【実施例】
【0022】
図1〜
図4は、本発明の実施例を示す。
【0023】
最初に、電極本体について説明する。
【0024】
クロム銅のような銅合金製導電性金属材料で作られた電極本体1は、円筒状の形状であり、断面円形とされ、静止部材11に差し込まれる固定部2と、鋼板部品3が載置されるキャップ部4がねじ部5において結合されて、断面円形の電極本体1が形成されている。電極本体1には断面円形のガイド孔6が形成され、このガイド孔6は、固定部2に形成された大径孔7と、この大径孔7よりも小径でキャップ部4に形成された中径孔8、この中径孔8よりも小径の小径孔9が形成され、大径孔7、中径孔8、小径孔9は、電極本体1の中心軸線O−O上に整列した同軸状態で配置されている。この中径孔8よりもさらに小径な小径孔9が中心軸線O−O上に設けてある。
【0025】
鋼板部品3が載置される電極本体1の端面から突出し、鋼板部品3の下孔10を貫通する断面円形のガイドピン12が、ステンレス鋼のような金属材料またはセラミック材料などの耐熱硬質材料で構成されている。
【0026】
また、後述のように、ガイド孔6に対して摺動状態で進退する断面円形の摺動部13が耐熱性に優れた絶縁性合成樹脂材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(商品名=テフロン)によって構成されている。別の材料として、ポリアミド樹脂の中から、耐熱性、耐摩耗性にすぐれた樹脂を採用することも可能である。
【0027】
つぎに、ガイドピンと摺動部の一体化部品を説明する。
【0028】
摺動部13の中心部にガイドピン12を差し込んで、ガイドピン12と摺動部13の一体化が図られている。ガイドピン12を摺動部13に一体化する構造としては、摺動部13のインジェクション成型時に、ガイドピン12を一緒にモールドインする方法や、ガイドピン12に結合ボルト構造部を設ける方法など、種々なものが採用できる。
【0029】
ここでは、後者の結合ボルト構造部のタイプである。
【0030】
すなわち、ガイドピン12の下端部にこれと一体的にボルト14が形成され、摺動部13の底部材15にボルト14を貫通し、ワッシャ16を組み付けてロックナット17で締め付けてある。摺動部13は、電極本体1と対をなす可動電極18が動作して溶接電流が通電されたときに、電流がナット19の溶着用突起20から鋼板部品3にのみ流れるように、絶縁機能を果たしている。
【0031】
なお、ナット19はプロジェクション溶接用であり、四角い本体の中央にねじ孔28が形成され、四隅に溶着用突起20が設けてある。ねじ孔28の開口端がガイドピン12のテーパ部21に係合している。このようにナット19が鋼板部品3から浮上した状態になっているので、可動電極18が進出する溶接時に、ガイドピン12が後退する長さL1が存置してある。
【0032】
圧縮コイルスプリング22は、ワッシャ16とガイド孔6の内底面の間に嵌め込まれており、その張力が摺動部13に作用している。なお、符号23は、ガイド孔6の内底面に嵌め込んだ絶縁シートを示している。圧縮コイルスプリング22の張力が、後述の静止内端面に対する可動端面の加圧密着を成立させている。圧縮コイルスプリング22は、加圧手段であり、これに換えて圧縮空気の圧力を利用することも可能である。
【0033】
つぎに、摺動部各部とガイド孔各部の嵌め合い対応関係を説明する。
【0034】
摺動部13には、大径部24と中径部25が形成され、中径部25よりも小径のガイドピン12が一体化されている。大径部24が、大径孔7の内面との間に実質的に隙間がなくて摺動できる状態で大径孔7に嵌め込んであり、中径部25が、中径孔8の内面との間に実質的に隙間がなくて摺動できる状態で大径孔8に嵌め込んである。このような「・・実質的に隙間がなくて摺動できる状態・・」いうのは、摺動部13に電極本体1の直径方向の力を作用させても、
隙間間隔のあるカタカタといったがたつき感触がなく、しかも中心軸線O−O方向の摺動が可能な状態を意味している。小径孔9を貫通して電極本体1の端面から突き出ているガイドピン12によって、ガイドピン12が押し下げられたとき冷却空気が通過する通気隙間26が、小径孔9とガイドピン12の間に形成してある。
【0035】
中径部25が中径孔8に嵌まり込んでいる電極本体の中心軸線O−O方向の長さは、溶接時にガイドピン12が後退する長さよりも短く設定してある。この実施例では、中径部25の上部にテーパ部27が形成され、中径部25が中径孔8に嵌まり込んでいる中心軸線O−O方向の長さは、テーパ部27を含まない長さL2である。したがって、中径部25が中径孔8に嵌まり込んでいる電極本体の中心軸線O−O方向の長さL2は、溶接時にガイドピン12が後退する長さL1よりも短く設定してある。ガイドピン12が押し下げられると、最初に、テーパ部27と中径孔8の間に通気隙間が形成される。
【0036】
つぎに、冷却空気の断続構造を説明する。
【0037】
冷却空気をガイド孔6に導く通気口29が形成してある。大径部24と大径孔7の摺動箇所の空気通路を確保するために、大径部24の外周面に中心軸線O−O方向の凹溝を形成することもできるが、ここでは大径部24の外周面に中心軸線O−O方向の平面部30を形成して、平面部30と大径孔7の円弧型内面で構成された空気通路31が形成されている。このような平面部30を90度間隔で形成して、4箇所に空気通路を設けている。
【0038】
ガイド孔6の中径孔8と大径孔7の境界部に環状の静止内端面32が形成されている。また、摺動部13の中径部25と大径部24の境界部に環状の可動端面33が形成されている。静止内端面32と可動端面33は電極本体1の中心軸線O−Oが垂直に交わる仮想平面上に配置してあり、圧縮コイルスプリング22の張力によって可動端面33が静止内端面32に対して環状状態で密着し、この密着によって冷却空気の封止がなされている。
【0039】
図2(B)に示すように、電極本体1の直径方向で見た静止内端面32の幅は大きいのであるが、可動端面33が密着している箇所の幅は狭くなっており、可動端面33の密着面積は小さなものとされている。この密着幅が、後述のW1である。
【0040】
つぎに、可動端面の幅寸法について説明する。
【0041】
電極本体1の直径方向で見た可動端面33の幅寸法W1は、
図2(A)に見られるように、大径部24の肉厚寸法W3から、中径部25の肉厚寸法W2を引いた寸法値である。ガイドピン12が差し込まれている箇所の大径部24の厚さ寸法がW3である。そして、ガイドピン12が差し込まれている箇所の中径部25の厚さ寸法がW2である。摺動部13は、大径孔7と中径孔8に嵌まり込んでいるので、摺動部13の肉厚は、ガイドピン12が差し込まれている箇所の大径部24の厚さ寸法W3と、電極本体1の直径方向で見た中径部25の厚さ寸法W2に区分される。
【0042】
なお、可動端面33の密着面積は、
図2(A)などから明らかなように、空気通路31の断面積の分が少なくなっている。この空気通路31の形成によって発生する可動端面33の幅寸法W1の減少は、冷却空気の封止を損なわないように定めてある。さらに、
図2(A)においては、見やすくするために、金属断面部のハッチングや合成樹脂製部の梨地の記載を行っていない。
【0043】
つぎに、各部の寸法について説明する。
【0044】
各部の寸法は、電極の大きさ規模によって様々である。ここでは、縦・横各12mm、厚さ7.2mmの四角いプロジェクションナット19を厚さ0.7mmの鋼板部品3に電気抵抗溶接をするものである。
【0045】
このようなプロジェクションナット19を溶接する電極の各部寸法の一例は、つぎのとおりである。
・ガイドピン12の直径寸法=9.4mm
・大径部24の外形寸法 =17.8mm
・ガイドピン差し込み箇所の大径部の厚さ寸法W3=4.2mm
・中径部25の外形寸法 =14.3mm
・電極本体の直径方向で見た可動端面の幅寸法W1=1.8mm
・大径部の厚さ寸法W3に対する可動端面の幅寸法W1の比=0.43
・中径部25が中径孔8に嵌まり込んでいる長さL2=2.4mm
・溶接時にガイドピンが後退する長さL1=4.4mm
【0046】
電極本体1の直径方向で見た可動端面33の幅寸法W1は、ガイドピン12が差し込まれている箇所の大径部24の厚さ寸法W3の半分未満とされており、ここではW3に対するW1の比が0.43である。
【0047】
つぎに、微小な金属片の挙動について説明する。
【0048】
ガイドピン12が押し下げられて、
可動端面33が
静止内端面32から離隔して両端面間に空隙が形成されると、冷却空気が勢いよく流通し、微小な金属片や炭化物などは気流で溶融局部から電極外へ発散される。通常はこのような発散であるが、金属溶融の際に、急激な空気膨張で溶融部から勢いよく飛散した微小な金属片が
ガイドピン12の外周面に衝突して跳ね返されたりして空気流に逆らって移動し、
可動端面33に到達することがある。このような現象は、金属片が微小であると金属片に作用する空気流の動圧が低くなるために、空気流に逆らって移動することが可能になるものと考えられる。このような金属片が
可動端面33の表面に付着していると、ガイドピンが待機位置に戻ったときに、
静止内端面32と
可動端面33の間に空隙が形成され、冷却空気の流通を封止することができなくなる。上述のような金属片の異常な挙動は、冷却空気の流通が健全に維持されていれば、通常は発生しないのであるが、上述のような何らかの原因により、低い確率で発生することがある。
【0049】
溶融部から飛散した微小な金属片34は、通常、直径0.1〜0.2mm程度の丸みのある粒状や角張った部分を有する粒状であったりする。このような金属片34が前述のような何らかの原因で可動端面33に到達すると、可動端面33の表面に付着したような状態で停止する。この停止時においても冷却空気の気流が継続しているが、金属片34が可動端面33の表面に停止しているのは、
図3(C)に示すように、金属片34が合成樹脂材料製の可動端面33に部分的に埋没したり、突き刺さって突き出ていたりするため、と考えられる。
【0050】
このような
図3(C)の状態で摺動部13が押し上げられると、可動端面33が金属製表面を有する静止内端面32に押し付けられ、可動端面33から突き出ている金属片34は、可動端面33の母材内へ押し込まれる。すなわち、可動端面33側は合成樹脂製であるから、金属片34は相対的に摺動部13の母材内へ埋没させられるのである。このような埋没状態が
図3(D)に示してある。
【0051】
可動端面33の着座面積は、静止内端面32に対する密着面積であるが、この面積は、電極本体1の直径方向で見た可動端面33の幅寸法が、ガイドピン12が差し込まれている箇所の大径部24の厚さ寸法の半分未満であり、本実施例における具体的数値としては、W1/W3が0.43とされている。このような0.43とすることにより、可動端面33の幅寸法が小さくなり、可動端面33の密着総面積が小さく設定される。これにともなって、単位面積あたりの加圧力、すなわち面圧が大きくなり、密着箇所に到達した微小な金属片34は、金属表面である静止内端面32と合成樹脂材料製表面である可動端面33の間で挟み付けられ、金属片34は軟らかい摺動部13の母材中に埋め込まれた状態になり、静止内端面32と可動端面33の間に空隙が形成されることがなく、確実な気密維持がなされ、冷却空気の空気漏れが防止される。
【0052】
W1/W3を0.43に設定して、鋼板部品3にナットを溶接するテストを行った結果、10万回の溶接、すなわちナット10万個の溶接を行っても空気漏れが発生しなかったので、自動車の車体組み立て工程等での使用に耐えられるものと、判断される。また、W1/W3を0.45や0.48に設定した場合も、同様なテスト結果がえられた。
【0053】
W1/W3が0.5以上になると、可動端面33の密着面積が過大になり、それに伴う面圧低下によって、金属片34を可動端面33の表面から、摺動部13の母材中に押し込む力が不足する。このような不足が発生すると、ガイドピン12が突き出た状態にあるとき、可動端面33と静止内端面32との間に空隙が形成され、空気漏れが発生した。したがって、W1/W3は0.5未満に設定するのが適切である。
【0054】
逆に、下限側の値としてW1/W3を0.26とすることにより、可動端面33の幅寸法が著しく小さくなり、可動端面33の密着総面積が大幅に小さく設定される。これにともなって、単位面積あたりの加圧力、すなわち面圧が大きくなり、密着箇所に到達した微小な金属片34は、金属表面である静止内端面32と合成樹脂材料製表面である可動端面33の間で挟み付けられ、金属片34は軟らかい摺動部13の母材中に埋め込まれた状態となる。
【0055】
しかしながら、可動端面33の幅方向寸法が短くなるので、可動端面33の密着幅W1が過短となって、十分な封止作用の確保が困難になる。また、可動端面33の幅方向寸法が短くなると、大きな金属片34が可動端面33の幅W1を横断した状態で付着したりする現象が発生したときには、金属片34が可動端面33の表面に完全に埋没しないものが見られた。また、埋没しても、埋没時の合成樹脂材料の変形により可動端面33の幅方向に溝状の空隙が形成される状態が確認された。これらの現象により、静止内端面32に可動端面33が密着しても、空気漏れが発生し、気密維持が達成できていないことが認められた。
【0056】
W1/W3を0.26に設定して、上述のようにナット溶接テストを行った結果、2.5万回前後の溶接回数から空気漏れが発生した。この発生原因は、上記のW1の過短現象であると考えられる。また、W1/W3を0.28に設定した場合も、好ましくないテスト結果となった。
【0057】
一方、W1/W3が0.3以上であると、可動端面33の密着面積が適正に小さくなり、それに伴う面圧増加によって、金属片34を可動端面33の表面から、摺動部13の母材中に押し込む力が適正値として十分にえられるものと、判断される。合わせて、上記のW1の過短現象に伴う空気漏れは回避できた。したがって、W1/W3は0.3以上に設定するのが適切である。
【0058】
つぎに、中径部の緩衝的機能を説明する。
【0059】
ガイドピン12に作用する直径方向の外力を受け止めるためには、中径部25の直径を少しでも大きくするとともに、肉厚を少しでも大きくすることが有利である。中径部25の肉厚拡大と直径の拡大は、可動端面33の幅寸法W1を大径部24の厚さ寸法W3の半分未満とすることにより達成されている。
【0060】
作業者の手元が狂ったりして、鋼板部品3が電極本体1の直径方向からガイドピン12に衝突すると、ガイドピン12が傾こうとするが、中径部25の直径が大きくなるように可動端面33の幅寸法W1が設定されているので、中径部25の円筒面に作用する単位面積当たりの力が少量化されて、上記傾き角度が
実質的に問題にならない程度となる。さらに、上記力の少量化によって、中径部25の圧縮変形量も少量化され、傾き角度低減にとって有効である。
【0061】
つぎに、他の事例を説明する。
【0062】
上記事例はプロジェクションナットの場合であるが、
図4に示した事例はプロジェクションボルトの場合である。プロジェクションボルト36は、雄ねじが形成された軸部37、軸部37と一体になっている円形のフランジ38、フランジ38の下面に設けた溶着用突起39によって構成されている。ガイドピン12は管状の中空形状であり、軸部37が挿入される受入孔40が設けてある。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の事例と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0063】
つぎに、上記電極の動作について説明する。
【0064】
図1(A)は、圧縮コイルスプリング22の張力で可動端面33が静止内端面32に密着し、冷却空気の流通を封じている状態である。このときに、万一、微小な金属片34が可動端面33と静止内端面32の間に介在していると、
図3において説明した押し込み動作で気密が維持される。
【0065】
可動電極18が進出して間隔L1が消滅すると、中径孔8に入り込んでいる中径部25が中径孔8から抜け出して、冷却空気の通路が形成される。冷却空気は通気口29、空気通路31、中径孔8、通気空隙26を経て、ナット19の下面と鋼板部品3との間の空隙を通って外部へ発散する。この空気流によって、スパッタなどの不純物が電極から離隔する方向へ排除される。ガイドピン12が押し下げられると、最初にテーパ部27によって空気通路が形成される。テーパ部27の傾斜によって流路面積の大きな空気通路が初期の段階で形成され、確実な冷却空気の流通にとって好適である。また、ガイドピン12が戻るときには、テーパ部27のガイド機能によって中径部25が円滑に中径孔8に進入する。
図4に示したプロジェクションボルト36の場合も同じ動作である。
【0066】
以上に説明した実施例の作用効果は、つぎのとおりである。
【0067】
電極本体1の直径方向で見た可動端面33の幅寸法W1は、ガイドピン12が差し込まれている箇所の大径部24の厚さ寸法W3の
0.3以上0.5未満とされている。このため、可動端面33の面積を小さくして静止内端面32に対する可動端面33の加圧力を高めて、可動端面33と静止内端面32の密着箇所に進入してきた微小な金属片34が可動端面33から摺動部13の母材内に押し込まれる。
【0068】
静止内端面32に対する可動端面33の密着面積が小さくなるので、単位面積あたりの加圧力、すなわち面圧が大きくなる。したがって、密着箇所に到達した微小な金属片34は、金属表面である静止内端面32と合成樹脂材料製表面である可動端面33の間で挟み付けられ、金属片34は軟らかい摺動部13の母材中に埋め込まれた状態になり、静止内端面32と可動端面33の間に空隙が形成されることがない。
【0069】
ガイドピン12が押し下げられて、可動端面33が静止内端面32から離隔して両端面間に空隙が形成されると、冷却空気が勢いよく流通し、微小な金属片34や炭化物などは気流で溶融局部から電極外へ発散される。通常はこのような発散であるが、金属溶融の際に、急激な空気膨張で溶融部から勢いよく飛散した微小な金属片34がガイドピン12の外周面に衝突して跳ね返されたりして空気流に逆らって移動し、可動端面33に到達することがある。このような現象は、金属片34が微小であると金属片34に作用する空気流の動圧が低くなるために、空気流に逆らって移動することが可能になるものと考えられる。このような金属片34が可動端面33の表面に付着していると、ガイドピン12が待機位置に戻ったときに、静止内端面32と可動端面33の間に空隙が形成され、冷却空気の流通を封止することができなくなる。上述のような金属片34の異常な挙動は、冷却空気の流通が健全に維持されていれば、通常は発生しないのであるが、上述のような何らかの原因により、低い確率で発生することがある。
【0070】
しかしながら、本実施例においては上述のように、金属片34は軟らかい摺動部13の母材中に埋め込まれた状態になり、静止内端面32と可動端面33の間に空隙が形成されることがないため、完全な気密維持が確保でき、空気漏洩による経済的損失が回避できる。さらに、空気漏れが継続していると、空気噴出に伴う騒音が発生し、作業者の就労環境が悪化するのであるが、上記のような気密維持によって、環境改善がなされる。
【0071】
つまり、合成樹脂材料製可動端面33の面積を小さくして面圧を高めることと、微小金属片34を強く可動端面33に押し付けることを相乗させて、金属片34が可動端面33から摺動部13の母材へめり込むのである。
【0072】
電極本体1の直径方向で見た可動端面33の幅寸法W1は、ガイドピン12が差し込まれている箇所の大径部24の厚さ寸法W3の
0.3以上0.5未満とされている。このため、中径部25の厚さ寸法を大きく設定して、電極本体1の直径方向にガイドピン12に対して作用する外力を受け止めるように作用する。
【0073】
摺動部13は、大径部24と中径部25の2箇所が大径孔7や中径孔8に摺動しているので、ガイドピン12が一体化されている摺動部13は、2点支持の状態になっている。したがって、鋼板部品3の衝突などによって、電極本体1の端面から突き出ているガイドピン12に対して、電極本体1の直径方向に外力が作用しても、ガイドピン12や摺動部13の傾き変位量は実質的に問題にはならない。したがって、静止内端面32と可動端面33との密着が損なわれるようなことがなく、確実な気密維持が確保できる。
【0074】
さらに、中径部25の直径が大径部24の直径に近づき、それによって中径部25の直径を大きく設定できる。同時に、中径部25の肉厚もできるだけ大きくすることができる。したがって、大径化されるとともに肉厚が増大した中径部25によって直径方向の外力を受けるので、中径部25における弾性変形を少なくすることができて、ガイドピン12や摺動部13の傾き変位量を実質的に問題がないレベルにすることができる。とくに、大径化による弾性変形量の低減が効果的である。このような中径部25の肉厚拡大や直径の拡大は、可動端面33の幅寸法W1を小さくすることに相関して実現している。つまり、中径部25の肉厚拡大や直径の拡大と、可動端面33の面圧増大が両立している。
【0075】
可動端面33の表面には切削仕上げ加工やインジェクション成型などによって微細な凹凸が残存しているが、上記の面圧向上によって、静止内端面32に押し付けられた凹凸部分の凸部が押し潰された状態になって、合成樹脂端面と金属端面の密着性向上が確保できる。
【0076】
ガイドピン12が差し込まれている箇所の大径部24の厚さ寸法W3
に対する電極本体1の直径方向で見た可動端面33の幅寸法W1の比が0.3以上0.5未満とされている。
【0077】
可動端面33の幅寸法W1が、ガイドピン12が差し込まれている箇所の大径部24の厚さ寸法W3の半分以上、すなわち上記比が0.5以上になると、環状の可動端面33の密着面積が過大となり、上述のような面圧増大と金属片34の押し込みが満足に達成されない。上限側は、0.5未満が良好である。一方、上記比が0.3を下回ると、可動端面33の密着面積が過小となり、冷却空気の封止面積が不足して封止作用が緩慢になり、気密性維持の面で好ましくない。下限側は、0.3以上が良好である。
【0078】
電気抵抗溶接用電極の気密維持方法は、
断面円形の
電極本体が金属材料を用いて構成され、
鋼板部品が載置される電極本体の端面から突出し、鋼板部品の下孔を貫通する断面円形のガイドピンが、
金属材料またはセラミック材料の耐熱硬質材料で構成され、
電極本体に形成されているガイド孔に摺動できる状態で嵌め込まれているとともに、中心部にガイドピンが差し込まれている断面円形の摺動部が合成樹脂材料で構成され、
ガイド孔は大径孔と中径孔と小径孔によって構成され、
摺動部に形成した大径部が、
摺動部に電極本体の直径方向の力を作用させても、大径部が直径方向に変位することなく、しかも中心軸線方向の摺動が可能な状態で大径孔に嵌め込まれ、
摺動部に形成した中径部が、
摺動部に電極本体の直径方向の力を作用させても、中径部が直径方向に変位することなく、しかも中心軸線方向の摺動が可能な状態で中径孔に嵌め込まれ、
小径孔を貫通したガイドピンによって、ガイドピンが押し下げられたとき冷却空気が通過する通気隙間を小径孔とガイドピンの間に形成し、
ガイド孔の中径孔と大径孔の境界部に形成された静止内端面に対して、摺動部の中径部と大径部の境界部に形成された可動端面が密着するように構成されているとともに、静止内端面と可動端面は電極本体の中心軸線が垂直に交わる仮想平面上に配置してあり、
中径部が中径孔に嵌まり込んでいる電極本体の中心軸線方向の長さは、溶接時にガイドピンが後退する長さよりも短く設定してあり、
可動端面を静止内端面に押し付ける加圧手段がガイド孔内に配置され、
ガイドピンが差し込まれている箇所の大径部の厚さ寸法
に対する電極本体の直径方向で見た可動端面の幅寸法の比が0.3以上0.5未満とされることにより、可動端面の面積を小さくして静止内端面に対する可動端面の加圧力を高めて、可動端面と静止内端面の密着箇所に進入してきた微小な金属片を、可動端面から摺動部の母材内に押し込み、
ガイドピンが差し込まれている箇所の大径部の厚さ寸法
に対する電極本体の直径方向で見た可動端面の幅寸法の比が0.3以上0.5未満とされることにより、中径部の厚さ寸法を大きく設定して、電極本体の直径方向にガイドピンに対して作用する外力を、中径部において受け止め
、鋼板部品にプロジェクションナットまたはプロジェクションボルトを溶接するものである。
【0079】
気密維持方法の実施例の効果は、上記電気抵抗溶接用電極の効果と同じである。