【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例により本発明の効果をさらに詳しく実証する。以下の実施例および比較例中の部数は質量部を表わす。なお、インキ絡みの評価、画像再現性の評価及びブリードアウトの評価は以下の方法により行なった。
【0030】
「インキ絡みの評価」
インキ絡みは、輪転印刷機(三条機械製作所製、P−20)を用い、インキは紫外線硬化型インキ(T&K TOKA社製、UV161 藍S)を用いて評価した。被印刷体には、コート紙(リンテック株式会社製、グロスPW8K)を用いた。印刷速度は30m/分で行った。上記条件で、まず1000m印刷を行い、印刷サンプルを採取した。引き続き1000m印刷を行い、合計2000m印刷した後のサンプルを得た。評価する網点は、125,150,175LPIで1,5,10,20%の網点でインキ絡みを評価した。インキ絡みが皆無の場合“A”、インキ絡みが網点最端部のみできた場合“B”、インキ絡みが網点端部付近で発生した場合“C”、インキ絡みが網点全面に発生した場合“D”とした。
【0031】
「画像再現性の評価」
画像再現性は、175線ハイライト最小網点(%)及び最小細線(μm)で評価した。
175線ハイライト最小網点(%)は、ネガフィルム175線1〜5%の網点が保持されているかをニコン社製の万能投影機を用いて判定した。再現している面積が90%以上あれば網点が保持されていると判定し、その最小網点(%)で表示した。
最小細線(μm)は、ネガフィルムで30〜100μm幅の細線が再現できているかを20倍のルーペを用いて細線にヨレ(曲がり)が無いかで判定した。判定した細線の中でヨレが発生していない最も狭い幅の細線を再現した最小細線の幅(μm)で表示した。
【0032】
「シリコーン化合物ブリードアウトの評価」
シリコーン化合物ブリードアウトは、製版後の感光性樹脂凸版表面に平滑な表面を有するPETフィルムを押し当て、PETフィルムへの付着物の有無を評価した。
【0033】
(実施例1)
(A)成分のε−カプロラクタム52.2部、(B)成分のN,N’−ビスアミノ(3−アミノプロピル)ピペラジン〔以下、BAPPと略す〕23.0部、(C)成分の1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン〔以下、1,3−BACと略す〕3.7部、(D)成分のアミノ変性シリコーン化合物(信越化学工業株式会社、KF−8008、アミノ基当量5,700g/mol)0.5部、(E)成分としてアジピン酸20.6部、及び水100部を反応器に加え、充分な窒素置換を行った後に、密閉して徐々に加熱し、内圧が10kg/cm
2に達した時点から反応器内の水を徐々に留出させて1時間で常圧に戻し、その後0.5時間常圧で反応させた。最高重合温度は210℃で比粘度1.84のポリアミドを得た。
【0034】
得られたポリアミド55.0部、N−メチルトルエンスルホン酸アミドを7.7部、1,4−ナフトキノンを0.03部、メタノール50.0部、及び水10部を攪拌機付き加熱溶解釜中で60℃2時間混合してポリマーを完全に溶解してから、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルのアクリル酸付加物を30.1部、メタクリル酸を3.1部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、ベンジルジメチルケタール1.0部を加え、30分間攪拌した。次に徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃になるまで濃縮した。この段階で、流動性のある粘調な感光性樹脂組成物が得られた。
【0035】
次いで、厚み250μmのポリエステルフィルムに接着剤を20μmコートして得た支持体フィルムの接着剤塗布面側と、厚み125μmのポリエステルフィルムに厚み2μmのポリビニルアルコール(AH−24、日本合成化学(株)製)の保護被膜をコートしたカバーフィルムの被膜側で感光性樹脂組成物をはさみこみ、100℃で加熱プレスして全厚み1080μmの凸版印刷用印刷原版を得た。
【0036】
次に、カバーフィルムを剥がした凸版印刷用印刷原版に、画像として網点175線−1%〜95%のネガフィルムを真空密着させ、25W/m
2のケミカルランプを用いて感光性樹脂表面より高さ5cmの距離から露光した。次にブラシ式ウォッシャー(120μmφナイロンブラシ、日本電子精機(株)制作JW−A2−PD型)で25℃の水道水を現像液にして現像を行い、更に60℃で10分間、温風乾燥した後に25W/m
2のケミカルランプで5分間露光して目的の印刷版を得た。水溶性高分子化合物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0037】
(実施例2)
ε−カプロラクタム50.8部、BAPP22.4部、1,3−BAC3.6部、アミノ変性シリコーン化合物(信越化学工業株式会社、X−22−161B、アミノ基当量1500g/mol)3.0部、アジピン酸20.2部とした以外は実施例1と同様にして目的の印刷版を得た。水溶性高分子化合物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0038】
(実施例3)
ε−カプロラクタム49.6部、BAPP21.9部、1,3−BAC3.5部、アミノ変性シリコーン化合物(信越化学工業株式会社、X−22−161A、アミノ基当量800g/mol)5.0部、アジピン酸20.0部とした以外は実施例1と同様にして目的の印刷版を得た。水溶性高分子化合物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0039】
(実施例4)
ε−カプロラクタム43.3部、BAPP19.1部、1,3−BAC3.0部、アミノ変性シリコーン化合物(信越化学工業株式会社、KF−8010、アミノ基当量430g/mol)15.0部、アジピン酸19.6部とした以外は実施例1と同様にして目的の印刷版を得た。水溶性高分子化合物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0040】
(実施例5)
ε−カプロラクタム44.3部、BAPP19.5部、1,3−BAC3.1部、アミノ変性シリコーン化合物(信越化学工業株式会社、PAM−E、アミノ基当量130g/mol)10.0部、アジピン酸23.1部とした以外は実施例1と同様にして目的の印刷版を得た。水溶性高分子化合物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0041】
(実施例6)
ε−カプロラクタム49.7部、BAPP21.9部、1,3−BAC3.5部、アミノ変性シリコーン化合物(信越化学工業株式会社、KF−8004、アミノ基当量1500g/mol)5.0部、アジピン酸19.8部とした以外は実施例1と同様にして目的の印刷版を得た。水溶性高分子化合物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0042】
(実施例7)
ε−カプロラクタム49.8部、BAPP21.9部、1,3−BAC3.5部、アミノ変性シリコーン化合物(信越化学工業株式会社、KF−864、アミノ基当量3800g/mol)5.0部、アジピン酸19.8部とした以外は実施例1と同様にして目的の印刷版を得た。水溶性高分子化合物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0043】
(実施例8)
ε−カプロラクタム43.1部、数平均分子量400のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα,ω−ジアミノポリオキシエチレン29.8部、1,3−BAC7.7部、アミノ変性シリコーン化合物(信越化学工業株式会社、X−22−161B、アミノ基当量1500g/mol)3.0部、アジピ
ン酸16.5部とした以外は実施例1と同様にして目的の印刷版を得た。水溶性高分子化合物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0044】
(比較例1)
ε−カプロラクタム52.5部、BAPP23.1部、1,3−BAC3.7部、アミノ変性シリコーン化合物は加えず、アジピン酸20.7部とした以外は実施例1と同様にして目的の印刷版を得た。水溶性高分子化合物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0045】
(比較例2)
ε−カプロラクタム49.5部、BAPP23.1部、1,3−BAC3.7部、シリコーン化合物(信越化学工業株式会社、KF−96−100CS、アミノ未変性)3.0部、アジピン酸20.7部とした以外は実施例1と同様にして目的の印刷版を得た。水溶性高分子化合物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0046】
(比較例3)
ε−カプロラクタム40.9部、BAPP16.5部、1,3−BAC2.6部、アミノ変性シリコーン化合物(信越化学工業株式会社、KF−8008、アミノ基当量5700g/mol)25.0部、アジピン酸15.0部とした以外は実施例1と同様にして目的の印刷版を得た。水溶性高分子化合物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1から明らかなように、本発明の範囲の凸版印刷用感光性樹脂組成物(実施例1〜7)は、良好な画像再現性を維持しながら、印刷時のインキ絡みが発生しにくいという評価結果が得られた。