(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乳化剤が硫酸エステル型、カルボン酸型またはスルホン酸型アニオン系界面活性剤のアンモニウム塩、リン酸エステル型アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤から選択される1種または2種の乳化剤である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電池電極用バインダー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の電池電極用バインダー組成物は
(I)水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー(A)から誘導される構成単位と、
(II)多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)から誘導される構成単位、
を含む重合体を含有する金属化合物を含有しないことを特徴する電池電極用バインダー組成物である。
【0012】
以下に、本発明の重合体の構成単位について詳細に説明する。
水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー(A)としては、分子量が150〜1000のアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。具体例としてはジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、およびポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、およびポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上併用できる。これらの中でも、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0013】
架橋剤である多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)としては2官能〜5官能(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましくは3官能〜5官能(メタ)アクリレートである。(メタ)アクリレートが6官能以上になると、架橋剤そのものの粘度が高くなり、乳化重合で分散が上手くできなくなる。また、バインダーとしての物性(屈曲性、結着性)が悪くなる。
【0014】
2官能(メタ)アクリレートの具体例としてはトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0015】
3官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2,2,2-トリス(メタ)アクリロイロキシメチルエチルコハク酸、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンEO付加トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレートおよびトリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェートなどが挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0016】
4官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールEO付加テトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0017】
5官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0018】
これらの架橋剤である多官能(メタ)アクリレートは1種又は2種以上併用できる。
【0019】
本発明の電池電極用バインダー組成物は金属化合物を含有しないことを特徴とする電池電極用バインダー組成物である。金属化合物とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などを含む化合物である。具体的には、Na、K、Ba、Ca、Mg等の金属原子を含む化合物が挙げられる。
【0020】
本発明の電池用電極には必要に応じて増粘剤を存在させても良い。増粘剤の種類は、特に限定されないが、好ましくは、金属原子を含有しないセルロース系化合物のアンモニウム塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸である。
【0021】
セルロース系化合物のアンモニウム塩としては、セルロース系高分子を各種誘導基により置換されたアルキルセルロースのアンモニウム塩などが挙げられる。具体例としては、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)のアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩等が挙げられる。カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩が特に好ましい。これらのアンモニウム塩を有するセルロース系化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明で用いられる増粘剤の使用量は重合体の量に対して5重量%〜500重量%、好ましくは20重量%〜400重量%、更に好ましくは50重量%〜300重量%の範囲である。
【0023】
本発明の重合体は水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー(A)から誘導される構成単位、架橋剤である多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)から誘導される構成単位の他に(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび/または有機酸ビニルエステルモノマー(C)から誘導される構成単位、カルボン酸基を含むエチレン性不飽和モノマー(D)から誘導される構成単位を有していてもよい。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、および(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピルである。これら(メタ)アクリル酸エステルモノマーは1種又は2種以上併用できる。
有機酸ビニルエステルモノマーの具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、トリメチル酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどが挙げられる。好ましくは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルである。これらは1種又は2種以上併用できる。また、(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび有機酸ビニルエステルモノマーをそれぞれ併用してもよい。
【0025】
カルボン酸基を含むエチレン性不飽和モノマーの具体例としては、メタアクリル酸、アクリル酸等の単官能モノマー、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、エキソ−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、ハイミック酸等の2官能モノマーが挙げられ、更に、上記2官能のカルボン酸基を含むエチレン性不飽和モノマーは、不飽和カルボン酸の無水物、例えば無水マレイン等も使用でき、また、これら無水物を鹸化したものを使用してもよい(以上、遊離酸、無水物及びそれらの塩又は鹸化物をまとめて以下、2官能のカルボン酸基を含むエチレン性不飽和モノマーという。)。カルボン酸基を含むエチレン性不飽和モノマーは、好ましくはメタアクリル酸、アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸である。更に好ましくは、メタアクリル酸、アクリル酸、イタコン酸である。これらは1種又は2種以上併用できる。
【0026】
モノマー(A)、(B)、(C)および(D)以外の他のモノマー、例えば、ニトリル基、アミド基、フッ素原子等を有する(メタ)アクリル系モノマーおよび/またはビニル系モノマーを使用してもよい。具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、トリフルオロメチルメタクリレート、トリフルオロアクリレート等が挙げられる。
【0027】
重合体において、水酸基を有するモノマー(A)から誘導される構成単位、架橋剤である多官能(メタ)アクリレート(B)から誘導される構造単位、(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび/または有機酸ビニルエステルモノマー(C)から誘導される構成単位、カルボン酸基を含むエチレン性不飽和モノマー(D)から誘導される構造単位の量は、
水酸基を有するモノマー(A)100重量部に対して、
(B)0.5〜100重量部、好ましくは1〜90重量部、更に好ましくは2〜80重量部、
(C)0〜500重量部、好ましくは1〜400重量部、更に好ましくは2〜300重量部、および
(D)0〜100重量部、好ましくは1〜80重量部、更に好ましくは2〜60重量部、
であってよい。
【0028】
本発明の電池電極用バインダー組成物中の重合体を得る方法としては一般的な乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、シード重合法、シード粒子にモノマー等を膨潤させた後に重合する方法等を使用することができる。具体的には、攪拌機および加熱装置付きの密閉容器に室温でモノマー、乳化剤、重合開始剤、水、必要に応じて分散剤、連鎖移動剤、pH調整剤等を含んだ組成物を不活性ガス雰囲気下で攪拌することでモノマー等を水に乳化させる。乳化の方法は撹拌、剪断、超音波等による方法等が適用できる。次いで、攪拌しながら温度を上昇させて重合を開始させることで、重合体が水に分散した球形の重合体のエマルジョンを得ることができる。また、生成した球形の重合体を別途単離した後に、分散剤等を用いてN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤に分散させて使用してもよい。さらには、再度、モノマー、乳化剤や分散剤等を用いて水中に分散させて、重合体のエマルジョンを得る方法もある。重合時のモノマーの添加方法は、一括仕込みの他に、モノマー滴下やプレエマルジョン滴下等でもよく、これらの方法を2種以上併用してもよい。
【0029】
また本発明の電池電極用バインダー組成物中の重合体の粒子構造は特に限定されない。例えば、シード重合によって作製された、コア−シェル構造の複合重合体粒子を含む重合体のエマルジョンを用いることができる。シード重合法は、例えば、「分散・乳化系の化学」(発行元:工学図書(株))に記載された方法を用いることができる。具体的には、上記の方法で作製したシード粒子を分散した系にモノマー、重合開始剤、乳化剤を添加し、核粒子を成長させる方法であり、上記方法を1回以上繰り返してもよい。
【0030】
シード重合には本発明の重合体または公知のポリマーを用いた粒子を採用しても良い。公知のポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレートおよびポリエーテルなどが例示できるが、限定されるものではなく、他の公知のポリマーを用いることができる。また、1種のホモポリマーまたは2種以上の共重合体またはブレンド体を用いても良い。
【0031】
本発明の電池電極用バインダー組成物中の重合体の粒子形状としては球形以外に、板状、中空構造、複合構造、局在構造、だるま状構造、いいだこ状構造、ラズベリー状構造等があげられ、本発明を逸脱しない範囲で2種類以上の構造および組成の粒子を用いることができる。
【0032】
本発明の電池電極用バインダー組成物中における上記重合体の粒子径は、動的光散乱法、透過型電子顕微鏡法や光学顕微鏡法などによって計測できる。動的光散乱法を用いて得た散乱強度により算出した平均粒径は、0.001μm〜1mm、好ましくは0.001μm〜0.500mmである。具体的な測定装置としてはスペクトリス製のゼータサイザーナノ等が例示できる。
【0033】
乳化剤は金属原子を含まないものであれば特に限定されない。乳化剤は界面活性剤であり、この界面活性剤には反応性基を有する反応性界面活性剤が含まれる。乳化重合法おいて一般的に用いられるノニオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤等を使用することができる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等があげられ、反応性ノニオン界面活性剤としては、ラテムルPD−420、430、450(花王社製)、アデカリアソープER(アデカ社製)、アクアロンRN(第一工業製薬社製)、アントックスLMA(日本乳化剤社製)、アントックスEMH(日本乳化剤社製)等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、硫酸エステル型、カルボン酸型またはスルホン酸型のアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、リン酸エステル型の界面活性剤等を挙げることができる。硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型が好ましく、硫酸エステル型が特に好ましい。硫酸エステル型のアニオン界面活性剤の代表例としてはドデシル硫酸等のアルキル硫酸アンモニウムまたはアルキル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル硫酸、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウムまたはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等があげられ、硫酸エステル型の反応性アニオン界面活性剤の具体例としては、ラテムルPD−104、105(花王社製)、アデカリアソープSR(アデカ社製)、アクアロンHS(第一工業製薬社製)、アクアロンKH(第一工業製薬社製)が挙げられる。好ましくは、ドデシル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸トリエタノールアミン、ラテムルPD−104等が挙げられる。
これらノニオン性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤は1種または2種以上用いてもよい。
【0034】
反応性界面活性剤の反応性とは、反応性二重結合を含有し、重合時にモノマーと重合反応することを意味する。すなわち反応性界面活性剤は、重合体を作製する重合の際にモノマーの乳化剤として働くと共に、重合後は重合体の一部に共有結合して取り込まれた状態となる。そのため、乳化重合および作製した重合体の分散が良好であり、バインダーとしての物性(屈曲性、結着性)が優れている。また、反応性界面活性剤は重合体の一部となるため、反応性界面活性剤が遊離しないので、界面活性剤の電解液への溶解が抑制され、電池性能が向上すると考えられる。
【0035】
乳化剤の構成単位の量は乳化重合法おいて一般的に用いられる量であればよい。具体的には、仕込みのモノマー量に対して、0.01〜25重量%の範囲であり、好ましくは0.05〜20重量%、更に好ましくは0.1〜20重量%である。
【0036】
重合開始剤は金属原子を含まないものであれば特に限定されず、乳化重合法、懸濁重合法おいて一般的に用いられる重合開始剤を使用することができる。好ましくは乳化重合法である。乳化重合法では水溶性の重合開始剤、懸濁重合法では油溶性の重合開始剤が使われる。
その水溶性の重合開始剤の具体例としては、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩に代表される水溶性の重合開始剤、2−2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン、またはその塩酸塩または硫酸塩、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(2-メチルプロパンアミジン)、又はその塩酸塩又は硫酸塩、3,3'-[アゾビス[(2,2-ジメチル-1-イミノエタン-2,1-ジイル)イミノ]]ビス(プロパン酸)、2,2'‐[アゾビス(ジメチルメチレン)]ビス(2‐イミダゾリン)などの水溶性のアゾ化合物の重合開始剤が好ましい。
油溶性の重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、アセチルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル) などの油溶性のアゾ化合物の重合開始剤が好ましい。これら重合開始剤は1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
重合開始剤の使用量は乳化重合法または懸濁重合法おいて一般的に用いられる量であればよい。具体的には、仕込みのモノマー量に対して、0.01〜5重量%の範囲であり、好ましくは0.01〜3重量%、更に好ましくは0.02〜1重量%である。
【0038】
連鎖移動剤は、必要に応じて用いることができる。連鎖移動剤の具体例としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、ターピノレン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いてもよい。これらの連鎖移動剤の量は特に限定されないが、通常、仕込モノマー量100重量部に対して0〜5重量部にて使用される。
【0039】
重合時間および重合温度は特に限定されない。使用する重合開始剤の種類等から適宜選択できるが、一般的に、重合温度は20〜100℃であり、重合時間は0.5〜100時間である。
【0040】
さらに上記の方法によって得られた重合体は、必要に応じてpH調整剤として塩基を用いることでpHを調整することができる。塩基の具体例としては、アンモニア、無機アンモニウム化合物、有機アミン化合物等が挙げられる。pHの範囲はpH2〜11、好ましくはpH3〜10、更に好ましくはpH4〜9の範囲である。
【0041】
電池電極用スラリー組成物の調整方法
電池電極用スラリー組成物の調整方法としては特に限定されず、正極活物質あるいは負極活物質、バインダー、増粘剤、導電助剤、水等を通常の攪拌機、分散機、混練機、遊星型ボールミル、ホモジナイザーなど用いて分散させればよい。分散の効率を上げるために材料に影響を与えない範囲で加温してもよい。
【0042】
本発明の電池電極用スラリー組成物を作製する際に用いる水は特に限定されず、一般的に用いられる水を使用することができる。その具体例としては水道水、蒸留水、イオン交換水および超純水などが挙げられる。その中でも、好ましくは蒸留水、イオン交換水および超純水である。
【0043】
電池電極用スラリー組成物の塗布性を改善するために、必要に応じて分散剤を重合体を含むバインダー組成物に予め添加あるいは電池電極用スラリー組成物に添加することもできる。金属原子を含有しない分散剤であれば、種類および使用量は特に限定されず、一般的に用いられる分散剤を任意の量で自由に使用することができる。
【0044】
電池電極用スラリー組成物の塗布性を改善するために、消泡剤を重合体を含むバインダー組成物に予め添加あるいは電池電極用スラリー組成物に添加することもできる。消泡剤を添加すると電池電極用スラリー調整時に、各成分の分散性が良好になり、スラリーの塗布性が改善され、電極に気泡が残り欠陥となることを防ぐことができるため、結果として電池製造時の歩留まりが改善できる。消泡剤としては金属原子を含まない消泡剤が好ましく、シリコーン系消泡剤、鉱油系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤などがある。シリコーン系および鉱油系消泡剤が好ましい。
シリコーン系消泡剤としてはジメチルシリコーン系、メチルフェニルシリコーン系、メチルビニルシリコーン系消泡剤があり、好ましくはジメチルシリコーン系である。また、消泡剤を界面活性剤と共に水中に分散してなるエマルジョン型消泡剤として用いることができる。これらの消泡剤は、それぞれ単独で、または2種以上を混合して使用できる。
【0045】
本発明の電池電極用スラリー組成物の固形分濃度は、10〜90重量%、好ましくは20〜85重量%、より好ましくは30〜80重量%である。
【0046】
本発明の電池電極用スラリー組成物の固形分中の重合体量の割合は、0.1〜15重量%、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.3〜7重量%である。
【0047】
電池用電極の作製方法
電池用の電極の作製方法は特に限定されず一般的な方法が用いられる。電池電極用スラリー組成物(塗工液)をドクターブレード法やアプリケーター法、シルクスクリーン法などにより集電体(金属電極基板)表面上に適切な厚さに均一に塗布することより行われる。
【0048】
例えばドクターブレード法では、電池電極用スラリー組成物を金属電極基板に塗布した後、所定のスリット幅を有するブレードにより適切な厚さに均一化する。電極は活物質塗布後、余分な有機溶剤および水を除去するため、例えば、100℃の熱風や80℃真空状態で乾燥する。乾燥後の電極はプレス装置によってプレス成型することで電極材が製造される。プレス後に再度熱処理を施して水、溶剤、乳化剤等を除去してもよい。
【0049】
正極材料の金属電極基板には、例えばアルミニウムが用いられるが、これに限るものではなく、ニッケル、ステンレス、金、白金、チタン等であってもよい。
【0050】
本発明で使用される正極活物質は、LiMO
2、LiM
2O
4、Li
2MO
3、LiMEO
4のいずれかの組成からなるリチウム金属含有複合酸化物粉末である。ここで式中のMは主として遷移金属からなり、Co、Mn、Ni、Cr、Fe、Tiの少なくとも一種を含んでいる。Mは遷移金属からなるが、遷移金属以外にもAl、Ga、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなどが添加されていてもよい。EはP、Siの少なくとも1種を含んでいる。正極活物質の粒子径には50μm以下が好ましく、更に好ましくは20μm以下のものを用いる。これらの活物質は、3V(vs. Li/Li+)以上の起電力を有するものである。
【0051】
正極活物質の具体例としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ニッケル/マンガン/コバルト酸リチウム(3元系)、スピネル型マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウムなどが挙げられる。
【0052】
負極材料の金属電極基板には、例えば銅が用いられるが、これに限るものではなく、ニッケル、ステンレス、金、白金、チタン等であってもよい。
【0053】
本発明で使用される負極活物質としてはリチウムイオンを吸蔵・放出可能な構造(多孔質構造)を有する炭素材料(天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等)か、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なリチウム、アルミニウム系化合物、スズ系化合物、シリコン系化合物、チタン系化合物等の金属からなる粉末である。粒子径は10nm以上100μm以下が好ましく、更に好ましくは20nm以上20μm以下である。また、金属と炭素材料との混合活物質として用いてもよい。なお負極活物質にはその気孔率が、70%程度のものを用いるのが望ましい。
【0054】
導電助剤の具体例としては、黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの炭素繊維、または金属粉末等が挙げられる。これら導電助剤は1種または2種以上用いてもよい。
【0055】
電池の製造方法
本発明の電極を用いた電池、特に二次電池の製造方法は特に限定されず、正極、負極、セパレータ、電解液、集電体で構成され、公知の方法にて製造される。例えば、コイン型のリチウムイオン二次電池場合、正極、セパレータ、負極を外装缶に挿入する。これに電解液を入れ含浸する。その後、封口体とタブ溶接などで接合して、封口体を封入し、かしめることで蓄電池が得られる。電池の形状は限定されないが、例としてはコイン型、円筒型、シート型などがあげられ、2個以上の電池を積層した構造でもよい。
【0056】
セパレータとしては正極と負極が直接接触して電池内でショートすることを防止するものであり、公知の材料を用いることができる。具体的には、ポリオレフィンなどの多孔質高分子フィルムあるいは紙などからなっている。この多孔質高分子フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのフィルムが電解液によって影響を受けないため好ましい。
【0057】
電解液は電解質リチウム塩化合物および溶媒として非プロトン性有機溶剤等からなる溶液である。電解質リチウム塩化合物としては、リチウムイオン電池に一般的に利用されているような、広い電位窓を有するリチウム塩化合物が用いられる。たとえば、LiBF
4、LiPF
6、LiClO
4、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2,LiN(C
2F
5SO
2)
2,LiN[CF
3SC(C
2F
5SO
2)
3]
2などを挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。
【0058】
非プロトン性有機溶剤としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジプロピルカーボネート、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、アニソール、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、ジエチルエーテルなどの直鎖エーテルを使用することができ、2種類以上混合して使用してもよい。
【0059】
また、溶媒として、常温溶融塩を用いることができる。常温溶融塩とは、常温において少なくとも一部が液状を呈する塩をいい、常温とは電源が通常作動すると想定される温度範囲をいう。電源が通常作動すると想定される温度範囲とは、上限が120℃程度、場合によっては60℃程度であり、下限は−40℃程度、場合によっては−20℃程度である。
【0060】
常温溶融塩はイオン性液体とも呼ばれており、ピリジン系、脂肪族アミン系、脂環族アミン系の4級アンモニウム有機物カチオンが知られている。4級アンモニウム有機物カチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウム、トリアルキルイミダゾリウム、などのイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオンなどが挙げられる。特に、イミダゾリウムカチオンが好ましい。
【0061】
なお、テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、トリエチルメチルアンモニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
また、アルキルピリジウムイオンとしては、N−メチルピリジウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、N−ブチルピリジニウムイオン、1−エチル−2メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−2,4ジメチルピリジニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
イミダゾリウムカチオンとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
なお、これらのカチオンを有する常温溶融塩は、単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いても良い。
【0065】
電解液には必要に応じて種々の添加剤を使用することができる。例えば、難燃剤や不燃剤として、臭素化エポキシ化合物、ホスファゼン化合物、テトラブロムビスフェノールA 、塩素化パラフィン等のハロゲン化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸エステル、ポリリン酸塩、及びホウ酸亜鉛等が例示できる。負極表面処理剤としてはビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等が例示できる。正極表面処理剤として炭素や金属酸化物(MgОやZrO
2等)の無機化合物やオルト−ターフェニル等の有機化合物等が例示できる。過充電防止剤としてはビフェニルや1−(p−トリル)アダマンタン等が例示できる。
【実施例】
【0066】
本発明を実施するための具体的な形態を以下に実施例を挙げて説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
本実施例では、本発明の電池電極用バインダー組成物を用いて電極及びコイン電池を作製し、電極の評価として剥離試験、コイン電池の評価として充放電サイクル特性試験を以下の実験にて行った。
【0068】
[作製した電極の評価]
作製した電極の評価としては剥離試験を行った。評価結果を表1にまとめて示した。
剥離試験(結着試験)
剥離試験はミネベアのTG−200Nを使用し、90°剥離試験にて行った。具体的にはプレス後の電極を幅2.5cm×長さ6.5cmに切り、電極スラリー塗工面が上になるように両面テープで基板に接着した後、テープ(セロテープ:ニチバン製)を貼り付け、90°剥離試験でのピール強度を測定した。剥離速度は50mm/minで行った。試験は3回実施し、その平均値を求めた。
【0069】
[作製した電池の評価]
作製した電池の評価としては充放電装置を用いて充放電サイクル特性試験を行い、容量維持率を求めた。評価結果を表1にまとめて示した。
容量維持率
正極活物質としてスピネル型マンガン酸リチウムを使用した場合、電気化学特性は(株)東洋システム製の充放電装置を用い、4.3Vを上限、3.0Vを下限とし、初回から3回目において8時間で所定の充電および放電が行える試験条件(C/8)、4回目以降1Cにて一定電流通電により正極の充放電サイクル特性を評価した。試験温度は25℃環境とした。可逆容量は4サイクル目の容量の値を、容量維持率は充放電を100サイクル行った後の容量と4サイクル目の容量の比で評価した。
【0070】
バインダー組成物の合成例
[バインダー組成物の実施合成例1]
攪拌機付き反応容器に、ポリエチレングリコールモノアクリレート(日油製:ブレンマーAE−400)30重量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル55重量部、アクリル酸2重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学製:A−TMPT)13重量部、乳化剤としてドデシル硫酸トリエタノールアミン水溶液(花王製:エマールTD)の固形分として1重量部、イオン交換水150重量部および重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.1重量部を入れ、ホモジナイザーを用いて十分乳化させた後、窒素雰囲気下で60℃に加温し5時間重合し、その後冷却した。冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液のpHを8.2に調整し、バインダーA(重合転化率99%以上)(固形分濃度39wt%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.109μmであった。
【0071】
[バインダー組成物の実施合成例2]
攪拌機付き反応容器に、メタアクリル酸メチル47重量部、ポリプロピレングリコールモノアクリレート(日油製:ブレンマーAP−400)33重量部、アクリル酸1重量部、メタアクリル酸4重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学製:A−TMPT)15重量部、乳化剤としてポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム水溶液(花王製:PD−104)の固形分として3重量部、イオン交換水150重量部および重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.1重量部を入れ、ホモジナイザーを用いて十分乳化させた後、窒素雰囲気下で60℃に加温し5時間重合し、その後冷却した。冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液をpH8.1に調整し、バインダーB(重合転化率99%以上)(固形分濃度42wt%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.104μmであった。
【0072】
[バインダー組成物の比較合成例1]
攪拌機付き反応容器に、メタアクリル酸メチル80重量部、アクリル酸3重量部、メタアクリル酸5重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学製:A−TMPT)12重量部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1重量部、イオン交換水150重量部および重合開始剤として過硫酸カリウム0.2重量部を入れ、ホモジナイザーを用いて十分乳化させた後、窒素雰囲気下で60℃に加温し5時間重合し、その後冷却した。冷却後、24%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、重合液のpHを8.1に調整し、バインダーC(重合転化率99%以上)(固形分濃度38wt%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.101μmであった。
【0073】
[バインダー組成物の比較合成例2]
攪拌機付き反応容器に、メタアクリル酸メチル33重量部、ポリエチレングリコールモノアクリレート(日油製:ブレンマーAE−400)60重量部、アクリル酸7重量部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1重量部、イオン交換水150重量部および重合開始剤として過硫酸カリウム0.2重量部を入れ、ホモジナイザーを用いて十分乳化させた後、窒素雰囲気下で60℃に加温し5時間重合し、その後冷却した。冷却後、24%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、重合液のpHを8.1に調整し、バインダーD(重合転化率99%以上)(固形分濃度38wt%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.112μmであった。
【0074】
電極の作製例
[電極の実施作製例1]
正極活物質としてスピネル型マンガン酸リチウム95重量部に、導電助剤としてアセチレンブラック3重量部、バインダー組成物の実施合成例1で得られたバインダーAの固形分として1重量部および増粘剤としてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1重量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が55重量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して正極用スラリーを得た。
得られた正極スラリーを厚さ20μmのアルミ集電体上に100μmギャップのベーカー式アプリケーターを用いて塗布し、110℃真空状態で12時間以上乾繰後、ロールプレス機にてプレスを行い、厚さ32μmの正極を作製した。剥離強度の評価結果を表1の実施例1に示す。
【0075】
[電極の実施作製例2]
バインダー組成物の実施合成例2で得られたバインダーBを使用した以外は、電極の実施作製例1と同様にして正極を作製した。得られた正極の厚みは33μmであった。剥離強度の評価結果を表1の実施例2に示す。
【0076】
[電極の比較作製例1]
バインダー組成物の比較合成例1で得られたバインダーCを使用した以外は、電極の実施作製例1と同様にして正極を作製した。得られた正極の厚みは35μmであった。剥離強度の評価結果を表1の比較例1に示す。
【0077】
[電極の比較作製例2]
バインダー組成物の比較合成例2で得られたバインダーDを使用した以外は、電極の実施作製例1と同様にして正極を作製した。得られた正極の厚みは36μmであった。剥離強度の評価結果を表1の比較例2に示す。
【0078】
電池の製造例
[コイン電池の実施製造例1]
アルゴンガスで置換されたグローブボックス内において、電極の実施作製例1で得た正極、セパレータとして厚み18μmのポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン多孔質膜を2枚、更に対極として厚さ300μmの金属リチウム箔を貼り合わせた積層物に、電解液として1mol/Lの6フッ化リン酸リチウムのエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネート(体積比3:5:2)を十分に含浸させてかしめ、試験用2032型コイン電池を製造した。100サイクル後の容量維持率の評価結果を表1の実施例1に示す。
【0079】
[コイン電池の実施製造例2]
電極の実施作製例2で得た正極を用いた以外は、電極の実施作製例1と同様にしてコイン電池を作製した。100サイクル後の容量維持率の評価結果を表1の実施例2に示す。
【0080】
[コイン電池の比較製造例1]
電極の比較作製例1で得た正極を用いた以外は、電極の実施作製例1と同様にしてコイン電池を作製した。100サイクル後の容量維持率の評価結果を表1の比較例1に示す。
【0081】
[コイン電池の比較製造例2]
電極の比較作製例2で得た正極を用いた以外は、電極の実施作製例1と同様にしてコイン電池を作製した。100サイクル後の容量維持率の評価結果を表1の比較例2に示す。
【0082】
表1に実施例および比較例を示す。
【表1】
【0083】
本発明の電池電極用スラリー組成物である実施例1および実施例2は比較例1〜比較例3と比べて、ピール強度(結着性)が格段に優れており、コイン電池の100サイクル後の容量維持率においても、優れていることが示された。