(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したような燃料電池スタックは、発電に伴って水が生成されることとなり、積層方向に形成した流体連通孔のうちの排出用の流体連通孔(マニホールド)が、生成水の排出経路としても用いられる。
【0005】
その一方、この種の燃料電池スタックでは、多数枚の単セルを積層すると単セル同士の間でずれが生じやすいので、所定枚数の単セルを積層して一体化することで複数のセルモジュールを構成し、このセルモジュールと、セルモジュール間のシール性を維持するためのシールプレートとを交互に積層した構造にすることで、積層状態の維持や単セルの交換性を図ることが行われている。
【0006】
ところが、上記のようにセルモジュールとシールプレートとを積層した燃料電池スタックでは、とくに、シールプレートの介在部分において、マニホールドの内周面に凹凸が生じ、マニホールドの内部に生成水が滞留し易いという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0007】
なお、マニホールドにおける生成水の滞留を防止するには、例えば、マニホールドの内周面全体を絶縁部材で被覆することも考えられるが、この場合には、製造コストが嵩むほか、温度や絶縁部材の圧縮条件などにより流路面積が変化し、流路の圧力損失や各単セルへの流体の分配に悪影響を与える恐れがある。
【0008】
本発明は、上記従来の状況の課題に着目して成されたもので、セルモジュールとシールプレートとを備えると共に、積層方向に反応用ガス流通用のマニホールドを有する燃料電池スタックであって、反応用ガスの流通性の低下や製造コストの増加を招くことなく、マニホールドを通して生成水を良好に排出することができる燃料電池スタックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係わる燃料電池スタックは、複数の単セルを積層して一体化した複数のセルモジュールと、セルモジュール同士の間に介装されるシールプレートと、セルモジュール及びシールプレートを積層方向に貫通して反応用ガスを流通させるマニホールドとを備えている。そして、燃料電池スタックは、シールプレートが、セルモジュールとの間でマニホールドの周囲をシールするシール部材を備えると共に、シール部材が、マニホールド側に延出してマニホールドの内周面と同一平面状を成す端面を有する延長部を備えている構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係わる燃料電池スタックは、セルモジュールとシールプレートとを備えると共に、積層方向に反応用ガス流通用のマニホールドを有する燃料電池スタックにおいて、とくに、シールプレートの介在部分におけるマニホールドの内周面の凹凸が解消され、反応用ガスの流通性の低下や製造コストの増加を招くことなく、マニホールドを通して生成水を良好に排出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〈第1実施形態〉
図1〜
図4は、本発明に係わる燃料電池スタックの第1実施形態を説明する図である。
図1に示す燃料電池スタックFSは、複数の単セルCを積層して一体化した複数のセルモジュールMと、セルモジュールM間に介装されるシールプレートPとを備えている。
図1には、2つのセルモジュールMと、1つのシールプレートPを示しているが、実際には、それ以上の数のセルモジュールM及びシールプレートPを積層する。
【0013】
図示の燃料電池スタックFSは、
図1(B)に示すように、セルモジュールM及びシールプレートPから成る積層体に対し、積層方向の一端部(図中で右側端部)に、集電板やスペーサを介してエンドプレート56Aが設けてあると共に、他端部に、同じく集電板やスペーサを介してエンドプレート56Bが設けてある。また、燃料電池スタックFSは、積層体に対し、単セルCの長辺側となる両面(図中で上下面)に、締結板57A,57Bが設けてあると共に、短辺側となる両面に、補強板58A,58Bが設けてある。
【0014】
そして、燃料電池スタックFSは、各締結板57A,57B及び補強板58A,58BをボルトBにより両エンドプレート56A,56Bに連結する。このようにして、燃料電池スタックFSは、
図1(A)に示すようなケース一体型構造となり、積層体をその積層方向に拘束・加圧して個々の単セルC及びシールプレートPに所定の接触面圧を加え、ガスシール性や導電性等を良好に維持する。
【0015】
単セルCは、
図2に示すように、周囲にフレーム51を有する膜電極接合体1と、フレーム51及び膜電極接合体1を挟持する一対のセパレータ2A,2Bとを備え、フレーム51及び膜電極接合体1と夫々のセパレータ2A,2Bとの間に、アノード及びカソードのガス流路を夫々形成する。
【0016】
膜電極接合体1は、一般に、MEA(Membrane Electrode Assembly)と呼ばれるものであって、詳細な図示を省略したが、固体高分子から成る電解質層をカソード電極層とアノード電極層とで挟持した周知の構造を有するものである。
【0017】
フレーム51は、樹脂成形(例えば射出成形)により膜電極接合体1と一体化してあり、この実施形態では、膜電極接合体1を中央にして長方形状を成している。また、フレーム51は、短辺両側に、各々三個ずつの反応用ガス流通用の流通穴H1〜H3,H4〜H6が配列してある。
【0018】
各セパレータ2A,
2Bは、フレーム
51とほぼ同等の縦横寸法を有する長方形状の金属製板部材であって、例えばステンレス製であり、プレス加工により適宜の表裏反転形状に成形してある。図示例のセパレータ2A,2Bは、少なくとも膜電極接合体1に対応する中央部分が断面凹凸形状に形成してある。
【0019】
両セパレータ2A,2Bは、断面凹凸形状を長辺方向に連続的に有しており、膜電極接合体1に波形凸部を接触させると共に、波形凹部により、膜電極接合体1との間にアノード及びカソードのガス流路を形成する。また、各セパレータ2A,2Bは、短辺両側に、フレーム51の各流通穴H1〜H6と同等の流通穴H1〜H6が形成してある。
【0020】
上記のフレーム51及び膜電極接合体1と両セパレータ2A,2Bは、重ね合わせて単セルCを形成し、この単セルCを所定枚数積層して先のセルモジュールMを構成する。このとき、セルモジュールMは、各単セルCにおいて、フレーム51及び各セパレータ2A,2Bの流通穴H1〜H6同士が互いに連続する。また、単セルC同士の間には、後記するシール部材を設けて冷却用液体の流路を形成する。
【0021】
シールプレートPは、
図2(A)に示すように、導電性の一枚の金属板を成形したものであり、単セルCとほぼ同じ縦横寸法を有する長方形状に形成してあって、隣接するセルモジュールMとの間に、後記するシール部材を設けて冷却用液体の流路を形成する。また、シールプレートPは、短辺両側に、単セルCと同様の流通穴H1〜H3,H4〜H6が形成してある。
【0022】
上記の単セルC及びシールプレートPは、互いに積層した状態において、夫々の流通穴H1〜H6が互いに連通し、
図2(B)に示すように、積層方向に連続したマニホールドM1〜M6を形成する。一例として、図中左側である一端側のマニホールドM1〜M3は、上から順に、カソードガス供給用(M1)、冷却用流体供給用(M2)、及びアノードガス排出用(M3)である。
【0023】
また、同単セルCにおいて、図中右側である他端側のマニホールドM4〜M6は、上から順に、アノードガス供給用(M4)、冷却用流体排出用(M5)、及びカソードガス供給用(M6)である。なお、アノードガスは、水素含有ガスである。カソードガスは、酸素含有ガスであって、例えば空気である。冷却用流体は、例えば水である。
【0024】
膜電極接合体1のフレームと各セパレータ
2A,2Bの縁部同士の間や、各々の流通穴H1〜H6の周囲には、シール部材S1,S2が設けてある。このシール部材S1,S2には、部材同士の接合後にシール性を発揮する接着剤を用いることができる。流通穴H1〜H6の周囲のシール部材S2は、各層間に応じた流体を流通させるために、
図2に示すように該当する箇所に配置せず、若しくは一部に開口部(不連続部)を有するシール部材(S2)を配置する。
【0025】
シールプレートPは、その縁部及び流通穴H1〜H6の周囲に、隣接するセルモジュールMとの間を封止するシール部材S3,S4を備えている。シールプレートPは、先述したように、セルモジュールMとの間に冷却用流体の流路を形成するので、
図3にも示すように、冷却用流体の流通穴H2(H5)の周囲にはシール部材(S4)を配置せず、若しくは一部に開口部を有するシール部材(S4)を配置する。
【0026】
上記の単セルC及びシールプレートPを積層して成る燃料電池スタックFSは、とくに、反応用ガス排出用のマニホールドM3,M6の内周面の少なくとも一部が、単セルCの積層方向に連続した平面状に形成されている。より具体的には、燃料電池スタックFSは、フレーム51、セパレータ2A,2B及びシールプレートPである積層部材の端面(流通穴H3,H6の内周面)により、マニホールドM3,M6の内周面の少なくとも一部が、単セルCの積層方向に連続した平面状に形成されている。つまり、マニホールドM3,M6の内周面の少なくとも一部において、積層部材(51,2A,2B,P)の端面が同一平面状に連続した状態になっている。
【0027】
また、この実施形態における燃料電池スタックFSは、
図1(A)に示すように、単セルCの長辺が水平になる姿勢で設置される。この場合、マニホールドM3,M6の内周面において平面状に形成される部分は、重力方向において少なくとも下側の部分である。なお、平面状に形成される部分は、下側の部分に加えて、それ以外の部分を含めても良いし、さらに、排出用のマニホールドM3,M6に加えて、供給用のマニホールドM1,M4の内周面に形成しても良い。
【0028】
図4は、
図3中のX−X線に基づく斜視断面図であり、アノードガス排出用のマニホールドM3の部分を示している。なお、
図4(A)では、マニホールドM3内のガスの流通方向が矢印で示す下方向であるが、先述したように、燃焼電池スタックFSの姿勢が
図1に示すものである場合、ガスの流通方向は水平方向である。
【0029】
この実施形態では、
図4(B)に拡大した断面を示すように、各単セルCのフレーム51及びセパレータ2A,2B、並びにシールプレートPが、夫々の流通穴H3の内周部に、平坦形成面F1,F2,F3,F4を有している。そして、各々の平坦形成面F1〜F4同士を互いに同一平面状に連続させることにより、マニホールドM3の内周面の少なくとも一部を、単セルCの積層方向に連続した平面状に形成している。
【0030】
より具体的には、フレーム51は、流通穴H3の内周部に、カソード側(
図4中で下側)の面に突出するリブ21を一体的に有しており、このリブ21を含む流通穴H3の内周面を平坦形成面F1としている。ここで、単セルCにおける流通穴H1〜H6の周囲のシール部材S1は、リブ21の先端面とカソード側セパレータ2Bとの間に設けられる。この場合、先述したカソードガスの流通させるための開放部は、リブ21の一部を除去して設けることができる。また、セパレータ2A,2Bは、夫々の流通穴H3の内周面を平坦形成面F2,F3としている。
【0031】
シールプレートPは、
図3及び
図4に示すように、先述したように、セルモジュールMとの間でマニホールドM3の周囲をシールするシール部材S4を備えている。そして、シールプレートPは、シール部材S4に、マニホールドM3側に延出してマニホールドM3の内周面と同一平面状を成す端面を有する延長部Eを備えている。つまり、シールプレートPは、延長部Eの端面が、マニホールドM3の内周面と同一平面状に連続する前記平坦形成面F4であり、
図3に示すように重力方向の下側に延長部Eが設けてある。
【0032】
このようにして、燃料電池スタックFSは、マニホールドM3の内周面の少なくとも一部が、シール部材S4の延長部Eの端面(平坦形成面F4)を含み且つ単セルCの積層方向に連続した平面状に形成されている。なお、
図4には、アノードガス排出用のマニホールドM3を例示したが、それ以外の反応用ガスのマニホールドM1,M4,M6に同様の構成を採用することも当然可能である。
【0033】
上記構成を備えた燃料電池スタックFSは、各単セルCにおいて、膜電極接合体1のアノード電極層及びカソード電極層にアノードガス及びカソードガスを夫々供給することにより、電気化学反応により発電をし、この際、発電に伴って水が生成される。この生成水は、主に反応用ガス排出用のマニホールドM3,M6を通して排出される。
【0034】
これに対して、燃料電池スタックFSは、シールプレートPのシール部材S4が、マニホールドM3,M6の内周面と同一平面状を成す端面(F4)を有する延長部Eを備えているので、とくに、シールプレートPの介在部分におけるマニホールドM3,M6の内周面の凹凸が解消される。これにより、燃料電池スタックFSは、マニホールドM3,M6の内周面全体を被覆するような特別な部材が不要であり、反応用ガスの流通性の低下や製造コストの増加を招くことなく、マニホールドを通して生成水を良好に排出することができる。
【0035】
また、燃料電池スタックFSは、シール部材S4の延長部Eが、マニホールドM3,M6の内周面のうちの少なくとも重力方向の下側に設けてあるので、生成水をより円滑に且つ速やかに排出することができる。
【0036】
さらに、燃料電池スタックFSは、各単セルCのフレーム51及びセパレータ2A,2Bが、夫々の流通穴H3の内周部に、平坦形成面F1〜F3を有し、マニホールドM3.M6の内周面の少なくとも一部が、シール部材S4の延長部Eの端面(平坦形成面F4)を含み且つ単セルCの積層方向に連続した平面状に形成されている。これにより、燃料電池スタックFSは、生成水をより円滑に排出することができ、マニホールドM3の内周面にフレーム51、セパレータ2A,2B及びシールプレートPである積層部材の端面(F1〜F4)が露出していても、排水性が良好であるから、生成水による部材の腐食を防止することができる。
【0037】
〈第2実施形態〉
図5は、本発明に係る燃料電池の第2実施形態を説明する図であって、
図4と同様に、
図3中のX−X線に基づく斜視断面図及び拡大断面図である。つまり、
図5は、アノードガス排出用のマニホールドM3の部分を示している。なお、第1実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
図5に示す燃料電池スタックFSは、各単セルCのフレーム51が、夫々の流通穴H3の内周部(縁部)に、当該フレーム51の少なくとも一方側の面に突出してセパレータ2A,2Bの流通穴H3の内周面を被覆するリブ21と、リブ21の側面を含む平坦形成面F1とを有している。図示例のフレーム51は、カソード側(
図5中で下側)の面に突出するリブ21を一体的に有している。
【0039】
また、シールプレートPは、シール部材S4の延長部Eの先端に、積層方向の両側に突出してセルモジュールM,Mに圧接するリブ22,22を有しており、このリブ22,22の側面を含む平坦形成面F4を有している。したがって、この実施形態の燃料電池スタックFSは、フレーム51及びシールプレートPの平坦形成面F1,F4により、マニホールドM3の内周面が積層方向に連続した平面状に形成されている。
【0040】
上記構成を備えた燃料電池スタックFSは、先の実施形態と同様に、反応用ガスの流通性の低下や、製造コストの増加を招くことなく、マニホールドM3を通して生成水を良好に排出することができる。
【0041】
しかも、燃料電池スタックFSは、セルモジュールM,MとシールプレートPとを積層した際、セルモジュールM,M間で延長部Eのリブ22,22が圧縮された状態になる。これにより、燃料電池スタックFSは、セルモジュールM,MとシールプレートPとの間に良好なシール面圧を確保することができ、層間への生成水の浸入をより確実に阻止することができる。
【0042】
また、燃料電池スタックFSは、樹脂製のフレーム51に設けたリブ21により金属製のセパレータ2A,2Bの流通穴H3の内周面を被覆しているので、延長部Eのリブ22,22によるシール性向上と相俟って、セパレータ2A,2Bに対する充分な防水機能を得ることができる。
【0043】
本発明に係わる燃料電池スタックは、その構成が上記各実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の細部を適宜変更したり、上記各実施形態の構成を適宜組み合わせたりすることが可能である。