(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングに固定されるとともに固定側渦巻壁を有する固定スクロールと、前記固定側渦巻壁と噛み合う可動側渦巻壁を有する可動スクロールと、前記可動スクロールにおける前記固定スクロールに対する公転運動に基づいて容積減少して冷媒を圧縮する圧縮室と、前記ハウジングに回転可能に支持される回転軸と、前記回転軸の回転軸線に対して偏心した位置から前記可動スクロールに向けて突出する偏心軸と、前記偏心軸に嵌合され、前記偏心軸の周りで回動可能なブッシュと、前記ブッシュに一体的に設けられるバランスウェイトと、を備えたスクロール型圧縮機であって、
前記ハウジングは、前記回転軸の回転軸線を中心とする内周面を有するとともに前記バランスウェイトを収容する収容壁を有し、前記バランスウェイトは、少なくとも、前記ブッシュの中心と前記回転軸の回転軸線との距離が減少する前記ブッシュの回動方向寄りに、前記ブッシュの中心を中心とする第1仮想円よりも径方向外側にはみ出すはみ出し部を有し、
前記はみ出し部の外周面は、前記第1仮想円よりも大径である第2仮想円上に沿って延びており、
前記バランスウェイトは、前記ブッシュの中心と前記回転軸の回転軸線との距離が増大する前記ブッシュの回動方向に位置する第1端縁を有し、
前記第1端縁は、前記第1仮想円及び前記第2仮想円上に位置していることを特徴とするスクロール型圧縮機。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、一般的に、スクロール型圧縮機は、ハウジングに固定された固定スクロールと、固定スクロールに対して公転運動する可動スクロールとを有する。固定スクロールは、固定側基板と、固定側基板から立設された固定側渦巻壁とを有するとともに、可動スクロールは、可動側基板と、可動側基板から立設された可動側渦巻壁とを有する。そして、固定側渦巻壁と可動側渦巻壁とが互いに噛み合わされることで、可動スクロールの公転運動に基づいて容積減少して冷媒を圧縮する圧縮室が区画されている。
【0003】
ハウジングには回転軸が回転可能に支持されている。回転軸には、可動スクロールに向けて突出する偏心軸が設けられている。偏心軸の回転軸線は、回転軸の回転軸線に対して偏心した位置に設定されている。偏心軸には、バランスウェイトが一体化されたブッシュが嵌合されている。バランスウェイトは、可動スクロールが公転運動する際に可動スクロールに作用する遠心力を相殺して、可動スクロールのアンバランス量を低減する。ブッシュには、ブッシュの中心に対して偏心した位置に偏心穴が形成されており、偏心軸が偏心穴に嵌合されることによって、ブッシュは、偏心軸の周りを回動(スイング)可能になっている。
【0004】
可動側基板には、ブッシュが軸受を介して嵌挿される円筒状のボス部が突出形成されている。可動側基板の中心は、ブッシュの中心と一致している。さらに、ブッシュの中心は、回転軸の回転軸線よりも回転軸の径方向外側に位置している。そして、ブッシュの中心と回転軸の回転軸線との距離が、可動スクロールの公転半径となっている。可動スクロールの公転半径は、ブッシュが偏心軸の周りでスイングして、ブッシュの中心と回転軸の回転軸線との距離が変化することにより可変する。このように、偏心軸、ブッシュ及び軸受は、可動スクロールの公転半径を可変させる、所謂、従動クランク機構を構成している。このような従動クランク機構は既に公知である。
【0005】
ところで、可動スクロール及び固定スクロールは、微小な加工誤差や組み立て誤差が生じるため、可動側渦巻壁と固定側渦巻壁との間には予めガタ(隙間)が設けてある。そして、回転軸が正方向へ回転し、ブッシュが、可動スクロールに作用する圧縮反力に基づいて偏心軸の周りでスイングすると、ブッシュの中心と回転軸の回転軸線との距離が増大して、可動スクロールの公転半径が増大する。これによれば、可動側渦巻壁を固定側渦巻壁に接触させることができ、可動スクロールは、可動側渦巻壁が固定側渦巻壁に接触しながら公転運動するため、圧縮室からの冷媒の漏れが抑制される。
【0006】
一方、可動スクロールに対する固定スクロールへの組み付けの際には、ブッシュを、回転軸が正方向に回転しているときとは逆方向へ偏心軸の周りでスイングさせる。すると、ブッシュの中心と回転軸の回転軸線との距離が減少して、可動スクロールの公転半径が減少する。これによれば、固定側渦巻壁に対する可動側渦巻壁の相対位置を、可動側渦巻壁が固定側渦巻壁に対して接触しない位置にすることができ、可動スクロールを固定スクロールに対して容易に組み付けることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特に、高速回転時のように可動スクロールに作用する遠心力が大きくなっていくと、可動スクロールのアンバランス量が増大し、可動スクロールが公転運動する際の騒音が増大する。よって、この騒音を抑制するために、バランスウェイトの体格を増大させて、可動スクロールのアンバランス量を低減させることが望まれている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、スクロール型圧縮機の体格が大型化することなく、可動スクロールのアンバランス量を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するスクロール型圧縮機は、ハウジングに固定されるとともに固定側渦巻壁を有する固定スクロールと、前記固定側渦巻壁と噛み合う可動側渦巻壁を有する可動スクロールと、前記可動スクロールにおける前記固定スクロールに対する公転運動に基づいて容積減少して冷媒を圧縮する圧縮室と、前記ハウジングに回転可能に支持される回転軸と、前記回転軸の回転軸線に対して偏心した位置から前記可動スクロールに向けて突出する偏心軸と、前記偏心軸に嵌合され、前記偏心軸の周りで回動可能なブッシュと、前記ブッシュに一体的に設けられるバランスウェイトと、を備えたスクロール型圧縮機であって、前記ハウジングは、前記回転軸の回転軸線を中心とする内周面を有するとともに前記バランスウェイトを収容する収容壁を有し、前記バランスウェイトは、少なくとも、前記ブッシュの中心と前記回転軸の回転軸線との距離が減少する前記ブッシュの回動方向寄りに、前記ブッシュの中心を中心とする第1仮想円よりも径方向外側にはみ出すはみ出し部を有する。
【0011】
例えば、バランスウェイトの外周面全体が、ブッシュの中心を中心とする第1仮想円上に沿って延びている場合を考える。圧縮室からの冷媒の漏れを抑制するためには、可動側渦巻壁を固定側渦巻壁に接触させることが好ましい。よって、ブッシュは、可動側渦巻壁が固定側渦巻壁に接触するまで、ブッシュの中心と回転軸の回転軸線との距離が増大するブッシュの回動方向に偏心軸の周りで回動する。すると、バランスウェイトの外周面におけるブッシュの中心と回転軸の回転軸線との距離が増大するブッシュの回動方向寄りの部位と、収容壁の内周面との隙間は小さくなっていく。
【0012】
一方、可動スクロールを固定スクロールに対して組み付けるためには、可動側渦巻壁を固定側渦巻壁に対して接触しない位置にする必要がある。よって、可動スクロールを固定スクロールに対して組み付ける際には、ブッシュを、ブッシュの中心と回転軸の回転軸線との距離が減少するブッシュの回動方向に偏心軸の周りで回動させる。このとき、可動側渦巻壁を固定側渦巻壁に対して接触しない位置にするためには、ブッシュを、ブッシュの中心と回転軸の回転軸線との距離が減少するブッシュの回動方向に偏心軸の周りで僅かに回動させるだけでよい。よって、バランスウェイトの外周面におけるブッシュの中心と回転軸の回転軸線との距離が減少するブッシュの回動方向寄りの部位と、収容壁の内周面との間は、スペース的に比較的余裕がある。
【0013】
そこで、本発明のバランスウェイトは、少なくとも、ブッシュの中心と回転軸の回転軸線との距離が減少するブッシュの回動方向寄りに、第1仮想円よりも径方向外側にはみ出すはみ出し部を有する。これによれば、バランスウェイトの外周面全体が、ブッシュの中心を中心とする第1仮想円上に沿って延びている場合に比べて、バランスウェイトと収容壁の内周面との間のスペースを有効利用して、バランスウェイトの体格を増大させることができる。その結果、バランスウェイトにより、可動スクロールが公転運動する際に可動スクロールに作用する遠心力を相殺し易くすることができ、スクロール型圧縮機の体格が大型化することなく、可動スクロールのアンバランス量を低減させることができる。
【0014】
上記スクロール型圧縮機において、前記はみ出し部の外周面は、前記第1仮想円よりも大径である第2仮想円上に沿って延びており、前記第2仮想円の中心は、前記ブッシュの中心よりも、前記ブッシュの中心と前記回転軸の回転軸線との距離が減少する前記ブッシュの回動方向寄りに位置しており、前記はみ出し部における前記第1仮想円よりも径方向外側へのはみ出し量は、前記ブッシュの中心と前記回転軸の回転軸線との距離が減少する前記ブッシュの回動方向寄りに向かうにつれて増えていくことが好ましい。
【0015】
これによれば、バランスウェイトの形状を簡素化させることができるとともに、バランスウェイトと収容壁の内周面との間のスペースを効率良く有効利用して、バランスウェイトの体格をバランス良く増大させることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、スクロール型圧縮機の体格が大型化することなく、可動スクロールのアンバランス量を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、スクロール型圧縮機を具体化した一実施形態を
図1及び
図2にしたがって説明する。なお、スクロール型圧縮機は車両空調装置に用いられる。
図1に示すように、スクロール型圧縮機10のハウジング11は、有底筒状であるセンターハウジング12(シェル)の一端に有蓋筒状のフロントハウジング13が連結されるとともに、センターハウジング12の他端に有蓋筒状のリヤハウジング14が連結されて構成されている。センターハウジング12は、フロントハウジング13側に開口しており、その内部に固定スクロール15が一体形成されている。固定スクロール15は、センターハウジング12の底壁を形成する円板状の固定側基板15aと、固定側基板15aからフロントハウジング13に向けて立設された固定側渦巻壁15bとから構成されている。
【0019】
センターハウジング12内には、可動スクロール16が収容されている。可動スクロール16は、円板状をなす可動側基板16aと、可動側基板16aから固定側基板15aへ向かって立設される可動側渦巻壁16bとから構成されている。固定スクロール15と可動スクロール16とは対向配置されている。固定側渦巻壁15bと可動側渦巻壁16bとは互いに噛み合わされている。固定側渦巻壁15bの先端面は可動側基板16aに接触しているとともに、可動側渦巻壁16bの先端面は固定側基板15aに接触している。そして、固定側基板15a及び固定側渦巻壁15bと、可動側基板16a及び可動側渦巻壁16bとによって圧縮室17が区画されている。
【0020】
フロントハウジング13には、回転軸18の大径部18aがラジアルベアリング19を介して回転可能に支持されている。回転軸18の小径部18bの先端には、動力伝達機構PTを介して外部駆動源としての車両のエンジンEが作動連結されている。回転軸18の大径部18aにおいて、可動スクロール16側の端面18cには、回転軸18の回転軸線L1に対して偏心した位置から可動スクロール16に向けて突出する偏心軸20が一体形成されている。
【0021】
偏心軸20には、バランスウェイト21が一体化されたブッシュ22が嵌合されている。バランスウェイト21は、ブッシュ22と一体形成されている。そして、バランスウェイト21は、可動スクロール16が公転運動する際に可動スクロール16に作用する遠心力を相殺して、可動スクロール16のアンバランス量を低減する。ブッシュ22には、ブッシュ22の中心L2に対して偏心した位置に偏心穴22hが形成されている。そして、偏心軸20が偏心穴22hに嵌合されることによって、ブッシュ22は、偏心軸20の周りを回動(スイング)可能になっている。
【0022】
回転軸18の大径部18aの端面18cには、円孔状の凹部18dが形成されている。ブッシュ22における回転軸18の大径部18a側の端面には、凹部18d内に挿入される挿入ピン22aが突設されている。そして、挿入ピン22aと凹部18dとが接触することで、ブッシュ22における偏心軸20の周りのスイングが規制される。
【0023】
可動側基板16aには、ブッシュ22が軸受23を介して嵌挿される円筒状のボス部16cが突出形成されている。可動側基板16aは、軸受23を介してブッシュ22と相対回転可能にブッシュ22に支持されている。ブッシュ22の中心L2は、回転軸18の回転軸線L1よりも回転軸18の径方向外側に位置している。可動側基板16aの中心は、ブッシュ22の中心L2と一致しており、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が、可動スクロール16の公転半径となる。そして、ブッシュ22が偏心軸20の周りでスイングすることにより、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が変化するため、可動スクロール16の公転半径が可変する。このように、偏心軸20、ブッシュ22及び軸受23は、可動スクロール16の公転半径を可変させる、所謂、従動クランク機構25を構成している。このような従動クランク機構25は既に公知である。
【0024】
フロントハウジング13は、バランスウェイト21を内部に収容する円筒状の収容壁13aを有する。収容壁13aは、回転軸18の回転軸線L1を中心とする内周面13bを有する。収容壁13aは、ボス部16cを包囲している。可動側基板16aと収容壁13a(フロントハウジング13)との間には、自転阻止機構26が配設されている。自転阻止機構26は、可動側基板16aにおける可動側渦巻壁16bとは反対側の端面の外周部に複数(本実施形態では六つ)設けられた円孔状の凹部27と、収容壁13aにおける可動側基板16aと対向する側の端面の外周部に突設されたピン28と、各凹部27に嵌着されたリング部材29とから構成されている。各リング部材29内にはピン28が挿入されている。
【0025】
センターハウジング12の外周壁と可動側渦巻壁16bの最外周部との間には、吸入室30が区画形成されている。センターハウジング12の外周壁には、吸入室30に連通する吸入口31が形成されている。固定側基板15aには、吐出ポート32が形成されるとともに、吐出ポート32は圧縮室17に連通している。吐出ポート32は、固定側基板15aに固定された吐出弁33によって開閉される。吐出弁33は固定側基板15aに固定されたリテーナ34によって開度が規制される。吐出ポート32は、センターハウジング12とリヤハウジング14によって区画された吐出室35に連通している。リヤハウジング14には、吐出室35に連通する吐出口36が形成されている。吐出口36と吸入口31とは図示しない外部冷媒回路によって連通している。
【0026】
図2(a)及び(b)に示すように、バランスウェイト21は、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少するブッシュ22の回動方向(
図2(a)及び(b)に示す矢印R1の方向)寄りに、ブッシュ22の中心L2を中心とする第1仮想円C1よりも径方向外側にはみ出すはみ出し部21aを有する。はみ出し部21aの外周面21bは、バランスウェイト21の外周面であり、第1仮想円C1よりも大径である第2仮想円C2上に沿って延びる半円弧形状である。第2仮想円C2の中心P2は、ブッシュ22の中心L2よりも、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少するブッシュ22の回動方向寄りに位置している。
【0027】
バランスウェイト21は、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が増大するブッシュ22の回動方向(
図2(a)及び(b)に示す矢印R2の方向)に位置する第1端縁21cを有する。さらに、バランスウェイト21は、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少するブッシュ22の回動方向に位置する第2端縁21dを有する。第1端縁21c、第2端縁21d、第1仮想円C1の中心(ブッシュ22の中心L2)及び第2仮想円C2の中心P2は、同一直線上に配置されている。第1端縁21cは、第1仮想円C1及び第2仮想円C2上に位置している。すなわち、第1仮想円C1及び第2仮想円C2は、互いに内接した位置関係になっている。そして、はみ出し部21aにおける第1仮想円C1よりも径方向外側へのはみ出し量は、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少するブッシュ22の回動方向寄りに向かうにつれて増えていく。
【0028】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ところで、可動スクロール16及び固定スクロール15は、微小な加工誤差や組み立て誤差が生じるため、可動側渦巻壁16bと固定側渦巻壁15bとの間には予めガタ(隙間)が設けてある。
【0029】
図2(a)に示すように、エンジンEの駆動力が動力伝達機構PTを介して回転軸18に伝達されて、回転軸18が正方向へ回転すると、ブッシュ22が、可動スクロール16に作用する圧縮反力に基づいて偏心軸20の周りでスイングする。ブッシュ22が偏心軸20の周りでスイングすると、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が増大して、可動スクロール16の公転半径が増大する。そして、可動側渦巻壁16bが固定側渦巻壁15bに接触した時点で、ブッシュ22における偏心軸20の周りのスイングが規制され、可動スクロール16の公転半径が固定される。
【0030】
さらに、回転軸18の回転は、偏心軸20、ブッシュ22及び軸受23を介して可動スクロール16に伝達されており、可動スクロール16は正方向へ自転する。そして、可動側渦巻壁16bが固定側渦巻壁15bに接触した時点で、ピン28とリング部材29とが接触し、可動スクロール16の自転が阻止されて、可動スクロール16の正方向への公転運動のみが許容される。これにより、可動スクロール16は、可動側渦巻壁16bが固定側渦巻壁15bに接触しながら、正方向へ公転運動する。よって、圧縮室17からの冷媒の漏れが抑制されるとともに、圧縮室17の容積が減少して冷媒が圧縮される。
【0031】
図2(b)に示すように、可動スクロール16を固定スクロール15に対して組み付ける際には、ブッシュ22を、回転軸18が正方向に回転しているときとは逆方向へ偏心軸20の周りでスイングさせる。すると、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少して、可動スクロール16の公転半径が減少する。これにより、固定側渦巻壁15bに対する可動側渦巻壁16bの相対位置が、可動側渦巻壁16bが固定側渦巻壁15bに対して接触しない位置となり、可動スクロール16を固定スクロール15に対して容易に組み付けることが可能となる。
【0032】
ブッシュ22が、回転軸18が正方向に回転しているときとは逆方向へ偏心軸20の周りでスイングする際に、挿入ピン22aが凹部18dに接触すると、ブッシュ22における偏心軸20の周りのスイングが規制され、可動スクロール16の公転半径が固定される。これによって、ブッシュ22が、回転軸18が正方向に回転しているときとは逆方向へ偏心軸20の周りでスイングする際に、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が増大してしまうまで、ブッシュ22が偏心軸20の周りでスイングしてしまうことが規制されている。なお、ブッシュ22が、回転軸18が正方向に回転しているときとは逆方向へ偏心軸20の周りでスイングする場合、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が最短距離になったときに、挿入ピン22aが凹部18dに接触し、ブッシュ22における偏心軸20の周りのスイングが規制されるようになっている。
図2(b)は、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が最短距離になった状態を示している。
【0033】
例えば、バランスウェイト21の外周面全体が、ブッシュ22の中心L2を中心とする第1仮想円C1上を通過している場合を考える。圧縮室17からの冷媒の漏れを抑制するためには、可動側渦巻壁16bを固定側渦巻壁15bに接触させることが好ましい。よって、ブッシュ22は、可動側渦巻壁16bが固定側渦巻壁15bに接触するまで、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が増大するブッシュ22の回動方向に偏心軸20の周りで回動する。すると、バランスウェイト21の外周面におけるブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が増大するブッシュの回動方向寄りの部位と、収容壁13aの内周面13bとの隙間は小さくなっていく。
【0034】
一方、可動スクロール16を固定スクロール15に対して組み付けるためには、可動側渦巻壁16bを固定側渦巻壁15bに対して接触しない位置にする必要がある。よって、可動スクロール16を固定スクロール15に対して組み付ける際には、ブッシュ22を、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少するブッシュ22の回動方向に偏心軸20の周りで回動させる。このとき、可動側渦巻壁16bを固定側渦巻壁15bに対して接触しない位置にするためには、ブッシュ22を、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少するブッシュ22の回動方向に偏心軸20の周りで僅かに回動させるだけでよい。よって、バランスウェイト21の外周面におけるブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少するブッシュ22の回動方向寄りの部位と、収容壁13aの内周面13bとの間は、スペース的に比較的余裕がある。
【0035】
そこで、上記構成のバランスウェイト21は、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少するブッシュ22の回動方向寄りに、第1仮想円C1よりも径方向外側にはみ出すはみ出し部21aを有する。そして、はみ出し部21aにおける第1仮想円C1よりも径方向外側へのはみ出し量は、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少するブッシュ22の回動方向寄りに向かうにつれて増えていく。よって、バランスウェイト21の外周面全体が、第1仮想円C1に沿って延びている場合に比べて、バランスウェイト21と収容壁13aの内周面13bとの間のスペースを有効利用して、バランスウェイト21の体格が増大している。その結果、バランスウェイト21により、可動スクロール16が公転運動する際に可動スクロール16に作用する遠心力が相殺し易くなり、可動スクロール16のアンバランス量が低減される。
【0036】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)バランスウェイト21は、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少するブッシュ22の回動方向寄りに、第1仮想円C1よりも径方向外側にはみ出すはみ出し部21aを有する。これによれば、バランスウェイト21の外周面全体が第1仮想円C1に沿って延びている場合に比べて、バランスウェイト21と収容壁13aの内周面13bとの間のスペースを有効利用して、バランスウェイト21の体格を増大させることができる。その結果、バランスウェイト21により、可動スクロール16が公転運動する際に可動スクロール16に作用する遠心力を相殺し易くすることができ、スクロール型圧縮機10の体格が大型化することなく、可動スクロール16のアンバランス量を低減させることができる。
【0037】
(2)はみ出し部21aの外周面21bは、第1仮想円C1よりも大径である第2仮想円C2上に延びている。第2仮想円C2の中心P2は、ブッシュ22の中心L2よりも、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少するブッシュ22の回動方向寄りに位置している。そして、はみ出し部21aにおける第1仮想円C1よりも径方向外側へのはみ出し量は、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少するブッシュ22の回動方向寄りに向かうにつれて増えていく。これによれば、バランスウェイト21の形状を簡素化させることができるとともに、バランスウェイト21と収容壁13aの内周面13bとの間のスペースを効率良く有効利用して、バランスウェイト21の体格をバランス良く増大させることができる。
【0038】
(3)本実施形態によれば、バランスウェイト21の体格を増大させるために、収容壁13aの内側のバランスウェイト21の収容スペースを、既存のスペースよりも広く確保する必要が無い。したがって、スクロール型圧縮機10の体格が大型化すること無く、バランスウェイト21の体格を増大させることができる。
【0039】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○
図3に示すように、バランスウェイト21は、少なくとも、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少するブッシュ22の回動方向寄りに、第1仮想円C1よりも径方向外側にはみ出すはみ出し部21Aを有していればよい。この場合、バランスウェイト21は、第1仮想円C1上に沿って延びる第1外周面211と、はみ出し部21Aの第2外周面212とを有する。第2外周面212は、第1外周面211に連続している。要は、バランスウェイト21の形状は、特に限定されるものではない。
【0040】
○ 実施形態において、第1仮想円C1の中心(ブッシュ22の中心L2)及び第2仮想円C2の中心P2が、第1端縁21c及び第2端縁21dを結ぶ直線上に対してずれた位置に配置されていてもよい。
【0041】
○ 実施形態において、第1端縁21cが、第1仮想円C1上に位置していなくてもよい。すなわち、第1仮想円C1及び第2仮想円C2が、互いに内接した位置関係ではなくてもよい。
【0042】
○ 実施形態において、はみ出し部21aにおける第1仮想円C1よりも径方向外側へのはみ出し量は、ブッシュ22の中心L2と回転軸18の回転軸線L1との距離が減少するブッシュ22の回動方向寄りに向かうにつれて増えていった後に、はみ出し部21aのはみ出し量が徐々に減っていくように設定してもよい。
【0043】
○ 実施形態において、バランスウェイト21は、ブッシュ22と一体形成されていなくてもよく、ブッシュ22とは別部材であるバランスウェイト21が、ブッシュ22に一体的に設けられていてもよい。
【0044】
○ 実施形態において、固定スクロール15が、センターハウジング12に一体形成されていなくてもよく、センターハウジング12とは別部材である固定スクロール15がセンターハウジング12の内側に固定されていてもよい。
【0045】
○ 実施形態において、電動モータの駆動力によって回転軸18を回転駆動させるようにしてもよい。