(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6395013
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】小屋面構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20180913BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
E04B1/58 506L
E04B1/26 E
E04B1/58 503L
E04B1/58 504L
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-83923(P2017-83923)
(22)【出願日】2017年4月20日
【審査請求日】2017年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】田畑 治
【審査官】
土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−148896(JP,A)
【文献】
実開昭61−135008(JP,U)
【文献】
特開昭61−274031(JP,A)
【文献】
実開平06−006505(JP,U)
【文献】
特開2006−316454(JP,A)
【文献】
特開昭48−042521(JP,A)
【文献】
特開平01−174751(JP,A)
【文献】
特開2000−273956(JP,A)
【文献】
特開平05−230894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00− 1/36
E04B 1/38− 1/61
E04C 3/00− 3/294
E04C 3/30− 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のラミナの繊維方向の端面と前記一方のラミナと他方のラミナの繊維方向の側面とが略直角に接合する第1ラミナ部材と、一方のラミナの繊維方向の側面と前記一方のラミナと他方のラミナの繊維方向の端面とが略直角に接合する第2ラミナ部材とが、上下方向に接着剤を介して貼り合わされて重なり合って積層されて形成された交差積層部と、該交差積層部から分岐して形成された2以上の梁継手積層部とを具備する複数の木質隅角部構造体の前記交差積層部から分岐した前記梁継手積層部同士を梁部材によって相互に連結して四角形枠を構成した梁枠構造体を柱によって支持した小屋面構造であって、
前記木質隅角部構造体は、
前記第1ラミナ部材が前記一方のラミナと前記他方のラミナが共に1枚で、且つ、前記第2ラミナ部材の前記一方のラミナと前記他方のラミナが共に1枚からなるL字形の木質隅角部構造体と、
前記第1ラミナ部材が前記一方のラミナが2枚で前記他方のラミナが1枚からなり、前記第2ラミナ部材が前記一方のラミナ及び前記他方のラミナが共に1枚のラミナからなるT字形の木質隅角部構造体とを有し、
前記四角形枠は、四隅のコーナー部に配置された4つの前記L字形の木質隅角部構造体の前記梁継手積層部同士を前記梁部材によって連結すると共に、相対向する枠それぞれの途中に前記T字形の木質隅角部構造体を前記梁継手積層部と前記梁部材とが接合するように介在させたものであり、相対向する前記T字形の木質隅角部構造体の前記梁継手積層部同士を前記梁部材によって連結したことを特徴とする小屋面構造。
【請求項2】
前記第1ラミナ部材及び前記第2ラミナ部材における一方のラミナの端面と他方のラミナの側面及び一方のラミナの側面と他方のラミナの端面との接合は、フィンガージョイントによるものであることを特徴とする請求項1に記載の小屋面構造。
【請求項3】
前記第1ラミナ部材及び前記第2ラミナ部材における前記一方のラミナの端面と前記他方のラミナの側面及び前記一方のラミナの側面と前記他方のラミナの端面との接合は、前記一方のラミナ又は前記他方のラミナの端面に形成した傾斜面と前記他方のラミナ又は前記一方のラミナの側面に形成した逆傾斜面とを接着剤を介して貼り合せたものであることを特徴とする請求項1に記載の小屋面構造。
【請求項4】
前記梁継手積層部と梁部材との接合は、梁継手積層部と梁部材の双方の相対向する端面に差し込む接合棒を取付板の両面に有する接合金具を用いて接合することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の小屋面構造。
【請求項5】
前記梁継手積層部と梁部材との接合は、梁継手積層部と梁部材の相対向する端面においてラミナの長短によって形成された互いの凹凸部同士を逆にして対面させて接着剤を介して嵌め込むことによって接合することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の小屋面構造。
【請求項6】
前記梁枠構造体の柱による支持は、前記木質隅角部構造体の前記交差積層部を支えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の小屋面構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、隅角部を一体化した集成構成の木質隅角部構造
体を使用して構成される小屋面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物における木質梁材は直線部材であり、これを隅部において柱材を介して相互にピン接合して、L字形、T字形、十字形などの隅角部を具備する梁枠構造体を構成している。しかし、この梁枠構造体は前述のようにピン結合であるために、水平外力に対して抵抗するために隅角部にブレース、火打ち、合板等を配置してしなければならない(例えば、特許文献1の
図13、特許文献2の
図3等)。
【0003】
しかしこのようなブレース、火打ち、合板等は、拭き抜けや配線・配管などを考慮して設計する際のプランの自由度に制約を加えることになる。とくに火打ちは水平抵抗耐力が小さく、高耐力の水平抵抗要素が望まれている。
【0004】
このような要望に応える発明として、例えば特許文献3の
図1〜
図4に示されるようなL字形、T字形、十字形等に一体的に形成して剛体接合に近い木質部接合体がある。これは集成材からなる平板材を上記の形状となるように切り抜いて形成しているために、上記の各字形の直線の交差部分は同質で連続した木材繊維を有する一体物となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−120164号公報(
図13)
【特許文献3】特開2012−202114号公報(
図1〜
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記先行技術においては、交差部分が同質で連続した木材繊維であるために繊維方向に水平外力が作用した場合には脆いという問題点がある。又、集成材からなる平板材を前記の各形状に切り抜いて形成しなければならないので、切り抜きに要する手数がかかると共に、切り抜き残余の板材破片が無駄になり不経済になる問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は前記課題を解決するためになされたものであって、その手段とするところは次の通りである。
【0008】
請求項1の発明は、一方のラミナの繊維方向の端面と他方のラミナの繊維方向の側面とが略直角に接合する第1ラミナ部材と、一方のラミナの繊維方向の側面と他方のラミナの繊維方向の端面とが略直角に接合する第2ラミナ部材とが、上下方向に接着剤を介して貼り合わされて重なり合って積層されて形成された交差積層部と、該交差積層部から分岐して形成された2以上の梁継手積層部とを具備する
複数の木質隅角部構造体の前記交差積層部から分岐した前記梁継手積層部同士を梁部材によって相互に連結して四角形枠を構成した梁枠構造体を柱によって支持した小屋面構造であって、前記木質隅角部構造体は、前記第1ラミナ部材が前記一方のラミナと前記他方のラミナが共に1枚で、且つ、前記第2ラミナ部材の前記一方のラミナと前記他方のラミナが共に1枚からなるL字形の木質隅角部構造体と、前記第1ラミナ部材が前記一方のラミナが2枚で前記他方のラミナが1枚からなり、前記第2ラミナ部材が前記一方のラミナ及び前記他方のラミナが共に1枚のラミナからなるT字形の木質隅角部構造体とを有し、前記四角形枠は、四隅のコーナー部に配置された4つの前記L字形の木質隅角部構造体の前記梁継手積層部同士を前記梁部材によって連結すると共に、相対向する枠それぞれの途中に前記T字形の木質隅角部構造体を前記梁継手積層部と前記梁部材とが接合するように介在させたものであり、相対向する前記T字形の木質隅角部構造体の前記梁継手積層部同士を前記梁部材によって連結したことにある。
【0012】
請求項
2の発明は、前記第1ラミナ部材及び前記第2ラミナ部材における一方のラミナの端面と他方のラミナの側面及び一方のラミナの側面と他方のラミナの端面との接合は、フィンガージョイントによるものであることにある。
【0013】
請求項
3の発明は、前記第1ラミナ部材及び前記第2ラミナ部材における前記一方のラミナの端面と前記他方のラミナの側面及び前記一方のラミナの側面と前記他方のラミナの端面との接合は、前記一方のラミナ又は前記他方のラミナの端面に形成した傾斜面と前記他方のラミナ又は前記一方のラミナの側面に形成した逆傾斜面とを接着剤を介して貼り合せたものであることにある。
【0015】
請求項
4の発明は、前記梁継手積層部と梁部材との接合は、梁継手積層部と梁部材の双方の相対向する端面に差し込む接合棒を取付板の両面に有する接合金具を用いて接合することにある。
【0016】
請求項
5の発明は、前記梁継手積層部と梁部材との接合は、梁継手積層部と梁部材の相対向する端面においてラミナの長短によって形成された互いの凹凸部同士を逆にして対面させて接着剤を介して嵌め込むことによって接合することにある。
【0017】
請求項
6の発明は、前記梁枠構造体の柱による支持は、前記木質隅角部構造体の前記交差積層部を支えることにある。
【発明の効果】
【0018】
この発明の木質隅角部構造体は、第1及び第2ラミナ部材を交互に上下方向に積層して形成された交差積層部とこの交差積層部から分岐した2以上の梁継手積層部を具備しているので、木造建物の四角形枠を構成する梁枠構造体である小屋面に利用すれば剛体接合の構造体を形成できる。これによって、従来必要とされていたブレース、火打ち、合板等は不要となるので、小屋面のプランの自由度が高まる利点がある。上下に重なり合う第1ラミナ部材と第2ラミナ部材の交差積層部においては、繊維方向の異なるラミナが上下方向に交互に位置し、更に、上下の第1ラミナ部材と第2ラミナ部材を構成する2以上のラミナにおいては交差部においてラミナの勝ち負けが異なっているので、より強度が強い剛体接合が得られる。
【0019】
更にこの発明の木質隅角部構造体は、L字形、T字
形のものを第1及び第2ラミナ部材を構成するラミナの数とラミナの繊維方向の向きを変えることにより容易に得ることができる。
【0020】
更に、第1および第2ラミナ部材において一方のラミナの端面と他方のラミナの側面とを接合する場合において、フィンガージョイントを採用した場合には、機械加工によって容易に形成できる。又、一方のラミナの端面と他方のラミナの側面にそれぞれ形成した傾斜面と逆傾斜面を接着剤を介して貼り合わせする場合には、傾斜面とした分だけ貼り合わせ面積が垂直面同士の場合よりも大きくなるので接合強度が向上する。
【0021】
又は、この発明の木質隅角部構造体は、前記のように、L字形、T字
形のものを得られるので、これらの梁継手積層部と梁部材の相互の連結組み合せによって四角形枠の梁枠構造体を得ることができる。
【0022】
接合金具を用いて梁継手積層部と梁部材とを接合すれば、金属部材の介在により梁継手積層部と梁部材が強固に接合される。又、ラミナの端部における長短によってそれぞれの端面に凹凸を形成して、これら凹凸を逆になるように対面させて接着剤を介して嵌め込み固定することによって、重量を増すことなく梁継手積層部と梁部材が接合される。
【0023】
これを柱によって建物の最上階に構築すれば剛体構造の小屋面を得られる。これによって、ブレース、火打ち、合板等が不要になるために、大きな吹き抜けを設けたり、配管、配線のスペースを得るなどのプラン自由度が向上する。又、柱で支える場合には、交差積層部で支えると支持強度が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の木質隅角部構造体の第1実施形態の全体斜視図。
【
図2】一方のラミナの端面と他方のラミナの側面との接合状態斜視説明図。
【
図4】この発明の木質隅角部構造体の第2実施形態の全体斜視図。
【
図5】この発明の木質隅角部構造体の第3実施形態の全体斜視図。
【
図6】接合金具を用いての梁継手部と梁部材の接合状態透視説明図。
【
図7】接合金具を挟んで梁継手部と梁部材を接合する断面説明図。
【
図9】梁継手積層部と梁部材の相向い合う接合端面の断面説明図。
【
図11】この発明の木質隅角部構造体を用いた小屋面構造体の斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施の形態について以下図面を参照しつつ説明する。まず、
図1に示す第1実施形態について説明する。木質隅角部構造体1は、L字形の構造体であって、一方のラミナ2の繊維方向の端面2aと他方のラミナ3の繊維方向の側面3bとが略直角に接合する第1ラミナ部材4が最上段に位置し、次に、一方のラミナ2の繊維方向の側面2bと他方のラミナ3の繊維方向の端面3aとが略直角に接合する第2ラミナ部材5が第2段に位置し、以下、これら第1ラミナ部材4及び第2ラミナ部材5が交互に上下方向に接着剤を介して重ね合わせて積層され圧力を加えて接合されてなるものである。すなわち、隅部において第1ラミナ部材4と第2ラミナ部材5とは勝ち負けを逆にして交互に重ね合わせて積層され接合されたものである。ここにおいて、一方のラミナ2と他方のラミナ3は同一の幅と長さ及び厚さを有する同一形状のものを用いている。そして幅、厚み、長さはいずれもとくに限定されるものではない。このようなラミナは使用前に十分に乾燥させて磨れ、割れ、大きな節などを除去あるいは分散させて、狂いや収縮がないようになされたものである。唐松、ヒノキ、スギなどの国産材樹種、外来材樹種を製材して挽き板にしたものであるので、一般には長手方向が、繊維方向に挽かれて両端に端面2a,3aを形成し、両側に側面2b,3bを形成している。
【0026】
上記のように第1ラミナ部材4と第2ラミナ部材5とが上下方向に交互に接着剤を介して重ね合わされて貼り合わせて積層された木質隅角部構造体1は、略直角に接合している交差部
6においては上下のラミナの繊維方向が異なっており、且つ、勝ち負けが異なる接合であるので、剛体構造を形成している。そして、2つのラミナが交差する交差積層部7とこの交差積層部7から分岐して直角方向に2つの梁継手積層部8とを具備している。
【0027】
前記第1ラミナ部材4の一方のラミナ2と他方のラミナ3の接合の第1の実施例は、
図2に示すように、一方のラミナ2の繊維方向の端面2aと他方のラミナ3の繊維方向の側面3bにそれぞれ対応するフィンガージョイントとなる凹凸形状9を形成したものである。そして、これらをフィンガージョイントとして接合する場合には、凹凸形状9の部分に接着剤を介して重ね合わせるだけでよい。
【0028】
第2の実施例は、
図3に示すように、一方のラミナ2の繊維方向の端面2aに傾斜面10を形成し、他方のラミナ3の繊維方向の側面3bに前記傾斜面10と同じ角度である逆傾斜面11を形成して、これら傾斜面10と逆傾斜面11とを接着剤を介して重ね合わせて貼り合わせたものである。第1の実施例と第2の実施例の接合を上下段で異なる接合によるものとしてもよい。上記の第1実施例と第2実施例の2つのラミナの接合は以下に述べる第2の実施形態及び第3の実施形態においても同じである。
【0029】
上記のような第1ラミナ部材4及び第2ラミナ部材5は、結局のところ、一方のラミナ2と他方のラミナ3が同形状、同材質のラミナであれば、第1ラミナ部材4を裏返して90度回転させると第2ラミナ部材5となるので、第1ラミナ部材4のみを生産し、それを上下方向交互に裏表を逆にして90度回転させて接着剤を介在させて重ね合わせて積層し圧力を加えて貼り付けるだけの作業であることから、極めて効率良く生産できる。
【0030】
この発明の木質隅角部構造体1の第2の実施形態について、
図4に基づいて説明する。この第2の実施形態の木質隅角部構造体1は、T字形の構造体であって、一方のラミナ2は2A,2Bの2枚あってそれぞれの繊維方向の端面2Aa,2Baと他方のラミナ3の繊維方向の2つの相対向する側面3bの端部において略直角に接合している第1ラミナ部材1が最上段に位置し、次に、一方のラミナ2の繊維方向の側面2a中央部分において、他方のラミナ3の繊維方向の端面3aとが略直角に接合する第2ラミナ部材5が第2段目に位置し、以下、これら第1ラミナ部材4及び第2ラミナ部材5が交互に上下方向に接着剤を介して重ね合わせて積層され圧力を加えて接合されてなるものである。
図4においては第2ラミナ部材5の接合部分は現われてはいない。すなわち、第1ラミナ部材4と第2ラミナ部材5とは勝ち負けを逆にして交互に重ね合わせて積層され圧力をかけて接合されたものである。ここにおいて、一方のラミナ2と他方のラミナ3は数と長さは第1ラミナ部材4と第2ラミナ部材5において異るが、幅、厚さは同じとしている。
【0031】
この第2の実施形態の木質隅角部構造体1においては、第1の実施形態と同じように、上下の第1ラミナ部材4と第2ラミナ部材5とが接合した交差部6においては、ラミナの繊維方向が異なっており、且つ、勝ち負けが異なる接合であるので、剛体構造を形成している。そして、この交差積層部7とこの交差積層部7から分岐して直角方向に等間隔に3つの梁継手積層部8とを具備している。
【0032】
この発明の木質隅角部構造体1の第3の実施形態について、
図5に基づいて説明する。この第3の実施形態の木質隅角部構造体1は、十字形の構造体であって、最上段に位置している第1ラミナ部材4が一方のラミナ2の2枚2A,2Bとこの一方のラミナ2A,2Bの繊維方向の端面2Aa,2Baが一方のラミナ2より長さが長い1枚の他方のラミナ3の繊維方向の中央部の両側面3bに接合されたものである。又、第2段目に位置する第2ラミナ部材5は、
図5には現われていないが、1枚の一方のラミナ2とこの一方のラミナ2の繊維方向の中央部の両側面2bに接合する端面3Ab,3Bbを有する2枚の他方のラミナ3A,3Bである。このような第1ラミナ部材4と第2ラミナ部材5が上下方向に交互に接着剤を介して重ね合わされて圧力をかけて接合されたものである。ここにおいて、第1ラミナ部材4と第2ラミナ部材5とは一方のラミナ2と他方のラミナ3の勝ち負けが異なる接合である。このような接合における交差部6においては、上下のラミナの繊維方向が異なり、且つ、勝ち負けが異なる接合であるから、前記第1、第2の実施形態と同様に剛体構造を形成している。そして、この交差積層部7とこの交差積層部7から分岐して直角方向に等間隔に4つの梁継手積層部8とを具備している。
【0033】
前記の第1乃至第3実施形態における木質隅角部構造体1の梁継手積層部8と集成材からなる梁部材12との接合例について、
図5〜
図7に基づいて説明する。この接合例は、
図6、
図7に示す、接合金具13を用いて行う例であって、接合金具13は取付板13aの両側面から上、中、下段のそれぞれにおいて2本の接合棒13bを突出するように固定されてなる。そして、梁継手積層部8及び梁部材12の端面には、
図5、
図7に示されるように、前記接合棒13bの取付位置と対応する位置において、この接合棒13bの挿入穴8a,12aが形成されている。接合時にはこの接合金具13を間に挟んで梁継手積層部8の端面に開口している挿入穴8aにまず一方側の接合棒13bを差し込んでから、梁部材12の端面に開口している挿入穴12aに他方側の接合棒13bを挿入することにより行う。挿入の順序は同時でも逆でもよい。挿入に先がけて取付板13aや挿入穴13bに接着剤を塗っておくとより接合強度が向上する。
【0034】
梁継手積層部8と梁部材12の他の接合例について、
図8〜
図10に基づいて説明する。この接合例は、梁継手積層部8を構成する一方のラミナ2A、2Bの端面2Aa、2Bbを、
図8に示すように、第1段面に位置する第1ラミナ部材4と第2段目に位置する第2ラミナ部材5とを交互に長短とし、これを接合する梁部材12の構成するラミナの端面を、
図9に示すように、上方から順に逆に短長として、以下の段の双方の積層するラミナも同様に長短を逆にしながら積層することにより、
図10に示すように、双方の端面に形成されている凹凸同士を逆にして相向い合わせて接着剤を介して嵌め合わせて固着してなるものである。以上の2例については、T字形の構造体について説明したが、L字形、十字形の構造体における梁部材との接合であっても同様である。又、上記した2例以外の接合であっても良いのは勿論である。
【0035】
上記した第1乃至第3の実施形態の木質隅角部構造体1を用いて小屋面14を構築する実施例について、図
11に基づいて説明する。四角形枠15は四隅のコーナー部に第1の実施形態のL字型の木質隅角部構造体1を4つ配置し、これら4つのL字形の木質隅角部構造体1を梁部材12によって連結したものである。横方向の間隔は長いために、途中に2つの第2の実施形態のT字形の木質隅角部構造体1を介在させており、これらT字形の木質隅角部構造体1は相対向するT字形の木質隅角部構造体1の対応する梁継手積層部8と梁部材12を用いて前記接続金具13で接合している。又、2つの縦方向のL字形の木質隅角部構造体1の梁継手積層
部8同士、L字形、T字形の各々の木質隅角部構造体1の梁継手積層
部8同士も梁部材12と接合している。更に、四隅のL字形の木質隅角部構造体1は柱16によって支持されると共に、横方向の長い梁部材12の途中も柱16によって支持されている。このようにして形成された小屋面構造は四隅の内側や四角形枠の内部に火打ち、合板等の補強部材が必要でないので、この実施例では吹き抜けとして開放して利用している。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この木質隅角部構造体1の使用例は上記の小屋面14に限られることなく、他の木造住宅を始めとする建物に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 木質隅角部積層体
2 一方のラミナ
3 他方のラミナ
4 第1ラミナ部材
5 第2ラミナ部材
6 交差部
7 交差積層部
8 梁継手積層部
9 凹凸形状
10 傾斜面
11 逆傾斜面
12 梁部材
13 接合金具
14 小屋面
15 四角形枠
16 柱
【要約】
【課題】
従来の梁枠構造体はピン結合であるために水平外力に対して抵抗するために隅角部にブレース、火打ち、合板等を配置してしなければならない課題がある。
【解決手段】
一方のラミナ2の繊維方向の端面と前記一方のラミナ2と他方のラミナ3の繊維方向の側面とが略直角に接合する第1ラミナ部材4と、一方のラミナ2の繊維方向の側面と前記一方のラミナ2と他方のラミナ3の繊維方向の端面とが略直角に接合する第2ラミナ部材5とが、上下方向に接着剤を介して貼り合わされて重なり合って積層されて形成された交差積層部7と、該交差積層部7から分岐して形成された2以上の梁継手積層部8とを具備する木質隅角部構造体1としたこと。
【選択図】
図1