(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395067
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ビーズ細工用治具
(51)【国際特許分類】
D04D 1/04 20060101AFI20180913BHJP
B44C 1/28 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
D04D1/04
B44C1/28 B
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-136982(P2017-136982)
(22)【出願日】2017年7月13日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3208088号
【原出願日】2016年10月7日
(65)【公開番号】特開2018-59255(P2018-59255A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2017年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】315009585
【氏名又は名称】片山 完枝
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】片山 完枝
【審査官】
春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−008427(JP,A)
【文献】
実開昭56−072576(JP,U)
【文献】
実開昭54−027863(JP,U)
【文献】
実開昭53−161060(JP,U)
【文献】
米国特許第03545069(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04D1/00−11/00
D06Q1/00−1/14
B44C1/00−7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空針と前記中空針にテグスを通すためのガイド治具とから成るビーズ細工用治具であって、
前記中空針は一端に斜め開口を有する湾曲した金属製中空針であり、前記ガイド治具は、前記中空針の周曲面に対応する半円形底面の針装入溝を有し、前記針装入溝の一端に扇状に広がる扇状溝が連設されたものであることを特徴とするビーズ細工用治具。
【請求項2】
前記中空針は、指先での湾曲度変更が可能なものである、請求項1に記載のビーズ細工用治具。
【請求項3】
前記斜め開口は、進入させたテグスを逆方向に引張った場合にテグスを係止し得るエッジを有する、請求項1又は2に記載のビーズ細工用治具。
【請求項4】
前記針装入溝は、前記中空針の長さの2分の1乃至3分の1の長さである、請求項1乃至3のいずれかに記載のビーズ細工用治具。
【請求項5】
前記ガイド治具は、黒色その他の濃色である、請求項1乃至4のいずれかに記載のビーズ細工用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビーズ細工用治具に関するものであり、より詳細には、特に、穴径の小さな極小の装飾用ビーズを用いて行うビーズ細工に使用するのに好適なビーズ細工用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビーズ細工は、ビーズの穴に糸、テグス、針金(以下単に「テグス」とする)を通すことによって進めていくが、このテグス挿通作業は、使用するビーズの個数が少ない場合には、ビーズを指でつまむことによってさほど手間をかけることなく行うことができる。
【0003】
しかるに、多くのビーズを必要とする1連のネックレスやビーズ細工においては、形を作るために、1つのビーズの穴にテグスを数回通す作業が不可欠となるが、その場合、1つの穴にテグスを通していくに従ってテグスを通すための穴径が狭まっていくため、その挿通作業は次第に難しいものとなり、且つ、根気のいる作業となる。特に年配者の場合は、その作業は困難を極める。
【0004】
また、1本のテグスを沢山のビーズに通していくと、次第にテグスの先端が痛んで通しにくくなってくるので、度々先端を切離しなければならない煩わしさがある。更に、従来のビーズ通し針を用いる場合は、その針の糸通し部の糸が、縫い針の場合のように折り返されて二重になるが、その部分が摩擦により劣化して切れやすくなるという問題があり、また、その場合、折り返されて二重になった部分が太径となるので、1つのビーズに複数本のテグスを通す操作が困難となるという問題もある。
【0005】
なお、このテグス挿通作業を容易に行うことを企図したビーズ用糸通し具が提唱されている(特開2012−219390号公報)。そのビーズ用糸通し具は、「直線状に延びる本体部を備え、該本体部一端に直接又は間接に糸を繋いだ状態で、ビーズの貫通孔に上記本体部を他端から挿通させ、且つ、上記ビーズを上記本体部の一端側に移動させて本体部の一端を通過させることにより上記ビーズの貫通孔に糸が通されるように構成されたもの」であり、「上記本体部の他端側に、上記ビーズの貫通孔に挿通する際に撓み変形して該ビーズの上記本体部への外嵌を許容し、当該貫通孔を通過した状態で復元して上記ビーズの上記本体部他端側からの脱落を規制する鈎状部が設けられていること」を特徴とするものである。
【0006】
しかし、このビーズ用糸通し具の場合は、先端の鈎状部と本体部と環状部のすべてがビーズの穴を通り抜ける必要があるので、穴がそれら各部をすべて挿通させ得るサイズのビーズにしか使用できないという制限があり、本発明において企図しているレベルの狭小穴のビーズについては、使用することができない。また、この例の場合も、その針の糸通し部の糸が、縫い針の場合のように折り返されて二重になるため、ビーズの穴径の2分の1以下の太さのテグスしか使用できず、1つのビーズに複数本のテグスを通す操作が困難となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−219390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、多くのビーズを必要とする1連のネックレスやビーズ細工においては、1つのビーズの穴にテグスを数回通す作業が不可欠となるが、その挿通作業は作業が進むにつれて難しく、根気のいる作業となるという問題があり、また、従来提唱されているビーズ通し針の場合は、その針の糸通し部の糸が摩擦により劣化して切れやすいとか、穴径が比較的大きいビーズにしか用いることができず、1つのビーズに複数本のテグスを通す操作が困難とかいった問題があった。
【0009】
そこで本発明は、構成簡易で扱いやすく、穴が狭小(例えば、1mm以下)である小粒のビーズについて複数回テグスの挿通作業を行うのに好適で、慣れない者であってもそのテグス挿通作業を容易且つスムーズに行うことを可能にするビーズ細工用治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、中空針と前記中空針にテグスを通すためのガイド治具とから成るビーズ細工用治具であって、前記中空針は一端に斜め開口を有する湾曲した金属製中空針であり、前記ガイド治具は、前記中空針の周曲面に対応する半円形底面の針装入溝を有し、前記針装入溝の一端に扇状に広がる扇状溝が連設されたものであることを特徴とするビーズ細工用治具である。
【0011】
一実施形態においては、前記中空針は、指先での湾曲度変更が可能なものとされ、前記斜め開口は、進入させたテグスを逆方向に引張った場合にテグスを係止し得るエッジを有するものとされる。一実施形態においては、前記針装入溝は、前記中空針の長さの2分の1乃至3分の1の長さとされ、また、前記ガイド治具は、黒色その他の濃色とされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記構成であって、本発明に係るガイド治具を用いた場合は、針装入溝に中空針を指先で押えてセットした状態で扇状溝に沿ってテグスを差し込んでいくだけで、難なくテグスを中空針内に進入させることができる効果がある。
【0013】
また、進入させたテグスを中空針先端から少し引き出し、反対側に強く引くことによりテグスを中空針の斜め開口のエッジに食い込ませることができ、その後テグス先端部をカットし、テグスを食い込ませた状態の中空針先をビーズに挿通することができる。多数のビーズに弱い糸を通して成るパックビーズの場合は、その糸に添わせてビーズ群に中空針を進入させていくが、その際テグスは中空針内に収まったままでビーズの穴に摺接しないため、傷むことなく大量のビーズに通すことができる効果がある。また、中空針が湾曲しているために、縁付きトレーに入れたバラバラの状態のビーズを拾っていく作業を効率よく容易に行い得る効果がある。
【0014】
また、ビーズ細工に必要な、同じ穴に数回テグスを通す作業を行う際、テグスは中空針内に収められ、その先端部が金属製で堅固な中空針の針先に引っ掛けられた状態で中空針と共にビーズの穴に差し込まれるので、反復挿通によってビーズの穴の挿通スペースが狭くなっても、先端が硬くて鋭い針先から通していくため、テグスのみを通す場合に比べてはるかに通しやすく、以て、1つのビーズ穴への挿通回数を多くし得る効果がある。更に、中空針が湾曲しているために、ビーズ細工の造形作業をスムーズに行い得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るビーズ細工用治具の構成を示す図(平面図、A−A視図、B−B線断面図)である。
【
図2】本発明に係るビーズ細工用治具の使用方法を示す図である。
【
図3】本発明に係るビーズ細工用治具の他の使用例を示す図である。
【
図4】本発明に係るビーズ細工用治具の更に他の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための好ましい形態について、添付図面に依拠して説明する。本発明に係るビーズ細工用治具は、中空針1と中空針1にテグス2を通すためのガイド治具3とから成る。
【0017】
中空針1は、一端に斜めにカットされた斜め開口1aを有する金属製中空針で、湾曲成形されている(
図2(A)参照)。なお、中空針1の湾曲度は、指先で変更可能にされる。
【0018】
ガイド治具3は、樹脂製又は薄手の金属板製であって、その中央部に、中空針1の周曲面に対応する半円形底面のU字状針装入溝4が長さ方向に延びるように形成され、その針装入溝4の一端に、扇状に広げられた扇状溝5が連設される(
図1参照)。針装入溝4は、通例、中空針1の長さの2分の1乃至3分の1程度の長さとされる。好ましくは、ガイド治具3は、黒色その他の濃色とされる。そのようにした場合は、中空針1やテグス2が見やすくなる。
【0019】
次いで、
図2を参照しつつ、本発明に係るビーズ細工用治具の使用方法について説明する。言うまでもなくビーズ細工は、ビーズ10の穴にテグス2を通していくことにより進めていくものであるが、本発明においては、テグス2は、その先端部が中空針1の先端部に係着され、中空針1と一体となってビーズ10の穴に通される。テグス2を中空針1に係着するに当たり、テグス2が中空針1内に挿通されるが、その挿通操作を容易にするためにガイド治具3が用いられる。
【0020】
ガイド治具3を用いてテグス2を中空針1内に挿通するに際しては、先ず中空針1を、その末端側から針装入溝4内に装入して落とし込み、末端部を針装入溝4の底面に押し付けるようにして指で押え止める。その状態で扇状溝5にテグス2を配し、テグス2の先端を扇状溝5の側面に沿って移動させていくと、扇状溝5が針装入溝4に向かって収束していくため、やがてテグス2の先端が、針装入溝4の内端部において待機している中空針1の末端部内に導き入れられる(
図2(B))。
【0021】
このようにしてテグス2を中空針1の末端部に進入させた後、更にテグス2を進行させてその先端部を中空針1の先端から少し露出させ、その露出させた部分を逆方向に、即ち、針と平行に強く引っ張る。すると、中空針1の斜め開口1aのエッジ6がテグス2の先端部に食い込むため、テグス2が中空針1の先端部において係止されることになり、テグス2は中空針1から簡単には抜けなくなる(
図2(C))。その後、テグス2の斜め開口1aのエッジ6に係止されている部分から少し先の部分を、切り口が針と平行になるようにしてカットする(
図2(C)、(D))。なお、切り口が突出していてビーズ10の穴に挿通する際に引っ掛かる場合は、更にその突出部分をカットする。
【0022】
本発明においては、このようにしてテグス2の先端部を中空針1の先端部に係着させ、その状態のまま中空針1の先端をビーズ10の穴に通し、そのビーズ10を中空針1からテグス2にかけてずらし動かす動作を反復し、テグス2に多数のビーズ10をため込んでいく(
図2(E))。そして、所望量ため込んだ後、テグス2を強く引いて中空針1から引き抜き、任意の形状に造形する。
【0023】
中空針1の挿通対象となるビーズは、多数のビーズ10に弱い糸12を通して成るパックビーズ11の場合(
図3参照)と、縁付きトレーに入れられたバラバラの状態のビーズ10の場合とがある。パックビーズ11の場合は、その糸12に添わせてビーズ群に中空針1を進入させていくが、その際テグス2は中空針1内に収まっていてビーズ10の穴に摺接しないため、傷むことなく大量のビーズ10に通すことができる。また、個別のビーズ10を拾っていく場合は、中空針1が湾曲しているためにその拾い上げ作業が容易となる。
【0024】
更に、ビーズ細工において求められる作業の1つとして、テグス2を挿通済みのビーズ列の中の1つのビーズ10にのみテグス2を通す作業があるが(
図4参照)、中空針1が湾曲しているために、この作業も容易なものとなる。
【0025】
以上述べたように、本発明に係るビーズ細工用治具を用いた場合には、多数のビーズ10にテグス2を通す作業、殊に、ビーズ細工に欠かせない、同じ穴に複数回挿通する難作業を簡単迅速に行うことができるようになるので、ビーズ細工の楽しさを一層増長できるものであって、産業上利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0026】
1 中空針
1a 斜め開口
2 テグス
3 ガイド治具
4 針装入溝
5 扇状溝
6 斜め開口のエッジ
10 ビーズ
11 パックビーズ
12 糸