特許第6394863号(P6394863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394863
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】受信機、復調方法、及び復調プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/01 20060101AFI20180913BHJP
   H04L 27/38 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   H04L27/01
   H04L27/38
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-138576(P2014-138576)
(22)【出願日】2014年7月4日
(65)【公開番号】特開2016-19023(P2016-19023A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】奥居 民生
【審査官】 大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−032222(JP,A)
【文献】 特表2007−506310(JP,A)
【文献】 特開2003−218828(JP,A)
【文献】 特開2010−118768(JP,A)
【文献】 特表昭56−501349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/01
H04L 27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力する受信デジタル変調信号の振幅周波数歪と群遅延周波数歪とを等化する複素等化器と、前記複素等化器の出力信号をデジタル復調する復調器と、前記復調器の出力データを誤り訂正復号する誤り訂正復号器と、前記誤り訂正復号器の出力データを同一の誤り訂正符号で誤り訂正符号化する誤り訂正再符号化器と、前記誤り訂正再符号化器の出力データをデジタル変調する再変調器と、前記再変調器の出力信号をフーリエ変換する第1のフーリエ変換器と、前記複素等化器の出力信号をフーリエ変換する第2のフーリエ変換器と、前記第1のフーリエ変換器の出力信号と前記第2のフーリエ変換器の出力信号とを複素比較してそれらの差分を複素周波数歪として出力する複素比較器と、前記複素比較器から出力される複素周波数歪データを複数回読み込んで統計処理することによって複素周波数歪データに含まれる雑音成分を軽減する統計処理器と、前記統計処理器から出力される複素周波数歪データと前記複素等化器に設定されている等化パラメータを元にして等化パラメータを計算して前記複素等化器にこの等化パラメータを設定する等化パラメータ計算器を有することを特徴とする受信機。
【請求項2】
前記受信機は、
前記複素等化器が、少なくとも熱雑音成分が含まれた受信デジタル変調信号について振幅周波数歪と群遅延周波数歪とを等化して、前記復調器及び前記第2のフーリエ変換器に出力信号を伝達し、
前記複素比較器が、熱雑音成分が影響されている前記第1のフーリエ変換器及び前記第2のフーリエ変換器の出力信号について、複素比較してそれらの差分を、少なくとも熱雑音成分の影響が低減されている複素周波数歪として出力し、
前記統計処理器が、前記複素比較器から出力される複素周波数歪データを複数回読み込んで統計処理することによって、複素周波数歪データに含まれる熱雑音に起因する雑音成分を低減させることを特徴とする請求項1に記載の受信機。
【請求項3】
複素等化手段によって入力する受信デジタル変調信号の振幅周波数歪と群遅延周波数歪とを等化し、
復調手段によって前記複素等化手段の出力信号をデジタル復調し、
誤り訂正復号手段によって前記復調手段の出力データを誤り訂正復号し、
誤り訂正再符号化手段によって前記誤り訂正復号手段の出力データを同一の誤り訂正符号で誤り訂正符号化し、
再変調手段によって前記誤り訂正再符号化手段の出力データをデジタル変調し、
第1のフーリエ変換手段によって前記再変調手段の出力信号をフーリエ変換し、
第2のフーリエ変換手段によって前記複素等化手段の出力信号をフーリエ変換し、
複素比較手段によって前記第1のフーリエ変換手段の出力信号と前記第2のフーリエ変換手段の出力信号とを複素比較してそれらの差分を複素周波数歪として出力し、
統計処理手段によって前記複素比較手段から出力される複素周波数歪データを複数回読み込んで統計処理することによって複素周波数歪データに含まれる雑音成分を軽減し、
等化パラメータ計算手段によって前記統計処理手段から出力される複素周波数歪データと前記複素等化手段に設定されている等化パラメータを元にして等化パラメータを計算して前記複素等化手段にこの等化パラメータを設定する
ことを特徴とする受信機による復調方法。
【請求項4】
入力する受信デジタル変調信号の振幅周波数歪と群遅延周波数歪とを等化する第1の処理と、前記第1の処理の出力信号をデジタル復調する第2の処理と、前記第2の処理の出力データを誤り訂正復号する第3の処理と、前記第3の処理の出力データを同一の誤り訂正符号で誤り訂正符号化する第4の処理と、前記第4の処理の出力データをデジタル変調する第5の処理と、前記第5の処理の出力信号をフーリエ変換する第6の処理と、前記第1の処理の出力信号をフーリエ変換する第7の処理と、前記第6の処理の出力信号と前記第7の処理の出力信号とを複素比較してそれらの差分を複素周波数歪として出力する第8の処理と、前記第8の処理から出力される複素周波数歪データを複数回読み込んで統計処理することによって複素周波数歪データに含まれる雑音成分を軽減する第9の処理と、前記第9の処理から出力される複素周波数歪データと前記第1の処理の処理用に設定されている等化パラメータを元にして等化パラメータを計算して前記第1の処理の処理用にこの等化パラメータを設定する処理とをプロセッサに実行させることを特徴とする復調プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル変調信号を受信して変調データを復調する技術に関するものであり、特に衛星通信やマイクロ波通信等において、伝送機器や伝送路でのデータ復調品質の改善をするための適応振幅群遅延等化機能付き受信機、復調方法、及び復調プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
データ通信に使用される送信機、中継器、受信機には、データ復調時のビット誤り率発生の原因となる振幅周波数歪および群遅延周波数歪が少なからず存在する。これらの歪みを除去するため、旧来はアナログ回路による等化器(イコライザ)、最近は複素FIRフィルタを用いたデジタル等化器が用いられる。
【0003】
従来、アナログ衛星放送やアナログ衛星通信の変調方式では、中継器のフィルタの振幅歪や群遅延歪などが、通信波の伝送特性に与える影響はさほど大きくなかったため、各歪みに対する補償は実際にはあまり行われていなかった。一方、デジタル衛星放送やデジタル衛星通信における変調方式は、衛星に搭載されている中継器や伝送路等で発生する振幅周波数歪や群遅延周波数歪などの歪みを補償するため、受信機において等化器を利用して歪み特性の補償をしている。
【0004】
データ送受信システムの例として、特許文献1が挙げられる。特許文献1は、誤り訂正符号化された送信データをターボ等化処理によって復号化する送受信システムであって、送信装置における変調方式及び符号化率を選択する送受信システム、移動通信方法を開示する。この送受信システムでは、ターボ等化技術において繰り返し回数が制限されている場合に、その繰り返し回数で送信データの復号化の処理か完了可能な変調方式および符号化率を選択することを可能とする。
【0005】
特許文献2は、OFDM適応等化受信方法及び受信機を開示する。この受信方法では、単数又は複数のアンテナに受信された直交周波数分割多重された信号から現時点以前の符号間干渉成分を取り除く第1適応等化処理と、現時点のキャリア間干渉又は現時点以降の符号間干渉成分を取り除く第2適応等化処理と、前記第1及び第2適応等化処理によって等化された信号を処理する信号検出処理と、誤り訂正復号する誤り訂正復号処理と、前記第1及び第2適応等化処理で用いられるチャネル応答を推定するチャネル推定処理とを実行し、伝送特性の劣化を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−87707号公報
【特許文献2】特開2004−221702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や2に記載の送受信システムでは、歪み特性を事前に把握した上で等化パラメータをあらかじめ決定しておく必要があるため、伝送機器や伝送路等の特性変化に対して柔軟に追従することは難しい。従って、周波数特性の精度の良い等化や歪み補償を行うことは困難であった。
【0008】
伝送機器や伝送路での振幅周波数歪および群遅延周波数歪に対処するための等化器を用いた補償技術では、振幅歪特性および群遅延歪特性を事前に把握した上で等化パラメータをあらかじめ決定しておく必要がある。このため、これらの特性の測定が困難な場合、特性が環境条件によって著しく変化する場合、および機器を頻繁に異なる通信局に移動させる場合などでは、最適な等化パラメータが得られないために適切な等化性能が実現できない課題が存在していた。
【0009】
本発明は、伝送機器や伝送路でのデータ復調品質を改善するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題に鑑み、本発明の一態様は、入力する受信デジタル変調信号の振幅周波数歪と群遅延周波数歪とを等化する複素等化器と、前記複素等化器の出力信号をデジタル復調する復調器と、前記復調器の出力データを誤り訂正復号する誤り訂正復号器と、前記誤り訂正復号器の出力データを同一の誤り訂正符号で誤り訂正符号化する誤り訂正再符号化器と、前記誤り訂正再符号化器の出力データをデジタル変調する再変調器と、前記再変調器の出力信号をフーリエ変換する第1のフーリエ変換器と、前記複素等化器の出力信号をフーリエ変換する第2のフーリエ変換器と、前記第1のフーリエ変換器の出力信号と前記第2のフーリエ変換器の出力信号とを複素比較してそれらの差分を複素周波数歪として出力する複素比較器と、前記複素比較器から出力される複素周波数歪データを複数回読み込んで統計処理することによって複素周波数歪データに含まれる雑音成分を軽減する統計処理器と、前記統計処理器から出力される複素周波数歪データと前記複素等化器に設定されている等化パラメータを元にして等化パラメータを計算して前記複素等化器にこの等化パラメータを設定する等化パラメータ計算器を有する受信機に関する。
【0011】
本発明の別の態様は、複素等化手段によって入力する受信デジタル変調信号の振幅周波数歪と群遅延周波数歪とを等化し、復調手段によって前記複素等化手段の出力信号をデジタル復調し、誤り訂正復号手段によって前記復調手段の出力データを誤り訂正復号し、誤り訂正再符号化手段によって前記誤り訂正復号手段の出力データを同一の誤り訂正符号で誤り訂正符号化し、再変調手段によって前記誤り訂正再符号化手段の出力データをデジタル変調し、第1のフーリエ変換手段によって前記再変調手段の出力信号をフーリエ変換し、第2のフーリエ変換手段によって前記複素等化手段の出力信号をフーリエ変換し、複素比較手段によって前記第1のフーリエ変換手段の出力信号と前記第2のフーリエ変換手段の出力信号とを複素比較してそれらの差分を複素周波数歪として出力し、統計処理手段によって前記複素比較手段から出力される複素周波数歪データを複数回読み込んで統計処理することによって複素周波数歪データに含まれる雑音成分を軽減し、等化パラメータ計算手段によって前記統計処理手段から出力される複素周波数歪データと前記複素等化手段に設定されている等化パラメータを元にして等化パラメータを計算して前記複素等化手段にこの等化パラメータを設定する受信機による復調方法に関する。
【0012】
また、本発明の他の態様は、入力する受信デジタル変調信号の振幅周波数歪と群遅延周波数歪とを等化する第1の処理と、前記第1の処理の出力信号をデジタル復調する第2の処理と、前記第2の処理の出力データを誤り訂正復号する第3の処理と、前記第3の処理の出力データを同一の誤り訂正符号で誤り訂正符号化する第4の処理と、前記第4の処理の出力データをデジタル変調する第5の処理と、前記第5の処理の出力信号をフーリエ変換する第6の処理と、前記第1の処理の出力信号をフーリエ変換する第7の処理と、前記第6の処理の出力信号と前記第7の処理の出力信号とを複素比較してそれらの差分を複素周波数歪として出力する第8の処理と、前記第8の処理から出力される複素周波数歪データを複数回読み込んで統計処理することによって複素周波数歪データに含まれる雑音成分を軽減する第9の処理と、前記第9の処理から出力される複素周波数歪データと前記第1の処理の処理用に設定されている等化パラメータを元にして等化パラメータを計算して前記第1の処理の処理用にこの等化パラメータを設定する処理とをプロセッサに実行させる復調プログラムに関する。
【0013】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様では受信信号を復調し、誤り訂正復号によって得られた復調データを同一の誤り訂正方式によって再符号化および再変調し、この再変調信号と前述の受信信号とをいずれも複素フーリエ変換によりベクトル周波数成分に変換した上で比較することにより、振幅および群遅延の歪量を自動的に算出し、これを補償するための等化パラメータを算出した上でこれを複素等化器に設定することにより、等化パラメータをあらかじめ決定しておく必要のない適応振幅群遅延等化機能付き伝送システムを実現している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、適応歪補償機能の実現が可能となり、データ復調品質の改善を図ることができる。
【0015】
本発明の更なる利点及び実施形態を、記述と図面を用いて下記に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態による受信機の概略構成について説明するための図である。
図2図1に示す受信機の処理を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態による伝送システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態に従う受信機について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、以下に説明する実施例によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。
【0018】
本発明の実施形態について図1から図3を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態による受信機100の一部を構成する改良された等化器の概略構成を示す図である。本受信機100は、周波数特性を最適化させるために伝送路などで劣化した信号の補償に使用するものである。
【0019】
図1に示す受信機100は、受信したデジタル変調信号20を等化する複素等化器1と、等化されたデジタル変調信号20を復調する復調器2と、復調後のデジタル変調信号20の誤り訂正復号する誤り訂正復号器3と、誤り訂正復号器3における誤り訂正符号化方式と同一の内容によって、誤り訂正復号された信号を再符号化する誤り訂正再符号化器4と、復調器2における変調方式と同一の方式によって、再符号化された信号を再変調する再変調器5と、再変調された信号と等化された信号とを複素フーリエ変換する第1のフーリエ変換器6及び第2のフーリエ変換器7と、第1のフーリエ変換器6と第2のフーリエ変換器7との出力を比較しその差分を出力する複素比較器8と、複素比較器8より出力される複素周波数歪情報の統計処理を行う統計処理器9と、入力された複素周波数歪情報と現在設定されている等化パラメータを元にして新たな等化パラメータが算出し、あらためて複素等化器1に設定する等化パラメータ計算器10とを備えている。
【0020】
図3は、データ通信に使用される受信機100、中継器200、送信機300から構成する衛星通信システムの概略構成を説明するための図である。本実施形態による衛星通信システムは、データ通信を送信する放送局などの送信機300が、通信波を変調してアップリンクの周波数に変換した後、増幅器により電力を増幅して衛星などの中継器200に通信波を送出する。送信機300から通信波を受信した中継器200は、通信波の周波数を周波数変換器によりダウンリンクの周波数に変換し、所定の処理を行った通信波を受信局などの受信機100に通信波として送出する。そして、受信機100は中継器200から送出された通信波を受信し、復調信号を出力する。このようなデータ通信方法において発生する振幅周波数歪や群遅延周波数歪などの歪みは、本実施形態による複素等化器1を用いる補償技術により低減可能となる。
【0021】
次に、図1に示す受信機100の一部を構成する等化器などの動作について図2を参照しつつ説明する。図2は、図1に示す構成の動作処理を説明するためのフローチャートである。
【0022】
まず、入力する受信デジタル変調信号20は複素等化器1に入力される(S101)。初期状態において、この複素等化器1には一切の歪補償を行わない、即ち入力信号がそのまま出力されるような等化パラメータが設定される。
【0023】
複素等化器1から出力されるデジタル変調信号は、復調器2において復調され(S103)、さらに誤り訂正復号器3において誤り訂正復号される(S105)。この誤り訂正復号器3の出力データが、本受信機100の復調出力信号21となる。
【0024】
本受信機内ではさらに、誤り訂正復号器3の出力データが同一の誤り訂正符号化方式によって誤り訂正再符号化器4によって再符号化され(S107)、さらに再変調器5において、復調器2における変調方式と同一の方式によって再変調される(S109)。こうして得られた再変調信号22は第1のフーリエ変換器6において複素フーリエ変換される(S111)。
【0025】
一方複素等化器1から出力される受信信号は第2のフーリエ変換器7において複素フーリエ変換される(S113)。これらのふたつのフーリエ変換器、すなわち第1のフーリエ変換器6と第2のフーリエ変換器7の出力は、複素比較器8において比較され、その差分が出力される(S115)。
【0026】
ここにおいて、前述の再変調信号22は以下の特徴を有する。
(1)送信側機器、中継機器を含む信号伝送路において振幅歪や群遅延歪が全く存在せず、なおかつ受信信号に含まれる雑音成分が極めて少ないとき、受信デジタル変調信号20と再変調信号22の複素周波数スペクトラムは同一である。このとき、複素比較器8より出力される複素歪成分は、いずれもゼロとなる。
(2)送信側機器、中継機器を含む信号伝送路において振幅歪や群遅延歪が存在し、または受信信号に雑音成分が含まれることにより復調器2において復調出力にビット誤りが発生した場合でも、誤り訂正復号器3によって誤り訂正されるため、その出力データを再符号化および再変調した再変調信号22には前記ビット誤りによる誤差成分は存在しないか極めて少なくなる。
(3)再変調器5の出力から第1のフーリエ変換器6に至る再変調信号22の伝送路には一切の歪発生原因が存在しない。
【0027】
これらの特徴により、初期状態においては、複素比較器8の出力データは受信デジタル信号20が受けた振幅周波数歪および群遅延周波数歪のみにより構成される複素周波数歪そのものであるということができる。また複素等化器1に既に等化パラメータが設定される場合は、複素比較器8の出力データは経時変化によって発生した複素周波数歪の変化分であるといえる。従って、複素比較器8の出力データとして得られた複素周波数歪情報をもとにして複素等化器1の等化パラメータを算出すれば、常に理想的な歪補償が実現可能である。
【0028】
実際には、入力する受信デジタル変調信号には歪成分の他に熱雑音等に起因する雑音成分が含まれており、この成分による誤補償を低減するための処理が必要である。複素比較器8より出力される複素周波数歪の情報は、変調データにかかわりなく一定であるため、本発明では、この複素周波数歪情報を統計処理器9で統計処理を行うことによって、この雑音成分を低減している(S117)。
【0029】
統計処理器9から出力される、雑音が軽減された複素周波数歪情報は、等化パラメータ計算器10に送られる。ここでは入力された複素周波数歪情報と現在設定されている等化パラメータを元にして新たな等化パラメータが算出され、あらためて複素等化器1に設定される(S119)。
【0030】
このような原理により、本発明の受信機100では受信信号に含まれる振幅周波数歪および群遅延周波数歪を常に補償しながらデータ受信が可能な適応振幅群遅延等化機能を実現している。
【0031】
また、本実施形態による受信機100の変形例として、熱雑音等に起因する雑音成分をさらに低減させるため、雑音成分補償器を備えることも可能である。この場合、複素周波数歪情報を統計処理器9で統計処理を行うことによる雑音成分の低減に加えて、さらなる効果的な雑音成分の除去をすることが可能になる。
【0032】
なお、上述した実施形態に含まれる特徴を用いた補正プログラムも本発明の範疇に含まれる。上述の実施形態において、実施形態の処理は、プログラム、ソフトウェア、又はコンピュータによって実行されることが可能な命令でコード化された、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体によって実行されてもよい。記憶媒体には、光ディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等の可搬型の記録媒体が含まれることはもとより、ネットワークのようにデータを一時的に記録保持するような伝送媒体も含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1 … 複素等化器
2 … 復調器
3 … 誤り訂正復号器
4 … 誤り訂正再符号化器
5 … 再変調器
6 … 第1のフーリエ変換器
7 … 第2のフーリエ変換器
8 … 複素比較器
9 … 統計処理器
10 … 等化パラメータ計算器
20 … 受信デジタル変調信号
21 … 復調出力信号
22 … 再変調信号
図1
図2
図3