外面に密着する内形状を有することが必要である。しかし、例えば補強対象部位がチーズ型で、互いに交叉する配管の接続部分に湾曲部を有するような場合のように、補強対象部位の外形状に応じた管状部材を作製することが困難な場合がある。このような場合は、管状部材を一から作製するよりも、既製品の管状部材を用意したほうが、補強材の作製に必要な費用と時間を削減できる。
【0074】
《第六の実施態様》
本態様に係る補強材の作製方法は、分割片129,129同士を接合するためのフランジ111を分割線127に沿って形成する工程(ステップS7)を含むことを特徴とする。
フランジを形成することにより、ボルトとナットを用いて分割片同士(又は分割体同士)を一体化すると共に、配管の補強対象部位に固定することができるようになる。
なお、フランジを備えない分割片を補強材として使用することも可能であるので、分割片に対するフランジの形成は任意である。このような場合は、分割片を配管の補強対象部位に嵌合させると共に、溶接や帯鋼を巻き付ける等の方法により配管に固定すればよい。
【0075】
《第七の実施態様》
本態様に係る補強材400の作製方法は、配管150の補強対象部位の外形よりも大きい外形を有する複数の半管状部材423を準備する準備工程(ステップS3c)と、半管状部材同士の周方向端部を対向させて仮固定することにより得られる直管を補強対象部位の形状に合わせて曲げ加工する工程(ステップS8)と、を含むことを特徴とする。
【0076】
準備工程で半管状部材を作製すれば、管状部材を分割する工程を省略できる。しかし、補強対象部位がエルボ型である場合は、補強対象部位の形状に合わせて半管状部材を個別に曲げ加工することは困難である。そこで、本態様においては、半管状部材同士を組み合わせて仮固定することにより得られる直管に対して曲げ加工を施すことにより、分割工程を経ずとも補強材を作製できるようにした。
【0077】
《第八の実施態様》
本態様に係る補強材の作製方法は、半管状部材423同士を接合するためのフランジ411を、半管状部材の周方向端部に軸方向に沿って形成する工程(ステップS7)を含むことを特徴とする。
【0078】
フランジを形成することにより、半管状部材同士を、ボルトとナットを用いて一体化すると共に、配管の補強対象部位に固定することができる。なお、フランジの形成は任意であり、フランジを備えない半管状部材を配管の補強対象部位に嵌合させると共に、溶接や帯鋼を巻き付ける等の方法により配管に対して分割片を固定してもよい。
【符号の説明】
【0079】
100…補強材、110…分割体、111…フランジ、113…ボルト穴、121…平板、121a…辺、123…直管、125…管状部材、127…分割線、129…分割片、150…配管、200…補強材、210a,210b…分割体、211…フランジ、213…ボルト穴、221…管継手、223…延長管、225…管状部材、227…主部、229…分岐部、231a〜231d…分割線、233a〜233c…分割片、250…配管、251…主配管、253…分岐配管、255…湾曲部、300…補強材、310a,310b…分割体、311…フランジ、313…ボルト穴、321…第一補強管、323…第二補強管、323a…一端部、325…丸穴、327…管状部材、331a,331b…分割線、350…配管、351…主配管、353…分岐配管、400…補強材、410…分割体、411…フランジ、413…ボルト穴、421…平板、423…半管状部材
【要約】
建屋の容積を有効に利用することができる物品保管装置を提供する。
物品保管装置は、物品移動装置3によって構成されている。物品移動装置(3)、X方向走行輪(38)と、Y方向走行輪(48)と、走行輪を昇降させる走行輪昇降手段と、物品を昇降させる物品昇降手段とを有している。走行輪昇降手段によってX方向走行輪(38)又はY方向走行輪(48)を降下して走行輪を走行路に接地させ、走行輪を回転させて物品移動装置をX方向又はY方向に走行させることが可能である。物品昇降部材を上昇させて物品支持部材上の物品をすくい上げ、あるいは予め物品昇降部材に物品を載せ置いた状態で物品昇降部材を降下させて物品を物品支持部材上に載せ換えることが可能である。
図1
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