(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記HLA対立遺伝子の存在を検出するステップは、PCR−SSOを用いてHLA−A、HLA−B及びHLA−DRB1遺伝子型を特定するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の患者がフェニトインによって誘発される薬の副作用を発症するリスクを評価する方法。
前記HLA対立遺伝子の存在を検出するステップは、前記対立遺伝子を認識するオリゴヌクレオチドを用いるステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の患者がフェニトインによって誘発される薬の副作用を発症するリスクを評価する方法。
前記HLA対立遺伝子の存在を検出するステップは、患者の末梢の血液から準備されたDNAを用いるステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の患者がフェニトインによって誘発される薬の副作用を発症するリスクを評価する方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明は本発明の観点に基づく実施形態の説明を意図しており、本発明が応用される唯一の形態を示すことを意図しているわけではなく、むしろ、これは本発明の精神や範囲に基づき、同一又は同等の機能や構成を達成する異なった実施形態をも含むことを意図している。
【0011】
定義されないのであれば、ここでのすべての技術及び科学用語は当業者が一般的に理解する意味と同じである。本発明を実施する、又はテストするために、記載されている方法、装置及び物質と同等のいかなるものであっても使用することができるが、以下では、ある実施形態における方法、装置及び物質を記載する。
【0012】
すべての言及されている公開物は詳細な説明及び開示の目的のため、引用文献として含まれ、例えば、公開物に記載されている設計及び方法論は本発明と関連して用いることができる。上記、下記、また文章中で記載されている公開物は本願の出願日前の文献を開示する目的のためだけに提供される。また、ここには、先行発明として開示されているため、発明者が権利を有していないものとして解釈されるものはない。
【0013】
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)及び中毒性表皮剥離症(TEN)の診断は合意基準(Bastuji-Garin S, Rzany B et al, 1993)によって定義される臨床上の形態学に基づくものである。SJSは<体の表面領域の10%、SJS_TEN重複が皮膚剥離の10−29%及びTEN>/=30%と定義される。DRESSの基準は好酸球増多症、非定型循環リンパ球、急性肝細胞損傷、又は腎機能の悪化といった症状を伴う皮膚疹(例えば、拡散丘疹、剥脱性皮膚炎)である((Kardaun SH, Sidoroff A et al, 2007)。フェニトインによって誘発されたSJS、TEN、DRESSの診断基準を満たす患者は長庚紀念病院で特定され、この研究に登録された。
【0014】
CYP2C9、CYP2C19、CYP2C8及びCYP2C18を含む特定のCYP2C遺伝子異形はフェニトインの低代謝活動と関連することが発見され、フェニトインによって誘発される過敏性反応と関連付けられることが発見された。CYP2C異形に加え、HLA−A*0207、HLA−A*2402、HLA−B*1301、HLA−B*1502、HLA−B*4001、HLA−B*4609、HLA−B*5101、HLA−DRB1*1001又はHLA−DRB1*1502もフェニトインによって誘発される過敏性又は皮膚の薬の副作用との強い関連を示すことが発見された。
【0015】
したがって、本発明はフェニトインによって誘発される薬の副作用のリスクを評価する方法を提供し、CYP2C9、CYP2C19、CYP2C8及びCYP2C18を含むCYP2C領域の第10染色体上の単一ヌクレオチド多型(SNPs)の存在を検出するステップを含む。58のフェニトインによって誘発されるSCARs(SJS、TEN及びDRESSを含む)及び198の個体数の対照群の全ゲノム関連解析(アフィメトリクス6.0)を用いることによって、最も重要なSNPsはCYP2C領域の第10染色体(
図1参照)、例えば、CYP2C18のrs17110192、rs7896133;CYP2C9のrs17110321、rs9332093、rs9332245;CYP2C19のrs3758581、rs2860905、rs4086116及びCYP2C8のrs7899038、rs1592037、rs1934952、rs11572139、rs6583967にあることがわかった(表1参照)。CYP2C遺伝子座の近くに位置する他のSNPs、例えば、rs2274222、rs11188183、rs7921561、rs10882544、rs7084271、rs644437、rs12769577、rs617848、rs10882551、rs585381、rs648638、rs664093、rs12262878、rs17524438、rs12413028、rs11188246、rs12415795、rs11596107、rs11596737、rs10509685、rs7912686、rs17453729、rs17453764、rs17526000及びrs12769370もフェニトインによって誘発される過敏性反応と強い関連がある(表1参照)。
【0016】
過去の研究ではCYP2C9*3はフェニトインによって誘発される斑丘疹性発疹(MPE)のリスクを増加させることが指摘されている(Lee AY. et al. 2004)。ある実施形態では、CYP2C9*3はフェニトインによって誘発される薬の副作用のリスクを予測するために用いられる。他のタイプのフェニトインによって誘発される薬の副作用(ADRs)、特にSJS又はTENの特異な皮膚と粘膜の水疱形成の表現型に対するCYP2C9*3の役割を調べるため、単一ヌクレオチド多型(SNP)遺伝子型決定がフェニトインによって誘発された薬の副作用を有する患者に対して行われた。152の患者がこのフェニトインによって誘発される過敏性反応の研究に登録され、53ケースのフェニトイン−SJS/TEN、24ケースのフェニトイン−DRESS及び75ケースのフェニトイン−MPE及びいかなる有害反応なしに3ヶ月以上フェニトインを受け取った118の耐性対照群を含む。結果、CYP2C9*3異形は53中16(30.2%)のフェニトインによって誘発されたSJS/TEN患者、24中9(37.5%)のフェニトインによって誘発されたDRESS患者、75中11(14.7%)のフェニトインによって誘発されたMPEで存在が見られた。一方、異形は2.5%(3/118)のフェニトイン耐性グループで見られただけであった(表2参照)。フェニトイン過敏性ケース及び耐性対照群の統計的分析により、CYP2C9*3異形はフェニトインによって誘発されるSJS/TEN(SJS/TEN vs. 耐性対照群:P=3.3´10-7, OR=17.5
(4.8-63.7)又はDRESS(DRESS vs. 耐性対照群:P =6.1´10-5, OR=19.2 (4.4-82.7))と最も強く関連付けられることが示されたが、フェニトイン−MPEとの関連は弱く(MPE vs. 耐性対照群:P=0.004, OR=6.2 (1.6-23.3))、このCYP2C9*3異形の存在はフェニトインによって誘発されるADRs、特にフェニトインによって誘発されるSJS/TEN又はDRESSの高いリスクの患者を特定するために用いることができる。
【0017】
別の実施形態では、アミノ核酸の変化を引き起こすCYP2CのSNPsをフェニトインによって誘発される薬の副作用のリスクを評価するために用いることができる。いくつかのアミノ核酸を変化させることができるCYP2C遺伝子のSNPs、例えば、CYP2C9の371G > A(rs12414460、Arg124Gln)、895A > G、(rs72558192、Thr299Ala、CYP2C9*16として知られる)、1362G > C(Gln454His、CYP2C9*19として知られる);CYP2C19の991A> G(rs3758581, Ile331Val)、395G > A(rs72558184、Arg132Gln、CYP2C19*6として知られる)、636G > A(rs4986893、Trp212end、CYP2C19*3として知られる)、681G > A、(rs4244285、スプライシング・サイト・変形を引き起こす、CYP2C19*2として知られる)、781C > T(Arg261Trp)及びCYP2C18の204T > A(rs41291550、Tyr68end)、370C > T(Arg124Trp)、576G > C(Gln192His)、1154C > T(rs2281891、Thr385Met)に対するさらなる研究がなされた。CYP2C酵素のこれら変化はその活動及びその基質の特異性の両方に影響を与えうる。例えば、rs3758581、CYP2C19エクソン7のミスセンス変化はフェニトイン−SJS/TEN/DRESS(SJS/TEN/DRESS vs. 耐性:P=0.0003, OR=7.28 (2.3564-22.4912))と強く関連付けられる(表1参照)。
【表1】
【表2】
【0018】
また、本発明の別の実施形態では、異なるSNPsを組み合わせてフェニトインによって誘発される薬の副作用のリスクを評価した。ハプロタイプに属するrs1057910
(CYP2C9*3)、rs3758581、rs17110192、rs9332245 又はrs1592037は、フェニトイン耐性対照群と比べて、フェニトインによって誘発されるSJS/TEN/DRESSと関連する統計的重要性を増加させることができることがわかった。特に患者がrs1057910とrs3758581又はrs17110192の両方を保有しているとき、フェニトインによって誘発されるSJS/TEN/DRESSとより有意な関連を持つ(表3参照)。
【表3】
【0019】
さらなる実施形態では、本発明はフェニトインによって誘発される薬の副作用のリスクを評価する方法が提供され、HLA−A、HLA−B、HLA−DRB1を含むHLA遺伝子型の存在を特定するステップを含む。フェニトイン−ADRs患者のHLA−A、HLA−B及びHLA−DRB1遺伝子型、及び耐性対照群を特定するため、PCR−SSOが用いられる。結果、HLA−A*0207、HLA−A*2402、HLA−B*1301、HLA−B*1502、HLA−B*4001、HLA−B*4609、HLA−B*5101、HLA−DRB1*1001又はHLA−DRB1*1502はフェニトインによって誘発されるADRs(SJS/TEN/DRESS又はMPE)と有意に関連付けられることが示された(表4−6参照)。また、データから耐性対照群と比べて、フェニトイン−ADRsを有する患者の間でHLA−B*1301対立遺伝子は大幅に頻度が増加した。15のSJS/TEN患者(28.3%)及び12のDRESS患者(46.2%)はHLA−B*1301を保有し、14の耐性患者(11.9%)だけがこの遺伝子型を保有していた(SJS/TEN vs. 耐性対照群: P=0.001, OR=3.8 (1.7-8.5); DRESS vs. 耐性対照群: P =2´10-4, OR=6.4 (2.5-16.5))。しかし、この関連はMPEにおいては有意ではない(MPE vs. 耐性対照群: P=0.296, OR=1.7 (0.7-3.7))。HLA−B*5101対立遺伝子もフェニトインによって誘発されるADRsと関連付けられる。13.2%のSJS/TEN患者、19.2%のDRESS患者及び15.6%のMPE患者はHLA−B*5101を保有し、一方、5の耐性患者(4.2%)だけがこの遺伝子型を保有していた(SJS/TEN vs. 耐性対照群: P=0.05, OR=3.4; DRESS vs. 耐性対照群: P=0.018, OR=5.4; MPE vs. 耐性対照群: P=0.009, OR=4.2)。
【表4】
【表5】
【0020】
我々の過去の研究によれば、HLA−B*1502対立遺伝子はカルバマゼピンによって誘発されるSJS/TENと強く関連付けられることが示されている(Chung WH et al, 2004)。本願のさらなる実施形態では、HLA−B*1502対立遺伝子はフェニトインによって誘発される薬の副作用のリスクを評価するために用いられ、HLA−B*1502はフェニトインによって誘発されるADRsと関連付けられることが示されている。12のSJS/TEN患者(22.6%)がHLA−B*1502を保有しており、一方、9の耐性患者(7.6%)だけがこの遺伝子型を保有していた。耐性対照群と比べて、フェニトインによって誘発されるSJS/TEN患者の間でHLA−B*1502対立遺伝子は大幅に頻度が増加した(SJS/TEN vs. 耐性: P=0.01, OR=3.5 (1.4-9.0))。しかしながら、フェニトインによって誘発されるDRESS及びMPEでは関連は見られなかった(P>0.05)。
【0021】
さらに本発明では、耐性対照群と比べて、フェニトインによって誘発されるDRESS患者の間でHLA−B*4609対立遺伝子は大幅に頻度が増加し(DRESS vs. 耐性対照群: P=0.032, OR=19.7 (0.9-449.8))、HLA−A*0207対立遺伝子はフェニトインによって誘発されるDRESSと関連付けられることがわかった(DRESS vs. 耐性対照群: P=0.024, OR=4.6 (1.3-16.2))。さらに、HLA−DRB1*1001はフェニトインによって誘発されるMPEと関連付けられることがわかった(MPE vs. 耐性対照群: P=0.02, OR=13.2);HLA−DRB1*1502はフェニトインによって誘発されるSJS/TEN(SJS/TEN vs. 耐性対照群: P=0.029, OR=14)と関連付けられることがわかった。一方、HLA−A*2402及びHLA−B*4001対立遺伝子はフェニトインによって引き起こされるADRsの保護効果(フェニトインによって誘発されるADRsでは対立遺伝子頻度を下げ、耐性対照群では増加させる)を示した。
【表6】
【0022】
研究によれば、CYP2C19、CYP2C8、CYP2C18及び、CYP2C9の遺伝子異形は乏しいフェニトインの代謝活動と関連しており、フェニトイン過敏性反応のリスクにつながるその薬物貯蓄を増加していた。ある実施形態では、フェニトインによって誘発される薬の副作用のリスクを評価する方法は血漿中のフェニトイン濃度を検知するステップを含む。フェニトインは肝酵素によって代謝されるため、シトクロムP450酵素の多型性はフェニトイン血漿濃度に影響を与える。フェニトインの非線形薬物動態及び狭い治療濃度域は血漿のフェニトイン濃度はその有効性と毒性と関連していることを指し示している。
【0023】
この研究では、ADRの発症の間のフェニトイン濃度はHPLC分析による患者の血漿から決定され、非線形の薬物動態式によって予測される:
Km = 4mg/L (代謝率はVmaxの半分である基質濃度)
Vmax = 7mg/kg/day (最大代謝率)
Vd = 0.65L/kg (分配の量)
t:2つのフェニトイン血漿濃度間の時間(日にち)
【0024】
フェニトインの治療レベルは通常10−20μg/mlの間である。薬物を摂取後、耐性対照群患者のフェニトイン血漿レベルは5−15μg/mlの間であった。しかし、SJS/TEN患者において、フェニトイン血漿レベルは40−50μg/mlであり、これは耐性対照群患者のものより高くなっていた(SJS/TEN vs. 耐性対照群: P=0.006; MPE vs. 耐性対照群: P=0.004)(
図2参照)。また、我々はCYP2Cs異形を保有している患者のフェニトイン血漿レベルを比較した。結果を見ると、CYP2C9*3を保有するフェニトイン−ADRs患者はフェニトイン血漿レベルが高いことが示されている。23のフェニトイン−ADRs患者のフェニトインレベルを分析した後、4人の患者のフェニトインレベルは10μg/mlより低く、9人の患者のフェニトインレベルは10−20μg/mlであり、10人の患者のフェニトインレベルは20μg/mlより高かった。これら23人の患者の中で、CYP2C9*3異形を保有する5人の患者のフェニトイン濃度はどれも20μg/mlより高かった。本発明はCYP2Cs異形、特にCYP2C9*3は、乏しいフェニトインの代謝活動を示し、過敏性反応を引き起こすことを証明している。フェニトインの代謝障害は薬物貯蓄のリスクを増加させる可能性があり、重大な過敏性反応、SJS、TEN、DRESS、を誘発するリスクを引き起こす。
【0025】
CYP2Cs異形及びHLA遺伝子型はその領域で知られている方法を用いることによって検知することができる。好ましくは関心のある異形に対して特定である調査のため、ゲノムのDNAが
ハイブリダイズとして生じさせられる。調査は直接の発見としてラベル付けされる、又は調査において特定される第二の、検出可能な分子によって接触される。または、異形のcDNA、RNA又はプロテイン生成物を見つけることができる。
【0026】
以上、本発明を記述及び図示によって説明したが、これらは発明の実施形態であるだけであり、限定として考慮されるものではない。よって、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しないいかなる同等物も含まれる。
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