【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前述の観点から、TiとAlの複合炭窒化物(以下、「(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)」で示すことがある)からなる硬質被覆層を化学蒸着で被覆形成した被覆工具の耐チッピング性、耐摩耗性の改善をはかるべく、鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。
【0013】
WC基超硬合金、TiCN基サーメットまたはcBN基超高圧焼結体のいずれかで構成された基体の表面に、例えば、トリメチルアルミニウム(Al(CH
3)
3)を反応ガス成分として含有する熱CVD法等の化学蒸着法により、成膜されたTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、組成式:(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合X
avgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Y
avg(但し、X
avg、Y
avgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦X
avg≦0.95、0≦Y
avg≦0.005を満足し、複合窒化物または複合炭窒化物層を構成する結晶粒中にNaCl型の面心立方構造を有するものが存在し、蒸着時の成膜条件を調整することにより、硬質被覆層が、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、上記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の縦断面方向から解析した場合、立方晶結晶格子の電子後方散乱回折像が観測されるNaCl型の面心立方結晶相が存在し、工具基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定し該傾斜角のうち法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し、傾斜角度数分布を求めたとき、0〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在するとともに、前記0〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、かつ、複合窒化物または複合炭窒化物層の表面側から走査電子顕微鏡で該層の組織観察をした場合に、前記複合窒化物または複合炭窒化物層内の立方晶構造を有する個々の結晶粒が層厚方向に垂直な面内で三角形状を有し該結晶粒の三角形状のファセットが結晶粒の結晶面である{111}で表される等価な結晶面のうちの一つの面に形成され、前記結晶粒が層厚方向に垂直な面内において全体の35%以上の面積割合を占めるという新規な構成を有する場合に、硬質被覆層と基体との密着性が向上するとともに、すぐれた耐チッピング性を示すようになることを見出した。
【0014】
したがって、前述のような硬質被覆層を備えた被覆工具を、例えば、合金鋼の高速断続切削等に用いた場合には、チッピング、欠損、剥離等の発生が抑えられるとともに、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮することができる。
【0015】
本発明は、前述したような研究結果に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、化学蒸着法により成膜された平均層厚1〜20μmのTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、組成式:(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合X
avgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Y
avg(但し、X
avg、Y
avgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦X
avg≦0.95、0≦Y
avg≦0.005を満足し、
(b)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、
(c)前記複合窒化物または複合炭窒化物層について、電子線後方散乱回折装置を用いて、複合窒化物または複合炭窒化物層内のNaCl型の面心立方構造を有する個々の結晶粒の結晶方位を、上記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の縦断面方向から解析した場合、立方晶結晶格子の電子後方散乱回折像が観測されるNaCl型の面心立方構造を有する結晶相が存在し、工具基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定し該傾斜角のうち、工具基体表面の法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し傾斜角度数分布を求めたとき、0〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、
(d)また、前記複合窒化物または複合炭窒化物層の表面側から走査電子顕微鏡で該層の組織観察をした場合に、前記複合窒化物または複合炭窒化物層内のNaCl型の面心立方構造を有する個々の結晶粒が層厚方向に垂直な面内で三角形状を有し該結晶粒の{111}で表される等価な結晶面で形成されたファセットが、前記層厚方向に垂直な面内において全体の35%以上の面積割合を占めることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の単相からなることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、2種以上の複数の相が共存する混合相からなり、該混合相は、NaCl型の面心立方構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、混合相に共存するその他の各相はTiとAlから選ばれる少なくとも1種の元素と、C,Nから選ばれる少なくとも一種からなる化合物であることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(4) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層について該層の縦断面方向から観察した場合に、複合窒化物または複合炭窒化物層内のNaCl型の面心立方構造を有する個々の結晶粒の平均粒子幅Wが0.1〜2μm、平均アスペクト比Aが2〜10である柱状組織を有することを特徴とする(1)または(3)に記載の表面被覆切削工具。
(5) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層について該層の縦断面方向から観察した場合に、複合窒化物または複合炭窒化物層内のNaCl型の面心立方構造を有する個々の結晶粒からなる柱状組織の粒界部に六方晶構造を有する微粒結晶粒が存在し該微粒結晶粒の平均粒径Rが0.01〜0.3μmであることを特徴とする(1)または(3)、(4)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(6) 前記炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体と前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の間に、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、0.1〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層を含む下部層が存在することを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(7) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層の上部に、少なくとも1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層を含む上部層が存在することを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(8) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、少なくとも、トリメチルアルミニウムを反応ガス成分として含有する化学蒸着法により成膜されたものであることを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
【0016】
つぎに、本発明の被覆工具の硬質被覆層について、より具体的に説明する。
【0017】
TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の平均層厚:
本発明の硬質被覆層におけるTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層は、その平均層厚が1μm未満では、長期の使用に亘っての耐摩耗性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が20μmを越えると、高熱発生を伴う高速断続切削で熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となる。したがって、その平均層厚は1〜20μmとすることが好ましく、より好ましくは1〜10μmとする。
また、炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体とTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の間にTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層の少なくとも一層以上を設けることで逃げ面の耐摩耗性を向上させ、切削寿命を上げる効果がある。前記の平均合計層厚に関しては、0.1μm未満では層厚が薄いため、長期の使用に亘って耐摩耗性が確保されず、一方、平均層厚が20μmより大きくなると、工具基体およびTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層との付着強度が低下し、耐剥離性が低下するため、その平均層厚は0.1〜20μmとするのが望ましい。
TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の上部に、上部層としての酸化アルミニウム層を含む場合、酸化アルミニウム層の合計平均層厚が1μm未満であると、層厚が薄いため長期の使用に亘って耐摩耗性が確保されず、25μmを超えると結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなることから、酸化アルミニウム層の平均層厚は1〜25μmとすることが望ましい。
【0018】
TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層((Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層)の組成:
本発明の硬質被覆層を構成する(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層は、Alの平均含有割合X
avg(原子比)の値が0.60未満になると、高温硬さが不足し耐摩耗性が低下するようになり、一方、X
avg(原子比)の値が0.95を超えると、相対的なTi含有割合の減少により、(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層自体の高温強度が低下し、チッピング、欠損を発生しやすくなる。したがって、Alの平均含有割合X
avg(原子比)の値は、0.60以上0.95以下とすることが必要である。
また、前記(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層において、C成分には硬さを向上させ、一方、N成分には高温強度を向上させる作用があるが、C成分の平均含有割合Y
avg(原子比)が0.005を超えると、高温強度が低下する。したがって、C成分の平均含有割合Y
avg(原子比)は、0≦Y
avg≦0.005と定めた。
【0019】
TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層((Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層)の結晶構造:
本発明の硬質被膜層を構成する(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層はNaCl型の面心立方構造(以下、単に「立方晶構造」という場合もある。)をとることによって硬さを向上させることができ、さらに立方晶構造単相が望ましい。なお、通常、物理蒸着法によって前記組成、即ち、Alの平均含有割合X
avg(原子比)が0.60以上0.95以下の(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層を成膜した場合は、結晶構造は六方晶構造となるが、本発明では、後述する化学蒸着法によって成膜していることから、NaCl型の面心立方構造を維持したままで前述したような組成の(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層を得ることができる。それにより、硬質被覆層の硬さの低下を回避している。
【0020】
TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層((Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層)内の立方晶構造を有する個々の結晶粒結晶面である{111}面についての傾斜角度数分布:
本発明の前記(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層について、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を、その縦断面方向から解析した場合、基体表面の法線(断面研磨面における基体表面と垂直な方向)に対する前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角(
図1(a)、(b)参照)を測定し、その傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、0〜12度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜12度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合となる傾斜角度数分布形態を示す場合に、前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層からなる硬質被覆層は、立方晶構造を維持したままで高硬度を有し、しかも、前述したような傾斜角度数分布形態によって硬質被覆層と基体との密着性が飛躍的に向上する。
したがって、このような被覆工具は、例えば、ステンレス鋼の高速断続切削等に用いた場合であっても、チッピング、欠損、剥離等の発生が抑えられ、しかも、すぐれた耐摩耗性を発揮する。
電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を解析する際に、基体表面の法線に対する傾斜角が12度より大きい結晶面は{111}配向しているとみなすことができず、硬度が低下するため、{111}配向が強く、かつ硬度が低下しない範囲が0〜12度までであることから、測定によって度数を求める傾斜角区分の範囲を0〜12度と定めた。
【0021】
TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層((Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層)内の立方晶構造を有する個々の結晶粒の層厚方向に垂直な面内で観察される三角形状で、かつ、結晶粒の{111}で表される等価な結晶面で構成されたファセットの前記面全体に対する面積割合:
複合窒化物または複合炭窒化物層の表面側から走査電子顕微鏡で該層の組織観察をした場合に、前記複合窒化物または複合炭窒化物層内の立方晶構造を有する個々の結晶粒が層厚方向に垂直な面内で三角形状を有し該結晶粒の三角形状のファセットが結晶粒の結晶面である{111}で表される等価な結晶面のうちの一つの面に形成されている場合に、硬質被覆層表面と被削材との摩耗抵抗が軽減し、切削における初期なじみ性が向上し、耐チッピング性が向上するという知見を得た。
しかしながら、層厚方向に垂直な面内において該面全体を100%とした時の前記ファセットの面積割合が35%未満であると、前述した本発明に特有の効果が十分に奏されないため好ましくない。したがって、前記ファセットの層厚方向に垂直な面内における面積割合を35%以上と定めた。
【0022】
TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層((Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層)内の立方晶構造を有する個々の結晶粒の平均粒子幅、平均アスペクト比:
本発明の硬質被覆層は、前述したような構成を有することにより、本発明に特有のすぐれた切削性能を発揮するものであるが、さらに、TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層((Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層)内の立方晶構造を有する個々の結晶粒の平均粒子幅が0.1〜2μm、平均アスペクト比が2〜10となる柱状組織となるように構成することにより、一層、その効果を発揮させることができる。
すなわち、平均粒子幅を0.1〜2μmとしたのは、0.1μm未満では、被覆層全体におけるTiAlCN結晶粒の占める割合が相対的に大きくなることにより、被削材との反応性が増し、その結果、耐摩耗性を十分に発揮することができず、また、2μmを超えるとTiAlCN結晶粒の占める割合が相対的に小さくなることにより、粒子間強度が低下し、耐チッピング性を十分に発揮することができなくなる。したがって、平均粒子幅を0.1〜2μmとすることが好ましい。
なお、本発明でいう平均粒子幅とは、走査電子顕微鏡を用い被覆層の縦断面観察を行った際に硬質被覆層の層厚の半分の箇所において基体表面と平行な線を少なくとも100μm描き、該平行線の線分長を該平行線と交差する結晶粒界の数で除した数として定義される。
また、平均アスペクト比が2未満の場合、十分な柱状組織となっていないため、アスペクト比の小さな等軸結晶の脱落を招き、その結果、十分な耐摩耗性を発揮することができない。一方、平均アスペクト比が10を超えると粗大化しすぎているため、かえって、耐チッピング性が低下するため好ましくない。したがって、平均アスペクト比を2〜10とすることが好ましい。
なお、本発明では、平均アスペクト比とは、走査電子顕微鏡を用い、幅100μm、高さが硬質被覆層全体を含む範囲で被覆層の縦断面観察を行った際に、各結晶粒について粒子径の最も長い長さを長軸とし該長軸の長さおよび前記長軸と直交する方向の最大長さを求め、長軸の長さを長軸と直交する方向の最大長さで除することにより、各結晶粒のアスペクト比を算出し、更に各結晶粒の面積を重みとしアスペクト比の加重平均として算出した値として定義される。
【0023】
TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層((Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層)内の立方晶粒界に存在する微粒六方晶の平均粒径R:
本発明の硬質被膜層(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層では、柱状立方晶の粒界中に微粒六方晶を形成することができるが、柱状立方晶粒界に靱性に優れた微粒六方晶が存在することで粒界における摩擦が低減し、靱性が向上する。このときの六方晶の平均粒径が0.01μm未満であると靱性向上の効果が見られず、0.3μmを超えると、硬さが低下し、耐摩耗性が損なわれるため、平均粒径Rは0.01〜0.3μmとすることが好ましい。
なお、本発明でいう粒界中に存在する微粒六方晶の同定は透過型電子顕微鏡を用いて電子線回折図形を解析することにより同定した。微粒六方晶の平均粒子径は粒界を含んだ1μm×1μmの測定範囲内に存在する粒子について、粒径を測定し、それらの平均値を算出した。
【0024】
本発明の(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層の成膜は、例えば、工具基体もしくはTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層の少なくとも一層以上の上に、例えば、≪第1段階≫として、柱状立方晶TiAlCNもしくは立方晶結晶粒界部に微粒六方晶が存在する柱状立方晶のTiAlCNを成膜した後に、≪第2段階≫として、表面部のみガス組成を変化させるという、下記に示すような二段階の蒸着法によって行うことができる。
【0025】
本発明の(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層の成膜は、通常の化学蒸着装置を用い、例えば、以下の条件で成膜を行う。
≪第1段階≫
反応ガス組成(容量%):
NH
3 6〜10%、TiCl
4 0.5〜1.5%、 AlCl
3 3〜5%、N
2 6〜11%、 Al(CH
3)
3 0〜0.5%、 残りH
2、
反応雰囲気温度: 700〜900℃、
反応雰囲気圧力: 2〜5kPa、
という条件下で柱状立方晶の(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層を蒸着形成する。
なお、前記所定の平均粒子幅および平均アスペクト比を有する立方晶柱状組織の(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層の成膜は、
反応ガス組成(容量%):
NH
3 6〜8%、TiCl
4 0.5〜1.5%、 AlCl
3 3〜5%、N
2 8〜11%、 Al(CH
3)
3 0〜0.5%、 残りH
2、
反応雰囲気温度: 700〜900℃、
反応雰囲気圧力: 2〜5kPa、
という条件下で行うことができる。
また、前記立方晶結晶粒の粒界に所定の平均粒径の六方晶微粒結晶が存在する組織を有する立方晶柱状組織の(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層の成膜は
反応ガス組成(容量%):
NH
3 6〜8%、TiCl
4 0.5〜1.0%、 AlCl
3 4〜5%、N
2 8〜11%、 Al(CH
3)
3 0〜0.5%、 残りH
2、
反応雰囲気温度: 750〜900℃、
反応雰囲気圧力: 2〜5kPa、
という条件下で行うことができる。
≪第2段階≫
反応ガス組成(容量%):
NH
3 3〜6%、TiCl
4 0.1〜0.5%、 AlCl
3 1〜2.5%、N
2 8〜14%、 残り:H
2、
反応雰囲気温度: 650〜750℃、
反応雰囲気圧力: 2〜5kPa、
という条件下でガス組成および反応雰囲気温度を変化させて表面形状が三角形のファセットを有する(Ti
1−XAl
X)(C
YN
1−Y)層の蒸着形成を行う。