(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記失火判定手段は、エンジン回転数及びエンジン負荷に基づいて上記判定閾値を設定し、エンジン回転数が高い場合にはエンジン回転数が低い場合よりも上記吸気密度関連値に応じて上記判定閾値を変化させる量を大きくする、請求項1に記載のエンジンの失火判定装置。
上記失火判定手段は、上記吸気密度関連値が所定範囲を超える場合には、上記判定閾値を第1所定値に設定し、上記吸気密度関連値が上記所定範囲を下回る場合には、上記判定閾値を上記第1所定値とは異なる第2所定値に設定し、上記吸気密度関連値が上記所定範囲内にある場合には、上記第1所定値と上記第2所定値との間で当該吸気密度関連値の大きさに応じて上記判定閾値を変化させる、請求項1又は2に記載のエンジンの失火判定装置。
上記吸気密度関連値取得手段は、エンジンに導入される吸気の吸気温又は外気温を上記吸気密度関連値として取得する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエンジンの失火判定装置。
上記失火判定手段は、エンジンのクランク角の角加速度を求め、この角加速度の変動量が上記判定閾値以上である場合にエンジンの失火が発生したと判定する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエンジンの失火判定装置。
上記失火判定手段によってエンジンが失火していると判定された場合に、エンジンの失火に関連する異常を報知するための警告灯を点灯させる警告灯点灯手段を更に有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のエンジンの失火判定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インテークマニホールドの形状や気筒への吸気の流れやすさ(換言すると吸気の流れにくさ)などにより、各気筒に導入される吸気量(充填量)が気筒ごとに僅かに異なる傾向にある。特に気筒に導入される吸気の密度(吸気密度)が高くなる状況においては、そのような各気筒に導入される吸気量のばらつきが大きくなる。その結果、各気筒での燃焼ばらつきが大きくなり、クランク角が大きく変動することがある。上記した特許文献1のようにクランク角に基づき失火を判定する技術では、このようなクランク角の変動を失火によるものと誤判定してしまう。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、エンジンのクランク角の変動に基づき失火判定を行うエンジンの失火判定装置において、エンジンに導入される吸気密度を考慮して失火判定を精度良く行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、エンジンの失火を判定するエンジンの失火判定装置において、エンジンのクランク角の変動を所定の判定閾値を用いて判定して、エンジンの失火を検出する失火判定手段と、エンジンに導入される吸気の吸気密度に関連する吸気密度関連値を取得する吸気密度関連値取得手段と、を有し、失火判定手段は、吸気密度関連値取得手段によって取得された吸気密度関連値に
対応する吸気密度が高い場合には当該吸気密度が低い場合よりも判定閾値を
大きくする、ことを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、クランク角の変動を判定するために用いる失火判定閾値を、吸気密度を考慮して設定して、
具体的には吸気密度が高いときに失火判定閾値を大きく設定して、この失火判定閾値を用いて失火判定を行うので、吸気密度が高いために各気筒に導入される吸気量のばらつきが大きくなることで発生するクランク角の変動を、エンジンの失火によるものと誤判定してしまうことを抑制することができる。したがって、本発明によれば、吸気密度が低い場合における失火判定の精度を確保しつつ、吸気密度が高い場合における失火の誤判定を適切に抑制することができる。よって、本発明によれば、失火判定の精度を向上させることができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、失火判定手段は、エンジン回転数及びエンジン負荷に基づいて判定閾値を設定し、エンジン回転数が高い場合にはエンジン回転数が低い場合よりも吸気密度関連値に応じて判定閾値を変化させる量を大きくする。
このように構成された本発明によれば、エンジン回転数及びエンジン負荷に応じた適切な判定閾値を設定することができる。また、本発明によれば、高回転域では低回転域よりも吸気密度の影響を判定閾値に反映させる度合いを大きくするので、低温の状況下で高回転域においてクランク角の変動が大きくなるという特性を適切に考慮に入れて判定閾値を設定することができる。これにより、失火の誤判定を効果的に抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、失火判定手段は、吸気密度関連値が所定範囲を超える場合には、判定閾値を第1所定値に設定し、吸気密度関連値が所定範囲を下回る場合には、判定閾値を第1所定値とは異なる第2所定値に設定し、吸気密度関連値が所定範囲内にある場合には、第1所定値と第2所定値との間で当該吸気密度関連値の大きさに応じて判定閾値を変化させる。
このように構成された本発明によれば、判定閾値を第1所定値に設定する領域と第2所定値に設定する領域との間(所定範囲)に吸気密度関連値がある場合には、吸気密度関連値を取得するセンサの応答性などを加味して、吸気密度関連値の大きさに応じて第1所定値と第2所定値との間で失火判定閾値を適切に変化させることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、吸気密度関連値取得手段は、エンジンに導入される吸気の吸気温又は外気温を吸気密度関連値として取得する。
このように構成された本発明によれば、吸気密度を適切に指し示す吸気温又は外気温に基づき判定閾値を設定することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、エンジンは、過給機付きのエンジンであり、吸気密度関連値取得手段は、エンジンに導入される吸気の吸気温を吸気密度関連値として取得する。
このように構成された本発明によれば、過給機によって過給された吸気の温度を吸気密度関連値として用いるので、各気筒に導入される吸気量のばらつきを生じさせる吸気密度を適切に指し示す指標に基づき判定閾値を設定することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、失火判定手段は、エンジンのクランク角の角加速度を求め、この角加速度の変動量が判定閾値以上である場合にエンジンの失火が発生したと判定する。
このように構成された本発明によれば、クランク角加速度の変動量(絶対値)に基づいて失火判定を行うので、クランク角速度の変動やクランク角加速度の大きさに基づいて失火判定を行う場合と比較して、失火によるクランク角の変動を適切に捉えることができ、精度良く失火判定を実行することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、失火判定手段によってエンジンが失火していると判定された場合に、エンジンの失火に関連する異常を報知するための警告灯を点灯させる警告灯点灯手段を更に有する。
このように構成された本発明によれば、エンジンの失火に関連する異常をドライバに適切に報知することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エンジンのクランク角の変動に基づき失火判定を行うエンジンの失火判定装置において、エンジンに導入される吸気密度を考慮して失火判定を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの失火判定装置について説明する。
【0016】
<システム構成>
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの失火判定装置が適用されたエンジンシステムについて説明する。
図1は、本発明の実施形態によるエンジンの失火判定装置が適用されたエンジンシステムの概略構成図であり、
図2は、本発明の実施形態によるエンジンの失火判定装置の電気的構成を示すブロック図である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、エンジンシステム100は、主に、外部から導入された吸気(空気)が通過する吸気通路1と、この吸気通路1から供給された吸気と、後述する燃料噴射弁13から供給された燃料との混合気を気筒内で燃焼させて車両の動力を発生するエンジン10(具体的にはガソリンエンジン)と、このエンジン10内の燃焼により発生した排気ガスを排出する排気通路25と、エンジンシステム100に関する各種の状態を検出するセンサ40〜53と、エンジンシステム100全体を制御するPCM60(エンジンの失火判定装置)と、を有する。なお、
図1では、1つの気筒のみを示しているが、実際にはエンジン10は複数の気筒(2以上の気筒)を有する。
【0018】
吸気通路1には、上流側から順に、外部から導入された吸気を浄化するエアクリーナ3と、通過する吸気を昇圧させる、ターボ過給機4のコンプレッサ4aと、外気や冷却水により吸気を冷却するインタークーラ5と、通過する吸気の量(吸入空気量)を調整するスロットルバルブ6と、エンジン10に供給する吸気を一時的に蓄えるサージタンク7と、が設けられている。
【0019】
また、吸気通路1には、コンプレッサ4aによって過給された吸気の一部を、コンプレッサ4aの上流側に還流するためのエアバイパス通路8が設けられている。具体的には、エアバイパス通路8の一端は、コンプレッサ4aの下流側で且つスロットルバルブ6の上流側の吸気通路1に接続され、エアバイパス通路8の他端は、エアクリーナ3の下流側で且つコンプレッサ4aの上流側の吸気通路1に接続されている。
【0020】
このエアバイパス通路8には、エアバイパス通路8を流れる吸気の流量を開閉動作により調節するエアバイパスバルブ9が設けられている。エアバイパスバルブ9は、エアバイパス通路8を完全に閉じる閉状態と完全に開く開状態とに切り換え可能な、いわゆるオンオフバルブである。
【0021】
エンジン10は、主に、吸気通路1から供給された吸気を燃焼室11内に導入する吸気バルブ12と、燃焼室11に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁13と、燃焼室11内に供給された吸気と燃料との混合気に点火する点火プラグ14と、燃焼室11内での混合気の燃焼により往復運動するピストン15と、ピストン15の往復運動により回転されるクランクシャフト16と、燃焼室11内での混合気の燃焼により発生した排気ガスを排気通路25へ排出する排気バルブ17と、を有する。
【0022】
また、エンジン10は、吸気バルブ12及び排気バルブ17のそれぞれの動作タイミング(つまり開閉時期)を、可変バルブタイミング機構(Variable Valve Timing Mechanism)としての可変吸気バルブ機構18及び可変排気バルブ機構19によって可変に構成されている。可変吸気バルブ機構18及び可変排気バルブ機構19としては、公知の種々の形式を適用可能であるが、例えば電磁式又は油圧式に構成された機構を用いて、吸気バルブ12及び排気バルブ17の動作タイミングを変化させることができる。
【0023】
排気通路25には、上流側から順に、通過する排気ガスによって回転され、この回転によってコンプレッサ4aを駆動するターボ過給機4のタービン4bと、例えばNOx触媒や三元触媒や酸化触媒などの、排気ガスの浄化機能を有する触媒装置35a、35bが設けられている。以下では、これらの触媒装置35a、35bを区別しないで用いる場合には単に「触媒装置35」と表記する。
【0024】
また、排気通路25上には、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路1に還流させるEGR装置26が設けられている。EGR装置26は、一端がタービン4bの上流側の排気通路25に接続され、他端がコンプレッサ4aの下流側で且つスロットルバルブ11の下流側の吸気通路1に接続されたEGR通路27と、EGRガスを冷却するEGRクーラ28と、EGR通路27を流れるEGRガス量(流量)を制御するEGRバルブ29と、を有する。このEGR装置26は、いわゆる高圧EGR装置(HPL(High Pressure Loop)EGR装置)に相当する。
【0025】
また、排気通路25には、排気ガスをターボ過給機4のタービン4bに通過させずに迂回させるタービンバイパス通路30が設けられている。このタービンバイパス通路30には、タービンバイパス通路30を流れる排気ガスの流量を制御するウェイストゲートバルブ(以下「WGバルブ」と称する)31が設けられている。
【0026】
また、排気通路25においては、EGR通路27の上流側の接続部分とタービンバイパス通路30の上流側の接続部分との間の通路が、第1通路25aと第2通路25bとに分岐されている。第1通路25aは第2通路25bよりも径が大きく、換言すると第2通路25bは第1通路25aよりも径が小さく、第1通路25aには開閉バルブ25cが設けられている。開閉バルブ25cが開いている場合には、排気ガスは基本的には第1通路25aに流れ、開閉バルブ25cが閉じている場合には、排気ガスは第2通路25bにのみ流れる。そのため、開閉バルブ25cが閉じている場合には、開閉バルブ25cが開いている場合よりも、排気ガスの流速が大きくなる。開閉バルブ25cは低回転数領域において閉じられ、流速が上昇された排気ガスをターボ過給機4のタービン4bに供給して、低回転域でもターボ過給機4による過給が行えるようになっている。
【0027】
エンジンシステム100には、当該エンジンシステム100に関する各種の状態を検出するセンサ40〜53が設けられている。これらセンサ40〜53は、具体的には以下の通りである。アクセル開度センサ40は、アクセルペダルの開度(ドライバがアクセルペダルを踏み込んだ量に相当する)であるアクセル開度を検出する。エアフローセンサ41は、エアクリーナ3とコンプレッサ4aとの間の吸気通路1を通過する吸気の流量に相当する吸入空気量を検出する。温度センサ42は、エアクリーナ3とコンプレッサ4aとの間の吸気通路1を通過する吸気の温度を検出する。圧力センサ43は、過給圧を検出する。スロットル開度センサ44は、スロットルバルブ6の開度であるスロットル開度を検出する。温度センサ45は、エンジン10に供給される吸気の温度(吸気温)を検出する。クランク角センサ46は、クランクシャフト16におけるクランク角を検出する。吸気側カム角センサ47は、吸気カムシャフトのカム角を検出する。排気側カム角センサ48は、排気カムシャフトのカム角を検出する。温度センサ49は、エンジン10の冷却水の温度(水温)を検出する。WG開度センサ50は、WGバルブ31の開度を検出する。O
2センサ51は、触媒装置35aの上流側の排気ガス中の酸素濃度を検出し、O
2センサ52は、触媒装置35aと触媒装置35bとの間の排気ガス中の酸素濃度を検出する。車輪速センサ53は、車輪の速度(車速に相当する)を検出する。これら各種センサ40〜53は、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号S140〜S153をPCM60に出力する。
【0028】
PCM60は、上述した各種センサ40〜53から入力された検出信号S140〜S153に基づいて、エンジンシステム100内の構成要素に対する制御を行う。具体的には、
図2に示すように、PCM60は、スロットルバルブ6に制御信号S106を供給して、スロットルバルブ6の開閉時期やスロットル開度を制御し、エアバイパスバルブ9に制御信号S109を供給して、エアバイパスバルブ9の開閉を制御し、WGバルブ31に制御信号S131を供給して、WGバルブ31の開度を制御し、燃料噴射弁13に制御信号S113を供給して、燃料噴射量や燃料噴射タイミングを制御し、点火プラグ14に制御信号S114を供給して、点火時期を制御し、可変吸気バルブ機構18及び可変排気バルブ機構19のそれぞれに制御信号S118、S119を供給して、吸気バルブ12及び排気バルブ17の動作タイミングを制御し、EGRバルブ29に制御信号S129を供給して、EGRバルブ29の開度を制御する。
【0029】
特に、本実施形態では、PCM60は、クランク角センサ46によって検出されたクランク角に基づき、エンジン10の失火を検出するための失火判定を実行する。また、PCM60は、車輪速センサ53によって検出された車輪速度に基づいて、車輪のスリップを検出するためのスリップ判定を実行する。加えて、PCM60は、エンジン10が失火していると判定された場合に、エンジン10の失火に関連する異常を報知するための警告灯を点灯させる、つまりドライバに異常を報知するためのMIL(Malfunction Indication Lamp)を点灯させる。このように、PCM60は、本発明における「エンジンの失火判定装置」に相当し、本発明における「失火判定手段」、「吸気密度関連値取得手段」及び「警告灯点灯手段」として機能する。
【0030】
なお、PCM60の各構成要素は、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを記憶するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。
【0031】
<本実施形態による失火判定の概要>
最初に、本発明の実施形態による失火判定の概要について説明する。本実施形態では、PCM60は、クランク角センサ46によって検出されたクランク角に基づきエンジン10の失火を判定する場合において、この失火判定を実行する前に、車輪速の変化量に基づき車輪のスリップを判定し、車輪がスリップしたと判定された場合には失火判定の実行を制限する(つまり禁止する)。こうすることで、車輪のスリップによってドライブシャフトが捩じれてクランク角が大きく変動したときに、このクランク角の変動をエンジン10の失火に起因するものとして判断して、エンジン10の失火を誤判定してしまうことを抑制するようにしている。特に、本実施形態では、PCM60は、車輪のスリップを正確に判定して失火判定の実行/非実行を適切に決定すべく、車輪速の変化量を判定するための判定閾値(以下では「スリップ判定閾値」と呼ぶ。)をエンジン負荷に応じて変化させるようにする。
【0032】
更に、本実施形態では、PCM60は、クランク角に基づきエンジン10の失火を判定するために用いる判定閾値(以下では「失火判定閾値」と呼ぶ。)を、エンジン10に導入される吸気の吸気密度に基づき変化させるようにする。具体的には、PCM60は、クランク角センサ46の検出信号からクランク角加速度の変動(絶対値)を求めて、このクランク角加速度の変動が失火判定閾値以上である場合に失火が発生したと判定するようにし、この失火判定閾値を吸気密度が高い場合には吸気密度が低い場合よりも大きくして失火判定がなされにくくする。こうすることで、吸気密度が高いことに起因して各気筒に導入される吸気量(充填量)のばらつきが大きくなり、クランク角の変動を大きくなった場合に、このクランク角の変動をエンジン10の失火に起因するものとして判断して、エンジン10の失火を誤判定してしまうことを抑制するようにしている。特に、本実施形態では、PCM60は、エンジン10に導入される吸気の吸気温又は外気温に基づき吸気密度を判断する。この場合、PCM60は、吸気温又は外気温が低い場合には当該温度が高い場合より吸気密度が高いと判断して失火判定閾値を大きくする。
【0033】
<スリップ判定>
次に、
図3を参照して、本発明の実施形態によるスリップ判定について具体的に説明する。
図3では、横軸にエンジン負荷を示し、縦軸に車輪速変化量を示している。
図3において、実線のグラフG1は、スリップ判定において車輪速変化量を判定するためのスリップ判定閾値を示している。PCM60は、車輪速変化量がスリップ判定閾値以上である場合には車輪がスリップしたと判定し、車輪速変化量がスリップ判定閾値未満である場合には車輪がスリップしていないと判定する。なお、車輪速変化量は、所定時間における車輪速の変化量(典型的には単位時間当たりの車輪速の変化量)である。
【0034】
図3に示すように、スリップ判定閾値は、基本的には、エンジン負荷が高い場合にはエンジン負荷が低い場合よりも大きくなっている。具体的には、スリップ判定閾値は、エンジン負荷が高くなるほど大きくなっている。特に、エンジン負荷の変化に対するスリップ判定閾値の変化率が、エンジン負荷が高くなるほど大きくなっている(つまり二次曲線的に大きくなっている)。例えば、このようなスリップ判定閾値は、実験などにより、スリップが発生したときの車輪速変化量と、スリップが発生していないときの車輪速変化量とを、種々のエンジン負荷について計測することで求められる。
なお、
図3において、比較的小さなスリップ判定閾値に設定される低負荷域(符号R11参照)は、ターボ過給機4による過給が行われない非過給域に相当し、この非過給域よりも相対的に大きなスリップ判定閾値に設定される高負荷域(符号R12参照)は、ターボ過給機4による過給が行われる過給域に相当する。
【0035】
このようにスリップ判定閾値を規定している理由は以下の通りである。通常、エンジン負荷(燃焼トルク)が大きくなると、特に過給域R12のような高負荷域では、車輪速の変化が大きくなる傾向にある。具体的には、高負荷域では、非過給域R11のような低負荷域において車輪がスリップしたときよりも、車輪速の変化が大きくなる傾向にある(当然、高負荷域で車輪がスリップしたときには車輪速の変化が更に大きくなる)。したがって、本実施形態では、低負荷域でのスリップ判定の精度を確保しつつ、高負荷域でのスリップの誤判定を抑制するように、エンジン負荷が高くなるほどスリップ判定閾値を大きくしている、換言するとエンジン負荷が低くなるほどスリップ判定閾値を小さくしている。これにより、失火の誤判定を抑制するようにスリップ発生時に失火判定を制限する構成において、適切なスリップ判定閾値を用いてスリップの誤判定を抑制することによって、スリップが発生していないにも関わらずに失火判定を無駄に制限してしまうことを抑制して、失火判定の実行頻度を確保するようにしている。
【0036】
<外気温に応じた失火判定>
次に、
図4を参照して、本発明の実施形態における、吸気密度に関連する外気温を考慮に入れた失火判定について具体的に説明する。
図4は、横軸に外気温を示し、縦軸にクランク角加速度の変動(絶対値)を示している。
図4において、実線のグラフG2は、失火判定においてクランク角加速度の変動を判定するための失火判定閾値を示している。PCM60は、クランク角加速度の変動が失火判定閾値以上である場合にはエンジン10の失火が発生したと判定し、クランク角加速度の変動が失火判定閾値未満である場合にはエンジン10の失火が発生してないと判定する。なお、クランク角加速度の変動は、所定時間におけるクランク角加速度の変化量の大きさである。
【0037】
図4に示すように、失火判定閾値は、外気温が低い場合(例えば0℃未満)には外気温が高い場合(例えば20℃以上)よりも大きくなっている。具体的には、外気温が所定範囲R2(例えば0℃から20℃までの範囲)を下回る領域では、符号A1で示す失火判定閾値に設定され、外気温が所定範囲R2を上回る領域では、上記の失火判定閾値A1よりも小さな、符号A2で示す失火判定閾値に設定され、外気温が所定範囲R2内にある場合には、外気温の大きさに応じて、上記の失火判定閾値A1と失火判定閾値A2との間の値に設定されるようになっている。つまり、外気温が所定範囲R2内にある場合には、外気温に応じてA1とA2との間で失火判定閾値が変化するようになっている。例えば、このような失火判定閾値は、実験やシミュレーションなどにより、失火の発生時及び未発生時のそれぞれにおけるクランク角加速度変動を、種々の外気温について計測することで求められる。
なお、失火判定閾値は、基本的にはエンジン回転数及びエンジン負荷に基づいて設定され、
図4では、或るエンジン回転数及びエンジン負荷において適用される、外気温に応じた失火判定閾値の一例を示している。
【0038】
このように失火判定閾値を規定している理由は以下の通りである。インテークマニホールドの形状や気筒への吸気の流れやすさ(換言すると吸気の流れにくさ)などにより、各気筒に導入される吸気量(充填量)が気筒ごとに僅かに異なる。外気温が低くなると吸気密度が高くなるので、そのような各気筒に導入される吸気量のばらつきが大きくなる。そのため、各気筒での燃焼ばらつきが大きくなり、クランク角が大きく変動する傾向にある。したがって、本実施形態では、このような吸気密度が高いときに発生するクランク角の変動をエンジン10の失火と誤判定してしまうことを抑制すべく、外気温が低い場合には外気温が高い場合よりも失火判定閾値を大きくする。こうすることで、吸気密度が低い場合(つまり外気温が高い場合)における失火判定の精度を確保しつつ、吸気密度が高い場合(つまり外気温が低い場合)における失火の誤判定を抑制するようにしている。
【0039】
なお、上記では、外気温に基づき失火判定閾値を設定する例を示したが、外気温の代わりに吸気温に基づき失火判定閾値を設定してもよい。その場合にも、
図4と同様に、吸気温に応じた失火判定閾値が規定される。本実施形態におけるエンジン10には、ターボ過給機4によって過給された吸気が供給されるので、ターボ過給機4によって過給されてインタークーラ5を通過した後の吸気の温度(温度センサ45によって検出された温度)を用いて失火判定閾値を設定するとよい。
【0040】
<失火判定処理>
次に、
図5を参照して、本発明の実施形態による失火判定の具体的な処理について説明する。
図5は、本発明の実施形態による失火判定処理を示すフローチャートである。この失火判定処理は、PCM60によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0041】
まず、ステップS101では、PCM60は、車両における各種情報を取得する。特に、PCM60は、温度センサ45によって検出された吸気温や、クランク角センサ46によって検出されたクランク角や、車輪速センサ53によって検出された車輪速などを取得する。
【0042】
次いで、ステップS102では、PCM60は、失火判定条件が成立しているか否かを判定する。具体的には、PCM60は、変速が行われておらず、燃料カットが行われておらず、且つ、エンジン水温が所定温度以上であり、尚且つ、エンジン回転数が所定回転数以上である場合に、失火判定条件が成立していると判定し(ステップS102:Yes)、ステップS103に進む。一方で、PCM60は、変速が行われた場合、燃料カットが行われた場合、エンジン水温が所定温度未満である場合、又は、エンジン回転数が所定回転数未満である場合には、失火判定条件が成立していないと判定する(ステップS102:No)。この場合には、PCM60は、失火判定を実行せずに、失火判定処理のフローを抜ける。
【0043】
ステップS103では、PCM60は、エンジン負荷に基づきスリップ判定閾値を設定する。具体的には、PCM60は、
図3に示したスリップ判定閾値のマップに基づき、現在のエンジン負荷に対応するスリップ判定閾値を設定する。
【0044】
次いで、ステップS104では、PCM60は、車輪速センサ53によって検出された車輪速から車輪速変化量を求め、この車輪速変化量とステップS103で設定したスリップ判定閾値とを比較することで車輪のスリップが発生していないか否かを判定する。PCM60は、車輪速変化量がスリップ判定閾値未満である場合にはスリップが発生していないと判定し(ステップS104:Yes)、ステップS105に進む。ステップS105以降では、PCM60は、失火判定を実際に実行するための処理を行う。一方、PCM60は、車輪速変化量がスリップ判定閾値以上である場合にはスリップが発生したと判定する(ステップS104:No)。この場合には、PCM60は、失火判定を実行せずに、失火判定処理のフローを抜ける。
【0045】
ステップS105では、PCM60は、失火判定閾値を設定するために用いる常温用失火リファレンス、低温用失火リファレンス及びリファレンス配分を設定する。これらの常温用失火リファレンス、低温用失火リファレンス及びリファレンス配分は、エンジン回転数、エンジン負荷及び外気温に応じた失火判定閾値を設定するために用いられる。具体的には、常温用失火リファレンスは、外気温が常温(例えば25℃)であるときに、エンジン回転数及びエンジン負荷に応じて適用すべき失火判定閾値に相当し、低温用失火リファレンスは、外気温が低温(例えば氷点下の温度)であるときに、エンジン回転数及びエンジン負荷に応じて適用すべき失火判定閾値に相当する。また、リファレンス配分は、最終的に適用する失火判定閾値を決定するに当たって、上記の常温用失火リファレンス及び低温用失火リファレンスを外気温に応じて配分する比率に相当する。このリファレンス配分に応じて常温用失火リファレンス及び低温用失火リファレンスを加算することで、最終的に適用する失火判定閾値が決定される。
【0046】
ここで、
図6及び
図7を参照して、常温用失火リファレンス、低温用失火リファレンス及びリファレンス配分を設定する方法について具体的に説明する。
図6は、本発明の実施形態による常温用失火リファレンス及び低温用失火リファレンスを示しており、
図7は、本発明の実施形態によるリファレンス配分を示している。
【0047】
図6(a)は、同一のエンジン負荷で見たときのエンジン回転数(横軸)と失火リファレンス(縦軸)との関係を示すグラフである。
図6(a)において、実線のグラフG31は常温用失火リファレンスを示し、破線のグラフG32は低温用失火リファレンスを示している。
図6(a)に示すように、基本的には、常温用失火リファレンス及び低温用失火リファレンスの両方とも、同一のエンジン負荷で見たときにエンジン回転数が高くなるほど大きな値になっている。
【0048】
特に、本実施形態では、エンジン回転数N1を超える領域において、常温用失火リファレンスと低温用失火リファレンスとの値を異ならせている。具体的には、エンジン回転数N1を超えると、エンジン回転数の増加に応じた失火リファレンスの上昇量を、常温用失火リファレンスよりも低温用失火リファレンスのほうを大きくしている。こうしているのは、低外気温の状況下において高回転域になると、各気筒に導入される吸気量のばらつきに起因するクランク角の変動が大きくなるからである(換言すると、低外気温の状況下でも低回転域ではクランク角の変動が小さくなる)。したがって、本実施形態では、このような低外気温の状況下での高回転域において発生する比較的大きなクランク角の変動を失火と誤判定することを抑制すべく、エンジン回転数N1を超える領域において、常温用失火リファレンスよりも低温用失火リファレンスを大きくしている。
【0049】
図6(b)は、上記したエンジン回転数N1を超える同一のエンジン回転数で見たときの、エンジン負荷(横軸)と失火リファレンス(縦軸)との関係を示すグラフである。
図6(b)において、実線のグラフG41は常温用失火リファレンスを示し、破線のグラフG42は低温用失火リファレンスを示している。
図6(b)に示すように、基本的には、常温用失火リファレンス及び低温用失火リファレンスの両方とも、同一のエンジン回転数で見たときにエンジン負荷が高くなるほど大きな値になっている。特に、本実施形態では、エンジン回転数N1を超える高回転域では、エンジン負荷のほぼ全域に渡って、常温用失火リファレンスよりも低温用失火リファレンスを大きくしている。これは、上記したように低外気温の状況下での高回転域においてはクランク角の変動が大きくなるため、このクランク角の変動を失火と誤判定することを確実に抑制するようにしたものである。
【0050】
なお、
図6(b)に示していないエンジン回転数N1を下回る領域では、エンジン負荷と失火リファレンスとの関係は常温用失火リファレンスと低温用失火リファレンスとで同じである(つまりエンジン負荷に応じて同じ値が設定される)。また、エンジン回転数N1を下回る領域でも、基本的には、常温用失火リファレンス及び低温用失火リファレンスの両方とも、エンジン負荷が高くなるほど大きな値に設定されるようになっている。
また、
図6(a)及び(b)に示した常温用失火リファレンスは、実験やシミュレーションなどにより、常温(例えば25℃)において、失火の発生時及び未発生時のそれぞれにおけるクランク角加速度変動を、種々のエンジン回転数及びエンジン負荷について計測することで求められる。同様に、低温用失火リファレンスは、実験やシミュレーションなどにより、低温(例えば氷点下の温度)において、失火の発生時及び未発生時のそれぞれにおけるクランク角加速度変動を、種々のエンジン回転数及びエンジン負荷について計測することで求められる。
【0051】
図7は、外気温(横軸)とリファレンス配分(縦軸)との関係を示すグラフである。リファレンス配分は、常温用失火リファレンスに対する低温用失火リファレンスの比率を示している。例えば、リファレンス配分が「1」である場合には、低温用失火リファレンスの配分が「1」で、常温用失火リファレンスの配分が「0」であり、この場合には最終的に適用する失火判定閾値が低温用失火リファレンスとなる。他方で、リファレンス配分が「0」である場合には、低温用失火リファレンスの配分が「0」で、常温用失火リファレンスの配分が「1」であり、この場合には最終的に適用する失火判定閾値が常温用失火リファレンスとなる。
【0052】
図7に示すように、リファレンス配分は、外気温が低い場合(例えば0℃未満)には外気温が高い場合(例えば20℃以上)よりも大きくなっている。具体的には、リファレンス配分は外気温が所定範囲R3(例えば0℃から20℃までの範囲)を下回る領域では「1」に設定され、外気温が所定範囲R3を上回る領域では「0」に設定され、外気温が所定範囲R3内にある場合には、外気温の大きさに応じた「0」と「1」との間の値に設定されるようになっている。つまり、外気温が所定範囲R2内にある場合には、外気温に応じて「0」と「1」との間でリファレンス配分が変化するようになっている。
【0053】
なお、このようなリファレンス配分を規定する外気温の領域は、
図4に示した失火判定閾値を規定する外気温の領域に対応するものである。因みに、
図4は、エンジン回転数N1を超える所定のエンジン回転数及び所定のエンジン負荷に応じて設定された常温用失火リファレンス及び低温用失火リファレンスより求められた、外気温と失火判定閾値との関係の一例を示したものである。
【0054】
次に、
図5に戻って、ステップS105の説明を再開する。ステップS105では、PCM60は、現在のエンジン回転数及びエンジン負荷に対応する常温用失火リファレンス及び低温用失火リファレンスをそれぞれ決定すると共に(
図6参照)、現在の外気温に対応するリファレンス配分を決定する(
図7参照)。この場合、PCM60は、温度センサ45によって検出された吸気温に基づき推定した外気温、若しくは、外気温センサを車両に設けて、この外気温センサによって検出された外気温を用いて、リファレンス配分を決定する。なお、外気温の代わりに吸気温に基づいてリファレンス配分を規定してもよい。その場合には、温度センサ45によって検出された吸気温に基づきリファレンス配分を決定すればよい。
【0055】
次いで、ステップS106では、PCM60は、ステップS105で設定した常温用失火リファレンス、低温用失火リファレンス及びリファレンス配分に基づいて、失火判定閾値を設定する。具体的には、PCM60は、リファレンス配分に応じて常温用失火リファレンス及び低温用失火リファレンスを加算することで失火判定閾値を求める。
【0056】
次いで、ステップS107では、PCM60は、クランク角センサ46によって検出されたクランク角に基づき、クランク角加速度変動(絶対値)を算出する。具体的には、PCM60は、クランク角センサ46によって計測した周期からクランク角加速度を繰り返し求めてサンプリングし、サンプリングしたクランク角加速度をフィルタ処理(ハイパスフィルタなど)してから、所定時間におけるクランク角加速度の変化量をクランク角加速度変動として求める。
【0057】
次いで、ステップS108では、PCM60は、ステップS107で求めたクランク角加速度変動がステップS106で設定した失火判定閾値以上であるか否かを判定する。当該判定は、失火による大きな減速度に対応するクランク角の変動が発生したか否かを判定していることに相当する。
【0058】
クランク角加速度変動が失火判定閾値以上である場合(ステップS108:Yes)、PCM60は、ステップS109に進み、エンジン10の失火が発生したと判定する。この場合、PCM60は、複数の気筒のうちで失火が発生した気筒も特定する。一方で、クランク角加速度変動が失火判定閾値未満である場合(ステップS108:No)、PCM60は、失火判定処理のフローを抜ける。この場合には、PCM60は、エンジン10の失火が発生していないと判定する。
【0059】
ステップS109の後、ステップS110に進み、PCM60は、エンジン10の失火に関連する異常を報知するための警告灯を点灯させる条件(警告灯点灯条件)が成立したか否かを判定する。具体的には、PCM60は、触媒装置35を保護するために点灯させる警告灯(以下では「触媒警告灯」と呼ぶ。)と、エミッションの悪化を報知するために点灯させる警告灯(以下では「エミッション警告灯」と呼ぶ。)のそれぞれについて、警告灯点灯条件が成立したか否かを判定する。触媒警告灯についての警告灯点灯条件は、エンジン10の回転回数(燃焼回数に相当する)が第1所定値に達したときに、それまでに失火が発生した回数が第2所定値以上であるという条件である。この第2所定値は、エンジン回転数や吸入空気量に応じて変化させるのがよい。他方で、エミッション警告灯についての警告灯点灯条件は、エンジン10の回転回数(燃焼回数に相当する)が第3所定値(>第1所定値)に達したときに、それまでに失火が発生した回数が第4所定値以上であるという条件である。
【0060】
ステップS110の判定の結果、触媒警告灯についての警告灯点灯条件、又はエミッション警告灯についての警告灯点灯条件が成立したと判定された場合(ステップS110:Yes)、ステップS111に進み、PCM60は、触媒警告灯又はエミッション警告灯を点灯させる。一方で、触媒警告灯についての警告灯点灯条件、又はエミッション警告灯についての警告灯点灯条件が成立したと判定されなかった場合(ステップS110:No)、PCM60は、失火判定処理のフローを抜ける。この場合には、PCM60は、触媒警告灯及びエミッション警告灯を点灯させない。
【0061】
<作用効果>
次に、本発明の実施形態によるエンジンの失火判定装置の作用効果について説明する。
【0062】
本実施形態によれば、吸気温又は外気温に応じた吸気密度を考慮して失火判定閾値を設定して、この失火判定閾値を用いて失火判定を行うので、吸気密度が高いために各気筒に導入される吸気量のばらつきが大きくなることで発生するクランク角の変動を、エンジン10の失火によるものと誤判定してしまうことを抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、吸気密度が低い場合における失火判定の精度を確保しつつ、吸気密度が高い場合における失火の誤判定を適切に抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、エンジン回転数N1を超える高回転域において低温用失火リファレンスを大きくして、最終的に適用される失火判定閾値を大きくするようにしているので、低温の状況下で高回転域においてクランク角の変動が大きくなるという特性を適切に考慮に入れて、失火判定閾値を設定することができる。これにより、失火の誤判定を効果的に抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態では、
図4に示したように、外気温が所定範囲R2を下回る領域では失火判定閾値A1に設定し、外気温が所定範囲R2を上回る領域ではA1よりも小さな失火判定閾値A2に設定するので、外気温が高い場合(つまり吸気密度が低い場合)における失火判定の精度を確保しつつ、外気温が低い場合(つまり吸気密度が高い場合)における失火の誤判定を抑制することができる。また、外気温が所定範囲R2内にある場合には外気温に応じてA1とA2との間の値に失火判定閾値を設定するので、この温度範囲においては、温度センサ45の応答性を加味して、外気温に応じて失火判定閾値を適切に変化させることができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、クランク角加速度変動に基づいて失火判定を行うので、クランク角速度の変動やクランク角加速度の大きさに基づいて失火判定を行う場合と比較して、失火によるクランク角の変動を適切に捉えることができ、失火判定の精度を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、エンジン10が失火していると判定された場合に警告灯を点灯させるので、失火に関連する異常をドライバに適切に報知することができる。
【0067】
<変形例>
上記した実施形態では、クランク角加速度変動に基づいて失火判定を行っていたが、他の例では、クランク角自体の変動、クランク角速度の変動、若しくはクランク角加速度の大きさに基づいて、失火判定を行ってもよい。
【0068】
上記した実施形態では、本発明をガソリンエンジンに適用した例を示したが、本発明はディーゼルエンジンに適用してもよい。また、上記した実施形態では、本発明を過給機付きエンジンに適用した例を示したが、本発明は過給機付きエンジンへの適用に限定はされない。