(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料の1つ以上の特性を判定するように配設された、光共振器内に半導体利得媒体を含む外部空洞半導体レーザを含み、前記試料の少なくとも一部が、前記光共振器内にあり、かつ前記利得媒体と光学的に結合されるように配設されることで、前記試料が前記利得媒体中で発生した光子の損失率を前記外部空洞半導体レーザ内において増大させる、装置であって、
前記半導体利得媒体に印加される注入電流を変化させるように配設されたコントローラと;
前記外部空洞半導体レーザによるレーザ光出力を検出するように配設された光検出器と;
前記の変化した注入電流の関数としての前記の検出されたレーザ光出力の挙動から前記外部空洞半導体レーザの閾値電流を判定し、かつ、前記の判定された閾値電流から前記試料の1つ以上の特性を少なくとも部分的に判定するように配設された分析器とを含む装置。
前記外部空洞半導体レーザは、レーザを複数の波長の各々に選択的に同調させるように配設された波長選択器を含み、かつ前記分析器は、各選択波長で、又はその近傍での変化した注入電流の関数である前記検出レーザ光出力の挙動から各選択波長で前記試料の1つ以上の特性を判定するように配設される請求項1に記載の装置。
前記分析器は、前記注入電流が前記閾値電流を超えて変化する際に、前記の検出されたレーザ光出力の1つ以上の勾配から部分的に前記試料の前記1つ以上の特性を判定するように配設される請求項1から8のいずれかに記載の装置。
前記試料を含む吸収セルをさらに含む請求項1から11のいずれかに記載の装置であって、前記吸収セルは、該吸収セル内の前記試料の少なくとも一部が前記光共振器内に存在し、かつ、前記利得媒体と光学的に結合されるように配設される、装置。
前記試料の前記1つ以上の特性を判定することは、前記注入電流が前記閾値電流を超えて変化する際の前記の検出されたレーザー光出力の1つ以上の勾配から前記1つ以上の特性を部分的に判定することを含む請求項13から16のいずれかに記載の方法。
前記利得媒体は、量子カスケードレーザ利得媒体であり、前記外部空洞レーザは、量子カスケード外部空洞レーザであり、かつ前記試料は、気体試料である請求項13から17のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.装置の詳解
ここで
図1を参照すると、試料を検出する装置10が示される。装置は、半導体利得媒体14と、例えば少なくとも部分的に鏡張りの面16、18によって画定される光共振器とを含む外部空洞半導体レーザ12を含む。これらの面16の一方は、例えば利得媒体14又は利得媒体を含む半導体素子の研磨面であり得る。試料は、概して気体形状であり、かつ利得媒体14と光学的に結合されるように、外部空洞半導体レーザ12の光共振器又は光空洞15内に位置する吸収セル20に導入されるか、又は吸収セル20中に存在する。光検出器22は、例えばレーザ12による光出力の強度又はパワーを検出し、かつこの強度又はパワーを示すレーザ出力信号yを発生させるように、反射面の部分的に透過性なもの16を通してレーザ12に結合させることによって、レーザ12によって発生した光を検出するように配設される。
【0022】
吸収セルは、種々の形状及びサイズであってもよく、例えば空洞内レーザ光が通過することを可能にするために適切に透明な窓を有する密閉容器であり、かつ吸収セルが光空洞内でレーザ光を横断するように位置決めされる。いくつかの実施態様では、少なくとも部分的に鏡張りの面及び利得媒体を含む光空洞全体は、吸収セル内に置かれてもよく、かつ他の実施態様では、試料が、空洞内レーザ光と相互作用するために、光共振器又は空洞内になおも存在する限り、これらの部分の全部未満が、吸収セル内にあるか、又はこれらの部分のいずれも吸収セル内になくてよい。
【0023】
利得媒体及び光共振器の利得特性に応じて、波長選択素子は、例えば固定又は回転可能な構成で、以下で論じる回折格子を使用して、レーザ中に又はその一部として含まれてもよい。
【0024】
装置10は、可変かつ制御可能な注入電流32をレーザ12及び特に利得媒体14に送出するように配設された制御ユニット30も含む。制御ユニット30は、注入電流32、又は注入電流32のいくつかの代用物若しくは利得媒体14の温度のようなレーザ12を駆動する他のいくつかの手段に対応する駆動信号xを出力するように配設される。以下で更に詳細に記載するように、配設及び操作様式によっては、注入電流32は、例えば種々のタイプのフィードバックループにおいて、レーザ出力信号yに応答して制御できる。
【0025】
分析器40は、駆動信号x及びレーザ出力信号yを受信し、かつこれらから、注入電流が変化するときのx及びyの間の関係から試料の検出される特性を表す少なくとも1つの試料パラメータzを導く。レーザ出力信号yは、光検出器22から分析器40に直接通過するように示されるが、種々の他の実装が可能であり、例えば分析器40又は分析機能の少なくとも一部が、制御ユニット30又は制御機能内に含まれ、かつ制御及び分析ユニット及び又は機能が、それ故に種々の方法で組み合わされ得る。1つのこのような例が、
図7A及び
図7Bに関連して以下で論じられる。
【0026】
半導体利得媒体は、好ましくは多重モード又は広域帯利得媒体であり、かつ例えば量子カスケードレーザ(QCL)半導体装置を使用して実装でき、量子カスケードレーザ(QCL)半導体装置は、吸収空洞20が、QCL装置を含む外部空洞レーザ12を形成する光共振器15内に含まれるように配設される。
【0027】
試料は、気体混合物、例えば環境大気、ヒト又は動物の呼気の試料であってもよいか、又は検出用の単一気体を含んでもよい。器具は、例えば1つのみの波長で、2、3若しくは多くの選択された波長で、又は波長範囲にわたるいずれかのかかる試料の吸収スペクトルを出力してもよいか、或いは吸収データから試料内で識別された1つ以上の種の識別又は濃度のような関連データを出力してもよい。試料は、代わりに液体形状、例えば環境水若しくは気体からの凝縮液の試料、又は血液若しくは尿のようなヒト若しくは動物被験者からの試料であってもよい。
【0028】
ここで
図2を参照すると、注入電流32と、光検出器22での検出レーザ光強度との間の関係を一般論として表す図が示される。同様のグラフが、駆動信号x及びレーザ出力信号yを関係付けて示すことができ、かつかかるグラフの結果として生じる形状は、これらの信号が注入電流及び検出レーザ光強度にいかに関連するかによって決まり、かつそれに応じて解釈され得た。グラフは、注入電流が利得媒体をレーザとして使わせるには不十分である、プラトー領域42を含む。このプラトー領域42がゼロを上回るレーザ出力強度を表し、かつ非ゼロ平均勾配を有する程度は、レーザ12、光検出器20、及び装置10中の他のノイズ発生源の特性によって決まる。レーザ12の閾値電流i
0を表す、グラフの尖点44の上に、検出強度は、ほぼ線形に上昇し、注入電流が増加し、スロープ46を辿る。
【0029】
発明者らは、特に試料が、レーザ12によって出力され、かつ光検出器22によって検出される波長で吸収するならば、試料の吸収空洞20への導入、又はかかる試料の濃度若しくは構造を変化させることが、
図2に示されるグラフの態様に影響を及ぼすことを観察した。よく知られたランベルト・ベールの吸収法則では、光検出器で検出された光の強度の逆数が、吸収体の濃度と指数関数的に単に変化する。しかしながら、発明者らによって吸収試料が、レーザ12の閾値電流の増加も生じさせることが観察された。このことは、高い注入電流で尖点44’を有するグラフ形状の変化として
図2に示される。スロープ46’の勾配は、吸収体の不存在下でのスロープのそれとも異なる。
【0030】
図2の説明に役立つグラフに照らして、分析器40は、例えば注入電流を変化させ、かつ結果として生じた駆動信号x及びレーザ出力信号yを分析することによって判定された、前記注入電流のレーザ閾値電流から少なくとも部分的に吸収空洞20内の試料の1つ以上の特性を判定するように配設できることが分かる。あるいは、又はその上、分析器40は、注入電流がレーザ閾値電流を上回って変化するにつれ、レーザ12による検出レーザ光出力の勾配から少なくとも部分的に吸収空洞20内の試料の1つ以上の特性を判定するように配設できる。当然に、これら2つの技術と、注入電流が変化する際のレーザ12の挙動に関連した他の技術との組み合わせが、使用できる。
【0031】
波長範囲にわたる試料の特性を判定するために、
図1の装置は、レーザ20が複数の波長の各々にわたって走査するために同調されるか、又は複数の波長の各々に同調するように構築できる。その場合光検出器22は、複数の波長の各々で、又はそれに近接してレーザ12の光出力を検出し、かつ注入電流は、各選択波長で又はその近くで変化又は変調される。このために、
図3は、当業者によく知られた種々の他のタイプの波長選択素子が使用できるが、光共振器の少なくとも部分的に反射する面の1つ18が、一次リトロー構成に取り付けられた回折格子50として実装される、
図1に類似した装置を示す。電気制御、信号取扱及び分析素子は、明瞭にするために省略されるが、
図1に示されるように提供されてもよい。利得媒体14は、正面54から出現する光が、空洞内吸収セル20を通して、かつ回折格子50へ向けられる前に、F1ゲルマニウムレンズ56によって平行にされる、量子カスケードレーザ(QCL)素子によって提供される。QCLの裏面58からの放射は、平行にされ、かつQCL出力を観察するために、IR感応光検出器22に向けられる。
【0032】
使用されるQCL素子は、Maxion型M738である。QCL素子用の小型で安定し、温度制御されたハウジングは、レーザに電流を供給するためのばね装填接点と;ペルチェ温度制御素子の電流、QCL注入電流、及びサーミスタ温度センサのハイブリッドサブDフィードスルーと;接続しやすいように速乾接続する冷却ブロックへの冷却液フィードスルーと;HC熱エポキシを使用するQCL素子及び冷却ブロックの熱結合と;凝縮を回避するための内部相対湿度センサのフィードスルーと;QCL光出力を光検出器22に向けるためのQCL素子の裏面でのコリメーションレンズ60とを使用して提供される。
【0033】
QCLハウジングは、XYZマイクロメータステージに取り付けられ、回折格子50と、QCL素子52との間での有効なフィードバックのための光共振器15の光軸を一致させるためにQCL面の微調整を可能にする。レーザの波長同調は、小型圧電回転ステージ(Newport AG−PR100P)に取り付けられた格子50の回転によって達成される。レーザの同調範囲及びパワー出力の例は、
図4及び
図5に示される。レーザ波長は、出力をBristolモデル721スペクトル分析器に向けることによって測定された。レーザの波長同調は、波長制御素子62によって
図3に一般論として示される。
【0034】
気体のような試料の成分の濃度をその吸収スペクトルから判定するために、吸収気体の不存在下で(バックグラウンド)スペクトルをその上に測定することが望ましいことがある。2つのスペクトルの波長範囲は、2つの適切な比較を行うために一致すべきであり、かつ高価でかさばるスペクトル分析器の使用は、展開可能な器具で望ましくないので、波長走査の反復可能性の問題が重要になる。格子ステージの回転によって起動される時に論理遷移を提供したマイクロスイッチ(Baumer MyCom)は、
図3の配設で使用され、連続した波長走査が開始できる基準点を定義する。
図3の配設を使用する約60cm
−1の範囲にわたって達成された反復可能性は、1%よりも良好である。
【0035】
注入電流の関数である検出レーザ光出力の挙動を判定するように、
図1又は
図3の装置が構成及び制御できる幾つかのスキーム例がここで論じられる。第1のかかる例が、
図6に示される。この例において、
図1のレーザ出力信号yであってもよい光検出器からのパワー信号出力は、例えば
図1の制御ユニット30内に又は制御ユニット30として実装できる、一定のパワーフィードバックループ回路70に提供される。この例において、複数の波長で測定される吸収空洞20内の吸収試料の導入又は変更によって誘発される閾値電流の変更は、波長の関数である試料の吸収プロファイルを推定するために使用される。閾値電流は、検出器ノイズレベルを超えて検出可能なレーザパワーを生成する最小注入電流であるように選ばれる。レーザパワーは、注入電流に印加される制御信号として使用され、それを閾値で維持する。注入電流の変調及び位相敏感検出は、信号とノイズの比、及びそれ故に感度を向上させるためにも使用され得る。一旦、波長範囲にわたる閾値電流のプロファイルが記録されると、基準スペクトルデータに対するプロファイルの適合度は、試料内での種の濃度を検索するために使用され得る。あるいは、検出すべき種の吸収ピークと一致する単一波長での測定が、使用できる。
【0036】
第2のかかる例において、注入電流32は、高い周波数で同時に変調されながら、閾値電流にわたって傾斜を付けられる。位相敏感検出スキームが、信号とノイズの比を向上させるために使用できる。このスキームでの注入電流32の適切な駆動信号が、
図7Aに示され、
図7Aでは、閾値電流が約872.5mAに位置することが予測される状況での時間に対する注入電流32のグラフを示す。必要であれば、注入電流の傾斜範囲は、閾値電流が傾斜範囲内に留まるように連続的に又は定期的に調整できる。
【0037】
位相敏感検出は、明確な閾値電流に関して閾値電流で狭いピークを示す、パワーの二次導関数を引き出すためにも使用され得る。閾値電流を高精度に判定するために、ピーク検出アルゴリズムが使用され得る。あるいは、位相敏感検出三次導関数が、電流閾値を固定点に維持するために注入電流の制御信号として使用され得、このようにしてレーザの波長が走査される時に閾値電流の直接の尺度を提供する。
【0038】
図7Bは、
図1又は
図3の装置が、位相敏感検出素子80、並びに電流オフセット及び変調素子82を使用して、いかにして実装され得るかを示す。電流オフセット及び変調素子82は、
図7Aで示される形状で、更に速い変調と組み合わされた電流傾斜の形状で、変調駆動信号84を提供する。位相敏感検出素子80は、この変調された駆動信号を基準として受信し、かつ注入電流32に関してレーザ出力信号yの二次導関数2f及び三次導関数3fを出力するためにこれを使用する。閾値電流でゼロ切片である正及び負のピークを表示する三次導関数3fは、増幅器86で変調された駆動信号と組み合わされ、変化する閾値電流に対して固定点で変調駆動信号の傾斜を維持するオフセットを提供する。閾値電流は、次には駆動電流に対するレーザ出力信号の二次導関数2fにおけるピークとして分析器40によって読まれ得る。
【0039】
本明細書に記載された装置は、種々の方法でパッケージ化され得る。例えば、幾つか又は全部の構成部品(例えば光共振器、吸収セル、利得媒体及び光検出器)を、吸収セルを実装するために使用される中空導波管構造を備えた単一の基板に統合することは、所与の波長で閾値電流の高い安定性及び再現性を提供し得た。高い安定性は、器具の感度を向上させる。高い再現性は、必要な較正頻度を減少させ、それにより器具の検出率を増加させる。
【0040】
装置が制御できる方法及び試料の特性を導くために分析されたデータの更なる論考は、下記の「4.データ分析」の項に提供される。
2.スペクトル測定例
【0041】
ジメチルカーボネート(DMC)及びペンタフルオロエタン(PFE)が、以上に論じた吸収空洞20内の試料として使用するための空洞内吸収体として選択された。両者共、1100mAで外部空洞QCL12の1265〜1345cm
−1同調範囲内に位置する広帯域スペクトルを有する。この領域におけるそれらの吸収断面積は、
図8A及び
図8Bで7.5ミクロン領域に示される。
【0042】
これら2種の気体の外部空洞QCL 12を使用して記録された空洞内吸収スペクトルは、300ppm DMCに関して
図9A、かつ1000ppm PFEに関して
図9Bに3つの異なるQCL注入電流IQCLで示される。各グラフにおいて、上の曲線は、試料の不存在下でのバックグラウンド信号yを表し、かつ下の曲線は、試料の存在下での検出器信号yを表し、各々は、レーザ12によって同調可能な全波長範囲にわたる。
【0043】
波長選択吸収は、両方の場合に、特に1310cm
−1でQ分岐の強い吸収が明瞭に見られるPFEに関して明白である。
図9BのPFEの1000mAデータと、ランベルト・ベールの挙動に関して計算された吸収スペクトルとの比較は、
図10に示される。ランベルト・ベールの吸収曲線(図中で1番上の曲線)と比較して、我々の外部空洞QCLデータ(下の2本の曲線)における明らかな吸収は、極めて増進した吸収を示す。例えば1302cm
−1で、ランベルト・ベールの吸収は、我々のデータにおいて観察された≒65%と対照的に≒3.5%である。
【0044】
所与の波数での各化合物に関する伝送Tは、伝送されたパワーから計算できる:
【数1】
【0045】
両方の化合物に関するスペクトルの興味深い特徴は、注入電流による所与の波数での伝送Tの変化である:電流が減少すると、Tは、急激に低下し、場合によりゼロまで減少する。この挙動は、Tが、飽和効果の不存在下で、気体の吸収経路長、吸収断面積、及び気体濃度のみによって決定される従来の吸収分光法におけるランベルト・ベールの挙動と対称的である。外部空洞QCL12のmWパワーレベルで、飽和効果は、観察された非線形伝送を引き起こす可能性が低いように見えた。実際に、所与の波長及び注入電流での伝送は、次項に記載するように空洞内吸収体濃度に依存することが認められ、他方で飽和強度は、濃度と無関係であるので、飽和は無視できる。
【0046】
空洞内吸収測定は、空洞内吸収の挙動を特徴付けるために、一定の波数であるが、注入電流I及び気体濃度Nを変化させてなされた。各場合において、レーザ出力信号は、空洞内吸収体有り及び無しで測定され、かつ伝送Tは、以前の通りに計算された。1300cm
−1の波長に関するDMCの結果は、
図11に示される。データは、換算電流I’の関数として示される:
【数2】
(式中I
thrは、用いられた波長に関する閾値電流である)。水平線は、以前観察された電流と無関係な各濃度のランベルト・ベールの挙動から予測される吸収を表す。観察された吸収増進は、空洞内セル中の有効吸収経路長の増加によるだけでは起こり得ないことに注目せよ。さもなければ増進が、注入電流と無関係となるからである。
【0047】
更なる一連の空洞内吸収測定がなされ、2つの異なる波長で、気体濃度Nの値の範囲でレーザ閾値電流I
thrを測定した。1294cm
−1の波長に関する結果は、
図12に示される。
3.レート方程式モデル
【0048】
以上に示した結果は、観察された空洞内吸収増進が、線形ランベルト・ベールの吸収の増幅よりもむしろ、外部空洞レーザシステム自体の摂動から起こることを証明する。レーザを記載するレート方程式モデルは、それ故に記載された効果を見抜くために使用された。
3.1 ベースモデル
【0049】
我々は、Elsasser&Genstyの3レベルモデルを採用する。(T.Gensty&W.Elsasser、「Semiclassical model for the relative intensity noise of intersubband quantum cascade lasers、Optics Communications、256、171−183(2005))。上のレーザレベルであるレベル3は、注入によってポピュレート(占有)され(populated)、かつレベル1及び2に対するフォノン散乱及び誘導放出によってデポピュレート(解放)される(depopulated)。レベル2は、レベル3から誘導放出及びフォノン散乱によってポピュレートされ、かつレベル1に対してフォノン散乱によってデポピュレートされる。レベル1は、レベル3及び2からフォノン散乱によってポピュレートされ、かつ後続のミニバンドに対する損失によってデポピュレートされる。光子は、誘導かつ自然放出によって生成され、かつミラー損失、及びこの場合に空洞内吸収のようなプロセスを通して失われる。
【表1】
【0050】
レベルiのポピュレーションNi及び光子数Pのレート方程式は、次の通りである:
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【0051】
I
inは、注入電流であり、かつqは、電子上の電荷である。全ての導関数をゼロに設定することにより、光子数Pに関して:
【0052】
AP
2+BP+C=0
(但し
【数7】
【数8】
【数9】
)を求める。
【0053】
二次方程式の標準の解を使用し、かつI
in=0で条件P=0を設定して、定常状態光子ポピュレーションを求める:
【数10】
【0054】
モデルパラメータの典型的な値によって与えられるA、B及びCに関するPの図が、
図13に示される。挙動は、我々の外部空洞QCLシステムで実験的に観察されたものと質的に類似し、かつ
図2に示された関係と本質的に同じである。
【0055】
図13の図の3つの領域が識別され得る:閾値前、閾値後及び〜0.18Aでの閾値自体である。
【0056】
低電流、閾値前領域で、B<0かつB
2>>4ACであり、そこから閾値前の限定的なケースが生じる:
【数11】
【0057】
閾値後は、高電流で、条件B
2>>4ACが残るが、重要なことに、Bは、符号を変更した。それ故に限定的なケースは:
【数12】
【0058】
閾値は、B=0である電流として識別され、そこから閾値電流I
thrを求める:
【数13】
【0059】
閾値後領域の勾配
【数14】
は、次の通りである:
【数15】
3.2 空洞内吸収の効果
【0060】
レート方程式モデルの枠組みで、空洞内吸収の効果は、光子が吸収により空洞から失われるので、光子寿命τ
pを低下させることである。空洞内吸収に起因するこの追加損失のレート方程式は:
【数16】
(式中、εは、断面積であり、かつNは、空洞内吸収体の数密度であり、cは、光の速度であり、lは、吸収体(例えば、空洞内セル)によって占められる空洞の長さであり、かつLは、空洞の全長である)である。
【0061】
空洞内吸収体の存在下での光子の損失率
【数17】
は、
【数18】
になり、そこから空洞内吸収体の存在下での光子寿命
【数19】
が定義され得る。空洞内吸収の効果は、それ故に減少した光子寿命
【数20】
の使用のみによって、3.1項に概要を述べたレート方程式モデルに容易に組み込まれる。
【0062】
図14A及び
図14Bは、空洞内吸収の無いレート方程式モデルの結果を、修正光子損失率定数
【数21】
が使用される、空洞内セル中の吸収度0.004(ppm.m)
−110の300ppmの吸収体を有するそれと比較する。2つの特徴が明らかである。
図14Aから、空洞内吸収体(ICA)の存在下で、閾値後勾配dP/dI
inが減少し、かつ
図14Bで閾値電流が増加することが分かる。
図14Bは、拡大した水平尺度を使用して、閾値電流の周りの区域を示す。式5によって与えられる値
【数22】
及び
【数23】
の値から式3及び式4によって予見されるように、勾配及び閾値の両方の変化は、2.6%である。
【0063】
光子数Pは、伝送を評価する目的で、測定されたQCL出力強度と比例するように選ばれる。
【0064】
次の項は、電流の関数であるP/P
0の挙動が、吸収体濃度、吸収体断面積及びQCL利得によっていかに影響を及ぼされるかを示す。結果は、減少した電流I/I
thr,0の関数として示される;I
thr,0は、吸収体の不存在下での閾値電流を指す。モデルパラメータは、表1に与えられる。
【0065】
図15A及び
図15Bは、断面積4×10
−3(ppm.m)
−1の吸収体の濃度を変化させるための伝送のシミュレートされた挙動を示し、
図15Bは、
図15Aの閾値の周りの詳細を示す。図は、吸収体の所与の濃度に関して観察された伝送が、レーザ電流に深く関連し、閾値のすぐ上で〜0であり、かつ高電流の限界で1に近い値に単調に上昇する。効果は、吸収体が、ランベルト・ベールモデルによるレーザパワーの一定の割合を吸収するよりもむしろ、閾値を高い電流に移動させる効果を有するので生じる。
【0066】
伝送シミュレーションT
ICAの結果は、「増進係数」E
ICA=T
BL/T
ICAを定義することによって、通常通りT
BL=exp(−εNI)として計算される、ランベルト・ベールの伝送T
BLを使用して、従来の吸収実験と比較できる。
図15A及び
図15Bのデータの増進係数以上が、
図16に示される。
【0067】
所与の吸収体濃度に関する閾値電流未満の電流値の増進係数は、ゼロに設定された。
【0068】
同様の結果が、吸収体断面積による伝送及び増進の変化に関して得られる。
【0069】
ここまでは、モデリングが、半導体利得媒体14の利得の単一の任意の値に限定された。レート方程式モデリングの結果をスペクトル解釈においていかにして使用するかを考慮する際に、QCLの同調範囲にわたる波数による利得の変化が、考慮されねばならない。
図17は、利得による伝送の変化を示し、その減少した電流は、ICAが4×10
−3(ppm.m)
−1の断面積及び濃度60ppmを有する、利得=140の閾値電流に関連して計算された。
【0070】
しかしながら、減少した電流が、各利得値で、その利得の閾値電流に関連して代わりに計算されるならば、全ての利得値の伝送曲線は、同一である。
【0071】
式1から導かれるP/P
0の完全関数形は、厄介であり、かつあまり透過的でなく、かつそれ故にあまり役に立たない。代替案は、(式2から)閾値上でIに対するPの線形従属性に注目することである:
【数24】
(式中、
【数25】
かつ
【数26】
である)。その場合、伝送P/P
0は
【数27】
(式中、
【数28】
かつ
【数29】
である)である。
【0072】
高電流でのP/P
0の限界が1でなく、
【数30】
であることに注目せよ。
【数31】
と書き表すことによって、伝送は、更に好都合には、次のように書き表され得る:
【数32】
4.データ分析
【0073】
レート方程式モデルの関係において、吸収空洞20内に存在する空洞内吸収体の濃度は、式5による空洞内吸収によってもたらされた光子寿命の変化から根本的に導き出せる。しかしながら、種々の可能な測定戦略及び関連したデータ縮小方法があり、その幾つかをここで記載する。
4.1 伝送測定
【0074】
図11のデータから定量的濃度測定を引き出す手段が、式7によって提供され、K、R及び
【数33】
を適合パラメータとして扱う。8×10
10(ps)
−1及び−1×10
11(pC)
−1のK及び
【数34】
の物理的に妥当な初期値を設定し、かつ0〜1.1のRを認めると、表2に示したRの値(光子寿命が空洞内吸収体の存在によって減じられる係数)が得られた。
【表2】
【0075】
単一濃度(100ppm)に関する0.97125±0.00242の光子寿命減少係数Rを導くための100ppm DMCの伝送測定に対する式7の非線形最小二乗適合の例は、
図18Aに示され、かつ表2のデータから1σエラーバーによって
図18Bに示される。
【0076】
寿命減少係数Rは、
【数35】
によって空洞内吸収体の濃度に関連してもよく、そこから空洞内吸収体の濃度Nは、光子寿命、
【数36】
の以前の測定を所与として、検出種としてDMCに関して
図19に示す濃度に対する1/Rの図のスロープから求められ、そこで1/Rの適合線は、2.868×10
−4のスロープ及び1.00026の切片を有する。
【0077】
実際の装置において、レーザ出力は、Rの単一値を判定するために、空洞内吸収体により、又はよらずに注入電流の範囲にわたって測定できる。その場合に未知の濃度が、式9を使用して、R値から判定できた。
【数37】
【0078】
外部空洞アライメントのいずれかの所与の波長及び状態に関して、光子寿命
【数38】
は、最初に同一の測定を行うが、既知の濃度の較正ガスを使用することによって判定され得る。
4.2 閾値電流の変更
【0079】
図12に示したようなデータから定量的濃度測定を引き出す更なる手段は、空洞内吸収体によってもたらされた増加した閾値電流を測定し、かつ空洞内吸収の不存在下で測定された閾値にそれを正規化することによって提供される。この場合に、式3から、閾値電流の比は、式9と似ている。
【数39】
【0080】
図20は、3.2項に記載された測定で選択された両方のデータセットを示す。空洞内吸収体の濃度の関数である2つの波長での閾値電流測定がある。各データセットへの線形最小二乗回帰が同様に示され、そのパラメータは、表3に示される。
【表3】
【0081】
式10は、2つの波長でのスロープの比が、吸収度と等しくあるべきことを予見する。
図20及び表3のデータに関して、これらの比は、それぞれ2.39及び2であり、〜20%の一部エラーに対応する。結果は、閾値電流方法論の妥当性を裏付け、かつそれが、〜10%精度レベルで、数十ppmの中程度IR吸収体を検出ために使用され得ることを示す。
【0082】
代替的な実装において、かつ
図6及び
図7に関連して以上に述べたように、閾値電流は、狭い範囲にわたり、例えば閾値電流を中心として繰り返し掃引でき、信号平均化を介して感度向上を可能にする。この一例において、回折格子50によって選択された所与の波長で、レーザパワー対電流の3つのトレースが、それぞれ既知の濃度の(選択された波長で吸収しない)空気、試料ガス、及び較正ガスを含むセルによって記録された。閾値の周りのレーザパワー挙動の3つのトレース例が、
図21に示され、図中、較正及び試料ガスは、1 atm N
2中の50及び100ppmジメチルカーボネート混合物である。
【0083】
式1は、非線形最小二乗適合関数として使用するために書き直されてもよく、式中、適合パラメータの1つ、R’は、空洞内吸収体によってもたらされた吸収の不存在下での閾値電流I
thr,0の一部変更を表し;空気試料トレースへの適合のためのR’は、(定義により)1に拘束され(constrained to unity)、試料及び較正ガストレースへのその後の適合において拘束される、I
thr,0を判定する。各適合度から導かれたR’値は、次に未知の試料の吸収度を判定するために使用される。プロセスを異なる波長で繰り返すことによって、試料の吸収スペクトルが、得られる。ジメチルカーボネートの例が、
図22に示される。1270〜1320cm
−1領域の13の波長で測定された試料吸収度は、エラーバーにより示される;実線は、濃度が適合パラメータである、ジメチルカーボネートの既知の吸収スペクトルの線形最小二乗適合を表す。適合濃度は、100ppmの真の値と比較して、118±14ppmである。
【0084】
他の実施態様において、電流は、小さい(〜1mA)正弦波変調を同時に印加しながら、
図21に関連して記載されたように、レーザ閾値にわたって傾斜を付けられてもよい。その場合、ロックイン増幅器が、レーザパワーの二次(2f)及び三次(3f)導関数信号を検出及び記録するために使用できる。
図23は、レーザパワー及び2つの導関数の例を示す。
【0085】
図14A及び
図14Bのレート方程式モデルシミュレーションの検討により、二次導関数信号が、パワートレースの変曲点で最大値に達することが示される。それ故に閾値電流は、ピーク関数を二次導関数に適合させることによってここで同様に得られる。上記の例において、レート方程式モデル適合は、I
thr=894.2±0.24mA(1σ)を与え、かつ二次導関数適合(任意に、ピーク関数としてガウシアンを使用して)は、I
thr=895.2±0.004mA(1σ)を与える。二次導関数への適合の精度は、吸収度において≒10
−5の感度に対応するが、但し
図3に対して記載された装置に関して、時間閾値の不安定な状態は、感度減少に繋がることが予測される。アラン分散分析は、平均化期間の適切な選択により、減少が≒3の係数であることを示す。
【0086】
第3高調波信号が、制御ループ中のエラー信号として使用されるべき適切なサイズ及び形状であり、その中で中心点I
0が二次導関数信号の最大値で保持され、注入電流Iが中心点I
0の周りで傾斜を付けられるならば;I
0は、従って閾値電流の直接測定である。先に記載したレート方程式適合方法と比較して、実際の装置においてこの方法を使用する利点は:
(i)閾値電流が、直接読め、適合の必要性を回避する
(ii)ロックイン増幅器帯域幅により、閾値を上回るレーザパワーのモードホッピング非線形性に対する感度減少
(iii)I
thr測定の最大2桁の精度向上
5.感度
【0087】
従来のランベルト・ベールの吸収に対する上記方法及び装置の感度増進は、2つの方法が質的に異なるので、数値化することが容易でない。しかしながら、幾つかの例が、現在記載されている発明の利点を示すことに役立つ。
(1)10ppmデータセットで使用されるDMCの濃度(未知であると想像される)を計算するために100ppmDMCに関して4.1項で判定されたR値から光子寿命を使用すると、11.3±0.35ppmの濃度が推定される。10ppmの真の濃度と比較して、測定は、13%まで正確である。30ppmデータに関する同様の計算は、27.5±0.35ppm、9%の精度を与える。従来の吸収測定が、≒1%の絶対感度を有すると仮定すると、10%の一部精度を有する測定は、10%の絶対吸収を必要とする。かかる吸収測定に記載された空洞内セルを使用することは、≒550ppm DMCを必要とするであろう。それ故に増進係数は、少なくとも55である。
(2)
図11から、注入電流の適切な選択によって、90%及び50%の吸収値が、それぞれ100及び30ppm DMCに関して確実に作り出せることが分かる。ランベルト・ベールの吸収の計算は、それぞれ≒45及び≒83の係数の増進に対応する、それぞれ2%及び0.6%しか与えない。
(3)統計的に厳密でないが、閾値測定方法論の感度の尺度は、切片の標準偏差よりも大きいI/I
thrの増加を引き起こすために必要な空洞内吸収体の濃度を計算することによって表3から見出すことができる;この濃度は、≒6ppmであり、≒90の増進に対応する。
【0088】
本発明の特定の詳細な実施態様が記載されたが、当業者は、種々の修正及び変更が、請求項に定義された本発明の範囲から逸脱せずになされ得ることを認めるであろう。例えば、回折格子50にリトロー格子構成を使用する代わりに、リットマン−メトカフ構成のような他の構成が使用できるであろう。