(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加熱部と、該加熱部により加熱される無端状の定着ベルトと、該定着ベルトの内周面を摺動可能に支持するベルト支持部と、該ベルト支持部における該定着ベルトとの摺動面に対して該定着ベルトを挟んで押圧されることでニップ部を形成する加圧ローラーとを備え、上記ベルト支持部における上記定着ベルトとの摺動面には所定潤滑剤が塗布されている定着装置であって、
上記ベルト支持部は、固体潤滑剤からなり上記摺動面を形成する摺動層と、該摺動層における上記ニップ部側とは反対側に設けられた断熱層とを有し、
上記固体潤滑剤は六方晶窒化ホウ素含有部材であり、
上記加圧ローラーを駆動する駆動モーターと、
上記駆動モーターの負荷トルクを検知するトルク検知部と、
上記トルク検知部により検知された負荷トルクが第一所定トルクを越えた場合には、上記摺動面に塗布されている上記所定潤滑剤の量が予め設定した下限値を下回っていると判断し、そのことについて警報を行う一方、上記トルク検知部により検知された負荷トルクが上記第一所定トルクよりも大きい第二所定トルクを越える場合には、上記ニップ部において複数枚の用紙が重なって搬送される重送が生じていると判断し、そのことについて警報を行う警報部とを備えている、定着装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式の画像形成装置に搭載される定着装置として、加熱部により加熱された無端状の定着ベルトに加圧ローラーを圧接させ、加圧ローラーの回転駆動により定着ベルトを回転させて定着ベルトと加圧ローラーとの間に用紙を通過させることで当該用紙にトナー像を熱定着させるようにした定着装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
定着ベルトの径方向内側には、該定着ベルトの内周面を摺動可能に支持するベルト支持部が設けられている。加圧ローラーは、ベルト支持部における定着ベルトとの摺動面に対向して配置されている。加圧ローラーは、上記ベルト支持部の摺動面との間に定着ベルトを挟み込んで該定着ベルトとの間に定着ニップを形成している。定着ベルトの回転中心を挟んで定着ニップ側とは反対側には、定着ベルトを加熱する加熱部が設けられている。この加熱部は、例えばハロゲンランプやIHヒーター等により構成されている。
【0004】
上記ベルト支持部における定着ベルトとの摺動面には、グリース等の所定潤滑剤が塗布されている。これにより、回転中の定着ベルトとベルト支持部との間に生じる摩擦抵抗を低減するようにしている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
《実施形態》
図1は、本実施形態におけるレーザープリンター(画像形成装置の一例)1の概略構成を示す断面図である。レーザープリンター1は、
図1に示すように、箱状のプリンタ本体2と、手差し給紙部6と、カセット給紙部7と、画像形成部8と、定着装置9と、排紙部10とを備えている。そうして、レーザープリンター1は、プリンタ本体2内の搬送路Lに沿って用紙を搬送しながら、不図示の端末等から送信される画像データに基づいて用紙に画像を形成するように構成されている。
【0014】
手差し給紙部6は、プリンタ本体2の1つの側部に開閉可能に設けられた手差しトレイ4と、プリンタ本体2の内部に回転可能に設けられた手差し用の給紙ローラー5とを有している。
【0015】
カセット給紙部7は、プリンタ本体2の底部に設けられている。カセット給紙部7は、互いに重ねられた複数の用紙を収容する給紙カセット11と、給紙カセット11内の用紙を1枚ずつ取り出すピックアップローラー12と、取り出された用紙を1枚ずつ分離して搬送路Lへと送り出すフィードローラー13及びリタードローラー14とを備えている。
【0016】
画像形成部8は、プリンタ本体2内におけるカセット給紙部7の上方に設けられている。画像形成部8は、プリンタ本体2内に回転可能に設けられた像担持体である感光体ドラム16と、感光体ドラム16の周囲に配置された帯電器17と、現像部18と、転写ローラー19と、クリーニング部20と、感光体ドラム16の上方に配置された光走査装置であるレーザースキャニングユニット(LSU)30とを備えている。そうして、画像形成部8は、手差し給紙部6又はカセット給紙部7から供給された用紙に画像を形成するようになっている。
【0017】
尚、搬送路Lには、送り出された用紙を、一時的に待機させた後に所定のタイミングで画像形成部8に供給する一対のレジストローラー15が設けられている。
【0018】
定着装置9は、画像形成部8の側方に配置されている。定着装置9は、互いに圧接されて回転する定着ベルト91及び加圧ローラー92を備えている。そうして、定着装置9は、画像形成部8で用紙に転写されたトナー像を当該用紙に定着させるように構成されている。
【0019】
排紙部10は、定着装置9の上方に設けられている。排紙部10は、排紙トレイ3と、排紙トレイ3へ用紙を搬送するための排紙ローラー対24と、排紙ローラー対24へ用紙を案内する複数の搬送ガイドリブ25とを備えている。排紙トレイ3は、プリンタ本体2の上部に凹状に形成されている。
【0020】
レーザープリンター1が画像データを受信すると、画像形成部8において、感光体ドラム16が回転駆動されると共に、帯電器17が感光体ドラム16の表面を帯電させる。
【0021】
そして、画像データに基づいて、レーザー光がレーザースキャニングユニット30から感光体ドラム16へ出射される。感光体ドラム16の表面には、レーザー光が照射されることによって静電潜像が形成される。感光体ドラム16上に形成された静電潜像は、現像部18にて帯電されたトナーにより現像されることで、トナー像として可視化される。
【0022】
その後、用紙は、転写ローラー19と感光体ドラム16との間を通過する。この通過の際、転写ローラーにはトナーと逆極性の転写バイアスが印加される。これにより、感光体ドラム16上のトナー像が用紙に転写される。トナー像が転写された用紙は、定着装置9において定着ベルト91と加圧ローラー92とにより加熱及び加圧される。その結果、トナー像が用紙に定着する。感光体ドラム16から用紙にトナー像を転写した後、感光体ドラム16の表面に付着している残留トナーは、クリーニング部20により除去される。
【0023】
次に
図2を参照しながら定着装置9の詳細について説明する。定着装置9は、定着ベルト91と加圧ローラー92と加熱部93とを有している。定着ベルト91は可撓性を有する円筒状部材(無端状部材)からなる。加圧ローラー92は、円筒状の芯金921と芯金921の外周面に形成された弾性層922と弾性層の外周面に形成された不図示の離型層とを有している。加圧ローラー92は駆動モーター96(
図3にのみ示す)により回転駆動される。加圧ローラー92の外周面は定着ベルト91の外周面に当接しており、加圧ローラー92が駆動モーター96により回転駆動されることで、定着ベルト91が加圧ローラー92に従動して回転するようになっている。
【0024】
定着ベルト91は、誘導発熱層と弾性層と離型層(いずれも図示省略)とを内周側から外周側に向かって順に積層して形成されている。定着ベルト91の径方向内側には、ベルト支持部94及びガイド部95が設けられている。ベルト支持部94は、定着ベルト91の内側空間の下端部に配置されている。ベルト支持部94は、ステー941と支持本体部942とを有している。 ステー941は、下側に開放する断面コ字状の柱状体からなる。ステー941の両端部は定着装置9のケーシング壁面に固定されている。支持本体部942は、定着ベルト91の軸方向に延びる直方体状部材であり、ステー941のコ字状凹部に嵌め込まれて固定されている。
【0025】
支持本体部942の下面は、回転する定着ベルト91の内周面と摺接する摺動面945とされている。摺動面945には、定着ベルト91との摩擦を低減するためにゲル状のグリース(所定潤滑剤)が塗布されている。加圧ローラー92は、上記摺動面945に対して定着ベルト91を挟んで押圧されることで定着ベルト91との間にニップ部Nを形成している。
【0026】
支持本体部942は断熱層943および摺動層944を有している。断熱層943及び摺動層944は共に、セラミック又はセラミックを主成分とする材料で構成されている。摺動面945を形成する固
体潤滑剤からなる摺動層944と、該摺動層944におけるニップ部N側とは反対側に設けられた断熱層943とを有している。断熱層943は、例えばケイ酸カルシウム等のセラミックにより層状されている。摺動層944は、六方晶窒化ホウ素(hBN:hexagonal boron nitride)を含む膜によって形成されている。膜の形成方法としては、(1)六方晶窒化ホウ素をアルコール系溶媒に微分散させて焼結する方法、(2)hBNを使用した共析Niメッキ法、(3)セラミック又は粉末金属と六方晶窒化ホウ素とを焼結させる方法(4)六方晶窒化ホウ素を蒸着させる方法との4つの方法が挙げられる。これら4つの方法のうち上記(3)の方法は、断熱層943を構成するケイ酸カルシウムとの親和性及び接合強度を高めることができるので好ましい。
【0027】
上記ガイド部95は、定着ベルト91の内側空間の上端部に配置されている。ガイド部95は、定着ベルト91の軸方向に延びる断面アーチ状の柱状部材からなる。ガイド部95は、基材層951と基材層951の上面に形成されて定着ベルト91の内周面に摺接する断熱層952とを有している。
【0028】
上記加熱部93は、定着ベルト91の上端部(ニップ部N側とは反対側の端部)よりも上側(径方向外側)に設けられていて、コイル931と磁性体コア932とを有している。コイル931は、不図示の電源部に接続されている。コイル931は、定着ベルト91の軸方向に沿ってリッツ線をループ状に複数回だけ巻き回して形成されている。磁性体コア932は、MnZn合金系等の高透磁率のフェライトからなり、コイル931全体を外側から覆うように形成されている。コイル931が電源部により通電されると、コイル931から発生した磁束が磁性体コア932を通過した後、定着ベルト91の誘導発熱層を通過する。この結果、誘導発熱層に渦電流が生じることによりジュール熱が生じて定着ベルト91が発熱する。定着ベルト91が加熱部93により加熱されてニップ部Nの温度が目標温度に達すると、ニップ部Nで挟持された用紙P上のトナー像が溶融して用紙Pに定着される。
【0029】
図3に示すように、上記加圧ローラー92の駆動モーター96はコントローラー100により制御される。コントローラー100は、CPU、ROM、及びRAM等を有するマイクロコンピューターからなる。コントローラー100は、駆動モーター96の駆動回転数を制御することでニップ部Nにおける用紙Pの搬送速度を制御する。また、コントローラー100は、駆動モーター96の駆動電流を検知して、検知した駆動電流を基に駆動モーター96の負荷トルクを算出する。そして、コントローラー100は、算出した負荷トルクを基に、摺動面945に塗布されたグリース量の不足異常及びニップ部Nにおける用紙Pの重送異常を検知する。グリースの不足異常検知では、ベルト支持部94における定着ベルト91との摺動面945に塗布されたグリースの量が予め設定した下限値を下回っていることを検知する。重送異常検知では、定着装置9のニップ部Nにおいて用紙Pが複数枚重なった状態で搬送される状態を検知する。コントローラー100は、各異常を検知した場合には、レーザープリンター1の操作パネルに設けられた表示部101を通じて警報を行う。
【0030】
図4のフローチャートを参照しながら、コントローラー100における上記各異常検知制御の詳細を説明する。
【0031】
最初のステップS1では、現時点で印刷ジョブを実行中であるか否かを判定し、この判定がNOである場合にはリターンする一方、YESである場合にはステップS2に進む。
【0032】
ステップS2では、駆動モーター96の駆動電流を検知して、検知した駆動電流を基に駆動モーター96の負荷トルクを算出する。
【0033】
ステップS3では、ステップS2で算出した駆動モーター96の負荷トルクが予め設定した第一所定トルクN1を越えるか否かを判定し、この判定がNOである場合にはリターンする一方、YESである場合にはステップS4に進む。
【0034】
ステップS4では、ステップS2で算出した駆動モーター96の負荷トルクが予め設定した第二所定トルクN2を越えるか否かを判定し、この判定がNOである場合にはステップS6に進む一方、YESである場合にはステップS5に進む。第二所定トルクN2は、第一所定トルクN1よりも大きい。
【0035】
ステップS5では、ニップ部Nにおいて用紙Pの重送が発生していると判断して、ユーザーに対して表示部101を通じて警報を行う。本実施形態では、一例として、「用紙Pの重送が発生しています。レーザープリンター1のカバーを開けて用紙Pを取り除いて下さい。」というメッセージを表示部101に表示させる。そうして、用紙Pの重送異常に関する警報を行った後にリターンする。
【0036】
ステップS4の判定がNOである場合に進むステップS6では、ベルト支持部94の摺動面945に塗布されたグリースの量が上記下限値を下回っていると判断して、ユーザーに対して表示部101を通じて警報を行う。本実施形態では、一例として、「定着装置内のグリースが不足しています。グリースを補給して下さい。」というメッセージを表示部101に表示させる。そうして、グリース不足に関する警報を行った後にリターンする。
【0037】
ところで、例えば定着ベルト91とベルト支持部94の摺動面945との接触圧が用紙Pの重送等に起因して増加すると、摺動面945にて発生する摩擦熱が増大する。このように定着装置9のイレギュラーな作動状態によって、摺動面945の温度が上昇すると、摺動面945に塗布されたグリースが蒸発して上記下限値を下回る。グリースの量が下限値を下回ると、摺動面945における定着ベルト91との摩擦抵抗が一気に増加し、これに伴い摺動面945の温度が一気に上昇する。この結果、定着ベルト91が破損する虞がある。
【0038】
これに対して本実施形態では、摺動面945を形成する摺動層944が固体潤滑剤である六方晶窒化ホウ素含有部材で構成されているので、摺動面945に塗布されているグリースの量が上記下限値を下回ったとしても、定着ベルト91と摺動面945との摩擦抵抗の増加を極力、抑制することができる。したがって、定着ベルト91が摺動面945との摩擦熱により破損するのを防止することができる。
【0039】
ここで、摺動層944を構成する六方晶窒化ホウ素含有部材は、摩擦抵抗は小さいものの熱伝導性が高いという特性を有している。このため、定着ベルト91のニップ部N付近の熱が摺動層944を介して支持本体部942及びステー941へと逃げてしまう虞がある。
【0040】
これに対して本実施形態では、摺動層944と支持本体部942との間に断熱層943を設けるようにしたことで、定着ベルト91のニップ部N付近の熱が逃げるのを防止し、延いては、定着温度が目標温度を下回るのを防止することができる。よって、定着温度の低下による画像不良の発生を防止することができる。
【0041】
ところで、定着ベルト91と摺動面945との摩擦抵抗が増加すると、加圧ローラー92を駆動するための駆動モーター96の負荷トルクが増加する。
図5は、この負荷トルクの時間的変化を記録したグラフである。グラフ中のラインL1は本実施形態の定着装置9を使用した場合を示し、ラインL2は、摺動層944を有さない従来形態の定着装置9を使用した場合を示している。このグラフより、本実施形態では、グリースの量が下限値を下回る前後(時刻tの前後)で生じる負荷トルクの上昇幅が従来形態に比べて抑制されていることがわかる。この負荷トルクの上昇は、ニップ部Nにおいて用紙Pの重送が発生した場合にも生じる。従来形態の定着装置9では、この重送発生時におけるトルク上昇幅(図示省略)とグリース不足時のトルク上昇幅に大きな差がなかった。
【0042】
これに対して、本実施形態の定着装置9では、上述のように摺動層944を固体潤滑部材で構成するようにしたことで、定着装置9におけるグリース不足時のトルク上昇幅が低く抑えられている。これにより、用紙Pの重送発生時とグリース不足時とで駆動モーター96のトルク上昇幅に明確な差を持たせることができる。したがって、コントローラー100において、駆動モーター96の駆動電流を基に、用紙Pの重送異常とグリースの不足異常とを容易に検知することができる。具体的には、本実施形態では、コントローラー100は、駆動モーター96の負荷トルクが第一所定トルクN1を越えた場合には、グリースの不足異常が生じていると判断(検知)し、駆動モーター96の負荷トルクが第二所定トルクN2を越えた場合には、用紙Pの重送異常が生じていると判断(検知)するようにしている。そして、コントローラー100は、グリースの不足異常を検知した場合及び用紙Pの重送異常を検知した場合にはそれぞれ、表示部101に上記メッセージを表示することでユーザーに対して警報を行うようになっている(ステップS5,S6)。したがって、ユーザーは表示部101に表示されたメッセージを見て、各異常が生じてることを認識し、適切な措置をとることができる。
【0043】
《他の実施形態》
上記実施形態では、コントローラー100は、レーザープリンター1の操作パネルに設けられた表示部101を通じて警報を行うようになっているが、これに限ったものではなく、例えば
図6に示すように、レーザープリンター1に接続された外部端末102に設けられていてもよい。
【0044】
上記実施形態では、所定潤滑剤の一例としてゲル状潤滑剤であるグリースを挙げて説明したが、これに限ったものではなく、所定潤滑剤はオイル等の液状潤滑剤であってもよい。