(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、第1の実施形態を、
図1ないし
図11を参照して説明する。
【0011】
図1に照明装置10のブロック図を示す。照明装置10は、第1の発光部11、第2の発光部12および制御部13を備えている。
【0012】
第1の発光部11は、
図2に示すように、1/2ビーム角が45度以下となる配光特性を有している。第2の発光部12は、
図3に示すように、第1の発光部11よりも1/2ビーム角が広い角度となる配光特性を有している。なお、1/2ビーム角は、鉛直角0°と比較して光度が1/2となる角度、もしくは、最大光度の鉛直角(光軸)と比較して光度が1/2となる角度である。
【0013】
第1の発光部11と第2の発光部12は、第2の発光部12の全光束に対する第1の発光部11の全光束の比が1以下(第1の発光部11の全光束/第2の発光部12の全光束=1以下)となる関係を有している。好ましくは、第2の発光部12の全光束よりも第1の発光部11の全光束が小さい関係を有している。また、第1の発光部11と第2の発光部12は、第2の発光部12に含まれる単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量に対する第1の発光部11に含まれる単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量の比が1以上(第1の発光部11の全光束/第2の発光部12の全光束=1以上)となる関係を有している。好ましくは、第2の発光部12に含まれる単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量よりも第1の発光部11に含まれる単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量が多い関係を有している。なお、単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は、1lmの分光分布にメラトニン分泌抑制作用関数を掛け合わせて積分し、係数をかけた値である。
【0014】
ここでのメラトニン分泌抑制作用量は、式(1)を用いて算出した値を用いたが、それ以外にも式(2)や既往研究で述べられているモデル式(例えば、参考文献(1)〜(4)のモデル式)を用いても構わない。
【0015】
メラトニン分泌抑制作用量=4557∫P(λ)M(λ)dλ・・・・・・・・・(1)
メラトニン分泌抑制作用量[m‐lx]:メラトニン分泌の作用量を表す指標、P(λ):光源の分光分布[W/m
2]、M(λ):メラトニン分泌の作用曲線
Melanopic照明=1000∫P(λ)M(λ)dλ・・・・・・・・・・(2)
メラトニン分泌抑制作用量[m-lx]:メラトニン分泌の作用量を表す指標、P(λ):光源の分光放射照度[W/m
2/nm]、M(λ):メラトニン分泌の作用曲線
参考文献
(1) Enezi, J.a., Revell, V., Brown, T., Wynne, J., Schlangen, L. and Lucas, R. : A "melanopic" spectral efficiency function predicts the sensitivity of melanopsin photoreceptors to polychromatic lights, J. Biol. Rhythms, 26-4, pp.314-323(2011)
(2) DIN SPEC 5031-100:Optical radiation physics and illuminating engineering - Part 100 : Non-visual effects of ocular light on human beings - Quantities, symbols and action spectra(2011)
(3) Rea, M.S., Figueiro, M.G., Bierman, A. and Bullough, J.D. : Circadian Light, J. Circadian Rhythms, 8-1, 2(2010).
(4) 高橋良香,勝浦哲夫,下村義弘,岩永公一:光曝露によるメラトニン分泌抑制率の推定,照学誌,94-2,pp.124-134(2010).
【0016】
制御部13は、第1の発光部11および第2の発光部12に電力を供給し、第1の発光部11および第2の発光部12のそれぞれの点灯状態を制御する。例えば、スケジュールに基づいて、時間帯毎に第1の発光部11および第2の発光部12の光量、分光分布、配光を制御する。制御部13は、このような制御を行うために、光量、分光分布、配光およびスケジュールを含む各情報を記憶する情報記憶部14を備えている。
【0017】
次に、
図4に照明装置10の斜視図、
図5に照明装置10の側面図をそれぞれ示す。
【0018】
照明装置10は、例えば天井に設置される照明器具である。照明装置10は、器具本体17を有している。器具本体17の下面中央に第2の発光部12が配設され、器具本体17の下面両側であって第2の発光部12の両側に第1の発光部11がそれぞれ配設されている。第2の発光部12は鉛直方向に対して直交する水平面に形成され、第1の発光部11は第2の発光部12を中心として外側方へ向けて傾斜する傾斜面に形成されている。器具本体17の上面に制御部13が設置されている。
【0019】
第1の発光部11は、鉛直方向である鉛直角0°に対して異なる鉛直角(例えば鉛直角45°よりも大きい鉛直角)に光軸11aがあり、1/2ビーム角が45度以下の配光特性を有している。第2の発光部12は、鉛直方向である鉛直角0°に光軸12aがあり、第1の発光部11よりも1/2ビーム角が広い配光特性を有している。ここでの光軸11aと光軸12aとのなす角は60度となる。
【0020】
第1の発光部11および第2の発光部12をこのような関係とすることにより、第1の発光部11および第2の発光部12の点灯状態によって、配光を広くしたり、狭くし、目に入る光量および分光分布を制御することができる。
【0021】
第1の発光部11および第2の発光部12は、それぞれ光軸11a,12aを通る面上で、光軸11a,12aに対して対称となる配光となっている。なお、各発光部11,12は、光軸11a,12aを通る面上で、光軸11a,12aに対して非対称となる配光であってもよい。例えば、第1の発光部11の場合、光軸11aに対して天井側への配光が広がるようにしてもよい。
【0022】
各発光部11,12は、光量、分光分布および配光を制御可能であれば、どのような光源を用いてもよい。例えば、光源として、LEDや有機EL等の発光素子や、蛍光ランプやハロゲンランプ等のランプを用いてもよい。各光源における光色実現方法は、青色光源+蛍光体、青色光源+蛍光体+赤光源、青色光源+蛍光体+緑光源、青色光源+蛍光体+青光源、赤光源+緑光源+青光源、紫外線(近紫外線も含む)+蛍光体、2種類以上の白色光源+赤光源、2種類以上の白色光源+緑光源、2種類以上の白色光源+青光源、2種類以上の白色光源+赤光源+緑光源、2種類以上の白色光源+赤光源+青光源、2種類以上の白色光源+緑光源+青光源、2種類以上の白色光源+赤光源+緑光源+青光源、熱放射等がある。
【0023】
そして、照明装置10は、視対象の視認性と生体リズムを整えるのに好ましい快適な照明環境の実現を可能としている。
【0024】
視認性については、一般的に、照度が高い視対象の視認性は高く、また、相関色温度が高い方が視対象の視認性は高いといわれている。そのほか、視対象以外の部分から目に入る光の量を減らすことで、視対象の視認性を向上させることができるという知見もある。この知見は、
図6に示すように、例えばAの視対象を見る目に、視対象以外から目に入る光の量が多いと(
図6(a)よりも
図6(b)の方が視対象以外から目に入る光の量が多い)、その光が眼内で大きな散乱を起こることが原因といわれている。
【0025】
生体リズムついては、目に入る光の影響を受ける。ここで述べる生体リズムとは、メラトニン分泌のリズムのことを意味する。メラトニンとは、睡眠の質に影響を与えるホルモンである。メラトニンは、目から入る光によって分泌が抑制され、
図7に示すように、特に青色成分の光によって分泌が抑制される。
図8に示すように、メラトニンは、一般的に、朝は分泌されず、夜間に多く分泌される。そのため、朝は分泌されていない状態が望ましく、夜は分泌されている状態が望ましい。しかし、朝に明るい光やメラトニン分泌を抑制する波長成分を含んでいる光をあまり浴びなかったり、夜間に明るい光もしくはメラトニン分泌を抑制する波長成分を含んでいる光を浴びたりすると、メラトニンの分泌が望ましい状態にならないため、良好な睡眠が得られず、その結果、日中での活力ある行動がしにくくなることがある。つまり、生体リズムに好ましい光環境にするには一日を通して目に入る光の量と質を考えなければならない。
【0027】
照明装置10は、第1の発光部11の調光率と第2の発光部12の調光率とを任意に調整することができる。例えば、調光例1〜4を次に示す。
【0028】
調光例1では、第1の発光部11および第2の発光部12を共に80%調光とする。この場合、配光が広く、目に入る光が多くなる。
【0029】
調光例2では、第1の発光部11を0%調光、第2の発光部12を80%調光とする。この場合、配光が狭く、目に入る光が少なくなる。
【0030】
調光例3では、一側の第1の発光部11を50%調光、他側の第1の発光部11を30%調光、第2の発光部を80%調光とし、一側と他側とで異なる配光にする。
【0031】
調光例4では、一側の第1の発光部11を50%調光、他側の第1の発光部11を0%調光、第2の発光部を80%調光とし、一側と他側とで異なる配光にする。
【0032】
また、照明装置10は、第1の発光部11の配光を任意に調整することができる。例えば、一側の第1の発光部11は光軸11aを通る面上で光軸11aに対して非対称の配光とし、他側の第1の発光部11は光軸11aを通る面上で光軸11aに対して対称の配光とする。
【0033】
また、照明装置10は、第1の発光部11の相関色温度と第2の発光部12の相関色温度とを任意に調整することができる。例えば、相関色温度例1〜3を次に示す。
【0034】
相関色温度例1では、第1の発光部11および第2の発光部12を共に同じ相関色温度とする。
【0035】
相関色温度例2では、第1の発光部11と第2の発光部12とをそれぞれ異なる相関色温度にする。例えば、第1の発光部11を10000Kまたは5000Kの相関色温度とし、第2の発光部12を4000K程度の相関色温度とする。
【0036】
相関色温度例3では、一側の第1の発光部11と他側の第1の発光部11と第2の発光部12とをそれぞれ異なる相関色温度にする。例えば、一側の第1の発光部11を10000Kの相関色温度とし、他側の第1の発光部11を5000Kの相関色温度とし、第2の発光部12を4000Kの相関色温度とする。
【0037】
次に、照明装置10による具体的な制御例を説明する。
【0038】
一般的な執務環境での水平面照度は750lx一定である(例えば、JIS Z9110参照)。既往研究では、水平面照度が500lx一定でも視作業性には問題ないという報告がある。
【0039】
制御例1を
図9に示す。
図9(a)は時間帯毎の水平面照度を示すグラフ、
図9(b)(c)(d)はそれぞれ時間帯毎の照明装置10の配光を示す模式図である。
【0040】
照明装置10は、各発光部11,12の相関色温度を5000K一定、水平面照度を500lx一定に制御する。この場合、例えば、第1の発光部11の光束は1217lm(608.5×2)、第2の発光部12の光束は2972lm、全光束は4189lmであり、省エネルギー性は750lx一定と比べ33%低減となる。
【0041】
制御例2を
図10に示す。
図10(a)は時間帯毎の水平面照度を示すグラフ、
図10(b)(c)(d)はそれぞれ時間帯毎の照明装置10の配光を示す模式図である。
【0042】
照明装置10は、朝昼の時間帯に各発光部11,12を点灯し、夜の時間帯に第1の発光部11を消灯して第2の発光部12のみ点灯するように配光制御し、各発光部11,12の相関色温度を5000K一定、水平面照度を500lx一定の制御をする。この場合、例えば、朝昼の時間帯は、第1の発光部11の光束は1217lm(608.5×2)、第2の発光部12の光束は2972lm、全光束は4189lmであり、夜の時間帯は、第1の発光部11の光束は0lm、第2の発光部12の光束は3894lm、全光束は3894lmであり、省エネルギー性は750lx一定と比べ平均35%低減となる。
【0043】
この場合、朝昼の時間帯は、配光が広く、目に入る光が多く、また、夜の時間帯は、配光が狭く、目に入る光が少なくなる。
【0044】
一般的に、生体リズムを整える照明は、朝の時間帯は高照度、昼の時間帯は中照度、夜の時間帯は低照度であることが望ましいとされている。この場合、メラトニン分泌抑制作用量を基準とすると、
図10に示した制御例2のように夜の時間帯に配光が狭くなるように配光制御しただけでは、生体リズムが整えられないことがある。
【0045】
そこで、制御例3を
図11に示す。
図11(a)は時間帯毎の水平面照度を示すグラフ、
図11(b)(c)(d)はそれぞれ時間帯毎の照明装置10の配光を示す模式図である。
【0046】
照明装置10は、朝の時間帯に各発光部11,12の相関色温度を10000Kおよび水平面照度を750lxとし、昼の時間帯に各発光部11,12の相関色温度を5000Kおよび水平面照度を500lxとし、夜の時間帯に第2の発光部12の相関色温度を4000Kおよび水平面照度を400lxに制御する。この場合、夜の時間帯に第1の発光部11を消灯して第2の発光部12のみ点灯するように配光制御する。
【0047】
朝の時間帯の各発光部11,12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は7.13、昼の時間帯の各発光部11,12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は5.06、夜の時間帯の第2の発光部12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は4.26となる。
【0048】
このように照明装置10の配光および分光分布を制御することにより、朝昼の時間帯は、メラトニン分泌抑制作用量が多く、目に入る光も多いので覚醒感を与えることができるとともに、視対象の視認性を良好にすることが可能になる。また、夜の時間帯は、メラトニン分泌抑制作用量が少なく、目に入る光を抑えながら、視対象の視認性も良好にすることが可能になる。
【0049】
そのため、生体リズムに好ましい光環境の確保、および視作業環境に求められる視認性の確保等により、快適性を向上させることができる。しかも、このときの省エネルギー性は水平面照度750lx一定と比べ平均28%低減となるので、快適性と省エネルギー性とを両立した照明装置10を得ることができる。
【0050】
なお、上記の各制御例の内容および以下の各制御例の内容は、次の照明設計の計算条件によって算出した結果を元にしている。
【0051】
照明環境の大きさ:幅14.4m、奥行き14.4m、高さ2.8m
照明環境の内装反射率:天井70%、壁50%、床10%
照明装置の台数:24台
照明装置の保守率:1.0
水平面照度の位置:床上0.8m
光源:黒体放射(ここで、黒体放射を光源としたのは、分光分布を求める標準的な計算式があることと、メラトニン分泌抑制作用量は光源の種類によって変わらず相関色温度に依存するという知見があるためである。)
省エネルギー性:光源の発光効率lm/Wは調光や種類によらず全て同じとして算出
【0052】
また、制御例4では、照明装置10は、朝の時間帯の第1の発光部11の相関色温度を10000Kおよび第2の発光部12の相関色温度を5000Kとするとともに水平面照度を750lxとし、昼の時間帯の第2の発光部12の相関色温度を5000Kおよび水平面照度を500lxとし、夜の時間帯の第2の発光部12の相関色温度を4000Kおよび水平面照度を400lxに制御する。この場合、昼夜の時間帯に第1の発光部11を消灯して第2の発光部12のみ点灯するように配光制御する。
【0053】
朝の時間帯の第1の発光部11の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は7.13および第2の発光部12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は5.06、昼の時間帯の第2の発光部12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は5.06、夜の時間帯の第2の発光部12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は4.26となる。
【0054】
この制御例4でも、生体リズムに好ましい光環境の確保、および視作業環境に求められる視認性の確保等により、快適性を向上させることができる。しかも、このときの省エネルギー性は水平面照度750lx一定と比べ平均30%低減となるので、快適性と省エネルギー性とを両立した照明装置10を得ることができる。
【0055】
また、制御例5では、照明装置10は、朝の時間帯の第1の発光部11の相関色温度を10000Kおよび第2の発光部12の相関色温度を4000Kとするとともに水平面照度を750lxとし、昼の時間帯の第1の発光部11の相関色温度を5000Kおよび第2の発光部12の相関色温度を4000Kとするとともに水平面照度を500lxとし、夜の時間帯の第2の発光部12の相関色温度を4000Kおよび水平面照度を400lxに制御する。この場合、夜の時間帯に第1の発光部11を消灯して第2の発光部12のみ点灯するように配光制御する。
【0056】
朝の時間帯の第1の発光部11の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は7.13および第2の発光部12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は4.26、昼の時間帯の第1の発光部11の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は5.06および第2の発光部12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は4.26、夜の時間帯の第2の発光部12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は4.26となる。
【0057】
この制御例5でも、生体リズムに好ましい光環境の確保、および視作業環境に求められる視認性の確保等により、快適性を向上させることができる。しかも、このときの省エネルギー性は水平面照度750lx一定と比べ平均28%低減となるので、快適性と省エネルギー性とを両立した照明装置10を得ることができる。
【0058】
また、制御例6では、照明装置10は、朝の時間帯の各発光部11,12の相関色温度を5000Kおよび水平面照度を750lxとし、昼の時間帯の各発光部11,12の相関色温度を5000Kおよび水平面照度を500lxとし、夜の時間帯の第2の発光部12の相関色温度を3000Kおよび水平面照度を400lxに制御する。この場合、夜の時間帯に第1の発光部11を消灯して第2の発光部12のみ点灯するように配光制御する。
【0059】
朝の時間帯の各発光部11,12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は5.06、昼の時間帯の各発光部11,12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は5.06、夜の時間帯の第2の発光部12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は3.12となる。
【0060】
この制御例6でも、生体リズムに好ましい光環境の確保、および視作業環境に求められる視認性の確保等により、快適性を向上させることができる。しかも、このときの省エネルギー性は水平面照度750lx一定と比べ平均24%低減となるので、快適性と省エネルギー性とを両立した照明装置10を得ることができる。
【0061】
また、制御例7では、照明装置10は、朝の時間帯の各発光部11,12の相関色温度を5000Kおよび水平面照度を750lxとし、昼の時間帯の各発光部11,12の相関色温度を5000Kおよび水平面照度を500lxとし、夜の時間帯の各発光部11,12の相関色温度を3000Kおよび水平面照度を500lxに制御する。
【0062】
朝の時間帯の各発光部11,12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は5.06、昼の時間帯の各発光部11,12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は5.06、夜の時間帯の各発光部11,12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は3.12となる。
【0063】
この制御例7でも、生体リズムに好ましい光環境の確保、および視作業環境に求められる視認性の確保等により、快適性を向上させることができる。しかも、このときの省エネルギー性は水平面照度750lx一定と比べ平均22%低減となるので、快適性と省エネルギー性とを両立した照明装置10を得ることができる。
【0064】
また、制御例8では、照明装置10は、朝の時間帯の第1の発光部11を青色光および第2の発光部12を4000Kとするとともに水平面照度を750lxとし、昼の時間帯の第2の発光部12の相関色温度を4000Kおよび水平面照度を500lxとし、夜の時間帯の第2の発光部12の相関色温度を4000Kおよび水平面照度を400lxに制御する。この場合、昼夜の時間帯に第1の発光部11を消灯して第2の発光部12のみ点灯するように配光制御する。
【0065】
朝の時間帯の第1の発光部11の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は8.68および第2の発光部12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は4.26、昼の時間帯の第2の発光部12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は4.26、夜の時間帯の第2の発光部12の単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量は4.26となる。
【0066】
この制御例8でも、生体リズムに好ましい光環境の確保、および視作業環境に求められる視認性の確保等により、快適性を向上させることができる。しかも、このときの省エネルギー性は水平面照度750lx一定と比べ平均30%低減となるので、快適性と省エネルギー性とを両立した照明装置10を得ることができる。
【0067】
なお、各時間帯の水平面照度および相関色温度の値は各制御例の数値に限らず、別の値や範囲でもよい。基本的には、水平面照度はJIS規格(例えば、JIS Z9110)を参考に値や範囲を決定し、相関色温度はJIS規格(例えば、JISZ8725)を参照に値や範囲を決定するのが望ましい。ただし、年齢による視覚機能低下により、水平面照度が同じでも目に入る光量が年齢によって異なる場合もあるので、状況に応じて水平面照度および相関色温度共にJIS規格の範囲外に設定してもよい。また、制御例では光源を便宜的に黒体放射で計算したが、光源はLED光源や有機EL等の個体照明、蛍光ランプ、ハロゲンランプなどとしてもよい。また、省エネルギー性は同じ発光効率lm/wとして算出したが、異なる発光効率の光源を用いた場合は制御例1に記載した省エネルギー性よりも若干下がる場合がある。また、第1の発光部11の光軸11aと第2の発光部12の光軸12aとのなす角は60度としたが、0度以上180度以下であれば、その他の角度でも構わない。
【0068】
そして、本実施形態の照明装置10によれば、異なる配光の第1の発光部11と第2の発光部12とを用いることで、目の位置や作業面での光量が制御できるため、例えば生体リズムに好ましい光環境の確保および視作業環境に求められる視認性の確保等により、快適性を向上させることができる。
【0069】
第2の発光部12の全光束に対する第1の発光部11の全光束の比が1以下であり、好ましくは第2の発光部12の全光束よりも第1の発光部11の全光束が小さい関係を有することにより、作業面の照度を確保しながら、目に入る光を制御することができる。
【0070】
さらに、異なる配光かつメラトニン分泌抑制作用量の第1の発光部11および第2の発光部12を用いることで、目の位置や作業面での光量および分光分布が制御できるため、例えば生体リズムに好ましい光環境の確保および視作業環境に求められる視認性の確保等により、快適性を向上させることができる。
【0071】
第2の発光部12に含まれる単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量に対する第1の発光部11に含まれる単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量の比が1以上であり、好ましくは第2の発光部12に含まれる単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量よりも第1の発光部11に含まれる単位光束あたりのメラトニン分泌抑制作用量が多い関係を有することにより、作業面の照度を確保しながら、メラトニン分泌抑制作用を制御することができる。
【0072】
また、スケジュールに基づいて、時間帯毎に、目の位置や作業面での光量および分光分布が制御できるため、快適性をより向上させることができるとともに、省エネルギー性を向上できる。
【0073】
また、第1の発光部11の光軸11aと第2の発光部12の光軸12aとを異なる方向に設けることにより、第1の発光部11が狭い配光特性であっても、目に入る光量および分光分布を制御することができる。
【0074】
また、照明装置10は、外部からの情報を取得する機能を有することで、例えば昼光、人の在不在、執務者の年齢などの外部からの情報を考慮した制御ができる。
【0075】
次に、
図12および
図13に第2の実施形態を示す。なお、第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を用い、その構成および作用効果についての説明を省略する。
【0076】
図12に示すように、照明装置10は、外部情報出力部20から情報を受けて第1の発光部11および第2の発光部12を制御する。この外部情報出力部20には、昼光を検知する昼光センサ20a、検知手段としての人体を検知する人感センサ20b、および信号を発信するリモコン20cの少なくともいずれか1つが含まれる。
【0077】
照明装置10は、外部情報出力部20から外部情報を取得する外部情報取得部21を有している。照明装置10の制御部13は、外部情報取得部21によって取得した外部情報に基づいて第1の発光部11および第2の発光部12を制御する。
【0078】
そして、まず、外部情報出力部20が昼光センサ20aである場合について、制御部13による制御内容を説明する。昼光センサ20aは、フォトダイオードや撮像素子センサ等が用いられる。昼光センサ20aを利用した制御とは、昼光に応じて設定した照度や相関色温度を維持するように照明装置10の光出力を制御することである。この制御により、昼光の光量分だけ照明装置10の光量を減光することができるために、設定値を維持した状態で省エネルギーを図ることができる。
【0079】
例えば、
図11に示す制御内容に昼光センサ20aを用いた制御を組み合わせた場合、朝昼平均して水平面照度100lxの昼光が入射すると、照明装置10によって確保する水平面照度は、
図11に示す制御内容に比べて、朝の時間帯で水平面照度を750lxから650lx程度に、昼の時間帯で水平面照度を500lxから400lx程度にそれぞれ下げることができる。そのため、省エネルギー性を平均28%から平均37%に向上させることができる。
【0080】
ここでは、単純に昼光によって水平面照度100lx入射する場合の例を述べたが、昼光は時間帯によって変動するので、昼光センサ(例えば、撮像素子センサ)20aで窓面の輝度を検知し、水平面照度が所定の値になるように照明装置10の光出力を制御してもよい。このときのシステム構成は、
図13のようになり、窓面の輝度は窓面制御部22によって制御される。窓面制御部22には、ブラインドやロールスクリーン、電圧で拡散度を設定できる高分子分散型液晶などを用いる。ちなみに、二面採光の照明空間(窓の大きさが1m
2の場合、1壁面につき10枚横並びに配置。窓の中心は床面から2m)で、窓から水平面照度100lxを得る場合は、窓面の平均輝度を556cd/m
2にする必要がある(窓面がランバーシアン配光の場合)。そのため、昼光センサで(例えば、撮像素子センサ)で窓面の輝度を検知し、窓面の輝度が556cd/m
2になるように窓面制御部22を制御するのがよい。この場合に昼光センサ20aは、窓面の輝度を検知するセンサ(フィードバックの対象は窓面制御部22)と照明空間内の水平面照度を検知するセンサ(フィードバックの対象は照明装置10)の2種類あってもよい。窓面の輝度は高い値にして制御すると昼光利用によって所定の水平面照度のほとんどが得られるので省エネだが、その分窓面をまぶしく感じる。そのため、窓面の輝度は少なくとも10000cd/m
2以下、できれば3000cd/m
2以下になるように窓面制御部22で制御するのが望ましい。また、ここでは日中の制御例を示したが、夜間は窓面制御部22の機能をオフにし(例えば、ブラインドを閉めるなど)、窓面制御部22や壁面の輝度を昼光センサ(例えば、撮像素子センサ)20aで検出することにより、空間が明るく感じるように窓面制御部22や壁面の輝度を照明装置10の光出力で制御するのもよい。
【0081】
続いて、
図12において、外部情報出力部20が人感センサ20bである場合について、制御部13による制御内容を説明する。
【0082】
人感センサ20bは、赤外線センサや撮像素子センサ等が用いられる。人感センサ20bを利用した照明装置10の制御とは、例えば、人の在時は照明装置10の点灯、人の不在時は照明装置10の消灯等、人の在不在によって照明装置10を制御し、省エネルギー効果を高める制御である。さらに、人感センサ20bにより、作業面で作業する人の位置を検知し、人の位置に応じて照明装置10の配光を制御するようにしてもよい。
【0083】
例えば、あるフロアに30名分の座席があったとき、30名全員が座っていたら在席率100%、15名なら在席率50%とした場合、在籍率が下がるほど水平面照度を下げる制御を行うことにより、仮に、朝の在席率90%、昼の在席率80%、夜の在席率50%であれば、
図11に示す制御内容に比べて、省エネルギー性を平均28%から平均37%に向上させることができる。
【0084】
続いて、外部情報出力部20が昼光センサ20aおよび人感センサ20bの両方である場合について、制御部13による制御内容を説明する。昼光センサ20aと人感センサ20bの両方を利用することより、
図11に示す制御内容に比べて、省エネルギー性を28%から45%に向上させることができる。
【0085】
続いて、外部情報出力部20がリモコン20cである場合について、制御部13による制御内容を説明する。リモコン20cは、予め設定している情報を送信または受信する電子機器である。リモコン20cには、赤外線リモコン、パソコン、タブレット、スマートフォン、携帯電話、RFID(ICタグ)等が用いられる。
【0086】
リモコン20cを利用した照明装置10の制御により、作業者にとってより効果的な照明環境の設定を提供することができる。例えば、高齢者の場合は、若齢者よりも、水晶体(眼内にあるレンズ機能をもつ部位)の透過率が低下するため、同じものを見ても暗く感じる。そのため、執務環境に若齢者と高齢者が混在する場合は、状況に応じてリモコン20cにより年齢の情報を送信し、水平面照度と眼前鉛直面照度の設定値を変えることが望ましい。年齢のほかにも、視力、色覚、調節機能等の視覚に関する情報、好み、所属、性別、住所、過去現在の病気・くせ・症状、精神状態、起床・就寝時間等の1日のタイムスケジュール・1週間のタイムスケジュール・1ヶ月のタイムスケジュール・年間のタイムスケジュール、出身、過去の生活場所とその場所の情報、光に対する反応、人種、言語、家族構成、年収、性格、現在の場所・位置等の個人に関する情報等がある。送受信する情報は、それらの単体でも組わせたものでもよい。
【0087】
次に、
図14ないし
図22にそれぞれ第3ないし第11の実施形態を示す。なお、上記各実施形態と同じ構成については同じ符号を用い、その構成および作用効果についての説明を省略する。
【0088】
図14の第3の実施形態では、第2の発光部12が照明装置10の下面中央に配置され、第1の発光部11が第2の発光部12を囲むように照明装置10の下面周辺に配置される。このような第1の発光部11と第2の発光部12との位置関係にすることにより、第1の発光部11および第2の発光部12の点灯状態により、配光を広くしたり、狭くし、目に入る光量および分光分布を制御することができる。
【0089】
図15の第4の実施形態では、第2の発光部12が照明装置10の下面に配置され、第1の発光部11は照明装置10の側面に位置する。第1の発光部11は、スポットライトのような形態となっている。このような第1の発光部11と第2の発光部12との位置関係にすることにより、第1の発光部11および第2の発光部12の点灯状態により、配光を広くしたり、狭くし、目に入る光量および分光分布を制御することができる。
【0090】
図16の第5の実施形態では、照明装置10に対する第1の発光部11と第2の発光部12の取り付け方向が異なり、かつ天井と各発光部11,12の取付面の成す角度が第2の発光部12よりも第1の発光部11の方が大きくなるように設置されている。このような第1の発光部11と第2の発光部12との位置関係にすることにより、第1の発光部11および第2の発光部12の点灯状態により、配光を広くしたり、狭くし、目に入る光量および分光分布を制御することができる。
【0091】
図17の第6の実施形態では、第2の発光部12が照明装置10の下面中央に配置され、第1の発光部11が第2の発光部12の両側であって照明装置10の下面両側に配置されるとともに、両側の第1の発光部11の照射方向が互いに交差するように設置されている。このような第1の発光部11と第2の発光部12との位置関係にすることにより、第1の発光部11および第2の発光部12の点灯状態により、配光を変化させることができる。
【0092】
図18の第7の実施形態では、照明装置10は、照明装置10の下部両側から斜め下方に突出する遮光部としての反射板24を備えている。第2の発光部12が照明装置10の下面に配置され、第1の発光部11が第2の発光部12に対して反対側となる反射板24の上面に配置されている。このような第1の発光部11と第2の発光部12との位置関係にすることにより、第1の発光部11および第2の発光部12の点灯状態により、配光を狭くしたり、広くしたりすることができる。しかも、反射板24によって第1の発光部11からの光と第2の発光部12からの光とを分けることができ、目に入る光量および分光分布を制御することができる。
【0093】
図19の第8の実施形態では、第2の発光部12が照明装置10の下面中央に配置され、第1の発光部11が第2の発光部12の両側に可動部26によって取り付けられている。可動部26は制御部13で制御される。そして、朝昼の時間帯は
図19(a)に示すように両側の第1の発光部11がそれぞれ外側に向く配光が広い形態となり、夜の時間帯は
図19(b)に示すように両側の第1の発光部11が互いに内側に向く配光が狭い形態となる。これにより、配光を広くしたり、狭くし、目に入る光量および分光分布を制御することができる。
【0094】
図20の第9の実施形態では、照明装置は、湾曲方向が反転可能な変形部28を備えている。第2の発光部12が変形部28の下面中央に配置され、第2の発光部12が第1の発光部11の両側であって変形部28の両側に配置されている。変形部28は、制御部13で制御される。そして、朝昼の時間帯は
図20(a)に示すように両側の第1の発光部11がそれぞれ外側に向く配光が広い形態となり、夜の時間帯は
図20(b)に示すように両側の第1の発光部11が互いに内側に向く配光が狭い形態となる。これにより、配光を広くしたり、狭くし、目に入る光量および分光分布を制御することができる。
【0095】
図21の第10の実施形態では、第1の発光部11を上下方向に移動可能に構成する。そして、朝昼の時間帯は第1の発光部11を高い位置に配置し、夜の時間帯は照明装置10を低い位置に移動させるように制御することにより、時間帯に応じて、配光を広くしたり、狭くし、目に入る光量および分光分布を制御することができる。
【0096】
図22の第11の実施形態では、照明装置10を上下方向に移動可能に構成する。例えば、照明装置10を支持する支柱の長さを変えることによって、照明装置10を上下方向に移動させる。そして、朝昼の時間帯は照明装置10を高い位置に配置し、夜の時間帯は照明装置10を低い位置に移動させるように制御することにより、時間帯に応じて、配光を広くしたり、狭くし、目に入る光量および分光分布を制御することができる。
【0097】
次に、
図23および
図24に第12および第13の実施形態を示す。なお、前記各実施形態と同じ構成については同じ符号を用い、その構成および作用効果についての説明を省略する。
【0098】
図23の第12の実施形態に照明制御システム40を示す。照明制御システム40は、複数の照明装置10の制御部13が互いに通信可能に接続されている。
【0099】
そして、状況や場面に応じて、複数の照明装置10が連動し、各照明装置10の制御部13により第1の発光部11および第2の発光部12の点灯状態をきめ細かく制御をすることができる。
【0100】
図24の第13の実施形態では、照明制御システム40は、1つの制御装置43と、この制御装置43に接続されて制御される複数の照明装置10とで構成されている。制御装置43は、照明装置10と同様の制御部13を備えている。
【0101】
そして、状況や場面に応じて、制御装置43の制御部13から複数の照明装置10に指令を与えることにより、各照明装置10の制御部13により第1の発光部11および第2の発光部12の点灯状態をきめ細かく制御をすることができる。
【0102】
なお、照明制御システム40において、制御装置43が制御部13を備える場合には、各照明装置10は制御部13を備えていなくてもよい。
【0103】
また、照明制御システム40において、照明装置10または制御装置43が外部情報出力部20からの情報を取得する外部情報取得部21を備え、外部情報に応じて各照明装置10の制御部13により第1の発光部11および第2の発光部12の点灯状態制御するようにしてもよい。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。