(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395058
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ハンチンチン対する、組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20180913BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20180913BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20180913BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20180913BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20180913BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
C12N15/113 ZZNA
A61K48/00
A61K31/7125
A61K31/712
A61K31/7115
A61P25/14
【請求項の数】13
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2015-252875(P2015-252875)
(22)【出願日】2015年12月25日
(62)【分割の表示】特願2013-115737(P2013-115737)の分割
【原出願日】2007年1月26日
(65)【公開番号】特開2016-116520(P2016-116520A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年1月22日
(31)【優先権主張番号】60/762,954
(32)【優先日】2006年1月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/836,290
(32)【優先日】2006年8月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595104323
【氏名又は名称】アイオーニス ファーマシューティカルズ, インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Ionis Pharmaceuticals,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】フライアー,スーザン・エム
【審査官】
川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0255086(US,A1)
【文献】
国際公開第01/030395(WO,A1)
【文献】
Experimental Neurology,1997年,144(1),139-146
【文献】
MOLECULAR AND CELLULAR NEUROSCIENCE,米国,2000年10月,16,313-323
【文献】
Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,2000年,295(1),239-243
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドであって、当該アンチセンスオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列がSEQ ID NO: 51, 50および53からなる群より選択されるヌクレオチド配列からなる、前記アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間結合、糖部分、または核酸塩基を有する、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
オリゴヌクレオチドが、5’及び3’ウィングセグメント間に位置するギャップセグメントを有するキメラオリゴヌクレオチドの形態である、請求項1または2に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
キメラオリゴヌクレオチドのギャップセグメントに2’−デオキシヌクレオチドが含まれ、そして、ウィングセグメントに修飾された糖部分を有するヌクレオチドが含まれる、請求項3に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
修飾された糖部分が2’−MOE、2’−OMe、または二環式核酸である、請求項4に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
修飾された糖部分が二環式核酸であり、二環式核酸が、リボシル糖環の2’−水酸基が当該糖環の4’炭素原子と結合している二環式糖部分を含む、請求項5に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
リボシル糖環の2’酸素原子及び4’炭素原子をつなぐ結合がメチレン基またはエチレン基である、請求項6に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
キメラオリゴヌクレオチドのギャップセグメントが10個の2’−デオキシヌクレオチドからなり、そして、各ウィングセグメントが5個の2’−O−メトキシエチル−修飾ヌクレオチドからなる、請求項4に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
各ヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である、請求項2に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
各シトシンが、5−メチルシトシンである、請求項2に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド、及び薬学的に許容可能な希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項12】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、複合体化アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ハンチントン病に罹患している個体を処置するための、請求項11または12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連する出願の相互参照
[0001] 本出願は、35 U.S.C. 119の下に、“ハンチンチン対する、組成物及びその
使用”と題される2006年1月26日出願のアメリカ合衆国仮出願シリアル番号60/762,954、
及び“ハンチンチン対する、組成物及びその使用”と題される2006年8月7日出願のアメリカ合衆国仮出願シリアル番号60/836,290に基づいて、優先権を主張する。
【0002】
配列表
[0002] RTS0838WOSEQ.txtという名前で、560 kbであり、また、2007年1月26日に制
作された、コンピューター判読可能形態の配列表は、本明細書中で参照として援用される。GENBANK(登録商標)番号及びその提出データもまた、本明細書中で参照として援用さ
れる。
【0003】
発明の背景
[0003] ハンチントン病(HD)は、ハンチンチン遺伝子の変異により引き起こされる、神経変性疾患である。この広く発現される単一遺伝子の変化は、多数の特徴的な症状を伴う、進行性の神経変性疾患をもたらす。ハンチントン病は、常染色体優先疾患であり、小児期から70歳を超える歳での発症症例が報告されているが、一般には人生半ばに発症する。低年齢での発症は、父性遺伝に関係しており、若年性の症例の70%が父親からの遺伝による。症状は、情動、運動、及び認知の要素を有する。舞踏病は、運動障害の特有の特徴であり、また、不規則な時間の、ランダムに分配された、及び不意の、過剰な自発運動として定義される。それは、わずかに知覚できる程度から重症へと変化する可能性がある。頻繁に見受けられる他の異常には、ジストニー、硬直、運動緩徐、眼球運動機能障害、及び振せんが含まれる。随意運動障害には、微小運動障害、構音障害、及び嚥下障害が含まれる。情動障害には、うつ症状、及び興奮性が含まれ、また、認知要素には、皮質下認知症が含まれる(Mangiarini et al., 1996. Cell 87:493-506)。HDの脳の変化は、広範囲に広がり、またそれには、特に皮質及び線条体における、神経細胞脱落、及び神経膠症が含まれる(Vonsattel and DiFiglia, 1998. J. Neuropathol. Exp. Neurol., 57:369-384)。
【0004】
[0004] HD変異は、機能未知の350 kDaタンパク質である、ハンチンチンタンパク質
中の、ポリグルタミン鎖(tract)の伸長という結果をもたらす、CAGの伸長である(Huntington Disease Collaborative Research Group, 1993. Cell. 72:971-83)。正常アレルサイズ及び伸長HDアレルサイズは、それぞれ、CAG
6-37及びCAG
35-121リピートであることが、見い出された。より長いリピート配列は、より早い疾患の発症に関係する。伸長が病変をもたらすメカニズムは、未知である。しかしながら、ハンチンチンの1つのコピーが
欠失した個体におけるHD表現型の不在、または伸長がホモ接合性である人における疾病の重篤性の増加は、変異が、機能喪失をもたらさないことを示唆する(Trottier et al., 1995. Nature Med., 10:104-110)。転写抑制解除及び転写コアクチベータータンパク質の機能喪失は、HD発症機序に関与していた。変異ハンチンチンは、特に、HD発症機序の初期段階における、アクチベーター依存転写を特異的に妨害することが示された(Dunah et al., 2002. Science 296:2238-2243)。ヒト血液の遺伝子プロファイリングは、正常、ま
たは発症前の個体と比較して、HDの血液試料において発現の大きな変化を示す、322種のmRNAを同定した。HD尾状核からの死後の脳試料において、マーカー遺伝子の発現が同様に
大きく変化していたことから、血液試料における遺伝子の上方制御が、脳において見いだされる疾患メカニズムを反映することが示唆された。遺伝子発現をモニターすることは、動物モデル及びヒト患者の両方において、特に疾患の初期段階における、疾患の進行をモ
ニターする、感度がよく、かつ、定量的な方法を提供することができる(Borovecki et al., 2005, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:11023-11028)。
【0005】
[0005] 遺伝子の同定は、変異のあるヒトまたはマウス型遺伝子を持ったトランスジェニックマウスを含む、疾患の動物モデルの開発を可能にした。破壊されていない野生型、内因性のマウス遺伝子に加えて、ヒト遺伝子の断片、典型的には、グルタミン伸長を含むはじめの1つまたは2つのエキソンを持つマウス;こちらも内因性マウス遺伝子と共に、伸長したグルタミンリピート領域を伴うヒトハンチンチン全長をもつマウス;及び、CAG
リピート領域中に挿入された病原性CAGリピートを伴うマウス;が、モデルには含まれる
。モデルの全ては、ヒト疾患と、少なくともいくつかの共通する特徴を有する。これらのマウスは、いくつもの評価項目を用いて、HDの予防、改善、及び処置のための、多数の異なる治療薬の試験を可能にした(例えば、Hersch and Ferrante, 2004. NeuroRx. 1:298-306を参照)。化合物は、転写阻害、カスパーゼ阻害、ヒストン脱アセチル化酵素阻害、
抗酸化物質、ハンチンチン阻害/抗酸化物質、生体エネルギー的(biogenergetic)/抗
酸化物質、抗興奮毒性、及び抗アポトーシスを含む、多数の異なるメカニズムにより、機能すると考えられる。
【0006】
[0006] 多数の著者が、HDの動物モデルにおいて、変異ハンチンチントランスジーンの抑制が、疾患に関連する症状を減少させることを、報告している(例えば、本明細書中で参照として援用される、Diaz-Hernandez et al., 2005. J. Neurosci. 25:9773-81を参照)。Wangら(2005. Neurosci. Res. 53:241-9;本明細書中で参照として援用される)は、マウスモデルR6/2において、ハンチンチン遺伝子対する、低分子干渉RNA(siRNA)が、導入遺伝子のハンチンチンの発現を阻害し、そして、寿命を大きく延長させ、運動機能を改善させ、また、体重減少を遅らせたことを報告する。
【0007】
[0007] Machidaら(2006. Biochem. Biophys. Res. Commun. 343:190-7;本明細書中で参照として援用される)は、HDマウスモデルの線条体への、組換えアデノ関連ウイルス(rAAV)を介するRNA干渉(RNAi)の運搬が、不溶性タンパク質集積、及びDARPP-32発現の
下方制御など、HDに関与する神経病理学的異常を改善させたことを報告する。重要なことには、線条体における神経の凝集体は、動物へのRNAi導入の時点と比較して、RNAi導入の後、減少したことを、著者は述べている。
【0008】
[0008] Harperら(2005.PNAS 102:5820-25;本明細書中で参照として援用される)は、ハンチンチンに対するRNAiが、細胞培養及びHDマウスモデルにおいて、ハンチンチンmRNA、及びタンパク質発現を減少させたことを見いだした。著者らは、ハンチンチンのサイレンシングにより、HDに関連する、行動、及び神経病理学的異常が、改善されたことを報告する。
【0009】
[0009] Rodrigues-Lebronら(2005.Mol. Ther. 12:618-33;本明細書中で参照として援用される)は、R6/1 HDトランスジェニックマウスにおいて、線条体の変異ハンチンチ
ンのレベルを抑制するための、RNAiの組換えアデノ関連ウイルス血清型5(rAAV5)遺伝子導入が、ハンチンチンのmRNA及びタンパク質のレベルを減少させる結果をもたらしたことを報告する。ハンチンチンの減少は、神経核内封入体及び他のHDマーカーの、サイズ及び数の減少が同時に起こり、また、R6/1マウスにより示された、後ろ足を握る表現型の発症が遅延する結果をもたらした。
【0010】
[0010] Nguyenら(2005.PNAS 102:11840-45;本明細書中で参照として援用される)
は、変異ハンチンチン遺伝子を発現するPC12細胞の処置のために、金属結合化合物クリオキノールを使用し、そして、変異タンパク質の集積が減少することを見いだした。HDマウスモデルR6/2をクリオキノールを用いて治療することにより、ハンチンチン凝集体集積の
減少、線条体萎縮の減少、ロータロッド能力(rotarod performance)の改善、体重損失
の減少、血液グルコース及びインスリンレベルの正常化、及び寿命の延長を含む、行動及び病理学的表現型の改善をもたらし、変異ハンチンチンタンパク質の減少がHDに対して治療効果があるという結論を支持する。
【0011】
[0011] これらの研究及び他の研究に基づいて、当業者は、変異ハンチンチン遺伝子の発現減少が、HDに対して治療効果があるであろうことを認識する。
【0012】
発明の要旨
[0012] 本発明の一態様は、SEQ ID NO: 46-357からなる群より選択されるヌクレオ
チド配列の少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含む、長さ12から35ヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドである。好ましい態様において、ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 50、93、100、105、110、125、137、345、346及び353からなる群より選択さ
れる。さらなる態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4と少なくとも95%または100%の相補性を有する。さらなる態様において、アンチセンスオリゴ
ヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間結合、糖部分、または核酸
塩基を有する。さらなる態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5'と3'のウィングセグメントの間に位置するギャップセグメントを有するキメラオリゴヌクレオチドを含み、また、いくつかの態様において、キメラオリゴヌクレオチドのギャップセグメントには2'-デオキシヌクレオチドが含まれ、また、ウィングセグメントには、修飾された
糖部分を有するヌクレオチドが含まれる。さらに他の態様において、修飾された糖部分は、2'-OMeまたは二環式核酸である。好ましい態様において、キメラオリゴヌクレオチドのギャップセグメントは10個の2'-デオキシヌクレオチドからなり、かつ、各ウィングセグ
メントは5個の2'-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチドからなり、そして、より好ましい態様において、そのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは長さ20ヌクレオチドである。
【0013】
[0013] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。
【0014】
[0014] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各シトシンは、5-メチルシトシンである。
【0015】
[0015] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さ17から25ヌクレオチドである。他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さ19から23ヌクレオチドである。他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さ20ヌクレオチドである。
【0016】
[0016] 本発明の他の態様は、本明細書中に記述されるアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれか、及び薬学的に許容可能な希釈剤を含む医薬組成物である。
【0017】
[0017] 他の態様は、ハンチントン病(HD)を罹患するリスクのある、または現在罹患している個体を処置する方法であり、SEQ ID NO: 4のうちのヌクレトチド1650-1704、1807-1874、3183-3228、4010-4087、4265-4288、4553-4608、5781-5820、及び6793-6796に対して少なくとも90%の相補性を有する、長さ12から35核酸塩基のアンチセンス化合物を含む、治療的有効量の医薬組成物を個体へ投与することを含み、投与によりは個体を処置する。いくつかの態様において、投与は、くも膜下腔送達、脳室内送達、または脳実質内送達を含む。いくつかの態様において、投与は、くも膜下腔注入により、個体の脳脊髄液へ送達することを含む。いくつかの態様において、処置は、1つまたはそれ以上のHDの指
標の改善を含む。いくつかの態様において、処置は、個体の生存期間の増加を含む。いくつかの態様において、処置は、HDの発症を遅らせることを含む。いくつかの態様において
、アンチセンス化合物は、少なくともSEQ ID NO: 4のヌクレオチド1650-1704、1807-1874、3183-3228、4010-4087、4265-4288、4553-4608、5781-5820、及び6793-6796と少なくとも95%、または100%の相補性を有する。
【0018】
[0018] いくつかの態様において、アンチセンス化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間結合、糖部分、または核酸塩基を有する。いくつかの
態様において、オリゴヌクレオチドは、5'及び3'のウィングセグメントの間に位置するギャップセグメントを有する、キメラオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、キメラオリゴヌクレオチドのギャップセグメントには、2'-デオキシヌクレオチドが含
まれ、また、ウィングセグメントには修飾された糖部分を有するヌクレオチドが含まれる。いくつかの態様において、修飾された糖部分は、2'-OMeまたは二環式核酸である。いくつかの態様において、キメラオリゴヌクレオチドのギャップセグメントは、10個の2'-デ
オキシヌクレオチドからなり、また、各ウィングセグメントは5個の2'-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチドからなる。いくつかの態様において、各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。いくつかの態様において、各シトシンは、5-メチルシトシンである。いくつかの態様において、化合物は、17から25ヌクレオチド、他の場合において19から23ヌクレオチド、他の場合において20ヌクレオチドを含む。
【0019】
[0019] いくつかの態様において、この方法は、HDに罹患する個体を選択することを、さらに含む。いくつかの態様において、この方法は、HDに罹患しやすい個体を選択することを、さらに含む。
【0020】
[0020] 他の態様は、ハンチントン病(HD)を罹患するリスクのある、または現在罹患している個体を処置する方法であり、SEQ ID NO: 46-357からなる群から選択されるヌ
クレオチド配列の、少なくとも12個の連続したヌクレトチドを含む、長さ12から35ヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、治療的有効量の医薬組成物を個体へ投与することを含む。いくつかの態様において、ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 50、93
、100、105、110、125、137、345、346、及び353からなる群から選択される。
【0021】
[0021] 他の態様は、HD処置のための薬剤の製造において本明細書中に開示される、アンチセンス化合物またはオリゴヌクレオチドのいずれかを使用することである。一態様は、HDを処置するための薬剤の調製において、SEQ ID NO: 46-357からなる群から選択さ
れるヌクレオチド配列の少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含む、長さ12から35ヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用することである。他の態様は、HDを処置するための薬剤の調製において、SEQ ID NO: 50、93、100、105、110、125、137、345、346、及び353からなる群から選択されるヌクレオチド配列の、少なくとも12個の連続
したヌクレオチドを含む、長さ12から35ヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用することである。さらなる態様において、HDの処置は、HDを罹患している個体におけるHDの進行を遅くすることである。さらなる態様において、HDの処置は、HDに罹患しやすい個体におけるHDの発症を予防することである。さらなる態様において、HDの処置は、個体の生存期間を増加させることを含む。
【0022】
発明の詳細な説明
概説
[0022] ハンチントン病は、広範囲に発現される単一遺伝子ハンチンチンの変異により引き起こされる、進行性の神経変性疾患である。変異は、CAGリピート領域の伸長であ
り、より大きな伸長は、より重篤な疾患、及びより低年齢での発症をもたらす。変異は、様々な、行動症状、情動症状、及び認知症状をもたらし、また、脳にハンチンチン凝集体の形成をもたらす。単一遺伝子欠失における表現型の不在、及びハンチンチン遺伝子の変
異の入った2つのコピーを持つ個体における、疾患重篤性の上昇から、変異が機能喪失を
もたらさないことが示唆される。
【0023】
[0023] アンチセンス技術は、ハンチントン病を含む、様々な疾患の治療薬の開発のためのメカニズムを提供する。アンチセンス技術を裏付ける原理は、標的核酸にハイブリダイズするアンチセンス化合物が、転写または翻訳などの遺伝子発現活性を調節することである。この配列特異性は、標的有効性、及び遺伝子機能化のためのツールとして、また疾患に関与する遺伝子の発現を選択的に調節するための治療薬として、アンチセンス化合物を非常に魅力的なものとしている。
【0024】
[0024] 本発明は、ハンチンチンをコードする核酸を標的とし、また、ハンチンチンの発現を調節する、アンチセンス化合物、特に核酸、及び核酸様オリゴマーに対するものである。好ましい態様において、アンチセンス化合物はヒトハンチンチン(SEQ ID NO: 1-5及び45)を標的とする。本発明の化合物を含む、医薬組成物、及び他の組成物もまた、提供される。さらに、HDの進行を遅くする方法、及びHD症状の発症を改善または遅延させる方法が、提供される。そのような方法は、ハンチンチンの発現を調節するアンチセンス化合物を使用する。
【0025】
治療薬
[0025] ハンチントン病(HD)に罹患している個体を処置する方法は、本明細書中で提供される。処置は、ハンチントン病(HD)に罹患している個体における疾患の進行を遅らせること、及びHDに罹患しやすい個体においてHDの発症を遅らせることをも含む。いくつかの態様において、そのようなの処置の方法は、ハンチンチンを標的とするアンチセンス化合物またはオリゴヌクレオチドを含む治療的有効量の医薬組成物を、個体の脳脊髄液へ投与することを含む。そのようなの処置の方法はさらに、HDに罹患する個体の生存期間の増加、またはHDに罹患しやすい個体の生存期間の増加を含む。疾患の進行を遅らせることは、疾患の分子マーカーまたは症状を含む、HDの1つまたはそれ以上の指標の、測定可
能な変化がないこと、またはその改善により示される。HD発症の遅延は、HDの指標の臨床症状がないことにより示される。
【0026】
[0026] 本発明は、ハンチンチンをコードする核酸分子の機能を調節し、最終的には、産生されるハンチンチンタンパク質量を調節するのに使用するため、アンチセンス化合物、特に、アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用する。調節に適する形態は、ハンチンチンをコードする核酸分子の阻害であり、それはハンチンチンをコードする核酸のレベルの減少により証明される。従って、ハンチンチンをコードする核酸分子の発現の阻害、つまり、ハンチンチンをコードする核酸分子のレベルの減少に使用するための、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、アンチセンス化合物が、本明細書中で開示される。本明細書中で使用される場合、“標的核酸”及び“ハンチンチンをコードする核酸分子”という用語は、ハンチンチンをコードするDNA、そのようなDNAから転写されるRNA(前駆mRNA及
びmRNAまたはその一部を含む)、及びそのようなRNAに由来するcDNAもまた含むように、
便宜的に使用された。ハンチンチンをコードする1つまたはそれ以上の核酸にハイブリダ
イズし、そしてその発現を調節する、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、“ハンチンチンを標的とする”とみなされる。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、野生型ハンチンチン標的核酸と、変異ハンチンチン標的核酸とを、必ずしも見分けない。野生型ハンチンチン標的核酸のレベルの減少による有害事象を導入することなく、変異ハンチンチン標的核酸のレベルを減少させることが、臨床的に望ましい。
【0027】
[0027] 一態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド4010-4087を含むSEQ ID NO: 4のエキソン30と少なくとも90%相補的である。つ
まり、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド4010-4087と少
なくとも90%相補的である。この態様には、SEQ ID NO: 99、100、101、または102から選択される配列を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0028】
[0028] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド4028-4146と少なくとも90%相補的である。一態様において、アンチセンスオ
リゴヌクレオチドには、SEQ ID NO: 99、100、101、102、または103から選択される配列
を含むものが含まれる。
【0029】
[0029] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド4538-4615と少なくとも90%相補的である。この態様には、SEQ ID NO: 109、110、111、または112から選択される配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0030】
[0030] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド4553-4608を含むSEQ ID NO: 4のエキソン34と少なくとも90%相補的である。
つまり、この態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド4553-4608と少なくとも90%相補的である。この態様には、SEQ ID NO: 110、また
は112から選択される配列を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0031】
[0031] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド5781-5820と少なくとも90%相補的である。一態様において、アンチセンスオ
リゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 123、124、または125から選択される配列を含む。
【0032】
[0032] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド5722-5863を含むSEQ ID NO: 4のエキソン42と少なくとも90%相補的である。
つまり、一態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド5722-5863と少なくとも90%相補的である。一態様において、アンチセンスオリゴヌ
クレオチドは、SEQ ID NO: 123、124、または125から選択される配列を含む。
【0033】
[0033] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド6763-6796と少なくとも90%相補的である。一態様において、アンチセンスオ
リゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 136、137、または138から選択される配列を含む。
【0034】
[0034] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド6560-6773を含むSEQ ID NO: 4のエキソン48、及びSEQ ID NO: 4のヌクレオチ
ド6774-6919を含むSEQ ID NO: 4のエキソン49の両方を含む領域と少なくとも90%相補的
である。従って、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド6560-6919と少なくとも90%相補的である。一態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチ
ドは、SEQ ID NO: 134、135、136、137、138、または151から選択される配列を含む。
【0035】
[0035] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド3183-3253と少なくとも90%相補的である。一態様において、アンチセンスオ
リゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 90、91、92、93、及び94から選択される配列を含む。
さらなる態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド3183-3228と少なくとも90%相補的である。この観点は、SEQ ID NO: 90、91、92、または93から選択される配列を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0036】
[0036] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド3019-3211を含むSEQ ID NO: 4のエキソン23、及びSEQ ID NO: 4のヌクレオチ
ド3212-3288を含むSEQ ID NO: 4のエキソン24の両方を含む領域と少なくとも90%相補的
である。つまり、一態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド3091-3288と少なくとも90%相補的である。この態様は、SEQ ID NO: 90、91、92、93、または94から選択される配列を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0037】
[0037] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド4265-4288と少なくとも90%相補的である。この態様は、SEQ ID NO: 104、ま
たは105から選択される配列を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0038】
[0038] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド4088-4311を含むSEQ ID NO: 4のエキソン31と少なくとも90%相補的である。
つまり、この態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のヌクレオチド4088-4311と少なくとも90%相補的である。この態様は、SEQ ID NO: 103、104、または105から選択される配列を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0039】
[0039] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 45の
ヌクレオチド1607-1704と少なくとも90%相補的である。この態様は、SEQ ID NO: 342、343、344、345、346、347、348、または349から選択される配列を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。一側面において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 45のヌクレオチド1650-1704と少なくとも90%相補的である。この側面は、SEQ ID NO:
345、346、347、348、または349から選択される配列を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0040】
[0040] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 45の
ヌクレオチド1807-1874と少なくとも90%相補的である。この態様は、SEQ ID NO: 351、352、353、354、355、356、または357から選択される配列を含む、アンチセンスオリゴヌ
クレオチドを含む。
【0041】
[0041] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 45の
ヌクレオチド985-1580と少なくとも90%相補的である。この態様は、SEQ ID NO: 329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、47、48、49、50、51、52、53、または54から選択される配列を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0042】
[0042] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、多数のCAGリピー
トを含む、SEQ ID NO: 45のヌクレオチド1079-1459と少なくとも90%相補的である。この態様は、SEQ ID NO: 48、49、50、51、52、または53から選択される配列を含む、アンチ
センスオリゴヌクレオチドを含む。
【0043】
[0043] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 45の
ヌクレオチド1055-1477と少なくとも90%相補的である。この領域は、多数のCAGリピートを含む。この態様は、SEQ ID NO: 338、48、49、50、51、52、または53から選択される配列を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0044】
[0044] 他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 45の
ヌクレオチド1019-1542と少なくとも90%相補的である。この態様は、SEQ ID NO: 331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、48、49、50、51、52、53、または54から選択される配列を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0045】
[0045] さらなる態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、本明細書中で記載されるヌクレオチド領域と少なくとも95%相補的である。さらなる態様において、ア
ンチセンスオリゴヌクレオチドは、本明細書中で記載されるヌクレオチド領域と少なくとも96%、97%、98%、99%、または100%相補的である。
【0046】
[0046] 本明細書中で使用される場合、“ハンチントン病(HD)に罹患する個体”とは、医師などの医療従事者より、HDの診断を受けた個体である。関連する診断テストは、当該技術分野においてよく知られており、また、限定するものではないが、ハンチンチン遺伝子における変異の存在を決定する遺伝子テスト、神経学的試験、及び脳画像診断を含むことが理解される。ハンチンチン遺伝子における変異についての遺伝子テストは、HDの存在についての特に正確な診断テストである。
【0047】
[0047] “ハンチントン病(HD)に罹患しやすい個体”は、遺伝子テスト及び/または家族歴に基づいて、HDを発症する可能性のある個体を含むことが、理解される。ハンチンチン遺伝子における変異についての遺伝子テストは、HDへの罹患しやすさについての特に正確な診断テストである。HDの指標は、HDに罹患しやすい個体の判別においてもまた、使用することができる。
【0048】
[0048] ハンチンチンのアンチセンスによる阻害が臨床的に望ましい効果を有するため、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを個体の中枢神経系(CNS)、及び特にHDにより侵されるCNSの領域に、送達することは有益である。血液脳関門は一般に全身性に投与されたアンチセンスオリゴヌクレオチドに対する透過性がないため、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドをCNSの組織に提供する好ま
しい方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを脳脊髄液(CSF)へ直接的に投与するこ
とを介する。CSF及び脳への送達の手段には、くも膜下腔(IT)投与、脳室内(ICV)投与、及び脳実質内投与が含まれる。IT投与またはICV投与は、治療薬を脳脊髄液に注入する
、外科的に埋め込まれたポンプの使用を介して、達成することができる。脳実質内への送達は、カテーテルを脳内へ外科的に挿入することにより、達成することができる。本明細書中で使用される場合、“CSFへの送達”、及び“CSFへの投与”とは、注入ポンプの使用を介する、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドをIT注入すること、またはICV注入することを含む。いくつかの態様において、IT注入は、CSFへの送達のための、適切な手段である。他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、処置の全体の行程においてCSFに連続的に注入され、そのような投与は、“連続的注入”、ま
たはIT注入の場合には、“連続的IT注入”と言われる。ポンプを使用する連続的脳実質内注入もまた、考慮される。
【0049】
[0049] いくつかの態様において、例えば、Medtronic SyncroMed(登録商標)IIポ
ンプなどの注入ポンプは、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドをCNSに送達するのに使用される。SyncroMed(登録商標)IIポンプは、製造者により説明される手順に従って、外科的に埋め込まれる。ポンプは、薬物溶液を保持するためのリザーバーを含み、それは、外科的に挿入されたカテーテルに計画された用量で注入される。薬物のくも膜下腔投与のために、カテーテルはくも膜下腔に外科的に挿入される。本明細書中で提供される方法の文脈において、薬物は、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物である。
【0050】
[0050] 本明細書中で使用される場合、“アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物”とは、薬学的に許容可能な希釈剤中の、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む組成物を言う。例として、適当な薬学的に許容可能な希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水である。本明細書中で提供される場合、ISIS番号は、ヌクレオシド1から5及び、16から20が2'-O-メトキシエチル糖部分を有し、ヌクレオシド6から15が2'-デオキシヌクレオチドであり、各ヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合であ
り、そして各シトシンが5-メチルシトシンである、提供される核酸塩基配列を有するアン
チセンスオリゴヌクレオチドのノナデカナトリウム塩を示す。
【0051】
[0051] 本明細書中で使用される場合、“治療的有効量”とは、個体に治療効果を提供する化合物の量である。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどのハンチンチンを標的にするアンチセンス化合物の治療的有効量とは、HDの進行を遅らせるかまたは防ぐ量、あるいはHDの発症を予防するかまたは遅延させる量である。一態様において、治療的有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本明細書中で記述されるものなど、HDの指標または症状の1つあるいはそれ以上を、改善するか、あるいは悪化するのを防ぐか、遅
らせるという結果をもたらすだろう。いくつかの態様において、治療的有効量のハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、8 mgから12 mgの範囲のアンチセ
ンスオリゴヌクレオチドである。他の態様において、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドの、治療的有効量は、10 mgである。本明細書中で使用される場
合、HD患者を“処置する”とは、本発明の治療的有効量の化合物を投与することを含む。
【0052】
[0052] 本明細書中で使用される場合、“疾患の進行を遅らせる”とは、本明細書中で記述されるものなど、HDを罹患している個体における1つあるいはそれ以上の臨床パラ
メーターの臨床的に望ましくない変化を予防しまたは遅延させることを意味する。本明細書中に記述される、1つあるいはそれ以上の疾患評価試験を使用して、HDに罹患している
個体における疾患進行の遅延を同定することは、医師の能力の十分な範囲内である。さらに、HDに罹患している個体において疾患の進行の度合を評価するための、本明細書中に記述されるもの以外の診断試験を、医師が個体に適用することができることが理解される。
【0053】
[0053] 本明細書中で使用される場合、“HDの発症を遅らせる”とは、以前はHDに対して陰性であった、1つあるいはそれ以上のHDの指標の、望ましくない変化の遅延を意味
する。医師は、HDの発症が遅延されるかを決定するため、HDに罹患しやすい個体におけるHD発症のおおよその年齢を決定するために、HDの家族歴を使用することができる。
【0054】
[0054] 本明細書中で使用される場合、“HDの指標”とは、医師などの医療専門家により、HDの進行の診断、または測定のために使用されるパラメーターであり、そしてこれらには、限定するものではないが、遺伝子テスト、ヒアリング、眼球運動、強度、協調、舞踏病(敏捷、衝動的、不随意運動)、興奮、反射、平衡、動作、精神状態、認知症、性格障害、家族歴、体重減少、及び尾状核の変性が含まれる。尾状核の変性は、磁気共鳴映像法(MRI)、またはコンピュータ断層撮影(CT)スキャンなどの脳画像解析技術により
評価される。
【0055】
[0055] 本明細書中で使用される場合、“HDの指標の改善”とは、1つ、またはそれ
以上のHDの指標における、望ましくない変化が存在しないこと、あるいは、望ましい変化が存在することを言う。一態様において、HDの指標の改善は、1つ、またはそれ以上のHD
の指標における測定可能な変化が存在しないことにより、証明される。他の態様において、HDの指標の改善は、1つあるいはそれ以上のHDの指標の望ましい変化により、証明され
る。
【0056】
[0056] 疾患進行を遅延させるとは、HDに罹患している個体における生存期間の増加を、さらに含んでもよい。“生存期間の増加”とは、HD進行及び/またはHDの家族歴に基づく概算の生存期間と比較して、HDに罹患する個体の生存期間の増加を意味することが理解される。医師は、HDに罹患している個体の概算の生存期間を予測するため、本明細書中に記述される、1つまたはそれ以上の疾患評価テストを使用することができる。医師はさ
らに、生存期間を予測するために、HDに罹患している個体の家族歴を使用することができる。
【0057】
[0057] ハンチンチンを標的にするアンチセンス化合物を使用して、HDに罹患している、または罹患しやすいヒトを含む、ヒトなどの動物におけるハンチンチンの発現を調節することができる。一態様において、アンチセンス化合物は、ハンチンチンRNAのレベル
または機能を、効果的に阻害する。ハンチンチンmRNAレベルの減少は、ハンチンチンタンパク質発現産物の変化も引き起こす可能性があるため、そのような結果の変化もまた、計測することができる。ハンチンチンRNAまたはタンパク質発現産物のレベルまたは機能を
効果的に阻害する、本発明のアンチセンス化合物は、活性のあるアンチセンス化合物とみなされる。一態様において、本発明のアンチセンス化合物はハンチンチンの発現を阻害し、RNAの減少を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、
少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%、引き起こす。
【0058】
[0058] ハンチンチンの発現の減少は、動物の体液、組織または器官において測定することができる。体液または組織など、分析のための試料を得る方法、及び分析を可能にする試料の調製の方法は、当業者によく知られる。RNA及びタンパク質レベルの分析のた
めの方法は、上述されており、また、当業者によく知られる。本発明の化合物を用いる処置の効果は、当該技術分野において既知の、日常的な臨床的な方法により、1つあるいは
それ以上の本発明の化合物と接触させた動物より収集される、前述の液体、組織、及び器官中の、標的遺伝子発現に関連するバイオマーカーを測定することにより、評価することができる。ハンチンチンのバイオマーカーには、限定するものではないが、ハンチンチン陽性神経封入体の蓄積、特定の神経組織の消失などが含まれる。
【0059】
[0059] さらに、処置に対する被験体の全身性応答は、限定するものではないが、肝臓トランスアミナーゼ、ビリルビン、アルブミン、血液尿素窒素、クレアチン、及び腎臓機能及び肝臓機能についての他のマーカー;インターロイキン、腫瘍壊死因子、細胞接着分子、C-反応性タンパク質、及び他の炎症マーカーが含まれる、臨床的に関連する測定をモニターすることにより、評価することができる。
【0060】
[0060] 体液、器官、または組織を有効量の1つまたはそれ以上の本発明のアンチセ
ンス化合物または組成物と接触させる方法もまた、考慮される。体液、器官、または組織を、1つまたはそれ以上の本発明の化合物と接触させて、体液、器官、または組織の細胞
中のハンチンチンの発現を調節する結果をもたらすことができる。有効量は、当業者には日常的な方法により、1または複数のアンチセンス化合物、または組成物の標的核酸また
はその産物に対する調節効果をモニターすることにより、決定することができる。さらに、細胞または組織を被験者から単離し、有効量の1または複数のアンチセンス化合物、ま
たは組成物と接触させ、そして、当業者に既知である日常的な方法により被験者に再導入する、ex vivoでの処置の方法が考慮される。
【0061】
[0061] 一態様において、ハンチンチンの発現または過剰発現を阻害するための薬剤の製造における、単離された二重鎖RNAオリゴヌクレオチドの化合物の使用が提供される
。つまり、上述される方法によって、疾患または障害の処置のための薬剤の製造における、ハンチンチンを標的とする単離された二重鎖RNAオリゴヌクレオチドの使用が、本明細
書中で提供される。
【0062】
医薬組成物
[0062] ハンチンチンを標的とするアンチセンス化合物は、有効量の化合物を適切な薬学的に許容可能な希釈剤または担体に加えることにより、医薬組成物において用いることができる。許容可能な担体及び希釈剤は、当業者にはよく知られる。希釈剤または担体の選択は、限定はしないが、化合物の可溶性、及び投与経路を含む、多数の因子に基づく
。そのようなの考慮は、当業者には十分に理解される。一側面において、本発明のアンチセンス化合物は、ハンチンチンの発現を阻害する。
【0063】
[0063] ハンチンチンを標的とするアンチセンス化合物はまた、ハンチンチンの発現に関与する疾患及び障害の処置のための薬剤の製造においても使用することができる。一態様において、疾患または障害は、ハンチントン病である。
【0064】
[0064] 本発明のアンチセンス化合物は、ヒトを含む動物への投与に際して、生物学的に活性な代謝産物またはそれらの残留物を(直接的または間接的に)提供することができる、いずれかの薬学的に許容可能な塩、エステル、またはそのようなエステルの塩、またはどのような他の機能的化学的な同等物をも含む。従って、例えば、本開示は、本発明のオリゴマー化合物のプロドラッグ及び薬学的に許容可能な塩、そのようなプロドラッグの薬学的に許容可能な塩、及び他の生物学的同等物についてもまた、記述される。
【0065】
[0065] “プロドラッグ”という用語は、不活性または活性の少ない形態で調製され、生体内またはその細胞内で、内因性酵素または他の試薬の作用及び/または条件によって、活性型(すなわち薬物)に変換される、治療薬を示す。特に、本発明のオリゴヌクレオチドのプロドラッグ版は、WO 93/24510またはWO 94/26764に開示される方法に従って、SATE((S-アセチル-2-チオエチル)ホスフェート)誘導体として調製される。
【0066】
[0066] “薬学的に許容可能な塩”という用語は、生理学的及び薬学的に許容可能な、本発明の化合物の塩、すなわち、親化合物の望ましい生物学的活性を保持し、かつ、それに望ましくない毒性効果を与えない塩をいう。アンチセンスオリゴヌクレオチドのナトリウム塩は、有用であり、また、ヒトへの治療投与において十分に許容される。他の態様において、dsRNA化合物のナトリウム塩もまた、提供される。
【0067】
製剤
[0067] 本発明のオリゴマー化合物はまた、取り込み、分布、及び/または、吸収を助けるため、例えば、リポソーム、受容体標的化分子、経口製剤、直腸製剤、局所製剤、または他の製剤のような、他の分子、分子構造物または化合物の混合物と、混合され、カプセル化され、結合させるか、そうでなければ会合させることができる。そのような取り込み、分布、及び/または、吸収を助ける製剤の調製を教授する、代表的なアメリカ合衆国特許には、限定するものではないが、U.S.:5,108,921; 5,354,844; 5,416,016; 5,459,127; 5,521,291; 5,543,158; 5,547,932; 5,583,020; 5,591,721; 4,426,330; 4,534,899; 5,013,556; 5,108,921; 5,213,804; 5,227,170; 5,264,221; 5,356,633; 5,395,619; 5,416,016; 5,417,978; 5,462,854; 5,469,854; 5,512,295; 5,527,528; 5,534,259; 5,543,152; 5,556,948; 5,580,575; 及び5,595,756が含まれる。
【0068】
[0068] 本発明にはまた、本発明のアンチセンス化合物を含む、医薬組成物、及び製剤も含まれる。本発明の医薬組成物は、局所または全身性の処置のどちらが望ましいかに応じて、及び処置される領域に応じて、多くの方法により、投与することができる。投与は、局所的(限定するものではないが、眼、及び膣送達及び直腸送達を含む粘膜を含む)、肺、例えば、噴霧器によるもの(気管内、鼻腔内、表皮、及び経皮の)を含む、粉末またはエアロゾルの吸入または注入、経口、または非経口であってもよい。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射または注入;あるいは、頭蓋内、例えばくも膜下または脳室内への投与が含まれる。投与部位は当業者に既知である。少なくとも1つの2'-O-メトキシエチル修飾をもつオリゴヌクレオチドは、経口投与に有用であると考えられる。
【0069】
[0069] 慣例的に単位投与剤形で示すことができる、本発明の医薬製剤は、医薬産業
で良く知られる従来の技術に従って、調製することができる。そのような技術には、活性成分を医薬的担体または賦形剤と会合させる段階が含まれる。一般に、製剤は、活性成分を、液体担体または細かく分けられた固体担体、あるいは両方と、均一及び密接に会合させ、そして次に、必要であれば生成物を成形することにより、調製される。
【0070】
[0070] いくつかの態様において、経口投与(non-parenteral administration)に
おける組成物には、天然に存在するオリゴヌクレオチド(すなわち全てホスホジエステルのデオキシリボシル、または全てホスホジエステルのリボシルオリゴヌクレオチド)より1つあるいはそれ以上修飾することが含まれる。そのような修飾は、結合親和性、ヌクレ
アーゼ安定性、細胞または組織透過性、組織分布、または他の生物学的特性または薬物動態学的特性を増加させることができる。
【0071】
[0071] 経口(non-parenteral)オリゴマー化合物の投与のための経口組成物は、限定するものではないが、錠剤、カプセル、液体シロップ、軟質ゲル、坐剤、及び注腸など、様々な剤形で製剤化することができる。“食事性送達”という用語は、例えば、経口、直腸、内視鏡、及び舌下/頬における投与を含む。そのような経口オリゴマー化合物組成物は、“粘膜浸透エンハンサー”として言及することができる。
【0072】
[0072] オリゴヌクレオチドなどのオリゴマー化合物は、噴霧乾燥粒子を含む粒状の形態で、またはマイクロ粒子またはナノ粒子を形成するように複合化させた形態で、経口的に送達することができる。オリゴヌクレオチド複合化剤及びその使用は、アメリカ合衆国特許6,287,860にさらに記述される。オリゴヌクレオチド用の経口製剤、及びその調製
は、本明細書中で参照として援用される、アメリカ合衆国出願09/108,673(1998年7月1日出願)、09/315,298(1999年5月20日出願)及び、2002年2月8日出願の10/071,822に、詳
細に記述される。
【0073】
[0073] 一態様において、経口オリゴマー化合物組成物は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁塩、キレート剤、及び非キレート界面活性剤からなる群の、少なくとも1つの構成要素
を含む。そのような製剤は、当業者に良く知られる。
【0074】
[0074] “医薬担体”または“賦形剤”は、1つまたはそれ以上の核酸を動物に送達
するための、薬学的に許容可能な溶媒、懸濁剤、または他の薬学的不活性媒体である可能性があり、また当該技術分野において既知である。賦形剤は、液体または固体である可能性があり、また、計画された投与方式を念頭において選択して、核酸及び所定の医薬組成物の他の成分と組み合わせたとき、望ましい容積、密度などを提供するようにする。
【0075】
[0075] 経口オリゴマー組成物は、さらに、慣例的に医薬組成物に見い出される、他の補助成分を、当該技術分野で確立された使用レベルで、含んでもよい。
【0076】
[0076] 当業者は、意図された投与経路に従って、製剤が日常的に設計されることを認識するだろう。
【0077】
組み合わせ
[0077] 本発明の組成物は、2つまたはそれ以上のオリゴマー化合物を含んでもよい
。他の関連する態様において、本発明の組成物は、第一の核酸を標的にする1つまたはそ
れ以上のアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチド、及び第二の核酸標的を標的とする1つまたはそれ以上のさらなるアンチセンス化合物を、含んでもよい。あるいは、本発
明の組成物は、同じ核酸標的の異なる領域を標的とする、2つあるいはそれ以上のアンチ
センス化合物を含んでもよい。2つあるいはそれ以上の組み合わせられた化合物は、一緒
にまたは連続的に、使用することができる。
【0078】
化合物
[0078] “オリゴマー化合物”という用語は、核酸分子の領域にハイブリダイズすることができるポリマー構造を言う。この用語には、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、オリゴヌクレオチド類似物、オリゴヌクレオチド模倣物、及びこれらのキメラの組み合わせが含まれる。オリゴマー化合物は、日常的に直線状に調製されるが、連結されるか、そうでなければ、環状に調製することができる。さらに、当該技術分野においては分岐構造が既知である。“アンチセンス化合物”または“アンチセンスオリゴマー化合物”は、それにハイブリダイズし、さらにその発現を調節(増加または減少)する、核酸分子の領域と少なくとも部分的に相補的なオリゴマー化合物をいう。従って、すべてのアンチセンス化合物はオリゴマー化合物ということができるのに対して、すべてのオリゴマー化合物がアンチセンス化合物ということではない。オリゴマー化合物の限定的ではない例には、プライマー、プローブ、アンチセンス化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、外部ガイド配列(EGS)、オリゴヌクレオチド、選択的スプライサー、及びsiRNAが含まれる。そのように、これらの化合物は、一本鎖、二重鎖、環状、分岐、またはヘアピンの形態で導入されることが可能であり、また、内部または末端の突出、またはループなどの構造要素を含んでもよい。オリゴマー二重鎖化合物は、二重鎖化合物を形成するようにハイブリダイズする二本鎖、またはハイブリダイゼーションして完全にまたは部分的に二重鎖化合物を形成することが可能である、十分な自己相補性を有する一本鎖であってもよい。本発明の化合物は、非触媒的である。
【0079】
[0079] “アンチセンスオリゴヌクレオチド”は、核酸に基づくオリゴマーであるアンチセンス化合物だが、siRNA二重鎖は含まない。好ましい態様において、また、本明細
書中で開示されるどの態様においても、“アンチセンスオリゴヌクレオチド”は、一本鎖の核酸分子であってもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、化学的に修飾することができる。
【0080】
[0080] アンチセンス化合物は、約12個から約35個の結合したヌクレオチドを含む。これは、長さ12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35ヌクレオチドのアンチセンス化合物を表現する。
【0081】
[0081] 一態様において、アンチセンス化合物は、上に例示される通り、長さ15個から30個の結合したヌクレオチドである。
【0082】
[0082] 一態様において、アンチセンス化合物は、本明細書中に例示される通り、長さ17個から25個の結合したヌクレオチドである。
【0083】
[0083] 一態様において、アンチセンス化合物は、長さ19個、20個、21個、22個、23個、または24個の結合したヌクレオチドであるか、あるいは、オリゴマー化合物は、長さ19個から24個の結合したヌクレオチドの範囲である。
【0084】
[0084] 一態様において、アンチセンス化合物は長さ21個、22個、23個、または24個の結合したヌクレオチドであるか、あるいは、オリゴマー化合物は、長さ21個から24個の結合したヌクレオチドの範囲である。
【0085】
[0085] 一態様において、アンチセンス化合物は長さ20個の結合したヌクレオチドである。
【0086】
[0086] 本発明の一態様において、二重鎖アンチセンス化合物は、低分子干渉RNA(siRNA)を含む。本明細書で使用される場合、“siRNA”という用語は、第一鎖及び第二鎖
を有する二重鎖化合物として定義され、各鎖は中央部分と2つの独立した末端部分とを有
する。第一鎖の中央部分は、第二鎖の中央部分と相補的であり、鎖どうしのハイブリダイゼーションを可能にする。末端部分は、独立しており、場合によっては相補的であってもよい。鎖の端はオーバーハングを形成するように、1つまたはそれ以上の天然または修飾
された核酸塩基を付加することにより、修飾することができる。1つの限定的ではない例
において、siRNAの第一鎖は、標的核酸に対するアンチセンスであり、一方第二鎖は、第
一鎖に相補的である。いったんアンチセンス鎖が特定の核酸標的を標的化するように設計されれば、次にsiRNAのセンス鎖をアンチセンス鎖の相補体として設計及び合成すること
が可能であり、そして、どちらかの鎖は、どちらかの末端に、修飾または付加を含んでもよい。例えば、一態様において、siRNA二重鎖の両鎖は、中央部の核酸塩基全体にわたり
相補的であり、それぞれが一方または両末端にオーバーハングを有するだろう。二重鎖の一方の端が平滑であり、そして、他方がオーバーハングする核酸塩基を有することは可能である。一態様において、オーバーハングする核酸塩基の数は、二本鎖の各鎖の3'端において1から6である。他の態様において、オーバーハングする核酸塩基の数は、二本鎖の一方の鎖のみの3'端において1から6である。さらなる態様において、オーバーハングする核酸塩基の数は、二本鎖の一方または両方の5'端において1から6である。他の態様において、突出する核酸塩基の数は、0である。
【0087】
[0087] 本発明の一態様において、二重鎖アンチセンス化合物は標準的なsiRNAであ
る。本明細書中で使用する場合、“標準的なsiRNA”という用語は、各鎖は長さ21核酸塩
基であり、19核酸塩基にわたって相補的な鎖をもち、そして、各鎖の各3'末端には、二本鎖化合物において3'オーバーハングとして作用する、デオキシチミジンダイマー(dTdT)を有する、第一鎖と第二鎖を有する二本鎖オリゴマー化合物として定義される。
【0088】
[0088] siRNA二重鎖の各鎖は、約12個から約35個の核酸塩基であってもよい。好ま
しい態様において、siRNA二重鎖の各鎖は、約17個から約25個の核酸塩基である。中央の
相補的部分は、長さ約12から約35核酸塩基であってもよい。好ましい態様において、中央の相補的部分は、長さ約17から約25核酸塩基である。siRNA二重鎖の鎖、及び中央の相補
的部分はそれぞれ、長さ約12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35核酸塩基であってもよいことが理解される。末端部分は、1個から6個の核酸塩基であってもよい。末端部分は、長さ約1、2、3、4、5、または6核酸塩基であってもよいことが理解される。siRNAはまた、末端部分をもた
ない可能性も有る。siRNAの二本鎖は内部で結合され、3'または5'末端は結合していない
ままであってもよいか、あるいは、連続するヘアピン構造またはループを形成するように結合させることができる。ヘアピン構造は、一本鎖の特徴の伸長を生み出す、5'または3'末端のどちらかにオーバーハングを含んでもよい。
【0089】
[0089] 他の態様において、二本鎖アンチセンス化合物は、平滑末端siRNAである。
本明細書中で使用される場合、“平滑末端siRNA”という用語は、末端オーバーハングを
もたないsiRNAとして定義される。つまり、二本鎖化合物の少なくとも一方の末端は、平
滑である。標準的または平滑のどちらでも、siRNAはdsRNAse酵素を誘発し、そして、RNAiアンチセンスメカニズムの動員または活性化の引き金をひくように作用する。さらなる態様において、RNAiアンチセンスメカニズムを介して作用する一本鎖RNAi(ssRNAi)化合物が考慮される。
【0090】
[0090] さらなる修飾が、二本鎖化合物になされることが可能であり、また、一方の末端、選択された核酸塩基部分、糖部分、またはヌクレオシド間結合の1つに結合される
結合基を含んでもよい。あるいは、二本鎖は、非核酸部分、またはリンカー基を介して連結させることができる。一本鎖のみから形成される場合、化合物は、それ自身折り返して二重鎖を形成する、自己相補的ヘアピン型分子の形態をとることができる。つまり、化合
物は、完全にまたは部分的に二重鎖になってもよい。二本鎖から形成される場合、またはそれ自身折り返して二重鎖を形成する自己相補的ヘアピン型分子の形態をとる一本鎖の場合、二本鎖(または二重差を形成する一本鎖の領域)は、それらがワトソン-クリックの
様式で塩基対合する場合に、相補的である。
【0091】
[0091] 本発明に従うアンチセンス化合物は、約12から約35核酸塩基(すなわち、約12個から約35個の結合したヌクレオシド)による相補的なアンチセンス化合物を含んでもよい。言い換えると、本発明の一本鎖アンチセンス化合物は、約12から約35核酸塩基を含み、また、(例えば、siRNAなど)本発明の二本鎖アンチセンス化合物は、それぞれが約12から約35核酸塩基である二本鎖を含む。アンチセンス部分は、本発明のアンチセンス化
合物(一本鎖または二本鎖のどちらか、及び少なくとも一本鎖)内に含まれる。“アンチセンス部分”とは、前述のアンチセンスメカニズムの1つにより機能するように設計され
る、アンチセンス化合物の一部分である。当業者は、これが12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35核酸塩基のアンチセンス部分を含むことを正しく評価するだろう。
【0092】
[0092] 一態様において、本発明のアンチセンス化合物は、12から35核酸塩基のアンチセンス部分を有する。アンチセンス部分が長さ約12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35核酸塩基であってもよいことが理解される。
【0093】
[0093] 例証となるアンチセンス化合物内から選択される、少なくとも8個、好まし
くは少なくとも12個、より好ましくは少なくとも17個の、連続する核酸塩基の伸長を含む、長さ12から35核酸塩基のアンチセンス化合物は、同様に適切なアンチセンス化合物であるとみなされる。同様に適切なアンチセンス化合物であるとみなされる、例証となるアンチセンス化合物内から選択される、少なくとも8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、または19個の核酸塩基の伸長を含む、長さ12から35核酸塩基のアンチセンス化合物もまた、考慮される。
【0094】
[0094] 本発明のアンチセンス化合物には、1つの例証となるアンチセンス化合物の5'末端から、少なくとも8個(または9個〜19個)の連続する核酸塩基を含む、アンチセン
ス化合物配列が含まれる(残りの核酸塩基は、標的核酸に特異的にハイブリダイズできるアンチセンス化合物の5'末端のすぐ上流から始まる、同じアンチセンスの連続的な伸長であり、アンチセンスが約12個から35個の核酸塩基を含むまで連続する)。他のアンチセンス化合物は、1つの例証となるアンチセンス化合物の3'末端から、少なくとも8個(または9個〜19個)の連続する核酸塩基を含む、アンチセンス化合物配列により示される(残り
の核酸塩基は、標的核酸に特異的にハイブリダイズできるアンチセンス化合物の3'末端のすぐ下流から始まる、同じオリゴヌクレオチドの連続的な伸長であり、アンチセンス化合物が約12個から約35個の核酸塩基を含むまで連続する)。アンチセンス化合物は、例証となるアンチセンス化合物の配列の内部部分から、少なくとも8個(または9個〜19個)の連続する核酸塩基を含む、アンチセンス化合物配列により示すことが可能であり、また、どちらかまたは両方の方向に、アンチセンスが約12から約35核酸塩基を含むまで伸長することができることもまた、理解される。
【0095】
[0095] 本明細書中に例示されるアンチセンス化合物を扱える当業者は、過度の実験をせずに、さらなるアンチセンス化合物を同定することが可能であろう。
【0096】
化学修飾
[0096] 当該技術分野で既知の通り、ヌクレオシドは塩基-糖の組み合わせである。
ヌクレオシドの塩基部分は、通常は、複素環塩基である(時々、“核酸塩基”または簡潔
に“塩基”と言われる)。そのような複素環塩基の2つの最も一般的な分類は、プリン及
びピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合するリン酸基をさらに含む、ヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドにおいて、リン酸基は、糖の2'、3'、または5'の水酸基に結合することができる。オリゴヌクレオチドの形成において、リン酸基は隣接するヌクレオシドと互いに共有結合して直線状のポリマー化合物を形成する。次に、この直線状のポリマー化合物のそれぞれの端は、環状の化合物を形成するようにさらに結合することができる。加えて、直線状の化合物は、内部の核酸塩基の相補性を有する可能性があり、また、そのため、完全にまたは部分的に二重鎖の化合物を産生するような方式に折り畳むことができる。オリゴヌクレオチド内で、リン酸基は、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間バックボーンを形成するものと、一般に言われる。RNA及びDNAの正常な結合またはバックボーンは、3'から5'のホスホジエステル結合である。
【0097】
修飾ヌクレオシド間結合
[0097] オリゴマー化合物は、例えば、非天然に生じるヌクレオシド間結合など、修飾ヌクレオシド間結合を含んでもよい。本明細書で定義される通り、修飾ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドには、リン原子を保持するヌクレオシド間結合、及びリン原子をもたないヌクレオシド間結合が含まれる。本明細書の目的において、また、当該技術分野で時々参照されるように、リン原子をそのヌクレオシド間バックボーン中に持たない修飾オリゴヌクレオチドも、オリオヌクレオシドであると見なすことができる。
【0098】
[0098] アンチセンス化合物、及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むオリゴマー化合物は、1つまたはそれ以上の修飾ヌクレオシド間結合を有することができる。その
中にリン原子を含む、修飾オリゴヌクレオチドバックボーンには、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3'-アルキレンホスホネートや5'-アルキレンホスホネートや及びキラルホスホネートを含むメチル及び他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3'-アミノホスホロアミデート、及びアミノアルキルホスホロアミデートを含む、
ホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ホスホノアセテート、及びチオホスホノアセテート(Sheehan et al., Nucleic Acids Research, 2003, 31(14), 4109-4118、及びDellinger et al., J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 940-950参照)、セレノホスフェート及びボラノホスフェートであって正常な3'-5'結合、これらの2'-5'結合アナログであるもの、及びセレノホスフェート及びボラノホスフェートであって1つまたはそれ以上のヌクレオシド間結合
が3'-3'、5'-5'、または2'-2'結合である、逆向き極性をもつもの、が含まれる。逆転す
る極性をもつオリゴヌクレオチドは、単一の最も3'側のヌクレオチド間結合において、3'-3'結合、すなわち、脱塩基である(核酸塩基が欠失しているか、またはその代わりに水
酸基を有する)可能性がある、単一の逆向きヌクレオシド残基を含む。様々な塩、混合塩、及び遊離酸の形態もまた、含まれる。
【0099】
[0099] N3'-P5'-ホスホロアミデートは、相補的RNA鎖への高い親和性、及びヌクレ
アーゼ耐性の両方を示すことが報告されている(Gryaznov et al., J. Am. Chem. Soc., 1994, 116, 3143-3144)。N3'-P5'-ホスホロアミデートが研究され、in vivoでc-myc遺伝子の発現を特異的に下方制御ことについていくつか成功している(Skorski et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 1997, 94, 3966-3971;及び、Faira et al., Nat. Biotechnol., 2001, 19, 40-44)。
【0100】
[0100] いくつかの態様において、オリゴマー化合物は、1つあるいはそれ以上のホ
スホロチオエート及び/またはヘテロ原子ヌクレオシド間結合、特に、-CH
2-NH-O-CH
2-、-CH
2-N(CH
3)-O-CH
2-(メチレン(メチルイミノ)またはMMIバックボーンとして知られる
)、-CH
2-O-N(CH
3)-CH
2-、-CH
2-N(CH
3)-N(CH
3)-CH
2-、及び-O-N(CH
3)-CH
2-CH
2-を有する
ことができる(天然のホスホジエステルヌクレオチド間結合は-O-P(=O)(OH)-O-CH
2-とし
て表される)。
【0101】
[0101] その中にリン原子を含まないいくつかのオリゴヌクレオチドバックボーンは、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子、及びアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つまたはそれ以上の短鎖ヘテロ原
子またはヘテロ環式ヌクレオシド間結合により形成される、バックボーンを有する。これらには、モルホリノ結合を有するもの(ヌクレオシドの糖部分から一部は形成される);シロキサンバックボーン;硫化物バックボーン、スルホキシドバックボーン、及びスルホンバックボーン;ホルムアセチルバックボーン、及びチオホルムアセチルバックボーン;メチレンホルムアセチルバックボーン、及びチオホルムアセチルバックボーン;リボアセチルバックボーン;アルケンを含むバックボーン;スルファメートバックボーン;メチレンイミノバックボーン及びメチレンヒドラジノバックボーン;スルホネートバックボーン及びスルホンアミドバックボーン;アミドバックボーン;及び、N、O、S、及びCH
2構成成分を混合したものを有する他のもの、が含まれる。
【0102】
修飾糖
[0102] オリゴマー化合物は、1つまたはそれ以上の置換した糖部分をまた含んでも
よい。適切な化合物は、2'部分が以下の1つを含んでもよい:OH; F; O-、S-、またはN-アルキル;O-、S-、またはN-アルケニル;O-、S-、またはN-アルキニル;または、O-アルキル-O-アルキル、式中、アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、置換された、または
置換されない、C
1からC
10アルキル、またはC
2からC
10アルケニル及びアルキニルである。O((CH
2)
nO)
mCH
3、O(CH
2)
nOCH
3、O(CH
2)
nNH
2、O(CH
2)
nCH
3、O(CH
2)
nONH
2、及びO(CH
2)
nON((CH
2)
nCH
3)
2もまた、適切であり、式中、n及びmは1から約10である。他のオリゴヌクレオチドは、2'部位が以下の1つを含む:C
1からC
10低級アルキル、置換された低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリール、またはO-アラルキル、SH、SCH
3、OCN、Cl、Br、CN、CF
3、OCF
3、SOCH
3、SO
2CH
3、ONO
2、NO
2、N
3、NH
2、
ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換されたシリル、RNA切断基、レポーター基、オリゴヌクレオチドの薬物動
態特性を改善する基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善する基、及び同様の特性を有する他の置換基。1つの修飾には、2'メトキシエトキシ(2'-O-CH
2CH
2OCH
3、2'-O-(2-メトキシエチル)または2'-MOEとしても知られる)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504)すなわち、アルコキシアルコキシ基が含まれる。さらなる修
飾には、本明細書中の下記実施例において記述される通り、2'-ジメチルアミノキシエト
キシ、すなわち、O(CH
2)
2ON(CH
3)
2基、2'-DMAOEとしても知られる、及びこちらも本明細
書中の下記実施例に記載される通り、2'-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分
野において2'-O-ジメチル-アミノ-エトキシ-エチル、または2'-DMAEOEとしても知られる
)、すなわち、2'-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-N(CH
3)
2が含まれる。
【0103】
[0103] 他の修飾には、2'-メトキシ(2'-O-CH
3)、2'-アミノプロポキシ(2'-OCH
2CH
2CH
2NH
2)、2'-アリル(2'-CH
2-CH=CH
2)、2'-O-アリル(2'-0-CH
2-CH=CH
2)、及び2'-フル
オロ(2'-F)が含まれる。2'-修飾は、アラビノ(上向き)位またはリボ(下向き)位のも
のであってもよい。1つの2'-アラビノ修飾は、2'-Fである。同様の修飾は、オリゴヌクレオチド上の他の部位、特に、3'末端ヌクレオチド、または2'-5'結合オリゴヌクレオチド
上の糖の3'部位、及び5'末端ヌクレオチドの5'部位、においても作製することができる。アンチセンス化合物は、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル基というように、糖模倣物有していてもよい。そのような修飾糖構造の調製を教授する、代表的なアメリカ合衆国特許には、限定するものではないが、U.S.: 4,981,957; 5,118,800; 5,319,080; 5,359,044; 5,393,878; 5,446,137; 5,466,786; 5,514,785; 5,519,134; 5,567,811; 5,576,
427; 5,591,722; 5,597,909; 5,610,300; 5,627,053; 5,639,873; 5,646,265; 5,658,873; 5,670,633; 5,792,747; 5,700,920; 及び、6,147,200が含まれる。
【0104】
[0104] さらなる修飾には、リボシル糖環の2'-水酸基が、糖環の4'炭素原子と結合
して二環式糖部分を形成する、“二環式核酸”または“BNA”として言及される、二環式
糖部分が含まれる(Elayadi et al., Curr. Opinion Invents. Drugs, 2001, 2, 558-561; Braasch et al., Chem. Biol., 2001, 8 1-7;及び、Orum et al., Curr. Opinion Mol.
Ther., 2001, 3, 239-243;に概説される、また、アメリカ合衆国特許6,268,490、及び6,670,461参照)。結合は、2'酸素原子と4'炭素原子をつなぐ、メチレン(-CH
2-)基であってもよく、またはエチレン基であってもよい。結合がメチレン基である二環式核酸部分のアルファ-Lアイソマーは、さらなる修飾糖部分である。調製され研究された他の二環式糖部分は、3'-水酸基から1つのメチレン基を介して糖環の4'炭素原子へつながり、それにより3'-C,4'-C-オキシメチレン結合を形成する(アメリカ合衆国特許6,043,060参照)。
【0105】
オリゴヌクレオチド模倣物
[0105] オリゴマー化合物の他の群には、オリゴヌクレオチド模倣物が含まれる。オリゴヌクレオチドに適用される場合、“模倣物”という用語は、フラノース環、またはフラノース環及びヌクレオチド間結合が、新たな基に置き換えられたオリゴマー化合物が含まれ、フラノース環のみの置き換えは、当該技術分野において、糖代替物(sugar surrogate)とも言われる。複素環式塩基部分、または修飾複素環式塩基部分は、適切な標的核
酸へのハイブリダイゼーションを維持される。オリゴヌクレオチド模倣物には、ペプチド核酸(PNA)化合物(Nielsen et al., Science, 1991, 254, 1497-1500)、モルホリノ型化合物(例えば、アメリカ合衆国特許番号5,034,506参照)、シクロヘキセン核酸(CeNA
)が含まれる。CeNAオリゴヌクレオチド(Wang et al., J. Am. Chem. Soc., 2000, 122,
8595-8602)及び、ホスホノモノエステル核酸。
【0106】
修飾核酸塩基及び代替核酸塩基
[0106] オリゴマー化合物には、核酸塩基(当該技術分野において、しばしば複素環式塩基、または簡潔に“塩基”と言われる)の修飾または置換が含まれてもよい。本明細書中で使用される場合、“修飾されていない”核酸塩基または“天然の”核酸塩基には、プリン塩基のアデニン(A)及びグアニン(G)、及びピリミジン塩基のチミン(T)、シ
トシン(C)、及びウラシル(U)が含まれる。“置換”は、修飾されていない塩基または天然の塩基を、他の修飾されていない塩基または天然の塩基に置き換えることである。“修飾された”核酸塩基は、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル誘導体及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2'-プロピル誘導体及び他のアルキ
ル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニル(-C≡C-CH
3)ウラシル及びシトシン、及びピリミジン塩基の他の
アルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシン、及びチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、及び他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ、特に、5-ブロモ、5-トリフルオロメチル、及び他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグ
アニン及び7-デアザアデニン、及び3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンなどの、他の合成、及び天然の核酸塩基を意味する。さらに修飾核酸塩基には、フェノキサジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾチアジン-2(3H)-オン)などの三環式ピリミジン、置換フェノキサジンシチジン(例えば9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾキ
サジン-2(3H)-オン)、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド(4,5-b)インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド(3',2':4,5)ピロロ(2,3-d)ピリミジン-2-オン)
などのG-クランプが含まれる。修飾核酸塩基にはまた、プリンまたはピリミジン塩基が他の複素環と置き換えられたもの、例えば、7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-
アミノピリジン、及び2-ピリドンが含まれてもよい。特定の核酸塩基修飾は、本発明の化合物の結合親和性を上昇させる。これらには、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、及び5-プロピニルシトシンを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、及びN-2、N-6、及びO-6置換プリンが含まれる。5-メチルシトシン置換基は、核酸二重鎖安
定性を0.6-1.2℃上昇させることが示されており、そして、さらに、特に、2'-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わされた場合、現在のところ適切な塩基置換である。塩基の修飾は、核酸配列において置換を生み出すための化学修飾を伴わないことは、当該技術分野において理解される。
【0107】
[0107] 本発明のオリゴマー化合物には、1つまたはそれ以上の天然由来の複素環塩
基部分の代わりに、多環式複素環式化合物も含まれてもよい。多数の三環式複素環式化合物が以前に報告されている。これらの化合物をアンチセンスの応用において、日常的に使用して、修飾鎖の標的鎖への結合特性を増加させる。最も研究された修飾は、グアノシンを標的とするものであるため、G-クランプまたはシチジンアナロクと呼ばれる。
【0108】
結合物
[0108] オリゴマー化合物は、活性、細胞分布、または細胞への取り込みなどのオリゴマー化合物特性を増強する、1つまたはそれ以上の部分または複合体を化学的に結合す
ることができる。これらの部分または複合体には、第一または第二水酸基などの官能基と共有結合する複合体群が含まれてもよい。本発明の複合体群には、インターカレーター、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を増強する基、及びオリゴマーの薬物動態学的特性を増強する基が含まれる。さらなる複合体群には、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、及び色素が含まれる。本発明の文脈において、薬力学的特性を増強させる基には、取り込みを改善し、分解への耐性を増強させ、及び/または、標的核酸への配列特異的なハイブリダイゼーションを強める様な基が含まれる。本発明の文脈において、薬物動態学的特性を増強させる基には、本発明の化合物の取り込み、分布、代謝または排出を改善する基が含まれる。
【0109】
[0109] オリゴマー化合物は、一般にオリゴマー化合物の一方または両方の末端に結合され、例えばヌクレアーゼ安定性と言った特性を増強する、1つまたはそれ以上の安定
化基を有するようにも修飾することができる。キャップ構造は安定化基に含まれる。“キャップ構造または末端キャップ部分”により、オリゴヌクレオチドのいずれかの末端に取り込まれた、化学的修飾が意味される。これらの末端修飾は、末端核酸分子を有するオリゴマー化合物をエキソヌクレーゼ分解から保護し、また、細胞内での送達及び/または局在性を改善することができる。キャップは、5'末端(5'-cap)または3'末端(3'-cap)のいずれかに存在することが可能であり、または一本鎖の両末端または二本鎖化合物の両鎖の1つまたはそれ以上の末端に存在することができる。このキャップ構造は、天然のmRNA
分子の5'端に存在する逆向きのメチルグアノシン“5'キャップ”と混同されない。
【0110】
[0110] 限定的ではない例として、5'-キャップには、逆向きの脱塩基残基(部分)
、4',5'メチレンヌクレオチド;1-(ベータ-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4'-チ
オヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド;1,5-無水ヘキシトールヌクレオチド;L-ヌクレオチド;アルファ-ヌクレオチド;修飾塩基ヌクレオチド;ホスホロジチオエート結合;
トレオ-ペントフラノシルヌクレオチド;非環式3',4'-セコヌクレオチド;非環式3,4-ジ
ヒドロキシブチルヌクレオチド;非環式3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3'-3'-逆向きヌクレオチド部分;3'-3'-逆向き脱塩基部分;3'-2'-逆向きヌクレオチド部分;3'
-2'-逆向き脱塩基部分、1,4-ブタンジオールホスフェート;3'-ホスホロアミデート;ヘ
キシルホスフェート;アミノヘキシルホスフェート;3'-ホスフェート;3'-ホスホロチオエート;ホスホロジチオエート;または、架橋または非架橋メチルホスホネート部分が含まれる。siRNA構築において、5'端(5'-キャップ)は、限定的ではないが、一般的に、5'-ヒロドキシルまたは5'-ホスフェートである。
【0111】
[0111] 特に適切な3'-キャップ構造には、例えば、4',5'-メチレンヌクレオチド;1-(べベータ-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド;4'-チオヌクレオチド、炭素環式ヌク
レオチド;5'-アミノ-アルキルホスフェート;1,3-ジアミノ-2-プロピルホスフェート、3-アミノプロピルホスフェート;6-アミノヘキシルホスフェート;1,2-アミノドデシルホ
スフェート;ヒドロキシプロピルホスフェート;1,5-無水ヘキシトールヌクレオチド;L-ヌクレオチド;アルファ-ヌクレオチド;修飾塩基ヌクレオチド;ホスホロジチオエート
;トレオ-ペントフラノシルヌクレオチド;非環式3',4'-セコヌクレオチド;3,4-ジヒド
ロキブチルヌクレオチド;3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、5'-5'-逆向きヌクレオチド部分;5'-5'-逆向き脱塩基部分;5'-ホスホロアミデート;5'-ホスホロチオエート;1,4-ブタンジオールホスフェート;5'-アミノ;架橋及び/または非架橋5'-ホスホロアミデート、ホスホロチオエート及び/またはホスホロジチオエート、架橋または非架橋メチルホスホネート、及び5'メルカプト部分が含まれる(さらに詳しくは、Beaucage and Tyer, 1993, Tetrahedron 49, 1925)。
【0112】
1.キメラ化合物
[0112] 所定のオリゴマー化合物の全ての部位について、均一に修飾されることは必要でなく、また実際、前述の修飾の1つ以上は、単一の化合物中に、あるいはオリゴマー
化合物中の1つのヌクレオシド中に取り込むことができる。
【0113】
[0113] 本発明には、キメラ化合物であるオリゴマー化合物もまた含まれる。本発明の文脈において、“キメラ”オリゴマー化合物または“キメラ”は、それぞれが少なくとも1つのモノマー単位、すなわちオリゴヌクレオチド化合物の場合1つのヌクレオチド、を含む、2つまたはそれ以上の化学的に区別される領域を含む、オリゴヌクレオチドなどの
一本鎖または二本鎖オリゴマー化合物である。キメラアンチセンスオリゴヌクレオチドは、オリゴマー化合物の一形態である。これらのオリゴヌクレオチドは、典型的に、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の増加、細胞への取り込みの増加、電荷の変化、安定性の増加、及び/または標的核酸への結合親和性の増加をオリゴヌクレオチドに与えるように修飾される、少なくとも1つの領域を含む。オリゴヌクレオチドのさらなる領域は、RNAseまたは他の酵素の基質として機能することができる。一例として、RNAse Hは、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を切断する細胞内エンドヌクレアーゼである。そのため、RNase Hの活性化は、DNA
様のオリゴマー化合物により結合された場合RNA標的の切断をもたらし、それにより、オ
リゴヌクレオチドを介する遺伝子発現の阻害効率を大きく増強する。RNA:RNAハイブリッ
ドの切断は、同様に、細胞RNA及びウイルスRNAの両方を切断するRNase IIIまたはRNAseL
などのエンドリボヌクレアーゼの働きを通して達成することができる。RNA標的の切断産
物は、通常通り、ゲル電気泳動、及びもし必要であれば、当該技術分野において既知である関連する核酸ハイブリダイゼーション技術により検出することができる。
【0114】
[0114] 本発明のキメラオリゴマー化合物は、2つ、あるいは、それ以上のオリゴヌ
クレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、オリゴヌクレオチド模倣物、またはその領域または部分の複合構造として形成させることができる。そのような化合物は、当該技術分野において、ハイブリッドまたはギャップマーとも言われる。そのようなハイブリッド構造の調製を教授する代表的なアメリカ合衆国特許には、限定的ではないが、 U.S.: 5,013,830; 5,149,797; 5,220,007; 5,256,775; 5,366,878; 5,403,711; 5,491,133; 5,565,350; 5,623,065; 5,652,355; 5,652,356; 及び、5,700,922が含まれる。
【0115】
[0115] “ギャップマー”は、非デオキシオリゴヌクレオチドセグメントにより側面を挟まれる、2'-デオキシオリゴヌクレオチド領域を有する、オリゴマー化合物、一般に
は、オリゴヌクレオチドとして定義される。中央領域は、“ギャップ”と言われる。側面セグメントは、“ウィング”と言われる。論理により縛られることは望まないが、RNA標
的と結合する場合、ギャップマーのギャップは、RNAse Hにより認識できる基質を示し、
一方ウィングはそのような基質を提供しないが、二重鎖安定性への寄与、または有益な薬物動態学的効果などの他の特性をもたらすことができる。各ウィングは、1つまたはそれ
以上の非デオキシオリゴヌクレオチドモノマーであってもよい(もしウィングの一方が非デオキシオリゴヌクレオチドモノマーをもたない場合、“ヘミマー”が記述される)。一態様において、ギャップマーは、5個の非デオキシヌクレオチドウィングにより側面を挟
まれる、10個のデオキシヌクレオチドギャップである。これは、5-10-5ギャップマーと言われる。他の構造は、当業者により容易に認識される。一態様において、ウィングは2'-MOE修飾ヌクレオチドを含む。他の態様において、ギャップマーはホスホロチオエートバックボーンを有する。他の態様において、ギャップマーは、2'-MOEウィング、及びホスホロチオエートバックボーンを有する。他の適切な修飾は、当業者により容易に認識可能である。
【0116】
オリゴマー合成
[0116] 修飾及び非修飾ヌクレオシドのオリゴマー化は、日常的に、DNAに関する文
献(Protocols for Oligonucleotides and Analogs, Ed. Agrawal (1993), Humana Press)及び/またはRNAに関する文献(Scaringe, Methods (2001), 23, 206-217. Gait et al., Applications of Chemically synthesized RNA in RNA: Protein Interactions, Ed. Smith (1998), 1-36. Gallo et al., Tetrahedron (2001), 57, 5707-5713)の手法に従
って行うことができる。
【0117】
[0117] オリゴマー化合物は、良く知られた固相合成の技術を通して、便利にそして日常的に作製することができる。そのような合成の設備は、例えばApplied Biosystems(Foster City、CA)を含む、いくつかの業者により販売される。当該技術分野において既
知のそのような合成のためのいかなる他の手段も、追加的にまたは代わりに使用することができる。ホスホロチオエート、及びアルキル化誘導体などのオリゴヌクレオチドの調製に同様の技術を用いることは、良く知られている。
【0118】
オリゴヌクレオチド合成
[0118] オリゴマー化合物、及びホスホロアミダイトは、当業者に良く知られる方法により、作製される。修飾及び非修飾ヌクレオシドのオリゴマー化は、DNA様化合物合成
に関する文献的方法(Protocols for Oligonucleotides and Analogs, Ed. Agrawal (1993), Humana Press)及び/またはRNA様化合物合成に関する文献的方法(Scaringe, Methods (2001), 23, 206-217. Gait et al., Applications of Chemically synthesized RNA in RNA:Protein Interactions, Ed. Smith (1998), 1-36. Gallo et al., Tetrahedron (2001), 57, 5707-5713)に従って、必要に応じて行われる。あるいは、オリゴマーは、例えばDharmacon Research Inc.(Lafayette、CO)などの様々なオリゴヌクレオチド合成会社より、購入することができる。
【0119】
[0119] 使用される特定のプロトコールに関わらず、本発明に従って使用されるオリゴマー化合物は、良く知られた固相合成の技術を通して、便利にそして日常的に作製することができる。そのような合成の設備は、例えばApplied Biosystems(Foster City、CA
)を含む、いくつかの業者により販売される。当該技術分野において既知のそのような合成のための他のいかなる手段も、追加的にまたは代わりに、使用することができる(液相合成を含む)。
【0120】
[0120] オリゴヌクレオチドの単離方法及び分析方法は、当該技術分野において良く知られている。96ウェルプレート形式は、小スケール応用での、オリゴヌクレオチドの合成、単離、及び分析において、特に有用である。
【0121】
ハイブリダイゼーション
[0121] “ハイブリダイゼーション”は、オリゴマー化合物の相補鎖の対合を意味する。特定のメカニズムに限定しないが、対合のもっとも一般的なメカニズムは、水素結合が関与し、それは、オリゴマー化合物の鎖の相補的なヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基(核酸塩基)間の、ワトソン-クリック、フーグスティーン、または逆フーグスティー
ン水素結合であってもよい。例えば、アデニン及びチミンは、水素結合の形成を介して対合する、相補的な核酸塩基である。ハイブリダイゼーションは、様々な状況下で生じる可能性がある。
【0122】
[0122] オリゴマー化合物は、特異的な結合が望まれる条件下、すなわち、in vivo
アッセイまたは治療的処置の場合は生理学的条件下において、また、in vitroアッセイの場合はアッセイが行われる条件下において、オリゴマー化合物の非標的核酸配列への非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性がある場合に、特異的にハイブリダイズ可能である。
【0123】
[0123] “ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件”または“ストリンジェントな条件”は、その条件下で、オリゴマー化合物が、最小限の数の他の配列とハイブリダイズすること以外は、その標的配列にハイブリダイズするである条件を言う。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、また、異なる状況においては、異なり、そして、オリゴマー化合物が標的配列にハイブリダイズする“ストリンジェントな条件”は、オリゴマー化合物の性質及び組成、及びそれらが調査されるアッセイによって、決定される。
【0124】
相補性
[0124] 本明細書中で使用される場合、“相補性”は、1つまたは2つのオリゴマー化合物鎖上の2つの核酸塩基間で正しく対合する能力を言う。例えば、アンチセンス化合物
の特定の部位の核酸塩基が、標的核酸の特定の部位の核酸塩基と水素結合可能であれば、オリゴヌクレオチドと標的核酸との間の水素結合の部位は相補的部位であると見なされる。各分子において十分な数の相補的部位がお互いに水素結合可能な核酸塩基によって占められる場合、オリゴマー化合物、及びさらなるDNAまたはRNAはお互いに相補的である。このように、“特異的にハイブリダイズ可能な”及び“相補的な”は、オリゴマー化合物と標的核酸との間に、安定かつ特異的な結合が生じるような、十分な数の核酸塩基にわたる、十分な程度のの正確な対合または相補性を示すのに用いられる用語である。
【0125】
[0125] 本明細書中で使用される場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各核酸塩基が、標的核酸中の等しい数の核酸塩基と正確な塩基対合をすることが可能である場合、標的核酸と“完全に相補的”である。アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は、標的核酸の活性の阻害において活性であるために、その標的核酸配列と完全に相補的である必要はないことは、当該技術分野において理解される。いくつかの態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドと標的配列との間に“ミスマッチ”としても知られる、“非相補的な”部位があり、そしてそのような非相補的な部位は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが標的核酸と特異的にハイブリダイズ可能なままであることを前提として、アンチセンスオリゴヌクレオチドと標的核酸との間で許容されることが可能である。例えば、本明細書中で証明される通り、マウスハンチンチンに対して1つの非相補的核酸塩基を有する387916は、マウスハンチンチンmRNAレベルをin vitro及
びin vivoにおいて、減少させることができる。“非相補的核酸塩基”は、標的核酸の対
応する部位において、核酸塩基と正確な塩基対合をすることができない、アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基を意味する。本明細書中で使用される場合、“非相補的”及び“ミスマッチ”という用語は、交換可能である。いくつかの態様において、ハンチンチンをコードする核酸に対して3以下の非相補的な核酸塩基を有するアンチセンスオリゴヌ
クレオチドは、ハンチンチンをコードする核酸と“相補的”であるとみなされる。他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ハンチンチンをコードする核酸に対して2以下の非相補的な核酸塩基を含む。さらなる態様において、アンチセンスオリゴヌク
レオチドはハンチンチンをコードする核酸に対して、1以下の非相補的な核酸塩基を含む
。
【0126】
[0126] 非相補的な核酸塩基の場所は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの5'端または3'端であってもよい。あるいは、非相補的な核酸塩基は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの内部部位にあってもよい。2もしくはそれ以上の非相補的な核酸塩基が存在する場
合、それらは、隣接していても(すなわち結合した)または隣接していなくてもよい。
【0127】
[0127] 本発明の他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ハンチンチン標的核酸と少なくとも90%の配列相補性を含む。本発明のさらなる態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ハンチンチン標的核酸と少なくとも95%の配列相補性を含む。本発明のさらなる態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ハンチンチン標的核酸と少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列相補性を含む。
【0128】
[0128] ミスマッチまたは100%より少ない配列相補性を有するオリゴヌクレオチド
の例は、以下の表1に示され、ミスマッチは配列中の文字Xにより指定される。
【0130】
同一性
[0129] オリゴマー化合物、またはその一部は、SEQ ID NO、または特異的なIsis番
号を有する化合物と定義された%同一性を有することができる。この同一性は、オリゴマー化合物の全長に渡って、またはオリゴマー化合物の一部においてのものであってもよい(例えば、SEQ ID NOに対するオリゴマー化合物の%同一性を決定するため、27 merの核
酸塩基1-20を、20 merと比較することができる)。オリゴヌクレオチドは、本明細書中で記述されるオリゴヌクレオチドと同様に機能するために、本明細書中で記述されるものと同一の配列を有する必要がないことは、当業者により理解される。本明細書中で教授されるオリゴヌクレオチドの短縮化版(すなわち、欠失した、及びそれゆえ同一でないもの)
、または本明細書中で教授されるオリゴヌクレオチドの同一でないもの(すなわち、1塩
基が他のものと置き換えられた)は、本発明の範囲内である。%同一性は、比較されるSEQ ID NO、または化合物と同一である塩基の数に従って、計算される。同一でない塩基は
、互いに隣接するものであっても、オリゴヌクレオチドに渡って分散されるものであっても、またはその両方であってもよい。
【0131】
[0130] 例えば、20 merの核酸塩基2-17と同じ配列をもつ16 merは、20 merと80%同一である。あるいは、20 merと同一ではない4核酸塩基を含む20 merもまた、20 merと80
%同一である。18 merの核酸塩基1-14と同じ配列をもつ14 merは、18 merと78%同一である。そのような計算は、当業者の能力の十分な範囲内である。
【0132】
[0131] %同一性は、修飾された配列部分に存在するもとの配列における核酸塩基のパーセントに基づく。そのため、SEQ ID NOの20核酸塩基の全配列を含む、30核酸塩基オ
リゴヌクレオチドは、SEQ ID NOの20核酸塩基と100%同一な部分を有し、さらに付加的な10核酸塩基部分を含む。本発明の文脈において、修飾配列の全長が、1つの部分を構成す
ることができる。
【0133】
[0132] アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さの増加または減少させること、及び/または、活性を排除せずにミスマッチ塩基を導入することが可能であることは、当業者に良く知られる。例えば、Woolfら(本明細書中で参照として援用される、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7305-7309. 1992)において、長さ13-25核酸塩基のオリゴマーの系列
は、卵母細胞注入モデルにおいて、標的RNAの切断を誘導するそれらの能力について試験
した。8個または11個のミスマッチ塩基をオリゴヌクレオチドの末端近くにもつ、長さ25
核酸塩基のオリゴヌクレオチドは、ミスマッチを含まないオリゴヌクレオチドより低い程度ではあるが、標的mRNAの特異的な分解を導くことができた。同様に、標的特異的な切断は、1個または3個のミスマッチをもつものを含む、13核酸塩基のオリゴマーを用いて達成された。Maher and Dolnick(本明細書中で参照として援用される、Nuc. Acid. Res. 16:3341-3358, 1998)は、タンデム14核酸塩基オリゴヌクレオチドの系列、及びそれぞれ2つ、または3つのタンデムオリゴヌクレオチド配列を含む、28または42核酸塩基オリゴヌク
レオチドを、ウザギ網状赤血球アッセイにおいて、ヒトDHFRの翻訳を阻害するそれらの能力に関して試験した。28または42核酸塩基オリゴヌクレオチドよりは穏やかなレベルではあるが、3つの14核酸塩基オリゴヌクレオチドのそれぞれは単独で、翻訳を阻害すること
ができた。興味深いことに、タンデム14核酸塩基オリゴヌクレオチドの混合物は、同じ領域を標的とする28核酸塩基オリゴヌクレオチドと、翻訳阻害において同程度効果的だった。
【0134】
標的核酸
[0133] オリゴマー化合物を特定の標的核酸分子に対して“標的化する”ことは、多段階の過程であってもよい。過程は、通常、その発現が調節されるべき標的核酸の同定から始まる。本明細書中で使用される場合、“標的核酸”及び“ハンチンチンをコードする核酸”という用語は、ハンチンチンをコードするDNA、そのようなDNAから転写されるRNA
(前駆mRNA及びmRNAを含む)、及びそのようなRNA由来のcDNAもまた含む。例えば、標的
核酸は、その発現が特定の疾患または疾病状態に関与する細胞遺伝子(または遺伝子から転写されるmRNA)、または病原菌由来の核酸分子であってもよい。本明細書中で開示される場合、標的核酸は、ハンチンチンをコードする。
【0135】
2.標的領域、セグメント、及び部位
[0134] 標的化過程には、通常、望ましい効果、例えば、発現の調節、という結果となるように生じるアンチセンス相互作用のための、標的核酸内の少なくとも1つの標的領
域、セグメント、または部位を決定することもまた含まれる。“領域”は、少なくとも1
つの同定可能な構造、機能、または特徴を有する、標的核酸の部分として定義される。標的領域には、限定するものではないが、連続ヌクレオチド配列、翻訳開始及び終止領域、コード領域、オープンリーディングフレーム、イントロン、エキソン、3'-非翻訳領域(3'-UTR)、及び5'-非翻訳領域(5'-UTR)が含まれる。標的核酸の領域内には、標的セグメントが存在する。本明細書中で使用される場合、“標的セグメント”は、1つあるいはそ
れ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドがそれに対して相補的である、ハンチンチン標的核酸の配列を意味する。“5'標的部位”という用語は、アンチセンスオリゴヌクレオチドがそれに対して相補的である、標的セグメントの最も5'側の核酸塩基として定義される。同様に、“3'標的部位”は、アンチセンスオリゴヌクレオチドがそれに対して相補的である、標的セグメントの最も3'側の核酸塩基として定義される。
【0136】
3.バリアント
[0135] 選択的RNA転写産物をDNAの同じゲノム領域から産生することができることもまた、当該技術分野において既知である。これらの選択的転写産物は、一般的に“バリアント”として知られる。より具体的には、“前駆mRNAバリアント”は、同じゲノムDNAか
ら産生される転写物であり、同じゲノムDNAから産生される他の転写産物とはその開始ま
たは停止部位のいずれかが異なり、またイントロン及びエキソンの両方の配列を含む。バリアントは、限定するものではないが、選択的スプライスジャンクションまたは選択的開始コドン及び選択的終止コドンをもつものを含むmRNAバリアントをもたらすことが可能である。ゲノム及びmRNA配列におけるバリアントは、疾患をもたらす可能性がある。そのようなバリアントに対するオリゴヌクレオチドは、本発明の範囲内である。
【0137】
4.標的名及び同義語
[0136] 表2に示される遺伝子の発現を調節するための、組成物及び方法は、本発明
に従う。表2に記載されてるのは、遺伝子標的の名前、及び各遺伝子を標的とするオリゴ
マー化合物の設計に使用されるGENBANK(登録商標)アクセッション番号である。
【0139】
標的発現の調節
[0137] 標的核酸の発現調節は、様々な核酸(DNAまたはRNA)機能を変化させることによって達成することができる。“調節”は、機能の摂動、例えば、発現の増加(刺激または誘導)または減少(阻害または低減)のどちらか、を意味する。他の例として、発現の調節には、前駆mRNAプロセッシングのスプライス部位の選択に摂動を与えることが含まれてもよい。“発現”には、それにより遺伝子によりコードされた情報を、細胞において存在しそして機能する構造に変換されるすべての機能が含まれる。これらの構造には、転写及び翻訳の産物が含まれる。“発現の調節”は、そのような機能の摂動を意味する。調節されるDNAの機能には、複製及び転写が含まれてもよい。複製及び転写は、例えば、内
因性細胞鋳型、ベクター、プラスミド構築物、またはその他に由来する可能性がある。調節されるRNAの機能には、限定するものではないが、タンパク質翻訳の部位へのRNAの移動、RNA合成の部位からは遠い細胞内の部位へのRNAの移動、及びRNAからタンパク質への翻
訳が含まれる、移動の機能が含まれていてもよい。調節することができるRNAプロセッシ
ング機能には、限定するものではないが、1つあるいはそれ以上のRNA種を生じるRNAのス
プライシング、RNAのキャッピング、RNAの3'成熟化、及びRNAにより関与されまたはRNAにより促進される場合があるRNAに関わる、触媒活性あるいは複合体形成が含まれる。発現
の調節は、一時的にまたは定常状態の正味の量による、1つまたはそれ以上の核酸種のレ
ベルの上昇、または1つまたはそれ以上の核酸種のレベルの減少をもたらすことができる
。標的核酸の機能のそのような干渉の1つの結果は、ハンチンチンαの発現の調節である
。つまり、一態様において、発現の調節は、標的RNAまたはタンパク質レベルの増加また
は減少を意味することができる。他の態様において、発現の調節は、1つまたはそれ以上
のRNAスプライス産物の増加または減少、または2つまたはそれ以上のスプライス産物の比の変化を意味することができる。
【0140】
培養細胞
[0138] 標的核酸発現への本発明のオリゴマー化合物の効果を、計測可能なレベルで標的核酸が存在する場合に、様々な細胞型のいずれかにおいて、試験することができる。本発明のオリゴマー化合物の標的核酸発現への効果は、例えば、PCR、またはノザンブロ
ット分析を用いて、日常的に決定することができる。細胞株は、正常組織及び細胞型の両方から、及び様々な疾患(例えば、過剰増殖性疾患)に関与する細胞から、得られる。複数の組織及び種より得られる細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)より入手することが可能であり、また、当業者により良く知られる。初代細胞、または動物から単離されかつ連続的な培養をされない細胞は、当該技術分野において既知の方法に従って調製されるか、様々な供給会社から入手することができる。加えて、初代細胞には、臨床条件における、ヒト被験体ドナー(すなわち、血液ドナー、外科患者)から入手されるものが含まれる。
【0141】
[0139] ハンチントン病患者から単離される細胞を使用して、ハンチンチンを標的とするアンチセンス化合物の効果を試験する。そのような細胞において、変異ハンチンチン遺伝子は、ヘテロまたはホモの形態で存在してもよい。そのような細胞は、National Institute of General Medical Science(NIGMS)Human Genetic Cell Repositoryより入手
可能であり、その例には、収納番号GMO4281またはGMO4478を有する線維芽細胞が含まれる。ハンチントン病患者由来の細胞は、供給者により推奨される手法により培養される。
【0142】
[0140] ハンチンチンのアンチセンス阻害の薬理学的効果は、野生型または変異型のハンチンチン遺伝子のどちらかを発現する神経細胞より単離される細胞株において、評価することができる。変異型のハンチンチンは、特定の表現型と関連しており、またハンチンチンのアンチセンス阻害に従って、これらの表現型への効果が評価される。そのような細胞の例は、マウスハンチンチン遺伝子座に挿入された111個のCAGリピートをもった、Hdh
Q111ノックインマウスより樹立される線条体細胞である。Hdh
Q111マウスより単離される線条体細胞株の樹立は、Trettelらにより記述される(Human Mol. Genet., 2000, 9, 2799-2809)。野生型ハンチンチンをもつマウスから樹立される線条体細胞株を、比較研究に用いられる。
【0143】
発現の調節のアッセイ
[0141]ハンチンチン発現の調節は、当該技術分野において既知の様々な方法において、アッセイすることができる。ハンチンチンmRNAレベルは、例えば、ノザンブロット分析、競合ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、またはリアルタイムPCRにより、定量することができる。RNA分析は、当該技術分野において既知の方法により、全細胞RNAまたはポリ(A)+mRNAで行うことができる。RNA単離の方法は、例えば、Ausubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Volume 1, pp. 4.1.1-4.2.9及び4.5.1-4.5.3, John Wiley & Sons, Inc., 1993中に教授される。
【0144】
[0142] ノザンブロット分析は、当該技術分野において日常的であり、また、例えば、Ausubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Volume 1, pp. 4.2.1-4.2.9, John Wiley & Sons, Inc., 1996中に教授される。リアルタイム定量(PCR)
は、PE-Applied Biosystems, Foster City, CAより商業的に入手可能なABI PRISM
TM 7700
Sequence Detection Systemを用いて簡便に達せられ、また、製造者による説明書に従って使用することができる。RNAレベルの調節の分析方法は、本発明を限定しない。
【0145】
[0143] ハンチンチンによりコードされるタンパク質のレベルは、免疫沈降、ウエスタンブロット分析(免疫ブロッティング)、ELISA、または蛍光活性化細胞ソート(FACS
)などの当該技術分野において良く知られた様々な方法において定量することができる。ハンチンチンによりコードされるタンパク質対する抗体は、同定され、また、MSRS抗体カタログ(Aerie Corporation, Birmingham, MI)などの様々な出所より入手することがで
きる。
【0146】
有効標的セグメント
[0144] 活性オリゴマー化合物がハイブリダイズする標的核酸上の位置は、本明細書中以下において“有効標的セグメント”と言われる。一態様において、有効標的セグメントには、標的領域の少なくとも8核酸塩基部分が含まれる。他の態様において、有効標的
セグメントには、活性オリゴマー化合物が標的化される標的領域の少なくとも12核酸塩基部分が含まれる。理論に縛られることは望まないが、これらの標的セグメントは、ハイブリダイゼーションのために接近可能な標的核酸の部分を示すと、現在考えられている。
【0147】
[0145] 標的セグメントには、少なくとも8個、または少なくとも12個の、有効標的
セグメントの5'末端から連続する核酸塩基を含む、DNAまたはRNA配列が含まれてもよい(残りの核酸塩基は、標的セグメントの5'末端のすぐ上流からはじまり、そしてDNAまたはRNAが約12個から約35個の核酸塩基を含むまで続く、同じDNAまたはRNAの連続する伸長である)。同様に、有効標的セグメントは、有効標的セグメントの3'末端から少なくとも8個
、または少なくとも12個の連続する核酸塩基を含むDNAまたはRNA配列により示される(残りの核酸塩基は、標的セグメントの3'末端のすぐ下流からはじまり、そしてDNAまたはRNAが約12個から約35個の核酸塩基を含むまで続く、同じDNAまたはRNAの連続する伸長である。)。有効オリゴマー標的セグメントは、有効標的セグメントの配列の内部部分由来の、少なくとも8個、または少なくとも12個の連続する核酸塩基を含み、そしてオリゴヌクレ
オチドが、約12個から約35個の核酸塩基を含むまでどちらかの方向または両方の方向に伸長することができる、DNAまたはRNAにより示される場合があることもまた、理解される。
【0148】
調節化合物のスクリーニング
[0146] 他の態様において、本明細書中で同定される有効標的セグメントは、ハンチンチンの発現を調節するさらなる化合物のスクリーニングに用いることができる。“モジュレータ”は、ハンチンチンの発現を調節し、そして、有効標的部分と相補的な少なくとも8核酸塩基部分を含む化合物である。スクリーニング方法は、ハンチンチンをコードす
る核酸分子の有効標的配列と、1つまたはそれ以上の候補モジュレータとを接触させ、そ
して、ハンチンチンをコードする核酸分子の発現を摂動させる1つまたはそれ以上の候補
モジュレータを選択する段階を含む。1または複数の候補モジュレータがハンチンチンを
コードする核酸塩基分子の発現を調節できることが示されると、次にモジュレータは、ハンチンチンの機能のさらなる調査研究において、または研究、診断、または治療薬として使用するために用いることができる。有効標的セグメントは、本明細書中で開示される通り、第二鎖と組み合わされて、研究、診断、または治療薬として使用するために、安定化された二本鎖(二重鎖)オリゴヌクレオチドを形成することができる。
【0149】
ハンチンチンを標的とするアンチセンス化合物のin vivoにおける試験
[0147] ハンチンチンを標的とするアンチセンス化合物は、実験動物モデルにおいて、試験される。一態様において、アンチセンス化合物は、ヒトハンチンチン遺伝子のみを標的とする。そのようなアンチセンス化合物は、例えば、ヒトハンチンチンに対して4つ
より少ないミスマッチそして非ヒトハンチンチンに対して4つまたはそれ以上のミスマッ
チを有する。他の態様において、アンチセンス化合物は、ヒト、及び非ヒトハンチンチンの両方を標的とする。そのようなアンチセンス化合物は、例えば、ヒトハンチンチンに対して4つより少ないミスマッチ、そして非ヒトハンチンチンに対して4つより少ないミスマッチを有する。
【0150】
正常動物
[0148] 正常の、野生型動物を使用して、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドの毒性試験を行うことができる。アンチセンス化合物は、全身的に(例
えば、腹腔内注入を介して)、25、50、75、または100 mg/kgの用量で投与される。動物
は、体重の変化を含む、あらゆる臨床変化についてもモニターされる。血清は、投与期間中定期的に、例えば毎週または隔週に、回収され、そして、臨床分析器を用いた分析にかけて、血清化学分析プロファイルにおける変化を検出する。試験の最後に、動物は屠殺される。血液は、回収され、そして白血球算定、血小板算定、及び血清化学について分析される。主要な器官の重量が測定され、そして組織学的な分析が、脾臓、肝臓、腎臓、及び膵臓について行われる。
【0151】
ハンチントン病モデル
[0149] ハンチンチンを標的とするアンチセンス化合物は、ハンチントン病の非ヒト実験モデルにおいて、試験することができる。いくつかの非ヒトモデルが開発され、そして、特徴づけられている。
【0152】
[0150] R6/2トランスジェニックマウスモデルは、そのゲノム中に1キロベースのヒ
トハンチンチン遺伝子が組み込まれており、それには5'UTRエキソン1、及びイントロン1
のはじめの262塩基対が含まれる(Mangiarin L. et al., Cell, 1996, 87, 493-506)。
このトランスジーンは、144個のCAGリピートを有する。トランスジーンは、ハンチンチンタンパク質のN末領域の約3%をコードし、その発現は、ヒトハンチンチンプロモーターにより、駆動される。この短縮版のヒトハンチンチンタンパク質の発現レベルは、内因性マウスハンチンチンタンパク質レベルの約75%である。R6/2トランスジェニックマウスは、ヒトハンチントン病の症状、及び脳機能障害の症状を示す。
【0153】
[0151] YAC128トランスジェニックマウスは、プロモーター領域及び128個のCAGリピートを含む、ハンチンチン遺伝子全体を持つ酵母人工染色体(YAC)を保持する(Hodgson
J. G. et al., Human Mol. Genet., 1998, 5, 1875)。このYACは、エキソン1を除く、
すべてのヒト遺伝子を発現する。これらのトランスジェニックマウスは、内因性マウスハンチンチンを発現しない。
【0154】
[0152] Q111マウスの内因性マウスハンチンチン遺伝子は、この遺伝子のエキソン1
に挿入された111個のCAGリピートを有する(Wheeler V.C. et al., Human Mol. Genet., 8, 115-122)。
【0155】
[0153] Q150トランスジェニックマウスにおいて、野生型マウスハンチンチン遺伝子のエキソン1のCAGリピートは、150個のCAGリピートに置き換えられる(Li C. H. et al.,
Human Mol. Genet., 2001, 10, 137)。
【0156】
[0154] ハンチンチンを標的とするアンチセンス化合物は、非ヒト実験モデル、例えば、ハンチントン病のモデルとして用いられるトランスジェニックマウスに投与される。
【0157】
[0155] アンチセンス化合物は、例えば、脳室内(ICV)、くも膜下腔(IT)、また
は脳実質内投与を介して、実験動物の中枢神経系に直接投与することができる。投与されるアンチセンス化合物の用量は、25、50、75、または100μg/日でああってもよく、そし
て投与は外科的に埋め込まれる浸透圧ポンプ(例えばAlzetミニポンプ)を用いて、0.25
、0.5、または1μL/時間で、連続的注入により達成することができる。各用量は、4頭か
ら6頭の動物群に投与される。動物の対照群には、生理食塩水注入、または既知のどの遺
伝子も標的としない配列を有するアンチセンス化合物の注入を与えることができる。
【0158】
[0156] 動物は数週間、例えば、1、2、4、または8週間、処置される。動物は、体重変化を含む、あらゆる臨床変化をモニターされる。処置期間の最後に、動物は屠殺される。脳は、前脳、基底神経節、及び小脳の3つの領域に切り分けられる。脳の領域は、ヘマ
トキシリン/エオジン染色、GFAP染色(グリア細胞活性化を評価する)、及びフルオロJ(FluoroJ)染色(神経変性性変化を評価する)を含む、組織学的評価を受ける。ハンチンチンmRNAレベルは、リアルタイムPCRにより測定され、また、ハンチンチンタンパク質レベ
ルは、免疫ブロッティング(ウェスタンブロッティング)により測定される。
【0159】
[0157] ハンチンチンを標的とするアンチセンス化合物の作用の持続時間もまた、評価することができる。そのような分析において、動物は、ハンチンチンを標的とするアンチセンス化合物を2、4、6、または8週間、投与される。投与期間の最後に、浸透圧ポンプは外され、そして、投与終了後0、1、2、4、6、または8週間後に動物は屠殺される。脳は、前脳、基底神経節、及び小脳の3つの領域に切り分けられる。脳の領域は、ヘマトキシ
リン/エオジン染色、GFAP染色(グリア細胞活性化を評価する)、及びフルオロJ(FluoroJ)染色(神経変性性変化を評価する)を含む、組織学的評価を受ける。ハンチンチンmRNAレベルは、リアルタイムPCRにより測定され、そしてハンチンチンタンパク質レベルは、
免疫ブロッティング(ウェスタンブロッティング)により測定される。
【0160】
キット、研究用試薬、及び診断薬
[0158] 本発明のオリゴマー化合物を、診断薬、研究用試薬、及びキットに使用することができる。さらに、特異性をもって遺伝子発現を阻害することが可能であるアンチセンス化合物を、当業者はしばしば使用して、特定の遺伝子の機能を解明し、または生物学的経路の様々な構成要素の機能を見分ける。
【0161】
[0159] キット及び診断薬への使用において、本発明のオリゴマー化合物を単独か、または他の化合物または治療薬と組み合わせるかのどちらかで差分及び/または組み合わせ解析の道具として使用して、細胞及び組織内で発現される遺伝子の部分または全体の相補体の発現パターンを解明することができる。
【0162】
[0160] 1つの限定的ではない例として、1つまたはそれ以上の本発明の化合物または組成物で処置された細胞または組織内の発現パターンは、化合物で処理されない対照細胞または組織と比較され、そして生み出されたパターンは、例えば、試験される遺伝子の疾患関連性、シグナル経路、細胞局在、発現レベル、サイズ、構造、または機能と関係のあるような、遺伝子発現の差異レベルについて分析される。これらの分析は、刺激された細胞、または刺激されない細胞において、そして発現パターンに影響する他の化合物の存在下または非存在下において、行うことができる。例として、遺伝子発現パターンは、マイクロアレイ分析により、同定することができる。
【0163】
限定的ではない開示及び参照による援用
[0161] 本発明の特定の化合物、組成物及び方法は、特定の態様に従って、具体的に記述されているが、以下の実施例は、本発明の化合物を例示するためにのみ機能し、そして同じものへ限定することを意図しない。参考文献、GENBANK(登録商標)アクセッショ
ン番号、及び本出願中で引用される同様のもののそれぞれは、本明細書中でその全体を参照として援用される。
【0164】
実施例1
培養細胞におけるハンチンチンのアンチセンス阻害
[0162] オリゴマー化合物の標的核酸発現への効果は、例えば、ヒトハンチンチンを標的とする化合物については、A549細胞またはHD患者の線維芽細胞などの培養細胞において、そしてマウスハンチンチンを標的とする化合物については、b.END細胞などの培養細
胞において、試験された。
【0165】
[0163] 細胞が65〜75%の密集度に達したとき、トランスフェクション試薬、LIPOFE
CTIN(登録商標)を使用して、細胞へオリゴヌクレオチドを導入した。トランスフェクションの他の方法は、当業者に良く知られる。スクリーニングの方法は、本発明の限定要素ではない。
【0166】
[0164] オリゴヌクレオチドは、低血清培地OPTI-MEM(登録商標)-1(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)中のLIPOFECTIN(登録商標)(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)と混合して、望ましいオリゴヌクレオチド濃度、及びオリゴヌクレオチド100 nMにつき2.5または3μg/mlであるLIPOFECTIN(登録商標)濃度を達成した。このトランスフェクション混合液を室温で約0.5時間インキュベートした。96ウェルプ
レート中で培養した細胞について、ウェルを100μlのOPTI-MEM(登録商標)-1で一度洗浄し、そして次に、130 μlのトランスフェクション混合液で処置した。細胞は処理され、
データは二重、または三重に得られた。37℃、約4〜7時間の処理の後、トランスフェクション混合液を含む培地を、新鮮な培養培地と交換した。細胞は、オリゴヌクレオチド処理の16〜24時間後に回収された。
【0167】
[0165] 96ウェルプレート以外の培養チャンバーについて、適当な量の培地及びオリゴヌクレオチドを用いて、細胞を同様に処理することができる。
【0168】
実施例2
ハンチンチンmRNAレベルのリアルタイム定量PCR分析
[0166] ハンチンチンmRNAレベルの定量は、ABI PRISM(登録商標)7600、7700、ま
たは7900 Sequence Detection System(PE-Applied Biosystemes, Foster City, CA)を
、製造者の説明書に従って用いたリアルタイム定量PCRにより行った。
【0169】
[0167] 細胞または組織から単離された後、RNAは、同じウェル内で行われる、連続
的な逆転写酵素(RT)反応及びリアルタイムPCRにかけられた。RT及びPCR試薬は、Invitrogen Life Technologies(Carlsbad、CA)より、入手した。RT、リアルタイムPCRは、30
μlの全RNA溶液(20〜200 ng)を含む96ウェルプレートに、20μLのPCRカクテル(2.5×PCR バッファー(MgCl
2を含まない)、6.6 mM MgCl
2、375μMの各dATP、dCTP、dCTP及びdGTP液、各375 nMのフォワードプライマー及びリバースプライマー、125 nMのプローブ、4
ユニットのRNAse阻害剤、1.25ユニットのPLATINUM(登録商標)Taq、5ユニットのMuLV逆
転写酵素、及び2.5×ROX色素)を加えることにより、同じ中で実行された。RT反応は、48℃、30分間インキュベートすることにより実行された。95℃で10分間インキュベートしてPLATINUM(登録商標)Taqを活性化した後、40サイクルの2段階PCRプロトコールを行った
:95℃、15秒間(変性)、続いて60℃、1.5分間(アニーリング/伸長)。
【0170】
[0168] RT、リアルタイムPCRにより得られた遺伝子標的量は、その発現が定常的で
ある遺伝子であるGAPDHの発現レベルか、またはRIBOGREEN(登録商標)(Molecular Probes, Inc. Eugene, OR)を用いた全RNAの定量によるかのどちらかを用いて、標準化された。GAPDH発現は、多重的にまたは別々に、標的と同時に反応を行うことにより、RT、リア
ルタイムPCRにより定量された。全RNAは、製造者の説明書に従って、RIBOGREEN(登録商
標)定量試薬(Molecular Probes, Inc. Eugene, OR)を用いて定量された。
【0171】
[0169] リアルタイムPCRにおいて使用するためのプローブ及びプライマーを設計し
て、標的特異的配列とハイブリダイズさせた。プライマー及びプローブ、及びそれがハイブリダイズする標的核酸配列は、表3に示される。標的特異的PCRプローブは、5'端に共有結合したFAM、及び3'端に共有結合したTAMRAまたはMGBを有し、この場合FAMは蛍光色素であり、また、TAMRAまたはMGBはクエンチャー色素である:
【0173】
実施例3
ハンチンチン遺伝子のアンチセンス阻害
ヒトハンチンチン
[0170] アンチセンスオリゴヌクレオチドを、表2に引用される公開された配列を用
いて設計して、ヒトハンチンチン遺伝子の異なる領域を標的化した。配列及び相当するSEQ ID NOは、表4に示される。表4のすべての化合物は、長さ20ヌクレオチドのキメラオリ
ゴヌクレオチド(“ギャップマー”)であり、両側(5'及び3')を5ヌクレオチドの“ウ
ィング”のにより挟まれた、10個の2'-デオキシヌクレオチドで構成される中央“ギャッ
プ”領域からなる。ウィングは、2'-MOEヌクレオチドとしても知られる、2'-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオチドからなる。ヌクレオシド間(バックボーン)結合は、オリゴヌク
レオチド全体を通してホスホロチオエートである。すべてのシチジン残基は、5-メチルシチジンである。
【0174】
[0171] 本明細書中の他の実施例に記述される通り、定量リアルタイムPCRにより、A549細胞におけるハンチンチンmRNAレベルへのその効果についてアンチセンスオリゴヌク
レオチドを分析した。表4に示されるデータは、非処理細胞と比較した、ハンチンチンmRNAレベルの阻害パーセントを示す。データは、開示されるアンチセンスオリゴヌクレオチ
ドで処置された培養細胞における実験からの平均値である。
【0175】
[0172] アンチセンスオリゴヌクレオチド処理細胞におけるハンチンチンmRNAレベルが、対照細胞におけるmRNAレベルと同じ、またはより高い場合は、阻害パーセントは阻害なしとして示される。もし存在する場合、“N.D.”は“決定されない”を示す。これらアンチセンスオリゴヌクレオチドが阻害性である標的領域は、本明細書中で、“有効標的セグメント”と言われる。
【0182】
マウスハンチンチン
[0173] アンチセンスオリゴヌクレオチドを、表2に引用される公開された配列を用
いて設計し、マウスハンチンチン遺伝子の異なる領域を標的化した。配列及び相当するSEQ ID NOは、表5に示される。表5のすべての化合物は、長さ20ヌクレオチドのキメラオリ
ゴヌクレオチド(“ギャップマー”)であり、両側(5'及び3')を5ヌクレオチドの“ウ
ィング”のにより挟まれた、10個の2'-デオキシヌクレオチドで構成される中央“ギャッ
プ”領域からなる。ウィングは、2'-MOEヌクレオチドとしても知られる、2'-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオチドからなる。ヌクレオシド間(バックボーン)結合は、オリゴヌク
レオチド全体を通してホスホロチオエートである。すべてのシチジン残基は、5-メチルシチジンである。
【0183】
[0174] アンチセンスオリゴヌクレオチドを、本明細書中の他の実施例に記述される通り、定量リアルタイムPCRにより、b.END細胞中のハンチンチンmRNAレベルへのその効果について分析した。表5に示されるデータは、非処理細胞と比較した、ハンチンチンmRNA
レベルの阻害パーセントを示す。データは、開示されるアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置された培養細胞における実験からの平均値である。
【0184】
[0175] アンチセンスオリゴヌクレオチド処理細胞におけるハンチンチンmRNAレベルが、対照細胞と同じかまたはより高い場合は、阻害パーセントは阻害なしとして示される。もし存在する場合、“N.D.”は“決定されない”ことを示す。これらアンチセンスオリゴヌクレオチドがそれに対して阻害性である標的領域は、本明細書中で、“有効標的セグメント”と言われる。
【0189】
ISIS 387865〜387942は、ヒトハンチンチンおよびマウスハンチンチンの両方共を標的
化する。
【0190】
実施例4
A549 細胞におけるヒトハンチンチンのアンチセンス阻害
[0176] いくつかのアンチセンスオリゴヌクレオチドがA549細胞におけるさらなる試験のために選択された。マルチウェルプレート中の細胞は、以下の表に示されるように、様々な量の選択されたアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理された(アンチセンスオリゴヌクレオドにつきn=6の処理)。処理期間終了の後、RNAが細胞から単離され、そして各個別の細胞培養ウェルにおけるヒトハンチンチンmRNAレベルが定量的リアルタイムPCRに
より計測された。以下の表(表6)に示されるデータは、非処理細胞と比較した、各アン
チセンスオリゴヌクレオチドにおける平均阻害パーセントを示す(n=6)。既知のすべて
の遺伝子を標的としない、ランダム化されたヌクレオチド配列を有する対照オリゴヌクレオチドもまた、試験された。
【0192】
[0177] これらの結果は、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドがA549細胞におけるハンチンチンmRNAレベルを減少させたことを証明する。対照オリゴヌクレオチドは、特に低用量においては、ハンチンチンmRNAレベルを効果的に阻害することはできなかった。これらの阻害性アンチセンスオリゴヌクレオチドが相補的である標的領域は、本明細書中で、“有効標的セグメント”と言われる。
【0193】
実施例5
HD患者細胞におけるヒトハンチンチンのアンチセンス阻害
GMO4281
[0178] HD患者に由来する、GMO4281線維芽細胞におけるさらなる試験のために、い
くつかのアンチセンスオリゴヌクレオチドが選択された。マルチウェルプレート中の細胞は、以下の表に示されるように、様々な量の選択されたアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理された(アンチセンスオリゴヌクレオドにつきn=6の処理)。既知のすべての遺伝
子を標的としないランダム化されたヌクレオチド配列を有する対照オリゴヌクレオチドもまた、試験された。
【0194】
[0179] 処理期間終了の後、RNAが細胞から単離され、そして各個別の細胞培養ウェ
ルにおけるヒトハンチンチンmRNAレベルが定量的リアルタイムPCRにより計測された。以
下の表に示されるデータは、非処理細胞と比較した、平均ハンチンチンmRNAレベル(n=6
)を示す。つまり、このデータは、対照細胞のハンチンチンmRNAレベルの百分率として示される。100より小さい対照パーセントは、ハンチンチンmRNAレベルの減少を示し、100より大きい対照パーセントは、ハンチンチンmRNAレベルの上昇を示す。阻害パーセントは、100から対照のパーセントを引くことにより、計算することができる。
【0196】
GMO4478細胞
[0180] HD患者に由来する線維芽細胞であるGMO4478細胞における、さらなる試験の
ために、ハンチンチンを標的とするいくつかのアンチセンスオリゴヌクレオチドが選択された。試験はGMO4281細胞について用いられる手順に従って行われた。結果は、以下の表
に、未処理の細胞と比較した、平均阻害パーセントとして示される。
【0198】
[0181] GMO4478線維芽細胞及びGMO4281線維芽細胞の両方において、ヒトハンチンチンを標的とするそれぞれのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ハンチンチンmRNAレベルを効果的に減少させた。対照オリゴヌクレオチドは、特に低用量において、ハンチンチンmRNAレベルを効果的に阻害することができなかった。
【0199】
[0182] ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効性は、表
9に要約される。有効性は、ハンチンチンmRNAレベルの50%減少が観察される濃度である
、IC
50として示される。この表は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが相補的であるハンチンチン配列、及び相当する5'標的部位もまた示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドが相補的であるハンチンチン配列の領域の特定の特徴もまた示される。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドが標的とするハンチンチン遺伝子の種が示される。これらの阻害アンチセンスオリゴヌクレオチドが相補的である標的領域は、本明細書中で“有効標的セグメント”と言われる。
【0201】
[0183] アンチセンスオリゴヌクレオチドは、HD患者より単離された細胞におけるハンチンチンmRNAを減少させたため、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、in vivoにおい
て、ハンチンチンmRNAレベルを減少させるための治療薬の候補である。一態様において、in vitroにおいて有効性を証明された、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、ハンチントン病の実験モデルを含む実験動物モデルにおいてさらに試験し、ヒトにおいてハンチンチンmRNAを減少させることができるアンチセンスオリゴヌクレオチドを同定する。従って、一態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ハンチントン病の処置または改善のため、治療的有効量で、ヒトに投与される。他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ハンチントン病の発症を遅らせるために、治療的有効量で、投与される。
【0202】
実施例6
神経細胞株におけるハンチンチンのアンチセンス阻害
[0184] ハンチンチンを標的とするいくつかのアンチセンスオリゴヌクレオチドを、ハンチンチン神経細胞株におけるさらなる試験のために選択した。野生型ハンチンチン、STHdhQ7/7(Q7/7)をもつマウス線条体細胞株、及び変異ハンチンチン、STHdhQ111/111(Q111/111)を有するマウス線条体細胞株に、約0.05μMから10μMの範囲の様々な用量のオリゴ387902及び387916をトランスフェクションした。2 mmギャップキュベット中、200 V、2msecパルスを、エレクトロポレーショントランスフェクションのために用いた。示された量のオリゴヌクレオチドの存在下、100万個の細胞をエレクトロポレーションした。エレ
クトロポレーションに続いて、細胞をウェルにつき5×10
4細胞の密度でまいた。結果は、各濃度で3回試行された、オリゴなし対照と比較したハンチンチンmRNAのパーセントとし
て、表10に報告される。
【0204】
[0185] 続く研究において、細胞を、Promega Apo-ONE(登録商標)Homogeneous Caspase-3/7業務用アッセイを用いて、カスパーゼ活性の測定による表現型の応答について評価する。簡潔には、細胞をまき、翌日Lipofectin(登録商標)トランスフェクションをする。48時間後、24時間のあいだ培地を無血清DMEMに交換し、その後カスパーゼアッセイを行った。
【0205】
実施例7
in vivoにおけるハンチンチンのアンチセンス阻害
[0186] 中枢神経系における、遺伝子のアンチセンス阻害の効果を評価するために、例えば、脳室内(ICV)、くも膜下腔(IT)、または脳実質内投与などの、中枢神経系に
対してアンチセンスオリゴヌクレオチドを直接的に送達することは、有益である。動物の中枢神経系において、ハンチンチンのアンチセンス阻害の効果を評価するために、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドをICV送達によりマウスに投与した
。
【0206】
[0187] in vivo試験について、ISIS 387902、387916、387918、388249、388503、388509、及び388816を選択した。生理食塩水処理されたマウスを、対照動物として使用した。処置群または対照群のそれぞれは、4頭の動物を含んだ。外科的に埋め込まれたAlzetミニポンプにより、二週間にわたって、100μg/日の用量で、マウスにアンチセンスオリゴ
ヌクレオチドを連続的に注入した。処置期間中、マウスは、体重の変化などのあらゆる臨床変化についてもモニターされた。処置期間の最後に、マウスは屠殺され、そして、主要器官は単離された。RNAは、脳組織及び肝臓組織より調製され、そして定量的リアルタイ
ムPCR分析にかけて、マウスハンチンチンmRNAレベルの減少を測定した。
【0207】
[0188] ハンチンチンを標的とする各アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の表に示される通り、マウス脳において、ハンチンチンmRNAレベルを減少させた。各アンチセンスオリゴヌクレオチドが標的とするハンチンチン核酸の種もまた、示される。マウスハンチンチンmRNAレベルは、各処置群の平均を示し、また生理食塩水対照のパーセントとして表現される(%食塩水対照)。
【0209】
[0189] 表11に示されるアンチセンスオリゴヌクレオチドのそれぞれは、ICV注入期
間の後、マウス脳において、ハンチンチンmRNAを減少させた。さらに、マウスハンチンチンに対して1つのミスマッチを有する、ISIS 387916は、in vivoにおいて、マウスハンチ
ンチンmRNAレベルを減少させることができた。
【0210】
実施例8
ハンチントン病モデルにおける、in vivoアンチセンス阻害
[0190] HDの動物モデルの中枢神経系におけるハンチンチンのアンチセンス阻害の効果を評価するために、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを、R6/2トランスジェニックマウスに、ICV運搬を介して投与する。
【0211】
[0191] ISIS 387902、387916、387918、388249、388503、388509、及び388816を、in vivo試験について、選択する。生理食塩水処理されたマウスを、対照動物として使用する。処置群または対照群のそれぞれは、4頭の動物を含む。外科的に埋め込まれたAlzetミニポンプにより、二週間にわたって、100μg/日の用量で、マウスにアンチセンスオリゴ
ヌクレオチドを連続的に注入する。処置期間中、マウスは、ハンチンチントランスジーンに関連する表現型の動向とともに、体重の変化などのあらゆる臨床変化についてもモニターされる。処置期間の最後に、マウスは屠殺され、そして、主要器官は単離される。RNA
は、脳組織及び肝臓組織より調製され、そして定量的リアルタイムPCR分析にかけて、マ
ウスハンチンチンmRNAレベルの減少を測定する。組織におけるハンチンチンタンパク質発現もまた、標準的なウェスタンブロッティング技術を用いて測定される。
【0212】
実施例9
ハンチントン病に罹患する個体へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与
[0192] ハンチントン病(HD)に罹患する個体への処置の方法が、本明細書中で提供される。そのような方法は、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を、個体の脳脊髄液または脳組織へ投与することを含む。医薬組成物の脳脊髄液への運搬は、HDに侵された組織を含む、中枢神経系組織の細胞とアンチセンスオリゴヌクレオチドとを接触することを許容する。
【0213】
[0193] HDに罹患する個体は、HDの診断を医師により受ける。医師の評価には、HD遺伝子の遺伝子診断、及び神経学的検査が含まれる。
【0214】
[0194] 外科的に埋め込まれたポンプ(例えば、Medtronic SyncroMed(登録商標)II ポンプ)を使用して、HDを罹患する個体の脳脊髄液または脳へ、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を送達する。このポンプは、製造者により概説される手順によって、外科的に埋め込まれる。薬物は、ポンプのリザーバー中に保持され、そして好ましくはクモ膜下腔に外科的に埋め込まれたカテーテル内に、プログラムされた用量で注入される。
【0215】
[0195] リザーバーには、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物が入れられる。医薬組成物は、8 mgから12 mgのアンセンスオリゴヌ
クレオチドの脳脊髄液への注入を生じる量で、投与される。いくつかの態様において、注入されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの量は10 mgである。投与は、少なくとも28日
の期間である。個体は、HDの指標を評価する、医療専門家によりモニターされる。HDの進行を遅延させるかまたは停止させる、またはHDの症状またはマーカーの悪化を防ぐかまたは遅らせる、または改善させることは、投与のために臨床的に望ましい。
【0216】
実施例10
ハンチントン病に罹患しやすい個体へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与
[0196] ハンチントン病(HD)に罹患しやすい個体において、HDの発症を防ぐかまたは遅らせる方法が、本明細書中で提供される。そのような方法は、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を、個体の脳脊髄液または脳へ投与することを含む。医薬組成物の脳脊髄液への運搬は、HDに侵された組織を含む中枢神経系組織の細胞とアンチセンスオリゴヌクレオチドとの接触を許容する。
【0217】
[0197] HDに罹患しやすい個体は、HD遺伝子の遺伝子検査、及び神経学的検査の後、医師により同定される。
【0218】
[0198] 外科的に埋め込まれたポンプ(例えば、Medtronic SyncroMed(登録商標)II ポンプ)を使用して、HDに罹患しやすい個体の脳脊髄液または脳へ、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を送達する。このポンプは、製造者により概説される手順によって、外科的に埋め込まれる。薬物は、ポンプのリザーバー中に保持され、そして好ましくはクモ膜下腔内に外科的に埋め込まれたカテーテル内に、プログラムされた用量で注入される。
【0219】
[0199] リザーバーには、ハンチンチンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物が入れられる。医薬組成物は、8 mgから12 mgのアンセンスオリゴヌ
クレオチドの脳脊髄液への注入を生じる量で、投与される。いくつかの態様において、注入されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの量は10 mgである。投与は、少なくとも28日
の期間である。個体は、HDの指標を評価する、医療専門家によりモニターされる。HDの症状の発症を防ぐかまたは遅らせることは、投与のために臨床的に望ましい。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]