(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る疲労軽減ウェアの実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
[実施の形態の基本的概念]
まずは、本実施の形態の基本的概念について説明する。本実施の形態は、概略的に、着用者の筋肉の伸縮をサポートする伸縮手段を備える疲労軽減ウェアに関するものである。ここで、当該疲労軽減ウェアの利用目的は任意であり、例えばスポーツ等にも利用することが可能であるが、本実施の形態においては、建設現場にて作業を行う者(以下、「作業員」と称する)が作業時にアンダーウェアとして着用するものとして説明する。ただし、アンダーウェアとしてではなく、当該疲労軽減ウェアのみを着用して作業を行っても当然構わない。また、作業員としては、鳶工、型枠大工、鉄筋工、ボード工、土工、及左官工を含むものとして説明するが、その他任意の作業員についても適用することが可能である。なお、これらの各作業員が行う具体的な作業の内容については公知であるため、その詳細な説明を省略する。また、「筋肉」とは、筋腹だけでなく、筋腹の両端部と骨とを接続する付根部分(腱)をも含む概念である。
【0019】
[実施の形態の具体的内容]
次に、本実施の形態の具体的内容について説明する。
【0020】
(実施の形態1)
まずは、実施の形態1について説明する。本実施の形態1に係る疲労軽減ウェアは、鳶工、型枠大工、鉄筋工、及びボード工のような、三角筋、僧帽筋、上腕二頭筋、及び橈側手根屈筋等といった腕や肩の筋肉に負担が掛る作業を行う者に特に適したウェアである。
【0021】
(構成)
最初に、本実施の形態1に係る疲労軽減ウェア1の構成を説明する。
図1は、本実施の形態1に係る疲労軽減ウェア1のベース部2の着用者4を概略的に示す図であって、
図1(a)は上半身前面、
図1(b)は下半身前面、
図1(c)は上半身後面、
図1(b)は下半身後面を示す図である。また、
図2は、疲労軽減ウェア1のベース部2及び追加サポート部3の着用者4を概略的に示す図であって、
図2(a)は上半身前面、
図2(b)は上半身後面を示す図である。このように、本実施の形態1に係る疲労軽減ウェア1は、着用者4の上半身を被覆する上衣10と、着用者4の下半身を被覆する下衣20とに分割構成されている。なお、本実施の形態1においては、上衣10は十分袖の衣類であり、下衣20は十分丈の衣類であるものとする。ここで、「ベース部」2とは、本実施の形態1に係る疲労軽減ウェア1、及び後述する実施の形態2に係る疲労軽減ウェア30に共通する部分であって、「追加サポート部」3とは、実施の形態1に係る疲労軽減ウェア1、及び実施の形態2に係る疲労軽減ウェア30のそれぞれに固有の部分である。
【0022】
ここで、上衣10は、上述したベース部2として、上半身被覆部11、メッシュ部12、脊柱起立筋補助部13、及び上半身接続部14を備えて構成されており、これらはいずれも相互に重複することなく縫合され、上半身を覆う衣類として一体に形成されている。また、上衣10は、上述した追加サポート部3として、腕上げサポート部15、付勢力可変部16、及び肘曲げサポート部17を備えて構成されており、これらはいずれもベース部2の外側に取り付けられている。また、下衣20は、下半身被覆部21、開口部22、巻付け部23、外旋サポート部24、ポンプサポート部25、踵掛け部26、及び下半身接続部27を備えて構成されている。なお、本実施の形態1に係る追加サポート部3はいずれも上衣10にのみ備えられており下衣20には備えられていないので、
図2においては下衣20の図示を省略している。なお、以下では、特定の位置を基準として着用者4の身体の中央に向かう方を「内側」と称し、身体の中央から離れる方を「外側」と称して説明する。
【0023】
(構成−上衣)
まずは、上衣10の構成について説明する。なお、着用者4は上衣10を地肌の上から直接着用するものとして説明する。
【0024】
(構成−上衣−上半身被覆部)
上半身被覆部11は、上半身のうち頭、首、及び手先を除く部分を略被覆する上半身被覆手段である。この上半身被覆部11は、着用者4の上半身に適度な着圧を加えることにより、上半身の深層筋をサポートすると共に、着用者4の血流を促進する。ここで、この上半身被覆部11は、上衣10のベース部2における上述したメッシュ部12、脊柱起立筋補助部13、及び上半身接続部14を除く位置に形成され、メッシュ部12や脊柱起立筋補助部13と相互に縫合されて上衣10を形成している。また、この上半身被覆部11の形状は、着用者4の身長や体格等に応じて適切な形状を適用することができ、図示のものに限られない。また、この上半身被覆部11は、適度な着心地を確保可能な伸縮素材(例えばナイロンやポリウレタン等)にて形成されており、着用者4の上半身に密着する。なお、「伸縮素材」とは、少なくとも伸縮可能な素材であって、その伸び率の高低は問わない。また、「伸び率」とは、「JIS L 1018」に規定される定荷重法に準拠して測定された定荷重時伸び率(%)のことをいう。
【0025】
(構成−上衣−メッシュ部)
メッシュ部12は、上衣10の通気性を向上させることにより、着用者4の着心地を向上させるための通気性向上手段である。このメッシュ部12を形成する位置は任意であり、通気性の向上を要する任意の位置に形成することができるが、本実施の形態1においては、横腹、脇、及び肩口にかけた一帯に形成されている。ただし、腕回りや胸部に当該メッシュ部12を形成しても構わないし、上衣10だけでなく下衣20にもメッシュ部12を形成しても構わない。ここで、メッシュ部12の具体的な構成は任意であるが、例えば上半身被覆部11よりも高い通気性を有するような、目の大きさ、使用する糸の種類や太さ、又は編み方にて形成することが好ましい。
【0026】
(構成−上衣−脊柱起立筋補助部)
脊柱起立筋補助部13は、着用者4の筋肉の伸縮をサポートする伸縮手段の一つであって、特に脊柱起立筋を補助することにより着用者4の姿勢を矯正するための脊柱起立筋補助手段である。この脊柱起立筋補助部13は、具体的には、上衣10の後面に上下に渡って形成されており、着用者4の両側方の脊柱起立筋に対応する位置に並設されている。そして、この脊柱起立筋補助部13は、上半身被覆部11以上の収縮力を有する素材(例えば、ゴム等)により形成されている。このような構成により、脊柱起立筋補助部13は、着用者4の胸椎が反って背筋が伸びている状態となるように着用者4の脊柱起立筋を付勢することができ、腕上げ動作時の腕の可動範囲を向上させることが可能となる。また、脊柱起立筋補助部13が着用者4の重心を中心に近づけさせることで、着用者4が猫背になってしまうことを防止でき、着用者4にとってバランスの良い姿勢を維持させることで腰痛や肩凝り等を防止することが可能となる。
【0027】
(構成−上衣−上半身接続部)
上半身接続部14は、上衣10と下衣20とを相互に接続して、下衣20に設けられた外旋サポート部24による伸縮力を着用者4の上半身に伝達するための伸縮力伝達手段である。この上半身接続部14は、脊柱起立筋補助部13の下端部付近に、二か所に分割されてそれぞれ脊柱起立筋補助部13の外側に取り付けられている。ここで、この上半身接続部14は、上下に長い略長方形状の布地として形成されており、下半身接続部27と同様にエナメル素材の如き摩擦抵抗の大きい素材にて形成されている。ここで、着用者4が上衣10及び下衣20を着用した際には、下衣20の巻付け部23が上衣10の下端部(すなわち腰部近傍)を外側から覆う形となり、このことによって、上衣10に外側向きで取り付けられた上半身接続部14と、下衣20に内側向きで取り付けられた下半身接続部27とが相互に当接する。そして、上半身接続部14と下半身接続部27との相互に作用する摩擦力によって上衣10と下衣20とが相互にずれてしまうことを防止できる。このことにより、上衣10及び下衣20を着用者4に一層密着させることができると共に、下衣20の外旋サポート部24による伸縮力を、下半身接続部27、及び上半身接続部14を介して上衣10に伝達させることができる。
【0028】
(構成−上衣−腕上げサポート部)
腕上げサポート部15は、着用者4の筋肉の伸縮をサポートする伸縮手段の一つであって、特に着用者4が腕を上げる動作をサポートするための腕上げサポート手段である。この腕上げサポート部15は、概略的に、右腕サポート部15aと、左腕サポート部15bとに分割構成されている。
【0029】
右腕サポート部15aは、着用者4の右腕の腕上げ動作をサポートする右腕サポート手段である。ここで、この右腕サポート部15aは、上衣10における上半身被覆部11や、メッシュ部12や、脊柱起立筋補助部13よりも外側の位置に、上衣10の右肘の内側から、上衣10の肩口及び上衣10の背中を介して、上衣10の左脇腹に至るように、上衣10に巻き付く形で取り付けられた帯状体である。ここで、この右腕サポート部15aの一方の端部は上衣10の右肘の内側に縫合されて取り付けられており、もう一方の端部の内側の面(以下、「腕上げサポート部15の先端面」と称する)が、付勢力可変部16を介して上衣10の脇腹近傍に取り付けられている。なお、この取付方法については後述する。なお、右腕サポート部15aは少なくとも上半身被覆部11以上の収縮力を有する素材にて形成されている。
【0030】
左腕サポート部15bは、着用者4の右腕の腕上げ動作をサポートする左腕サポート手段である。なお、この左腕サポート部15bは、上述した右腕サポート部15aと左右対称に構成することができるため、詳細な説明を省略する。なお、
図2(b)に示すように、右腕サポート部15aと左腕サポート部15bとは、上衣10の背中辺りで左腕サポート部15bが外側に位置するように交差しているが、どちらを外側に配置しても構わない。
【0031】
(構成−上衣−付勢力可変部)
付勢力可変部16は、伸縮手段による付勢力を可変させるための付勢力可変手段であって、本実施の形態1においては特に腕上げサポート部15による付勢力を可変させるための手段である。この付勢力可変部16は、相互に取り付け及び取り外し可能なフック面及びループ面(いずれも図示省略)により形成された公知の面ファスナーとして構成されており、具体的には、腕上げサポート部15の先端面に設けられたフック面と、上衣10の後面における任意の領域(本実施の形態1においては、両脇腹の近傍領域)に設けられたループ面により構成されている。なお、これらフック面及びループ面の具体的な形状や素材については公知の形状及び素材を適用できるため、詳細な説明を省略する。
【0032】
ここで、右腕サポート部15aによる付勢力を可変させる付勢力可変部16と、左腕サポート部15bによる付勢力を可変させる付勢力可変部16とは相互に同一に構成できるため、以下では、この付勢力可変部16を利用した腕上げサポート部15の取り付け方法について、右腕サポート部15aを例に挙げて説明し、左腕サポート部15bについてはその説明を省略する。まず、着用者4は、右腕サポート部15aの先端面を肩口から背中に回して、上衣10の左脇腹近傍まで持ってくる。この際に右腕サポート部15aの伸縮力によって、右腕を挙げる方向に右腕が付勢される。そして、右腕サポート部15aの先端面に設けられたフック面を、左脇腹近傍に設けられたループ面に貼り合わせることで、右腕を付勢した状態で右腕サポート部15aを取り付けることができる。ここで、ループ面は左脇腹近傍の一帯に設けられているため、着用者4は任意の位置及び任意の角度で右腕サポート部15aを取り付けることができ、その時々の作業内容や、着用者4の筋肉量に応じて右腕サポート部15aによる付勢力を適宜調整することができる。
【0033】
(構成−上衣−肘曲げサポート部)
肘曲げサポート部17は、着用者4の上腕二頭筋及び橈側手根屈筋を、着用者4の肘が曲がる方向に付勢することにより、着用者4の肘曲げ動作をサポートする肘曲げサポート手段である。この肘曲げサポート部17は、上衣10の脇近傍から内手首に至るように設けられた、少なくとも上半身被覆部11以上の収縮力を有する素材の帯状体として構成されている。
【0034】
ここで、肘曲げサポート部17は指挿通孔17aを備える。この指挿通孔17aは、肘曲げサポート部17におけるサポートの有無を切り替えるためのサポート切換え手段である。具体的には、指挿通孔17aは、上衣10の裾近傍に形成された、上衣10の表地から裏地にかけて貫通するように形成された直径3cm程度の孔である。すなわち、着用者4が親指を当該指挿通孔17aに挿通することで肘曲げサポート部17によって着用者4の親指が引っ張られ、このことによって着用者4の肘関節が曲がる方向に肘が付勢され、着用者4の肘曲げ動作の負担を低減させることが可能となる。また、着用者4が指挿通孔17aから親指を抜くことで、着用者4の肘の筋肉が曲がる方向に肘が付勢されなくなる。したがって、着用者4は作業内容に応じて親指を指挿通孔17aに挿通させたり抜いたりすることで、容易にサポートの有無を切り替えることができ、作業内容に応じたサポートを受けることが可能となる。
【0035】
(構成−下衣)
続いて、下衣20の構成について説明する。なお、着用者4は地肌の上に下着5を着用し、その上から当該下衣20を着用するものとして説明する。
【0036】
(構成−下衣−下半身被覆部)
下半身被覆部21は、下半身のうち足先を除く部分を略被覆する下半身被覆手段である。この下半身被覆部21は、着用者4の下半身に適度な着圧を加えることにより、下半身の深層筋をサポートすると共に、着用者4の血流を促進する。ここで、この下半身被覆部21は、下衣20における上述した開口部22、巻付け部23、外旋サポート部24、ポンプサポート部25、踵掛け部26、下半身接続部27を除く位置に形成され、巻付け部23やポンプサポート部25と相互に縫合されて下衣20を形成している。また、この下半身被覆部21の形状は、着用者4の身長や体格等に応じて適切な形状を適用することができ、図示のものに限られない。また、この下半身被覆部21は、適度な着心地を確保可能な伸縮素材(例えばナイロンやポリウレタン等)にて形成されており、着用者4の下半身に密着する。
【0037】
(構成−下衣−開口部)
開口部22は、着用者4の股間部を開放状態に常時維持させるための開口手段であって、下衣20の表地から裏地にかけて貫通するように形成された孔である。ここで、「開放状態」とは、股間部が外部に露出された状態を示す。また、「股間部」の具体的な範囲は、少なくとも着用者4の排尿器官の外端部を含む任意の領域である。ただし、本実施の形態1においては、開口部22は、
図1(b)に示すように、上下方向は臍の下方10cm辺りから太腿の付け根の下方3cm辺りに及び、幅方向は下衣20の略全幅に及んでいるものとする。また、開口部22は、下衣20の前面だけでなく、前面と後面との間の部分(股)にも及ぶものとする。ただし、開口部22の具体的な領域については本実施の形態1に示すものに限られない。例えば着用者4の性別に応じて股間部の位置も異なるため、開口部22の具体的な位置を適宜変更しても良い。また、上下方向は、内腿や膝辺りまで至るように大きく開口されていても良い。また、幅方向には下衣20の前面から側面を介して後面に至るように大きく開口されていても良い。
【0038】
このように開口部22を設けることの利点として、第一に、着用者4が容易に排尿することが可能となる。すなわち、本願のように着用者4が下着5を着用した上から当該下衣20を履いた場合には、開口部22によって着用者4の下着5の股間部が開放状態に常時維持されるため、着用者4は下着5のみを脱いだり、あるいは下着5の前面に設けられた排尿用の孔を利用したりすることで、容易に排尿を行うことができる。
【0039】
第二に、着用者4が快適に股開き動作を行う事が可能となる。すなわち、開口部22は右脚の太腿の内側付け根と左脚の太腿の内側付け根との相互間にも及んでいるため、着用者4の股関節が下衣20により圧迫されておらず、着用者4の股開き動作が下半身被覆部21の伸縮力等により阻害されることを防止できる。
【0040】
(構成−下衣−巻付け部)
巻付け部23は、下衣20の上端を着用者4の腰部に巻付けたり、巻付けを解除したりするための巻付け手段であって、着用者4の迅速かつ容易な排便を可能とするための手段である。
【0041】
この巻付け部23は、概略的に、開口部22の上縁を形成する位置に設けられており、巻付け部23は概略的に右側突出部23a及び左側突出部23bを備えている。右側突出部23aは下衣20における開口部22の上縁のうち右側を構成する部分であり、着用者4に巻付いた状態では下衣20の右の腰上から臍辺りまで突出している。そして、この右側突出部23aの突出側端部の内面には、一帯に渡って面ファスナーのフック面(図示省略)が設けられている。また、左側突出部23bは下衣20における開口部22の上縁のうち左側を構成する部分であり、着用者4に巻付いた状態では下衣20の左の腰上から臍辺りまで突出している。そして、この左側突出部23bの突出側端部の外面には、一帯に渡って面ファスナーのループ面(図示省略)が設けられている。ここで、これらの右側突出部23a及び左側突出部23bには、右側突出部23aと左側突出部23bとを腰の後ろを介して接続する弾性部材23cであって、少なくとも下半身被覆部21以上の収縮力を有する弾性部材23c(例えば、ゴム)が取り付けられている。
【0042】
これらの右側突出部23a及び左側突出部23bは任意の方法で相互に付け外し可能となっており、このことにより、巻付け部23を着用者4に巻付けた状態と、当該巻付けを解除した状態とに相互に切り換えることができる。以下では、巻付け部23を巻付け、及び巻付けを解除する具体的な方法について説明する。
図3は、下衣20の着用者4を示す側面図であって、
図3(a)は巻付け部23を巻付けた状態の着用者4を示す図、
図3(b)は巻付け部23の巻付けを解除した状態の着用者4を示す図である。
【0043】
まず、巻付け部23を着用者4に巻付けた状態とするには、右側突出部23a及び左側突出部23bをそれぞれ離れる方向に引っ張って上述した弾性部材23cを伸ばした状態で巻付け部23を着用者4の腰部に巻付け、この状態で右側突出部23aのフック面と、左側突出部23bのループ面とを相互に重ね合わせる。このことにより、弾性部材23cが元に戻ろうとする力によって右側突出部23a及び左側突出部23bを着用者4の腰部に密着させつつ、フック面とループ面を接着して巻付けが完了する。
【0044】
また、このように巻付け部23を着用者4に巻付けた状態において、右側突出部23aのフック面と、左側突出部23bのループ面とを相互に引き剥がすことにより、正面視において開口部22の領域と巻付け部23上方の領域とが相互に連通される。よって、
図3(b)に示すように、下衣20の上端の自重により下衣20の上端部が後方向に垂下し、着用者4の臀部が開放状態となる。そのため、着用者4は容易に排便を行う事が可能となる。すなわち、従来のウェアにおいては排便時には下衣20をずり下げる必要があったが、この種の筋肉をサポートするウェアは着用者4の身体に密着するように形成されているためずり下げが困難であった。しかし、本実施の形態1に係る疲労軽減ウェア1は、下衣20をずり下げる必要がなく、右側突出部23aと左側突出部23bとを相互に引き剥がすという極めて容易な方法により着用者4は臀部を開放状態とさせることができるので、着用者4は容易に排便を行うことが可能となる。
【0045】
(構成−下衣−外旋サポート部)
図1(b)、
図1(d)、及び
図3に示すように、外旋サポート部24は、着用者4の筋肉の伸縮をサポートする伸縮手段の一つであって、着用者4の大腿二頭筋が外旋する方向に当該大腿二頭筋を付勢する外旋サポート手段である。この外旋サポート手段は、概略的に、右脚サポート部24aと、左脚サポート部24bとに分割構成されている。
【0046】
右脚サポート部24aは、着用者4の右脚の外旋をサポートする右脚サポート手段である。ここで、この右脚サポート部24aは、下衣20における下半身被覆部21よりも外側の位置に、下衣20の腰部から、臀部、及び大腿部を順次介して右膝部に至るように、下半身被覆部21に巻付く形で配置された帯状体である。また、右脚サポート部24aの一方の端部は、下衣20の腰部の中心位置よりも左方の位置に縫合されており、他方の端部は下衣20の右膝近傍位置に縫合されている。なお、右脚サポート部24aは少なくとも下半身被覆部21以上の収縮力を有する素材にて形成されている。
【0047】
左脚サポート部24bは、着用者4の左脚の外旋をサポートする左脚サポート手段である。なお、この左脚サポート部24bは、上述した右脚サポート部24aと左右対称に構成することができるため、詳細な説明を省略する。なお、
図1(d)に示すように、右脚サポート部24aと左脚サポート部24bとは、下衣20の臀部辺りで右脚サポート部24aが外側に位置するように交差しているが、どちらを外側に配置しても構わない。
【0048】
このように外旋サポート部24を設けることにより、着用者4の外旋がサポートされるため、着用者4は脚の上げ下げを容易に行うことができ、例えば、立ち馬、脚立、梯子等の昇降作業を容易に行うことが可能となる。また、着用者4の外旋がサポートされるため、着用者4は前後方向や左右方向への開脚動作を容易に行う事ができ、作業性の向上を図る事が可能となる。
【0049】
(構成−下衣−ポンプサポート部)
ポンプサポート部25は、着用者4の下腿筋のポンプ作用を促進させるポンプサポート手段である。このポンプサポート部25は、具体的な位置は任意であるが、本実施の形態1においては、
図2(b)及び
図2(d)にて点線で示す位置に、着用者4の腓腹筋を覆うように配置されている。なお、このポンプサポート部25は、下半身被覆部21以上の収縮力を有する素材にて形成されている。
【0050】
(構成−下衣−踵掛け部)
踵掛け部26は、疲労軽減ウェア1がずれてしまうことを防止するためのずれ防止手段である。この踵掛け部26は、下半身被覆部21の踵付近に設けられた孔であって、着用者4はこの踵掛け部26に自らの踵を通して下衣20を着用することにより、下衣20が意図せずにずれて捲り上げられてしまうといった不具合を防止することが可能となる。
【0051】
(構成−下衣−下半身接続部)
下半身接続部27は、上衣10と下衣20とを相互に接続して外旋サポート部24による伸縮力を着用者4の上半身に伝達するための伸縮力伝達手段である。この下半身接続部27は、下衣20の腰部に取り付けられた長方形状の布地であって、上半身接続部14と同様にエナメル素材の如き摩擦抵抗の大きい素材にて形成されている。そして、上半身接続部14の説明にて記述したように、着用者4が上衣10及び下衣20を着用した際に上衣10と下衣20とが相互にずれてしまうことを防止し、上衣10及び下衣20を着用者4により密着させることが可能となる。
【0052】
(実験)
続いて、上述した疲労軽減ウェア1の機能を検証するために行った各種実験の内容及び結果について以下に示す。
【0053】
(実験A)
まずは、足底圧の設置面積を測定する実験(実験A)について以下に示す。
図4は、実験Aの結果を示す図であって、
図4(a)は疲労軽減ウェア1の未着用時の左右の足の荷重分布、
図4(b)は疲労軽減ウェア1の着用時の左右の足の荷重分布を示す。ここで、
図4においては、測定領域を網目状に細分化し、各メッシュに掛かる荷重の大きさに応じて異なるハッチングで表示している。ここで、右方には着用者4の右足から掛かる荷重の分布が表示されており、左方には着用者4の左足から掛かる荷重の分布が表示されている。また、略中央位置には、着用者4の足から掛かる荷重の大きさに基づいて特定した着用者4の重心の位置をプロットしている。
【0054】
この
図4に示すように、着用時には、脊柱起立筋補助部13によって姿勢が改善されることにより、右足の設置面積が増大している(円で囲まれた部分について特に顕著である)と共に、重心が体の中心に寄っていることが分かる。よって、着用者4にとってバランスの良い姿勢を維持させることができ、腕上げ動作時の腕の可動範囲を増大させることが可能であると共に、腰痛や肩凝りを防止させることが可能となる。
【0055】
(実験B)
続いて、筋肉の放電率を測定する実験(実験B)について以下に示す。
図5は、実験Bにおける筋電瞬間値を示す図であって、
図5(a)は疲労軽減ウェア1の未着用時の筋電瞬間値、
図5(b)は疲労軽減ウェア1の着用時の筋電瞬間値を示す。また、
図6は、実験Bにおける筋電積算値(後述する)を示す図である。この実験Bでは、具体的には、疲労軽減ウェア1の未着用時と着用時とそれぞれにおいて、被験者に4種類の動作(箱を取りに行く動作、箱を持ち上げる動作、箱を持ち上げた状態で5秒間維持する動作、及び箱を下ろす動作)を行わせ、各動作における被験者の筋肉毎の放電率(最大筋力を100としたときの放電率。以下、「筋電瞬間値」と称する)を測定し、その放電率の積算値(以下、「筋電積算値」と称する)を筋肉毎に算出した。ここで、
図5の横軸は時間(msec)を示し、縦軸は筋電瞬間値(%)を示している。また、
図6の横軸は測定対象となる各筋肉の名称を示し、縦軸は筋電積算値(%)を示している。なお、箱は重量16kgのものを用いた。また、測定対象となる筋肉は、
図6に示すように三角筋(前部)、脊柱起立筋、腓腹筋、及び大腿二頭筋の4箇所の筋肉とした。なお、
図5においては、このうち三角筋の筋電瞬間値のみを図示している。
【0056】
まず、
図5に示す結果から、本実施の形態1に係る疲労軽減ウェア1を着用することにより、三角筋の筋電瞬間値は、箱を持ち上げる動作、及び5秒間維持する動作において特に顕著に減少できている点が確認できる。また、
図6に示す結果から、本実施の形態1に示す疲労軽減ウェア1を着用することにより、三角筋及び脊柱起立筋の筋電積算値を大きく減少出来ていることが分かる。特に三角筋については非着用時と比べて50パーセント程度減少できていることが分かる。
【0057】
(実験C)
続いて、着用者4の疲労度を測定する実験(実験C)について以下に示す。
図7は、実験Cの結果を示す図である。この
図7では、2行2列(それぞれ以下では「上行」、「下行」、「左列」、「右列」と称する)の表を図示しており、上行には本実施の形態1に係る疲労軽減ウェア1を着用しない被験者に関する例、下行には本実施の形態1に係る疲労軽減ウェア1を着用した被験者に関する例を示している。また、左列にはVAS(visual analog scale)による疲労度測定方法、右列にはフリッカー値による測定方法を示している。
【0058】
ここで、VASによる疲労度測定方法とは、両端に対照的な項目を記載した線に、被験者が感じ方の程度に応じて印を書き込み、端部から印までの長さに基づいて被験者の主観を数値化する方法であって、数値(以下、VASの数値)が大きい程、疲労度が大きいことを示している。また、フリッカー値による疲労度測定方法とは、光を遮光板の回転により明滅させ,回転速度を上げてちらつき(フリッカー)が見えるか見えないかの境目における毎秒回転数の数値を測定する方法であって、数値(以下、フリッカー値)が小さい程、疲労度が大きいことを示している。なお、これらの疲労度測定方法の具体的な手順等は公知であるため説明を省略する。
【0059】
また、測定を実施した期間は、疲労軽減ウェア1を着用した被験者及び着用しない被験者のいずれにおいても3月3日から3月24日までの計3週間であり、平日に被験者が作業を行った後に測定を実施した。なお、疲労軽減ウェア1を着用した被験者に関する例(下行)では、厳密には平日に毎日当該疲労軽減ウェア1を着用することはせず、週に2〜3日程のみ疲労軽減ウェア1を着用した。なお、上行の被験者及び下行の被験者はいずれも鳶工であって、作業の内容は一般的な鳶工が一日に行う作業である。
【0060】
まず、疲労軽減ウェア1を着用しない被験者に関しては、上行に示すように、平日においては、その前日と比べてVASの数値は上昇し続けると共にフリッカー値は下降し続けることが確認できる。ここで、疲労軽減ウェア1を着用した被験者に関しては、下行に示すように、平日のうち疲労軽減ウェア1を着用しない日においては、VASの数値は高い値を示すと共に、フリッカー値は低い値を示している。しかし、平日のうち疲労軽減ウェア1を着用した日のうち多くの日についてはVASの数値は前日と比べてVASの数値は明らかに下降し(特に、円で囲った3月7日、3月13日、及び3月22日等)、フリッカー値は明らかに上昇している(特に、円で囲った3月5日、3月7日、及び3月22日等)ことが分かる。したがって、本実施の形態1に係る疲労軽減ウェア1を着用して作業を行うことで、作業を終えた後の着用者4の疲労度を飛躍的に低減できていることが分かる。
【0061】
(実施の形態1の効果)
このように本実施の形態1によれば、疲労軽減ウェア1の前面に着用者4の股間部を開放状態に常時維持するための開口部22を設けたので、当該疲労軽減ウェア1を脱ぐことなく着用者4は排尿することができ、着用者4は迅速かつ容易に排尿を行うことが可能となると共に、当該疲労軽減ウェア1が着用者4の開脚動作を妨げてしまうことを防止でき、着用者4が好適に開脚動作を行うことが可能となる。
【0062】
また、巻付け部23の巻付けを解除した際に着用者4の臀部が開放状態となるので、極めて簡素な方法により着用者4は臀部を露出して排便することができ、着用者4は迅速かつ容易に排便を行うことが可能となる。
【0063】
また、着用者4の大腿二頭筋が外旋する方向に当該大腿二頭筋を付勢する外旋サポート部24を備えるので、着用者4の外旋をサポートすることができ、着用者4は脚の上げ下げ動作や開脚動作をより容易に行うことが可能となる。
【0064】
また、伸縮手段による付勢力を可変させるための付勢力可変部16を備えるので、着用者4の作業内容、筋肉量、又は疲労具合等に応じて適切な付勢力で筋肉を付勢することができ、着用者4の状態に一層適したサポートが可能となる。
【0065】
また、着用者4の指が指挿通孔17aに挿通されているか否かに応じて、サポートの有無を切り換え可能とする肘曲げサポート部17を備えるので、着用者4は作業内容に応じてサポートの有無を容易に切り換えることができ、着用者4の作業内容に一層適したサポートが可能となる。
【0066】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態2に係る疲労軽減ウェア30は、土工、及び左官工のような、僧帽筋及び脊柱起立筋等といった肩や背中の筋肉に負担が掛る作業を行う者に特に適したウェアである。ただし、特に説明なき構成においては実施の形態1と同様であるものとし、実施の形態1と同様の構成要素には、必要に応じて、実施の形態1で使用したものと同一の符号を付する。
【0067】
(構成)
最初に、本実施の形態2に係る疲労軽減ウェア30の構成を説明する。
図8は、本実施の形態2に係る疲労軽減ウェア30のベース部31及び追加サポート部32の着用者4を概略的に示す図であって、
図8(a)は上半身前面、
図8(b)は上半身後面を示す図である。ここで、本実施の形態2に係る疲労軽減ウェア30は、上衣40と下衣20とに分割構成されているが、下衣20については実施の形態1と同様に構成することができるため図示を省略し、また詳細な説明も省略する。また、上衣40のベース部31は、上半身被覆部11、メッシュ部12、脊柱起立筋補助部13、及び上半身接続部14を相互に重複することなく縫合して構成されているが、このベース部31については実施の形態1に係る疲労軽減ウェア1のベース部2と同様に構成することができるため詳細な説明を省略し、実施の形態1に係る疲労軽減ウェア1と異なる部分である追加サポート部32についてのみ以下で説明する。
【0068】
(構成−前屈みサポート部)
追加サポート部32は、前屈みサポート部41を備えて構成されている。この前屈みサポート部41は、着用者4の筋肉の伸縮をサポートする伸縮手段の一つであって、特に着用者4が前屈みする動作をサポートするための前屈みサポート手段である。この前屈みサポート部41は、上衣40の背面における、上半身被覆部11や、メッシュ部12や、脊柱起立筋補助部13よりも外側の位置に、右肩甲骨付近、左肩甲骨付近、及び腰部付近の三か所にて上半身被覆部11に縫合されて取り付けられている。ここで、この前屈みサポート部41は略T字状の帯状体として形成されており、少なくとも上半身被覆部11以上の収縮力を有する素材にて形成されている。
【0069】
ここで、このように前屈みサポート部41を設けることにより、まずは脊柱起立筋のサポートが可能となる。すなわち、肩甲骨付近から腰部にかけて引っ張る付勢力が加わることにより、胸椎が反り返るため着用者4が猫背になってしまうことを防止でき、着用者4の姿勢を改善して脊柱起立筋に過度の負担が掛ることを防止できる。さらに、前屈み時には反り返る力が大きく働くため、腰痛等を防止することも可能である。また、この前屈みサポート部41によって僧帽筋のサポートが可能となる。すなわち、上記のように着用者4の姿勢を改善することにより肩関節の可動域を広くすることができ、これにより僧帽筋に過度の負担が掛ることを防止できる。
【0070】
(実験)
続いて、上述した疲労軽減ウェア30の機能を検証するために行った各種実験の結果について以下に示す。
【0071】
(実験B−2)
まず、筋肉の放電率を測定する実験(実験B−2)について以下に示す。
図9は、実験B−2における筋電瞬間値を示す図であって、
図9(a)は疲労軽減ウェア30の未着用時の筋電瞬間値、
図9(b)は疲労軽減ウェア30の着用時の筋電瞬間値を示す。また、
図10は、実験B−2における筋電積算値を示す図である。この実験B−2では、具体的には、疲労軽減ウェア30の未着用時と着用時とそれぞれにおいて、被験者に特定の動作(前屈み状態で左官を行う動作)を行わせ、当該動作における被験者の筋肉毎の放電率に基づいて放電率(筋電瞬間値)を測定し、その放電率の積算値(筋電積算値)を算出した。ここで、
図9の横軸は時間(msec)を示し、縦軸は筋電瞬間値(%)を示している。また、
図10の横軸は測定対象となる各筋肉の名称を示し、縦軸は筋電積算値(%)を示している。また、測定対象となる筋肉は、
図10に示すように三角筋、脊柱起立筋、及び大腿二頭筋の3箇所の筋肉とした。なお、
図9においては、このうち脊柱起立筋の筋電瞬間値のみを図示している。
【0072】
まず、
図9に示す結果から、本実施の形態2に係る疲労軽減ウェア30を着用することにより、脊柱起立筋の筋電瞬間値は大幅に減少できている点が確認できる(四角で囲った部分について特に顕著である)。また、
図10に示す結果から、本実施の形態2に係る疲労軽減ウェア30を着用することにより、脊柱起立筋の筋電積算値を非着用時と比べて50パーセント程度減少できていることが分かる。
【0073】
(実施の形態2の効果)
このように本実施の形態2によれば、前屈みサポート部41を設けたので、着用者4の姿勢を改善することができ、脊柱起立筋に掛る負担を低減可能となると共に、肩関節の可動域を広くして僧帽筋に掛る負担を低減可能となる。
【0074】
[実施の形態に対する変形例]
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0075】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。例えば、各実施の形態に係る疲労軽減ウェア1、30によって着用者4が容易に排尿を行うことが出来ない場合であっても、従来と異なる技術により着用者4が排尿を行うことが出来ている場合には、本願発明の課題が解決されている。
【0076】
(寸法や材料について)
発明の詳細な説明や図面で説明した疲労軽減ウェア1、30の各部の寸法、形状、比率等は、あくまで例示であり、その他の任意の寸法、形状、比率等とすることができる。
【0077】
(上衣及び下衣について)
上衣10、40の袖丈の長さや、下衣20の着丈の長さは任意であり、図示のものに限られず、例えば上衣10、40を半袖や七分袖に形成しても良いし、下衣20を五分丈や七分丈に形成しても良い。
【0078】
各実施の形態においては、上衣10、40及び下衣20が相互に分離されて構成されているものとして説明したが、これに限られない。例えば、着用に手間を要する事となるが、上衣10、40と下衣20とを一体に構成したつなぎタイプのものとして疲労軽減ウェア1、30を構成しても構わない。
【0079】
また、対象となる着用者4は任意であり、各実施の形態のように何らかの作業を行うものに限られないし、建設作業員以外の公知の作業員が着用しても構わない。また、実施の形態1に係る疲労軽減ウェア1を土工、及び左官工が着用しても構わないし、実施の形態2に係る疲労軽減ウェア30を鳶工、型枠大工、鉄筋工、及びボード工が着用しても構わない。
【0080】
また、上衣10、40は地肌の上から直接着用するものとして説明したが、これに限らず、地肌の上に肌着を着て、その上から疲労軽減ウェア1、30を着用しても構わない。また、下衣20は下着5の上から着用するものとして説明したが、これに限らず地肌の上から直接疲労軽減ウェア1、30を着用しても構わない。
【0081】
また、実施の形態1に係る疲労軽減ウェア1と実施の形態2に係る疲労軽減ウェア30は適宜組み合わせてよく、例えば実施の形態1に係る追加サポート部3と実施の形態2に係る追加サポート部32とを一体に備えてウェアを構成しても構わない。また、実施の形態1に係る追加サポート部3と実施の形態2に係る追加サポート部32とをいずれも省略して、ベース部2、31のみによってウェアを構成しても構わない。
【0082】
(上半身接続部及び下半身接続部について)
各実施の形態においては、上半身接続部14及び下半身接続部27はいずれもエナメル素材にて形成されており、このエナメル素材の摩擦力にて上衣10、40と下衣20とを相互に接続するものとして説明したが、その他の手段にて接続しても構わず、例えば上半身接続部14及び下半身接続部27は、相互に取り付け及び取り外し可能な公知の面ファスナーとして構成されていても構わない。
【0083】
(巻付け部について)
各実施の形態においては、巻付け部23は公知の面ファスナーを用いたものとして説明したが、これに限られない。例えば、右側突出部23a及び左側突出部23bのいずれか一方にボタンを設け、いずれか他方にボタンホールを設けることにより、右側突出部23a及び左側突出部23bを相互に付け外し可能としても良い。また、巻付け部23を設けずに、排便時には下衣20をずりさげるものとして構成しても構わない。
【0084】
(付勢力可変部について)
実施の形態1においては、付勢力可変部16は腕上げサポート部15の付勢力を可変させるための手段であるものとして説明したが、これに限らずその他の伸縮手段の付勢力を可変可能な手段として構成しても構わない。例えば、下衣20の外旋サポート部24のいずれか一方の端部を、公知の面ファスナーにより自在に取り付け位置を変更可能に構成しても構わないし、実施の形態2に係る前屈みサポート部41に同様の機構を適用しても構わない。
【0085】
(開口部について)
各実施の形態においては、開口部22の位置を排尿器官の外端部の周囲の領域であるものとして説明したが、これに限られない。例えば、少なくとも排尿器官の外端部が開放状態に常時維持されていればよく、開口部22の位置を排尿器官の外端部の周囲近辺の極めて限定された領域としても良い。また、開口部22を下衣20の前面だけでなく後面に設けても良い。
【0086】
(付記)
付記1の疲労軽減ウェアは、着用者の筋肉が伸縮する方向に当該筋肉を付勢することによって、前記着用者の筋肉の伸縮をサポートする伸縮手段を備える疲労軽減ウェアであって、前記疲労軽減ウェアの前面に、前記着用者の股間部を開放状態に常時維持するための開口部を設けた。
【0087】
付記2の疲労軽減ウェアは、付記1の疲労軽減ウェアにおいて、前記疲労軽減ウェアは、前記着用者の上半身を被覆する上衣と、前記着用者の下半身を被覆する下衣と、に分離して構成され、前記下衣は、当該下衣の上端を前記着用者の腰部に巻付けるための巻付け手段を備え、前記巻付け手段の巻付けを解除した際に、前記着用者の臀部が開放状態となるように前記下衣の上端部が垂下する。
【0088】
付記3の疲労軽減ウェアは、付記1又は2の疲労軽減ウェアにおいて、前記伸縮手段は、前記着用者の大腿二頭筋が外旋する方向に当該大腿二頭筋を付勢する外旋サポート手段を備える。
【0089】
付記4の疲労軽減ウェアは、付記1から3のいずれか一項の疲労軽減ウェアにおいて、前記伸縮手段による付勢力を可変させるための付勢力可変手段を備える。
【0090】
付記5の疲労軽減ウェアは、付記1から4のいずれか一項の疲労軽減ウェアにおいて、当該疲労軽減ウェアの袖部には前記着用者の指を挿通させるための指挿通孔を備え、前記伸縮手段は、前記着用者の指が前記指挿通孔に挿通されている場合には前記着用者の肘の筋肉が曲がる方向に当該肘の筋肉を付勢し、前記着用者の指が前記指挿通孔に挿通されていない場合には前記着用者の肘の筋肉が曲がる方向に当該肘の筋肉を付勢しない肘曲げサポート手段を備える。
【0091】
(付記の効果)
付記1の疲労軽減ウェアによれば、疲労軽減ウェアの前面に着用者の股間部を開放状態に常時維持するための開口部を設けたので、当該疲労軽減ウェアを脱ぐことなく着用者は排尿することができ、着用者は迅速かつ容易に排尿を行うことが可能となると共に、当該疲労軽減ウェアが着用者の開脚動作を妨げてしまうことを防止でき、着用者が好適に開脚動作を行うことが可能となる。
【0092】
付記2の疲労軽減ウェアによれば、巻付け手段の巻付けを解除した際に着用者の臀部が開放状態となるので、極めて簡素な方法により着用者は臀部を露出して排便することができ、着用者は迅速かつ容易に排便を行うことが可能となる。
【0093】
付記3の疲労軽減ウェアによれば、着用者の大腿二頭筋が外旋する方向に当該大腿二頭筋を付勢する外旋サポート手段を備えるので、着用者の外旋をサポートすることができ、着用者は脚の上げ下げ動作や開脚動作をより容易に行うことが可能となる。
【0094】
付記4の疲労軽減ウェアによれば、伸縮手段による付勢力を可変させるための付勢力可変手段を備えるので、着用者の作業内容、筋肉量、又は疲労具合等に応じて適切な付勢力で筋肉を付勢することができ、着用者の状態に一層適したサポートが可能となる。
【0095】
付記5の疲労軽減ウェアによれば、着用者の指が指挿通孔に挿通されているか否かに応じて、サポートの有無を切り換え可能とする肘曲げサポート手段を備えるので、着用者は作業内容に応じてサポートの有無を容易に切り換えることができ、着用者の作業内容に一層適したサポートが可能となる。