(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両ドアのインナーパネルに取り付けられる樹脂製のベースと、前記ベースに取り付けられるハンドルベースと、前記ハンドルベースに回転可能に取り付けられるハンドルレバーと、前記ベースに設けられて少なくとも前記ハンドルレバーの操作により動作して動力伝達ケーブルを介して前記車両ドアのロック装置に動力を伝達する伝達機構とを備え、
前記ハンドルベースは、前記ハンドルレバーの回転軸方向の一端側に配置される一対の固定部と、前記ハンドルレバーの回転軸方向の他端側に配置される少なくとも1つの固定部とを有し、前記固定部を介して前記ベースに取り付けられ、
前記ベースは、前記ベースを前記インナーパネルに取り付けるための複数の取付部を有し、前記複数の取付部のうちの一つは、前記一対の固定部の間に配置される、ドア開閉装置。
前記一対の固定部は前記ハンドルレバーの回転軸に対して対称な位置に配置され、前記一対の固定部の間に配置される前記取付部は前記一対の固定部それぞれから等距離の位置に配置される
請求項1に記載のドア開閉装置。
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のドア開閉装置と、窓ガラスを昇降させる窓ガラス昇降装置とを備え、前記ベースには、前記窓ガラス昇降装置と前記ドア開閉装置とが配置される、車両ドアモジュール。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜
図10を参照して、ドア開閉装置を備えた車両ドアモジュールについて説明する。以下の説明では、車両ドアモジュールの例として、スライド式の車両ドア(スライドドア)に取り付けられる車両ドアモジュール(以下、「スライドドアモジュール30」という。)を挙げる。
【0021】
図1は、車両1を俯瞰した平面図である。
図1では、ステアリングホイール1aの配置側が車両1の前側を示す。なお、スライドドア10が車両本体2に取り付けられた状態で、車両1の上下方向と一致する方向をスライドドアモジュール30の「上下方向DZ」と規定し、車両1の前後方向と一致する方向をスライドドアモジュール30の「前後方向DY」と規定し、車両1の車幅方向と一致する方向をスライドドアモジュール30の「車幅方向DX」と規定する。
【0022】
スライドドア10は、車両本体2の乗降口3に取り付けられる。
スライドドア10は、乗降口3を閉鎖する全閉位置から、乗降口3を全開する全開位置までの範囲で、車両本体2に敷設されたドアレールに沿って移動する。スライドドア10は、全閉位置から車幅方向DXに移動可能に、かつ全閉位置から外側に移動した状態で前後方向DYに移動可能に、車両本体2に取り付けられている。
【0023】
図2は、スライドドア10の内部構造を示す模式図である。
スライドドア10は、アウターパネル11と、インナーパネル12と、インナーパネル12に取り付けられるスライドドアモジュール30と、窓ガラス4とを備えている。インナーパネル12の内側(車内側)には内装パネルが取り付けられる。
【0024】
インナーパネル12は、アウターパネル11の内側に取り付けられる。インナーパネル12には、スライドドアモジュール30が配置される開口部12aが設けられている。窓ガラス4は、インナーパネル12及びスライドドアモジュール30により構成されるインナー部材と、アウターパネル11との間の空間に収容され得る。
【0025】
スライドドア10には、スライドドア10の前側に配置される第1ロック装置13と、スライドドア10の後側に配置される第2ロック装置14と、スライドドア10の下部に配置される第3ロック装置15とが設けられる。第1〜第3ロック装置13〜15は、アウターパネル11とインナーパネル12との間に配置される。各ロック装置13〜15は、ストライカを挿脱可能な状態(以下、「解放状態」という。)と、ストライカを拘束する状態(以下、「拘束状態」という。)とを有する。
【0026】
第1ロック装置13は、車両本体2の乗降口3の前縁部に設けられたストライカ16a(
図1参照)に係合する。
第2ロック装置14は、車両本体2の乗降口3の後縁部に設けられたストライカ16b(
図1参照)に係合する。
【0027】
第3ロック装置15は、車両本体2の乗降口3の下縁部に設けられたストライカ(図示省略)に係合する。
スライドドア10は、全閉位置に位置するとき、第1及び第2ロック装置13,14に拘束される。また、スライドドア10は、全開位置に位置するとき、第3ロック装置15に拘束される。スライドドア10は、第1及び第2ロック装置13,14または第3ロック装置15により拘束されることによりその移動が制限される。
【0028】
図3を参照して、スライドドアモジュール30について説明する。
スライドドアモジュール30は、樹脂製のベース31と、窓ガラス4を昇降させる窓ガラス昇降装置40と、第1〜第3ロック装置13〜15を操作するドア開閉装置60とを備える。窓ガラス昇降装置40及びドア開閉装置60は、ベース31に取り付けられている。
【0029】
ベース31は樹脂で成形される。例えば、ベース31は、発泡樹脂により形成される。発泡樹脂によれば、発泡しない樹脂に比べて、ベース31の厚みを増すことができ、これによりベース31の強度及び剛性が高まる。
【0030】
ベース31の周縁周辺部には、当該ベース31をインナーパネル12の開口部12aに取り付けるための取付部33が設けられている。取付部33には、ねじ等の締結部材(以下、「ベース締結部材92」という。)が挿通する取付孔33aが設けられている。
【0031】
窓ガラス昇降装置40は、窓ガラス4を牽引する第1及び第2ケーブル41,42と、第1及び第2ケーブル41,42を巻くドラム43と、ドラム43と協働して第1及び第2ケーブル41,42を張るプーリ44と、ドラム43を回転させる窓ガラス昇降用モータ45と、窓ガラス4の下端に取り付けられるキャリア46とを備える。
【0032】
ドラム43及びプーリ44は、ベース31の外面に配置される。窓ガラス昇降用モータ45は、ベース31の内面(車幅方向DXにおける車内側の面。以下、同じ。)に配置される。窓ガラス昇降用モータ45とドラム43とは減速機47を介して接続される。なお、減速機47の出力軸は、ベース31に設けられた貫通孔を挿通して、ドラム43に接続される。
【0033】
第1ケーブル41はプーリ44で折り返されるように張られる。第1ケーブル41の一端はドラム43に、他端はキャリア46に接続される。
第2ケーブル42は、キャリア46に対して第1ケーブル41とは反対方向に延びるように張られる。第2ケーブル42の一端はキャリア46に、他端はドラム43に接続される。
【0034】
ドラム43の回転により第1ケーブル41または第2ケーブル42がドラム43に巻かれると、第1ケーブル41及び第2ケーブル42の移動に伴ってキャリア46が移動する。これにより、窓ガラス4が所定移動範囲内で昇降する。
【0035】
ドア開閉装置60は、インナーハンドル61と、ロッキングアクチュエータ63と、各種の動作に基づいて第1〜第3ロック装置13〜15を動作させる伝達機構65とを備える。スライドドア10の外側に取り付けられるアウターハンドル62(
図2参照)はドア開閉装置60に接続される。インナーパネル12に取り付けられる後述のリリースアクチュエータ64(
図2参照)は、後述の第4動力伝達ケーブル20を介して伝達機構65に接続される。
【0036】
インナーハンドル61は、ハンドルベース61aと、ハンドルベース61aに回転可能に取り付けられるハンドルレバー61bとを備える。ハンドルレバー61b(
図4参照)は、レバー本体部610aと、レバー本体部610aに設けられる把持部610bとを有する。ハンドルベース61aは、ねじ等の締結部材(以下、「ハンドル締結部材91」という。
図10参照。)によりベース31に取り付けられる。
【0037】
レバー本体部610aの両端には軸受部610cが設けられている。軸受部610cは、ハンドルベース61aに設けられる軸部612(
図6参照)に係合する。ハンドルレバー61bの回転軸Cは、車両1の上下方向DZに沿う。把持部610bは、内装パネルから車幅方向DXの内側(座席側)に突出する。
【0038】
第1の所定操作(以下、「閉操作」という。)によりインナーハンドル61が第1方向D1に回転するとき、この回転動作が伝達機構65を介して第3ロック装置15に伝達され、伝達された動力により第3ロック装置15が動作し、これにより、第3ロック装置15が解放状態になる。例えば、スライドドア10が全開位置で第3ロック装置15により拘束されているとき、インナーハンドル61の閉操作によりスライドドア10が移動可能になる。
【0039】
第2の所定操作(以下、「開操作」という。)によりインナーハンドル61が第2方向D2に回転するとき、この回転動作が伝達機構65を介して第1及び第2ロック装置13,14に伝達され、伝達された動力により第1及び第2ロック装置13,14それぞれが動作し、これにより、第1及び第2ロック装置13,14が解放状態になる。例えば、スライドドア10が全閉位置で第1及び第2ロック装置13,14により拘束されているとき、インナーハンドル61の開操作によりスライドドア10が移動可能になる。
【0040】
アウターハンドル62(
図2参照)は、回転可能にアウターパネル11の外面に取り付けられている。アウターハンドル62の回転動作は、レバー及びポールを介して伝達機構65に伝達される。
【0041】
引き操作によりアウターハンドル62が所定方向に回転するとき、この回転動力が第1〜第3ロック装置13〜15に伝達され、伝達された動力により第1〜第3ロック装置13〜15が動作し、これにより、第1〜第3ロック装置13〜15が解放状態になる。例えば、スライドドア10が全閉位置または全開位置で拘束されているとき、アウターハンドル62の引き操作によりスライドドア10が移動可能になる。
【0042】
ロッキングアクチュエータ63は、スライドドア10をドアロック状態にする。ドアロック状態とは、インナーハンドル61の開閉操作及びアウターハンドル62の引き操作によっても、スライドドア10を全閉位置から移動させることができない状態を示す。
【0043】
ロッキングアクチュエータ63は、ロッキングスイッチのロックオン操作に基づいて動作し、インナーハンドル61とアウターハンドル62の回転動作を第1〜第3ロック装置13〜15に伝達させない位置に、後述の第2係合ピン88を移動させる。
【0044】
リリースアクチュエータ64は、第1〜第3ロック装置13〜15の解放状態を所定時間だけ維持する。具体的には、リリースアクチュエータ64は、所定条件が成立するときに動作し、この動作により、第4動力伝達ケーブル20を介して後述の第6レバー86を回転させてかつ第5レバー85を介して第1、第3、第4レバー81,83,84を回転させて、第1〜第3ロック装置13〜15を解除状態に維持する。所定条件とは、例えば、インナーハンドル61の開閉操作、またはアウターハンドル62の引き操作が実行されることである。
【0045】
図4を参照して、ドア開閉装置60の伝達機構65を説明する。
伝達機構65は第1〜第6レバー81〜86と、所定のレバー同士を係合し及びレバー同士の係合を解除する第1〜第3係合ピン87〜89とを備える。第1〜第6レバー81〜86は、スライドドアモジュール30のベース31に固定される支軸80に回転可能に取り付けられている。これら第1〜第6レバー81〜86はばね等により第2回転方向R2(後述の第1回転方向R1と反対回転方向)に付勢されている。
【0046】
第1レバー81は、インナーハンドル61の第1方向D1の回転動作に連動するように第1ポール66を介してインナーハンドル61に接続され、かつ、第3動力伝達ケーブル19を介して第3ロック装置15に接続されている。すなわち、第1レバー81は、インナーハンドル61の第1方向D1の回転動作に対応して第1回転方向R1に回転して、第3ロック装置15を解除状態にする。
【0047】
第2レバー82は、インナーハンドル61の第1方向D1及び第2方向D2の回転動作に連動するように第2ポール67を介してインナーハンドル61に接続され、かつ、第1係合ピン87を介して第3レバー83に連結される。
【0048】
第3レバー83は、第1係合ピン87を介して第2レバー82に連結され、第2係合ピン88を介して第4レバー84に連結される。
第4レバー84は、第2係合ピン88を介して第3レバー83に連結され、かつ第1及び第2動力伝達ケーブル17,18を介して第1ロック装置13及び第2ロック装置14のそれぞれに接続されている。
【0049】
第5レバー85は、アウターハンドル62の回転動作に連動するようにアウターハンドル62に接続され、かつ第3係合ピン89を介して第6レバー86に連結される。また、第5レバー85は、第1回転方向R1に回転するとき第1レバー81及び第3レバー83に係合する構造を有する。すなわち、アウターハンドル62の回転動作により第5レバー85が第1回転方向R1に回転するときは、これに連動して第1レバー81及び第3レバー83が第1回転方向R1に回転する。
【0050】
第6レバー86は、リリースアクチュエータ64に第4動力伝達ケーブル20を介して接続され、かつ第3係合ピン89を介して第5レバー85に連結される。
すなわち、リリースアクチュエータ64により第6レバー86が回転するときは、これに連動して第5レバー85が回転する。
【0051】
第1係合ピン87は、チャイルドロックスイッチの所定の操作(チャイルドロック操作)に基づいて移動して、第2レバー82と第3レバー83とを互いに連結状態または非連結状態にする。なお、連結状態とは、第2レバー82と第3レバー83とが連動する状態を示し、非連結状態とは、第2レバー82と第3レバー83とが互いに独立して回転する状態を示す。以下の説明においても同様である。
【0052】
第2係合ピン88は、ロッキングスイッチのロックオン操作またはロックオフ操作に基づくロッキングアクチュエータ63の動作により移動して、第3レバー83と第4レバー84とを連結状態または非連結状態にする。
【0053】
第3係合ピン89は、第5レバー85と第6レバー86とを互いに連結する位置に配置される。そして、所定操作に基づいて、第3係合ピン89は、第5レバー85と第6レバー86とを連結しない位置(以下、「非係合位置」という。)に移動する。なお、第3係合ピン89を非係合位置に移動させるために所定操作が行われるのは、例えば、リリースアクチュエータ64が動作しなくなるとき等、第5レバー85と第6レバー86とを独立させて回転動作させる必要が生じた場合である。
【0054】
伝達機構65は、次のように動作する。
インナーハンドル61が第1方向D1に回転するとき、第1レバー81が第1回転方向R1に回転する。第1レバー81の回転により、第1レバー81の動力が第3動力伝達ケーブル19を介して第3ロック装置15に伝達されて、第3ロック装置15が動作し、第3ロック装置15が解除状態になる。すなわち、インナーハンドル61を第1方向D1に回転させることにより、全開位置で第3ロック装置15により拘束されているスライドドア10が移動可能になる。
【0055】
インナーハンドル61が第2方向D2に回転するとき、第2レバー82が第1回転方向R1に回転する。第1係合ピン87及び第2係合ピン88を介して第2レバー82と第3レバー83と第4レバー84とが連結されている場合は、第2レバー82の回転に連動して第4レバー84が回転する。第4レバー84の動力は第1及び第2動力伝達ケーブル17,18を介して第1及び第2ロック装置13,14に伝達されて、第1及び第2ロック装置13,14が解除状態になる。すなわち、インナーハンドル61を第2方向D2に回転させることにより、全閉位置で第1及び第2ロック装置13,14により拘束されているスライドドア10が移動可能になる。
【0056】
第2レバー82と第3レバー83とが非連結であること、及び第3レバー83と第4レバー84とが非連結であることのうちの少なくとも一方が成立する場合は、第2レバー82の回転動作が第4レバー84に伝達されないため、インナーハンドル61が第2方向D2に回転するときでも、第1及び第2ロック装置13,14が動作しない。このため、この場合は、スライドドア10が全閉位置にあるときにインナーハンドル61を第2方向D2に回転させたとしても、第1及び第2ロック装置13,14によるスライドドア10の拘束状態が維持される。
【0057】
アウターハンドル62が回転するとき、第5レバー85が第1回転方向R1に回転する。第5レバー85が第1回転方向R1に回転するときは第5レバー85が第1レバー81及び第3レバー83に係合するため、第5レバー85に連動して第1レバー81及び第3レバー83が回転する。第3レバー83と第4レバー84とが連結されているときは、第5レバー85に連動して第1レバー81及び第4レバー84が動作する。第1レバー81の動作は、第3動力伝達ケーブル19を介して第3ロック装置15に伝達されて、第3ロック装置15が解放状態になる。第4レバー84の動作は、第1及び第2動力伝達ケーブル17,18を介して第1及び第2ロック装置13,14に伝達されるため、第1及び第2ロック装置13,14が解放状態になる。すなわち、第1〜第3ロック装置13〜15が解放状態になり、全閉位置または全開位置で拘束されているスライドドア10が移動可能になる。第3レバー83と第4レバー84とが連結されていないときは第4レバー84が回転動作しないため、スライドドア10が全閉位置にあるときにアウターハンドル62を回転させたとしても第1及び第2ロック装置13,14によるスライドドア10の拘束状態が維持される。
【0058】
また、インナーハンドル61またはアウターハンドル62が回転動作するときは、リリースアクチュエータ64が動作して、第6レバー86が回転する。第6レバー86の回転に伴って第5レバー85が第1回転方向R1に回転するため、これに連動して、第1〜第3ロック装置13〜15の解除状態が所定時間だけ維持される。これにより、第1〜第3ロック装置13〜15が所定時間にわたって解放状態になるため、全閉位置または全開位置で拘束されている状態からのスライドドア10の移動が円滑になる。
【0059】
図5を参照して、ベース31においてインナーハンドル61が配置される部分(以下、「ハンドル配置部31u」という。)の構造について説明する。
ハンドル配置部31uは、ベース31の上縁前部及び前縁上部を含む。ベース31の上縁前部及び前縁上部は、その周辺部よりも車幅方向DX内側に突出する。ベース31の上縁前部と前縁上部とにより構成される空間Sには、インナーハンドル61の一部分(すなわちハンドルベース61aの背面部)が収容される。
【0060】
ハンドル配置部31uには、ハンドルベース61aを固定するための係合部が4箇所に設けられている。なお、以下、これら係合部をそれぞれ第1〜第4係合部311〜314という。
【0061】
第1及び第2係合部311,312は、ハンドル配置部31uの上部(すなわちベース31の上縁部)に前後方向DYに間隔をあけて設けられている。なお、この説明では、第1係合部311が前側、第2係合部312が後側に配置されている。第3係合部313は、ハンドル配置部31uの下方前部(すなわちベース31の前縁部)に設けられている。第4係合部314は、ハンドル配置部31uの後部に設けられている。
【0062】
図6〜
図8を参照して、ハンドルベース61aの構造について説明する。
ハンドルベース61aは、本体部611と、本体部611に設けられてハンドルレバー61bを回転可能に支持する一対の軸部612とを有する。本体部611には、ハンドルレバー61bのレバー本体部610aを収容する収容凹部613が設けられている。収容凹部613には、ハンドルレバー61bに取り付けられる前述の第1及び第2ポール66,67が挿通する貫通孔613a(
図7(a)参照)が設けられている。また、軸部612は、収容凹部613の上側及び下側それぞれに設けられる。ハンドルベース61aは、収容凹部613の長手方向が車両1の上下方向DZに沿うように、ベース31に取り付けられる。
【0063】
本体部611には、ハンドルベース61aをベース31の固定するための固定部615〜618(以下、第1〜第4固定部615〜618という。)が設けられている。固定部615〜618には、ハンドル締結部材91が挿通する挿通孔619が設けられている。
【0064】
第1〜第4固定部615〜618は、ハンドルベース61aがハンドル配置部31uに配置されたときに係合部311〜314に対応するように、本体部611に設けられている。第1及び第2固定部615,616は、ハンドルレバー61bの回転軸C方向の一端側に配置される。第3固定部617は、ハンドルレバー61bの回転軸C方向の他端側に配置される。第4固定部618は、ハンドルレバー61bの後方側に配置される。
【0065】
例えば、本体部611の上部には、前後方向DYに並びかつ上下方向DZに突出するように第1及び第2固定部615,616が設けられる。本実施形態では、第1固定部615が第2固定部616の前側に配置されている。また、本体部611の前縁部には、前方に突出するように第3固定部617が設けられている。さらに、本体部611の下部の後縁部には、後方にかつ車幅方向DX外側に向かって突出する延長部611x(
図7(b)参照)を介して第4固定部618が設けられている。
【0066】
なお、第1固定部615は第1係合部311に、第2固定部616は第2係合部312に、第3固定部617は第3係合部313に、第4固定部618は第4係合部314に、ハンドル締結部材91によりそれぞれ締結される。
【0067】
また、第1固定部615と第2固定部616とは、ハンドルレバー61bの回転軸Cを含みかつ第1固定部615と第2固定部616との並び方向に沿う直線に垂直な面に対して対称の位置に配置される。すなわち、この面から、第1固定部615と第2固定部616とはそれぞれ反対方向に等距離の位置にある。
【0068】
図8(a)は
図6のA−A線に沿う断面図であり、
図8(b)は
図6のB−B線に沿う断面図である。
図8(a)に示されるように、第1固定部615には、第1係合部311が嵌る嵌合凹部620が設けられている。
【0069】
嵌合凹部620は、第1固定部615の当接面(ベース31の第1係合部311と接触する面)を底面621とし、この底面621を囲む周壁622を有する。周壁622は、挿通孔619の軸を中心軸とする規定半径の内周面623を有する。
【0070】
一方、ベース31において、第1固定部615に対応する第1係合部311は、円柱状に形成される。第1係合部311は、係合孔320の軸を中心軸とする規定半径の側周面321を有する。そして、ベース31にハンドルベース61aがハンドル締結部材91により締結された状態のとき、嵌合凹部620の内周面623と、第1係合部311の側周面321とが互いに接触する。
【0071】
このような第1固定部615の嵌合凹部620と第1係合部311との嵌合構造は、次の作用を有する。
第1固定部615の嵌合凹部620と第1係合部311との嵌合により、挿通孔619の軸と係合孔320の軸とが一致する。すなわち、嵌合凹部620は、ベース31に対してハンドルベース61aを位置決めする位置決め手段として機能する。
【0072】
位置決め手段は、ベース31とハンドルベース61aとがハンドル締結部材91により締結される締結部位(第1固定部615及び第1係合部311)から離れた場所に設けられるのではなく、当該締結部位に設けられている。締結部位から離れた場所に位置決め手段が設けられた場合には、位置決め手段と締結部位との間の寸法に誤差(ベース31成形の製造ばらつき誤差)が生じるため第1固定部615と第1係合部311との位置ずれには当該誤差が含まれるようになる。これに対して、上記構成によれば、このような誤差が小さくなるため、第1固定部615と第1係合部311との位置ずれが小さくなる。これにより、ベース31に対するハンドルベース61aの位置ずれが小さくなる。
【0073】
また、
図8(b)に示されるように、ハンドルベース61aにおいて第3固定部617には、ハンドルベース61aを締結する際に生じる回転を止めるための、回転止め630が設けられている。すなわち、ハンドルレバー61bの回転軸C方向の一端側の第1固定部615に嵌合凹部620が設けられ、ハンドルレバー61bの回転軸C方向の他端側の第3固定部617に回転止め630が設けられる。この回転止め630は、実質的に上記の嵌合凹部620と同じ構造を有する。回転止め630には、第3固定部617に対応する第3係合部313が嵌合する。
【0074】
図9及び
図10を参照して、インナーパネル12に対するベース31の締結部位とベース31に対するハンドルベース61aの締結部位との配置関係について説明する。
ベース31は、インナーパネル12の開口部12aにベース締結部材92により締結される。これら取付部33のうちの一つは、ベース31における上方前部に配置される。そして、この取付部33は、ハンドルベース61aの上部に配置された第1及び第2固定部615,616の間に配置される。
【0075】
このような配置関係(締結部位についての配置関係)を有するスライドドアモジュール30の作用を説明する。
図9には、参考に係るスライドドアモジュール30のベース31に加わる力が示され、
図10には、実施形態に係るスライドドアモジュール30のベース31に加わる力が示されている。なお、
図9及び
図10では、スライドドアモジュール30においてベース31に加わる力が矢印で示される。参考に係るスライドドアモジュール30では、ベース31の取付部33がハンドルベース61aの第1及び第2固定部615,616の間に配置されるのではなく、第1及び第2固定部615,616の並び方向の外側に配置される。
【0076】
スライドドアモジュール30において、インナーハンドル61が操作されると、次のようにベース31に様々な方向の力が加わる。すなわち、ハンドルレバー61bが回転すると、第1ポール66または第2ポール67を介して力が伝達機構65の第1レバー81または第2レバー82に伝達される。ハンドルレバー61bが回転すると、軸受部610cと軸部612との間のフリクション(摩擦)により動力の一部がハンドルベース61aを介してベース31に力が加えられる。また、第1レバー81または第2レバー82が回転すると、第1及び第2レバー81,82と伝達機構65の支軸80との間のフリクションにより支軸80の基部を介してベース31に動力の一部が伝達される。更に、上述のように伝達機構65には、ロッキングアクチュエータ63の動作、リリースアクチュエータ64の動作、インナーハンドル61の操作、アウターハンドル62の操作により、第1〜第6レバー81〜86が回転するため、支軸80には様々な方向の力が加わる。このようなことから、ベース31には、特に、ベース31においてドア開閉装置60が設けられる部分には、様々な方向の力が加わる。このため、ベース31は様々な態様で変形する。このような変形が大きいと、ベース31が劣化するおそれがある。
【0077】
例えば、
図9に示される参考例では、ベース31が大きく変形するおそれがある。この参考例では、ベース31の取付部33がハンドルベース61aの第1及び第2固定部615,616の間に配置されるのではなく第1及び第2固定部615,616の並び方向の外側に配置される。この場合、インナーハンドル61の動作に基づく力(各部位で生じるフリクションを介して伝達される力。以下、「伝播応力」という。)がベース31の広い範囲にわたって伝播し、ベース31が大きく変形するおそれがある。
【0078】
これに対して、
図10に示すように、本実施形態の例では、ベース31の取付部33がハンドルベース61aの第1及び第2固定部615,616の間に配置される。この場合、インナーハンドル61の動作に基づく力(伝播応力)が、効率よくインナーパネル12側に伝達されるため、参考例に比べてベース31に伝播する力が小さくなる。このような作用により、ベース31の変形が抑制される。
【0079】
なお、本実施形態に示される第1及び第2固定部615,616と取付部33との配置関係では、参考例に示される第1及び第2固定部615,616と取付部33の配置関係に比べて、インナーハンドル61の動作に基づく力(伝播応力)が効率よくインナーパネル12に伝達されるようになることは、次に示すように明らかである。すなわち、参考例において、第1固定部615と取付部33との間の距離をDaとし、第1固定部615と第2固定部616との間の距離をDxとすると、第1固定部615と取付部33との間の離間距離Daと第2固定部616と取付部33との間の離間距離Da+Dxとの平均値(平均離間距離)は、計算により、Da+Dx/2となる。
【0080】
これに対して、本実施形態において、第1固定部615と取付部33との間の距離をDbとし、第1固定部615と第2固定部616との間の距離をDxとすると、第1固定部615と取付部33との間の離間距離Dbと第2固定部616と取付部33との間の離間距離Dx−Dbとの平均値(平均離間距離)は、計算により、Dx/2となる。すなわち、本実施形態に係る平均離間距離が、参考例に係る平均離間距離よりも小さい。このため、本実施形態に示される第1及び第2固定部615,616と取付部33との配置関係によれば、参考例に示される第1及び第2固定部615,616と取付部33の配置関係に比べて、インナーハンドル61の動作に基づく力(伝播応力)をインナーパネル12に効率よく伝達させることができるようになる。
【0081】
この取付部33は、更に次のように配置されることが好ましい。
すなわち、第1及び第2固定部615,616の間に配置される取付部33は、好ましくは、第1及び第2固定部615,616の両者から等距離の位置に配置される。すなわち、取付部33は、第1及び第2固定部615,616の中間位置に配置される。そして、第1及び第2固定部615,616と取付部33とは一直線上に配置される。
【0082】
また、更に好ましくは、この取付部33の中心点は、ハンドルレバー61bの回転軸Cを含みかつ一対の固定部(第1及び第2固定部615,616)の並び方向に沿う直線に垂直な面と当該直線との交点に、またはその交点付近に配置される。
【0083】
次に、本実施形態に係るスライドドアモジュール30の効果を説明する。
(1)本実施形態では、ハンドルベース61aは、ハンドルレバー61bの回転軸C方向の一端側に配置される一対の固定部(第1及び第2固定部615,616)と、ハンドルレバー61bの回転軸C方向の他端側に配置される2個の固定部(第3及び第4固定部617,618)とを有する。そして、ハンドルベース61aは第1〜第4固定部615〜618を介してベース31に取り付けられる。ベース31の取付部33のうちの一つは、ハンドルベース61aの第1及び第2固定部615,616の間に配置される。
【0084】
上記構成では、ハンドルレバー61bの操作に起因してベース31が変形することを考慮し、ベース31の取付部33のうちの一つが、ハンドルベース61aにある一対の固定部(第1及び第2固定部615,616)の間に配置される。これにより、ベース31にある取付部33が一対の固定部(第1及び第2固定部615,616)の外側に配置される場合に比べて、ベース31の取付部33とハンドルレバー61bの固定部との間の離間距離(平均離間距離)を短くすることができる。このため、インナーハンドル61の動作に基づく力(伝播応力)を効率よくインナーパネル12に伝達させてベース31に伝達する力を抑制することができるようになるため、ベース31の変形が抑制される。
【0085】
従って、上記構成によれば、従来の鉄製のベース31を備えたドア開閉装置60に比べて軽量にすることができ、かつ樹脂製にすることにより懸念されるベース31の変形を抑制することができる。
【0086】
(2)本実施形態では、一対の固定部(第1及び第2固定部615,616)がハンドルレバー61bの回転軸Cに対して対称な位置に配置される。そして、一対の固定部(第1及び第2固定部615,616)の間に配置される取付部33がこれらの固定部それぞれから等距離の位置に配置される。
【0087】
この構成によれば、一対の固定部(第1及び第2固定部615,616)の中間位置に取付部33が配置されるようになるため、一対の固定部(第1及び第2固定部615,616)の中間位置からずれた位置に取付部33が配置される場合に比べて、ハンドルレバー61bの回転方向それぞれにおけるベース31の変形を同程度にすることができる。このため、ベース31の歪な変形を抑制することができる。
【0088】
(3)本実施形態では、一対の固定部(第1及び第2固定部615,616)の間に配置される取付部33の中心点が、ハンドルレバー61bの回転軸Cを含みかつ一対の固定部(第1及び第2固定部615,616)の並び方向に沿う直線に垂直な面と当該直線との交点に、またはその交点付近に配置される。すなわち、ベース31の締結部位である取付部33に対応してハンドルレバー61bが位置決めされるようになる。このため、インナーパネル12に対するハンドルレバー61bの位置ばらつきが小さくなる。
【0089】
また、第1及び第2固定部615,616と取付部33とが一直線上に配置される構成によって、インナーパネル12に対してハンドルベース61aが位置決めされやすくなる。このため、インナーハンドル61の位置ばらつきが小さくなる。また、これによって、内装パネルとインナーハンドル61とのずれが抑制されるため、車両内装の意匠が向上する。
【0090】
(4)本実施形態では、ハンドルベース61aの固定部615〜618は、ハンドル締結部材91が挿通する挿通孔619を有する。ベース31は、ハンドル締結部材91が係合する係合孔320が設けられる係合部311〜314を有する。そして、第1固定部615には第1係合部311が嵌る嵌合凹部620が設けられている。
【0091】
この構成によれば、ハンドルベース61aの第1固定部615とベース31の第1係合部311とが嵌合凹部620を介して互いに位置決めされる。そして、このような位置決め手段としての嵌合凹部620が、第1固定部615に設けられているため第1固定部615と第1係合部311との位置ずれを小さくすることができ、これによって、内装パネルに対するインナーハンドル61の位置ずれが小さくなる。
【0092】
(5)本実施形態では、嵌合凹部620は、挿通孔619の軸を中心軸とする規定半径の内周面623をする。第1係合部311は、挿通孔619の軸を中心軸とする規定半径の側周面321を有する。そして、ベース31にハンドルベース61aがハンドル締結部材91により締結される状態のとき、嵌合凹部620の内周面623と、第1係合部311の側周面321とが互いに接触する。
【0093】
上記構成では、締結部位(第1固定部615)と位置決めの手段(嵌合凹部620)とが同じところに配置されている。
締結部位と位置決めの手段とが互いに離れたところに配置されている構造では、締結部位と位置決めの手段との間の離間距離に応じた寸法誤差が生じるが、上記構成では、締結部位と位置決めの手段との間の離間距離がほぼ「0」であるため、当該寸法誤差が僅かになる。このため、ベース31に対するハンドルベース61aの位置ずれを抑制することができる。
【0094】
(6)本実施形態では、ハンドルレバー61bの回転軸C方向の一端側の第1固定部615に嵌合凹部620が設けられ、ハンドルレバー61bの回転軸C方向の他端側の第3固定部617に回転止め630が設けられている。この構成によれば、ハンドルベース61aをベース31にハンドル締結部材91で締結する際に生じるハンドルベース61aの回転が止められるため、ハンドルベース61aの取り付け作業が簡単になる。
【0095】
(7)本実施形態のスライドドアモジュール30は、ドア開閉装置60と窓ガラス昇降装置40とを備える。ベース31には、窓ガラス昇降装置40とドア開閉装置60とが配置される。この構成では、ベース31に窓ガラス昇降装置40とドア開閉装置60とが配置されているため、これら装置を個別にインナーパネル12に取り付ける場合に比べて、インナーパネル12へのこれら装置の取り付け作業が簡単になる。
【0096】
なお、その他の実施形態を説明する。
・上記実施形態において、嵌合凹部620は第1固定部615に設けられているが、この構成は変更され得る。例えば、嵌合凹部620は第1〜第4固定部615〜618のいずれかに設けられ得る。また、嵌合凹部620は、第1〜第4固定部615〜618に設けられるのではなく、第1〜第4係合部311〜314のいずれかに設けられ得る。この場合、固定部615〜618がこの嵌合凹部620に嵌るような円柱状に構成される。
【0097】
・上記実施形態において、スライドドアモジュール30のベース31には、上記に示した装置とは別の装置が取り付けられ得る。例えば、音響用のスピーカユニットが取り付けられ得る。
【0098】
・上記実施形態では、スライドドアモジュール30を例に挙げて説明したが、本技術は、モジュール化されていないドア開閉装置60にも適用される。すなわち、このドア開閉装置は、実施形態に示される構成(第1及び第2固定部615,616と取付部33との配置関係、嵌合凹部620の構成)を有する樹脂製のベース31を備える。これにより、上記(1)〜(6)に準じた効果が得られる。