特許第6394979号(P6394979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6394979
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】外装体及びワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20180913BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20180913BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20180913BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20180913BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20180913BHJP
【FI】
   H02G11/00
   B60R16/02 620A
   B60R16/02 623U
   H02G3/04 062
   B60N2/06
   B60N2/90
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-84803(P2015-84803)
(22)【出願日】2015年4月17日
(65)【公開番号】特開2016-208594(P2016-208594A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟司
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】坂田 知之
(72)【発明者】
【氏名】東小薗 誠
【審査官】 松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−507788(JP,A)
【文献】 特開平05−161232(JP,A)
【文献】 特開2013−049402(JP,A)
【文献】 特開2012−099301(JP,A)
【文献】 特開2008−025775(JP,A)
【文献】 特表2003−533955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/00−3/04
H02G 11/00−11/02
B60N 2/06
B60N 2/90
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に固定されるレールに対してスライド可能なスライド対象物のスライドに伴って前記レール内を移動可能で、かつ、前記レール内に収容されない余長部が曲がって前記レール外に配された余長吸収部材に収容される外装体であって、
複数の電線の各々が挿通される複数の溝部が並んで形成された電線保持部材と、
前記複数の電線を覆うように前記電線保持部材に取り付けられ、ラミネートフィルムからなるカバー部と、を備え、
前記電線保持部材には、前記電線の並び方向から、前記電線の並び方向に直交する方向に連続するスリットが形成されており、
前記電線保持部材における前記溝部が上下方向に並ぶ向きで前記レール内に配索され、
前記カバー部は、前記電線保持部材とは異なる材料で形成され、かつ、前記スリットが形成されていない可撓性のシートからなり、前記スリットは、前記電線保持部材と前記カバー部とのうち前記カバー部側が内側に曲がるように形成されており、
前記電線保持部材は、板状の板状部と、前記板状部の上下の端部から起立する複数の端壁と、前記複数の端壁の間に配されて前記板状部から起立し、前記複数の電線間を仕切る仕切り壁とを備え、各前記端壁と前記板状部との間は、肉薄の厚みで屈曲された曲げ部とされており、
前記板状部の上下の端部から起立する前記複数の端壁の先端部は、互いに内方に突出する突部が形成されており、
前記電線保持部材は、前記端壁における前記突部を含む前記カバー部側の端面が前記カバー部に溶着されている、外装体。
【請求項2】
請求項1に記載の外装体と、
前記複数の溝部の各々に挿通される前記複数の電線と、を備えるワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、外装体に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には、スライド可能なシートが備えられており、このシートには電動リクライニング装置やシートヒータなどの電装品が装備されている。これらの電装品と車体側の機器等との間を接続するワイヤーハーネスは、シートと車体との間でシートのスライドに追従するため、シートと車体との間にワイヤーハーネスの余長を吸収する構成が備えられている。特許文献1では、シート下のシートレール内を仕切った側部空間にシート脚部及びプロテクタで外装されたワイヤーハーネスがスライド自在に収容されている。シートレールの側部に隣接した位置には余長吸収ボックスが配置されており、シート脚部がスライドした際のワイヤーハーネスの余長部はU字状に折り返して余長吸収ボックスに収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−49402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワイヤーハーネスの余長部をU字状に折り返す場合に、ワイヤーハーネスが折り返す箇所の曲率半径が大きくなると、そのためのスペースを車両内に設けなければならず、ワイヤーハーネスの配索スペースが増加するという問題がある。特許文献1では、多数の電線群がプロテクタ内にまとめて挿入されているため、プロテクタ内で電線群が整列されておらず、電線群に局所的に密な箇所が生じやすい。ワイヤーハーネスが折り返す箇所で電線群に密な箇所が生じると、ワイヤーハーネスの曲率半径が大きくなり、ワイヤーハーネスの配索スペースの増加が懸念される。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ワイヤーハーネスの配索スペースの増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の外装体は、車両に固定されるレールに対してスライド可能なスライド対象物のスライドに伴って前記レール内を移動可能で、かつ、前記レール内に収容されない余長部が曲がって前記レール外に配された余長吸収部材に収容される外装体であって、複数の電線の各々が挿通される複数の溝部が並んで形成された電線保持部材と、前記複数の電線を覆うように前記電線保持部材に取り付けられ、ラミネートフィルムからなるカバー部と、を備え、前記電線保持部材には、前記電線の並び方向から、前記電線の並び方向に直交する方向に連続するスリットが形成されており、前記電線保持部材における前記溝部が上下方向に並ぶ向きで前記レール内に配索され、前記カバー部は、前記電線保持部材とは異なる材料で形成され、かつ、前記スリットが形成されていない可撓性のシートからなり、前記スリットは、前記電線保持部材と前記カバー部とのうち前記カバー部側が内側に曲がるように形成されており、前記電線保持部材は、板状の板状部と、前記板状部の上下の端部から起立する複数の端壁と、前記複数の端壁の間に配されて前記板状部から起立し、前記複数の電線間を仕切る仕切り壁とを備え、各前記端壁と前記板状部との間は、肉薄の厚みで屈曲された曲げ部とされており、前記板状部の上下の端部から起立する前記複数の端壁の先端部は、互いに内方に突出する突部が形成されており、前記電線保持部材は、前記端壁における前記突部を含む前記カバー部側の端面が前記カバー部に溶着されている
【0007】
本構成によれば、並んで形成された複数の溝部に各電線が挿通されることで、ワイヤーハーネスが曲がる箇所で、複数の電線を整列させることができる。これにより、複数の電線に局所的に密な箇所が生じることが抑制されてワイヤーハーネスの曲率半径を小さくすることが可能になり、ワイヤーハーネスの配索スペースの増加を抑制することができる。また、溝部に電線を挿通してカバー部を電線保持部材に取り付ければ、ワイヤーハーネスを形成することができるため、ワイヤーハーネスの組み付け作業を簡素化することができる。
【0008】
また、電線保持部材のスリットにより、電線保持部材の厚み方向の一方側への曲げが促進される。ここで、電線保持部材は、その厚み寸法が溝部の並び方向における長さ寸法よりも小さいため、電線保持部材の延び方向について、電線保持部材を厚み方向の一方側に曲げた際の曲率半径を小さくすることができる。よって、ワイヤーハーネスの配索スペースの増加を抑制することが可能となる。また、電線保持部材は、一方側とは反対側への曲げは促進されないため、不要なワイヤーハーネスの曲げによる配索スペースの増加を抑制することができる。
また、車両内におけるワイヤーハーネスの配索スペースが小さくなって、車両内のスペースを効率的に利用することができる。
【0009】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい
【0011】
前記外装体と、前記複数の溝部の各々に挿通される前記複数の電線と、を備えるワイヤーハーネスとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイヤーハーネスの配索スペースの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1のスライド可能なシートを示す斜視図
図2】レールと余長吸収部材にワイヤーハーネスが配索された状態を示す平面図
図3】ワイヤーハーネスを示す斜視図
図4】ワイヤーハーネスを示す正面図
図5】ベース部材を示す斜視図
図6】ベース部材にスリットが形成された状態を示す斜視図
図7】ベース部材にスリットが形成された状態を示す平面図
図8】電線保持部材を示す斜視図
図9】電線保持部材に複数の電線が挿通された状態を示す斜視図
図10】ワイヤーハーネスを示す斜視図
図11】ワイヤーハーネスの延び方向について電線保持部材の厚み方向に曲げた状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
実施形態1について、図1図11を参照して説明する。
本実施形態のワイヤーハーネス10は、例えば自動車等の車両の車体とシート40(「スライド対象物」の一例)との間に配索される。以下では、図1のX方向を右方、Y方向を上方、Z方向を前方として説明する。
【0015】
シート40は、図1に示すように、図示しない車体の乗員室の床上に固定された一対の金属製のレール41に対して前後方向にスライド可能とされている。シート40には、例えば、電動リクライニング装置、シートヒータ、乗員の着座の有無を検出するセンサ、シートベルトの装着の有無を検出するセンサなどの各種電装品が備えられている。
【0016】
一方のレール41の前方及び側方に隣接する位置には、余長吸収部材42が装着されている。余長吸収部材42は、U字状に折り返した折返し部42Aと、収容室42Bとを有する。折返し部42Aは、ワイヤーハーネス10が挿通される一対の対向壁43を有する。シート40が前方へスライドすると、レール41内のワイヤーハーネス10が前後方向に移動するとともに、図2に示すように、ワイヤーハーネス10におけるレール41内に収容されない余長部が折返し部42Aを通って収容室42Bに収容される。ワイヤーハーネス10は、レール41内で合成樹脂製のガイド部材44に接続されており、ガイド部材44の内部で電線11〜14の方向がシート40側に変えられている。
【0017】
レール41及び余長吸収部材42の外側のワイヤーハーネス10は、車体の床上(のマットやパネル等の下)や床下に配索されて例えばECU(Electronic Control Unit)等の機器に接続される。これにより、機器とシート40の電装品との間がワイヤーハーネス10で接続され、車体側の機器とシート40の電装品との間の給電や信号の送受が行われる。
【0018】
(ワイヤーハーネス10)
ワイヤーハーネス10は、図3に示すように、複数本(本実施形態では4本)の電線11〜14と、複数本の電線11〜14の周りを覆う外装体19とを備えている。各電線11〜14は、例えば多数の金属素線が撚り合わされてなる導体部が絶縁層で被覆された被覆電線である。
【0019】
(外装体19)
外装体19は、複数の電線11〜14を保持する可撓性の電線保持部材20と、複数の電線11〜14を覆うように電線保持部材20に取り付けられる可撓性のカバー部30とを備えている。
【0020】
(電線保持部材20)
電線保持部材20は、例えば、エラストマー樹脂製であって、複数の電線11〜14に沿って延びており、図4に示すように、上下方向(溝部26A〜26Dの並び方向)の長さ寸法D1よりも左右方向の厚み寸法D2が小さく形成されており、平板状の板状部21と、板状部21から起立する複数の壁部22A,22Bとを備えている。
【0021】
壁部22A,22Bは、電線11〜14間を仕切る仕切り壁22Aと、板状部21の上下の端部から起立する端壁22Bとからなり、電線11〜14の直径に応じた高さで形成されている。板状部21及び壁部22A,22Bの厚みは、ほぼ同じとされている。
【0022】
端壁22Bの先端部は、内方に突出する突部23が形成されている。壁部22A,22Bのカバー部30側の端面は、カバー部30が溶着される被溶着部24とされている。端壁22Bと板状部21との間は、直交する方向に屈曲された曲げ部25とされている。曲げ部25は、板状部21や端壁22Bよりも肉薄の厚みとされることで、曲げ(撓み変形)が可能とされている。隣り合う壁部22A,22B間は、各電線11〜14を、挿通可能な溝部26A〜26Dとされている。各溝部26A〜26Dは、カバー部30との間に挿通された各電線11〜14の外周との間に隙間を生じる形状及び大きさで形成されている。
【0023】
電線保持部材20には、延び方向に対する配索方向の曲げを可能とする複数のスリット27が形成されている。各スリット27は、電線保持部材20を同じ形状で切り欠いて形成されており、図8に示すように、前後方向に所定間隔ごとに、電線11〜14の並び方向に沿って切り欠かれ、この並び方向の切り欠きと連続するように電線11〜14の並び方向(及び電線保持部材20の延び方向)と直交する厚み方向に切り欠かれている。各スリット27は、線状部27Aと、円形状の孔部27Bとを有する(図7参照)。線状部27Aは、電線11〜14の並び方向及び当該並び方向と直交する方向に延び、電線保持部材20を所定の長さで直線状に切断する。孔部27Bは、線状部27Aの両端部にそれぞれ円形状に設けられ、電線保持部材20の端壁22Bを貫通している。なお、電線保持部材20における孔部27Bよりも被溶着部24側は、連結部28とされており、電線保持部材20は、前後方向については、連結部28で接続されている。
【0024】
(カバー部30)
カバー部30は、可撓性のシートであって、電線保持部材20における溝部26A〜26D側の全体を覆うことができる長方形状とされている。図4に示すように、カバー部30における被溶着部24に重なる部分は、被溶着部24に溶着される溶着部31とされている。本実施形態のカバー部30は、ラミネートフィルムとされている。ラミネートフィルムは、例えば、合成樹脂フィルム,アルミニウム箔とすることができる。電線保持部材20とカバー部30とで電線11〜14を保護する外装体を構成しており、各電線11〜14は、溝部26A〜26Dとカバー部30で形成される矩形状の各収容室に収容されている。
【0025】
上記した構成の外装体19は、電線11〜14の並び方向からカバー部30側に向かって電線保持部材20のスリット27によって切り欠かれているので、図11に示すように、前後方向(電線保持部材20の延び方向)についてカバー部30側(電線保持部材20の厚み方向の一方側)への曲げが促進されて(曲げる力に対する抵抗が小さくなって)曲げやすい。一方、カバー部30から電線保持部材20に向かってスリット27は設けられていないので、カバー部30から電線保持部材20側(カバー部30側とは反対側)への曲げは促進されず(曲げる力に対する抵抗が大きくなって)、曲げにくい形状となっている。
【0026】
ワイヤーハーネス10の製造方法について説明する。
図5に示すように、エラストマー樹脂の材料を押し出し成形により板状のベース部材35を形成する。次に、図6に示すように、図示しない切断刃により、前後方向に所定間隔を空けた位置を切断して複数のスリット27を形成する。
【0027】
次に、例えば、ベース部材35を金型の凹部(図示しない)に収容することで、図8に示すように、曲げ部25を曲げて板状部21に対して端壁22Bを起立させた状態とする。次に、図9に示すように、複数の電線11〜14を各溝部26A〜26Dに、カバー部30を装着する側から挿通する。次に、図10に示すように、カバー部30を電線保持部材20の被溶着部24に、例えば、超音波溶着や、熱溶着により接合すると、ワイヤーハーネス10が形成される。
【0028】
本実施形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
本実施形態によれば、ワイヤーハーネス10は、並んで形成された複数の溝部26A〜26Dに各電線11〜14が挿通されることで、ワイヤーハーネス10が曲がる箇所で、複数の電線11〜14を整列させることができるため、複数の電線11〜14間に局所的に密な箇所が生じることが抑制されてワイヤーハーネス10の曲率半径を小さくすることが可能になる。よって、ワイヤーハーネス10の配索スペースの増加を抑制することができる。
また、溝部26A〜26Dに電線11〜14を挿通してカバー部30を電線保持部材20に取り付ければ、ワイヤーハーネス10を形成することができるため、ワイヤーハーネス10の組み付け作業を簡素化することができる。
【0029】
また、ワイヤーハーネス10は、前後方向(電線保持部材20の延び方向)について、スリット27により、左右方向(電線保持部材20の厚み方向)の一方側(カバー部30側)への曲げが促進される。ここで、各電線11〜14が挿通される複数の溝部26A〜26Dが並んで形成された電線保持部材20は、その厚み寸法D2が溝部26A〜26Dの並び方向における長さ寸法D1よりも小さい。これにより、前後方向について、左右方向の一方側に曲げた際の曲率半径を小さくすることができるため、ワイヤーハーネス10の配索スペースの増加を抑制することが可能となる。また、電線保持部材20は、前後方向について、左右方向の一方側(カバー部30側)とは反対側への曲げは促進されないため、不要なワイヤーハーネス10の曲げによる配索スペースの増加を抑制することができる。
【0030】
また、電線保持部材20は、スリット27により、カバー部30側への曲げが促進されている。
このようにすれば、電線保持部材20が曲がると、カバー部30が内側に曲がるため、伸びを考慮しないカバー部30の選択が可能となる。
【0031】
また、電線保持部材20における溝部26A〜26Dが上下方向に並ぶ向きで車両に配索されるとともに、車両におけるスライド対象物のスライドに伴って移動可能とされている。
このようにすれば、車両内におけるワイヤーハーネス10の配索スペースが小さくなって、車両内のスペースを効率的に利用することができる。
【0032】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)電線保持部材20は、エラストマー樹脂製としたが、これに限られず、他の樹脂としてもよい。例えば、可撓性を有しない硬質の合成樹脂製としてもよい。
【0033】
(2)カバー部30は、電線保持部材20に、超音波溶着や熱溶着されることとしたが、これら以外の溶着でもよい。また、参考例として、溶着以外により、カバー部30を電線保持部材20に接合してもよい。例えば、接着剤により、カバー部30を電線保持部材20に接合するようにしてもよい。また、参考例として、接合に限られず、カバー部が電線保持部材に取付けられる構成としてもよい。
【0034】
(3)上記実施形態では、電線保持部材20は、カバー部30側に曲げることとしたが、参考例として、これに限られず、カバー部30側とは反対側に曲げてもよい。この場合、例えば、カバー部30側にスリットを設けるようにしてもよい。
(4)電線保持部材20の一方側に複数の溝部26A〜26Dを設けることとしたが、これに限られず、電線保持部材20の一方側と反対側の双方に溝部を設けるようにしてもよい。例えば、1又は複数本の電線を電線保持部材20の一方側の溝部に挿通し、残りの電線を電線保持部材20の他方側の溝部に挿通するようにしてもよい。
【0035】
(5)カバー部30は、参考例として、ラミネートフィルムに限られない。例えば、繊維状の合成樹脂からなる不織布としてもよい。不織布は、多孔質であって、例えば、繊維シート、ウェブ(膜状のシート)又はバット(毛布状の繊維)で、繊維が一方向またはランダムに配向したものとされる。また、不織布は、例えば、電気的、機械的、化学的、または溶剤、またはそれらを組み合わせて、溶着や接着等により繊維間を接合や結合等して形成することができる。不織布の材質は、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維等を用いることができる。
【0036】
(6)スライド対象物としてはスライドシートとしたが、これに限られない。例えば、スライドドアをスライド対象物として本発明を適用してもよい。
【0037】
(7)ワイヤーハーネス10を構成する電線11〜14の本数は、上記実施形態の本数に限られず、種々の本数に変更することができる。例えば、一本の電線でワイヤーハーネスを構成してもよい。また、電線保持部材20についても上記実施形態の形状に限られず、種々に変更することができる。
【符号の説明】
【0038】
10: ワイヤーハーネス
11〜14: 電線
20: 電線保持部材
26A〜26D: 溝部
27: スリット
30: カバー部
40: シート(スライド対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11