特許第6395071号(P6395071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395071
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】冷却型成分除去サイクロン装置
(51)【国際特許分類】
   B04C 5/20 20060101AFI20180913BHJP
   B04C 5/04 20060101ALI20180913BHJP
   B01D 45/12 20060101ALI20180913BHJP
   B01D 5/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   B04C5/20
   B04C5/04
   B01D45/12
   B01D5/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-5652(P2014-5652)
(22)【出願日】2014年1月16日
(65)【公開番号】特開2015-134306(P2015-134306A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2017年1月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504312254
【氏名又は名称】集塵装置株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】大川 智雄
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−011422(JP,U)
【文献】 実公昭37−012780(JP,Y1)
【文献】 実開昭62−194425(JP,U)
【文献】 実開昭59−158449(JP,U)
【文献】 実開昭52−128640(JP,U)
【文献】 特開2014−000511(JP,A)
【文献】 実開平06−077839(JP,U)
【文献】 実開昭48−086214(JP,U)
【文献】 実開昭57−035857(JP,U)
【文献】 特開2003−279247(JP,A)
【文献】 特開2009−096966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04C5/00−5/30
B01D5/00
B01D45/00−45/18
B01D53/00−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中に含まれる成分をガスを冷却することで液化して抽出し、ガス中から除去する冷却型成分除去サイクロン装置であって、
サイクロン本体と、
サイクロン本体の外壁面に接するように水を流通させることによりサイクロン本体の内壁面を冷却する冷却部と、
ワニス加熱硬化炉から排出されるガスを導入するガス導入部と、
内壁面にて冷却されることで液化した液化成分をガスから除去し回収する回収部と、
前記ガス導入部から導入するガスを、当該ガスが流通する管を熱媒体により冷却することで所定温度以下に制御するガス温度制御部と、
前記液化成分を除去された除去後ガスを排出する除去後ガス排出部と、
からなり、
前記除去後ガス排出部は、除去後ガスを前記ワニス加熱硬化炉へ送出する除去後ガス送出手段を有し、
前記ガス温度制御部は、前記冷却部で用いられる水を前記熱媒体として流用する冷却型成分除去サイクロン装置。
【請求項2】
前記冷却部は、サイクロン内のガスの流れと向き合うように水を流す対向流路手段を有する請求項1に記載の冷却型成分除去サイクロン装置。
【請求項3】
前記ガス導入部のガス導入口は、前記除去後ガス排出部のガス排出口よりも高い位置にある請求項1又は2に記載の冷却型成分除去サイクロン装置。
【請求項4】
前記回収部はサイクロン本体の円錐台形状筒の下端にあり、冷却部によって冷却されていない請求項1から3のいずれか一に記載の冷却型成分除去サイクロン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワニス加熱硬化炉などから排出される油成分や樹脂成分を含むガスを冷却することにより、ガスから油成分や樹脂成分を分離除去するための冷却型成分除去サイクロン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機などの製造工程において、コイルを絶縁するためのワニス含浸処理が行われる。ワニス含浸処理は、コイルをワニスに含浸し、乾燥又は加熱によりワニスを硬化させる。かかる乾燥又は加熱はワニス加熱硬化炉内で行われ、その際炉から排出されるガス中にはワニスの成分である乾性油や樹脂が気化したものが含まれる。このような油や樹脂を含むガスを大気中に放出することは周囲の環境に悪影響を及ぼしたり火災の原因となったりしかねない。そこで、排出ガス中の油成分や樹脂成分を除去することが望まれる。
【0003】
例えば、特許文献1の記載には、廃プラスチックごみを熱分解によって油化させることで生じる油蒸気を、水冷ジャケットを付したサイクロン装置に導入し、油蒸気を冷却して液化することで油成分を回収する凝縮器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−96966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サイクロン装置は遠心分離機を応用した装置であり、気液分離や気固分離に用いられている。筒状のサイクロン本体の上部接線方向から導入した気体は、サイクロン本体内を旋回しサイクロン本体の下部にて上昇流に転じサイクロン本体上部から排出される。このとき、気体は本体上方に排出される一方で、気体中に含まれる固体や液体については遠心力により本体内壁面に衝突し重力により落下する。このようにして気体中の固体を分離して回収するものである。
【0006】
しかし、気体から分離されるのに十分な遠心力を液体や固体が受けるためには、相応の大きさが必要となる。本発明者の知見によれば、ワニスなどの油粒子については、概ね3μmの粒径が必要である。ところで、例えば、ワニス加熱硬化炉から排出されるガスに含まれる油成分や樹脂成分は概ね1μm以下の粒径の液体の微粒子として存在している。したがって、このような油成分や樹脂成分を効率よく分離回収するためには、流径が3μm程度となるまでガスを冷却する必要がある。
【0007】
ところが、特許文献1に開示の凝集器のように、油蒸気をそのままサイクロン装置に導入した場合には、サイクロン装置の外周に冷却のための水冷ジャケットを付したとしても、その冷却作用は十分ではなく分離回収するのに十分な遠心力を受ける程の粒径には至らず、油成分を十分に回収することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解決するために本発明において、以下の冷却型成分除去サイクロン装置などを提供する。すなわち、ガス中に含まれる成分をガスを冷却することで液化して抽出し、ガス中から除去する冷却型成分除去サイクロン装置であって、サイクロン本体と、サイクロン本体の内壁面を冷却する冷却部と、ガス導入部と、内壁面にて冷却されることで液化した液化成分をガスから除去し回収する回収部と、前記ガス導入部から導入するガスを所定温度以下に制御するガス温度制御部と、前記液化成分を除去された除去後ガスを排出する除去後ガス排出部と、からなる冷却型成分除去サイクロン装置を提供する。
【0009】
また、上記の構成を備え、ガス温度制御部は、相対的に低温の気体を前記ガス導入部から導入するガスに混合するガス混合手段を有する冷却型成分除去サイクロン装置を提供する。また、前記冷却部は、サイクロン内のガスの流れと向き合うように冷媒を流す対向流路手段を有する冷却型成分除去サイクロン装置を提供する。また、上記いずれかの構成を備え、前記ガス導入部のガス導入口は、前記除去後ガス排出部のガス排出口よりも高い位置にある冷却型成分除去サイクロン装置を提供する。また、上記いずれかの構成を備え、前記回収部はサイクロン本体の円錐台形状筒の下端にあり、冷却部によって冷却されていない冷却型成分除去サイクロン装置を提供する。
【0010】
また、上記いずれかの構成を備え、前記ガス導入部から導入されるガスは、ワニス加熱硬化炉から排出されるガスである冷却型成分除去サイクロン装置を提供する。また、前記除去後ガス排出部は、除去後ガスを上記のワニス加熱硬化炉へ送出する除去後ガス送出手段を有する冷却型成分除去サイクロン装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ガス中に含まれる油成分や樹脂成分を効率的に回収し得る冷却型成分除去サイクロン装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1の冷却型成分除去サイクロン装置の一例を示す概念図
図2】サイクロン本体にガスが導入され、排出される態様を示す概念図
図3】ジャケットの内壁面に螺旋状のスロープを設けた冷却部の一例を示す概念図
図4】サイクロン本体に冷却部を取付けた一例を示す概念図
図5】実施形態2の冷却型成分除去サイクロン装置の一例を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0014】
実施形態1は、主に請求項1から6などに関する。実施形態2は、主に請求項6、7などに関する。
<実施形態1>
<実施形態1 概要>
【0015】
本実施形態に係る冷却型成分除去サイクロン装置は、サイクロン本体に導入されるガスを所定温度以下に制御することにより、サイクロン本体の内壁面にて冷却されることで液化の効率を向上させ、延いては液化した成分の回収効率を向上させることができる。
<実施形態1 構成>
【0016】
図1は、本実施形態の冷却型成分除去サイクロン装置の一例を示す概念図である。図示するように、冷却型成分除去サイクロン装置は、主たる構成として「サイクロン本体」(0101)と、「冷却部」(0102)と、「ガス導入部」(0103)と、「回収部」(0104)と、「ガス温度制御部」(0105)と、「除去後ガス排出部」(0106)と、を有する。
【0017】
本実施形態の冷却型成分除去サイクロン装置は、ガス中に含まれる成分をガスを冷却することで液化して抽出し、ガス中から除去する。「ガスに含まれる成分」とは、気体又は液体粒子をいう。液体粒子は、例えばオイルミストのようにガス中に分散した粒子状の液体の油などのことである。また、「液化する」とは、気体を液体に相変化させることや、粒子状の液体を凝結させることをいう。凝結することで粒子状の液体は重さを増し、ガスの旋回流による遠心力をより受けることになり、遠心分離効率が向上する。
【0018】
「サイクロン本体」(0101)は、円筒形状を有し下方は円錐台形状の筒状体となっている。サイクロン本体を形成するための材料について特段の限定を付すものではなく、公知のサイクロン装置に採用されている材料を用いればよく、例えば、熱伝導率の高い金属を用いることができる。なお、後述する冷却部による冷却効果を向上させるために、サイクロン本体の表面積を増加させるためにフィンやピンをその表面に設けてもよい。
【0019】
「ガス導入部」(0103)は、サイクロン本体内にガスを導入するために設けられ、サイクロン本体の断面円の接線方向にガスを流通させ得るよう設けられる。ガス導入部から導入されたガスは、サイクロン本体内を旋回し、ガス中に含まれる固体や液体は遠心分離の作用によりサイクロン本体の下端に設けられる「回収部」(0104)にて回収され、ガスは、最終的に「除去後ガス排出部」(0106)からサイクロン本体外に排出される。ガスの流通は、「ファン」(0107)などによって行われる。
【0020】
ここで、図2を用いて、サイクロン本体内でのガスの流通及びガス中の固体又は液体の分離回収について説明する。図2は、サイクロン本体にガスが導入され、排出される態様を示す概念図である。図示するように、「サイクロン本体」(0201)の上部には「ガス導入部」(0202)が設けられる。ガス導入部から導入されるガスは、破線矢印で示すようにサイクロン本体の内壁を旋回して流通する。そして、円錐形状となっているサイクロン本体の下部にてガスの旋回流は上昇流に転じ、「除去後ガス排出部」(0203)からサイクロン本体外に排出される。
【0021】
除去後ガス排出部は、図示するように筒状体を有し、当該筒状体とサイクロン本体の筒状体とが同軸となるように配置される。また、除去後ガス排出部の筒状体の下端は、ガス導入口よりも低い位置となるように構成される。かかる構成により、導入されたガスがただちに排出されることなくサイクロン本体内を旋回する。
【0022】
「冷却部」(0102)は、サイクロン本体の内壁面を冷却する。冷却のための熱媒体としては水、油、空気などを用いることができる。冷却の態様としては、熱媒体がサイクロン本体の外壁面に接しながら流通するように構成すればよく、例えば、図1に示すように、サイクロン本体の外壁面を覆うためのジャケット(被覆物)を設け、当該ジャケットとサイクロン本体外壁面との空間に熱媒体としての水を流通させる。このジャケットには、水などの熱媒体を流通させるための「熱媒体導入口」(0108)及び「熱媒体排出口」(0109)が設けられ、ポンプなどにより水などの熱媒体を流通させる。
【0023】
図1においては、ジャケットの下方に水導入口を設け、ジャケットの上方に水排出口を設けているが、水の流通方向に応じて水導入口及び水排出口の位置は適宜定められる。また、流通させる水を循環して用いることも経済的に好ましい。この場合、排出された水の温度を低下させるために熱交換器を経由させてから水導入口に循環させることがサイクロン本体の冷却効果の面で好ましい。
【0024】
冷却部について、図3を用いてさらに説明する。図3は、ジャケットの内壁面に螺旋状のスロープを設けた冷却部を示す概念図である。図示するように、「ジャケット」(0301)の下端から螺旋状に上昇する「スロープ」(0302、0303)が設けられている。このジャケットをサイクロン本体の外周に被せることにより、ジャケットの内側とサイクロン本体外壁面とにより閉じられた熱媒体の流路が形成される。なお、このスロープは一次的にジャケットに設け、このジャケットをサイクロン本体に被せることで流路を形成しているが、サイクロン本体の外壁面にスロープを取付け、内壁面にスロープを備えない単なる筒状体のジャケットを被せることにより流路を形成してもよい。また、ジャケットの内壁面とサイクロン本体の外壁面のそれぞれにスロープを設け、被せたときに流路が形成されるように構成してもよい。
【0025】
図4は、図2に示したサイクロン本体に図3で示したジャケットを取付けた態様を示す概念図であり、側面図と上面図とを示した。図示するように、「ガス導入部」(0403)から導入される「ガス」(0404)は、「サイクロン本体」(0401)の内壁面を上方視にて時計回りに旋回する。一方、「ジャケット」(0402)は、その下部に「熱媒体導入口」(0405)を備え、上部に「熱媒体排出口」(0407)を備え、熱媒体として導入される「水」(0406)はスロープを上方視にて反時計回りに旋回して流通する。このように構成することで、ガスの流れと水の流れとが向かい合うことになる。この場合、ガスと水との熱交換効率が良好となり、ガスの冷却効果が優れたものとなる。そして、ガスが冷却されることによりガス中に含まれる成分が液化し、液化した成分はより強く遠心力を受けてサイクロン本体内壁面に衝突し重力により落下して回収される。
【0026】
また、冷却部は上述したようなサイクロン本体の外側に被覆するジャケットとして具現する態様の他、サイクロン本体内側に設けてもよい。例えば、熱媒体を流通させるための管状流路をサイクロン本体の内壁面に螺旋を描くようにサイクロン本体の底部から頂部に向けて配置し、その管状流路に水などの熱媒体を流通させる。また、管状流路の配置はサイクロン本体の内壁面のすべてを覆うように配置してもよいし、あるいは、サイクロン本体の一部が露出するように配置してもよい。ガス中の成分は、管状流路の表面又は露出したサイクロン本体の内壁面にて冷却され液化し滴下して回収されることになる。このように冷却部をサイクロン本体の内壁側に設けることで、サイクロン本体の内側(管状流路の表面を含む)の表面積を大きくすることができ、これにより冷却効果を高め、延いてはガス中の成分の回収効率の向上に資することができる。
【0027】
改めて、図1を用いてガス温度制御部の説明をする。「ガス温度制御部」(0105)は、ガス導入部から導入するガスを所定温度以下に制御する。図示したのは、外気を排ガスに混合させることにより、ガス導入部から導入するガスの温度を制御する態様である。
【0028】
図示するように、例えば、「ワニス加熱硬化炉」(0110)から排出されるガスの流量を調整する「第一のバルブ」(0111)と、ワニス加熱硬化炉からサイクロン本体へガスを導通させる流通管に導入する外気の流量を調整する「第二のバルブ」(0112)と、ガス導入部に導入するガスの温度を検出する「温度検出器」(0113)と、が備わる。ここで、上記第一のバルブ及び第二のバルブなどによって構成され、外気のように相対的に低温の気体をガス導入部から導入されるガスに混合する仕組みを「ガス混合手段」という。なお、第一のバルブは必須の構成ではなく、これを備えなくてもよい。
【0029】
例示したワニス加熱硬化炉から排出されるガスの温度は100℃を超えることが多い。一方、外気が100℃を超えることはまずない。そこで、ワニス加熱硬化炉から排出されるガスの温度より相対的に低温である外気を混合させることで、ガス導入部に導入するガスの温度を低下させる。なお、温度低下のための冷却は、上述した外気の混合に限定されるものではなく、ワニス加熱硬化炉などから排出されるガスが流通する流通管などを冷却することによって行ってもよい。流通管などの冷却は空冷及び水冷のいずれの手段によってもよく、例えば、熱交換器などを用いることができる。
【0030】
ガスの温度制御は、温度検出器により検出されたガスの温度をフィードバックし、外気の導入量を調整し目標とする温度に低下させる。このような制御は、CPU、RAM及びそれらにより実行されるプログラムに基づく各種演算処理によって実現される。なお、このケースは、ワニス加熱硬化炉から排出されるガスの温度が概ね100℃を超えるものであり、外気の温度が当該ガス温度よりも相対的に低いものであるとの前提に基づいている。すなわち、何らかの装置から排出されるガスの温度よりも相対的に低い温度のガスを混合することによりガス導入部に導入するガスの温度を低下させることができればよい。
【0031】
ガスの温度検出は、ガスの温度を直接検出してもよいし、間接的に検出してもよい。前者の場合においては、例えば、ガス導入部又はガス導入部と接続される流通管の内部に温度検出器を設けることにより温度検出が可能となる。また、後者の場合においては、ガス導入部又はガス導入部と接続される流通管の外表面の温度を検出し、検出された温度からガスの温度を推定することにより温度検出を行ってもよい。
【0032】
なお、ガス導入部から導入するガスを所定温度以下に制御するための手段については、外気を混合させる態様の他にも、例えば、ガスが流通する管を水や油などの熱媒体により冷却して行ってもよい。水を熱媒体としてガスの冷却を行う場合には、冷却部に用いられる水を流用してもよい。
【0033】
ガス導入部から導入するガスの温度を概ね50℃以下となるように制御することが好ましい。例えば、ワニスなどの油の液体微粒子は、ガス温度が100℃を超えるような状態においては、その粒径が概ね1μm程度に過ぎず、このような大きさのままサイクロン本体内に導入されても十分な遠心力を受けることができず回収効率に優れない。一方、50℃を下回るような状態とした場合には、それらの液体微粒子の粒径は概ね3μm程度となる。この程度の大きさを有する場合にはサイクロン内で十分な遠心力を受けることになり、優れた回収効率を得ることができる。
【0034】
なお、油成分や樹脂成分を含む高温のガスを排出する装置は、上述したワニス加熱硬化炉だけでなく、例えば、ゴム二次加硫炉やプラスチックシートのテンター工程加熱炉など多数存在する。それらの装置から排出されるガスについても、本実施形態の冷却型成分除去サイクロン装置は十分にガス中の成分除去を行うことが可能である。
<実施形態1 効果>
【0035】
本実施形態の冷却型成分除去サイクロン装置により、ガス中に含まれる油成分や樹脂成分を効率的に回収し得る冷却型成分除去サイクロン装置を提供することができる。
<実施形態2>
<実施形態2 概要>
【0036】
本実施形態の冷却型成分除去サイクロン装置は、実施形態1を基本とし、除去後ガス排出部から排出される除去後ガスを、再びワニス加熱硬化炉に送出することを特徴とする。
<実施形態2 構成>
【0037】
図5は、本実施形態の冷却型成分除去サイクロン装置の一例を示す概念図である。図示するように冷却型成分除去サイクロン装置は、「サイクロン本体」(0501)、「ガス温度制御部」(0502)などの主たる構成は実施形態1における冷却型成分除去サイクロン装置と同様である。本実施形態に特有の構成は、「除去後ガス排出部」(0503)から排出される除去後ガスを「ワニス加熱硬化炉部」(0505)に送出して還流させることにある。
【0038】
ワニス加熱硬化炉は、外気などのガスを導入し炉外に備わるヒータで加熱して循環ファンにより炉内に送出し炉内を高温雰囲気にする。炉内のガスは油煙濃度の上限を超えないよう一部が排出され、その他は循環ファンによりヒータへ還流され再度加熱して炉内に送出される。
【0039】
本実施形態の冷却型成分除去サイクロン装置においては、外気よりも相対的に高温の除去後ガスをワニス加熱硬化炉に送出する除去後ガス送出手段を有する。図5においては「ファン」(0504)及び「第三のバルブ」(0506)が、除去後ガス送出手段に該当する。第三のバルブは、除去後ガス排出部とワニス加熱硬化炉との間で除去後ガスを流通させるための流通管に設けられ、この流通管を流通する除去後ガスの流量等を調節することにより、除去後ガス排出部から排出される除去後ガスの一部又は全部をワニス加熱硬化炉に送出することができる。この第三のバルブの制御は、実施形態1のガス温度制御部における制御と同様にガス導入部から導入するガスの温度などに応じて行い得る。
【0040】
ワニス加熱硬化炉に送出された除去後ガスは循環ファンによりヒータを経由して炉内に送出される。除去後ガスは外気より相対的に高温であることがほとんどであるので、除去後ガスを加熱して炉内を高温雰囲気とする場合の方が、導入した外気を加熱して炉内を高温雰囲気とする場合よりも加熱に要するエネルギーが少なくて済む。すなわち、優れた省エネ効果を発揮するといえる。
【0041】
また、除去後ガスをワニス加熱硬化炉に還流させることは、除去後ガスに含まれる成分除去の工程が本サイクロン装置において重ねて行われることになるため、成分除去率を高めることが可能となる。その結果、外部に排出される除去後ガスにより大気が汚染されることを抑制することもできる。なお、本実施形態における除去後ガス送出手段は、実施形態1と同様にワニス加熱硬化炉だけでなくゴム二次加硫炉やプラスチックシートのテンター工程加熱炉などに応用できる。
<実施形態2 効果>
【0042】
本実施形態の冷却型成分除去サイクロン装置により、除去後ガスの再利用による省エネ効果と成分除去率の向上による大気汚染リスクの低減を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
0101 サイクロン本体
0102 冷却部
0103 ガス導入部
0104 回収部
0105 ガス温度制御部
0106 除去後ガス排出部
0107 ファン
0108 熱媒体導入口
0109 熱媒体排出口
0110 ワニス加熱硬化炉
0111 第一のバルブ
0112 第二のバルブ
0113 温度検出器
図1
図2
図3
図4
図5