特許第6395115号(P6395115)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395115
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】車間距離制御装置及び車間距離制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/16 20120101AFI20180913BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20180913BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20180913BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   B60W30/16
   B60W40/04
   B60W40/06
   G08G1/16 E
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-35978(P2016-35978)
(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公開番号】特開2017-149377(P2017-149377A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英輝
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−132434(JP,A)
【文献】 特開平11−042957(JP,A)
【文献】 特開2001−273588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/14 〜 30/17
B60W 40/04 〜 40/06
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行車の種類を判別するための先行車種類判別装置と、
先行車または自車の車速を測定するための車速測定装置と、
先行車と自車との間の現在の車間距離を測定するための車間距離測定装置と、
道路状況を判別するための道路状況判別装置と、
前記先行車種類判別装置によって判別された先行車の種類と、前記車速測定装置によって測定された車速と、前記車間距離測定装置によって測定された車間距離と、前記道路状況判別装置によって判別された道路状況と、に基づいて自車の加減速を制御するための加減速制御装置と、
を備えたことを特徴とする車間距離制御装置。
【請求項2】
前記先行車種類判別装置は、先行車が大型車であるか小型車であるかを判別するようになっており、
前記加減速制御装置は、前記先行車種類判別装置によって判別された先行車の種類が大型車であった場合、前記先行車種類判別装置によって判別された先行車の種類が小型車であった場合と比較して、先行車に対する車間距離が相対的に大きくなるように自車の加減速を制御するようになっている
ことを特徴とする請求項1に記載の車間距離制御装置。
【請求項3】
前記道路状況判別装置は、道路状況がトンネル内であるか否かを判別するようになっており、
前記加減速制御装置は、前記道路状況判別装置によって判別された道路状況がトンネル内であった場合、前記道路状況判別装置によって判別された道路状況がトンネル内でなかった場合と比較して、先行車に対する車間距離が相対的に大きくなるように自車の加減速を制御するようになっている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車間距離制御装置。
【請求項4】
先行車の種類を判別する先行車種類判別工程と、
先行車または自車の車速を測定する車速測定工程と、
先行車と自車との間の現在の車間距離を測定するための車間距離測定工程と、
道路状況を判別する道路状況判別工程と、
前記先行車種類判別工程において判別された先行車の種類と、前記車速測定工程において測定された車速と、前記車間距離測定工程において測定された車間距離と、前記道路状況判別工程において判別された道路状況と、に基づいて自車の加減速を制御する加減速制御工程と、
を備えたことを特徴とする車間距離制御方法。
【請求項5】
前記先行車種類判別工程においては、先行車が大型車であるか小型車であるかが判別されるようになっており、
前記加減速制御工程においては、前記先行車種類判別装置によって判別された先行車の種類が大型車であった場合、前記先行車種類判別装置によって判別された先行車の種類が小型車であった場合と比較して、先行車に対する車間距離が相対的に大きくなるように自車の加減速が制御されるようになっている
ことを特徴とする請求項に記載の車間距離制御方法。
【請求項6】
前記道路状況判別工程においては、道路状況がトンネル内であるか否かが判別されるようになっており、
前記加減速制御工程においては、前記道路状況判別装置によって判別された道路状況がトンネル内であった場合、前記道路状況判別装置によって判別された道路状況がトンネル内でなかった場合と比較して、先行車に対する車間距離が相対的に大きくなるように自車の加減速が制御されるようになっている
ことを特徴とする請求項4または5に記載の車間距離制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車間距離制御装置及び車間距離制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラやレーザーレーダなどのセンサを用いて先行車と自車との車間距離を計測し、その車間距離が設定値となるように自動で加減速制御を行う車間距離制御システム(ACC:Adaptive Cruise Control)は、すでに実用化(商品化)されている。
【0003】
より具体的には、車間距離制御システムの車間距離の設定値は、先行車の車速(自車が一定の車間距離をあけて走行する場合、自車の車速に等しい)に基いて決められる。そして、前記センサを用いて物理的に計測される先行車と自車との車間距離が、先行車の車速に基づく当該設定値に合致するように、自車の加減速制御がなされる。
【0004】
ここで、人間は、車速が速ければ速いほど、実際の車速よりも速さを強く認識することが分かっている。このことが影響して、実際の車速と人間が体感する車間距離との間の関係にも、非線形特性が存在する。また、車間距離が長くなればなるほど、人間は実際の車間距離よりも短く当該車間距離を認識する、という非線形特性も存在する。これらの非線形特性の存在は、Weber-Fechnerの法則として知られ、例えば特許文献1に開示された車両制御技術においてすでに考慮されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−274838
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件発明者は、人間が体感する車間距離、特に、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離、について鋭意検討を重ねてきた。そして、人間が体感する車間距離は、先行車の車速(一定の車間距離で走行している場合の自車の車速でもある)のみならず、先行車の種類や走行道路環境にも大きく影響されることを知見した。
【0007】
本発明は、以上のような背景に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、先行車の車速(一定の車間距離で走行している場合の自車の車速でもある)のみならず、先行車の種類や走行道路環境をも考慮した車間距離制御装置及び車間距離制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、先行車の種類を判別するための先行車種類判別装置と、先行車または自車の車速を測定するための車速測定装置と、先行車と自車との間の現在の車間距離を測定するための車間距離測定装置と、道路状況を判別するための道路状況判別装置と、前記先行車種類判別装置によって判別された先行車の種類と、前記車速測定装置によって測定された車速と、前記車間距離測定装置によって測定された車間距離と、前記道路状況判別装置によって判別された道路状況と、に基づいて自車の加減速を制御するための加減速制御装置と、を備えたことを特徴とする車間距離制御装置である。
【0009】
本発明によれば、先行車種類判別装置によって判別された先行車の種類に基づいて自車の加減速が制御されるため、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離を、より高い信頼性をもって提供することができる。更に、本発明によれば、道路状況判別装置によって判別された道路状況に基づいて自車の加減速が制御されるため、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離を、更に高い信頼性をもって提供することができる。
【0010】
具体的には、例えば、先行車種類判別装置は、先行車が大型車であるか小型車であるかを判別するようになっており、加減速制御装置は、先行車種類判別装置によって判別された先行車の種類が大型車であった場合、先行車種類判別装置によって判別された先行車の種類が小型車であった場合と比較して、先行車に対する車間距離が相対的に大きくなるように自車の加減速を制御するようになっている。
【0011】
本件発明者による知見によれば、人間が体感する車間距離は、先行車が小型車である場合と比較して先行車が大型車である場合には、実際の車間距離よりも短く感じる。換言すれば、先行車が小型車である場合と比較して、先行車が大型車である場合には、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離は、相対的に大きいということである。前段落に記載された制御態様は、そのような運転者の認識上の特性に合致したものであり、従って、運転者に対して、より高い信頼性をもって安心感を与えることができる。
【0014】
また、具体的には、例えば、道路状況判別装置は、道路状況がトンネル内であるか否かを判別するようになっており、加減速制御装置は、道路状況判別装置によって判別された道路状況がトンネル内であった場合、道路状況判別装置によって判別された道路状況がトンネル内でなかった場合と比較して、先行車に対する車間距離が相対的に大きくなるように自車の加減速を制御するようになっている。
【0015】
本件発明者による知見によれば、人間が体感する車間距離は、道路状況がトンネル内である場合には、実際の車間距離よりも短く感じる。換言すれば、道路状況がトンネル内ではない場合と比較して、道路状況がトンネル内である場合には、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離は、相対的に大きいということである。前段落に記載された制御態様は、そのような運転者の認識上の特性に合致したものであり、従って、運転者に対して、より高い信頼性をもって安心感を与えることができる。
【0018】
また、本発明は、先行車の種類を判別する先行車種類判別工程と、先行車または自車の車速を測定する車速測定工程と、先行車と自車との間の現在の車間距離を測定するための車間距離測定工程と、道路状況を判別する道路状況判別工程と、前記先行車種類判別工程において判別された先行車の種類と、前記車速測定工程において測定された車速と、前記車間距離測定工程において測定された車間距離と、前記道路状況判別工程において判別された道路状況と、に基づいて自車の加減速を制御する加減速制御工程と、を備えたことを特徴とする車間距離制御方法である。
【0019】
本発明によれば、先行車種類判別工程において判別された先行車の種類に基づいて自車
の加減速が制御されるため、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続で
きる車間距離を、より高い信頼性をもって提供することができる。更に、本発明によれば、道路状況判別工程において判別された道路状況に基づいて自車の加減速が制御されるため、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離を、更に高い信頼性をもって提供することができる。
【0020】
具体的には、例えば、先行車種類判別工程においては、先行車が大型車であるか小型車であるかが判別されるようになっており、加減速制御工程においては、先行車種類判別工程において判別された先行車の種類が大型車であった場合、先行車種類判別工程において判別された先行車の種類が小型車であった場合と比較して、先行車に対する車間距離が相対的に大きくなるように自車の加減速が制御されるようになっている。
【0021】
本件発明者による知見によれば、人間が体感する車間距離は、先行車が小型車である場合と比較して先行車が大型車である場合には、実際の車間距離よりも短く感じる。換言すれば、先行車が小型車である場合と比較して、先行車が大型車である場合には、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離は、相対的に大きいということである。前段落に記載された制御態様は、そのような運転者の認識上の特性に合致したものであり、従って、運転者に対して、より高い信頼性をもって安心感を与えることができる。
【0024】
また、具体的には、例えば、道路状況判別工程においては、道路状況がトンネル内であるか否かが判別されるようになっており、加減速制御工程においては、道路状況判別工程において判別された道路状況がトンネル内であった場合、道路状況判別装置において判別された道路状況がトンネル内でなかった場合と比較して、先行車に対する車間距離が相対的に大きくなるように自車の加減速が制御されるようになっている。
【0025】
本件発明者による知見によれば、人間が体感する車間距離は、道路状況がトンネル内である場合には、実際の車間距離よりも短く感じる。換言すれば、道路状況がトンネル内ではない場合と比較して、道路状況がトンネル内である場合には、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離は、相対的に大きいということである。前段落に記載された制御態様は、そのような運転者の認識上の特性に合致したものであり、従って、運転者に対して、より高い信頼性をもって安心感を与えることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、先行車種類判別装置によって判別された先行車の種類に基づいて自車
の加減速が制御されるため、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続で
きる車間距離を、より高い信頼性をもって提供することができる。更に、本発明によれば、道路状況判別装置によって判別された道路状況に基づいて自車の加減速が制御されるため、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離を、更に高い信頼性をもって提供することができる。
【0030】
あるいは、本発明によれば、先行車種類判別工程において判別された先行車の種類に基
づいて自車の加減速が制御されるため、運転者が安全であるという安心感を感じながら運
転を継続できる車間距離を、より高い信頼性をもって提供することができる。更に、本発明によれば、道路状況判別工程において判別された道路状況に基づいて自車の加減速が制御されるため、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離を、更に高い信頼性をもって提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施の形態の車間距離制御装置を示す概略ブロック図である。
図2】先行車が小型車である場合と先行車が大型車である場合とで、運転者が安心できる車間距離を比較した図である。
図3図2の特性を反映させた速度−車間距離の対応例である。
図4】道路状況がトンネル内でない場合と道路状況がトンネル内である場合とで、運転者が安心できる車間距離を比較した図である。
図5図4の特性を反映させた速度−車間距離の対応例である。
図6】本発明の一実施の形態の車間距離制御方法を示す概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施の形態の車間距離制御装置を示す概略ブロック図である。図1に示すように、本実施の形態の車間距離制御装置10は、先行車の種類を判別するための先行車種類判別装置11と、先行車または自車の車速を測定するための車速測定装置12と、先行車と自車との間の現在の車間距離を測定するための車間距離測定装置13と、先行車種類判別装置11によって判別された先行車の種類と、車速測定装置12によって測定された車速と、車間距離測定装置13によって測定された車間距離と、に基づいて自車の加減速を制御するための加減速制御装置14と、を備えている。
【0035】
本実施の形態の先行車種類判別装置11は、例えばカメラ及び画像処理装置からなり、先行車の存在の有無を判別すると共に、先行車が大型車であるか小型車であるかを判別するようになっている。そして、本実施の形態の加減速制御装置14は、先行車種類判別装置11によって判別された先行車の種類が大型車であった場合、先行車種類判別装置11によって判別された先行車の種類が小型車であった場合と比較して、先行車に対する車間距離が相対的に大きくなるように自車の加減速を制御するようになっている。
【0036】
本件発明者による知見によれば、人間が体感する車間距離は、先行車が小型車である場合と比較して先行車が大型車である場合には、実際の車間距離よりも短く感じる。換言すれば、先行車が小型車である場合と比較して、先行車が大型車である場合には、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離は、相対的に大きいということである。
【0037】
図2を参照して、そのような現象を説明する。図2(a)は、ある運転者が、小型車である先行車に対して一定の車間距離をあけて走行していた場合において、当該車間距離が安全であると認識していた状態の一例であり、図2(b)は、同じ運転者が、大型車である先行車に対して一定の車間距離をあけて走行していた場合において、当該車間距離が安全であると認識していた状態の一例である。図2(a)と図2(b)とを比較すれば一目瞭然である通り、先行車が小型車である場合と比較して、先行車が大型車である場合には、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離は、相対的に大きい。
【0038】
先行車の種類ごとに(大型車と小型車)、多くの運転者に、安全であるとの認識を維持しつつ一定の車間距離をあけた走行実験を行って貰い、先行車の速度(車間距離が一定であれば自車の速度に等しい)に対応した当該車間距離に関するデータを収集した結果が、図3のグラフである。図3に示すように、各速度において、先行車が小型車である場合と比較して、先行車が大型車である場合、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離は、相対的に大きい。
【0039】
そして、本実施の形態の加減速制御装置14は、先行車の速度が自車の設定速度以下である場合に(先行車の速度が自車の設定速度を超えている状態では、先行車を追いかけず、先行車がいない走行状態(車間距離制御はなされない)に切り替わる)、自車の速度を先行車の速度に追随させながら、先行車に対する車間距離が図3のグラフを満たすように自車の加減速を制御するようになっている。このような制御態様は、運転者の認識上の特性に合致したものであり、より高い信頼性をもって車間距離に関する安心感を提供することが期待できる。
【0040】
一方、本実施の形態の車間距離制御装置10は、道路状況を判別するための道路状況判別装置15を更に備えている。道路状況判別装置15も、例えばカメラ及び画像処理装置からなる。そして、本実施の形態の加減速制御装置10は、当該道路状況判別装置15によって判別された道路状況をも考慮に入れて自車の加減速を制御するようになっている。
【0041】
本実施の形態の道路状況判別装置15は、道路状況がトンネル内であるか否かを判別するようになっている。そして、本実施の形態の加減速制御装置10は、道路状況判別装置15によって判別された道路状況がトンネル内であった場合、道路状況判別装置15によって判別された道路状況がトンネル内でなかった場合と比較して、先行車に対する車間距離が相対的に大きくなるように自車の加減速を制御するようになっている。
【0042】
本件発明者による知見によれば、人間が体感する車間距離は、道路状況がトンネル内である場合には、実際の車間距離よりも短く感じる。換言すれば、道路状況がトンネル内ではない場合と比較して、道路状況がトンネル内である場合には、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離は、相対的に大きいということである。
【0043】
図4を参照して、そのような現象を説明する。図4(a)は、ある運転者が、トンネル内でない道路状況において先行車に対して一定の車間距離をあけて走行していた場合において、当該車間距離が安全であると認識していた状態の一例であり、図4(b)は、同じ運転者が、トンネル内において先行車に対して一定の車間距離をあけて走行していた場合において、当該車間距離が安全であると認識していた状態の一例である。図4(a)と図4(b)とを比較すれば一目瞭然である通り、道路状況がトンネル内でなかった場合と比較して、道路状況がトンネル内である場合には、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離は、相対的に大きい。
【0044】
道路状況の種類ごとに(トンネル内とトンネル外)、多くの運転者に、安全であるとの認識を維持しつつ一定の車間距離をあけた走行実験を行って貰い、先行車の速度(車間距離が一定であれば自車の速度に等しい)に対応した当該車間距離に関するデータを収集した結果が、図5のグラフである。図5に示すように、各速度において、道路状況がトンネル内でない場合と比較して、道路状況がトンネル内である場合、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離は、相対的に大きい。
【0045】
そして、本実施の形態の加減速制御装置14は、先行車の速度が自車の設定速度以下である場合に(先行車の速度が自車の設定速度を超えている状態では、先行車を追いかけず、先行車がいない走行状態(車間距離制御はなされない)に切り替わる)、自車の速度を先行車の速度に追随させながら、先行車に対する車間距離が図5のグラフを満たすように自車の加減速を制御するようになっている。このような制御態様は、運転者の認識上の特性に合致したものであり、より高い信頼性をもって車間距離に関する安心感を提供することが期待できる。
【0046】
加減速制御装置14のその他の機能構成は、従来のACCの加減速制御装置の機能構成が流用可能である。また、車速測定装置12については、種々の公知の車速測定装置が流用され得て、先行車の車速を測定してもよいし、自車の車速を測定してもよい。いずれの測定値を用いるかは、加減速制御装置14側の要請によって決まる。車間距離測定装置13についても、カメラやレーザーレーダ等のセンサを含む種々の公知の車間距離測定装置が流用され得る。
【0047】
次に、以上のような本実施の形態の作用、すなわち、車間距離制御方法の一実施の形態について、図6を参照して説明する。図6は、本発明の一実施の形態の車間距離制御方法を示す概略フロー図である。
【0048】
ACC機能の実施が選択されると(STEP01)、従来より既知の様々な態様でドライバセット車速Vsetが設定される(STEP02)。
【0049】
そして、本実施の形態の先行車種類判別装置11は、例えば所定のサンプリング時間ごとに、先行車の存在の有無を検知する(STEP03)。先行車の認識(判別)は、同一車線の遠い前方を走っていた先行車に自車が追いつくことで開始されるか、あるいは、異なる車線を走っていた先行車が車線変更したことで開始される。
【0050】
STEP03において、先行車の存在が無い場合には、本発明の車間制御とは無関係の制御、具体的には、ドライバセット車速Vsetに基づく定速制御が実施される。ここで、本実施の形態では、道路状況判別装置15によって道路状況がトンネル内であるか否かが判別される(STEP31)。
【0051】
そして、本実施の形態の加減速制御装置10は、道路状況判別装置15によって判別された道路状況がトンネル内であった場合、目標車速をドライバセット車速Vsetから補正する(STEP33)。これは、道路状況がトンネル内でなかった場合と比較して、道路状況がトンネル内である場合には、運転者が体感する速度が相対的に大きい、という現象を考慮した制御内容であり、運転者は当該トンネル内においても安全であるという安心感を十分に感じることができ、ACCの解除を考慮する必要がない。一方、道路状況判別装置15によって判別された道路状況がトンネル内でなければ、目標車速をドライバセット車速Vsetとした定速制御が実施される(STEP32)。
【0052】
STEP03において、先行車の存在がある場合、先行車種類判別装置11によって先行車の種類が判別される(STEP04)。そして、本実施の形態では、先行車が大型車である場合も、小型車である場合も、道路状況判別装置15によって道路状況がトンネル内であるか否かが判別される(STEP11、STEP12)。
【0053】
そして、先行車が大型車であって、道路状況がトンネル内でなかった場合には、図3及び図5の破線の対応関係に基づいて車間距離制御が実施される(STEP12)。すなわち、自車の速度を先行車の速度に追随させながら、車速測定装置12によって測定される先行車または自車の車速に基づいて、先行車に対する車間距離(車間距離測定装置13によって測定される)が図3及び図5の破線の対応関係となるように自車の加減速が制御される。図3及び図5の破線の対応関係は、車速をx(km/h)、目標車間距離をy(m)とした時、y=18.184e0.0169xという関数で表される。
【0054】
一方、先行車が大型車であって、道路状況がトンネル内であった場合には、図5の二点鎖線の対応関係に基づいて車間距離制御が実施される(STEP13)。すなわち、自車の速度を先行車の速度に追随させながら、車速測定装置12によって測定される先行車または自車の車速に基づいて、先行車に対する車間距離(車間距離測定装置13によって測定される)が図5の二点鎖線の対応関係となるように自車の加減速が制御される。図5の二点鎖線の対応関係は、車速をx(km/h)、目標車間距離をy(m)とした時、y=18.594e0.0222xという関数で表される。
【0055】
また、先行車が小型車であって、道路状況がトンネル内でなかった場合には、図3及び図5の実線の対応関係に基づいて車間距離制御が実施される(STEP22)。すなわち、自車の速度を先行車の速度に追随させながら、車速測定装置12によって測定される先行車または自車の車速に基づいて、先行車に対する車間距離(車間距離測定装置13によって測定される)が図3及び図5の実線の対応関係となるように自車の加減速が制御される。図3及び図5の実線の対応関係は、車速をx(km/h)、目標車間距離をy(m)とした時、y=10.415e0.0192xという関数で表される。
【0056】
最後に、先行車が小型車であって、道路状況がトンネル内であった場合には、図5の一点鎖線の対応関係に基づいて車間距離制御が実施される(STEP23)。すなわち、自車の速度を先行車の速度に追随させながら、車速測定装置12によって測定される先行車または自車の車速に基づいて、先行車に対する車間距離(車間距離測定装置13によって測定される)が図5の一点鎖線の対応関係となるように自車の加減速が制御される。図5の一点鎖線の対応関係は、車速をx(km/h)、目標車間距離をy(m)とした時、y=11.234e0.0222xという関数で表される。
【0057】
各車間距離制御(STEP12、STEP13、STEP22、STEP23)ないし各定速制御(STEP32、STEP34)の実施後は、ACCが継続されるか否かの確認工程(STEP41)を経て、STEP03に戻り、先行車の存在の有無の判断以降のステップが繰り返される。
【0058】
以上の通り、本実施の形態によれば、先行車種類判別装置11によって判別された先行車の種類に基づいて自車の加減速が制御されるため、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離を、より高い信頼性をもって提供することができる。
【0059】
前述したように、先行車が小型車である場合と比較して、先行車が大型車である場合には、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離は、相対的に大きい。本実施の形態の制御態様は、そのような運転者の認識上の特性に合致したものであり、運転者に対してより高い信頼性をもって安心感を与えることができる。
【0060】
更に、本実施の形態によれば、道路状況判別装置15によって判別された道路状況に基づいて自車の加減速が制御されるため、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離を、より高い信頼性をもって提供することができる。
【0061】
前述したように、道路状況がトンネル内でなかった場合と比較して、道路状況がトンネル内である場合には、運転者が安全であるという安心感を感じながら運転を継続できる車間距離は、相対的に大きい。本実施の形態の制御態様は、そのような運転者の認識上の特性に合致したものであり、運転者に対してより高い信頼性をもって安心感を与えることができる。
【符号の説明】
【0062】
10 車間距離制御装置
11 先行車種類判別装置
12 車速測定装置
13 車間距離測定装置
14 加減速制御装置
15 道路状況判別装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6