特許第6395134号(P6395134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6395134
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】光導波路装置の製造方法及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/13 20060101AFI20180913BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20180913BHJP
   G02B 6/43 20060101ALI20180913BHJP
   B23K 26/351 20140101ALI20180913BHJP
   B23K 26/066 20140101ALI20180913BHJP
【FI】
   G02B6/13
   G02B6/12 301
   G02B6/43
   B23K26/351
   B23K26/066
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-264324(P2014-264324)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-126039(P2016-126039A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180459
【弁理士】
【氏名又は名称】二階堂 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100091672
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 啓三
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 賢司
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−087724(JP,A)
【文献】 特開2005−284248(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0074207(US,A1)
【文献】 特開2000−114581(JP,A)
【文献】 特開2001−305367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12−6/14
6/26−6/27
6/30−6/34
6/42−6/43
G02F 1/00−1/125
1/21−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に、複数の光路を備えた光導波路を形成する工程と、
傾斜反射面を備えたミラー部品と、前記ミラー部品の傾斜反射面の上に複数の開口部が設けられたマスクとを備えた反射機構を、前記光導波路の上に配置する工程と、
レーザを前記反射機構のマスクの複数の開口部を通して前記ミラー部品に照射し、前記ミラー部品で反射し、前記光路の表面に対して斜めに入射するレーザにより、前記複数の光路に光路変換傾斜面を同時に形成する工程と
を有することを特徴とする光導波路装置の製造方法。
【請求項2】
前記ミラー部品は、石英ガラスから形成されることを特徴とする請求項1に記載の光導波路装置の製造方法。
【請求項3】
前記ミラー部品は、前記反射傾斜面を備えた柱状部材を横置きに設置した部品であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光導波路装置の製造方法。
【請求項4】
前記光路変換傾斜面は、前記光路の長手方向の外側から内側に向けて傾斜しており、前記光路変換傾斜面の空気界面が光路変換ミラーとして機能することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に光導波路装置の製造方法。
【請求項5】
前記複数の光路に光路変換傾斜面を形成する工程の後に、前記光路変換傾斜面に光結合される光素子を搭載する工程を有することを特徴とする請求項4に記載の光導波路装置の製造方法。
【請求項6】
ステージと、
前記ステージの上方に配置されたレーザ出射部と、
前記ステージと前記レーザ出射部との間に配置され、傾斜反射面を備えたミラー部品と、前記ミラー部品の傾斜反射面の上に複数の開口部が設けられたマスクとを備えた反射機構とを有することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
前記ステージの上に複数の光路を備えた光導波路が載置され、
レーザを前記反射機構のマスクの複数の開口部を通して前記ミラー部品に照射し、前記ミラー部品で反射し、前記光路の表面に対して斜めに入射するレーザにより、前記複数の光路に光路変換傾斜面を同時に形成することを特徴とする請求項6に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記ミラー部品は、石英ガラスから形成されることを特徴とする請求項6又は7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記ミラー部品は、前記反射傾斜面を備えた柱状部材を横置きに設置した部品であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記ミラー部品は、支持基板に固定され、前記マスクは前記支持基板に接続された側板によって支持されていることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路装置の製造方法及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気信号を扱う配線基板の上に光信号を扱う光導波路が形成された光導波路装置がある。光導波路装置は光電気複合基板であり、電気信号の伝達速度の限界を補うために、高速部分を光信号で伝達することができる。
【0003】
光導波路の端側には光路変換ミラーが配置されており、光素子が光導波路の光路変換ミラーに光結合されるように配線基板に実装される。
【0004】
光導波路の製造方法の一例では、まず、基板上に、下部クラッド層、コア層及び上部クラッド層を順次形成する。その後に、レーザにより上部クラッド層及びコア層を加工することにより、光伝播方向に対して好適には45°の角度の傾斜面を備えた凹部を形成する。
【0005】
そして、凹部内の傾斜面の空気界面においてコア層を伝播する光を垂直方向に反射させて光路を変換させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−3539号公報
【特許文献2】特開2000−117465号公報
【特許文献3】特開2012−13819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したようにレーザにより光導波路に傾斜面を備えた凹部を形成するには、レーザ加工装置において、レーザの光軸を斜めに設定するか、あるいは光導波路を斜めに配置する必要がある。このため、特別仕様のレーザ加工装置が必要となり、コスト上昇を招く課題がある。
【0008】
さらに、一回のレーザ照射で一つの傾斜面を備えた凹部を順次形成していくため、光導波路の多数のコア層に傾斜面を形成するには加工時間がかなり長くなり、生産効率が悪い課題がある。
【0009】
傾斜面の空気界面が光路変換ミラーとして機能する光導波路装置の製造方法及びそれに使用されるレーザ加工装置において、光路変換用の傾斜面をレーザによって低コストで生産効率よく形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の開示の一観点によれば、基板の上に、複数の光路を備えた光導波路を形成する工程と、傾斜反射面を備えたミラー部品と、前記ミラー部品の傾斜反射面の上に複数の開口部が設けられたマスクとを備えた反射機構を、前記光導波路の上に配置する工程と、レーザを前記反射機構のマスクの複数の開口部を通して前記ミラー部品に照射し、前記ミラー部品で反射し、前記光路の表面に対して斜めに入射するレーザにより、前記複数の光路に光路変換傾斜面を同時に形成する工程とを有する光導波路装置の製造方法が提供される。
【0011】
また、その開示の他の観点によれば、ステージと、前記ステージの上方に配置されたレーザ出射部と、前記ステージと前記レーザ出射部との間に配置され、傾斜反射面を備えたミラー部品と、前記ミラー部品の傾斜反射面の上に複数の開口部が設けられたマスクとを備えた反射機構とを有することを特徴とするレーザ加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
以下の開示によれば、光導波路装置の製造方法では、まず、複数の光路を備えた光導波路の上に反射機構が配置される。反射機構は、傾斜反射面を備えたミラー部品と、ミラー部品の上に複数の開口部が設けられたマスクとを備えている。
【0013】
次いで、レーザをマスクの複数の開口部からミラー部品に照射する。これにより、ミラー部品で反射して傾いたレーザにより光導波路の複数の光路に光路変換傾斜面が同時に形成される。
【0014】
このようにすることにより、レーザ加工装置のレーザの光軸を傾けたり、レーザ加工装置に光導波路を傾けて配置する必要がなく、簡易な構造の反射機構を配置することで、光導波路の各光路に光路変換傾斜面を形成することができる。このため、特別仕様のレーザ加工装置を導入する必要がなく、設備投資を抑えることができるため、低コスト化を図ることができる。
【0015】
また、マスクの複数の開口部にレーザを一括して照射するため、複数の光路に光路変換傾斜面を同時に形成することができ、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)及び(b)は実施形態の光導波路装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図2図2は実施形態の光導波路装置の製造方法を示す断面図及び平面図(その2)である。
図3図3は実施形態の光導波路装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図4図4は実施形態のレーザ加工装置の構成を模式的に示す断面図である。
図5図5図4のレーザ加工装置の反射機構を上側からみた平面図である。
図6図6は光導波路の上に図5の反射機構が配置された様子を示す平面図である。
図7図7は実施形態の光導波路装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図8図8は実施形態の光導波路装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
図9図9は実施形態の光導波路装置の製造方法を示す平面図及び断面図(その6)である。
図10図10は実施形態の光導波路装置の製造方法を示す断面図及び平面図(その7)である。
図11図11は実施形態の光導波路装置を示す断面図である。
図12図12図11の光導波路装置に発光素子及び受光素子が実装された様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0018】
図1図10は実施形態の光導波路装置の製造方法を説明するための図、図11及び図12は第1実施形態の光導波路装置を説明するための図である。
【0019】
実施形態の光導波路装置の製造方法では、図1(a)に示すように、まず、電気信号を扱う配線基板10を用意する。配線基板10では、絶縁基板12の両面に配線層20がそれぞれ形成されている。絶縁基板12には厚み方向に貫通するスルーホールTHが設けられており、スルーホールTH内に貫通導体TCが充填されている。両面側の配線層20は貫通導体TCを介して相互接続されている。
【0020】
絶縁基板12の下面側に、配線層20の接続部上に開口部が設けられたソルダレジスト層(不図示)が形成されていてもよい。
【0021】
絶縁基板12は、ガラスエポキシ樹脂などの絶縁樹脂から形成され、配線層20は銅から形成される。絶縁基板12の両面側において、配線層20の積層数は任意に設定することができる。
【0022】
次いで、図1(b)に示すように、配線基板10の上に第1クラッド層を得るための感光性樹脂層(不図示)を形成し、フォトリソグラフィに基づいて露光/現像を行う。
【0023】
さらに、感光性樹脂層を100℃〜140℃程度の加熱処理によって硬化させることにより、所望の領域に第1クラッド層30を形成する。
【0024】
感光性樹脂層としては、UV硬化型エポキシ樹脂などが好適に使用される。感光性樹脂層の形成方法としては、半硬化状態(B−ステージ)の感光性樹脂シートを貼付してもよいし、あるいは、液状の感光性樹脂を塗布してもよい。
【0025】
後述するコア層及び第2クラッド層を形成する工程においても同様な樹脂が好適に使用される。
【0026】
第1クラッド層30をパターン化して形成する必要がない場合は、非感光性樹脂を使用して配線基板10上の全面に第1クラッド層30を形成してもよい。
【0027】
続いて、図2に示すように、第1クラッド層30の上にコア層を得るための感光性樹脂層(不図示)を形成する。さらに、フォトリソグラフィに基づいて露光/現像を行った後に、感光性樹脂層を100〜140℃程度の加熱処理によって硬化させる。これにより、第1クラッド層30の上にコア層32が帯状パターンとして形成される。
【0028】
図2の平面図に示すように、第1クラッド層30の上に、横方向に延在する複数の帯状のコア層32が縦方向に並んで配置される。コア層32はその屈折率が第1クラッド層30及び後述する第2クラッド層の屈折率よりも高くなるように設定される。例えば、コア層32の厚みは30〜50μm程度であり、コア層32の配置ピッチは250μm程度である。
【0029】
次いで、図3に示すように、第1クラッド層30及びコア層32の上に、第2クラッド層を得るための感光性樹脂層(不図示)を形成する。さらに、フォトリソグラフィに基づいて露光/現像を行った後に、感光性樹脂層を100〜140℃程度の加熱処理によって硬化させる。
【0030】
これにより、コア層32を被覆する第2クラッド層34が第1クラッド層30の上に形成される。
【0031】
このようにして、図3の上側の断面図のI−I方向の断面図を加えて参照すると、絶縁基板12の上に、コア層32が第1クラッド層30と第2クラッド層34とで囲まれた光導波路5が形成される。光導波路5の一本のコア層32を含むラインが一つの光路Lとして形成される。
【0032】
以上により、配線基板10の上に複数の光路Lを備えた光導波路5を形成する。
【0033】
次いで、図4に示すように、実施形態のレーザ加工装置6を用意する。レーザ加工装置6は、上記した図3の光導波路5の各光路Lに光路変換傾斜面を有する凹部を形成するために使用される。
【0034】
レーザ加工装置6は、ワーク7を載置するためのステージ40を備えている。また、レーザ加工装置6は、ステージ40の上方にワーク7にレーザを照射するためのレーザ出射部42を備えている。さらに、レーザ加工装置6は、ステージ40と、レーザ出射部42との間の領域に配置された反射機構50を備えている。
【0035】
特に図示しないが、レーザ出射部42は、レーザ発信機及び投影光学系などを有し、ヘッドからレーザが出射される。レーザとしては、KrFエキシマレーザ(波長λ=248nm)が使用され、ワーク7の一定の面積を加工できる面発光レーザが採用される。
【0036】
このようにして、レーザ加工装置6のレーザ出射部42から一定の発光面積でレーザが出射される。例えば、面発光レーザの発光面積は3mm×2.5mmである。
【0037】
また、反射機構50では、支持基板52に複数のミラー部品54が固定されて配置されている。ミラー部品54はレーザを反射させるための傾斜反射面Rを備えている。図4の例では、ミラー部品54は三角柱を横置きに設置した部品が使用される。この例の他に、同様な傾斜反射面Rを備えた各種の柱状部材を横置きに設置した部品をミラー部品としてもよい。
【0038】
また、図4の例では2つのミラー部品54が配置されているが、光素子の発光部又は受光部の配列などに合わせて任意の数で設定してもよい。
【0039】
ミラー部品54の材料としては、好適には、レーザ反射に優れた平滑面を有する石英ガラスが使用される。石英ガラスはレーザで加工されないためレーザを全反射させることができる。
【0040】
あるいは、ミラー部品54を樹脂から形成してもよい。樹脂を使用する場合は、樹脂はレーザで加工されてレーザを全反射させることができないため、樹脂部材の傾斜反射面に金層などの金属ミラーを形成してミラー部品とする。
【0041】
さらに、ミラー部品54の上にマスク56が配置されている、マスク56は、ミラー部品54の延在する傾斜反射面Rの上に並んで設けられた複数の開口部56aを備えている。また、マスク56は支持基板52に接続された側板58によって支持されている。
【0042】
支持基板52、マスク56及び側板58は、ステンレス鋼材(SUS)などの金属から形成され、一体的に形成してもよいし、各部品を連結して組み立ててもよい。
【0043】
図5は、図4の反射機構50のミラー部品54とマスク56の開口部56aとの位置関係を上側からみた部分平面図である。図5では、反射機構50の支持基板52が省略されて描かれている。
【0044】
図5に示すように、内側に配置された第1ミラー部品54aと、外側に配置された第2ミラー部品54bとが平行になって延在している。そして、第1ミラー部品54a及び第2ミラー部品54bの各傾斜反射面Rの上にマスク56の複数の開口部56aが相互に離れた状態で並んで配置されている。
【0045】
第1ミラー部品54aの上に配置されたマスク56の開口部56aと、第2ミラー部品54bの上に配置されたマスク56の開口部56aとは、横方向で重ならないようにずれた位置に配置されている。
【0046】
前述した図4の反射機構50のミラー部品54及びマスク56は、図5の平面図のII―IIに沿った断面に相当する。
【0047】
前述した図3の断面図で示したように、光導波路5では、複数のコア層32が並んで配置されて複数の光路Lが構築されている。図6には、複数のコア層32(光路L)の上に図5の反射機構50が配置された様子が模式的に示されている。図6では、光導波路5のコア層32のみが破線で示されおり、第1、第2クラッド層30,34は省略されている。
【0048】
図6に示すように、複数のコア層32(光路L)の各一端部の上に、内側の第1ミラー部品54a上のマスク56の各開口部56aと、外側の第2ミラー部品54b上のマスク56の各開口部56aとが交互に配置される。
【0049】
図7には、図3の光導波路5の右側の端部に図4のレーザ加工装置6の反射機構50が配置された様子が部分拡大図として示されている。また、光導波路5のコア層32は隣り合う2本のコア層を1本で分離して模式的に示している。
【0050】
図7に示すように、上記した図6で説明したように複数のコア層32の各端部の上にマスク56の開口部56aがそれぞれ位置合わせされて、光導波路5の上に図4の反射機構50が配置される。
【0051】
コア層32を形成する際に、位置合わせマーク(不図示)を同時に形成しておき、第2クラッド層34を形成する際に、位置合わせマーク上の領域を開口して位置合わせマークを露出させておく。
【0052】
そして、位置合わせマークを画像認識することに基づいて、マスク56の開口部56aを光導波路5の各コア層32に位置合わせする。
【0053】
光導波路5の上に反射機構50を配置する際に、反射機構50を粘着剤などで光導波路5に仮固定してもよい。
【0054】
次いで、図8に示すように、前述した図4のレーザ加工装置6のレーザ出射部42からレーザを出射する。このとき、レーザは面発光レーザとして反射機構50の全体に一括して照射される。そして、マスク56の複数の開口部56aを通してレーザが反射機構50のミラー部品54の傾斜反射面Rに到達する。
【0055】
さらに、レーザはミラー部品54の傾斜反射面Rで全反射されて光導波路5の第2クラッド層34の表面に対して斜めになって入射する。これにより、第2クラッド層34、コア層32及び第1クラッド層30がミラー部品54で反射して傾いたレーザによって斜め加工されて、光路変換傾斜面Sを備えた凹部60が形成される。
【0056】
凹部60の光路変換傾斜面Sを光路変換ミラーとして使用するため、光路変換傾斜面Sの傾斜角度θ1が光伝播方向に対して好適には45°に設定されるように調整される。
【0057】
図8の例のようにレーザが中心軸より各7°で内側に傾いてテーパ角度を有する場合は、レーザのミラー部品54での反射角度θ3は(45°−7°)/2=19°となる。よって、ミラー部品54の傾斜反射面Rの傾斜角度θ2を64°に設定すれば、光導波路5の光路変換傾斜面Sの傾斜角度θ1が45°になる。
【0058】
レーザのテーパ角度及びミラー部品54の傾斜反射面Rの傾斜角度θ2を変えることにより、光導波路5に形成される凹部60の光路変換傾斜面Sの傾斜角度を微調整することができる。
【0059】
これにより、図9の平面図に示すように、複数の光路Lの第2クラッド層34、コア層32及び第1クラッド層30がレーザで加工されて、光路変換傾斜面Sを有する凹部60がそれぞれ形成される。図9の部分断面図は、図9の平面図のIII−IIIに沿った断面に相当する。
【0060】
凹部60は、第2クラッド層34の上面からコア層32を貫通して第1クラッド層30の少なくとも厚みの途中まで形成される。凹部60内の光路変換傾斜面Sは、光路Lの外側から内側に向けて傾斜しており、光路変換傾斜面Sの空気界面が光路変換ミラーとして機能する。
【0061】
反射機構50のマスク56の開口部56aの面積を変えることにより、各光路Lに形成する凹部60の開口端の面積を調整することができる。
【0062】
また、図4で説明した反射機構50では、支持基板52はミラー部品54の周りのほとんどの領域が開口されている。この形態の他に、支持基板52に各光路Lに形成する凹部60の開口端と同じ面積の開口部を配置して、支持基板52もマスクとして機能するようにしてもよい。
【0063】
この場合は、反射機構6のマスク56の開口部56aを通してミラー部品54で反射されたレーザが、支持基板52の開口部を通って位置決めされて各光路Lに凹部60が形成される。このように支持基板52にマスクの機能をもたせる場合は、マスク56の開口部56aをミラー部品54の上に細長状に一括で開口してもよい。
【0064】
実施形態のレーザ加工装置40は、垂直方向に出射されるレーザをミラー部品54の傾斜反射面Rで好適には45°に傾斜させるため、レーザ出射部42でレーザの光軸を傾けて設定したり、ステージ40上で光導波路5を傾けて載置する必要がない。
【0065】
簡易な構造の反射機構50を配置することで、光導波路5の各光路Lに光路変換傾斜面Sを有する凹部60を容易に形成することができる。このため、特別仕様のレーザ加工装置を導入する必要はなく、設備投資を抑えることができるため、低コスト化を図ることができる。
【0066】
また、マスク56の複数の開口部56aに面発光レーザで一括してレーザ照射している。このため、光導波路5の複数の光路Lに光路変換傾斜面Sを有する凹部60を同時に形成することができるので、生産効率を向上させることができる。これにより、短手番で歩留りよく、光導波路装置を製造することができる。
【0067】
図10には、図3の光導波路5に各光路Lの両端部に、光路変換傾斜面Sを有する凹部60が形成された様子が示されている。図10の断面図は、図10の平面図のIV―IV沿った断面に相当する。図10の平面図では、光導波路5の光路Lと凹部60のみが描かれており、配線基板10の配線層20などの要素は省略されている。
【0068】
図10に示すように、光導波路5の各光路Lの反対側の端部にも同様な方法により光路変換傾斜面Sを有する凹部60が形成される。導波路5の各光路Lの反対側の端部においても、光路変換傾斜面Sは、光路Lの外側から内側に向けて傾斜して形成され、光路変換傾斜面Sの空気界面が光路変換ミラーとして機能する。
【0069】
また、複数の光路Lの両端部において、光路変換傾斜面Sが外側と内側に交互に形成されて2列の千鳥配列で配置される。これにより、異なる2系統の光路Lを有する光導波路装置を構築することができる。
【0070】
続いて、図11に示すように、コア層32の外側領域の第1クラッド30及び第2クラッド層34をレーザで加工することにより、配線基板10の配線層20の接続部に到達する接続ホールHを形成する。
【0071】
なお、第1クラッド層30及び第2クラッド層34を形成する際に、フォトリソグラフィに基づいて各開口部がそれぞれ重なって連通するようにパターン化して接続ホールHを形成してもよい。
【0072】
以上により、図11に示すように、実施形態の光導波路装置1が得られる。
【0073】
次に、実施形態の光導波路装置1に光素子が接続される形態について説明する。本実施形態では、光素子として、発光素子及び受光素子を搭載する。
【0074】
図12に示すように、まず、光導波路5のコア層32の一端側(左側)の光路変換傾斜面Sに発光素子70が光結合されて搭載される。
【0075】
発光素子70のバンプ電極72が接続ホールH内に配置され、はんだ74によって配線基板10の配線層20の接続部に接続される。発光素子としては、面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)が好適に使用される。
【0076】
発光素子70は下面に複数の発光部(不図示)を備えており、各発光部が光導波路5の各光路変換傾斜面Sに光結合される。
【0077】
また、光導波路5のコア層32の他端側(右側)の光路変換傾斜面Sに受光素子80が光結合されて搭載される。
【0078】
受光素子80のバンプ電極82が接続ホールH内に配置されて、はんだ74によって配線基板10の配線層20の接続部に接続される。受光素子としては、フォトダイオードが好適に使用される
受光素子80は下面に複数の受光部(不図示)を備えており、受光素子80の各受光部が光導波路5の各光路変換傾斜面Sに光結合されている。
【0079】
実施形態の光導波路装置1では、図12の矢印経路で示すように、ドライバ素子(不図示)から出力される電気信号が発光素子70に供給され、発光素子70から下側に光が出射される。
【0080】
発光素子70から出射された光は、第2クラッド層34及びコア層32を透過して光路変換傾斜面Sに到達する。さらに、光路変換傾斜面Sと空間Aとの空気界面で光が反射され、光路が90°変換されてコア層32に入射する。
【0081】
次いで、コア層32に入射した光は、コア層32内で全反射を繰り返して伝播し、他端側の光路変換傾斜面Sに到達する。そして、他端側の光路変換傾斜面Sの空気界面で光が反射されて光路が90°変換され、第1クラッド層30を透過して光が受光素子80に入射される。
【0082】
受光素子80は光信号を電気信号に変換し、アンプ素子(不図示)に電気信号が供給される。
【0083】
他の形態としては、光路Lの外側と内側の光路変換傾斜面Sに2つの発光素子がそれぞれ独立して光結合されるように搭載してもよい、この場合は、反対側の光路Lの外側と内側の光路変換傾斜面に2つの受光素子がそれぞれ独立して光結合されるように搭載される。
【0084】
前述したように、実施形態の光導波路装置1の製造方法では、複数の光路Lに光路変換傾斜面Sを同時に形成できるため、高性能な光素子が搭載される多チャンネルの光導波路を短手番でかつ低コストで製造することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…光導波路装置、5…光導波路、6…レーザ加工装置、7…ワーク、10…配線基板、12…絶縁基板、20…配線層、30…第1クラッド層、32…コア層、34…第2クラッド層、40…ステージ、42…レーザ出射部、50…反射機構、52…支持基板、54…ミラー部品、54a…第1ミラー部品、54b…第2ミラー部品、56…マスク、56a…開口部、56a…第1開口部、56b…第2開口部、58…側板、60…凹部、70…発光素子、72,82…バンプ電極、80…受光素子、A…空間、H…接続ホール、L…光路、R…傾斜反射面、S…光路変換傾斜面、TC…貫通導体、TH…スルーホール。
図1
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図12