特許第6394953号(P6394953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6394953-ギア装置 図000002
  • 特許6394953-ギア装置 図000003
  • 特許6394953-ギア装置 図000004
  • 特許6394953-ギア装置 図000005
  • 特許6394953-ギア装置 図000006
  • 特許6394953-ギア装置 図000007
  • 特許6394953-ギア装置 図000008
  • 特許6394953-ギア装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394953
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ギア装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 29/20 20060101AFI20180913BHJP
   F16H 55/18 20060101ALI20180913BHJP
   F16H 57/12 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   F16H29/20
   F16H55/18
   F16H57/12 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-198066(P2014-198066)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-70317(P2016-70317A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】山口 真矢
(72)【発明者】
【氏名】岡部 祐貴
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−053274(JP,U)
【文献】 特開2004−340367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 29/20
F16H 55/18
F16H 57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のギア歯を含み、セクター形状を有するメインフェースギアと、
前記メインフェースギアのギア歯と同じ歯形の複数のギア歯を含むと共に、前記メインフェースギアに対して相対的に移動可能に設けられたサブフェースギアと、
前記サブフェースギアの延在方向において、前記サブフェースギアを付勢する付勢部材と、
前記メインフェースギア及び前記サブフェースギアと噛み合う相手ギアとを備え、
前記メインフェースギアは、前記延在方向に沿って延在する溝部を有しており、
前記サブフェースギアは、前記溝部に配置されている、ギア装置。
【請求項2】
前記サブフェースギアのギア歯は、凹面と凸面とを有しており、
前記付勢部材は、前記サブフェースギアに対して前記凹面側に配置されている、請求項1に記載のギア装置。
【請求項3】
前記サブフェースギアのギア歯は、凹面と凸面とを有しており、
前記付勢部材は、前記サブフェースギアに対して前記凸面側に配置されている、請求項1に記載のギア装置。
【請求項4】
前記溝部に、前記サブフェースギアの移動を規制する規制部が設けられている、請求項に記載のギア装置。
【請求項5】
前記溝部に、前記付勢部材の取り付け部が設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載のギア装置。
【請求項6】
前記サブフェースギアは、前記付勢部材と当接する突起を有している、請求項1からのいずれか1項に記載のギア装置。
【請求項7】
前記メインフェースギアのギア歯に対して、前記メインフェースギアの回転軸側とは反対側に前記サブフェースギアが配置されている、請求項1からのいずれか1項に記載のギア装置。
【請求項8】
前記相手ギアは、螺子状の捩れを有したヘリカルギアである、請求項1からのいずれか1項に記載のギア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シザーズ構造を有するセクター形状のフェースギアを備えたギア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、環状配置された複数のギア歯を有するフェースギアと、当該フェースギアに噛合される相手ギアとしての入力ギアと、フェースギアの背面に設けられたギア側磁石としてのリング磁石と、当該リング磁石に対向して斥力を生じせしめる支持側磁石とを備える、ギア装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のギア装置においては、支持側磁石の斥力に基づき、非接触でフェースギアを支持する磁気軸受を形成している。そして、フェースギアにおける入力ギアとの噛み合い部分に対応する位置に支持側磁石の一つが設けられており、該磁石が形成する磁界に基づく斥力により、入力ギアとの噛み合い部分を当該入力ギア側に付勢することによって噛合状態を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−155802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のギア装置では、歯打ち音(ラトル音)の低減について考慮されていない。また、部品点数が多いため、ギア装置の製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一例としてのギア装置は、複数のギア歯を含み、セクター形状を有するメインフェースギアと、前記メインフェースギアのギア歯と同じ歯形の複数のギア歯を含むと共に、前記メインフェースギアに対して相対的に移動可能に設けられたサブフェースギアと、前記サブフェースギアの延在方向において、前記サブフェースギアを付勢する付勢部材と、前記メインフェースギア及び前記サブフェースギアと噛み合う相手ギアとを備え、前記メインフェースギアは、前記延在方向に沿って延在する溝部を有しており、前記サブフェースギアは、前記溝部に配置される。
【0007】
本発明に係るギア装置により、歯打ち音を低減すると共に、部品点数を削減してギア装置の製造コストを低下させることができる。
【0008】
本発明のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るギア装置の概略平面図である。
図2】第1実施形態に係るギア装置の概略分解斜視図である。
図3】ギア装置の付勢部材の概略断面図である。
図4】第1実施形態に係るギア装置の噛み合い状態を説明する概略図である。
図5】第2実施形態に係るギア装置の概略平面図である。
図6】第2実施形態に係るギア装置の概略分解斜視図である。
図7】第2実施形態に係るギア装置の噛み合い状態を説明する概略図である。
図8】第3実施形態に係るギア装置の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書においては、メインフェースギアに対してピニオン側が上方向に対応し、その反対側が下方向に対応する。また、水平方向とは、メインフェースギアに対して水平な方向に対応する。
【0011】
[第1実施形態]
図1から図4を参照して、第1実施形態に係るギア装置について説明する。なお、図3は、図1のIII−III線に沿った概略断面図である。また、図4は、メインフェースギアのギア歯とサブフェースギアのギア歯との噛み合い状態を示す概略図であり、両ギア歯とピニオンのギア歯の水平方向に沿った概略断面図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、ギア装置100は、複数のギア歯11を含み、セクター形状を有するメインフェースギア1と、メインフェースギア1のギア歯11と同じ歯形の複数のギア歯21を含むと共に、メインフェースギア1に対して相対的に移動可能に設けられたサブフェースギア2と、サブフェースギア2の延在方向において、サブフェースギア2を付勢する付勢部材としての金属製の板バネ3を備えている。また、ギア装置100は、メインフェースギア及び前記サブフェースギアと噛み合う相手ギアとして、ピニオン(ピニオンギア)4を備えている。このピニオン4、メインフェースギア1及びサブフェースギア2は、樹脂又は金属等から形成することができる。
【0013】
また、メインフェースギア1は、例えば、略扇形のセクター形状を有しており、セクターギアとして機能する。そして、メインフェースギア1の回転中心である中心部には、回転軸5が設けられている。また、メインフェースギア1は、円弧上の先端部分に環状配置された複数のギア歯11を備えている。このメインフェースギア1は従動ギアとして機能し、その回転軸が出力軸に対応する。そして、ピニオン4は駆動ギアとして機能し、その回転軸が入力軸に対応する。ただし、メインフェースギア1を駆動ギアとして機能させ、ピニオン4を従動ギアとして機能させてもよい。また、メインフェースギア1は、半円状又は他の円弧形状を有していてもよい。
【0014】
図2に示すように、メインフェースギア1のギア歯11及びサブフェースギア2のギア歯21は、上方(ピニオン4の回転軸方向に直交する方向)に突出している。また、ピニオン4は、螺子状の捩れをもって形成された二条のギア歯41を有するヘリカルギアである。そして、ギア歯11及びギア歯21は、ギア歯41に対して転がり接触で噛み合うように捩れをもった形状を有している。
【0015】
また、メインフェースギア1は、サブフェースギア2の延在方向に沿って延在する溝部としてのレール15を有している。このレール15は、メインフェースギア1のギア歯11の配列方向と同心円状に湾曲して延在している。すなわち、レール15は、メインフェースギア1の回転方向に沿って延在している。そして、レール15は、サブフェースギア2の外形と相補的な内形を有している。
【0016】
サブフェースギア2は、メインフェースギア1と隣り合うように、レール15に摺動可能に配置される。そのため、板バネ3に付勢されると、サブフェースギア2は、メインフェースギア1に対して相対的に移動する。また、レール15に配置されたサブフェースギア2のギア歯21は、レール15から露出している。そして、ギア歯21は、メインフェースギア1のギア歯11と並んで、ピニオン4のギア歯41と噛み合うギア歯を共に構成している。
【0017】
図3に示すように、レール15に、サブフェースギア2の移動を規制する規制部として、ストッパー16が設けられている。このストッパー16は、サブフェースギア2の過回転を防止するために、レール15の端部に形成された段差部である。サブフェースギア2がストッパー16に当接することにより、レール15内におけるサブフェースギア2の移動(回転)を所定の範囲内に規制することができる。そのため、ストッパー16は、図3に示すようにサブフェースギア2の端部がストッパー16に当接した状態において、ギア歯11とギア歯21の歯筋が均一に揃う位置に配置されている。
【0018】
また、レール15には、板バネ3の取り付け部としての穴部17が設けられている。この穴部17は、レール15の端面に形成されている。そして、板バネ3は板状の端部31を有しており、端部31を穴部17に挿入することによって、板バネ3がレール15に取り付けられる。なお、穴部17は、メインフェースギア1の側面(レール15の端面)を貫通する貫通孔であってもよい。
【0019】
また、板バネ3は、端部31から連続するバネ部32を有している。そして、バネ部32は、サブフェースギア2の端面に当接して、メインフェースギア1の回転方向とは反対の方向にサブフェースギア2を付勢する。また、サブフェースギア2は、板バネ3と当接する突起22を有している。この突起は、サブフェースギア2の板バネ3側の端面に形成されており、板バネ3の係脱を防止する規制部として機能する。すなわち、板バネ3の一方側においては、端部31が穴部17に挿入されており、他方側においてはバネ部32が突起22に当接している。そのため、突起22により板バネ3の上方移動が規制され、板バネ3(端部31)が穴部17から抜け出ることが防止される。
【0020】
また、図4に示すように、メインフェースギア1のそれぞれのギア歯11は、凹状に湾曲した凹面11aと、凸状に湾曲した凸面11bとを有している。また、サブフェースギア2のそれぞれのギア歯21は、凹状に湾曲した凹面21aと、凸状に湾曲した凸面21bとを有している。そして、ギア歯11及びギア歯21において、ピニオン4のギア歯41との接触部分は、ギア歯11及びギア歯21の歯面上を斜めに移動する。すなわち、ギア歯41とギア歯11及びギア歯21との接触部分は、ギア歯11及びギア歯21の歯底から歯先(又は歯先から歯底)に向かって、歯幅方向における一方の端部から他方の端部へと斜めに移動する。
【0021】
そして、第1実施形態の板バネ3は、サブフェースギア2に対して、その凹面21a側に配置されている。すなわち、板バネ3は、凹面21aから凸面21bに向かう方向に付勢力を加えるように、サブフェースギア2の端面に面して配置されている。そして、メインフェースギア1、サブフェースギア2及び板バネ3によって、シザーズ構造が実現されている。そのため、メインフェースギア1とサブフェースギア2とが噛み合う際に、ピニオン4のギア歯41が、メインフェースギア1のギア歯11とサブフェースギア2のギア歯21の間に挟み付けられる。このシザーズ構造によって、バックラッシュを抑制して、歯打ち音を低減することができる。
【0022】
より詳細には、ギア歯11及びギア歯21とギア歯41との間には、隙間(バックラッシュ)が存在する。そのため、伝達される回転力(駆動力)の向きの変化に伴い、歯面同士の分離及び衝突が生じる。そして、ギア歯11及びギア歯21の歯面と、ギア歯41の歯面との衝突に起因して歯打ち音が生じてしまう。そこで、シザーズ構造を設け、サブフェースギア2を、板バネ3の弾性力によって時計方向A(図1)に付勢する。これにより、メインフェースギア1及びサブフェースギア2が時計方向に回転する状態、又は停止状態において、サブフェースギア2のギア歯21とメインフェースギア1のギア歯11との間で、ピニオン4のギア歯41が挟み付けられる。
【0023】
そのため、図4の上側に示すように、時計方向Aに回転している状態では、ピニオン4のギア歯41が、サブフェースギア2のギア歯21とメインフェースギア1のギア歯11とに挟み付けられる。そして、ギア歯41は、接触部分C1においてギア歯11と接触し、接触部分C2においてギア歯21と接触する。これにより、バックラッシュを抑制して、歯打ち音を低減することができる。一方、図4の下側に示すように、時計方向Aとは反対の反時計方向B(図1)に回転している状態では、サブフェースギア2のギア歯21とメインフェースギア1のギア歯11の歯筋が揃う。そして、ギア歯41は、接触部分C3においてギア歯11と接触し、接触部分C4においてギア歯21と接触する。
【0024】
フェースギアは回転方向によって性能差があり、時計方向Aと反時計方向Bとの間で回転方向が切り替わるとき、凹面11a及び凹面21aの方が凸面11b及び凸面21bよりもバックラッシュが大きくなる。そのため、反時計方向Bから時計方向Aに回転方向が切り替わるときには、バックラッシュが大きくなる結果、応答性が悪くなり、歯打ち音も大きくなる。
【0025】
そこで、第1実施形態においては、シザーズ構造を設けると共に、サブフェースギア2に対して、その凹面21a側に板バネ3を配置している。これにより、時計方向Aにおける付勢力がサブフェースギア2に加わるため、時計方向Aに回転する際のピニオン4は、そのギア歯41がメインフェースギア1のギア歯11とサブフェースギア2のギア歯21とに挟まれた状態で回転する。一方、反時計方向Bに回転する際には、凸面11b及び凸面21bが揃ってピニオン4のギア歯41と噛み合う。
【0026】
このような第1実施形態によれば、時計方向Aに回転する状態から回転を停止した後に、反時計方向Bに回転を開始する際に、付勢部材の弾性力によって時計方向Aに加わる付勢力が減衰力として働くため、歯打ち音が低減される。また、反時計方向Bに回転する状態から回転を停止した際には、付勢部材の弾性力によってサブフェースギア2が付勢されてピニオン4を回転させる。これにより、ピニオン4のギア歯41は、メインフェースギア1のギア歯11の凹面11aに接触する。
【0027】
この場合、ピニオン4に加わるトルクが回転時よりも小さいため、歯打ち音が低減される。その後、時計方向Aに回転を開始する際のピニオン4は、そのギア歯41がメインフェースギア1のギア歯11とサブフェースギア2のギア歯21とに挟まれた状態で回転する。これにより、バックラッシュを抑制して応答性が向上する。さらに、シザーズ構造は、メインフェースギア1、サブフェースギア2、及び板バネ3(付勢部材)から構成されるため、部品点数が少なく且つ組み付けも容易である。このように、第1実施形態によれば、歯打ち音を低減すると共に、部品点数を削減して製造コストを低下させることができる。
【0028】
[第2実施形態]
続いて、図5から7を参照して、第2実施形態に係るギア装置200について説明する。なお、図4は、メインフェースギアのギア歯とサブフェースギアのギア歯との噛み合い状態を示す概略図であり、両ギア歯とピニオンのギア歯の水平方向に沿った概略断面図である。また、第2実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態で説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0029】
図5及び図6に示すように、第2実施形態においては、付勢部材としての板バネ203が、サブフェースギア202に対して、その凸面側に配置されている。すなわち、板バネ203は、サブフェースギア202の凸面221bから凹面221a(図7)に向かう方向に付勢力を加えるように、サブフェースギア202の端面に面して配置されている。そして、板バネ203は、サブフェースギア202に当接して、メインフェースギア201の回転方向とは反対の方向に付勢している。この板バネ203と、メインフェースギア201及びサブフェースギア202によって、シザーズ構造が実現されている。
【0030】
第2実施形態のメインフェースギア201も、サブフェースギア202が配置される溝部としてのレール215を有している。そして、レール215の端部には、サブフェースギア202の過回転を防止するための段差部としてのストッパー216が形成されている。なお、第1実施形態と同様に、レール215の端面には、板バネ203の取り付け部が形成されている。また、サブフェースギア202の板バネ203側の端面には、板バネ203の係脱を防止する規制部が形成されている。
【0031】
図7に示すように、メインフェースギア201のそれぞれのギア歯211は、凹状に湾曲した凹面211aと、凸状に湾曲した凸面211bとを有している。また、サブフェースギア202のそれぞれのギア歯221は、凹状に湾曲した凹面221aと、凸状に湾曲した凸面221bとを有している。そして、板バネ203の弾性力によって、サブフェースギア202が反時計方向B(図5)に付勢される。これにより、メインフェースギア201及びサブフェースギア202が反時計方向Bに回転する状態、又は停止状態において、サブフェースギア202のギア歯221とメインフェースギア201のギア歯211との間で、ピニオン4のギア歯41が挟み付けられる。
【0032】
より具体的に、反時計方向Bに回転している状態では、ピニオン4のギア歯41が、サブフェースギア202のギア歯221とメインフェースギア201のギア歯211とに挟み付けられる。そして、図7の下側に示すように、ギア歯41は、接触部分C3においてギア歯211と接触し、接触部分C4においてギア歯221と接触する。これにより、バックラッシュを抑制して、歯打ち音を低減することができる。一方、図7の上側に示すように、時計方向A(図5)に回転している状態では、サブフェースギア202のギア歯221とメインフェースギア201のギア歯211の歯筋が揃う。そのため、ギア歯41は、接触部分C1においてギア歯211と接触し、接触部分C2においてギア歯221と接触する。
【0033】
フェースギアは回転方向によって性能差があり、凹面211a及び凹面221aの方が凸面211b及び凸面221bよりも強度は弱い。そのため、時計方向Aと反時計方向Bとで、同じ入力トルクで回転させる場合、凸面側から回転力が加わるときにギア歯が破壊されなくとも、凹面側から回転力が加わるときにギア歯が破壊される可能性がある。そこで、第2実施形態においては、シザーズ構造を設けると共に、サブフェースギア202の凸面221b側に板バネ203を配置している。これにより、反時計方向Bにおける付勢力がサブフェースギア202に加わるため、反時計方向Bに回転する際のピニオン4は、そのギア歯41がメインフェースギア201のギア歯211とサブフェースギア202のギア歯221とに挟まれた状態で回転する。一方、時計方向Aに回転する際には、凹面211a及び凹面221aが揃ってピニオン4のギア歯41と噛み合う。
【0034】
このような第2実施形態によれば、反時計方向Bに回転する状態から回転を停止した後に、時計方向Aに回転を開始する際に、付勢部材の弾性力によって反時計方向Bに加わる付勢力が減衰力として働くため、歯打ち音が低減される。そして、時計方向Aに回転する際には、凹面211a及び凹面221aが揃っているため、メインフェースギア201のギア歯211の凹面211aと、サブフェースギア202のギア歯221の凹面221aとでピニオン4からの回転力を受けることになる。これにより、回転力(駆動力)を分散して受けることになり、ギア歯211及びギア歯221の耐久性が向上する。
【0035】
また、時計方向Aに回転する状態から回転を停止した際には、付勢部材の弾性力によってサブフェースギア202が付勢されてピニオン4を回転させる。これにより、ピニオン4のギア歯41は、メインフェースギア201のギア歯211の凸面211bに接触する。しかしこの場合は、ピニオン4に加わるトルクが回転時よりも小さいため、歯打ち音が低減される。さらに、シザーズ構造は、メインフェースギア201、サブフェースギア202、及び板バネ203(付勢部材)から構成されるため、部品点数が少なく且つ組み付けも容易である。このように、第2実施形態によれば、歯打ち音を低減すると共に、部品点数を削減して製造コストを低下させることができる。
【0036】
[第3実施形態]
続いて、図8を参照して、第3実施形態に係るギア装置300について説明する。なお、第3実施形態の説明においては、第1及び第2実施形態との相違点について説明し、第1及び第2実施形態で説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0037】
第1実施形態においては、メインフェースギア1の回転軸5を内側とした場合に、メインフェースギア1のギア歯11に対して、その内側にサブフェースギア2が配置されている。これに対して、第3実施形態においては、図8に示すように、メインフェースギア301のギア歯311に対して、メインフェースギア301の回転軸5側とは反対側にサブフェースギア302が配置されている。そして、付勢部材としての板バネ3は、サブフェースギア302に当接して、メインフェースギア301の回転方向とは反対の方向に付勢している。
【0038】
第1実施形態と同様に、板バネ3は、サブフェースギア302の凹面側に配置されており、メインフェースギア301、サブフェースギア302及び板バネ3によって、シザーズ構造が実現されている。このシザーズ構造によって、バックラッシュを抑制して、歯打ち音を低減することができる。また、時計方向における付勢力がサブフェースギア302に加わるため、時計方向Aに回転する際のピニオン4は、そのギア歯41がメインフェースギア301のギア歯311とサブフェースギア2のギア歯321とに挟まれた状態で回転する。
【0039】
このような第3実施形態によれば、時計方向Aに回転する状態から回転を停止した後に、反時計方向Bに回転を開始する際に、付勢部材の弾性力によって時計方向Aに加わる付勢力が減衰力として働くため、歯打ち音が低減される。そして、時計方向Aに回転を開始する際のピニオン4は、そのギア歯41がメインフェースギア1のギア歯311とサブフェースギア2のギア歯321とに挟まれた状態で回転する。これにより、バックラッシュを抑制して応答性を向上させることができる。
【0040】
さらに、シザーズ構造は、メインフェースギア301、サブフェースギア302、及び板バネ3(付勢部材)から構成されるため、部品点数が少なく且つ組み付けも容易である。このように、第3実施形態によれば、歯打ち音を低減すると共に、部品点数を削減して製造コストを低下させることができる。なお、板バネ3は、第2実施形態と同様に、サブフェースギア302の凸面側に配置してもよい。これにより、メインフェースギア301のギア歯311及びサブフェースギア302のギア歯321の耐久性が向上する。
【0041】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の各実施形態及び各変形例は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0042】
例えば、付勢手段は、板バネには限定されず、例えば、ゴム及び圧縮コイルバネ等の様々な弾性体を用いることができる。また、メインフェースギアの回転方向は一方向には限定されない。例えば、メインフェースギアの回転方向は、互いに逆向きの二方向に切り替え可能であってもよい。この場合、付勢部材は、サブフェースギアの延在方向において、メインフェースギアの回転方向又はその反対方向にサブフェースギアを付勢することになる。
【符号の説明】
【0043】
1:メインフェースギア、2:サブフェースギア、3:付勢部材、4:相手ギア、5:回転軸、11:ギア歯、15:溝部、16:規制部、17:取り付け部、21:ギア歯、21a:凹面、21b:凸面、22:突起、100:ギア装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8