(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395046
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】バラスト水処理装置およびバラスト水処理装置におけるフィルタ洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B63B 13/00 20060101AFI20180913BHJP
C02F 1/32 20060101ALI20180913BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20180913BHJP
B01D 29/66 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
B63B13/00 Z
C02F1/32
B01D29/10 510C
B01D29/10 520B
B01D29/10 530A
B01D29/38 510C
B01D29/38 520A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-244771(P2014-244771)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-107695(P2016-107695A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【識別番号】100152249
【弁理士】
【氏名又は名称】川島 晃一
(72)【発明者】
【氏名】丹下 智陽
(72)【発明者】
【氏名】川上 昭典
(72)【発明者】
【氏名】平木 義信
【審査官】
福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−180666(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0190826(US,A1)
【文献】
特開2014−094338(JP,A)
【文献】
特開2011−173058(JP,A)
【文献】
特開2014−061483(JP,A)
【文献】
特開2011−189237(JP,A)
【文献】
特開2014−034002(JP,A)
【文献】
特開2011−194396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 13/00
C02F 1/00
C02F 1/32
B01D 29/10
B01D 29/36
B01D 29/38
B01D 33/00 − 33/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト水処理ラインの途中に、ケーシング内にフィルタを設けるとともに、前記フィルタを洗浄する洗浄機構を設けた濾過装置と、前記濾過装置の下流側に紫外線照射装置を備え、さらに、前記フィルタの目詰まり時に、水処理運転を停止させて、前記フィルタを前記洗浄機構により洗浄させ、洗浄後に水処理運転を再開させる運転制御手段を備えたバラスト水処理装置であって、
前記紫外線照射装置に冷却水を通水する冷却水通水ラインを併設し、また、前記運転制御手段には、前記フィルタの目詰まり時に、水処理運転を停止させるも前記紫外線照射装置の点灯状態を維持させるとともに、前記冷却水通水ラインから前記紫外線照射装置に冷却水を通水させ、前記濾過装置の洗浄後に水処理運転を再開するとともに、前記紫外線照射装置への冷却水の通水を停止させる制御機能を備えたことを特徴とするバラスト水処理装置。
【請求項2】
バラスト水処理ラインの途中に、ケーシング内にフィルタを設けるとともに、前記フィルタを洗浄する洗浄機構を設けた濾過装置と、前記濾過装置の下流側に紫外線照射装置を備え、前記紫外線照射装置に冷却水を通水する冷却水通水ラインを併設し、前記フィルタの目詰まり時に、水処理運転を停止させて、前記フィルタを前記洗浄機構により洗浄させ、洗浄後に水処理運転を再開させるバラスト水処理装置におけるフィルタ洗浄方法であって、
前記フィルタの目詰まり時に、水処理運転を停止させるも前記紫外線照射装置の点灯状態を維持させるとともに、前記冷却水通水ラインから前記紫外線照射装置に冷却水を通水させ、前記濾過装置の洗浄後に水処理運転を再開するとともに、前記紫外線照射装置への冷却水の通水を停止させるようにすることを特徴とするバラスト水処理装置におけるフィルタ洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に貯留されるバラスト水を浄化するバラスト水処理装置およびバラスト水処理装置におけるフィルタ洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンカー等の船舶において、積み荷の原油等を降ろした後、再度目的地に向けて航行する際、航行中の船舶のバランスを取るため、船舶に設けられたバラストタンク内にバラスト水と呼ばれる水を貯留する。バラスト水は基本的に荷上港で取水されて、荷積港で排出されるため、それらの場所が異なっていれば、バラスト水中に含まれるプランクトンや細菌類の微生物が世界中を移動することになる。従って、荷上港と異なる海域の荷積港でバラスト水を排出すると、その港に別の海域の微生物を放出することになり、その海域の生態系を破壊するおそれがある。
【0003】
このようなことから、バラスト水をバラストタンク内に貯留する際に、バラスト水中の微生物を殺滅して無害化処理することが要求されている。
従来、バラスト水中の微生物を除去して無害化するバラスト水処理装置として、バラスト水処理ラインの途中に、ケーシング内にフィルタを設けた濾過装置と紫外線照射装置を備え、バラスト水処理ラインに汲み上げた被処理水を濾過装置に通してフィルタで濾過し、濾過装置で濾過された処理水に紫外線照射装置で紫外線を照射して処理水中の微生物を殺滅して無害化処理し、無害化処理した処理水をバラストタンクへ供給するバラスト水処理装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に記載されたバラスト水処理装置では、濾過装置のフィルタに異物の除去性能が要求されているため、フィルタとして極小目開の金網などによる濾過体が用いられている。そのため、目詰まりが激しく、目詰まりによる周辺機器の損壊を防ぐため、フィルタの洗浄が重要であり、水処理運転中にフィルタの目詰まりが激しくなったら、水処理運転を緊急停止し、フィルタを洗浄して目詰まりを解消してから水処理運転を再開するといったことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−23187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載されたバラスト水処理装置におけるフィルタの洗浄にあっては、水処理運転を停止し、点灯時に高温となっていた紫外線照射装置の紫外線ランプの消灯後の冷却を待って行い、そして、水処理運転の再開にあっては、フィルタの洗浄後、先ず、紫外線ランプを点灯し、紫外線ランプが所定照度に達するのを待って再開しているが、紫外線照射装置の紫外線ランプの点灯時の温度は高温であるため、消灯後の冷却に時間が掛かり、また、フィルタの洗浄後の紫外線ランプの立ち上げにも時間が掛かることから、水処理運転の停止からフィルタの洗浄後の水処理運転の再開までの洗浄時間に長時間を要する。
この結果、バラストタンク内へのバラスト水の貯留に時間が掛かり、荷役作業を遅らせてしまう場合があるといった問題があった。
【0007】
本発明の目的は、水処理運転中のフィルタの目詰まりにより、水処理運転を緊急停止してフィルタを洗浄する場合の、水処理運転の停止からフィルタの洗浄後の水処理運転の再開までの洗浄時間の短縮化を図ることができるバラスト水処理装置およびバラスト水処理装置におけるフィルタ洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、バラスト水処理ラインの途中に、ケーシング内にフィルタを設けるとともに、前記フィルタを洗浄する洗浄機構を設けた濾過装置と、前記濾過装置の下流側に紫外線照射装置を備え、さらに、前記フィルタの目詰まり時に、水処理運転を停止させて、前記フィルタを前記洗浄機構により洗浄させ、洗浄後に水処理運転を再開させる運転制御手段を備えたバラスト水処理装置であって、前記紫外線照射装置に冷却水を通水する冷却水通水ラインを併設し、また、前記運転制御手段には、前記フィルタの目詰まり時に、水処理運転を停止させるも前記紫外線照射装置の点灯状態を維持させるとともに、前記冷却水通水ラインから前記紫外線照射装置に冷却水を通水させ、前記濾過装置の洗浄後に水処理運転を再開するとともに、前記紫外線照射装置への冷却水の通水を停止させる制御機能を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、前記紫外線照射装置に冷却水を通水する冷却水通水ラインを併設し、また、前記運転制御手段には、前記フィルタの目詰まり時に、水処理運転を停止させるも前記紫外線照射装置の点灯状態を維持させるとともに、前記冷却水通水ラインから前記紫外線照射装置に冷却水を通水させ、前記濾過装置の洗浄後に水処理運転を再開するとともに、前記紫外線照射装置への冷却水の通水を停止させる制御機能を備えたので、前記フィルタの目詰まり時に、水処理運転を停止させてから、直ちに前記フィルタを前記洗浄機構により洗浄することができ、前記フィルタの洗浄後、直ちに水処理運転を再開することができることから、水処理運転を緊急停止してフィルタを洗浄する場合の、水処理運転の停止からフィルタの洗浄後の水処理運転の再開までの洗浄時間の短縮化が図れる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、バラスト水処理ラインの途中に、ケーシング内にフィルタを設けるとともに、前記フィルタを洗浄する洗浄機構を設けた濾過装置と、前記濾過装置の下流側に紫外線照射装置を備え、
前記紫外線照射装置に冷却水を通水する冷却水通水ラインを併設し、前記フィルタの目詰まり時に、水処理運転を停止させて、前記フィルタを前記洗浄機構により洗浄させ、洗浄後に水処理運転を再開させるバラスト水処理装置におけるフィルタ洗浄方法であっ
て、前記フィルタの目詰まり時に、水処理運転を停止させるも前記紫外線照射装置の点灯状態を維持させるとともに、前記冷却水通水ラインから前記紫外線照射装置に冷却水を通水させ、前記濾過装置の洗浄後に水処理運転を再開するとともに、前記紫外線照射装置への冷却水の通水を停止させるようにすることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明によれ
ば、前記フィルタの目詰まり時に、水処理運転を停止させるも前記紫外線照射装置の点灯状態を維持させるとともに、前記冷却水通水ラインから前記紫外線照射装置に冷却水を通水させ、前記濾過装置の洗浄後に水処理運転を再開するとともに、前記紫外線照射装置への冷却水の通水を停止させるようにするので、前記フィルタの目詰まり時に、水処理運転を停止し、直ちに前記フィルタを前記洗浄機構により洗浄し、前記フィルタの洗浄後、直ちに水処理運転を再開することができ、水処理運転を緊急停止してフィルタを洗浄する場合の、水処理運転の停止からフィルタの洗浄後の水処理運転の再開までの洗浄時間の短縮化が図れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るバラスト水処理装置およびバラスト水処理装置におけるフィルタ洗浄方法によれば、水処理運転中のフィルタの目詰まりにより、水処理運転を緊急停止してフィルタを洗浄する場合の、水処理運転の停止からフィルタの洗浄後の水処理運転の再開までの洗浄時間の短縮化を図ることができ、短時間でバラスト水をバラストタンク内へ貯留することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るバラスト水処理装置の実施の形態の一例を示す概略断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るバラスト水処理装置の実施の形態の一例を図面を参照して詳細に説明する。
本例のバラスト水処理装置は、バラスト水処理ライン1上に、被処理水を汲み上げて圧送するポンプ2と、濾過装置3と、濾過装置3で濾過処理した処理水に対して紫外線照射を行う紫外線照射装置4と、紫外線を照射して処理した処理水を貯留するバラストタンク5とを備えている。
【0015】
バラスト水処理ライン1には、ポンプ2と濾過装置3の間に被処理水弁6が、濾過装置3と紫外線照射装置4の間に処理水弁7が、紫外線照射装置4の下流側にバラスト水供給弁8が設けられている。
【0016】
濾過装置3にあっては、ケーシング9内にフィルタ10が設けられているとともに、フィルタ10を洗浄する洗浄機構11が設けられている。洗浄機構11は、フィルタ10の外周面に向けて洗浄水を噴射する洗浄水噴射ノズル12と、ポンプ2の上流側に接続されている被処理水汲上ライン13から分岐し、被処理水を洗浄水として洗浄水噴射ノズル12に供給する洗浄水供給ライン14と、洗浄水供給ライン14に配置され、洗浄水となる被処理水を洗浄水噴射ノズル12へ圧送するポンプ15で構成されている。洗浄水供給ライン14には開閉弁16が設けられている。
【0017】
また、紫外線照射装置4に、紫外線照射装置4内に冷却水を通水する冷却水通水ライン17が併設されている。
本例では、冷却水通水ライン17は、冷却水送りライン17aと冷却水排出ライン17bで構成され、冷却水送りライン17aは、処理水弁7と紫外線照射装置4との間のバラスト水処理ライン1aに接続し、冷却水排出ライン17bは紫外線照射装置4とバラスト水供給弁8との間のバラスト水処理ライン1bに接続している。冷却水送りライン17aには、冷却水源18から冷却水を紫外線照射装置4へ送水するポンプ19とポンプ19の下流側に開閉弁20が設けられており、また、冷却水排出ライン17bには開閉弁21が設けられている。
【0018】
また、濾過装置3は、フィルタ10の一次側と二次側の差圧を検出する差圧検出手段22を備えており、差圧検出手段22は、フィルタ10の一次側と二次側に設けた圧力センサ23,24とで構成されている。フィルタ10の一次側と二次側の差圧は、フィルタ10の目詰まり具合を判断でき、差圧が大きい場合はフィルタ10の目詰まりが激しくなっていることを示す。
【0019】
さらに、本例では、差圧検出手段22により検出されたフィルタ10の一次側と二次側の差圧に基づき、水処理運転動作を制御する運転制御手段25を備えている。
運転制御手段25は、差圧検出手段22が予め設定された差圧を検出したとき、紫外線照射装置4以外の水処理運転を停止させ、紫外線照射装置4に冷却水を通水させるとともに、フィルタ10を洗浄機構11により洗浄させ、洗浄後に、紫外線照射装置4への冷却水の通水を停止させるとともに、水処理運転を再開させる制御機能を備えている。
【0020】
さらに詳細には、運転制御手段25は、差圧検出手段22が予め設定された差圧を検出したとき、紫外線照射装置4の紫外線ランプを点灯させたまま、被処理水を汲み上げるポンプ2を停止させ、被処理水弁6、処理水弁7、バラスト水供給弁8を閉じ、冷却水通水ライン17の冷却水送りライン17aと冷却水排出ライン17bに設けた開閉弁20,21を開くとともにポンプ19を駆動させ、さらに、洗浄水供給ライン13に設けた開閉弁16を開き、ポンプ15を駆動させる機能と、フィルタ10の洗浄後、洗浄水供給ライン13に設けた開閉弁16を閉じ、ポンプ15を停止させ、冷却水通水ライン17の冷却水送りライン17aと冷却水排出ライン17bに設けた開閉弁20,21を閉じるとともにポンプ19を停止させ、被処理水を汲み上げるポンプ2を駆動させ、被処理水弁6、処理水弁7、バラスト水供給弁8を開く機能を備えている。
【0021】
このように構成されたバラスト水処理装置によれば、差圧検出手段22が予め設定された差圧を検出したとき、即ちフィルタ10の目詰まりを検出したとき、紫外線照射装置4の紫外線ランプを点灯させたまま、被処理水を汲み上げるポンプ2を停止させるが、紫外線照射装置4には冷却水通水ライン17から送られてくる冷却水が通水するので、高温による紫外線ランプの破損や、紫外線ランプから放出される熱による周辺機器の破損が防止される。
そして、水処理運転を停止したら、直ちにフィルタ10の洗浄を行うことができる。この間、紫外線照射装置4の紫外線ランプは点灯させたままの状態にあり、所定の照度を維持しているので、フィルタ10の洗浄後、直ちに水処理運転を再開することができる。
以上のように、フィルタ10の洗浄に際し、運転停止時における紫外線照射装置4の紫外線ランプを冷却する時間や、フィルタ10の洗浄後の紫外線照射装置4の紫外線ランプを立ち上げる時間が全く掛からないので、水処理運転の停止からフィルタ10の洗浄後の水処理運転の再開までの洗浄時間を大幅に短縮することができる。
【0022】
本発明に係るバラスト水処理装置におけるフィルタ洗浄方法は、上記のバラスト水処理装置により実施され、本発明に係るバラスト水処理装置におけるフィルタ洗浄方法を実施することにより、水処理運転の停止からフィルタ10の洗浄後の水処理運転の再開までの洗浄時間を大幅に短縮することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 バラスト水処理ライン
3 濾過装置
4 紫外線照射装置
5 バラストタンク
9 ケーシング
10 フィルタ
11 洗浄機構
17 冷却水通水ライン
22 差圧検出手段
25 運転制御手段